(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動回路と前記封止材との間に、前記トランジスタの半導体部分を覆う、前記第1金属の融点よりも高い材料により構成された金属層を備える請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の表示装置。
電流により発光する有機発光素子と前記有機発光素子に供給される電流を制御する画素回路とを備える複数の画素を有する画像表示部と、前記画像表示部の外側に配置される、前記複数の画素回路を駆動するトランジスタおよび前記トランジスタに含まれる電極部に接続された第2配線部を有する駆動回路と、前記駆動回路と前記画像表示部との間に配置される、前記トランジスタに前記第2配線部を介して電圧を供給する第1配線部とを、第1基板に形成し、
前記画素回路、前記有機発光素子、前記第1配線部および前記第2配線部を囲む場所に封止材を配置し、
前記封止材の上側に、前記駆動回路と前記第1配線部と前記第2配線部と前記画像表示部とを覆う第2基板を配置し、
前記封止材を溶解して前記第1基板と前記第2基板との間の空間を封止し、
前記封止材は、少なくとも前記駆動回路の真上に配置され、
前記電極部と前記第2配線部とを構成する第2金属の材料は、前記第1配線部を構成する第1金属の融点よりも高い材料で構成されている
表示装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、表示装置の実施の形態を、図を適宜参照しながら説明する。なお、明細書、特許請求の範囲における“第1”、“第2”等の序数は、要素間の関係を明確にするため、および要素間の混同を防ぐために付している。したがって、これらの序数は、要素を数的に限定しているものではない。
【0013】
また、図示した構成要素の寸法や比率などは、実物の構成要素と一致するようには図示されていない場合がある。また、図示や図面の説明の都合上、実物に含まれる構成要素が省略されていたり、図示した構成要素の寸法が実物に含まれる構成要素よりも誇張されている場合がある。
【0014】
また、“接続”という用語は、接続対象間で電気的に接続していることを意味している。“電気的に接続”は、接続対象間が、電極、配線、抵抗、キャパシタ等の電気的素子を介して接続している場合も含む。なお、“電極”や“配線”という用語は、これらの構成要素を機能的に限定していない。たとえば、“配線”は“電極”の一部として利用されることも可能である。また、逆に、“電極”は“配線”の一部として利用されることも可能である。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、表示装置10の外観図である。
図1は、表示装置10を前側、すなわち画像を表示する面の側から見た図である。表示装置10は、静止画および動画を表示する装置である。表示装置10は、電子機器に組み込まれる。電子機器は、たとえばスマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パソコン、テレビ等である。以下の説明では、各図中に矢印で示す左、右、上および下のそれぞれを使用する。本実施の形態の表示装置10は、有機EL表示パネルである。
【0016】
表示装置10は、第1基板11、第2基板12、ドライバIC13およびFPC(Flexible Printed Circuits)14を備える。第1基板11および第2基板12は、ガラス製の基板である。第1基板11および第2基板12は、上下方向に長い長方形である。第2基板12の左右方向の長さは、第1基板11の左右方向の長さとほぼ等しい。第2基板12の上下方向の長さは、第1基板11の上下方向の長さよりも短い。第1基板11と第2基板12とは、第2基板12を前側にして、上辺、左辺および右辺を揃えて重なっている。第1基板11の前側の面の下部は、第1基板11に覆われていない。ドライバIC13は、異方性導電フィルムを使用して第1基板11に実装された集積回路である。ドライバIC13の機能については後述する。
【0017】
FPC14は、第1基板11に接続された軟性の基板である。第1基板11は、FPC14と、ドライバIC13および後述する駆動回路20とを接続する図示しない配線を有する。FPC14は、電子機器の制御装置との接続用の図示しないコネクタを備える。表示装置10は、FPC14を介して電子機器の制御装置から画像信号を取得する。
【0018】
第1基板11は、規則的に配列した多数の画素(図示しない)を有する画像表示部15を備える。画像表示部15は、カソード電極19を含む。第2基板12は、カソード電極19を覆う。
【0019】
画素は、有機発光素子(
図26参照)および有機発光素子に供給する電流を制御する画素回路(
図26参照)を含む。有機発光素子97は、画素回路が供給する電流に基づいて発光する。画素回路については後述する。
【0020】
カソード電極19は、各画素に接続された有機EL素子上に配置される共通電極である。カソード電極19には、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、Ag、MgAg及びこれらの化合物などの仕事関数が小さな金属薄膜が用いられる。カソード電極19の抵抗を下げるために、これらの金属薄膜上にITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnOまたはIn
2O
3等の透明導電膜材料、あるいは透明導電性インク製またはグラフェン製等の半透明電極を全面または部分的な補助配線として堆積してもよい。
【0021】
第1基板11は、駆動回路20を備える。本実施の形態の駆動回路20は、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23、保護回路24の少なくとも1つの例示である。駆動回路20は、例えば、走査ドライバ21である。駆動回路20は、半導体プロセスにより形成する。以下にこれらの半導体回路の概略を説明する。
【0022】
走査ドライバ21は、画像表示部15の左辺に沿って画像表示部15の外側に配置されている。走査ドライバ21は、FPC14を介して取得した画像信号に基づいて、画像表示部15の走査線を選択して駆動する回路である。走査線は、
図1の左右方向の太線矢印で示す走査線方向に配列した、同時に輝度が変化する画素の列である。
【0023】
図1の上下方向の太線矢印は、走査方向を示す。走査ドライバ21は、駆動する走査線を走査方向に切り替えることにより、画像表示部15に画像を表示する。なお、走査ドライバ21が走査線を切り替える順番は、画像表示部15の上側から下側に向けて、下側から上側に向けてのいずれでも良い。また、走査ドライバ21は、任意の順番で走査線を切り替えても良い。
【0024】
デマルチプレクサ22は、画像表示部15の下辺に沿って画像表示部15の外側に配置されている。デマルチプレクサ22は、FPC14を介して取得した高い転送速度のデータ列を本来の転送速度の複数のデータ列に戻す回路である。デマルチプレクサ22は、1本の走査線の信号を同時に画像表示部15に出力する。
【0025】
エミッション制御ドライバ23は、画像表示部15の右辺に沿って画像表示部15の外側に配置されている。エミッション制御ドライバ23は、FPC14を介して取得した画像信号に基づいて、画像表示部15内の各有機発光素子97の発光時間を制御する回路である。
【0026】
なお、走査ドライバ21とエミッション制御ドライバ23の配置は左右逆でも問題ない。走査ドライバ21を左右両方に配置して、走査線を左右両側から同時に駆動しても構わない。このようにすることにより、走査線方向に配列した画素同士の動作の遅延を抑制することができる。
【0027】
保護回路24は、画像表示部15の上辺に沿って画像表示部15の外側に配置されている。保護回路24は、静電気放電等による表示パネルの破損を防ぐ回路である。
【0028】
走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24は、いずれも多数のトランジスタを含む集積回路であり、駆動回路20の例示である。以後の説明では、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24のうちのいずれか1つまたは複数を駆動回路20と記載する場合がある。
【0029】
図2は、
図1のII−II線による表示装置10の模式断面図である。
図3は、
図2の左側部分を拡大して示す模式断面拡大図である。
図2および
図3を使用して、表示装置10の断面構造を説明する。
【0030】
表示装置10の断面構造は、外側から順番に、余裕領域B(
図3参照)、封止領域C、第1電源領域D、第2電源領域E、表示領域Fに分かれている。なお、余裕領域Bは狭いので、
図2では省略し、
図3で示す。
【0031】
余裕領域Bは、第1基板11と第2基板12とを分離する場合の切断余裕である。この余裕が少なければ、表示パネルを個別に切断する時に封止材25に物理的な応力が加わりクラックを生じ、そのクラックから水分が侵入してしまうため有機EL素子の信頼性が劣化してしまう。また、切断部分まで封止材25が広がってしまうと、切断そのものが困難となり、切断加工精度が低下して切断面のでこぼこがひどくなってしまう。
【0032】
