(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、成形が容易であり、種々の形態に容易に成形できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面がポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルで形成されているボトルは、各種飲料、食油、調味液等を収容するための容器として好適に使用されている。
【0003】
ところで、特に粘度の高い液体を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出し且つボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、内容液に対してボトル内面が高い滑り性を示すことが求められる。
【0004】
最近になって、樹脂製の基材表面に液層を形成することによって、粘稠な物質に対する滑り性を高める技術が種々提案されている(例えば特許文献1,2)。
かかる技術によれば、基材表面を形成する樹脂に滑剤などの添加剤を加える場合と比して、滑り性を飛躍的に高めることができるため、現在注目されている。
【0005】
しかしながら、上記のように樹脂製表面に液層を形成して表面特性を改質する手段では、改質された表面特性を長期にわたって持続させることが困難であるという問題がある。即ち、液層を形成している液体が、徐々に下地の樹脂層中に徐々に浸透拡散していき、この結果、経時と共に、改質された表面特性が消失していくこととなる。
【0006】
尚、本出願人は、上記のような液層による表面特性の経時的消失を回避するために、容器内面の液層の下地樹脂層の下側に液の浸透拡散を防止する液拡散防止層を設けることを提案している(特願2013−109059)。
【0007】
特許文献3には、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対してHLBが5.0以下の添加剤を0.3〜3重量部の範囲内で配合した組成物からなる包装材が提案されている。
【0008】
一方、特許文献3の包装材は、チョコレートクレーム、カスタードクリームなどの乳化系内容物に対する剥離性に優れているというものである。即ち、この包装材には、このような乳化系内容物が付着しにくく、例えば蓋材の内面などに内容物が多量に付着するなどの不都合を回避できるというものである。
しかしながら、本発明者等の研究によると、このような組成物から形成された容器では、ケチャップなどの流動性内容物に対する滑り性を高めるには至っていないことが判った。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.包装体内面材;
かかる包装体において、内面を形成する下地樹脂は、成形可能な任意の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってよいが、一般的には、成形が容易であり且つ滑り性向上剤層を脱落することなく安定に保持できるという観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものを例示することができる。
オレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など;
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸など;
勿論、成形性が損なわれない限り、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物を、下地樹脂として使用することもできる。
【0021】
本発明においては、上記の熱可塑性樹脂の中でも、特に滑り性向上剤層に対する親和性が高く、高い濡れ性を示し、均一な厚みの滑り性向上剤層を表面全体に形成できるという点で、オレフィン系樹脂が好適である。
【0022】
特に、上記のオレフィン系樹脂は、PET等のポリエステル樹脂と比較してガラス転移点(Tg)が低く(一般に0℃以下)、室温下での分子の運動性が高いため、食用油などの液層を表面に形成する場合には、液層を形成する液体が内部に浸透拡散し易く、液層の経時的消失を生じ易いが、本発明は、流動性内容物が収容されており且つ低温環境下で保管される包装体であるため、このようなオレフィン系樹脂により表面が形成されている場合にも、このような経時的消失の問題はほとんど生じない。
【0023】
上記のような点を考慮して、特に本発明の構造体を包装体の用途に適用する場合には、前述した種々の熱可塑性樹脂の中でも、オレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が好適に使用され、特に業務用の袋状の包装体として使用する場合には、オレフィン系樹脂が内面樹脂として最適である。
【0024】
2.滑り性向上剤
滑り性向上剤としては、内容物に対して非混和性の液体が使用される。内容物に対して混和性であると、包装体内面に形成した滑り性向上剤が内容物と混ざり合ってしまい、包装体内面から脱落してしまうこととなるからである。
