(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記xy色度図において、前記第1の色度と前記第2の色度と前記第3の色度と前記所定の色度との差が0.015以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
前記第1の波長が430.0nm〜445.0nmの波長範囲に含まれ、前記第2の波長が465.0nm〜480.0nmの波長範囲に含まれ、前記第3の波長が445.0nm〜465.0nmの波長範囲に含まれることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
前記xy色度図において、前記第1の色度と前記第2の色度と前記第3の色度とが、それぞれ、x,y±0.01の色度ランクを有することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置などを下記のものに特定するものではない。この発明の実施形態は、請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
なお、後述する第1の実施形態においては、少なくとも異なる3波長帯分の青色発光素子を備えた発光装置として、3つの発光ユニットを備えた発光装置を例示して説明する。また、第2の実施形態においては、この第1の実施形態に係る発光装置を1セットとし、複数セット分の発光装置を実装した照明装置について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る発光装置1は、
図1に示すように、第1の色度C1の白色光(出力光)L1を出力する第1の発光ユニット10と、第2の色度C2の白色光L2を出力する第2の発光ユニット20と、第3の色度C3の白色光L3を出力する第3の発光ユニット30とを備える。第3の発光ユニット30は、例えば、第1の発光ユニット10及び第2の発光ユニット20の相互間に配置されている。
【0018】
図1の発光装置1は、第1の発光ユニット10の白色光L1と第2の発光ユニット20の白色光L2と第3の発光ユニット30の白色光L3とを混色(合成)して、所定の色度の合成光(白色光)を出力する。第1の発光ユニット10と第2の発光ユニット20と第3の発光ユニット30は、白色光L1と白色光L2と白色光L3とが混色する範囲に近接して配置される。
【0019】
詳細については後述するが、xy色度図において、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3は所定の色度に対してほぼ一定の距離に位置し、第1の色度C1、第2の色度C2、第3の色度C3と所定の色度との差はそれぞれ0.04以下とされる。
【0020】
なお、説明の便宜上、第1の色度C1、第2の色度C2、第3の色度C3はいずれも色度点として記載しているが、実際には、それぞれの色度中心に対してマクアダム4ステップ程度で製造し、マクアダム3ステップになるように組み合わせて使用している。
【0021】
また、第1の色度C1、第2の色度C2、第3の色度C3と所定の色度との差とは、所定の色度から第1の色度C1、第2の色度C2、第3の色度C3のそれぞれの色度位置までの長さを指す。第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3は、所定の色度を挟んでほぼ等距離の位置にあるが、所定の色度の位置から第1の色度C1、第2の色度C2、第3の色度C3までのそれぞれの長さは、白色光L1、白色光L2、白色光L3の明るさに応じて定められる。
【0022】
ここで、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3は、所定の色度を始点とし、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3をそれぞれ終点とする各線分のなす角がおのおの120度とされて、ほぼ正三角形を形成する各頂点の位置とされる(詳細については後述する)。
【0023】
