特許第6677273号(P6677273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6677273マイクロサンプリングチップ及びそのマイクロサンプリングチップを用いる検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677273
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】マイクロサンプリングチップ及びそのマイクロサンプリングチップを用いる検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20200330BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20200330BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20200330BHJP
   G01N 21/05 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   G01N1/00 101G
   G01N27/28 301B
   G01N21/78 A
   !G01N21/05
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-104221(P2018-104221)
(22)【出願日】2018年5月31日
(65)【公開番号】特開2019-211212(P2019-211212A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】513064210
【氏名又は名称】山口 佳則
(73)【特許権者】
【識別番号】518191876
【氏名又は名称】高田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 佳則
(72)【発明者】
【氏名】小山 将司
(72)【発明者】
【氏名】高田 弘之
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−056821(JP,A)
【文献】 特開2006−308561(JP,A)
【文献】 特表2015−536465(JP,A)
【文献】 特開平10−132712(JP,A)
【文献】 特開2001−194334(JP,A)
【文献】 特開2016−045200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
G01N 21/78
G01N 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端及び前記先端とは反対側に位置する基端を有し、前記先端に吸入口が設けられ、前記基端が検査装置に保持されるマイクロサンプリングチップであって、
前記吸入口に通じ、前記先端から前記基端へ向かって延びる第1の微細流路と、
前記検査装置が当該マイクロサンプリングチップの前記基端側からアクセスすることができるように前記基端側の内部に設けられ、前記第1の微細流路を介して前記吸入口と連通し、前記吸入口から吸入されたサンプルを貯留するための検査用空間と、
前記基端側に設けられ、前記第1の微細流路と交差する方向へ延びる第2の微細流路を介して前記検査用空間と連通する内部空間を有し、前記内部空間を形成する1つの壁面が弾力性を有する弾性材料からなる弾性壁面となっており、前記弾性壁面が前記マイクロサンプリングチップの基端面に面しているポンプ部と、を備え、
前記ポンプ部の前記弾性壁面を前記基端側から弾性変形させることによって、前記吸入口を介してサンプルが前記検査用空間内に吸入されるように構成されているマイクロサンプリングチップ。
【請求項2】
前記ポンプ部の前記内部空間は、前記第1の微細流路及び前記検査用空間の合計容量よりも大きい容量を有し、前記吸入口から吸入されたサンプルのうちの所定量が前記検査用空間に導入されるように構成されている、請求項1に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項3】
前記検査用空間の内部に、サンプルの電気化学測定を行なうための測定用電極が設けられており、前記検査用空間内に所定量のサンプルが貯留されたときに当該サンプルと前記測定用電極とが接触するように構成されている、請求項1又は2に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項4】
前記検査用空間の内部に、サンプルと触れたときにそのサンプル中に含まれる成分由来の発色反応を示す性質をもつ発色体を含む検査用媒体が設けられており、前記検査用空間内に所定量のサンプルが貯留されたときに当該サンプルと前記検査用媒体とが接触するように構成されている、請求項1又は2に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項5】
前記基端を保持する前記検査装置が前記検査用媒体の色調を光学的に検出できるように、前記検査用空間を形成する壁面のうち前記基端側の壁面が透明材料により構成されている、請求項4に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項6】
