(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の条件は、前記観察者の視線方向と前記空間結像素子の法線方向とがなす角度、前記裸眼立体ディスプレイと前記空間結像素子との距離、前記空間結像素子と前記観察者との距離又は前記空間結像素子の光学特性の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項4乃至8のいずれか一に記載の立体表示装置。
前記所定の条件は、前記観察者の視線方向と前記空間結像素子の法線方向とがなす角度、前記裸眼立体ディスプレイと前記空間結像素子との距離、前記空間結像素子と前記観察者との距離又は前記空間結像素子の光学特性の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか一に記載の視差画像補正方法。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
背景技術で示したように、2次元ディスプレイに左眼用画像及び右眼用画像を表示する画素を設け、レンチキュラレンズ又はパララックスバリア等の光学手段により、観察者の左右の眼に左眼用画像と右眼用画像を振分けることによって立体画像を表示する3Dディスプレイ20が開発されている。更に、物体があたかも空中に浮かんでいるかのように画像を表示するために、2次元ディスプレイと実鏡映像結像光学系のような空間結像素子とを組み合わせた3次元空中映像表示装置も開発されている。
【0018】
しかしながら、従来の3次元空中映像表示装置は、2次元ディスプレイを視点分配置したり2次元ディスプレイを移動させたりすることによって、空中浮遊像を形成するものであるため、視点数に応じた2次元ディスプレイが必要になったり、2次元ディスプレイを移動させる駆動手段が必要になったりし、装置が大型化するという問題がある。
【0019】
この問題に対して、
図5に示すように、3Dディスプレイ20と上記の実鏡映像結像光学系のような空間結像素子とを組み合わせることによって、空中浮遊像を形成する方法が考えられるが、本願発明者が検討した結果、この方法では、空中浮遊像に3D正視領域と3D逆視領域とが交互に出現するという新たな問題が発生することを見出した。
【0020】
すなわち、この構成の場合、3Dディスプレイ20から出射される光が空間結像素子に入射するように、3Dディスプレイ20と空間結像素子との距離を極めて小さくする必要があるため、隣接するシリンドリカルレンズからの光線が投影されてしまい、
図6に示すような入力画像に対して、左右の各々の眼に投影される視認画像は左眼用画像と右眼用画像の繰り返しとなる。また、基本的に反射光学系を1つ介在させると奥行き方向が反転した反転像が生成されてしまう。その結果、
図6に示すように、中央の領域に投影される画像(メインローブ画像)は、左右が入れ替わってしまい、
図7に示すように、空中浮遊像に3D正視領域と3D逆視領域とが交互に出現するという問題が発生してしまう。
【0021】
そこで、本発明の一実施の形態では、3Dディスプレイ20に入力する画像に対して、逆視が生じる視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像とを入れ替える画像処理を行う。具体的には、観察者の視線方向と空間結像素子の法線方向とがなす角度、空間結像素子と観察者との距離、3Dディスプレイ20と空間結像素子との距離又は空間結像素子の光学特性などに基づいて、奥行き視差と飛び出し視差とが逆転する逆視領域を抽出し、左眼用画像及び右眼用画像の内の、逆視領域に対応する部分の画像を入れ替える。
【0022】
これにより、3次元ディスプレイと空間結像素子とを組み合わせた場合における、3D正視領域と3D逆視領域とが交互に出現するという問題を回避することができる。
【0023】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る立体表示装置及び視差画像補正方法について、
図8乃至
図26を参照して説明する。
図8は、本実施例の立体表示装置の構成を示す斜視図である。また、
図11乃至
図20は、3Dディスプレイ20によって視認される画像を説明する図である。
【0024】
図8に示すように、本実施例の立体表示装置10は、3Dディスプレイ20と空間結像素子30と画像信号入力部40と画像処理部50とで構成される。また、図示していないが、必要に応じて、空間結像素子30と観察者との間隔を検出するための手段(例えばカメラなど)が立体表示装置10の所定の位置に配置される。
【0025】
3Dディスプレイ20は、立体画像を裸眼で視認可能にする裸眼立体ディスプレイであり、液晶表示装置などの表示パネルと、レンチキュラレンズ又はパララックスバリアなどの光学手段(本実施例ではレンチキュラレンズとする。)とで構成される。表示パネルには、左眼用の画像を表示する左眼用画素と右眼用の画像を表示する右眼用画素とが第1の方向に交互に配列された構成である。また、レンチキュラレンズは、表示パネルに対向する面が平面であり、他方の面が半円柱状のシリンドリカルレンズが上記第1の方向に配列された構成である。この3Dディスプレイ20の詳細については後述する。
【0026】
空間結像素子30は、3Dディスプレイ20に表示された立体画像を空間中に結像して空中浮遊像を形成する装置である。空間結像素子30は、例えば、垂直な2つの鏡面からなる光学素子(第1の反射面で反射し、更に該第1の反射面と対となって段違いに配置され、該第1の反射面と交差配置された第2の反射面で反射させて通過させる光反射素子)を複数配列したものである。この空間結像素子30として、例えば、特許文献1及び2に開示された実鏡映像結像光学系を利用することができる。この2つの垂直鏡面を持った構造は、例えば、平板の面上に100μm程度の高さの四角断面の柱を立て、その側面の内の直交する2つの面をミラーとして使用したり、100μm程度の厚さの平板の面内に四角の孔を掘り、その2つの内壁面を鏡面にしたりすることによって形成することができる。
【0027】
なお、
図8では、空間結像素子30を、垂直な2つの鏡面からなる光学素子を、当該2つの鏡面に対して垂直な平面に配列した(すなわち、上記の柱又は孔を平板の主面に対して垂直に形成した)構成としているため、空間結像素子30の平面が3Dディスプレイ20の表示面に対して所定の角度で傾斜するように記載しているが、柱又は孔が平板の主面の法線に対して傾斜するように形成した場合は、空間結像素子30の平面が3Dディスプレイ20の表示面に対して平行となるように配置することができる。
【0028】
画像信号入力部40は、表示パネルの各画素に表示させる左眼用画像及び右眼用画像を画像処理部50に出力する装置である。左眼用画像及び右眼用画像は、2つの視点からカメラで撮影した撮影画像(2視点分の画像)としてもよいし、1つの視点からカメラで撮影した撮影画像とこの画像の各画素に対応する3Dオブジェクトの奥行き情報を表すデプス画像のセットとしてもよい。その場合は、撮影画像とデプス画像とに基づいて、3次元空間に仮想的に配置した仮想カメラ位置から撮影して得られる仮想視点画像を生成し、撮影画像と仮想視点画像とを画像処理部50に出力すればよい。
【0029】
画像処理部50は、画像信号入力部40から出力される画像(2視点分の撮影画像若しくは1視点分の撮影画像と仮想視点画像のセット)を解析し、逆視が生じる領域(視差画像領域)を抽出し、視差画像領域の入力画像を左右反転させる(左眼用画像と右眼用画像を入れ替える)画像処理を行い、画像処理後の画像データを3Dディスプレイ20に出力する装置である。画像処理部50は、3Dディスプレイ20とは独立した装置としてもよいし、3Dディスプレイ20に組み込まれていてもよい。この画像処理部50の詳細についても後述する。
【0030】
まず、本実施例の立体表示装置10の理解を容易にするために、3Dディスプレイ20の構成及び動作について説明する。なお、本明細書においては、便宜上、以下のようにXYZ直交座標系を設定する。X軸方向は後述する左眼用画素24L及び右眼用画素24Rが繰り返し配列される方向とする。+X方向は右眼用画素24Rから左眼用画素24Lに向かう方向とする。また、Y軸方向は後述するシリンドリカルレンズ29aの長手方向とする。更に、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をとする。+Z方向は左眼用画素24L又は右眼用画素24Rが配置された面からレンチキュラレンズ29に向かう方向(観察者に向かう方向)とする。
【0031】
図9は本実施例の立体表示装置に含まれる3Dディスプレイ20の構成を示す断面図である。
図10は、本実施例の立体表示装置に含まれる3Dディスプレイ20の構成を示す上面図である。
図9及び
図10に示すように、3Dディスプレイ20は、電気光学素子として液晶分子を利用した表示パネル21と、光学手段としてレンチキュラレンズ29とを備える。
【0032】