封止領域Cは、第1基板11と第2基板12との間を封止する領域である。有機ELは水分が侵入すると特性が劣化してしまう。そのため、封止材25によって完全に密封された空間27には、乾燥した空気や、窒素ガス等の不活性ガスが充填されている。また、封止部分に有機膜層があると、その層や界面を通じて水分が侵入する。水分の進入を防止するために、封止材25の下部は無機膜のみの構造とする。製造工程中に使用する有機膜は封止領域Cでは除去されている。
【0033】
封止領域C内に駆動回路20(例えば、走査ドライバ21)が配置されている。駆動回路20は、トランジスタ26を含む。
図3では、図示の都合上、模式的に2個のトランジスタ26を示しているが、封止領域Cには、実際には3個以上のトランジスタ26がある。トランジスタ26は、無機材料、ゲート部32およびソースドレイン部33を含む。
【0034】
第1電源領域Dは、駆動回路20に電源およびクロックを供給する第1配線部341を備える領域である。第1配線部341は、
図3の紙面の厚さ方向、すなわち表示装置10の上下方向(
図1参照)に延びる平行線状の配線である。なお、
図3では、図示の都合上、模式的に3本の第1配線部341を記載したが、本実施の形態の表示装置10は後述するように4本の第1配線部341を備える。
【0035】
第1配線部341は、低融点金属製である。第1配線部341は、第2コンタクトホール37を介して金属製のソースドレイン部33と接続する。第1電源領域Dの詳細については後述する。
【0036】
第2電源領域Eには、カソード電極19を含む画像表示部15に電源を供給する配線が配置される。有機EL製造工程において、カソード電極19は後述する表示領域Fから第2電源領域Eまでを覆うように形成され、第2電源領域Eにおいて画像表示部15に電源を供給する配線に接続されている。
【0037】
表示領域Fは、画像表示部15を備える領域である。第2電源領域Eおよび表示領域Fの詳細については後述する。
【0038】
図1から
図3を使用して、第1基板11と第2基板12とを固定する構造を説明する。
【0039】
図1に示すように、第2基板12は、第1基板11上の画像表示部15、カソード電極19、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24を覆う。
【0040】
第1基板11と第2基板12とは対向する。第1基板11と第2基板12との間には空間27がある。空間27には、たとえば乾燥空気または窒素ガスなどの不活性ガスがある。
【0041】
図1に示すように画像表示部15の周囲を囲む封止材25が、
図2および
図3に示すように第1基板11と第2基板12とを接合し、第1基板11と第2基板12との間の空間27を気密に封止する。
【0042】
封止材25は、たとえば加熱により溶解し、冷却により硬化する部材である。封止材25は、たとえばガラスフリット接合材である。表示装置10の製造装置(図示しない)は、無機絶縁膜44と第2基板12との間に配置された低融点ガラス粉体に、第2基板12を介してレーザを照射する。このレーザ照射により低融点ガラス粉体が加熱されて溶解する(なお、レーザが照射される領域については、
図4のレーザ照射領域Lを参照)。
【0043】
この溶解した低融点ガラス粉体は、その後硬化する。この硬化した低融点ガラス粉体(封止材25)により、第1基板11の面上に形成された駆動回路20(例えば、走査ドライバ21)と第2基板12とが接合される。以上説明したように、封止材25は、加熱により溶解し冷却により硬化する部材である。また、表示装置10は、封止材25と駆動回路20との間に無機絶縁膜44を有する。
【0044】
画像表示部15は、電流に基づき発光する有機発光素子(
図26参照)と有機発光素子に供給される電流を制御する画素回路(
図26参照)とを備える複数の画素を有する。駆動回路20(例えば、走査ドライバ21)は、複数の画素回路を駆動するトランジスタ26を有する。第1配線部341は、トランジスタ26に電圧を供給する。
【0045】
駆動回路20(例えば、走査ドライバ21)は、画像表示部15の外部(外側)に配置されている。第1配線部341は、画像表示部15と駆動回路20との間であって、第1の基板11側に配置されている。
【0046】
第2配線部332は、トランジスタ26に含まれる電極部(例えば、ソースドレイン部33)と第1配線部341とを接続する。なお、ソースドレイン部33は、トランジスタのソース電極又はドレイン電極の何れか又は両方を意味する場合がある。また、ソースドレイン部33は、ソース電極に接続するソース配線又はドレイン電極に接続するドレイン配線の何れか又は両方を意味する場合がある。
【0047】
以上説明したように、表示装置10は、第1基板11と、第2基板12と、封止材25と、画像表示部15と、駆動回路20と、第1配線部341と、第2配線部332とを備える。封止材25は、第1基板11と第2基板12とを封止する。なお、
図3では、走査ドライバ21の上に封止材25を配置することで、第1基板11と第2基板12とを封止している。換言すれば、封止材25は、第1基板11と第2基板12との間の空間27を封止している。
【0048】
封止材25および第1基板11と第2基板12との間の空間27を封止する方法の例について説明する。
図4は、有機EL表示パネルの製造工程を示す説明図である。
図4は、
図2の左側部分を拡大して示す模式断面拡大図である。
図4では、第1基板11と第2基板12との間に位置する層を省略して記載する。なお、
図4は有機EL表示パネルを製造する工程の最終段階である封止工程を説明する図である。製造工程全体の流れについては後述する。
【0049】
図4に示すように、封止領域Cは印刷領域G、アラインメント余裕H、拡散余裕Jおよびレーザ照射領域Lを含む。レーザが照射される領域Lの直下には、
図3に示すトランジスタ26が配置されている。なお、拡散余裕Jがトランジスタ26の一部を含んでも良い。
【0050】
封止工程の概要を説明する。製造装置は、画像表示部15(
図1参照)および駆動回路20(
図1参照)を作成した第1基板11の片面の縁に、画像表示部15を囲むように封止材25を塗布する。製造装置は、封止材25を、駆動回路20(例えば、走査ドライバ21)の上にも塗布する。なお、塗布は、たとえば印刷により行う。封止材25を印刷する領域を、印刷領域Gで示す。印刷する封止材25は、たとえば低融点ガラスの粉、すなわちガラスフリットを主成分とするペーストである。
【0051】
製造装置は、第2基板12を配置して封止材25を覆う。製造装置は、第2基板12側からレーザを照射して封止材25を溶解する。レーザ照射領域Lは、レーザが照射される領域である。レーザ照射領域Lは、印刷領域Gよりもアラインメント余裕Hの2倍分広い。
【0052】
溶解した封止材25は、駆動回路20(例えば、走査ドライバ21)と第2基板12の間で広がる。そのため、レーザ照射領域Lの左右に、拡散余裕Jを確保する。溶解した封止材25が硬化して、TFT基板16と第2基板12との間の空間27、すなわち第1基板11と第2基板12との間の空間27を封止する。
【0053】
図1および
図3に示すように、封止材25は、駆動回路20のトランジスタ26と第2基板12との間に配置されている。そして、レーザ照射領域Lには、駆動回路20のトランジスタ26が配置されている。レーザにより駆動回路20のトランジスタ26が照射されると、レーザの照射や、レーザの照射により溶解した封止材25により、このトランジスタ26の温度が上昇する。
【0054】
前述のとおり、トランジスタ26のゲート部32を構成する金属およびソースドレイン部33を形成する金属は、高融点金属材料である。また、トランジスタ26を構成する無機材料も熱に強い。したがって、トランジスタ26はレーザ照射の熱による損傷に対して耐性を有する。その結果、製造時に、トランジスタ26にレーザが照射されても、トランジスタ26の特性が変化することを抑制できる。
【0055】
レーザ照射により溶解した封止材25は、冷却により硬化する。封止材25が硬化した部分と駆動回路20とが重なる。さらに、無機絶縁膜44と封止材25が硬化した部分とが重なる。換言すれば、封止材25が硬化した部分と駆動回路20のトランジスタ26とが対向(対面)する。より詳しく説明すれば、レーザ照射領域Lと、駆動回路20のトランジスタ26とが重なる(対向)する。
【0056】
ところで、ガラスフリット接合材による封止構造を有する表示装置は、従来から使用されている。しかし、従来の表示装置は、ガラスフリットを用いた封止部の直下から外れた場所に、トランジスタを含む駆動回路が配置されている(特許文献1〜4参照)。
【0057】
しかし、本件の発明者は、狭額縁化を図るため、封止材25の直下であり、製造時にレーザが照射される領域Lの下に駆動回路20を配置した。詳しくは、本件の発明者は、レーザ照射領域Lの直下に駆動回路20のトランジスタ26を配置するように設計した。なお、特許文献2においても、ガラスフリットのペーストを塗布した部分の直下に走査駆動部が配置されている。
【0058】
しかしながら、特許文献2においては、封止工程の前に、走査駆動部等の熱に弱い部分にはマスキングが行われている。そのため、ガラスフリットを溶解するレーザは、走査駆動部の上を照射しない。このマスキングにより、走査駆動部内の配線およびトランジスタの熱変形を防止する。
【0059】
以上により特許文献2においては、ガラスフリットを溶解するレーザが照射される領域には、走査駆動部が配置されていない。その結果、走査駆動部の上に塗布したガラスフリットは、溶融せず、封止構造には寄与しない。すなわち、特許文献2においては、封止構造を実現するためには、走査駆動部の直上を除く領域に、レーザを照射してガラスフリットを溶解する領域を設ける必要がある。したがって、十分に狭額縁化の効果を得ることは難しい。