ところで、内容物と非混和性である液体とは、内容物と混和しなければよいのであり、大まかにいうと、水性の内容物に対しては親油性の液体が使用され、油性の内容物に対しては水或いは親水性液体である。一般的には、包装体内に内容物を充填した後、内容物を排出し且つ内容物を選択的に抽出除去した後、包装体内面に対する表面張力が、内容物と大きく異なるものほど、潤滑効果が高く、本発明には好適である。
さらに液体の曇点としては、−20℃〜10℃のものが好ましく、液体の温度を曇点以下に冷却することにより、液体の分子運動性が低下し、一部成分が凝固するため、液体が樹脂内部へ浸透するのを長期間に亘って抑制することができる。
しかし、曇点以上の温度であっても、保管環境温度を曇点付近の温度(該保管環境温度t、滑り性向上剤の曇点cとしたときの関係がt<c+30を満たす温度領域)にすることで、液体の樹脂内部への浸透を所望の期間抑制することができる。
これは液体を冷却することで、液体中の分子の運動エネルギーが樹脂中へ浸透拡散するのに必要なエネルギー値以下に低下するためである。従って、液体の曇点が−20℃〜10℃のものであれば、一般的な低温保管環境温度域(冷蔵温度領域(10℃以下)やチルド温度領域(5℃以下)、冷凍温度領域(−15℃以下))においても、樹脂中への液体の浸透拡散が抑制することができ、表面特性を長期に亘って維持することができる。
また、かかる液体は、当然、不揮発性であることが好ましく、包装体成形時や包装体を大気に曝した状態においても、揮散しないような蒸気圧を有するものが好適に使用される。
【0025】
本発明において、好適に使用される滑り性向上剤としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂などを挙げることができる。特に好ましいものは、中鎖脂肪酸トリグリセライド、グリセリントリオレート及びグリセリンジアセトモノオレートに代表されるグリセリン脂肪酸エステル、並びに流動パラフィンである。これらは、揮散し難く、しかも、食品添加物として認可されており、さらには、無臭であり、内容物のフレーバ−を損なわないという利点もある。
【0026】
滑り性向上剤層の被覆量は、室温(23℃)で0.2〜50g/m
2の被覆量であることが好ましい。この量が少ないと、包装体内面に良好な滑り性を確保することが困難となってしまうからである。また、この量が多いと、液だれが生じてしまったり、内容品特性に影響を及ぼすことになる。
【0027】
因みに、含液膜構造体10における下地樹脂層1の表面での液膜3の被覆率Fは、下記式(1):
F=(cosθ−cosθ
B)/(cosθ
A−cosθ
B) (1)
式中、θは、下地樹脂層1(表面改質液を含む下地樹脂組成物により形成されている
層)の表面での水接触角であり、
θ
Aは、表面改質液上での水接触角であり、
θ
Bは、下地樹脂上での水接触角である、
で表されるが、本発明では、この被覆率Fは1.0であり、下地樹脂層1の全体にわたって液膜3を形成することができる。
なお、本発明でいう曇点とは、試料を規定の方法でかき混ぜないで冷却したとき、パラフィンその他の固体が析出、分離し始める温度をいう。JISのK2269(原油および石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準ずる。
【0028】
3.流動性内容物
本発明の包装体に収容される内容物は、流動性物質であり、形態保持性を示さずに流動性を示すものである限り特に制限されるものではないが、一般的には、粘稠なペースト乃至スラリー状の流動性物質(例えば25℃での粘度が100cps以上のもの)、具体的には、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、ヨーグルト、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンスなどが好適である。即ち、本発明の包装体は良好な滑り性を示すため、このような粘稠な流動性物質であっても、包装体を傾倒或いは倒立させることにより、包装体の内面に付着残存させることなく、速やかに排出することができるからである。
本発明の包装体は、上記の中でも、特に粘度の高いものに対して高い滑り性を示し、短時間で内容物が包装体内面を滑って落下するという性質を示し(落下速度が速い)、粘度の低いものに対しては、特に包装体内面に残存させず、きれいに内容物を落下させる性質を示す。
【0029】
4.その他の添加剤;
上述した包装体の用途等に応じて、それ自体公知の各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤が配合されていてもよく、さらに、透明性が要求されない用途においては、顔料乃至染料等の着色剤を配合することもできる。さらに、結晶性の添加剤(酸化チタンなどの無機酸化物や各種ワックス類)を配合することも可能である。
但し、このような添加剤の配合量は、被覆量が前述した範囲に維持され、しかも成形性が損なわれず、さらに、包装体内面の滑り性が損なわれない程度の少量とすべきである。