表示パネル21は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を有するアクティブマトリクス型の表示パネルであり、TFTが形成されるTFT基板24と対向基板26とが微小な間隙を空けて対向しており、この間隙に液晶層25が配置されている。TFT基板24には、各々1個の左眼用画素24L及び右眼用画素24Rからなる表示単位としての画素対がマトリクス状に設けられている。液晶層25は、例えば透過型のTN(Twisted Nematic)モードとなるように構成されている。TFT基板24は表示パネル21の−Z方向側に配置され、対向基板26は+Z方向側に配置されている。更に、TFT基板24の−Z方向側に第1光学フィルム23が貼付され、対向基板26の+Z方向側に第2光学フィルム27が貼付されている。そして、第2光学フィルム27の+Z方向側に接着層28を介してレンチキュラレンズ29が固定され、第1光学フィルム23の−Z方向側にバックライト22が配置されている。
【0033】
TFT基板24の内側の面、すなわち+Z方向側の面に、行方向、すなわちX軸方向に延伸する複数のゲート線G(図ではG1〜G5)が配置されている。更に、TFT基板24の同じ面には、列方向、すなわちY軸方向に延伸する複数のデータ線D(図ではD1〜D7)が配置されている。そして、ゲート線Gとデータ線Dとで囲まれる領域に画素(左眼用画素24L又は右眼用画素24R)が形成され、ゲート線Gとデータ線Dの交点近傍に配置されるTFTによって画素が駆動される。
図10では、各画素とゲート線G及びデータ線Dとの接続関係を明確にするため、例えばゲート線G3とデータ線D2に接続された画素をP32と表記している。
【0034】
なお、TFT基板の構成は、
図10のようにX軸方向にゲート線Gが延伸し、Y軸方向にデータ線Dが延伸する配置に限らず、X軸方向にデータ線Dが延伸し、Y軸方向にゲート線Gが延伸するように配置されても構わない。また、表示パネル21は、液晶表示素子以外の表示素子、例えば有機EL(Electro Luminescence)素子、量子ドット素子又はフィールドエミッション素子など、様々な表示素子を用いることができる。また、表示パネル21の駆動方法は、TFT等を用いたアクティブマトリクス方式に限らず、パッシブマトリクス方式でもよい。
【0035】
レンチキュラレンズ29は、多数のシリンドリカルレンズ29aが一次元に配列したレンズアレイである。シリンドリカルレンズ29aは、かまぼこ状の凸部が一方向に延伸する一次元レンズであり、シリンドリカルレンズ29aの配列方向は、左眼用画素24L及び右眼用画素24Rからなる画素対が繰り返し配列される方向、すなわちX軸方向に設定され、1つのシリンドリカルレンズ29aが1つの画素対に対応するように構成される。
【0036】
シリンドリカルレンズ29aは、その延伸方向と直交する方向にのみレンズ効果を有する。そして、このレンズ効果を有する方向が、左眼用画素24L及び右眼用画素24Rが繰り返し配列される方向と一致している。この結果、シリンドリカルレンズ29aは、左眼用画素24Lから出射される光と右眼用画素24Rから出射される光を異なる方向に分離可能な光線分離手段として作用する。これにより、レンチキュラレンズ29は、各表示単位の左眼用画素24Lが表示する画像と、各表示単位の右眼用画素24Rが表示する画像を、異なる方向に分離することができる。このシリンドリカルレンズ29aの焦点距離は、シリンドリカルレンズ29aの主点、すなわちレンズの頂点と、画素面、すなわち左眼用画素24L又は右眼用画素24Rが配置された面との間の距離に設定されている。
【0037】
なお、レンチキュラレンズ29は、表示パネル21に対抗する面にレンズ面が配置された構成としてもよい。また、光学手段はレンチキュラレンズ29に限らず、フライアイレンズ、パララックスバリア又はプリズムシート等の光を分離可能な様々な光学素子を用いることができる。また、光学手段は、例えば液晶を用いたGRIN(Gradient Index)レンズ、レンズ効果を有する凹凸基板と液晶分子とを組み合わせた液晶レンズ又は液晶を用いたスイッチングパララックスバリア等を用いることもできる。
【0038】
次に、上記構成の3Dディスプレイ20から出射して観察者の眼に入射する光の様子を、撮影手段で撮影した撮影画像を用いて説明する。
図11は、3Dディスプレイ20と撮影手段80の配置例を示す斜視図である。
図11は観察者の左眼の位置60と右眼の位置61とを併せて示している。なお、ここでは説明を容易にするために、左眼用画素24L及び右眼用画素24Rは各々シリンドリカルレンズ29aの長手方向に延伸する短冊状とし、X軸方向に配列されているものとする。
【0039】
図11に示すように、撮影手段80は、3Dディスプレイ20の表示面を撮影する位置に配置される。この撮影手段80は、画像処理用レンズシステム、一般的なビデオカメラ又はデジタルカメラ等が用いられる。撮影手段80は、表示パネル21の表示面近傍に焦点が合う、3Dディスプレイ20に対して+Z方向の位置で固定される。撮影手段80の撮影中心81は、3Dディスプレイ20の中心20aと一致し、理想的には当該中心20a近傍の左眼用画素24Lと右眼用画素24Rとの中間に位置することが望ましい。
【0040】
図12は、3Dディスプレイ20の光学手段としてレンチキュラレンズ29を用いたときに形成される立体視域を説明するための光路図である。
【0041】
表示パネル21には、X軸方向に左眼用画素24L(L1〜L3)、(C1〜C3)及び(R1〜R3)と、右眼用画素24R(L1〜L3)、(C1〜C2)及び(R1〜R3)とが順次配置されている。また、シリンドリカルレンズ29Lは、左眼用画素24L(L1〜L3)と右眼用画素24R(L1〜L3)とに対応し、シリンドリカルレンズ29Cは、左眼用画素24L(C1〜C3)と右眼用画素24R(C1〜C2)とに対応し、シリンドリカルレンズ29Rは、左眼用画素24L(R1〜R3)と右眼用画素24R(R1〜R3)とに対応している。
【0042】
図12に示す1L1、2L1及び3L1は、左眼用画素24L(L1〜L3)から出射され、シリンドリカルレンズ29Lで屈折された光の光路を示し、1L2、2L2及び3L2は、右眼用画素24R(L1〜L3)から出射され、シリンドリカルレンズ29Lで屈折された光の光路を示している。また、1C1、2C1及び3C1は、左眼用画素24L(C1〜C3)から出射され、シリンドリカルレンズ29Cで屈折された光の光路を示し、1C2及び2C2は、右眼用画素24R(C1〜C2)から出射され、シリンドリカルレンズ29Cで屈折された光の光路を示している。同様に、1R1、2R1及び3R1は、左眼用画素24L(R1〜R3)から出射され、シリンドリカルレンズ29Rで屈折された光の光路を示し、1R2、2R2及び3R2は、右眼用画素24R(R1〜R3)から出射され、シリンドリカルレンズ29Rで屈折された光の光路を示している。
【0043】
光路上を進行する実際の光は、これらの光路に対して時計回りまたは反時計回りに所定の角度の幅を有している。1L1、1C1及び1R1が交わる点を含む領域に左眼用画像領域62が形成され、1L2、1C2及び1R2が交わる点を含む領域に右眼用画像領域63が形成される。これらの左眼用画像領域62及び右眼用画像領域63が立体視できる立体視認範囲となり、左眼用画像領域62に左眼の位置60があり、右眼用画像領域63に右眼の位置61があるとき、観察者は立体画像を正しく視認することができる。
【0044】
立体視認範囲が最大となる(すなわち、左眼用画像領域62及び右眼用画像領域63のX軸方向の距離が最大となる)位置とレンチキュラレンズ29の位置との距離を最適立体視認距離(Dop)とし、左右眼のY軸方向と、左眼用画像領域62及び右眼用画像領域63とが交差する位置とレンチキュラレンズ29の位置との距離を、最大立体視認距離(Dmax)及び最小立体視認距離(Dmin)とする。
【0045】
ここで、シリンドリカルレンズ29Lに注目すると、左眼用画像領域62と右眼用画像領域63の形成に寄与する光は、左眼用画素24L(L1)及び右眼用画素24R(L1)から出射された光(1L1、1L2)だけである。これらを一次光と定義する。また、左眼用画素24L(L1)又は右眼用画素24R(L1)の隣接画素である左眼用画素24L(L2)又は右眼用画素24R(L2)から出射され、シリンドリカルレンズ29Lで屈折された光(2L1、2L2)を二次光と定義する。同様に、左眼用画素24L(L1)又は右眼用画素24R(L1)の第2の隣接画素である左眼用画素24L(L3)又は右眼用画素24R(L3)から出射され、シリンドリカルレンズ29Lで屈折された光(3L1、3L2)を三次光と定義する。シリンドリカルレンズ29C又は29Rに関連する光についても、同様に一次光が左眼用画像領域62及び右眼用画像領域63の形成に寄与する。
【0046】
図12の光路図から分かるように、観察者とレンチキュラレンズ29との間隔が最小立体視認距離Dminよりも短くなると、表示パネル21の左右側から出射される二次光又は三次光等の高次光の影響が顕在化することが分かる。
【0047】
次に、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dを変化させた時に得られる撮影画像について説明する。なお、
図13、
図15及び