図1において、第1の発光ユニット10は、第1の波長を発光スペクトルのピーク波長とする第1の出射光を出射する第1の青色発光素子11、及び、第1の出射光に励起されて第1の励起光を出射する第1の蛍光体層12を有する。第1の発光ユニット10は、第1の出射光と第1の励起光とが混色された、第1の色度C1の白色光L1を出力する。第1の蛍光体層12には、第1の発光ユニット10から第1の色度C1の白色光L1が出力されるように設定された成分や配合比率で、緑色蛍光体12Gや赤色蛍光体12Rなどの蛍光体が含まれている。したがって、第1の発光ユニット10は、第1の青色発光素子11から出射される青色光と、緑色蛍光体12Gから出射される緑色光と、赤色蛍光体12Rから出射される赤色光とが混色された出力光を出力する。
【0024】
第2の発光ユニット20は、第2の波長を発光スペクトルのピーク波長とする第2の出射光を出射する第2の青色発光素子21、及び、第2の出射光に励起されて第2の励起光を出射する第2の蛍光体層22を有する。第2の発光ユニット20は、第2の出射光と第2の励起光とが混色された、第2の色度C2の白色光L2を出力する。第2の蛍光体層22には、第2の発光ユニット20から第2の色度C2の白色光L2が出力されるように設定された成分や配合比率で、緑色蛍光体22Gや赤色蛍光体22Rなどの蛍光体が含まれている。したがって、第2の発光ユニット20は、第2の青色発光素子21から出射される青色光と、緑色蛍光体22Gから出射される緑色光と、赤色蛍光体22Rから出射される赤色光とが混色された出力光を出力する。
【0025】
第3の発光ユニット30は、第3の波長を発光スペクトルのピーク波長とする第3の出射光を出射する第3の青色発光素子31、及び、第3の出射光に励起されて第3の励起光を出射する第3の蛍光体層32を有する。第3の発光ユニット30は、第3の出射光と第3の励起光とが混色された、第3の色度C3の白色光L3を出力する。第3の蛍光体層32には、第3の発光ユニット30から第3の色度C3の白色光L3が出力されるように設定された成分や配合比率で、緑色蛍光体32Gや赤色蛍光体32Rなどの蛍光体が含まれている。したがって、第3の発光ユニット30は、第3の青色発光素子31から出射される青色光と、緑色蛍光体32Gから出射される緑色光と、赤色蛍光体32Rから出射される赤色光とが混色された出力光を出力する。
【0026】
ここで、「ピーク波長」とは、発光スペクトルにおける強度のピーク値の波長である。
【0027】
通常、第1の蛍光体層12と第2の蛍光体層22と第3の蛍光体層32とでは、含まれる蛍光体の成分や配合比率などが異なる。なぜなら、第1の青色発光素子11と第2の青色発光素子21と第3の青色発光素子31とでは、発光スペクトルのピーク波長が異なる。例えば、第3の青色発光素子31の出射光のピーク波長である第3の波長は、第1の青色発光素子11の出射光のピーク波長である第1の波長よりも長く、且つ、第2の青色発光素子21の出射光のピーク波長である第2の波長よりも短い。後述するように、第1の波長と第2の波長の差は20nm以上であることが好ましい。
【0028】
以下において、第1の青色発光素子11と第2の青色発光素子21と第3の青色発光素子31を総称して「青色発光素子」という。青色発光素子は、例えばInGaN系の青色LEDチップである。
【0029】
第1の発光ユニット10は、例えば
図1に示すように、凹部を有する第1のパッケージ13の凹部底面に、第1の青色発光素子11が配置された構造である。第1のパッケージ13の凹部は、第1の蛍光体層12により充填されている。第2の発光ユニット20も第1の発光ユニット10と同様な構成であり、凹部を有する第2のパッケージ23の凹部底面に第2の青色発光素子21が配置され、第2のパッケージ23の凹部は第2の蛍光体層22により充填されている。第3の発光ユニット30も第1,第2の発光ユニット10,20と同様な構成であり、凹部を有する第3のパッケージ33の凹部底面に第3の青色発光素子31が配置され、第3のパッケージ33の凹部は第3の蛍光体層32により充填されている。
【0030】
第1の蛍光体層12と第2の蛍光体層22と第3の蛍光体層32には、蛍光体を含有するシリコン樹脂などが使用される。以下において、第1の発光ユニット10と第2の発光ユニット20と第3の発光ユニット30とを総称して「発光ユニット」という。
【0031】
