(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、平板環状に形成した芯金の表面に周方向に沿って摩擦材が設けられた湿式摩擦プレートの製造方法であって、芯金の表面に摩擦材をそれぞれ貼り付ける摩擦材固着工程と、芯金に対してレーザ光を相対的に変位させながら照射することで摩擦材の表面に凹状の微細溝を形成する微細溝形成工程とを含み、微細溝形成工程は、芯金における板面が露出した露出部分と摩擦材との間でレーザ光の出射を中断させることなく連続的に出射し続けて摩擦材の表面に微細溝を形成することにある。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、芯金の板面における露出部分と摩擦材との間でレーザ光の出射を中断させることなく連続的に出射し続けて摩擦材の表面に微細溝を形成しているため、レーザ光を出射するレーザヘッドに対する芯金の位置決め精度を緩和することができるとともにレーザ光の照射制御も簡易化することができ摩擦材に対する微細溝の形成作業の効率を向上させることができる。この場合、微細溝とは、溝幅が1000μm以下かつ10μ以上、深さが1000μm以下かつ10μ以上の断面形状が凹状に掘られた部分が断続的にまたは連続的に長尺に延びた形状に形成されている。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、摩擦材固着工程は、芯金の表面に周方向に沿って複数の摩擦材を隙間を介して配置して同芯金上に貼り付けられるものであり、微細溝形成工程は、芯金上における隙間部分と摩擦材との間でレーザ光の出射を中断させることなく連続的に出射し続けて摩擦材の表面に微細溝を形成することにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、芯金上における摩擦材間の隙間部分と摩擦材との間で前記レーザ光の出射を中断させることなく連続的に出射し続けて摩擦材の表面に微細溝を形成しているため、レーザ光を出射するレーザヘッドに対する芯金の位置決め精度を緩和することができるとともにレーザ光の照射制御も簡易化することができ摩擦材に対する微細溝の形成作業の効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、微細溝形成工程は、芯金の外側で前記レーザ光の出射を開始して芯金上にレーザ光を照射することにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、微細溝形成工程において芯金の外側でレーザ光の出射を開始して芯金上にレーザ光を照射するため、芯金上における露出部分または摩擦材に出射時および出射直後の不安定なレーザ光が照射されることを防止して微細溝を安定的に形成することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、微細溝形成工程は、芯金における露出部分でレーザ光の出射を開始して摩擦材上にレーザ光を照射することにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、微細溝形成工程において芯金における露出部分でレーザ光の出射を開始して摩擦材上にレーザ光を照射するため、芯金上における摩擦材に出射時および出射直後の不安定なレーザ光が照射されることを防止して微細溝を安定的に形成することができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、微細溝形成工程の前に、芯金における露出部分のうちの少なくとも一部に樹脂材料を塗布した樹脂層を形成する樹脂層形成工程とを含むことにある
【0016】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、微細溝形成工程の前に芯金における露出部分のうちの少なくとも一部に樹脂材料の層からなる樹脂層を形成する樹脂層形成工程を実行するため、芯金における露出部分に微細溝が形成されることを防止または軽減することができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、樹脂層形成工程は、摩擦材固着工程の前に実行されて樹脂層が芯金の表面全体に形成されており、摩擦材固着工程は、樹脂層上に摩擦材が貼り付けられていることにある。
【0018】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、樹脂層形成工程が摩擦材固着工程の前に実行されて樹脂層が芯金の表面全体に形成されるため、芯金の表面に樹脂層を容易かつ短時間に形成することができる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、樹脂層形成工程は、樹脂層が芯金の表面を視認できる程度の透明または半透明に形成されていることにある。
【0020】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、樹脂層が芯金の表面を視認できる程度の透明または半透明に形成されているため、芯金の表面における露出部分を視認でき湿式摩擦プレートの外観検査の妨げとならないとともに、レーザ光の照射によって芯金の表面における露出部分にどの程度の微細溝が形成されたかを確認することができる。
【0021】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、さらに、芯金上で露出する樹脂層を除去する樹脂層除去工程を含むことにある。
【0022】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、さらに、芯金上で露出する樹脂層を除去する樹脂層除去工程を実行するため、樹脂層の形成による重量の増加および樹脂層が残存することによる美観の低下を防止することができる。
【0023】