図18では、光路を分かりやすくするために、一次光の光路のみを記載している。
【0048】
図13は、撮影手段80を3Dディスプレイ20の中心線上に配置し、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dを変化させた場合の例である。
図14は
図13の構成におけるレンチキュラレンズと撮影手段との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。この場合、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、
図14A及びBに示すように、撮影手段80が撮影する画像は、左側が左眼用画素24Lの入力画像、右側が右眼用画素24Rの入力画像となる。これに対して、間隔Dが徐々に小さくなると(例えば、最適立体視認距離Dopの1/3程度になると)、
図14Cに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の左側に右眼用画素24Rの入力画像が出現し、右側に左眼用画素24Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなると(例えば、最適立体視認距離Dopの1/4程度になると)、
図14D及びEに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素24Lの入力画像が出現し、右側に右眼用画素24Rの入力画像が出現する。すなわち、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dが最適立体視認距離Dopに比べて小さくなるほど、二次光又は三次光等の高次光の影響を受けて、撮影画像が左眼用画素24Lの入力画像と右眼用画素24Rの入力画像の繰り返しになる。
【0049】
図15は、撮影手段80を3Dディスプレイ20の中心線に対して右側(右眼側)にずらして配置し、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dを変化させた場合の例である。
図16は
図15の構成におけるレンチキュラレンズと撮影手段80との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。この場合、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、
図16Aに示すように、撮影手段80が撮影する画像は、右眼用画素24Rの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、
図16Bに示すように、撮影画像の両側に左眼用画素24Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3〜1/4程度になると、
図16C及びDに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の両側に右眼用画素24Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、
図16Eに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素24Lの入力画像が出現する。
【0050】
このような撮影画像となるのは、3Dディスプレイ20の表示面の中心を通る法線を含む正面の立体視域であるメインローブを構成する一次光と、メインローブに対してX軸方向の外側の立体視域である他のローブ(サイドローブ)を構成する高次光が混合して撮影画像が形成されるからである。
図17は
図15の撮影画像の構成を説明する図である。例えば、
図17に示すように、撮影手段80とシリンドリカルレンズ29との間隔Dに関わらず、メインローブを構成する一次光によって右眼用画素24Rの入力画像が撮影されるが、間隔Dが小さくなるに従って他のローブを構成する高次光の影響を受けて、左眼用画素24Lの入力画像が多く撮影される。その結果、間隔Dが最適立体視認距離Dop(例えば600mm)の場合、撮影画像はメインローブを構成する一次光による右眼用画素24Rの入力画像のみであるが、間隔Dが0.5×Dop(例えば300mm)の場合、撮影画像は、メインローブを構成する一次光による右眼用画素24Rの入力画像と、他のローブを構成する高次光による両側の左眼用画素24Lの入力画像とを合成した画像となり、撮影画像は中央に右眼用画素24Rの入力画像が配置され、その両側に左眼用画素24Lの入力画像が配置された構成となる。また、間隔Dが0.33×Dop(例えば200mm)又は0.28×Dop(例えば170mm)の場合、他のローブを構成する高次光による左眼用画素24Lの入力画像が中央に寄るため、撮影画像は中央に右眼用画素24Rの入力画像が配置され、その両外側に左眼用画素24Lの入力画像が配置され、更にその両外側に右眼用画素24Rの入力画像が配置された構成となる。また、間隔Dが0.23×Dop(例えば140mm)の場合、他のローブを構成する高次光による左眼用画素24Lの入力画像が更に中央に寄り、更に外側に左眼用画素24Lの入力画像が出現するため、撮影画像は左眼用画素24Lの入力画像と右眼用画素24Rの入力画像とが3回繰り返し配置された構成となる。
【0051】
図18は、撮影手段80を3Dディスプレイ20の中心線に対して左側(左眼側)にずらして配置し、撮影手段80とレンチキュラレンズとの間隔Dを変化させた場合の例である。
図19は
図18の構成におけるレンチキュラレンズと撮影手段80との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。この場合、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、
図19Aに示すように、撮影手段80が撮影する画像は、左眼用画素24Lの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、
図19Bに示すように、撮影画像の両側に右眼用画素24Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3〜1/4程度になると、
図19C及びDに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の両側に左眼用画素24Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、
図19Eに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に右眼用画素24Rの入力画像が出現する。
【0052】
図20は
図19の撮影画像の構成を説明する図である。この場合、
図20に示すように、撮影手段80とシリンドリカルレンズ29との間隔Dに関わらず、メインローブを構成する一次光によって左眼用画素24Lの入力画像が撮影されるが、間隔Dが小さくなるに従って他のローブを構成する高次光の影響を受けて、右眼用画素24Rの入力画像が多く撮影される。その結果、撮影画像は、
図17の左眼用画素24Lの入力画像と右眼用画素24Rの入力画像とが入れ替えた構成となる。
【0053】
すなわち、撮影手段80とシリンドリカルレンズ29との間隔Dが小さくなると、高次光の影響を受けて、撮影画像は左眼用画素24Lの入力画像と右眼用画素24Rの入力画像とが繰り返し配置された構成となり、撮影手段80の位置が3Dディスプレイ20の中心線からずれると、ずれに応じてメインローブを構成する一次光による画像と他のローブを構成する高次光による画像とが変化する。
【0054】
次に、上記3Dディスプレイ20に空間結像素子30を組み合わせた場合について説明する。なお、以下では、空間結像素子30を、2面コーナーリフレクタとなる柱又は孔が平板の主面の法線に対して傾斜するように形成された構成とし、空間結像素子30の平面が3Dディスプレイ20の表示面に対して平行となるように配置されるものとする。
【0055】
図21は3Dディスプレイ20における飛び出し視差を説明する模式図である。ここで、表示パネル21の左眼用画素24Lに、
図21Bの左側に示すように、星形のオブジェクト71が中央のやや右側に配置された入力画像を表示させ、右眼用画素24Rに、
図21Bの右側に示すように、星形のオブジェクト71が中央のやや左側に配置された入力画像を表示させた場合、
図21Aに示すように、空中に星形のオブジェクト71が飛び出したように視認される飛び出し視差となる。これに対して、例えば、
図22Aに示すように、D=0.5×Dopの位置に空間結像素子30を配置した場合、空間結像素子30の位置に仮想的に配置した仮想カメラで撮影される画像は、
図17及び
図20より、
図22Bのようになる。ここで、空間結像素子30は反射光学系であり、空間結像素子30から出射される光線は、入射方向と同じ方向になるため、観察者が見る画像は左右が入れ替わる。その結果、観察者が見る画像は
図22Cのようになり、左眼で視認する画像の中央に、右眼用画素24Rの入力画像が配置され、右眼で視認する画像の中央に、左眼用画素24Lの入力画像が配置される。すなわち、飛び出し視差が奥行き視差になる、いわゆる逆視が生じる。