【0030】
5.構造体の層構造;
本発明の構造体は、上述した滑り性向上剤の層が内表面に形成されている限りにおいて、その層構造は制限されない。
例えば、本発明の包装体は、内面樹脂のみによる単層構造の上に滑り性向上剤の層を有していてもよい。ただし、内面樹脂に対する飽和含有量以上の滑り性向上剤をコーティングして室温に長時間置いた場合、樹脂へ拡散浸透が進行し、外表面ににじみ出てべたつくので、単層樹脂を厚くする或いは被覆量が制限されることになる。そこで、外表面へのにじみ出しを抑制するため、内側と外側からなる二重フィルム状の包装袋を使用する。即ち、フィルム間に滑り性向上剤が貯留されて、外側フィルムへの拡散浸透を遅らすることができるので、流動性内容物を排出した後の廃棄処理など作業性がよい。
尚、本発明において、樹脂の飽和含浸量とは、該樹脂が液体を吸収し得る最大量を意味し、液体の種類によって異なり、樹脂に液体を加熱混合したサンプルを一定期間静置し被覆率Fが最大になる点を測定し、液体の添加量を徐々に増やして、最大被覆率が変化しなくなる量を飽和含浸量とする。
内面樹脂をガラスや金属、或いは紙等に塗布して下地樹脂層が形成されている構造とすることも可能であるし、さらに、他の樹脂層と積層した多層構造とすることも可能である。何れにしろ、内面に滑り性向上剤の層が形成されていればよい。尚、内面は樹脂に限らず、金属、紙、ガラスであってもよい。
【0031】
上記のような多層構造としては、例えば、滑り性向上剤の層が設けられた内面側とは反対側の面に、適宜接着剤樹脂の層を介して、酸素バリア層や酸素吸収層を積層し、さらに、下地樹脂と同種の樹脂を積層した構造を例示することができる。
かかる多層構造での酸素バリア層は、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアミドなどの酸素バリア性樹脂により形成されるものであり、その酸素バリア性が損なわれない限りにおいて、酸素バリア性樹脂に他の熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
また、酸素吸収層は、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。
さらに、各層の接着のために使用される接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。
上述した各層の厚みは、各層に要求される特性に応じて、適宜の厚みに設定されればよい。
さらに、上記のような多層構造の構造体を成形する際に発生するバリ等のスクラップをオレフィン系樹脂等のバージンの樹脂とブレンドとしたリグライド層を内層として設けることも可能である。
【0032】
6.構造体の形態;
本発明の構造体は、種々の形態を有することができるが、特に液層を形成する液体の選択により粘稠な流動性内容物に対する滑り性を向上させることができることから、包装容器や蓋材、キャップなどの包装材の形態で使用されることが好ましい。
例えば、このような包装体の形態は特に制限されず、カップ乃至コップ状、ボトル状、袋状(パウチ)、シリンジ状、ツボ状、トレイ状、二重構造状、二重フィルム袋状、包装体材質に応じた形態を有していてよく、延伸成形されていてもよい。
【0033】
このような包装体は、前述した内面を有する前成形体をそれ自体公知の方法により成形し、これを、ヒートシールによるフィルムの貼り付け、プラグアシスト成形等の真空成形、ブロー成形などの後加工に付して包装体の形態とし、さらに、先にも簡単に述べたように、その形態に応じて、塗布或いは使用する温度環境下において液状となっている滑り性向上剤を、スプレー噴霧、或いはローラやナイフ、スピンコーターなどを用いての塗布により、内面の下地表面に施すことにより、滑り性向上剤を内面に備えた包装体の形態とすることができる。
【0034】
図1には、本発明の構造体の最も好適な形態であるダイレクトブローボトルが示されている。
即ち、
図1において、全体として10で示されるこのボトルは、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10の内面に前述した液層が形成され、且つ粘稠な内容物が充填されることとなる。
【実施例】
【0035】
本発明を次の実施例にて説明する。
【0036】
1.液体被覆率の測定
23℃50%RHの条件下で、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、後述の方法で作成したフィルムの液膜が形成された面が上になるように試験台に固定し、3μLの純水をフィルムにのせ、作成した直後および1日後、2日後、6日後、7日後の水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、ボトル内面の潤滑液の被覆率を求めた。
F=(cosθ−cosθ
B)/(cosθ
A−cosθ
B) (1)
式中、θは、後述の方法で作成したフィルムの液膜が形成されている面について、