前記発色体は、サンプルの性質に応じた発色反応を示す発色試薬が紙媒体に保持されたものである、請求項4又は5に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項7】
前記検査用媒体は、前記発色反応を示す成分が互いに異なる複数の前記発色体を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項8】
前記検査用媒体は、前記発色反応を示す性質をもたない参照体も含む、請求項5からのいずれか一項に記載のマイクロサンプリングチップ。
【請求項9】
請求項3に記載のマイクロサンプリングチップの基端を保持するチップ保持部と、
前記チップ保持部で保持した前記マイクロサンプリングチップの前記測定用電極に対して前記マイクロサンプリングチップの前記基端側から電気的接触をとるための端子と、
前記端子を介して前記測定用電極と電気的に接続され、サンプルの電気化学測定を行なうための測定回路と、を備えた検査装置。
【請求項10】
請求項4から8のいずれか一項に記載のマイクロサンプリングチップの基端を保持するためのチップ保持部と、
前記チップ保持部で保持した前記マイクロサンプリングチップの前記検査用媒体の色調を前記マイクロサンプリングチップの前記基端側から光学的に検出するための検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記検査用媒体の発色体の発色反応を測定する測定回路と、を備えた検査装置。
【請求項11】
前記検出部は、赤色、緑色、青色の光の強度をそれぞれ個別に検出するための受光素子を含むものであり、
前記測定回路は、前記検出部により得られた赤色、緑色、青色の光のそれぞれの強度を数値化し、それらの数値に基づいて前記検査用媒体の色調を検出するように構成されている、請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記チップ保持部に保持された前記マイクロサンプリングチップの前記吸入口から一定量のサンプルが吸入されるように、前記マイクロサンプリングチップの前記ポンプ部の前記弾性壁面の押圧とその解除を行なう押圧機構を備えている、請求項9から11のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属測定に代表される環境検査、尿試験紙を利用することを代表とする生化学検査、臨床検査、残留農薬を検出することに代表される食物検査などの検査を行なうためのマイクロサンプリングチップ及びその検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カドミウム、コバルト、水銀、銅、亜鉛、鉛といった重金属は人体に有害であり、水や土壌に含まれる重金属量を把握することは非常に重要である。重金属の測定方法として種々の方法が提案され、実施もなされている(特許文献1、2参照。)。また、穀物、野菜、果実など食物へ農薬を散布することによる残留農薬の問題は深刻であり、2013年にはインドでモノクロトホスが野菜に残留していたことによって、23人の児童が志望するといった重大な事件が起こっている。
【0003】
また、医療や食品検査の現場において、その場で的確に必要な検査をできることは、その後の診断や予防、安心を保障することにおいて重要である。その場で検査を数分のうちに検出でき、その疾患や食品の安全、残留農薬の有無を測定できることによって、患者にはできるだけ早い診断、投薬が実現し、飲料水や食品については、飲食前の安全を保障できる。
【0004】
ろ紙などの紙媒体に発色試薬を固定した試験紙を利用した、ヒトの尿中や血中における特定物質の検査、イムノアッセイ、残留農薬の検査、土壌汚染の検査が一般的に行なわれている。しかし、試験紙を使用して現場において簡易迅速に検査を行なうことのできる技術は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−174054号公報
【特許文献2】特開2009−034041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気化学測定や試験紙等を用いて行なう検査は、サンプルを測定用電極や試験紙といったセンサー部分に接触させて行なわれるが、センサー部分に接触させるサンプル量の定量性は検査結果の正確性や再現性にとって重要な要素である。そのため、サンプル量の制御を高精度に行なう必要がある。特に、数十μLといった少量のサンプルを用いる場合には、0.1μL単位の精度が必要であり、安価なピペットではそのような高精度のサンプル量の制御は困難である。空気中に露出した電極や試験紙に少量のサンプルを滴下する検査方法では、サンプルの空気中への蒸発によって検査中にサンプル濃度が変化する場合がある。
【0007】