【0056】
このように、本願発明者の考察により、3Dディスプレイ20と空間結像素子30とを組み合わせた場合、逆視が生じることが判明したことから、本実施例の立体表示装置10では、画像処理部50を設け、画像信号入力部40から入力される入力画像の逆視が生じる(奥行き視差と飛び出し視差とが逆転する)領域を左右反転させる(逆視が生じる領域の左眼用画像と右眼用画像とを入れ替える)画像処理を行い、画像処理後の画像データを3Dディスプレイ20に出力するようにする。
【0057】
図23は本発明の第1の実施例に係る立体表示装置10における画像処理部50の構成例を示すブロック図である。この画像処理部50は、
図23に示すように、視差画像補正部51と領域パラメータ格納部56とで構成され、視差画像補正部51は、視差画像領域抽出部52と画像データ入替部53とで構成される。
【0058】
視差画像補正部51の視差画像領域抽出部52は、画像信号入力部40から、2視点分の撮影画像若しくは1視点分の撮影画像と仮想視点画像のセットを取得し、上記したメインローブを構成する一次光の角度(EVS(Eye Viewing Space)角度)、3Dディスプレイ20と空間結像素子30との距離、空間結像素子30と観察者との距離又は空間結像素子30のアスペクト比(例えば、2面コーナーリフレクタの開口幅と開口高さの比)などの所定の条件に基づいて、逆視が生じる(奥行き視差と飛び出し視差とが逆転する)領域(視差画像領域)を抽出する。
【0059】
例えば、EVS角度、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離又は空間結像素子30と観察者との距離が小さくなると、左眼用画像と右眼用画像との繰り返し画素数が多くなる。また、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離、または空間結像素子30と観察者との距離が所定の範囲外となる場合は、メインローブ画像が左右眼の視認画像の中央に出現しない。なお、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離及び空間結像素子30と観察者との距離が所定の範囲外となる場合も、メインローブ画像が左右眼の視認画像の中央に出現しない。また、空間結像素子30のアスペクト比によって、左眼用画像と右眼用画像の位置又は繰り返し画素数が変化する。そこで、これらの条件を領域パラメータ格納部56に記憶しておき、画像信号入力部40から入力画像を取得したら、領域パラメータ格納部56から条件を読み出し、読み出した条件の内の少なくとも1つの条件に基づいて、どの領域で逆視が生じるかを特定し、特定した領域を視差画像領域として抽出する。言い換えると、上記所定の条件によってメインローブ画像の位置及び大きさが決定され、メインローブ画像の位置及び大きさによってどの領域で逆視が生じるかを判断できることから、メインローブ画像の位置及び大きさに基づいて視差画像領域を抽出することになる。
【0060】
なお、EVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離は、観察者の位置に伴って変化する。そこで、立体表示装置10にカメラを設置し、画像処理部50が、適宜カメラから観察者を撮影した画像を取得し、撮影画像から特徴点を抽出して両眼の位置を検出し、両眼の位置及び間隔などに基づいて、EVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離を特定して領域パラメータ格納部56に格納すればよい。また、ここでは所定の条件として、EVS角度、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離、空間結像素子30と観察者との距離、空間結像素子30のアスペクト比の4つを例示したが、表示パネル21の特性(例えば、画素サイズ、画素ピッチもしくは画素配列構造)又はレンチキュラレンズ29の特性(例えば、シリンドリカルレンズ29aの形状、ピッチ、焦点距離、収差もしくは材質)などの他の条件を利用してもよい。また、ここでは空間結像素子30の特性に関する所定の条件として、空間結像素子30のアスペクト比を例示したが、空間結像素子30を構成する2面コーナーリフレクタのミラー表面粗さ、ミラー組立精度又は反射率などを利用することもできる。
【0061】
視差画像補正部51の画像データ入替部53は、入力画像から、視差画像領域抽出部52が抽出した視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを特定し、左眼用画像と右眼用画像の境界位置が実質的に一致している場合、それらを入れ替えた画像データを生成し、生成した画像データを3Dディスプレイ20に出力する。
【0062】
領域パラメータ格納部56は、メモリなどの記憶手段であり、視差画像領域抽出部52が視差画像領域を抽出する際に参照する、上記の所定の条件を記憶する。
【0063】
なお、視差画像領域抽出部52及び画像データ入替部53はハードウェアとして構成してもよいし、画像処理部50にCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含む制御部を設け、CPUがROMに記憶したプログラムをRAMに展開して実行することにより、制御部を、視差画像領域抽出部52及び画像データ入替部53として機能させるようにしてもよい。
【0064】
図24は本発明の第1の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を示すフローチャート図である。
図25は本発明の第1の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を説明する1例の模式図である。上記構成の画像処理部50を用いた視差画像補正方法について、
図24のフローチャート図及び
図25の概念図を用いて説明する。
【0065】
まず、視差画像領域抽出部52は、画像信号入力部40から入力画像(2視点分の撮影画像若しくは1視点分の撮影画像と仮想視点画像のセット)を取得する(ステップS101)。ここでは、
図25Aに示すように、メインローブ画像に逆視が生じているものとする。
【0066】
次に、視差画像領域抽出部52は、領域パラメータ格納部56から所定の条件を取得し、所定の条件に基づいて視差画像領域を抽出する(ステップS102)。ここでは、視差画像領域としてメインローブ画像の領域を抽出する。
【0067】
次に、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行う(ステップS103)。例えば、
図25Bに示すように、入力画像の左眼用画像がL
A、L
B及びL
Cで構成され、右眼用画像がR
A、R
B及びR
Cで構成されている場合、左眼用画像のメインローブ画像R
Bと、右眼用画像のメインローブ画像L
Bとを入れ替える。
【0068】
そして、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行った画像データを3Dディスプレイ20に出力し、3Dディスプレイ20はその画像データに基づいて、表示パネル21に画像を表示する(ステップS104)。ここでは、逆視が生じるメインローブの左眼用画像と右眼用画像とが入れ替えられているため、
図25Cに示すように、観察者は全ての領域が3D正視領域となった空中浮遊像を視認することができる。
【0069】
なお、上記では、左右各々の入力画像が左右及び中央の3つの画像で構成される場合について記載したが、左右各々の入力画像が複数の領域で構成される場合に対しても同様に適用することができる。
図26は本発明の第1の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を説明する他の例の模式図である。例えば、
図26に示すように、左右各々の入力画像が5つの画像で構成される場合、
図26Aに示すように、視差画像領域抽出部52は、上記の所定の条件に基づいて、中央のメインローブ画像及び両端のサイドローブ画像の領域を視差画像領域として抽出し、
図26Bに示すように、画像データ入替部53は、入力画像に対して、左眼用画像のR
A、R
C及びR
Eと右眼用画像のL
A、L
C及びL
Eとを入れ替えて3Dディスプレイ20に出力すれば、
図26Cに示すように、観察者は全ての領域が3D正視領域となった空中浮遊像を視認することができる。
【0070】
このように、入力画像から逆視が生じる視差画像領域を抽出し、その視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを入れ替えることにより、空中浮遊像に3D正視領域と3D逆視領域とが交互に出現するという問題を回避することができる。
【0071】