第1のパッケージ13と第2のパッケージ23と第3のパッケージ33は、基板40上に実装されている。基板40には、図示を省略した電気配線が配置されており、この電気配線に第1の青色発光素子11と第2の青色発光素子21と第3の青色発光素子31とがそれぞれ接続されている。電気配線によって電圧を印加することによって駆動電流が流れ、第1の青色発光素子11と第2の青色発光素子21と第3の青色発光素子31とが発光する。
【0032】
既に述べたように、第1の青色発光素子11と第2の青色発光素子21と第3の青色発光素子31とでは、発光スペクトルのピーク値の波長が異なる。このため、後述する等色関数x−barサブピークに対応した青色光領域のスペクトル設計が可能となり、結果として低くなりがちな演色評価数R9(赤)、R12(青)を高くできる。
【0033】
次に、ピーク波長の異なる少なくとも3つの青色発光素子をそれぞれ用いて得られる白色光の混色について、以下に説明する。なお、
図2は、第1の青色発光素子11と第1の蛍光体層12とを用いて得られる第1の発光ユニット10による白色光L1の発光スペクトルと、第2の青色発光素子21と第2の蛍光体層22とを用いて得られる第2の発光ユニット20による白色光L2の発光スペクトルと、第3の青色発光素子31と第3の蛍光体層32とを用いて得られる第3の発光ユニット30による白色光L3の発光スペクトルとを対比して示すものである。
図3は、各白色光L1,L2,L3を混色させて得た所定の色度の白色光(出力光)の発光スペクトルTLを、CIE昼光色スペクトルNLと対比して示すものである。
図2及び
図3において、横軸は波長であり、縦軸は分光分布強度である。また、「CIE昼光色スペクトルNL」とは、黒体放射による発光や太陽光(自然光)のような連続した基準光スペクトルである。
【0034】
図2に示すように、青色LEDチップの分布波長帯を430.0nm〜480.0nmとした場合において、第1の発光ユニット10は、その白色光L1の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が短波長領域、例えば430.0nm〜445.0nm程度となるように、第1の青色発光素子11と第1の蛍光体層12との組み合わせが設定される。第2の発光ユニット20は、その白色光L2の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が長波長領域、例えば465.0nm〜480.0nm程度となるように、第2の青色発光素子21と第2の蛍光体層22との組み合わせが設定される。第3の発光ユニット30は、その白色光L3の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が中波長領域、例えば445.0nm〜465.0nm程度となるように、第3の青色発光素子31と第3の蛍光体層32との組み合わせが設定される。
【0035】
これにより、
図3に示すように、白色光L1と白色光L2と白色光L3とを混色させた白色光のスペクトルTLを、CIEで定めた平均演色評価数Raが指数100のCIE昼光色スペクトルNLに近似させることが可能となる。
【0036】
図4は、本実施形態の発光装置1との対比のために示すもので、これは本発明者らが先に発明した、2つの異なるピーク波長をもつ青色素子を用いた高演色性の発光装置2である(例えば、特開2016−219519号公報参照)。なお、
図4(a)は、第1の発光ユニット10と第2の発光ユニット20とが基板40上に実装された発光装置2を比較例として示す模式図であり、
図4(b)は、この比較例の発光装置2の白色光の発光スペクトルDLをCIE昼光色スペクトルNLと対比して示すグラフである。ここで、
図4(b)の横軸は波長であり、縦軸は分光分布強度である。ただし、比較例の発光装置2において、第1の発光ユニット10は、例えば、その白色光L1の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が440.0nm〜442.5nm程度となるように調整され、第2の発光ユニット20は、例えば、その白色光L2の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が465.0nm〜467.5nm程度となるように調整されている。
【0037】
図4(b)のグラフからも明らかなように、比較例の発光装置2の場合、特に等色関数の青色光領域(図中に、BAで示す青色波長帯)において、スペクトルDLにおける、白色光L1の発光スペクトル及び白色光L2の発光スペクトルのスペクトル形状(凹凸波形)が、CIE昼光色スペクトルNLから大きく外れている。