また、一定量のサンプルを検査に供するために用いられるピペットの先端には、コンタミネーションを防止するために使い捨てのチップが装着されるが、サンプルを吸入する際に勢いでサンプルがピペットの本体側に付着してしまう場合があり、コンタミネーションが確実に防止されているとはいえない。一方で、容器に入れられたサンプルにセンサー部分を浸して測定する検査方法では、センサーに接触するサンプル量の定量性が得られない。センサー部分の表面での電荷や熱の影響で拡散が起こり、その影響でサンプルの表面濃度が変化して測定値の再現性が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、検査のセンサー部分に接触させるサンプルの定量性を向上させるとともにコンタミネーションを確実に防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るマイクロサンプリングチップは、サンプルを吸入するための吸入口と、前記吸入口と連通し、前記吸入口から吸入されたサンプルを貯留するための検査用空間と、前記検査用空間と連通した内部空間を有し、前記内部空間を形成する1つの壁面が弾力性を有する弾性材料からなる弾性壁面となっているポンプ部を備え、前記ポンプ部の前記弾性壁面を弾性変形させることによって、前記吸入口を介してサンプルが前記検査用空間内に吸入されるように構成されている。すなわち、本発明に係るマイクロサンプリングチップは独自にポンプ機能をもち、そのポンプ機能をもつポンプ部の弾力性のある弾性材料を外部から押圧することによってチップ内流路の全体空間の体積を減少させ、その後、サンプルに吸入口を浸した状態で弾性部分の押圧を解除することで、吸入口から検査用空間内にサンプルが吸入されるようになっている。
【0010】
好ましい実施形態では、前記マイクロサンプリングチップは先端と基端をもち、前記先端に前記吸入口が設けられ、前記基端が検査装置に保持されるようになっており、前記基端側の内部に前記検査用空間が設けられている。
【0011】
さらに好ましい実施形態では、前記吸入口と前記検査用空間は微細流路を介して連通しており、前記ポンプ部の前記内部空間は、前記微細流路及び前記検査用空間の合計容量よりも大きい容量を有し、前記吸入口から吸入されたサンプルのうちの所定量が前記検査用空間に導入されるように構成されている。このような構成にすることで、測定用電極又は検査用媒体に常に一定量のサンプルが接触するため、検査結果の再現性が向上する。
【0012】
前記検査用空間の内部にサンプルの電気化学測定を行なうための測定用電極を設け、前記検査用空間内に所定量のサンプルが貯留されたときに当該サンプルと前記測定用電極とが接触するように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記検査用空間の内部に、サンプルと触れたときにそのサンプル中に含まれる成分由来の発色反応を示す性質をもつ発色体を含む検査用媒体が設けられており、前記検査用空間内に所定量のサンプルが貯留されたときに当該サンプルと前記検査用媒体とが接触するように構成されていてもよい。
【0014】
前記検査用空間内に前記検査用媒体が設けられている場合、前記基端を保持する前記検査装置が前記検査用媒体の色調を光学的に検出できるように、前記検査用空間を形成する壁面のうち前記基端側の壁面が透明材料により構成されていることが好ましい。
【0015】
前記発色体として、サンプルの性質に応じた発色反応を示す発色試薬が紙媒体に保持されたものを挙げることができる。そのような発色体は、例えば従来から尿検査などに用いられている試験紙によって実現することができる。
【0016】
また、前記検査用媒体は、前記発色反応を示す成分が互いに異なる複数の発色体を含んでいてもよい。そうすれば、マイクロサンプリングチップ内にサンプルが吸引されたときに、そのサンプルについて複数項目の検査を同時に実施することができる。
【0017】
ところで、サンプル自体が色をもっている場合には、サンプルに触れた発色体がサンプルの色で着色されてしまい、発色体の発色を正しく測定することができなくなって検査結果に影響を与えることも考えられる。そこで、前記検査用媒体は、前記発色反応を示す性質をもたない参照体も含むことが好ましい。そうすれば、発色体と参照体の両方をサンプルに接触させたときの両者の色調の差によって発色体の発色を正しく測定することができる。
【0018】
前記検査用空間に前記測定用電極が設けられているマイクロサンプリングチップを用いる本発明の検査装置は、前記マイクロサンプリングチップを保持するチップ保持部と、前記チップ保持部で保持した前記マイクロサンプリングチップの前記測定用電極と電気的接触をとるための端子と、前記端子を介して前記測定用電極と電気的に接続され、サンプルの電気化学測定を行なうための測定回路と、を備えている。
【0019】
前記検査用空間に前記検査用媒体が設けられているマイクロサンプリングチップを用いる本発明の検査装置は、前記マイクロサンプリングチップを保持するためのチップ保持部と、前記チップ装着部で保持した前記マイクロサンプリングチップの前記検査用媒体の色調を光学的に検出するための検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて前記検査用媒体の発色体の発色反応を測定する測定回路と、を備えている。
【0020】