なお、本実施例の立体表示装置10は3Dオブジェクトをモノクロ表示する場合とカラー表示する場合のいずれの場合にも適用することができる。3Dオブジェクトをカラー表示する場合は、表示パネル21を構成する対向基板26をカラーフィルタ(CF)基板とすることによって実現することができる。その場合、シリンドリカルレンズ29aのレンズ効果を有する方向(X軸方向)に並ぶ一対の画素を同色とし、シリンドリカルレンズ29aの長手方向(Y軸方向、すなわち行毎)に周期的に色を変化させる構造とすることもできるし、X軸方向とY軸方向を逆にした構造とすることもできる。また、CFを設ける代わりに、例えば、バックライト22をR(Red)/G(Green)/B(Blue)各々の単色で発光できる光源で構成し、R/G/Bの発光時間に合わせて所望の画素を所定の階調で表示させることにより(いわゆる時分割駆動により)、カラー表示を実現することもできる。
【実施例2】
【0072】
次に、本発明の第2の実施例に係る立体表示装置及び視差画像補正方法について、
図27乃至
図30を参照して説明する。
図27は、本実施例の画像処理部の構成例を示すブロック図である。
図28は、本実施例の立体画像の処理方法を示すフローチャート図である。
図29は本発明の第2の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を説明する模式図である。
図30は本発明の第2の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を説明する模式図である。
【0073】
前記した第1の実施例では、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行ったが、画像と入れ替えた画像とで奥行き(又は飛び出し)の状態が異なる場合、入れ替えた画像とその画像に隣接する画像との繋ぎ目で奥行き(又は飛び出し)が不自然に変化したり、メインローブ画像の奥行き(又は飛び出し)が小さい場合、立体感を十分に表現できなかったりする場合がある。また、空間結像素子の特性によっては、各画像の境界部近傍において画像が混合する領域(3Dクロストーク領域)が大きくなり、視差がある場合には2重画像が視認される場合もある。そこで、本実施例では、入力画像の奥行き情報を用いて、入力画像の視差量(左眼用画像と右眼用画像の各画素のずらし量)を調整して、空中浮遊像が適切に表示されるようにする。
【0074】
その場合、立体表示装置10の構成は第1の実施例の
図8乃至
図10と同様であるが、
図27に示すように、画像処理部50の視差画像補正部51に、視差画像領域抽出部52と画像データ入替部53とに加えて、奥行き情報抽出部54と視差量調整部55とを設ける。
【0075】
上記奥行き情報抽出部54は、画像信号入力部40が1視点分の撮影画像及びデプス画像から仮想視点画像を生成する場合は、画像信号入力部40から、1視点分の撮影画像と仮想視点画像に加えてデプス画像を取得し、このデプス画像に基づいて3Dオブジェクトの各部の奥行き情報を抽出する。また、画像信号入力部40から2視点分の撮影画像を取得する場合は、この2視点分の撮影画像を比較することによって3Dオブジェクトの各部の奥行き情報を抽出する。なお、デプス画像は、3D空間のある視点位置から撮影した撮影画像の各画素に対応するオブジェクトと上記視点位置との距離を表すものである。
【0076】
視差量調整部55は、奥行き情報抽出部54が抽出した奥行き情報に基づいて、入力画像(1視点分の撮影画像及び仮想視点画像若しくは2視点分の撮影画像)の視差量を調整する。その際、領域パラメータ格納部56から、EVS角度、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離、空間結像素子30と観察者との距離、空間結像素子30のアスペクト比などの所定の条件を読み出し、この所定の条件を参照して、どのように視差量を調整するかを決定する。例えば、左眼用画像と右眼用画像とを入れ替えることによって、入れ替えた画像とその画像に隣接する画像との繋ぎ目で画像の左右で奥行き又は飛び出しが不自然さに変化する場合がある。そのような場合は、画像の両端部分(隣接する画像との境界近傍部分)の視差量を境界近傍以外の視差量より小さくし、画像の繋がりをなめらかにする。また、メインローブ画像の奥行き又は飛び出しの程度が小さい場合、3Dオブジェクトの立体感が十分に得られない場合がある。そのような場合は、メインローブ画像(逆視領域に対応する部分の画像)の視差量をメインローブ画像以外の視差量より大きくし、3Dオブジェクトの立体感を強調する。また、空間結像素子によって、画像の境界部近傍において3Dクロストーク領域が大きくなり、2重画像が視認される場合がある。そのような場合は、上記と同様に、画像の両端部分(隣接する画像との境界近傍部分)の視差量を小さく若しくはゼロにし、2重画像が視認されにくくなるようにする。
【0077】
視差画像領域抽出部52は、視差量調整部55から、視差量を調整した画像(1視点分の撮影画像と仮想視点画像若しくは2視点分の撮影画像)を取得し、領域パラメータ格納部56から、EVS角度、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離、空間結像素子30と観察者との距離又は空間結像素子30のアスペクト比などの所定の条件を読み出し、所定の条件の内の少なくとも1つの条件に基づいて、逆視が生じる領域(視差画像領域)を抽出する。
【0078】
なお、第1の実施例と同様に、EVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離は、観察者の位置に伴って変化するため、立体表示装置10にカメラを設置し、画像処理部50が、適宜カメラから観察者を撮影した画像を取得し、撮影画像から特徴点を抽出して両眼の位置を検出し、両眼の位置及び間隔などに基づいて、EVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離を特定して領域パラメータ格納部56に格納すればよい。また、所定の条件として、表示パネル21の特性又はレンチキュラレンズ29の特性などの他の条件を利用することができる。また、空間結像素子30の特性に関する所定の条件として、空間結像素子30を構成する2面コーナーリフレクタのミラー表面粗さ又はミラー組立精度、反射率などを利用することもできる。
【0079】
画像データ入替部53は、入力画像から、視差画像領域抽出部52が抽出した視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを特定し、左眼用画像と右眼用画像の境界位置が実質的に一致している場合、それらを入れ替えた画像データを生成し、生成した画像データを3Dディスプレイ20に出力する。
【0080】
なお、奥行き情報抽出部54、視差量調整部55、視差画像領域抽出部52及び画像データ入替部53はハードウェアとして構成してもよいし、画像処理部50にCPUとROM又はRAMなどのメモリとを含む制御部を設け、CPUがROMに記憶したプログラムをRAMに展開して実行することにより、制御部を、奥行き情報抽出部54、視差量調整部55、視差画像領域抽出部52及び画像データ入替部53として機能させるようにしてもよい。また、前記した第1の実施例と同様に、本実施例の3Dディスプレイ20の表示パネル21に、カラーフィルタを形成した対向基板26を使用したり、R/G/Bの単色光を発光可能なバックライト22を使用したりして、カラー表示を行うことができる。
【0081】
上記構成の画像処理部50を用いた視差画像補正方法について、
図28のフローチャート図及び
図29、30の概念図を用いて説明する。
【0082】
まず、奥行き情報抽出部54は、画像信号入力部40から入力画像(1視点分の撮影画像と仮想視点画像とデプス画像のセット若しくは2視点分の撮影画像を取得する(ステップS201)。そして、奥行き情報抽出部54はデプス画像若しくは2視点分の撮影画像を処理した結果に基づいて、3Dオブジェクトの各部の奥行き情報を抽出する(ステップS202)。
【0083】
次に、視差量調整部55は、奥行き情報抽出部54が抽出した奥行き情報と領域パラメータ格納部56から取得した所定の条件とに基づいて、入力画像(1視点分の撮影画像信号と仮想視点画像信号若しくは2視点分の撮影画像)の視差量を調整する(ステップS203)。例えば、入れ替えた画像とその画像に隣接する画像との繋がりを改善したい場合は、
図29Bに示すように、画像の境界近傍の視差量が境界部分以外の視差量より小さくなるように調整する。また、3Dオブジェクトの奥行き又は飛び出しを十分に表現したい場合は、
図29Cに示すように、メインローブ画像の視差量がメインローブ画像以外の視差量より大きくなるように調整する。また、2重画像が視認される不具合を改善したい場合は、画像の境界近傍の視差量が小さくなるように調整する。例えば、3Dクロストークが少ない場合は、
図30Bに示すように、画像の境界近傍の視差量が境界部分以外の視差量より小さくなるように調整する。また、3Dクロストークが著しい場合は、
図30Cに示すように、画像の境界部分の視差量がゼロなるように調整する。
【0084】
次に、視差画像領域抽出部52は、視差量調整部55が調整した1視点分の撮影画像と仮想視点画像とを取得する。また、視差画像領域抽出部52は、領域パラメータ格納部56から所定の条件を取得する。そして、視差画像領域抽出部52は、それらに基づいて視差画像領域を抽出する(ステップS204)。ここでは、視差画像領域としてメインローブ画像の領域を抽出する。