また、本発明の他の特徴は、前記湿式摩擦プレートの製造方法において、微細溝形成工程は、微細溝を芯金上で周方向に沿って螺旋状に延びて形成することにある。
【0024】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、湿式摩擦プレートの製造方法は、微細溝が芯金上で周方向に沿って螺旋状に延びて形成するため、レーザ光の照射を中断させることなく照射させ続けて微細溝を連続的に形成でき均質な微細溝を短時間に形成することができる。
【0025】
また、本発明は湿式摩擦プレートの製造方法の発明として実施できるばかりでなく、湿式摩擦プレートおよび湿式摩擦プレートを備えた湿式多板クラッチの発明としても実施できるものである。
【0026】
具体的には、湿式摩擦プレートは、平板環状に形成した芯金の表面に周方向に沿って摩擦材が設けられた湿式摩擦プレートであって、芯金における板面が露出した露出部分および摩擦材にそれぞれ形成されるとともに露出部分と摩擦材との間で平面視で連続的に繋がった状態で凹状の微細溝が形成されているようにすればよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0027】
この場合、湿式摩擦プレートにおいて、摩擦材は、芯金の表面に周方向に沿って複数の摩擦材が隙間を介して設けられており、微細溝は、芯金上における隙間部分と摩擦材との間に平面視で連続的に繋がった凹状に形成されているようにするとよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0028】
また、これらの場合、湿式摩擦プレートにおいて、さらに、芯金における露出部分のうちの少なくとも一部に樹脂材料からなる樹脂層が形成されているようにするとよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0029】
また、湿式摩擦プレートは、平板環状に形成した芯金の表面に周方向に沿って摩擦材が設けられた湿式摩擦プレートであって、芯金における摩擦材に凹状の微細溝が形成されており、芯金における板面が露出した露出部分のうちの少なくとも一部に樹脂材料からなる樹脂層が形成されているようにしてもよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0030】
また、これらの場合、湿式摩擦プレートにおいて、樹脂層は、芯金の表面全体に形成されており、摩擦材は、樹脂層上に貼り付けられているとよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0031】
また、これらの場合、湿式摩擦プレートにおいて、樹脂層は、芯金表面を視認できる程度の透明または半透明に形成されているとよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0032】
また、これらの場合、湿式摩擦プレートにおいて、微細溝は、芯金上で周方向に沿って螺旋状に延びて形成されているとよい。このように構成した湿式摩擦プレートによれば、前記湿式摩擦プレートの製造方法と同様の作用効果を期待することができる。
【0033】
また、湿式多板クラッチ装置は、具体的には、原動機によって回転駆動する駆動側プレートに隙間および潤滑油を介して対向側プレートを対向配置して両者を互いに密着または離隔させることで両者間で回転駆動力の伝達または遮断を行う湿式多板クラッチ装置において、駆動側プレートおよび対向側プレートは、少なくとも一方が請求項10ないし請求項16のうちのいずれか1つに記載した湿式摩擦プレートで構成すればよい。このように構成した湿式多板クラッチ装置によれは、前記湿式摩擦プレートの製造方法および前記湿式摩擦プレートと同様の作用効果を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る湿式摩擦プレート、同湿式摩擦プレートを備えた湿式多板クラッチ装置、および同湿式摩擦プレートの製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る湿式摩擦プレート200を備えた湿式多板クラッチ装置100の全体構成の概略を示す断面図である。また、
図2は、
図1に示す湿式多板クラッチ装置100が備える本発明に係る湿式摩擦プレート200の外観構成の概略を示す平面図である。また、
図3は、
図2に示す破線円3内の構成を芯金201の内側から見た状態を模式的に示す湿式摩擦プレート200の部分拡大側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この湿式多板クラッチ装置100は、二輪自動車(オートバイ)における原動機であるエンジン(図示せず)の駆動力を被動体である車輪(図示せず)に伝達または遮断するための機械装置であり、同エンジンと変速機(トランスミッション)(図示せず)との間に配置されるものである。
【0036】
(湿式多板クラッチ装置100の構成)
湿式多板クラッチ装置100は、アルミニウム合金製のハウジング101を備えている。ハウジング101は、有底円筒状に形成されており、湿式多板クラッチ装置100の筐体の一部を構成する部材である。このハウジング101における図示左側側面には、入力ギア102がトルクダンパ102aを介してリベット102bによって固着されている。入力ギア102は、エンジンの駆動により回転駆動する図示しない駆動ギアと噛合って回転駆動する。ハウジング101における内周面には、複数枚(本実施形態においては8枚)のクラッチプレート103がハウジング101の軸線方向に沿って変位可能、かつ同ハウジング101と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。
【0037】