【0060】
本実施の形態では、レーザが照射されるレーザ照射領域Lの直下にも駆動回路20を配置している。このような配置を行った結果、より狭額縁化した表示装置10を提供することができる。
【0061】
かかる配置の場合、レーザが、駆動回路20のトランジスタのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極およびこれらを接続する配線に照射されると、電極及び配線が融解する可能性がある。
【0062】
そこで、本実施の形態においては、かかるトランジスタの電極および配線の材料にたとえばモリブデンまたはチタン等の高融点金属を使用して、レーザ照射による融解を防ぐ。このように、狭額縁化を図るため、高融点金属を有するトランジスタを封止材25の直下に配置する構成は、従来の技術文献には何ら記載も示唆もない。
【0063】
さらに、トランジスタに電圧を供給する第1配線部341を、画像表示部15と駆動回路20を配置した領域との間に設けて、配線レイアウトを最適化する。
【0064】
配線部を駆動回路の配置領域の左右に設ける技術が開示されている。一例を挙げると、櫛歯形状の配線を対向させる構成である。この場合、配線部が、ガラスフリットを使用した封止部の直下に位置することになる(特許文献1参照)。このような位置関係にする場合には、フリット直下の配線部を高融点金属で構成しなければならない(特許文献1参照)。
【0065】
配線部の材料に高融点金属を用いる場合には、抵抗が大きくなるので電圧低下が発生する場合がある。その結果、電源供給遅延、信号遅延が発生する。電源供給遅延、信号遅延等が発生した場合には、表示領域内の画素の動作が不安定になり、画質が低下する等の悪影響が発生する可能性がある。特に、かかる配線(例えば、第1配線部341)は、電源装置から駆動回路に電源を供給する。また、かかる配線は、クロック発生回路から駆動回路にクロックを供給する。そして、電源装置やクロック発生回路と駆動回路との距離は比較的長い。すなわち、かかる配線部の長さが長くなる。そのため、配線部の材料に高抵抗の高融点金属を使うと電源供給遅延、信号遅延等による悪影響が発生する可能性が高くなる。その結果、画素の動作が不安定になり易い。かかる遅延による悪影響を抑制するため、本実施の形態においては、前記したとおりレイアウトの最適化を行って、第1配線部341を高融点金属で構成する必要性を無くしている。そして、第1配線部341にシート抵抗の小さい低融点金属を使用して、前記した遅延の発生を抑制する。
【0066】
本実施の形態の駆動回路20のトランジスタ26の電極および配線に使用する高融点金属(モリブデンまたはチタン等)は、アルミニウムなどに比べて高抵抗である。したがって、電圧低下が発生し、電源供給遅延、信号遅延が発生する可能性がある。
【0067】
かかる遅延による悪影響を防止するため、本実施の形態においては第1配線部341の材料を有機発光素子(
図26参照)のアノード電極18(
図5参照)の材料と同一にする。アノード電極18(
図5参照)の材料は、低融点金属である。
【0068】
なお、第1配線部341の材料にアノード電極18の材料と同じ低融点金属を利用することにより、アノード電極18の作成と同じタイミングで、第1配線部341を作成できる。したがって、製造プロセスを複雑にせずに、狭額縁の表示装置10を提供することが可能になる。
【0069】
一方、トランジスタ26に含まれる電極部(例えば、ゲート部32、ソースドレイン部33)と第1配線部341とを接続する第2配線部332の長さは、前記した配線部(例えば、第1配線部341)の長さに比べて、電圧低下の発生による影響が無視できる程短い。そのため、前記した遅延の発生を抑制できる。
【0070】
図5は、表示装置10の模式平面図である。
図5は、
図1に示す表示装置10の左側部分に設けた半導体および配線を拡大して示す図である。
図5においては、第1基板11、封止材25、無機絶縁膜44等は図示を省略する。
図5の各領域(B〜F)は、
図3の各領域を表示装置10の前側から見た領域である。なお、
図3においては封止領域Cには模式的に2個のトランジスタ26を示したが、封止領域Cには3個以上のトランジスタが配置されている。
【0071】
なお、本実施の形態では、駆動回路20のトランジスタにCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを使用する場合を例として説明する。
【0072】
図5を使用して、半導体および配線の配置の概要を説明する。
図5に示すように、余裕領域Bには配線がない。
【0073】
封止領域Cについて説明する。封止領域Cには、半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33を有するトランジスタが多数並んでいる。半導体部31は、多結晶シリコン製の層である。ゲート部32は、高融点金属製の層である。ゲート部32は、ゲート電極321を含む。ゲート電極321は、たとえば半導体部31とゲート部32とが重なる部分である。
【0074】
ソースドレイン部33は、高融点金属から構成される。高融点金属は、たとえばモリブデン、チタンまたはタングステン等の高融点の純金属である。高融点金属は、モリブデン/ニオブ、モリブデン/タングステンまたはモリブデン/タンタル等でも良い。ここで「/」は、前後の金属の積層体および前後の金属の合金の両方を意味している。また、高融点金属は、純金属と合金との積層体でも良い。ここに列挙した材料は例示であり、高融点金属をここに挙げた金属材料に限定するものではない。
【0075】
半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33の間は、第1コンタクトホール36を介して接続する。
【0076】
封止領域Cのソースドレイン部33は、トランジスタのソースドレイン電極部331を含む。ソースドレイン電極部331は、トランジスタのソース電極3311およびドレイン電極3312を含む。前述のとおり、ソースドレイン電極部331およびゲート電極321は、本実施の形態の駆動回路20が備えるトランジスタに含まれる電極部の例示である。
【0077】
本実施の形態においては、ゲート部32およびソースドレイン部33の材料は、同一の高融点金属材料である。したがって、ゲート電極321、ソース電極3311およびドレイン電極3312は、同一の高融点金属で構成される。
【0078】
なお、ゲート部32およびソースドレイン部33の材料は、異なる高融点金属材料であっても良い。
【0079】
第1電源領域Dについて説明する。第1電源領域Dには、封止領域Cから右方向に延びるソースドレイン部33、および、図面の上下方向に延びる第1配線部341が配置されている。第1配線部341は、低融点金属製の低融点配線層34の一部である。低融点金属は、たとえばアルミニウム、銅、金等の、配線に通常使用する金属であり、前述の高融点金属に比べて融点が低い。
【0080】
第1配線部341は、たとえば駆動回路20のトランジスタに低電源VSSを供給するVSS配線3411および高電源VDDを供給するVDD配線3412を含む。また第1配線部341は、2本のクロック配線3413を含む。1本目のクロック配線3413は、たとえば駆動回路20のトランジスタにクロックCK1を供給し、2本目のクロック配線3413は、たとえば駆動回路20のトランジスタにクロックCK2を供給する。すなわち、第1配線部341は、駆動回路20が備えるトランジスタに電圧を供給する配線である。
【0081】
ソースドレイン部33は、第2配線部332を含む。第2配線部332は、駆動回路20のトランジスタに含まれる電極部と第1配線部341とを接続する。第2配線部332は、たとえば第2ソース配線3321および第2ドレイン配線3322を含む。電極部は、例えば、ソース電極3311、ドレイン電極3312、ゲート電極321である。
【0082】
第2ソース配線3321は、ソース電極3311から、右方向、すなわち第1配線部341の方向に延びている。第2ソース配線3321は、ソース電極3311とVSS配線3411またはVDD配線3412とを接続する。第2ソース配線3321は、右端の第2コンタクトホール37を介してVSS配線3411またはVDD配線3412に接続する。すなわち、第2ソース配線3321は、右端の第2コンタクトホール37を介して第1配線部341に接続する。
【0083】
第2ドレイン配線3322は、ドレイン電極3312と第1配線部341に含まれる第1ドレイン配線とを接続する。第2ドレイン配線3322は、封止領域Cから右方向、すなわち第1配線部341の方向に延びている。第2ドレイン配線3322は、右端の図示しないコンタクトホールを介して第1配線部341に接続する。なお、第2ドレイン配線3322と第1配線部341との接続部については、図示を省略する。
【0084】
第2電源領域Eについて説明する。第2電源領域Eには、カソード配線部342、第3配線部343、ゲート部32Fおよびソースドレイン部33Fが配置されている。カソード配線部342および第3配線部343は上下方向に延びる。
【0085】
ゲート部32Fは、封止領域Cのゲート部32と同一の材料を使用して、同一の工程で製作される層である。ソースドレイン部33Fは、封止領域Cおよび第1電源領域Dのソースドレイン部33と同一の材料を使用して、同一の工程で製作される層である。ゲート部32Fおよびソースドレイン部33Fは、表示領域Fの方向に延びる。