【0085】
次に、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行う(ステップS205)。例えば、
図29A、
図30Aに示すように、入力画像の左眼用画像がL
A、L
B及びL
Cで構成され、右眼用画像がR
A、R
B及びR
Cで構成されている場合、左眼用画像のメインローブ画像R
Bと、右眼用画像のメインローブ画像L
Bとを入れ替える。
【0086】
そして、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行った画像データを3Dディスプレイ20に出力し、3Dディスプレイ20はその画像データに基づいて、表示パネル21に画像を表示する(ステップS206)。
【0087】
なお、上記では、左右各々の入力画像が左右及び中央の3つの画像で構成される場合について記載したが、左右各々の入力画像が複数の領域で構成される場合に対しても同様に適用することができる。
【0088】
このように、デプス画像に基づいて視差量を調整した後、視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを入れ替えることにより、空中浮遊像を適切に表示することができ、立体表示装置10の利用価値を高めることができる。
【実施例3】
【0089】
本発明の第3の実施例に係る立体表示装置及び視差画像補正方法について、
図31乃至
図38を参照して説明する。
【0090】
前記した第1の実施例では、
図10に示すように、レンチキュラレンズ29を構成するシリンドリカルレンズ29aは、その延伸方向と、延伸方向と直交しレンズ効果を有する方向とが、画素の配列するY方向ならびにX方向に夫々平行になるように配置される。しかしながら、本発明は、シリンドリカルレンズの配列方向が画素の配列に対して回転配置された3Dディスプレイ20を用いることも可能である。以下に詳細を説明する。
【0091】
図31は本発明の第3の実施例に係る3Dディスプレイ20の構成の概略図である。
図32は本発明の第3の実施例に係る3Dディスプレイ20の機能説明図である。
図33は本発明の第3の実施例に係る3Dディスプレイ20の機能説明図である。
図31A及びBに本実施例に用いる3Dディスプレイ20を示す。
図31に示すように、配列されるシリンドリカルレンズ29aの延伸方向と、表示パネル21の画素124が配列されるY軸方向との間は角度αである。
【0092】
表示パネル21は、
図31A及びBに示すように画素124がX方向ならびに、Y方向に複数配列し構成される。表示パネル21は、レンチキュラレンズ29を構成するシリンドリカルレンズ29aの配置に従い、画素124の各々を、左眼用画素24L、右眼用画素24Rとして機能させることにより、観察者へ立体表示を提供することができる。例えば、
図31Aの3Dディスプレイ20では
図32に示すように、
図31Bの3Dディスプレイ20では
図33に示すように、配置されるシリンドリカルレンズ29aの光線分離特性に合わせて、画素124を左眼用画素24L、右用画素24Rとして機能させる。なお、
図32及び
図33に示す画素125は、画素から出る光線がシリンドリカルレンズ29aによって、観察者の右眼側及び左眼側の両方向に分けられる画素である。これらの画素125は、表示パネル内での総数が等しくなるように左眼用画素24L、右眼用画素24Rとして機能させてもよいし、隣接する左眼用画素24Lと右眼用画素24Rの中間輝度を表示する画素として機能させてもよいし、表示させない(黒表示)画素としてもよい。また、
図31から
図33において、画素を単一に図示しているが、説明の便宜上であり、カラー表示のため、複数のサブ画素から画素124が構成される表示パネルを用いることも可能である。
【0093】
図34は本発明の第3の実施例のサブ画素の構成を示す具体例である。
図34A及びBに、複数のサブ画素から画素124が構成される具体例を示す。
図34Aは、画素124をX方向に3分割し、サブ画素126、サブ画素127、サブ画素128を配置した例であり、
図34Bは、画素124をY方向に3分割し、サブ画素126、サブ画素127、サブ画素128を配置した例である。
図34では、X軸方向に延伸する複数のゲート線G(Gy、Gy+1・・・)、Y軸方向に延伸する複数のデータ線D(Dx、Dx+1・・・)が配置され、ゲート線Gとデータ線Dとで囲まれる領域に画素が形成され、ゲート線Gとデータ線Dの交点付近に配置されるTFTによってサブ画素が駆動される例を示しているが、X軸方向にデータ線Dが延伸し、Y軸方向にゲート線Gが延伸するように配置されても構わない。また、画素124を3つのサブ画素で構成したが、さらに複数のサブ画素から画素124を構成してもよい。
【0094】
以上のように、画素124が複数のサブ画素から構成されている場合は、
図32及び
図33に示した画素125は、配置されるシリンドリカルレンズ29aの光線分離特性に合わせて、サブ画素単位で左眼用画素24L又は右眼用画素24Rとして機能させればよい。以降、シリンドリカルレンズ29aが画素配列に対して回転配置されたときの光学特性について説明するが、説明の便宜上、
図32から画素125を省いた
図35を用いる。
【0095】
図31Aの3Dディスプレイ20の画素124を、
図35に示すように、左眼用画素24L、右眼用画素24Rとして機能させることにより、観察者へ立体表示を提供することができる。例えば
図35のB-B’のXZ面断面は、
図9と同じ断面図で説明できるため、B-B’上の左眼用画素24L又は右眼用画素24Rから出射されシリンドリカルレンズで屈折され観察者へ向かう光の光路は、
図5によって説明できる。また、B-B’とはY方向に位置が異なるA-A’又はC-C’の断面も
図9によって説明できるが、左眼用画素24L又は右眼用画素24Rは回転角αに従って配置されているため、左眼用画素24L又は右眼用画素24Rの位置は、B-B’と比較するとA-A’では−X方向にC−C’では+X方向にずれる。このため、
図5に示す光路もY方向の位置に応じてずれが生じる。したがって、視認される画像へも回転角αの影響が及ぶ。
【0096】
視認される画像への回転角αの影響については、実施例1と同様に撮影手段を用いて撮影される撮影画像を用いて説明する。
【0097】
図36は
図31の構成におけるレンチキュラレンズ29と撮影手段との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。すなわち、本実施例の3Dディスプレイ20と撮影手段80を実施例1の
図11と同様に配置したとき、撮影される撮影画像である。
図36に示すように、実施例1で説明した
図13のように、撮影手段80を3Dディスプレイ20の中心線上に配置し、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dを変化させた場合の例であり、実施例1の
図13に対応する撮影画像である。この場合、本実施例における間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍の撮影画像は、
図36A及びBに示すように、実施例1と同様、左側に左眼用画素24Lの入力画像と、右側に右眼用画素24Rの入力画像となるが、中央の境界線129は、回転角αに応じてY軸からβ傾いた撮影画像となる。Y軸に対する境界線の傾き角βは、理想的には回転角αと等しいが、レンチキュラレンズ29を実装した際の位置が理想とずれると、実装の位置ずれに応じて回転角αからのずれが生じる。
【0098】
間隔Dが徐々に小さくなると、実施例1と同様に、
図36Cに示すように、二次光の影響を受けて撮影画像の左側に右眼用画素24Rの入力画像が出現し、右側に左眼用画素24Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなると、
図36D及びEに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素24Lの入力画像が出現し、右側に右眼用画素24Rの入力画像が出現する。すなわち、実施例1の
図14と同様に、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dが最適立体視認距離Dopに比べて小さくなるほど、二次光又は三次光等の高次光の影響を受けて、撮影画像が左眼用画素24Lの入力画像と右眼用画素24Rの入力画像の繰り返しになる。
【0099】
また、実施例1で説明した撮影手段80を3Dディスプレイ20の中心線に対して右側(右眼側)にずらして配置し、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dを変化させた場合(
図15)、及び、撮影手段80を3Dディスプレイ20の中心線に対して左側(左眼側)にずらして配置し、撮影手段80とレンチキュラレンズ29との間隔Dを変化させた場合(