上記の場合、前記検出部としては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光の強度をそれぞれ個別に検出するための受光素子を含むものを用いることができる。その場合、前記測定回路は、前記検出部により得られた赤色、緑色、青色の光のそれぞれの強度を数値化し、それらの数値に基づいて前記検査用媒体の色調を検出するように構成されている。そうすれば、検査用媒体の色調の検出が容易である。この場合、前記測定回路は、前記検出部により得られた赤色、緑色、青色の光のそれぞれの強度を数値化し、それらの数値に基づいて前記検査用媒体の色調を検出するように構成されていることが好ましい。
【0021】
また、R・G・Bの強度として数値化された検査用媒体の色調データは、WiFiなどの無線装置を利用して、携帯電話やその他の通信機能を持つ装置に転送されてもよい。
【0022】
また、本発明の検査装置は、前記チップ保持部に保持された前記マイクロサンプリングチップの前記吸入口から一定量のサンプルが吸入されるように、前記マイクロサンプリングチップの前記ポンプ部の前記弾性壁面の押圧とその解除を行なう押圧機構を備えていることが好ましい。そうすれば、検査用空間へのサンプルの吸入も自動的に行なうことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマイクロサンプリングチップでは、測定用電極又は検査用媒体が内部に設けられた検査用空間と、その検査用空間と連通した内部空間を有し、前記内部空間を形成する1つの壁面が弾力性を有する弾性材料からなる弾性壁面となっているポンプ部を備えており、前記ポンプ部の前記弾性壁面を弾性変形させることによってサンプルが前記検査用空間内に吸入されるようになっているので、測定用電極や検査用媒体といった検査のセンサー部分を検査用空間内に配置しておけば、そのようなセンサー部分にサンプルを滴下させるといった作業を行なうことなく、検査用媒体をサンプルに確実に接触させることができる。さらに、ポンプ部もマイクロサンプリングチップに内蔵されているため、ピペットを用いることなくサンプルを測定用電極や検査用媒体に接触させることが可能となり、コンタミネーションの防止を図ることができる。当該マイクロサンプリングチップを使い捨てにすることで、サンプルごとに新品のマイクロサンプリングチップを使用することができ、コンタミネーションや作業者への感染といった問題を解消することができる。
【0024】
検査用空間に測定用電極が設けられているマイクロサンプリングチップを用いる本発明の検査装置では、マイクロサンプリングチップの測定用電極と電気的接触をとってサンプルの電気化学測定を行なうように構成されているので、サンプルの電気化学測定を再現性よく簡易かつ迅速に行なうことができる。
【0025】
検査用空間に検査用媒体が設けられているマイクロサンプリングチップを用いる本発明の検査装置では、マイクロサンプリングチップの検査用媒体の色調を光学的に検出して検査用媒体の発色体の発色反応を測定するように構成されているので、試験紙などの発色体を用いたサンプルの検査を再現性よく簡易かつ迅速に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】マイクロサンプリングチップの一実施例を示す平面図である。
図2】同実施例の内部構造を示す断面図である。
図3】同実施例の先端側から見た斜視図である。
図4】同実施例の基端側から見た斜視図である。
図5図1から図4のマイクロサンプリングチップを用いる検査装置の一実施例を示す平面図である。
図6】マイクロサンプリングチップの他の実施例を示す平面図である。
図7】同実施例の内部構造を示す断面図である。
図8】同実施例の基端側から見た斜視図である。
図9図6から図8のマイクロサンプリングチップを用いる検査装置の一実施例を示す平面図である。
図10図5の検査装置による測定データの一例を示す図である。
図11図9の検査装置による測定データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るマイクロサンプリングチップと検査装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
マイクロサンプリングチップの一実施例について、図1から図4を用いて説明する。
【0029】
この実施例のマイクロサンプリングチップ1は、後述する検査装置20(図5参照)の先端に装着して使用するものである。マイクロサンプリングチップ1は、吸入口2が先端に設けられているとともに、吸入口2を介してサンプルを吸入するためのポンプ部8を基端側に備えている。マイクロサンプリングチップ1の内部には、先端の吸入口2から基端側へ延びた微細流路6、微細流路6を介して吸入口2と連通する検査用空間4、ポンプ部8の内部空間9、及び検査用空間4と内部空間9との間を連通させる微細流路10が設けられている。
【0030】
ポンプ部8の内部空間9はマイクロサンプリングチップ1の基端面に設けられた凹部の開口が、例えば硬質シリコンゴムやエラストマー樹脂などの弾性材料からなる弾性シート16によって密閉されて形成されている。すなわち、内部空間9を形成する1つの壁面は弾性材料からなる弾性壁面となっている。弾性材料からなる弾性シート16は外部からの応力によって弾性変形するため、外部からの応力によってポンプ部8の内部空間9の内部容量を弾性的に変化させることができる。
【0031】