【0086】
カソード配線部342は、カソード電極19にアナログ負電源PVEEを供給する陰極電源配線である。第3配線部343は、画素回路にアナログ正電源PVDDを供給する陽極電源配線である。カソード配線部342および第3配線部343は、低融点配線層34の一部である。
【0087】
ゲート部32Fおよびソースドレイン部33Fは、表示領域F内の画素回路にアナログ電源を供給する。カソード配線部342とカソード電極19とは、両者が重なる場所に存在する開口部17を介して接続する。なお、開口部17は、素子分離層開口部とも呼ぶ。ゲート部32Fは、ソースドレイン部33Fと接続する。
【0088】
表示領域Fについて説明する。表示領域Fには、アノード電極18および発光部171が配置されている。なお、画素回路の配線および半導体は図示を省略する。アノード電極18は、たとえば低融点配線層34と同一の材料から構成される。アノード電極18は、低融点配線層34と同一の工程で作成可能である。アノード電極18と重なる場所に、発光部171が配置される。発光部171は、有機発光素子97(
図26参照)が発光する部分である。画像表示部15は、多数の有機発光素子97を含む。
【0089】
図6は、封止領域Cの模式断面図である。
図6では、
図3と同様に封止領域Cに配置されている多数のトランジスタのうちの、2個のトランジスタを含む部分を模式的に示す。
図6を使用して、封止領域Cの構造を説明する。なお、以後の断面図の説明では表示装置10の後ろ側すなわち第1基板11側を下、表示装置10の前側すなわち第2基板12側を上にして説明する。
【0090】
表示装置10は、第1基板11上に、下地絶縁層41、半導体部31、ゲート絶縁層42、ゲート部32、層間絶縁層43、ソースドレイン部33、無機絶縁膜44、封止材25、第2基板12、1/4波長位相差板28および偏光板29を有する。
【0091】
第1基板11の上には、全面に下地絶縁層41が配置されている。下地絶縁層41の上には半導体部31が配置されている。半導体部31の上および半導体部31が覆っていない下地絶縁層41の上には、ゲート絶縁層42が配置されている。ゲート絶縁層42の上には、ゲート部32が配置されている。ゲート部32の上およびゲート部32が覆っていないゲート絶縁層42の上には、層間絶縁層43が配置されている。層間絶縁層43の上には、ソースドレイン部33が配置されている。ソースドレイン部33の上およびソースドレイン部33が覆っていない層間絶縁層43の上には、無機絶縁膜44が配置されている。封止材25は、無機絶縁膜44と第2基板12との間を隙間無く埋める。
【0092】
第2基板12の上には、1/4波長位相差板28が配置されている。1/4波長位相差板28の上には、偏光板29が配置されている。ソースドレイン部33は、第1コンタクトホール36を介して半導体部31と接続する。
【0093】
ゲート絶縁層42、層間絶縁層43および無機絶縁膜44は、それぞれ一定の厚さを有し、下の層の凹凸を反映した形状である。
【0094】
第1基板11、下地絶縁層41、半導体部31、ゲート絶縁層42、層間絶縁層43、無機絶縁膜44、封止材25および第2基板12は無機材料製である。ゲート部32およびソースドレイン部33は、高融点金属から構成される。すなわち、封止領域Cは、1/4波長位相差板28および偏光板29を除いて無機材料および高融点金属のみで構成されている。
【0095】
図6の左側の半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33は、P−ch S/A TFT(P Channel Super Aluminum Thin Film Transistor)を形成する。左側の半導体部31は、P型高濃度不純物層311およびアンドープ層313を含む。
図6の右側の半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33は、N−ch LDD TFT(N Channel Lightly Doped Drain Thin Film Transistor)を形成する。右側の半導体部31は、アンドープ層313、N型高濃度不純物層314およびN型低濃度不純物層315を含む。P−ch S/A TFT、N−ch LDD TFTは、駆動回路20を構成するトランジスタの一例である。
図6に示すP−ch S/A TFTおよびN−ch LDD TFTは、
図3に示すトランジスタ26と対応している。
【0096】
封止領域Cの一番右側に配置されたN−ch LDD TFTの右側のソースドレイン部33は、第1電源領域Dに向けて延びる第2配線部332(
図3参照)と連続している。
【0097】
図7は、第1電源領域Dおよび第2電源領域Eの模式断面図である。
図7を使用して、第1電源領域Dおよび第2電源領域Eの構造を説明する。なお、
図6を使用して説明した封止領域Cと共通する部分については説明を省略する。
【0098】
表示装置10は、第1基板11の上に、下地絶縁層41、ゲート絶縁層42、層間絶縁層43、第2配線部332、無機絶縁膜44、平坦化層45、低融点配線層34、分離層46、カソード電極19、キャップ層48、第2基板12、1/4波長位相差板28および偏光板29を有する。
【0099】
第1基板11の上には、全面に下地絶縁層41が配置されている。下地絶縁層41の上には、ゲート絶縁層42が配置されている。ゲート絶縁層42の上には、層間絶縁層43が配置されている。層間絶縁層43の上には、第2配線部332が配置されている。第2配線部332上および第2配線部332が覆っていない層間絶縁層43の上には、無機絶縁膜44が配置されている。
【0100】
無機絶縁膜44の上には、平坦化層45が配置されている。平坦化層45の上には、低融点配線層34が配置されている。この低融点配線層には従来のAl、Cu等の低抵抗配線材料、あるいはこれらの抵抗配線材料と高融点金属薄膜を積層した多層構造の配線材料を用いることもできるが、本図のようにアノード電極材料342と同じ材料を用いれば製造工程を簡略化できる。電源配線やクロック配線等の回路主要部の配線には、この低融点配線層34を用いる。したがって、回路設計上要求される上限以下の低抵抗値とアノード電極に要求される高反射率を両立できるような材料や膜構造が望ましい。例えばITO/Agの積層膜は低抵抗と高反射率を両立でき、アノード電極としての機能も実現できる。また、この積層膜の下部に他の金属薄膜を追加し、高融点金属膜332とのコンタクト抵抗を低減させることもできる。
【0101】
低融点配線層34および低融点配線層34が覆っていない平坦化層45の上には、分離層46が配置されている。なお、この分離層46は、素子分離層とも呼ぶ。分離層46の上には、カソード電極19が配置されている。カソード電極19の上には、キャップ層48が配置されている。なおキャップ層48はカソード電極19の縁も覆う。キャップ層48およびキャップ層48が覆っていない分離層46は、空間27を介して第2基板12と対向する。
【0102】
第2基板12の上には、1/4波長位相差板28が配置されている。1/4波長位相差板28の上には、偏光板29が配置されている。この構造により、外部より入射して第2基板12やカソード電極19、アノード電極342等の表面で反射した光は偏光板29で吸収され、有機EL素子から発光された光のみが前面に透過する。そのため、高いコントラスト比を実現することができる。カソード電極19は、開口部17を介して低融点配線層34と接続し、有機EL素子の点灯に必要な電流が有機EL素子に供給される。
【0103】
平坦化層45および分離層46は、有機材料製である。平坦化層45は、無機絶縁膜44の上側を覆う。平坦化層45の上面は、第2コンタクトホール37を除いて平坦である。
【0104】
第2配線部332は、右側の封止領域Cから第1電源領域Dの内部まで延びている。すなわち、第2配線部332は前述の、N−ch LDD TFTの右側のソースドレイン部33と接続する。
【0105】
低融点配線層34は、たとえば第1配線部341、カソード配線部342および第3配線部343を含む。第1配線部341は、第2コンタクトホール37を介してソースドレイン部33と接続する。
【0106】
分離層46は、低融点配線層34を覆う。分離層46は、第1電源領域Dの左端、すなわち封止領域Cと第1電源領域Dとの境界部から左側には存在しない。
【0107】
カソード電極19は、カソード配線部342と接続する。カソード電極19とカソード配線部342とが接続する部分が、分離層46が有する開口部17に対応する。カソード電極19は、キャップ層48で覆われている。キャップ層48の上面と、第2基板12との間には、空間27が形成される。
【0108】
なお、平坦化層45、分離層46およびキャップ層48は有機材料から構成される。低融点配線層34およびカソード電極19は、低融点金属製である。
【0109】
図8は、表示領域Fの模式断面図である。
図8を使用して、表示領域Fの構造を説明する。なお、
図6を使用して説明した封止領域Cと共通する部分については説明を省略する。また、
図7を使用して説明した第1電源領域Dおよび第2電源領域Eと共通する部分についても説明を省略する。
【0110】
表示装置10は、第1基板11の上に、下地絶縁層41、半導体部31、ゲート絶縁層42、層間絶縁層43、ソースドレイン部33、無機絶縁膜44、平坦化層45、アノード電極18、分離層46、発光層47、カソード電極19、キャップ層48、第2基板12、1/4波長位相差板28および偏光板29を有する。