【0038】
即ち、
図3に示した本実施形態の発光装置1によれば、白色光L3の波長を精査することによって、スペクトルTLの青色波長帯の領域に対応する、白色光L1の発光スペクトルと白色光L2の発光スペクトルとの谷間の部分を、さらにCIE昼光色スペクトルNLに寄せることが可能になる。したがって、個々の白色光L1,L2,L3の演色性は低くとも、最終的には高演色性の合成光を自然光により近い白色光とすることができる。
【0039】
図5(a)は、本実施形態の発光装置1における演色評価数を例示するものであり、
図5(b)は、比較例の発光装置2における演色評価数を例示するものである。ただし、
図5(a)は、本実施形態の発光装置1の、第1の発光ユニット10の白色光L1の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が440.0nm〜445.0nm程度となるように調整し、第2の発光ユニット20の白色光L2の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が472.5nm〜475.0nm程度となるように調整し、第3の発光ユニット30の白色光L3の発光スペクトルにおける分光分布強度のピーク波長が452.5nm〜455.0nm程度となるように調整した場合の例である。
【0040】
また、詳細については後述するが、
図5(a)は、第1の発光ユニット10の第1の色度C1と第2の発光ユニット20の第2の色度C2と第3の発光ユニット30の第3の色度C3と所定の色度との差を、それぞれ0.015以上、0.04以下とした場合の例である。
【0041】
本実施形態に係る発光装置1のような構成とすることによって、
図5(a)からも明らかなように、特殊演色評価数Ri(i=9〜15)のうち、特に演色評価数R9,R12の値について、さらなる向上が期待できる。
【0042】
即ち、
図4(a)に示す比較例の発光装置2の場合、
図5(b)に示すように、超高演色な近紫外ないしは紫色LEDチップを用いた発光装置の場合よりも発光効率が高くて、紫外線劣化を抑制できるものの、紫色励起方式のように、分光放射分布を太陽光の放射スペクトル(基準光スペクトル)に近づけるには限界がある(
図4(b)参照)。
【0043】
以下においては、近紫外ないしは紫色LEDチップを用いた発光装置の場合を「紫色励起方式」と称するのに対し、青色LEDチップを用いた発光装置の場合を「青色励起方式」と称する。また、「演色性」とは、照明光の基準光との色差ΔEにより定量化(数値化)されるもので、被照物を太陽光(基準光)で照らしたときに見えるような色合いを再現できる度合いを示すものである。より再現性の高い白色光を「高演色」と称し、特に、平均演色評価数Raの値が95以上(Ra≧95)であり、演色評価数Ri(i=9〜15)の値が90よりも大きい(Ri>90)ときに、「超高演色」と称する。
【0044】
なお、演色性の決め手となる要素としては、照明光などの光源の場合には分光放射分布(放射スペクトル)が、被照物の場合には分光反射率が、視覚的には錐体分光感度(等色関数)が挙げられる。
【0045】
ここで、演色評価数Riとは、太陽光(基準光)を100とし、CIEの定めた15種類の試験色R1〜R15の色差ΔEを減じたもので、下記式(1)によって求められる。
【0046】
Ri=100−4.6×ΔE(i=1〜15) … (1)
ただし、色差ΔE=(基準光下での色合い)−(照明光下での色合い)である。
【0047】
また、平均演色評価数Raは、演色評価数R1〜R8の平均値であって、下記式(2)によって求められる。
【0048】
Ra=(R1+R2+…+R8)/8 … (2)
次に、青色励起方式の発光装置において、より高演色化できるようにするための方法について説明する。
【0049】
上述したように、比較例の発光装置2のような構成とした場合、紫色励起方式の場合のように、分光放射分布を太陽光の放射スペクトルに近似させるだけでは高演色化できないことが分かった。
【0050】
そこで、本実施形態に係る発光装置1においては、
図6に示すように、等色関数(≒錐体分光分布)の赤色系のx−bar関数のサブピークSPに着目した。このサブピークSPは、