ポンプ部8の弾性壁面(すなわち、弾性シート16)を外力から押圧して内部空間9を押し潰した後、その押圧を解除すると、弾性シート16の復元力によって内部空間9の内部容量が元の大きさに戻ろうとして、内部空間9と連通している微細流路10、検査用空間4、微細流路6内が減圧される。このとき、吸入口2をサンプルに浸していることで、吸入口2から微細流路6を介して検査用空間4内にサンプルが吸入される。
【0032】
ポンプ部8の内部空間9は、検査用空間4と微細流路6の合計の内部容量よりも大きな内部容量をもつように形成されており、ポンプ部8を駆動してサンプルの吸入を行なったときに、検査用空間4内に所定量のサンプルが確実に導入されるようになっている。例えば、検査用空間4の内部容量が100μL程度、微細流路6の内部容量が15μL程度の場合、ポンプ部8の内部空間9の内部容量を10mL程度とすることで、検査用空間4内に所定量のサンプルを確実に導入することができる。
【0033】
検査用空間4内には、サンプルの電気化学測定を行なうための測定用電極12が設けられている。測定用電極12は、検査用空間4内に所定量のサンプルが導入されたときに、電極部分が確実にサンプルと接触するように設けられている。マイクロサンプリングチップ1の基端面には、後述する検査装置20の先端部22(図5参照)が挿入される窪み14が設けられている。窪み14は隔壁15を隔てて検査用空間4と隣接している。測定用電極12は窪み14側から隔壁15を貫通するようにして検査用空間4内に挿入されている。測定用電極12のうち窪み14側に配置されている部分12aは、検査装置20の端子24と電気的に接触させるための端子である。
【0034】
隔壁15は検査用空間4と窪み14とを空間的に完全に遮断しており、検査用空間4内に導入されたサンプルが窪み14側へ侵入することはない。そのため、吸入口2から吸入されたサンプルがマイクロサンプリングチップ1を用いる検査装置20(図5参照)に付着することがない。
【0035】
ここで、測定用電極12として、電極部分がプラスチック内部にインサート成形されたものを用いることができる。そのような測定用電極12を用いることで、電極表面の経時的な酸化を抑制することができる。
【0036】
上記実施例では、ポンプ部8の弾性シート16からなる弾性壁面がマイクロサンプリングチップ1の基端面に設けられている。これにより、検査装置20の押圧機構32(図5参照)によってポンプ部8の弾性壁面を押圧し、ポンプ部8を駆動することができる。なお、マイクロサンプリングチップ1のポンプ部8を手動で駆動してもよく、作業者の手指でポンプ部8の弾性壁面を押圧しやすいように、ポンプ部8の弾性壁面が別の位置、例えば検査用空間4が設けられている平面と同一平面に設けられていてもよい。
【0037】
マイクロサンプリングチップ1を用いる検査装置の一実施例について、図5を用いて説明する。
【0038】
検査装置20は、マイクロサンプリングチップ1の基端面に設けられている窪み14と嵌合する形状の先端部22を備え、先端部22の内部にマイクロサンプリングチップ1の端子12aと電気的な接触をとるための端子24が設けられている。サンプルの電気化学測定を実施する際は、検査装置20の先端部22をマイクロサンプリングチップ1の基端面の窪み14に嵌め込むことにより、マイクロサンプリングチップ1を検査装置20に装着する。マイクロサンプリングチップ1の先端部22はマイクロサンプリングチップ1を保持するためのチップ保持部を構成している。
【0039】
検査装置20の内部には、サンプルの電気化学測定を行なうための測定回路26が設けられている。測定回路26は端子24と電気的に接続されている。検査装置20の外面には、測定回路26による測定結果を表示するための表示部28が設けられている。検査装置20はさらに、マイクロサンプリングチップ1の基端面のポンプ部8の弾性壁面(弾性シート16)を押圧するための押圧機構32を備えている。押圧機構32は、弾性シート16に対して垂直に設けられた押圧棒30をその軸方向(図5において矢印の方向)へ駆動することによって、検査装置20に装着されたマイクロサンプリングチップ1のポンプ部8の弾性壁面の押圧とその押圧の解除を行なうように構成されたものである。図示は省略されているが、検査装置20の外面には、押圧機構32の駆動の動機となる信号を生成するためのスイッチが設けられており、作業者がそのスイッチを押すことで押圧機構32が駆動され、マイクロサンプリングチップ1のポンプ部8が駆動される。
【0040】
この実施例では、押圧機構32として電動式のものを想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、押圧棒30を手動で、すなわち作業者が検査装置20に設けられたレバー等を動かすことによって押圧棒30が動作するように構成されていてもよい。また、マイクロサンプリングチップ1のポンプ部8の弾性壁面を作業者が手指で押圧できるようになっているのであれば、必ずしも検査装置20に押圧機構32が設けられている必要はない。
【0041】
また、押圧機構32に、マイクロサンプリングチップ1を検査装置20から自動的に取り外すための取外し機能、すなわち、ポンプ部8を駆動する際よりも大きく駆動棒30を駆動させる機能をもたせるようにしてもよい。
【0042】
次に、マイクロサンプリングチップの他の実施例について、図6から図8を用いて説明する。
【0043】