【0111】
第1基板11の上には、全面に下地絶縁層41が配置されている。下地絶縁層41の上には半導体部31が配置されている。半導体部31の上および半導体部31が覆っていない下地絶縁層41の上には、ゲート絶縁層42が配置されている。ゲート絶縁層42の上には、ゲート部32が配置されている。ゲート部32の上およびゲート部32が覆っていないゲート絶縁層42の上には、層間絶縁層43が配置されている。層間絶縁層43の上には、ソースドレイン部33が配置されている。ソースドレイン部33の上およびソースドレイン部33が覆っていない層間絶縁層43の上には、無機絶縁膜44が配置されている。
【0112】
無機絶縁膜44の上には、平坦化層45が配置されている。平坦化層45の上には、アノード電極18が配置されている。アノード電極18およびアノード電極18が覆っていない平坦化層45の上には、分離層46が配置されている。分離層46の上には、発光層47が配置されている。発光層47および発光層47が覆っていない分離層46の上には、カソード電極19が配置されている。カソード電極19の上には、キャップ層48が配置されている。キャップ層48は、空間27を介して第2基板12と対向している。
【0113】
第2基板12の上には、1/4波長位相差板28が配置されている。1/4波長位相差板28の上には、偏光板29が配置されている。アノード電極18は、接続部38を介してソースドレイン部33と接続する。
【0114】
図8の左側の半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33は、TFT(Thin Film Transistor)を形成する。
図8の右側の半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33は、保持容量を形成する。いずれも、画素回路の回路部品の一例である。
【0115】
アノード電極18は、接続部38を介してTFTのソースドレイン部33と接続する。分離層46は、平坦化層45およびアノード電極18の縁を覆い、アノード電極18の中央部を覆わない。
【0116】
発光層47は、電流が流れると発光する有機化合物の層、すなわち有機EL層である。発光層47は、アノード電極18の上で分離層46が開口している部分およびその周囲に設けられている。カソード電極19は、発光層47および分離層46を覆う。
【0117】
発光層47の動作について説明する。接続部38を介して、アノード電極18に電圧が印加される。アノード電極18とカソード電極19との間の電位差により、アノード電極18側からは正孔が、カソード電極19側からは電子がそれぞれ発光層47に注入される。
【0118】
発光層47の内部で、正孔と電子との再結合によって生じた励起子(エキシトン)が基底状態に戻る際に光を発生する。すなわち、発光層47は、アノード電極18とカソード電極19との間における電流に基づいて発光する。分離層46が介在する部分では、電流が流れないため発光層47は発光しない。以上により、アノード電極18の上で分離層46が開口している部分が、発光部171になる。
【0119】
前述のとおり、平坦化層45、分離層46、発光層47およびキャップ層48は有機材料製である。アノード電極18およびカソード電極19は、低融点金属製である。すなわち、表示領域Fは、位相差板28および偏光板29以外にも有機材料および低融点金属を含む。
【0120】
本実施の形態においては、第1配線部341の材料のシート抵抗は、第2配線部332の材料のシート抵抗よりも低いことが望ましい。すなわち低融点配線層34のシート抵抗は、ソースドレイン部33のシート抵抗よりも低いことが望ましい。
【0121】
たとえば、第1配線部341のシート抵抗は0.1オーム以下であることが望ましい。たとえば、第1配線部341にITOと銀とITOとを積層した三層構造を採用する場合には、中央の銀の層を厚くすることにより、シート抵抗を0.1オーム以下にすることができる。
【0122】
ここで第1配線部341のシート抵抗は、第2コンタクトホール37等から離れた、一定の厚さの部分の第1配線部341のシート抵抗を意味する。また第2配線部332のシート抵抗は、第1コンタクトホール36等から離れた、一定の厚さの部分の第2配線部332のシート抵抗を意味する。
【0123】
図9は、比較例の表示装置810の外観図である。
図9は、表示装置810を前側、すなわち画像を表示する面の側から見た図である。
図1および
図9を使用して、本実施形態の効果について説明する。
【0124】
まず、
図9に示す比較例の表示装置810の構造について説明する。
図1と同一の部分については説明を省略する。比較例の第1基板811と第2基板812とを封止する封止材825は、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24の外側を囲んでいる。封止材25と、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24とは、離れている。比較例では、封止材25を溶解する際の熱が、走査ドライバ21等の駆動回路20中のトランジスタに影響を与えにくい。
【0125】
比較例では、画像表示部15の外周を囲む額縁領域は、たとえば画像表示部15の左辺側では走査ドライバ21、封止材825および両者の間の間隔を含む幅が必要である。封止材825を溶解する際の熱が走査ドライバ21のトランジスタに悪影響を与えることを防ぐためには、両者の間に間隔を空ける必要があるからである。
【0126】
一方、
図1に示す本実施の形態の表示装置10では高融点金属を使用して形成した走査ドライバ21と封止材25とを重ねて配置することができる。すなわち、走査ドライバ21を封止材25の直下に配置することができる。そのため、本実施の形態の表示装置10は、比較例に比べて走査ドライバ21の幅および走査ドライバ21と封止材25との間隔に相当する幅の分、額縁領域を狭くすることができる。したがって狭額縁化を実現した表示装置10を提供することができる。
【0127】
次に、配線構造の観点から本実施の形態の表示装置10の効果を説明する。本実施の形態においては、高融点金属製の第2配線部332を介して低融点金属製の第1配線部341から駆動回路20内のトランジスタに電圧を供給する。そのため、低融点金属製の第1配線部341と駆動回路20との間を離すことができる。したがって、駆動回路20の上に設けた封止材25を溶解する熱が、第1配線部341に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0128】
また、第1配線部341にシート抵抗の小さい低融点金属を使用することにより、駆動回路20に安定した電源やクロック信号を供給して、誤動作を防止することができる。
【0129】
さらに、第1配線部341とアノード電極18とを同一の工程で作成することができる。そのため、本実施の形態の表示装置10は、たとえば
図9を使用して説明した比較例と同じ工程数で製造することができる。すなわち、製造工程数を増加させずに、狭額縁化した表示装置10を提供することができる。
【0130】
図10は、有機EL表示パネルの製造の流れを示すフローチャートである。
図11から
図23および
図4は、有機EL表示パネルの製造工程を示す説明図である。
図10から
図23および
図4を使用して、本実施の形態の表示装置10の製造方法の概略を説明する。
【0131】
なお、以下の説明では、
図11、
図13、
図15、
図17および
図19に示す模式断面図に関しては表示領域F内の一個の有機発光素子97(
図26参照)および有機発光素子97を制御する画素回路を例として説明する。模式断面図においては一個の有機発光素子97について一個のTFTを示すが、一個の有機発光素子97が複数のTFTを備えても良い。また、半導体部31に不純物の添加等を行い、P型高濃度不純物層311、P型低濃度不純物層312、アンドープ層313、N型高濃度不純物層314およびN型低濃度不純物層315を形成する工程については、既存の半導体の製造工程と同様であるので説明を省略する。
【0132】
表示装置10の製造業者は、ガラス基板等の透光性基板である第1基板11の一面に、半導体プロセスを用いて画素回路および駆動回路20を作成する(ステップS501)。この際、表示装置10の製造業者は、画素回路および駆動回路20を構成する電極および配線に高融点金属を使用する。
【0133】
ステップS501の工程の概要について
図11から
図16を使用して説明する。まず、
図11および
図12を使用して説明する。
図11は、製造工程の途中の表示装置10の模式断面図である。
図12は、
図11に示す段階の表示装置10を前側から見た図である。
図12は、
図5と同じ部分を示す。
【0134】
表示装置10の製造装置は、第1基板11の片面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって、たとえばシリコン窒化膜等を堆積して下地絶縁層41を形成する。次に、製造装置は、下地絶縁層41の上にCVD法等によってアモルファスシリコンを堆積し、ELA(Excimer Laser Annealing)により結晶化して所定の形状の半導体部31を形成する。
【0135】
図13および
図14を使用して説明を続ける。
図13は、製造工程の途中の表示装置10の模式断面図である。
図14は、
図13に示す段階の表示装置10を前側から見た図である。
図12は、
図5と同じ部分を示す。なお、