図18)の撮影画像については、上記と同様に、左眼用画素24Lの入力画像と、右側に右眼用画素24Rの入力画像の境界線129が、Y軸から傾き角βとなる以外は同じであるため説明を略す。
【0100】
次に、
図31Aに例示した本実施例の3Dディスプレイ20と空間結像素子30とを組み合わせた場合について説明する。なお、以下では、空間結像素子30を、2面コーナーリフレクタとなる柱又は孔が平板の主面の法線に対して傾斜するように形成された構成とし、空間結像素子30の平面が3Dディスプレイ20の表示面に対して平行となるように配置されるものとする。
【0101】
実施例1と同様、
図21Bの左側に示すように、左眼用画素24Lに星形のオブジェクト71が中央のやや右側に配置された入力画像を表示させ、右眼用画素24Rに、
図21Bの右側に示すように、星形のオブジェクト71が中央のやや左側に配置された入力画像を表示させた場合、空中に星形のオブジェクト71が飛び出したように視認される飛び出し視差となる。
【0102】
これに対して、例えば、
図37Aに示す(実施例1の
図22と同様)ように、D=0.5×Dopの位置に空間結像素子30を配置した場合、空間結像素子30の位置に仮想的に配置した仮想カメラで撮影される画像は、
図37Bのようになる。ここで、空間結像素子30は反射光学系であり、空間結像素子30から出射される光線は、入射方向と同じ方向になるため、観察者が見る画像は左右が入れ替わる。その結果、観察者が見る画像は
図37Cのようになり、実施例1で説明したように、飛び出し視差が奥行き視差になる、いわゆる逆視が生じる。
【0103】
このように、本実施例の3Dディスプレイ20と空間結像素子30とを組み合わせた場合も、実施例1と同様に逆視が生じる。
【0104】
本実施例の立体表示装置10の構成は、上記3Dディスプレイ20が異なる以外は実施例1と同じである。すなわち、
図31に示す3Dディスプレイ20が
図8に配置される。したがって、実施例1と同様に画像処理部50を設け、画像信号入力部40から入力される入力画像の逆視が生じる領域を左右反転させる画像処理を行い、画像処理後の画像データを3Dディスプレイ20に出力するようにする。
【0105】
この画像処理部50の構成は、実施例1と同じ構成を適用できるため詳細説明を略す。本実施例の視差画像補正方法について、実施例1のフローチャートである
図24及び
図38に示す本発明の第3の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を説明する模式図を用いて説明する。
【0106】
まず、視差画像領域抽出部52は、画像信号入力部40から入力画像(2視点分の撮影画像若しくは1視点分の撮影画像と仮想視点画像のセット)を取得する(ステップS101)。ここでは、
図38Aに示すように、メインローブ画像に逆視が生じているものとする。このとき、3D正視領域と3D逆視領域の境界線は、実施例1と異なり、
図34に示した傾き角βに応じて、傾き角γとなる。傾き角γは理想的には傾き角βと等しくなるが、空間結像素子の特性(2面コーナーリフレクタのミラー表面粗さ又はミラー組立精度、反射率など)によっては、立体表示装置の表示像と空中浮遊像の寸法にずれが生じるため、傾き角βからのずれが生じる場合がある。
【0107】
次に、視差画像領域抽出部52は、領域パラメータ格納部56から所定の条件を取得し、所定の条件に基づいて視差画像領域を抽出する(ステップS102)。ここでは、視差画像領域としてメインローブ画像の領域を抽出する。領域抽出の際に用いる境界線のパラメータとしては、回転角α又は傾き角βを用いることもできるが、立体表示装置に実際用いる3Dディスプレイ20と空間結像素子30とを組み合わせ、空中浮遊像から実測した傾き角γの適用が好ましい。
【0108】
次に、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行う(ステップS103)。例えば、
図38Bに示すように、入力画像の左眼用画像がL
A、L
B及びL
Cで構成され、右眼用画像がR
A、R
B及びR
Cで構成されている場合、左眼用画像のメインローブ画像RBと、右眼用画像のメインローブ画像LBとを入れ替える。
【0109】
そして、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行った画像データを3Dディスプレイ20に出力し、3Dディスプレイ20はその画像データに基づいて、表示パネル21に画像を表示する(ステップS104)。ここでは、逆視が生じるメインローブの左眼用画像と右眼用画像とが入れ替えられているため、
図38Cに示すように、観察者は全ての領域が3D正視領域となった空中浮遊像を視認することができる。
【0110】
なお、上記では、左右各々の入力画像が左右及び中央の3つの画像で構成される場合について記載したが、実施例1で
図26を用いて説明したように、左右各々の入力画像が複数の領域で構成される場合に対しても同様に適用することができる。
【0111】
また、本実施例の立体表示装置へ、実施例2の画像処理部の適応も可能であり、実施例2で説明した視差画像補正方法を適用することも可能である。
【0112】
さらに、第1及び第2の実施例と同様に、EVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離は、観察者の位置に伴って変化するため、立体表示装置10にカメラを設置し、画像処理部50が、適宜カメラから観察者を撮影した画像を取得し、撮影画像から特徴点を抽出して両眼の位置を検出し、両眼の位置及び間隔などに基づいて、EVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離を特定して領域パラメータ格納部56に格納すればよい。また、所定の条件として、表示パネル21の特性又はレンチキュラレンズ29の特性などの他の条件を利用することができる。また、空間結像素子30の特性に関する所定の条件として、空間結像素子30を構成する2面コーナーリフレクタのミラー表面粗さ、ミラー組立精度又は反射率などを利用することもできる。
【0113】
このように、入力画像から逆視が生じる視差画像領域を抽出し、その視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを入れ替えることにより、空中浮遊像に3D正視領域と3D逆視領域とが交互に出現するという問題を回避することができる。
【0114】
なお、本実施例に用いる表示パネル21は、液晶表示素子、有機EL(Electro Luminescence)素子、量子ドット素子又はフィールドエミッション素子など、様々な表示素子を用いることができる。また、表示パネル21の駆動方法は、TFT等を用いたアクティブマトリクス方式に限らず、パッシブマトリクス方式でもよい。
【実施例4】
【0115】
本発明の第4の実施例に係る立体表示装置及び視差画像補正方法について、
図39乃至
図44を参照して説明する。
【0116】
図39は、本実施例の立体表示装置130の構成を示す斜視図である。
図40は観察者の移動に応じたPxの値を説明する図である。
図41は観察者の移動に応じて観察する視認画像と逆視領域を示す図である。
図42は本発明の第4の実施例に係る立体表示装置における画像処理部、視点位置検出部の構成例を示すブロック図である。
【0117】
図39に示すように、本実施例の立体表示装置130は、3Dディスプレイ20と空間結像素子30と画像信号入力部140と画像処理部150と、空間結像素子30と観察者との位置関係を検出するための手段である視点位置検出部160から構成される。
【0118】
3Dディスプレイ20は、第1及び第3の実施例で説明したものを用いることができ、詳細説明は略す。また、以降、説明の便宜上、本実施例に実施例1の3Dディスプレイ20を用いた例で説明する。
【0119】
図39に空中浮遊像からの法線を示し、観察者が空中浮遊像を好適に立体視できる法線上の距離をLpとする。また、X軸と平行な軸上における観察者の左眼位置60と右眼位置61との中点をPxとする。次に、
図39に示す空中浮遊像と観察者を真上から観察した
図40を用い、観察者が空中浮遊像との距離Lpを保ちながら移動した場合のPxの値について説明する。
図40Bに示すように、観察者が空中浮遊像に対して中心位置にいるときのPxの値を0とし、
図40Aのように、観察者が左に移動した場合のPxの値を負とし、
図40Cのように、観察者が右に移動した場合のPxの値を正とする。このPxを用いて、観察位置VPxを以下の式で定義する。
【0120】
VPx=Px/Lp ・・・・・式(1)
【0121】
次に、観察者がX軸と平行な軸上を移動する場合の視認画像について説明する。
図41は、3Dディスプレイ20の右眼用画素と左眼用画素に異なる入力画像を入れたとき、観察者が
図39に示すX軸との平行移動に応じて観察する視認画像と、逆視領域を示す図である。ここで、観察位置の値には、式(1)で算出されるVPxの値を用いる。
【0122】
例えば、VPx=0のとき、左眼の視認画像は、実施例1で
図25Bによって説明したものと同じであり、中央部には、逆視が生じるメインローブの右眼用画像が視認され、その左右両端にはサイドローブの左眼用画像が視認される。また、VPx=0のとき、右眼の視認画像は、中央部には、逆視が生じるメインローブの左眼用画像が視認され、その左右両端にはサイドローブの右眼用画像が視認される。