この実施例のマイクロサンプリングチップ100は、後述する検査装置120(図9参照)の先端に装着して使用するものである。マイクロサンプリングチップ100は、吸入口102が先端に設けられているとともに、吸入口102を介してサンプルを吸入するためのポンプ部108を基端側に備えている。マイクロサンプリングチップ100の内部には、先端の吸入口102から基端側へ延びた微細流路106、微細流路106を介して吸入口102と連通する検査用空間104、ポンプ部108の内部空間109、及び検査用空間104と内部空間109との間を連通させる微細流路110が設けられている。また、マイクロサンプリングチップ100の基端面には、検査装置120が当該マイクロサンプリングチップ100を保持するための突起114が設けられている。
【0044】
検査用空間104は、マイクロサンプリングチップ100の基端面に設けられた凹部の開口が透明シート113によって封止されて構成されている。すなわち、マイクロサンプリングチップ100の基端面に面する検査用空間104の壁面が透明材料により構成されている。透明シート113の材質として、例えば透明アクリルシートが挙げられる。
【0045】
ポンプ部108の内部空間109はマイクロサンプリングチップ100の基端面に設けられた凹部の開口が、例えば硬質シリコンゴム又はエラストマー樹脂などの弾性材料からなる弾性シート116によって密閉されて形成されている。すなわち、内部空間109を形成する1つの壁面は弾性材料からなる弾性壁面となっている。弾性材料からなる弾性シート116は外部からの応力によって弾性変形するため、外部からの応力によってポンプ部108の内部空間109の内部容量を弾性的に変化させることができる。
【0046】
ポンプ部108の弾性壁面(すなわち、弾性シート116)を外力から押圧して内部空間109を押し潰した後、その押圧を解除すると、弾性シート116の復元力によって内部空間109の内部容量が元の大きさに戻ろうとして、内部空間9と連通している微細流路110、検査用空間104、微細流路106内が減圧される。このとき、吸入口102をサンプルに浸していることで、吸入口102から微細流路106を介して検査用空間104内にサンプルが吸入される。
【0047】
ポンプ部108の内部空間109は、検査用空間104と微細流路106の合計の内部容量よりも大きな内部容量をもつように形成されており、ポンプ部108を駆動してサンプルの吸入を行なったときに、検査用空間104内に所定量のサンプルが確実に導入されるようになっている。例えば、検査用空間104の内部容量が100μL程度、微細流路106の内部容量が15μL程度の場合、ポンプ部108の内部空間109の内部容量を10mL程度とすることで、検査用空間104内に所定量のサンプルを確実に導入することができる。
【0048】
検査用空間104内には、略球状、略角柱又は略円柱状の検査用媒体112を嵌め込んで保持するための台座111が設けられており(図8参照)、台座111に検査用媒体112が嵌め込まれて検査用空間104内に固定されている。検査用媒体112とは、サンプルに含まれる特定成分に由来する発色反応を示す発色試薬を保持する発色体を含むものである。検査用媒体112を略球状、略角柱又は略円柱状にすることで、サンプルが検査用媒体112と接触したときに検査用媒体112にサンプルが均一に吸収されやすくなり、検査用媒体112に適切な発色を促すことができる。検査用試薬を保持して検査用媒体112をなすための素材として綿球、ろ紙、スポンジなどが挙げられる。検査用媒体112は、所定量のサンプルが検査用空間104内に導入されたときにサンプルに確実に接触するように設けられている。
【0049】
検査用媒体112は、比色法に利用することができるものであれば、いかなるものも含む。比色法とは、発色体にサンプルを浸潤させたときの発色度(色の濃さ)をその検査項目(濃度やpHなど)の数値が既知である同発色試薬の発色度と比較することにより、サンプルの検査項目を定量する方法である。測定物質、例えばウロビリノーゲンなどそれ自身に色がある場合だけでなく、測定物質自身に色が無い場合でも、化学反応によって発色試薬を発色させ、その発色度によって定量することができる。比色法は食品分析、環境分析、生化学分析などの多くの場面で使用されている分析方法である。
【0050】
検査用媒体112としては、Ph試験紙、尿試験紙、サンドイッチイムノアッセイ、環境分析用試験紙、農薬試験紙、残留塩素定量試験紙、界面活性剤定量試験紙などが挙げられる。
【0051】
pHは、サンプルの水素イオン濃度に応じた発色度を示す、例えばブロモチモールブルー(BTB)などの発色試薬を用いることで定量することができる。BTBは、サンプルがアルカリ性であれば青色に発色し、サンプルが酸性であれば赤色に発色する。
【0052】
尿試験の検査項目には、主として、白血球濃度、ウロビリノーゲン濃度、タンパク質濃度、pH、潜血、比重、ケトン体量、ブドウ糖濃度があり、それぞれの検査項目に対する発色試薬が存在する。
【0053】
本発明を利用することによって、複数の工程が必要である測定についても簡便に行うことが出来る。例えば、サンドイッチイムノアッセイでは、あらかじめ抗体を固定化した試験紙試薬ろ紙に測定対象の抗原を含むサンプルを浸潤させた後、サンプル溶液を排出し、洗浄用試薬で洗浄し、その後、発色試薬を含む溶液を反応させ、洗浄し、その後の発色を測定する。発色試薬は例えばDAPIなどが挙げられる。