図14には、本工程の後に作成する第1コンタクトホール36も記載する。
【0136】
製造装置は、半導体部31および下地絶縁層41の上にCVD法等によって、たとえばシリコン酸化膜等を堆積してゲート絶縁層42を形成する。製造装置は、スパッタ法等により所定の形状のゲート部32を積層する。前述のとおり、ゲート部32は、高融点金属材料製である。
【0137】
ゲート部32のうち封止領域C内に位置する部分は、駆動回路20内のトランジスタのゲート電極321および配線である。ゲート部32のうち第2電源領域Eから右側の表示領域Fに延びるゲート部32Fは、画素回路に電源を供給する配線である。
【0138】
図15および
図16を使用して説明を続ける。
図15は、製造工程の途中の表示装置10の模式断面図である。
図16は、
図15に示す段階の表示装置10を前側から見た図である。
図16は、
図5と同じ部分を示す。なお、
図16には、本工程の後に作成する第2コンタクトホール37も記載する。
【0139】
製造装置は、CVD法等によって、たとえばシリコン酸化膜等を堆積して層間絶縁層43を形成する。製造装置は、層間絶縁層43およびゲート絶縁層42に異方性エッチングを行い、半導体部31まで貫通する穴を作成する。製造装置は、スパッタ法等によって、所定の形状のソースドレイン部33を積層する。この際、半導体部31まで貫通する穴は、後の工程で半導体部31またはゲート部32とソースドレイン部33とを接続する第1コンタクトホール36になる。
【0140】
ソースドレイン部33の各部分について説明する。ソースドレイン部33のうち、封止領域C内で半導体部31と接続する第1コンタクトホール36付近の部分は、ソース電極3311およびドレイン電極3312である。封止領域C内でゲート部32と接続する第1コンタクトホール36は、ゲート部32を介してゲート電極321に接続する。
【0141】
ソースドレイン部33のうち、封止領域Cから右側に延びて、後の工程でVSS配線3411と接続される部分は、第2ソース配線3321である。ソースドレイン部33のうち、封止領域Cから右側に延びて、後の工程でVDD配線3412と接続される部分は、第2ドレイン配線3322である。第2ソース配線3321および第2ドレイン配線3322は、第2配線部332の例示である。
【0142】
以上の工程により
図10に示すステップS501が完了し、駆動回路20を形成するトランジスタが完成する。
【0143】
以上説明したように、表示装置10は、トランジスタに含まれる電極部(例えば、ソース電極3311、ドレイン電極3312、ゲート電極321)と第1配線部341とを接続する第2配線部332を有する。画像表示部15と第1配線部341とは、空間27内であって第1基板11面に配置されている。前記した電極部と第2配線部332とを構成する第2金属の融点は、第1配線部341を構成する第1金属の融点よりも高い。第1基板11と駆動回路20と封止材25と第2基板12とは積層されている。
【0144】
トランジスタに含まれる電極部と第2配線部332とは同一の金属で構成される。第2配線部332は、電極部のソース電極3311と接続する第2ソース配線3321を有する。第1配線部341は、第2ソース配線3321と接続する第1ソース配線を有する。VSS配線3411は、第1ソース配線の一例である。
【0145】
第2ソース配線3321は、第1配線部341の方向に向けて伸び、第2ソース配線3321の第1配線部341の側の端が、第1ソース配線に接続する。
【0146】
トランジスタに含まれる電極部と第2配線部332とは同一の金属で構成される。第2配線部332は、電極部のドレイン電極3312と接続する第2ドレイン配線3322を有する。第1配線部341は、第2ドレイン配線3322と接続する第1ドレイン配線を有する。VDD配線3412は、第1ドレイン配線の一例である。第2ドレイン配線3322は、第1配線部341の方向に向けて伸び、第2ドレイン配線3322の第1配線部341側の端が、第1ドレイン配線に介して接続する。
【0147】
図17、
図18および
図10に示すフローチャートを使用して説明を続ける。
図17は、製造工程の途中の表示装置10の模式断面図である。
図18は、
図17に示す段階の表示装置10を前側から見た図である。
図17は、
図5と同じ部分を示す。
【0148】
製造装置は、CVD法等によって層間絶縁層43およびソースドレイン部33を覆う無機絶縁膜44を作成する(ステップS502)。無機絶縁膜44は、たとえば酸化シリコンまたは窒化シリコン製である。
【0149】
製造装置は、スピンコート法等によって感光性の有機材料を堆積して平坦化層45を作成する(ステップS503)。製造装置は、異方性エッチング等によってソースドレイン部33まで貫通する穴を作成する。製造装置は、異方性エッチング等によって余裕領域Bおよび封止領域Cの平坦化層45を除去する。
【0150】
製造装置は、アノード電極18および低融点配線層34を作成する(ステップS504)。具体的には、たとえば蒸着装置が平坦化層45の前面およびソースドレイン部33まで貫通する穴の内面に金属薄膜を堆積させる。フォトリソグラフィー法等により金属薄膜の一部を除去して、アノード電極18および低融点配線層34を作成する。なお、この工程において製造装置は封止領域Cの金属薄膜を除去する。
【0151】
ソースドレイン部33まで貫通する穴は、アノード電極18とソースドレイン部33とを接続する接続部38または低融点配線層34とソースドレイン部33とを接続する第2コンタクトホール37になる。
【0152】
なお、アノード電極18は、たとえばITOと銀とITOを積層した三層構造であることが望ましい。このようにすることにより、アノード電極18は発光層47が発生する光を第2基板12側に反射する反射層の機能を備えることができる。したがって、発光層47が発生する光を効率良く利用することができる。
【0153】
また、アノード電極18はアルミニウムとITOとを積層した二層構造であってもよい。アルミニウムの代わりに、アルミニウムニッケル合金またはアルミニウムチタン合金を使用しても良い。
【0154】
低融点配線層34は、アノード電極18と同一の材料を同一の順番で積層した積層体であっても良い。このようにすることにより、低融点配線層34とアノード電極18とを同一の工程で作成することができる。
【0155】
低融点配線層34とアノード電極18とは、一部の層が共通であっても良い。また低融点配線層34とアノード電極18との材質が異なっていても良い。
【0156】
図19、
図20および
図10に示すフローチャートを使用して説明を続ける。
図19は、製造工程の途中の表示装置10の模式断面図である。
図20は、
図10に示すフローチャート中のステップS505終了時の表示装置10を前側から見た図である。
図19は、
図5と同じ部分を示す。
【0157】
製造装置は、分離層46を作成する(ステップS505)。具体的には、たとえばスピンコート装置が感光性の有機樹脂膜を積層する。露光装置が開口部17に対応する形状のパターンを露光する。現像装置およびエッチング装置が開口部17の部分の分離層46を除去することにより、所定の形状の分離層46を作成する。分離層46を
図20に破線のハッチングで示す。
【0158】
製造装置は、発光層47を作成する(ステップS506)。具体的には、金属製マスクを使用して、所定の形状の発光層47を蒸着する。発光層47は、たとえば赤色、青色、緑色の3種類の有機発光材料である。
【0159】
図19、
図21および
図10に示すフローチャートを使用して説明を続ける。
図21は、
図10に示すフローチャート中のステップS507終了時の表示装置10を前側から見た図である。
図21は、
図5と同じ部分を示す。
【0160】
製造装置は、たとえば蒸着によりカソード電極19を作成する(ステップS507)。製造装置は、たとえば蒸着によりキャップ層48を作成する。カソード電極19およびキャップ層48は、画像表示部15全体にまたがる層なので、高い精度で作成する必要は無い。
【0161】
以上の工程により、第1基板11の片面に駆動回路20および画像表示部15を有するTFT基板16が完成する。
【0162】
図22および
図23を使用して、
図10に示すフローチャート中のステップS508について説明する。
図22は、ステップS508を開始する前のTFT基板16を前側から見た図である。
図23は、ステップS508を終了した後のTFT基板16を前側から見た図である。
【0163】
図22を使用して、ステップS508を開始する前の第1基板11について説明する。長方形の画像表示部15の上をカソード電極19が覆っている。画像表示部15の周囲に、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24が配置されている。なお、画像表示部15と走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24に電圧を供給する第1配線部341、第2配線部332等は図示を省略する。
【0164】
製造装置は、画像表示部15の周囲に封止材25を印刷する(ステップS508)。印刷する封止材25は、たとえば低融点ガラスの粉、すなわちガラスフリットを主成分とするペーストである。
図23を使用して、製造装置が封止材25を印刷する場所を説明する。製造装置は、走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23および保護回路24の上を含み、画像表示部15の周囲を囲むように封止材25を印刷する。すなわち、製造装置は、画素回路、有機発光素子97、第1配線部341および第2配線部332を囲む場所に封止材25を配置する。このように、封止材25は、少なくとも駆動回路20の上側(断面図における上側)に配置される。