図6に示すように、青色波長帯(例えば、435.0nm〜480.0nm)BSの付近に現れる。これは、主に赤色波長帯に対して感度をもつ関数は、青色波長帯に対しても、ある程度の感度をもつということである。したがって、3つ以上の青色発光素子の波長及びスペクトルを精査することによって、比較例の発光装置2で得られる以上の高い演色性、とりわけ演色評価数R9,R12のさらなる向上が期待できる。
【0051】
即ち、比較例の発光装置2は、
図7(b)に示すように、発光スペクトルのピーク強度が白色光L1と白色光L2とで示されるのに対し、本実施形態に係る発光装置1は、
図7(a)に示すように、発光スペクトルのピーク強度が白色光L1と白色光L2と白色光L3とで示される。このように、3波長帯分の白色光L1,L2,L3を採用することによって、スペクトル形状をより精細に制御することが可能となる。その結果、演色評価数R9,R12に対するブレークスルー、つまり、等色関数に対応する青色のスペクトル形状をより最適化できる。
【0052】
ここで、青色LEDチップの発光スペクトルを変化させて、演色評価数R9,R12がどう変化するかをシミュレーションした結果について説明する。
【0053】
図8は、青色波長帯BS内で青色LEDチップのピーク波長を仮想的に変化させた場合の、演色評価数R9,R12の青色ピーク波長依存性についての、シミュレーション結果を示すものである。
図8(b)に示すように、青色LEDチップのピーク波長BS1を矢印PWに沿ってピーク波長BS2へと変化させると、それに伴って、
図8(a)に示すように、ピーク波長が458.5nm付近のときに、演色評価数R9の値が93(Max.)となった。ただし、演色評価数R12は全域で90よりも小さい値であった。
【0054】
図9は、青色スペクトル半値幅増加依存性についてのシミュレーション結果を示すものである。
図9(b)に示すように、例えば青色LEDチップのピーク波長λpを460.0nmに固定し、矢印HWに沿ってスペクトルBSa,BSb,BSc,…の幅を仮想的に増加させると、
図9(a)に示すように、演色評価数R12の値は単調に増加した。ただし、演色評価数R9の値は飽和状態であった。
【0055】
これらのシミュレーション結果より、少なくとも3個以上の狭半値幅である青色LEDチップを組み合わせ、等色関数に対応した青色LEDチップの分布する波長(帯)領域のスペクトル形状を最適化することで、演色評価数R9,R12の値を向上できることがわかった。即ち、各青色LEDチップの発光波長とスペクトル半値幅とを最適化することで、より演色性の高い白色光の出力が可能となる。
【0056】
次に、発光ユニットの狙い色度について説明する。
【0057】
図10は、本実施形態に係る発光装置1を例に示すxy色度図である。なお、このxy色度図は、発光装置1の合成光の色温度BCを5000K、第1の発光ユニット10の第1の青色発光素子11の第1の波長を435.0〜445.0nm、第2の発光ユニット20の第2の青色発光素子21の第2の波長を465.0〜475.0nm、第3の発光ユニット30の第3の青色発光素子31の第3の波長を445.0〜465.0nmとした場合の例である。
【0058】
本実施形態に係る発光装置1において、第1の発光ユニット10の狙い色度は、
図10のxy色度図に示すように、所定の色度SSとの差(線分S10)が0.04以下の所望の色度位置(第1の色度C1)に定められる。第2の発光ユニット20の狙い色度は、
図10のxy色度図に示すように、所定の色度SSとの差(線分S20)が0.04以下の所望の色度位置(第2の色度C2)に定められる。第3の発光ユニット30の狙い色度は、
図10のxy色度図に示すように、所定の色度SSとの差(線分S30)が0.04以下の所望の色度位置(第3の色度C3)に定められる。
【0059】
即ち、本実施形態の発光装置1では、高演色性にとって最適なものとするために、白色光L1の色度が第1の色度C1であるように第1の発光ユニット10が形成され、白色光L2の色度が第2の色度C2であるように第2の発光ユニット20が形成され、白色光L3の色度が第3の色度C3であるように第3の発光ユニット30が形成される。
【0060】