【0054】
環境分析では、フェノール類、溶存酸素、フッ素化合物、シアン化合物などの濃度を定量する。フェノール類は、4−アミノアンチピリンとヘキサシアノ鉄(III)を加えたときに生じる赤色物質(アンチピリン色素)の濃度をその発色度により定量することができる。溶存酸素は、酒石酸カリウムー水酸化ナトリウム溶液とメチレンブルー溶液を加えたときの発色度を測定することで定量することができる。フッ素化合物は、La(III)とアリザリンコンプレキソンとの錯体がフッ素イオンと反応して生じる青色の錯体をその発色度から検出することで定量することができる。シアン化合物は、ピリジン-ピアゾロン吸光度を測定することにより定量することができる。
【0055】
残留農薬の定量方法の一例として、アセチルコリンをコリンエステラーゼで酵素分解させた際に発生する分解物であるコリンにコリン酸化酵素、ペルオキシダーゼを共役させ、アミノアンチピリンとフェノール、及び酸化酵素から発生した過酸化水素を利用してキノンイミン色素の赤色発色度を測定する方法が挙げられる。
【0056】
残留農薬の定量方法としては、アセチルコリンエステラーゼの阻害を定量する方法もある。その場合には、酵素反応によって発生した水素イオン濃度を測定する。この場合、検査用媒体112としては、試験紙ろ紙の表側にpH反応液をしみこませ、裏側にアセチルコリンエステラーゼの乾燥体とアセチルコリン乾燥体を固定したものを用いることができる。マイクロサンプリングチップ100の検査用空間104内にサンプルが導入されて検査用媒体112にサンプルが浸潤すると、アセチルコリエステラーゼとアセチルコリンが反応して水素イオンを発生する。そのときのpHを検査用媒体112のpH反応液の発色の程度によって定量する。pH反応液はpH8.5で青色を呈するのでその色あいを定量する。具体的にはR.G.Bのそれぞれのデジタル化された値(8ビットであればそれぞれ最大値255)について計算し値を出す。例えば、バックグランドがR=50、G=30、B=40、測定時がR=60、G=45、B=150の場合には青と評価する。後述する検査装置120の検出部124側には、R.G.Bのフィルタ(最低でも3つの受光素子の前にR.G.Bのフィルタ)が設置されており、検出部124で得られた検出信号のデータ処理によって検査用媒体112の発色の程度を検出する。
【0057】
残留塩素は、ジエチル-p-フェニレンジアンモニウム(DPD)の比色試薬を行ない、桃色から桃赤色への色調変化の度合いを測定することにより定量することができる。
【0058】
界面活性剤は、エチルバイオレッドとの化学反応で生成されるイオンを、トルエン抽出を行なうことによって発せられる611nmの光量を測定することにより定量することができる。
【0059】
複数の検査用媒体112がマイクロサンプリングチップ100の基端面と平行な平面内に配列されている。複数の検査用媒体112は、それぞれ互いに異なる種類の発色体、すなわち互いに異なる成分に由来する発色反応を示す性質をもつ発色体である。これにより、サンプルの一度の吸入で複数項目の測定を同時に行なうことができる。
【0060】
また、複数の検査用媒体112のうちの1つは、そのような発色反応を示す性質をもたない、すなわち発色試薬の浸潤していない参照体であってもよい。複数の検査用媒体112のうちの1つを参照体とすることで、サンプルが色をもっている場合でも、サンプルの色による検査用媒体112の着色具合を参照体によって測定することができ、参照体の着色具合を発色体の色調変化量から差し引くことで、発色体の発色度を正確に測定することができる。
【0061】
なお、検査用空間104内には、必ずしも複数の検査用媒体112が設けられている必要はなく、発色体からなる検査用媒体112が1つのみ設けられていてもよい。
【0062】
マイクロサンプリングチップ100を用いる検査装置の一実施例について、図9を用いて説明する。
【0063】
検査装置120はマイクロサンプリングチップ100の基端面に設けられている突起114と嵌合する形状の穴122を備えており、マイクロサンプリングチップ100の突起114を穴122に嵌め込ませることでマイクロサンプリングチップ100を保持する。すなわち、穴114はマイクロサンプリングチップ100を保持するためのチップ保持部を構成する。
【0064】
検査装置120は、マイクロサンプリングチップ100の検査用空間104内の検査用媒体112の色調を光学的に検出するための検出部124を備えている。検出部124は、例えばCCDカメラなどの撮像装置によって実現することができる。検査装置120はさらに、検出部124からの検出信号に基づいて検査用媒体112の色調変化を測定するように構成された測定回路126を備えている。測定回路126は、検出部124からの検出信号に基づき、検査用媒体112での赤色成分、緑色成分、青色成分の減衰量(吸光度)を測定する。赤色成分、緑色成分、青色成分の光の減衰量を測定すれば、検査用媒体112の色調を数値として測定することができる。このような測定を、検査用媒体112にサンプルを接触させる前後において行ない、それらの色調の差分をとることで、サンプル中の特定成分に由来した発色反応による検査用媒体112の色調変化を測定することができる。