【0165】
製造装置は、TFT基板16の上に第2基板12を配置する(ステップS509)。第2基板12は、画像表示部15、カソード電極19および封止材25を覆う。なお、第2基板12は、
図22および
図23で図示を省略した第1配線部341、第2配線部332等も覆う。
【0166】
図4および
図10に示すフローチャートを使用して説明を続ける。前述のとおり、
図4は、表示装置10の左辺側の模式断面図である。
【0167】
製造装置は、第2基板12側からレーザを照射して封止材25を溶解する。溶解した封止材25が硬化して、TFT基板16と第2基板12との間の空間27、すなわち第1基板11と第2基板12との間の空間27を封止する(ステップS510)。
【0168】
ステップS508で封止材25を印刷する領域を、
図4中の印刷領域Gで示す。製造装置は、第2基板12側から封止材25にレーザを照射する。
【0169】
レーザの照射により溶解した封止材25は、硬化する前に第1基板11と第2基板12の間で広がる。そのため、レーザ照射領域Lの右側に、拡散余裕Jを確保する。このようにすることにより、溶解した熱い封止材25が第1電源領域Dの低融点配線層34に悪影響を与えることを防止できる。
【0170】
同様に、レーザ照射領域Lの左側にも、拡散余裕Jを確保する。このようにすることにより、溶解した熱い封止材25が第1基板11と第2基板12との間から流出してしまうことを防止できる。なお、拡散余裕Jの範囲のうち、第1基板11の縁の近傍で実際には封止材25が流れ込まない部分が、
図3等を使用して説明した余裕領域Bである。
【0171】
なお、封止工程は、たとえば乾燥空気、窒素ガス等の乾燥気体雰囲気中で行う。このようにすることにより、第1基板11、第2基板12および封止材25は、内部の空間27に乾燥気体を封止する。
【0172】
その後、製造装置は第2基板12に1/4波長位相差板28および偏光板29を張り付ける。以上の工程により、有機EL表示パネルが完成する。
【0173】
図24は、表示装置10のハードウェア構成図である。表示装置10は、FPC14、ドライバIC13およびTFT基板16を有する。TFT基板16は、たとえば走査ドライバ21、デマルチプレクサ22、エミッション制御ドライバ23を含む駆動回路20と画像表示部15とを有する。
【0174】
ドライバIC13は、FPC14を介して取得した画像信号を処理して、TFT基板16の駆動回路20に出力する。駆動回路20が画像表示部15を制御する。
【0175】
図25は、ドライバIC13の構成図である。
図25を使用して、ドライバIC13の機能について説明する。ドライバIC13は、調整部51、受信部56、高電圧ロジック部57、アナログ制御部58、アナログ出力部59およびDC/DCコンバータ55を有する。調整部51は、高速で動作可能な低電圧ロジック回路である。調整部51は、明るさ調整部52、色調調整部53およびガンマ調整部54を有する。明るさ調整部52、色調調整部53およびガンマ調整部54は、それぞれ明るさ調整回路、色調調整回路およびガンマ調整回路により実現される。
【0176】
調整部51はドライバIC13内に実装されたプロセッサであっても良い。このようにする場合には、調整部51は、たとえばドライバIC13が内部に有する図示しない不揮発性記憶装置から制御プログラムを読み出して、ドライバIC13内に実装された図示しないDRAM等に展開して実行する。以上により、明るさ調整部52、色調調整部53およびガンマ調整部54が実現される。
【0177】
ドライバIC13には、FPC14を介して制御信号、画像信号および入力電源が供給される。画像信号は、たとえばMIPI(Mobile Industry Processor Interface)アライアンスで定められた規格に準拠した信号である。
【0178】
受信部56は、画像信号を受信して調整部51に出力する。明るさ調整部52、色調調整部53およびガンマ調整部54が制御信号に基づいて映像信号を順次処理して、表示装置10の特性に合わせた信号になるように調整する。
【0179】
調整部51が処理した映像信号に基づいて、高電圧ロジック部57が表示パネル制御信号を生成する。表示パネル制御信号は、高電圧デジタル信号である。高電圧ロジック部57は、TFT基板16上の配線を介して駆動回路20内のエミッション制御ドライバ23および走査ドライバ21に表示パネル制御信号を出力する。エミッション制御ドライバ23および走査ドライバ21に送られた信号は、両ドライバの入力信号として作用する。
【0180】
調整部51が処理した映像信号をアナログ制御部58およびアナログ出力部59が処理して、出力端子信号を出力する。出力端子信号は、アナログ信号である。アナログ出力部59は、デマルチプレクサ22を介して画像表示部15に出力端子信号を出力する。出力端子信号は、画像表示部15のアナログ入力信号として作用する。
【0181】
調整部51により処理された映像信号および入力電源に基づいてDC/DCコンバータ55が表示パネル駆動電源を生成してTFT基板16上の各回路に供給する。各回路は、供給された表示パネル駆動電源により動作する。
【0182】
エミッション制御ドライバ23、走査ドライバ21が、それぞれの有機発光素子97(
図26参照)の輝度を制御する。画像表示部15は、この制御により、映像を表示する。
【0183】
有機発光素子97を発光させる回路の例について説明する。
図26は、一個の有機発光素子97を発光させる回路を示す回路図である。
図26では、一個の有機発光素子97を、有機発光ダイオードを意味するOLED(Organic Light Emitting Diode)の図記号を使用して記載する。以後の説明では、
図26に示す回路を画素回路と記載する。
【0184】
画素回路には、正電源線PVDD、負電源線PVEE、映像信号線Vdataおよび走査信号線Scanが接続する。映像信号線Vdataは、デマルチプレクサ22に接続する。走査信号線Scanは、走査ドライバ21に接続する。
【0185】
画素回路は、有機発光素子97、スイッチTFT96、駆動TFT98および保持容量99を含む。映像信号線Vdataは、スイッチTFT96のソース電極と接続する。走査信号線Scanは、スイッチTFT96のゲート電極に接続する。正電源線PVDDは保持容量99の一方の電極および駆動TFT98のソース電極に接続する。負電源線PVEEは、有機発光素子97のカソード電極19に接続する。スイッチTFT96のドレイン電極は、保持容量99の他方の電極および駆動TFT98のゲート電極に接続する。駆動TFT98のドレイン電極は、接続部38を介して有機発光素子97のアノード電極18に接続する。
【0186】
図27は、駆動TFT98の出力特性を示す説明図である。
図26および
図27を使用して、画素回路の動作について説明する。
【0187】
図27の横軸は、駆動TFT98の出力電圧Vdsを示す。
図27の縦軸は、駆動TFT98の出力電流Idsを示す。
図27中の実線は、駆動TFT98のゲート電極とソース電極との間の電位差Vgsが−1.5V、−2.0V、−2.5V、−3.0Vおよび−3.5Vのそれぞれである場合の駆動TFT98の出力電圧Vdsと出力電流Idsとの間の関係を示す。
図27中の破線は、有機発光素子97のアノード電極18とカソード電極19との間の電流と電圧の関係であるI−V特性を示す
【0188】
図28は、映像信号および駆動信号を示すタイムチャートである。
図28の横軸は時間を示す。
図28の縦軸は、映像信号Vdata、N番目の走査線の走査信号ScanNおよびN+1番目の走査線の走査信号ScanN+1の電圧を示す。映像信号Vdataは、それぞれの有機発光素子97を発光させる明るさに対応した、黒電位から白電位までの間の電圧である。走査信号ScanNおよび走査信号Scanは、ONまたはOFFのいずれかである。
図28では、走査信号Scanは低電圧である場合にON、高電圧である場合にOFFである。
【0189】
図26から
図28を使用して、有機発光素子97の動作について説明する。各画素回路に対して、走査信号線Scanおよび映像信号線Vdataから電圧が印加される。走査線が走査ドライバ21により選択されている場合、すなわち走査信号線ScanがONである場合には、スイッチTFT96がONになり、映像信号線Vdataから入力する電圧に応じた電圧がスイッチTFT96のドレイン電極から出力される。
【0190】
スイッチTFT96のドレイン電極の出力電圧と正電源線PVDDとの間の電位差Vgsに応じて、駆動TFT98は
図27に示す動作を行う。すなわちVgsが低電圧であるほど、有機発光素子97に多くの電流が流れる。その結果、有機発光素子97は高い輝度で発光する。走査信号線Scanからの入力がOFFになった後は、保持容量99に蓄積された電荷により駆動TFT98の電位差Vgsが維持され、有機発光素子97は発光を継続する。
【0191】
なお、
図26に示す画素回路は一例である。画素回路は、さらに多数のTFTおよび容量を組み合わせた構成であっても良い。
【0192】
以上に説明した半導体部31、ゲート部32、ソースドレイン部33、低融点配線層34の形状はいずれも例示であり、説明のために簡略化した模式図である。また、製造工程および各工程で使用する製造装置も例示である。