【0123】
観察者が右方向へ移動すると、逆視が生じるメインローブ画像も右方向へ移動し、両端のサイドローブ画像も右へ移動する。このとき、実施例1の
図17及び
図20に示すように、メインローブの画像(一次光による画像)とサイドローブの画像(高次光による画像)は、X方向に繰り返して出現するため、メインローブ画像に対して左側のサイドローブ画像のさらに左側に再びメインローブ画像が出現する。具体的には、VPx=+0.022において、左眼の視認画像は、左端から順に、メインローブの右眼用画像、サイドローブの左眼用画像、メインローブの右眼用画像、サイドローブの左眼用画となり、右眼の視認画像は、左端から順に、メインローブの左眼用画像、サイドローブの右眼用画像、メインローブの左眼用画像、サイドローブの右眼用画となる。このため、VPx=+0.022において、逆視領域はVPx=0の逆視領域が右側に移動した領域に加え、左端にも出現する。つまり、観察者が観察位置を変えると、
図41に示すように視認画像が変化するため、逆視領域も変化する。
【0124】
このように、観察者の位置に応じて、逆視が生じる位置が変化することから、本実施例の立体表示装置130では、視点位置検出部160をさらに設けることで、観察者の位置に応じた逆視領域を求め、画像信号入力部40から入力される入力画像に対して、その求めた逆視領域に対して左右反転させる(逆視が生じる領域の左眼用画像と右眼用画像とを入れ替える)画像処理を行い、画像処理後の画像データを3Dディスプレイ20に出力するようにする。
【0125】
この視点位置検出部160は、
図42に示すように、観察者撮影部161と、両眼位置検出部162とで構成される。また、画像処理部150は、
図42に示すように、視差画像補正部51、領域パラメータ格納部164及び相対位置算出部163から構成される。
【0126】
観察者撮影部161は、視点位置検出部160から観察者の両眼までの三次元座標を測定するために、観察者の画像を撮影する手段であり、可視光カメラ、可視光カメラと赤外線カメラの組合せ又は複数のカメラを用いることができる。
【0127】
両眼位置検出部162は、観察者撮影部161で取得された画像データを基に観察者両眼の三次元座標を算出する。算出方法は観察者撮影部161によって異なり、例えば、可視光カメラ1台のみの場合は、撮影画像内の顔の特徴点から両眼位置を算出し、顔の大きさによって距離を算出する。可視光カメラと赤外線カメラの組合せの場合は、可視光カメラ撮影画像内の顔の特徴点から両眼位置を算出し、パターン発光させた赤外光の撮影画像から距離を算出、または、投光した赤外線が戻る時間を計測する方式(TOF方式:Time Of Flight 光の飛行時間)によって距離を算出する。複数のカメラを用いる場合は、撮影画像内の顔の特徴点から両眼位置を算出し、三角法によって距離を算出する。
【0128】
上記のようにして、算出された視点位置検出部160から観察者両眼までの測定値が、相対位置算出部163へ入力される。相対位置算出部163では、取得した測定値と、立体表示装置130の視点位置検出部160の設置位置等の設計パラメータとを基に、空中浮遊像と観察者の位置関係(
図39に示す距離Lp、及び両眼中心位置Px)を算出し、算出結果を領域パラメータ格納部に出力する。出力された空中浮遊像と観察者の位置関係が、領域パラメータ格納部164に格納される。
【0129】
本実施例の視差画像補正部51は、実施例1と同じであり、視差画像領域抽出部52と画像データ入替部53とで構成される。
【0130】
視差画像補正部51の視差画像領域抽出部52は、画像信号入力部40から2視点分の撮影画像若しくは1視点分の撮影画像と仮想視点画像のセットを取得し、領域パラメータ格納部164から、空中浮遊像と観察者の位置関係(
図37に示す距離Lp、及び両眼中心位置Px)、3Dディスプレイ20と空間結像素子30の距離、空間結像素子30のアスペクト比などの所定の条件を読み出し、所定の条件の内の少なくとも1つの条件に基づいて、逆視が生じる領域(視差画像領域)を抽出する。例えば、
図41に示すように、観察位置に応じた逆視領域を抽出する。
【0131】
なお、観察者の位置に伴って変化するEVS角度及び空間結像素子30と観察者との距離は、視点位置検出部160と相対位置算出部163によって算出された空中浮遊像と観察者の位置関係により算出することができる。これらの観察者位置に対する変化率を領域パラメータ格納部164に格納しておけばよい。また、所定の条件として、表示パネル21の特性又はレンチキュラレンズ29の特性などの他の条件を利用することができる。また、空間結像素子30の特性に関する所定の条件として、空間結像素子30を構成する2面コーナーリフレクタのミラー表面粗さ、ミラー組立精度又は反射率などを利用することもできる。
【0132】
画像データ入替部53は、入力画像から視差画像領域抽出部52が抽出した視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを特定し、それらを入れ替えた画像データを生成し、生成した画像データを3Dディスプレイ20に出力する。例えば、
図41に示す左眼用入力画像の逆視領域画像と、右眼用入力画像の逆視領域画像を特定し、それらを入れ替えた画像データを生成し3Dディスプレイ20に出力する。
【0133】
以上で説明した本実施例の構成以外は、実施例1と同じ構成であるため詳細説明は省略する。
【0134】
図43は本発明の第4の実施例に係る立体表示装置10における視差画像補正方法を示すフローチャート図である。
図39及び
図42に示す視点位置検出部160、及び画像処理部150を用いた視差画像補正方法について、
図43のフローチャート図を用いて以下に説明する。
【0135】
まず、画像処理部150は、画像信号処理部40から入力画像(2視点分の撮影画像若しくは1視点分の撮影画像と仮想視点画像のセット)を取得する(ステップS401)。次に視点位置検出部160では、観察者撮影部161で撮影された画像から、両眼位置検出部162において、観察者両眼位置を検出する(ステップS402)。画像処理部150では、視点位置検出部160で検出された両眼位置に基づき、相対位置算出部163において、空中浮遊像と観察者の位置関係(距離Lp、両眼中心位置Px)が算出され、領域パラメータ格納部164に出力される(ステップS403)。なお、観察者が撮影範囲にいないため空中浮遊像と観察者の位置関係を算出できない場合には、以前に算出された位置関係、あるいは、理想的な位置関係を領域パラメータ格納部164に出力すればよい。
【0136】
次に、視差画像領域抽出部52は、領域パラメータ格納部164から観察者の位置関係を含む所定の条件を取得し、これらに基づいて視差画像領域を抽出する(ステップS404)。ここでは、視差画像領域として、
図41に例示するように観察者の位置によって変化する逆視領域を抽出する。次にステップS401で取得した入力画像について、抽出された逆視領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行う(ステップS405)。例えば、
図41に示す左眼用入力画像の逆視領域画像と右眼画像入力画像の逆視領域画像とを入れ替える。
【0137】
そして、画像データ入替部53は、視差画像領域の左眼用画像と右眼用画像との入れ替えを行った画像データを3Dディスプレイ20に出力し、3Dディスプレイ20はその画像データに基づいて、表示パネル21に画像を表示する(ステップS406)。ここで、逆視が生じる左眼用画像と右眼用画像とが入れ替えられているため、観察者は全ての領域が3D正視領域となった空中浮遊像を視認することができる。
【0138】
なお、上記では、
図41の例を用い、VPx=0において左右各々の入力画像が左右及び中央の3つの画像で構成される場合を示したが、実施例1で説明したように、左右各々の入力画像が複数の領域で構成される場合に対しても同様に適用することができる。
【0139】
このように、観察者の位置を検出し、観察者の位置に応じて入力画像から逆視が生じる視差画像領域を抽出し、その視差画像領域に対応する左眼用画像と右眼用画像とを入れ替えることにより、観察者が移動した場合でも、空中浮遊像に3D正視領域と3D逆視領域とが交互に出現するという問題を回避することができる。
【0140】
なお、本実施例の立体表示装置に実施例1の3Dディスプレイ20を用いて説明したが、実施例3の3Dディスプレイ20を用いることも可能である。実施例3の3Dディスプレイ20を用いる場合は、逆視領域の形成する境界線を3Dディスプレイ20の特性に合わせた傾きとすればよい。
【0141】
また、本実施例で説明した観察者の位置を検出し、観察者の位置に応じて入力画像から逆視が生じる視差画像領域を抽出する処理を実施例2に適用することも可能である。この場合のフローチャートを
図44に示す。
【0142】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成又は制御は適宜変更可能である。