【0065】
具体的には、サンプルをマイクロサンプリングチップ100内に吸入する前、例えば、マイクロサンプリングチップ100を検査装置120に装着した際にバックグランドの測定を行なう。この操作は、発色を呈する波長域が可視光の場合に限らず、すべての場合について必要である。その後、サンプルを吸入口102から吸入して検査用空間104内に導入し、検査項目についての発色試薬が固定された検査用媒体112にサンプルを浸潤させ、その後、数秒の後に検査項目についての発色の程度を定量する。検査用媒体112へのサンプルの浸潤については、マイクロサンプリングチップ100内にサンプルを吸入し、検査用媒体112にサンプルを浸潤させた後、すぐにサンプルを排出して検査用媒体112の発色を確認するほうがよい場合も存在する。
【0066】
検査装置120の外面には、測定回路126による測定結果を表示するための表示部128が設けられている。検査装置120はさらに、マイクロサンプリングチップ100の基端面のポンプ部8の弾性壁面(弾性シート116)を押圧するための押圧機構132を備えている。押圧機構132は、弾性シート116に対して垂直に設けられた押圧棒130をその軸方向(図9において矢印の方向)へ駆動することによって、検査装置120に装着されたマイクロサンプリングチップ100のポンプ部108の弾性壁面の押圧とその押圧の解除を行なうように構成されたものである。図示は省略されているが、検査装置120の外面には、押圧機構132の駆動の動機となる信号を生成するためのスイッチが設けられており、作業者がそのスイッチを押すことで押圧機構132が駆動され、マイクロサンプリングチップ100のポンプ部108が駆動される。
【0067】
この実施例においても、押圧機構132として電動式のものを想定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、押圧棒130を手動で、すなわち作業者が検査装置120に設けられたレバー等を動かすことによって押圧棒130が動作するように構成されていてもよい。また、マイクロサンプリングチップ100のポンプ部8の弾性壁面を作業者が手指で押圧できるようになっているのであれば、必ずしも検査装置120に押圧機構132が設けられている必要はない。
【0068】
また、押圧機構132に、マイクロサンプリングチップ100を検査装置120から自動的に取り外すための取外し機能、すなわち、ポンプ部108を駆動する際よりも大きく駆動棒130を駆動させる機能をもたせるようにしてもよい。
【0069】
図10のグラフは、図1から図4を用いて説明したマイクロサンプリングチップ1内に濃度1ppmの鉛溶液を吸入し、図5の検査装置20を用いて電気化学測定を行なったときの測定データである。測定方法は微分パルスボルタメトリー(DPV)であり、グラフは−1500mVから250mVまで掃引したものである。このグラフにおいて、鉛のDPVピークが現れており、鉛を適切に検出できていることがわかる。
【0070】
図11に示された表は、図9の検査装置120による測定データの一例である。この測定は、マイクロサンプリングチップ100の検査用空間104内に1〜11の検査項目用の試薬を浸み込ませた検査用媒体112を配置し、各検査項目の数値を以下のとおりに調整したサンプルを検査用ピペットチップ2内に吸引して実施した。
(1)ウロビリノーゲン 2.0mgl/dL
(2)潜血 20個/μL
(3)タンパク質 100mg/dL
(4)ブドウ糖 250mg/dL
(5)ケトン体 30mg/dL
(6)ビリルビン 1.0mg/dL
(7)アルブミン 100mg/dL
(8)比重 1.03
(9)白血球 100個/dL
(10)pH pH7
(11)クレアチニン 150mg/dL
【0071】
図11のR、G、Bは各検査項目用の検査用媒体112の色調について画像解析により得られた赤色成分、緑色成分、青色成分の強度である。「測定前」とは、サンプルを検査用媒体112に接触させる前のことを意味し、「測定後」とは、サンプルを検査用媒体112に接触させた後のことを意味する。この測定データからわかるように、「測定前」と「測定後」で各検査用媒体8の色調が種々に変化していることが数値によって示されており、複数の検査項目を同時に測定できていることがわかる。上記のようにR・B・Gによって数値化されたデータは、その特性上、通信機能を持つ携帯電話やその他の機器に転送して評価することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,100 マイクロサンプリングチップ
2,102 吸入口
4,104 検査用空間
6,10,106,110 微細流路
8,108 ポンプ部
9,109 ポンプ部の内部空間
12 測定用電極
12a 端子(マイクロサンプリングチップ側)
14 窪み
15 隔壁
16,116 弾性シート(弾性壁面)
20,120 検査装置
22 先端部(チップ保持部)
24 端子(検査装置側)
26,126 測定回路
28,128 表示部
30,130 押圧棒
32,132 押圧機構
112 検査用媒体
113 透明シート
114 突起
122 穴(チップ保持部)
124 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11