また、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3は、所定の色度SSを始点とし、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3とをそれぞれ終点とする各線分S10,S20,S30のなす角がおのおの120度とされて、ほぼ正三角形の形状を保つ頂点の位置となる。
【0061】
ここで、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3は、所定の色度SSを中心色度とし、その中心色度から、線分S10,S20,S30を半径とする同一円周SA上に形成される、ほぼ正三角形の各頂点までの、線分S10,S20,S30上に位置することが望ましい。即ち、第1の色度C1と第2の色度C2と第3の色度C3は、所定の色度SSを挟んで、ほぼ等距離の位置(S10=S20=S30)にある。
【0062】
例えば、第1の発光ユニット10と第2の発光ユニット20と第3の発光ユニット30の明るさが同じ(1:1:1)と仮定した場合、その合成光の色度は、概ね三角形Tの中心となる。そこで、所定の色度SSの周囲に三角形Tの形状を保つようにして、第1の発光ユニット10の狙い色度と第2の発光ユニット20の狙い色度と第3の発光ユニット30の狙い色度とが決められる。
【0063】
なお、
図10に示したxy色度図において、第1の発光ユニット10の狙い色度と第2の発光ユニット20の狙い色度と第3の発光ユニット30の狙い色度とが異なるのは、白色光L1の発光スペクトルと白色光L2の発光スペクトルと白色光L3の発光スペクトルのスペクトル形状を調整するためである。
【0064】
また、xy色度図の、左下ほど低色度領域であり、この領域では、パッケージ内の蛍光体の量が少なく、ピーク波形が高くなる傾向にある。一方、右上ほど高色度領域であり、この領域では、パッケージ内の蛍光体の量が多く、ピーク波形が低くなる傾向にある。
【0065】
ここで、狙い色度の調整の方法について、
図11を参照して、さらに説明する。
【0066】
所定の色度SSに対する、第1の発光ユニット10の狙い色度と第2の発光ユニット20の狙い色度と第3の発光ユニット30の狙い色度の調整は、例えば
図11に示すように、大小の2種類の正三角形T1,T2を用いて行われる。
【0067】
本実施形態において、大きい正三角形T1は、各頂点が、所定の色度SSからの距離(例えば、0.04)を半径とする不図示の円周上に位置し、小さい正三角形T2は、各頂点が、所定の色度SSからの距離(例えば、0.015)を半径とする不図示の円周上に位置する。
【0068】
また、各頂点の色度に対しては、色度ランク(製造ばらつき)を考慮した範囲x,y±0.01が設けられる。即ち、大きい正三角形T1の各頂点を中心に、色度ランクを考慮した範囲x,y±0.01が、色度位置C1L,C2L,C3Lとされる。同様に、小さい正三角形T2の各頂点を中心に、色度ランクを考慮した範囲x,y±0.01が、色度位置C1S,C2S,C3Sとされる。
【0069】
したがって、第1の発光ユニット10の第1の色度C1の調整は、例えば
図11に示すように、所定の色度SSからの距離を、色度位置C1Sと色度位置C1Lとの間の線分11d上で行うことによって、第1の色度C1と所定の色度SSとの差を0.015以上0.04以下に設定できる。同様に、第2の発光ユニット20の第2の色度C2の調整は、例えば
図11に示すように、所定の色度SSからの距離を、色度位置C2Sと色度位置C2Lとの間の線分21d上で行うことによって、第2の色度C2と所定の色度SSとの差を0.015以上0.04以下に設定できる。同様に、第3の発光ユニット30の第3の色度C3の調整は、例えば
図11に示すように、所定の色度SSからの距離を、色度位置C3Sと色度位置C3Lとの間の線分31d上で行うことによって、第3の色度C3と所定の色度SSとの差を0.015以上0.04以下に設定できる。
【0070】
即ち、
図5(a)に示したように、高演色性を実現するためには、発光装置1において、所定の色度SSとの差を0.04以下にすることが好ましい。特に、所定の色度SSとの差が0.015以上の場合に、演色性を高くできる。このように、所定の色度SSとの差を0.015以上0.04以下にすることが、演色性を高くする上で有利である。
【0071】