【0193】
なお、以上では表示装置10に第2基板12側の面に光を放射するトップエミッション型の有機ELパネルを使用する場合を例として、構造、動作および製造方法を説明した。表示装置10に、第1基板11の側に光を放射するボトムエミッション型の有機EL表示パネルを使用しても良い。
【0194】
[実施の形態2]
本実施の形態は、ゲート部32とソースドレイン部33との間に、第3高融点金属層35を有する表示装置10に関する。
【0195】
図29は、実施の形態2の表示装置10の模式平面図である。
図29は、表示装置10の左縁の半導体および配線を拡大した図である。
図29は、
図5と同じ部分を示す。実施の形態1と共通する部分については説明を省略する。
【0196】
図29を使用して、本実施の形態の半導体および配線の配置の概要を説明する。実施の形態1との相違点は、封止領域Cに設けた第3高融点金属層35である。なお、第3高融点金属層35は表示領域Fにも設けてあるが、
図29では図示を省略する。
【0197】
第3高融点金属層35の一部はソースドレイン部33で覆ってある。しかし、第3高融点金属層35の形状および配置を判りやすく示すため、
図29においてはソースドレイン部33で覆われた部分の第3高融点金属層35も太い実線で表示する。
【0198】
第3高融点金属層35は、左右方向に長い長方形である。第3高融点金属層35は、駆動回路20のトランジスタのチャネル領域の上に配置されている。なお、第1コンタクトホール36の存在する部分には、第3高融点金属層35は配置しない。
【0199】
図30は、実施の形態2の封止領域Cの模式断面図である。
図30では、
図3および
図6と同様に封止領域Cに配置されている多数のトランジスタのうちの、2個のトランジスタを含む部分を模式的に示す。
図30を使用して、封止領域Cの構造を説明する。
【0200】
第3高融点金属層35は、第1層間絶縁層431と第2層間絶縁層432との間に配置されている。第3高融点金属層35は、駆動回路20を構成するトランジスタのチャネル領域を覆う。
【0201】
第1層間絶縁層431および第2層間絶縁層432は、それぞれ一定の厚さを有し、下の層の凹凸を反映した形状である。
【0202】
第1層間絶縁層431、第2層間絶縁層432は無機材料製である。なお、第1層間絶縁層431と第2層間絶縁層432とは同一の材料であっても、異なる材料であっても良い。第3高融点金属層35は、高融点金属から構成される。
【0203】
図31は、実施の形態2の第1電源領域Dおよび第2電源領域Eの模式断面図である。
図31を使用して、第1電源領域Dおよび第2電源領域Eの構造を説明する。なお、
図30を使用して説明した封止領域Cと共通する部分については説明を省略する。
図31では、層間絶縁層として、第1層間絶縁層431、第2層間絶縁層432が配置されている。
【0204】
図32は、実施の形態2の表示領域Fの模式断面図である。
図32を使用して、表示領域Fの構造を説明する。なお、
図30を使用して説明した封止領域Cと共通する部分については説明を省略する。また、
図31を使用して説明した第1電源領域Dおよび第2電源領域Eと共通する部分についても説明を省略する。
【0205】
本実施の形態の表示装置10において、第1の実施の形態の
図8で示した層間絶縁層43に対応する層に、第1層間絶縁層431、第3高融点金属層35、第2層間絶縁層432がこの順で配置(積層)されている。
【0206】
図32の右側の、ゲート部32、第1層間絶縁層431および第3高融点金属層35は、保持容量を形成する。ソースドレイン部33は、第1コンタクトホール36を介して第3高融点金属層35と接続する。
【0207】
図32の断面には現れていないが、右側の部分でも下地絶縁層41とゲート絶縁層42との間に半導体部31を設けても良い。右側のゲート部32を設けずに半導体部31を設ける場合には、半導体部31と、ゲート絶縁層42および第1層間絶縁層431と第3高融点金属層35とは保持容量を形成する。右側のゲート部32と第3高融点金属層35との両方を設ける場合には、直列に接続した2個の保持容量を形成する。
【0208】
図33は、実施の形態2の有機EL表示パネルの製造工程を示す説明図である。本実施の形態の有機EL表示パネルは、実施の形態1で
図13および
図14を使用して説明した工程、すなわちゲート部32を作成する工程までは、実施の形態1と同一の工程で製造する。
【0209】
ゲート部32を形成した後に、製造装置は、CVD法等によって、たとえばシリコン酸化膜等を堆積して第1層間絶縁層431を形成する。製造装置は、スパッタ法等により所定の形状の第3高融点金属層35を積層する。名称のとおり第3高融点金属層35は、高融点金属材料製である。製造装置はCVD法等によって、たとえばシリコン酸化膜等を堆積して第2層間絶縁層432を形成する。
【0210】
図34は、実施の形態2の有機EL表示パネルの製造工程を示す説明図である。製造装置は、第1層間絶縁層431、第2層間絶縁層432およびゲート絶縁層42に異方性エッチングを行い、半導体部31または第3高融点金属層35まで貫通する穴を作成する。製造装置は、スパッタ法等によって、所定の形状のソースドレイン部33を積層する。以後の製造工程は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0211】
以上に説明したように、表示装置10は、駆動回路20と封止材25との間に、トランジスタの半導体部31を覆う、第1金属の融点よりも高い材料により構成された金属層(例えば、第3高融点金属層35)を備える。
【0212】
本実施の形態によると、レーザを照射して封止材25を溶解する工程において、駆動回路20を構成するトランジスタのチャネル領域にレーザ光が照射されることを防止することができる。そのため、チャネル領域の半導体の劣化を防止することができる。
【0213】
第3高融点金属層35は、レーザ光の反射率が高い材料であることが望ましい。このようにすることによりと、第3高融点金属層35が封止材25側へレーザ光を反射するため、封止材25が速やかに溶解する。したがって、短時間で確実に封止材25を溶解し、第1基板11と第2基板12との間の空間27を封止することができる。前記したように速やかに封止材25が溶解するので、トランジスタ26に対するレーザ光の照射時間を短くできる。その結果、レーザ光によるトランジスタ26の劣化を抑制できる。
【0214】
また、第3高融点金属層35を画素回路の容量部および配線にも使用することができる。したがって、表示領域Fに複雑な画素回路を高密度に作成することができる。
【0215】
[実施の形態3]
本実施の形態は、駆動回路20にPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)型のトランジスタを使用した表示装置10に関する。なお、実施の形態1と共通する部分については説明を省略する。
【0216】
図35は、実施の形態3の封止領域Cの模式断面図である。
図35では、
図3および
図6と同様に封止領域Cに配置された存在する多数のトランジスタのうちの、2個のトランジスタを含む部分を模式的に示す。
図35を使用して、封止領域Cの構造を説明する。
【0217】
図35で示す駆動回路20に使用するトランジスタは、PMOS型のトランジスタなので、
図6で示した構成と異なり、NMOSトランジスタが形成されていない。
図6のNMOSトランジスタに変えて、
図35では、右側の半導体部31、ゲート絶縁層42およびゲート部32により、保持容量を形成している。
【0218】
半導体部31は、P型高濃度不純物層311、P型低濃度不純物層312、アンドープ層313を含む。なお、
図35の左側の半導体部31、ゲート部32およびソースドレイン部33は、TFTを形成する。
【0219】
なお、
図35に示す断面には現れていないが、ソースドレイン部33は実施の形態1と同様に第1電源領域Dに向けて延びる第2配線部332と接続している場合がある。
【0220】
[実施の形態4]
本実施の形態は、駆動回路20にPMOS型のトランジスタを使用し、第3高融点金属層35を有する表示装置10に関する。なお、実施の形態2と共通する部分については説明を省略する。
【0221】
図36は、実施の形態4の封止領域Cの模式断面図である。
図36では、
図3および
図6と同様に封止領域Cに存在する多数のトランジスタのうちの、2個のトランジスタを含む部分を模式的に示す。
図36を使用して、封止領域Cの構造を説明する。
【0222】
本実施の形態で示す駆動回路20に使用するトランジスタは、実施の形態3と同様にPMOS型のトランジスタである。半導体部31等が形成するトランジスタの構造は、実施の形態3と同一であるので説明を省略する。
【0223】
図36の右側の部分では、第3高融点金属層35の一部である第3電極部352、第1層間絶縁層431およびゲート部32により、保持容量を形成している。
【0224】
図36の断面には現れていないが、右側の部分でも下地絶縁層41とゲート絶縁層42との間に半導体部31を設けても良い。右側のゲート部32を設けずに半導体部31を設ける場合には、半導体部31と、ゲート絶縁層42および第1層間絶縁層431と第3電極部352とは保持容量を形成する。右側のゲート部32と第3高融点金属層35と半導体部31とを設ける場合には、直列に接続した2個の保持容量を形成することができる。
【0225】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。