大気圧中で測定された水接触角であり、
θ
Aは、液膜を形成する油性液体について、大気圧中で測定された水接触角であり、
θ
Bは、液膜を支持するフィルムについて、大気圧中で測定された水接触角である。
油性液体の被覆率Fを求めるにあたり、θAとθBの値として、下記水接触角の値を用いた。
θ
A:80.3°
(中鎖脂肪酸トリグリセライドの液膜上での値)
θ
B:液体を形成する前のフィルムを用いて測定した水接触角の値
【0037】
2.付着試験
後述の方法で作成したフィルムの液膜が形成された面に、約2gの内容物をのせて傾けた際の内容物の付着性を目視にて評価した。内容物が付着しなかったものを◎、付着したものを×とした。
用いた内容物を下記に示す。なお、内容物の粘度として音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値を示した。
用いた内容物;
ケチャップ(トマトケチャップ、カゴメ(株)製、粘度=1050mPa・s)
ソース(お好みソース、オタフクソース(株)製、粘度=560mPa・s)
【0038】
<実施例1>
ラボプラストミルを使用して、樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)を押出機A、Bに供給し、温度210℃のリングダイヘッドより押し出し、内層、外層共にLDPEからなる円筒状の二層フィルムを作製した。フィルムの膜厚を顕微鏡にて測定したところ、内側は約60μm、外側は約70μm、全体で約130μmであった。
作製したLDPEフィルムから120mm×120mmの断片を切り出し、スピンコーター(MS−A200、ミカサ(株)製)の回転台に取り付けた。液体として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)(表面張力28.8mN/m、粘度33.8mPa・s)をスピンコーター(塗布条件:5000rpm、600sec)により塗布し、塗布後すぐに温度−20℃で保管した。MCTの塗布前後のフィルムの重量変化から、MCTの塗布量を算出した。また、作成したフィルムを用いて、作成した直後および1日後、2日後の液体被覆率の測定及び作成してから2日後の付着試験を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<実施例2>
保管温度を5℃とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作成し、作成した直後および1日後、2日後の液体被覆率の測定及び作成してから2日後の付着試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
<比較例1>
保管温度を22℃とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作成し、作成した直後および1日後、2日後の液体被覆率の測定及び作成してから2日後の付着試験を行った。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例3>
スピンコーターの塗布条件を5000rpm、60secとした以外は実施例1と同様にしてフィルムを作成し、作成した直後および6日後、7日後の液体被覆率の測定及び作成してから7日後の付着試験を行った。結果を表1に示す。
【0042】
<実施例4>
保管温度を5℃とした以外は実施例3と同様にしてフィルムを作成し、作成した直後および6日後、7日後の液体被覆率の測定及び作成してから7日後の付着試験を行った。結果を表1に示す。
【0043】
<比較例2>
保管温度を22℃とした以外は実施例3と同様にしてフィルムを作成し、作成した直後および6日後、7日後の液体被覆率の測定及び作成してから7日後の付着試験を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
滑り性向上剤の塗布量が0.5g/m
2以下であり、保管温度を−20℃、5℃、22℃としたときの液体被覆率の経時変化を示したものを
図2に示す。22℃で保管した場合(比較例1)は、液体被覆率が液体を塗布した直後から減少しはじめ、初期は90%以上あったものが、2日後には5%にまで低下し、液膜が樹脂中に浸透拡散したものと考えられる。一方で−20℃及び5℃で保管した場合には、いずれの温度においても液体被覆率はほとんど変化せず、2日後も90%以上の高い液体被覆率を維持していることがわかる。
また、液体を厚膜にした場合(滑り性向上剤の塗布量が0.5g/m
2以上)でも、同様に22℃で保管した場合には7日後には液体被覆率が低下し液膜が樹脂中に浸透拡散したものと考えられるが、−20℃及び5℃で保管した場合には7日後でも高い液体被覆率を維持していることがわかる(
図3)。
さらに表1の付着試験の結果から、−20℃及び5℃で保管することでフィルム表面の特性を維持することが可能であることがわかる。
以上の結果から、低温環境下で保管することにより、液体の樹脂中への浸透拡散を防止し、表面特性を長期間にわたって安定に発揮することが可能であることがわかる。