なお、所定の色度SSとの差は0.015以上0.04以下に限定されるものではなく、また、第1の発光ユニット10と第2の発光ユニット20と第3の発光ユニット30の明るさに差がある場合には、第1の発光ユニット10と第2の発光ユニット20と第3の発光ユニット30の狙い色度をそれぞれ調整することによって、合成光の所定の色度SSを決定するようにしてもよい。
【0072】
上記したように、我々は、等色関数のx−bar関数(赤色系)のサブピークSPに着目した(
図6参照)。即ち、3波長帯分の青色LEDチップを用いることによって、演色評価数R9に影響する等色関数のx−bar関数のサブピークSPに対応した青色発光領域のスペクトル形状を最適化(精査)するようにしている。これに加えて、青色の発光スペクトルの形状を、より太陽光(黒体放射に近似)のスペクトル形状に近似させることが可能となる。したがって、高演色もしくは超高演色といった極めて高い演色性、とりわけ演色評価数R9,R12のさらなる向上が可能となる。
【0073】
なお、上述の第1の実施形態においては、蛍光体として、緑色蛍光体や赤色蛍光体などを含めるようにしたが、これに限らず、例えば青色蛍光体を含めることも可能である。赤色蛍光体としては、例えば、Eu
2+で賦活されたCaAlSiN
3:Eu
2+や(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu
2+などの窒化アルミニウム系蛍光体、又は、これに類するものを使用可能である。緑色蛍光体としては、例えば、Ce
3+で賦活されたLu
3Al
5O
12:Ce
3+、CaSc
2O
4:Ce
3+、又はこれに類するものや、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce
3+、Eu
2+で賦活された(Ba、Sr)Si
2O
2N
2:Eu
2+、又はこれに類するものなどを使用可能である。青色蛍光体としては、例えば、Eu
2+で賦活されたSr
4Al
14O
25:Eu
2+、BaSi
2O
2N
2:Eu
2+、又はこれに類するものを使用可能である。
【0074】
また、第3の発光ユニット30に限らず、例えば、第1の発光ユニット10の第1の青色発光素子11の第1の波長と第2の発光ユニット20の第2の青色発光素子21の第2の波長との差が20nm以上とされた状態において、さらに第4の発光ユニット、第5の発光ユニット、…を備えた構成とすることもできる。
【0075】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る照明装置100の構成例を示すものである。ここでは、
図1に示した第1の実施形態に係る発光装置1を適用して構成した場合を例示している。したがって、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0076】
本発明の第2の実施形態に係る照明装置100は、
図12に示すように、
図1の発光装置1を1セットとする、複数セット分の発光装置1が照明用灯具の基台101上にライン状に実装された構成とされている。そして、光拡散タイプの不透明な灯具用カバー(図示省略)で覆うことで、照明装置100を、極めて演色性の高い照明光(合成光)を出力可能なLED照明器具として仕上げることができる。
【0077】
本実施形態の照明装置100によれば、例えば、おのおのの発光ユニットの狙い色度が異なるように形成された各セットの発光装置1を同時に発光させることによって、高発光効率で、高演色性(もしくは超高演色)の合成光が得られる。これにより、各発光ユニットの色度のばらつきが大きい場合にも、極めて演色性の高い合成光による安定した照明が可能となる。したがって、太陽光で照明したいけれどもできないような環境、例えば、美術館や博物館、印刷所、塗装現場、医療・介護施設などの環境下において、紫外線劣化を招くことなく、まるで太陽光で照明したときのような色合いを再現可能となる。
【0078】
本実施形態の構成においては、複数セット分の発光装置1を照明用灯具の基台101上にライン状に実装する場合に限らず、例えば、千鳥状、階段状、格子状、又は、円形状に実装させるようにしても良い。
【0079】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0080】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。