クラッチプレート103は、後述する湿式摩擦プレート200に押し当てられる平板環状の部品であり、SPCC(冷間圧延鋼板)材からなる薄板材を環状に打ち抜いて成形されている。これらのクラッチプレート103における各両側面(表裏面)には、後述する潤滑油を保持するための深さ数μm〜数十μmの図示しない油溝が形成されている。また、クラッチプレート103における油溝が形成された各両側面(表裏面)には、耐摩耗性を向上させる目的で表面硬化処理がそれぞれ施されている。なお、この表面硬化処理については本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0038】
ハウジング101の内部には、略円筒状に形成された摩擦板ホルダ104がハウジング101と同心で配置されている。この摩擦板ホルダ104の内周面には、摩擦板ホルダ104の軸線方向に沿って多数のスプライン溝が形成されており、同スプライン溝にシャフト105がスプライン勘合している。シャフト105は、中空状に形成された軸体であり、一方(図示右側)の端部側がニードルベアリング105aを介して入力ギア102およびハウジング101を回転自在に支持するとともに、前記スプライン勘合する摩擦板ホルダ104をナット105bを介して固定的に支持する。すなわち、摩擦板ホルダ104は、シャフト105とともに一体的に回転する。一方、シャフト105における他方(図示左側)の端部は、二輪自動車における図示しない変速機に連結されている。
【0039】
シャフト105の中空部には、軸状のプッシュロッド106がシャフト105における前記一方(図示右側)の端部から突出した状態で貫通して配置されている。プッシュロッド106は、シャフト105における一方(図示右側)の端部から突出した端部の反対側(図示左側)が二輪自動車における図示しないクラッチ操作レバーに連結されており、同クラッチ操作レバーの操作によってシャフト105の中空部内をシャフト105の軸線方向に沿って摺動する。
【0040】
摩擦板ホルダ104の外周面には、複数枚(本実施形態においては7枚)の湿式摩擦プレート200が前記クラッチプレート103を挟んだ状態で、摩擦板ホルダ104の軸線方向に沿って変位可能、かつ同摩擦板ホルダ104と一体回転可能な状態でスプライン嵌合によってそれぞれ保持されている。
【0041】
一方、摩擦板ホルダ104の内部には、所定量の潤滑油(図示しない)が充填されているとともに、3つの筒状支持柱104aがそれぞれ形成されている(図においては1つのみ示す)。潤滑油は、湿式摩擦プレート200とクラッチプレート103との間に供給されてこれらの湿式摩擦プレート200とクラッチプレート103との間で生じる摩擦熱の吸収や摩擦材210の摩耗を防止する。
【0042】
また、3つの筒状支持柱104aは、摩擦板ホルダ104の軸線方向外側(図示右側)に向って突出した状態でそれぞれ形成されており、摩擦板ホルダ104と同心の位置に配置された押圧カバー107がボルト108a,受け板108bおよびコイルバネ108cを介してそれぞれ組み付けられている。押圧カバー107は、湿式摩擦プレート200の外径と略同じ大きさの外径の略円板状に形成されており、前記コイルバネ108cによって摩擦板ホルダ104側に押圧されている。また、押圧カバー107の内側中心部には、プッシュロッド106における図示右側先端部に対向する位置にレリーズベアリング107aが設けられている。
【0043】
(湿式摩擦プレート200の構成)
湿式摩擦プレート200は、詳しくは
図2に示すように、平板環状の芯金201上に油溝206および摩擦材210をそれぞれ備えて構成されている。芯金201は、湿式摩擦プレート200の基部となる部材であり、SPCC(冷間圧延鋼板)材からなる薄板材を略環状に打ち抜いて成形されている。この場合、芯金201の内周部には、摩擦板ホルダ104とスプライン勘合させるための内歯状のスプライン202が形成されている。
【0044】
この湿式摩擦プレート200における前記クラッチプレート103に対向する側面、すなわち、芯金201におけるクラッチプレート103に対向するリング状の板面には、樹脂層203を介して複数(本実施形態においては32枚)の小片状の摩擦材210が芯金201の周方向に沿って隙間からなる油溝206を介してそれぞれ設けられている。
【0045】
樹脂層203は、摩擦材210に微細溝211を形成する際に使用するレーザ光によって芯金201の板面に微細溝204が形成されることを防止または軽減するとともに摩擦材210を芯金201上に固着させるための部分である。より具体的には、樹脂層203は、熱硬化性樹脂製の接着剤によって構成されており、芯金201の両側の各表面の全面に略均一の厚さで形成されている。この場合、樹脂層203は、スプライン202の両側の側面上にもそれぞれ形成されている。
【0046】
また、樹脂層203は、摩擦材210を芯金201上で固着させるとともに芯金201の板面に微細溝204が形成されることを防止または軽減することができる厚さに形成される。具体的には、樹脂層203は、1μm以上かつ30μ以下が好適であるが2μm以上かつ10μm以下がより好適である。本実施形態においては、樹脂層203は、芯金201の表面から6μmの厚さで形成されている。この場合、樹脂層203は、芯金201の表面を人が視認できる程度の透明または半透明に形成されている。
【0047】
また、樹脂層203を構成する熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリイミド樹脂を用いることができる。本実施形態においては、樹脂層203は、フェノール樹脂で構成されている。また、樹脂層203を構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂以外に各種エラストマ(例えば、ニトリルゴム系またはクロロプレンゴム系)を用いることができる。これらの場合、樹脂層203を構成する樹脂は、必ずしも接着性を有する必要はない。すなわち、樹脂層203は、少なくとも芯金201の板面に微細溝204が形成されることを防止または軽減することができる樹脂で構成されていればよく、摩擦材210を芯金201上で固着させる材料は樹脂層203を構成する樹脂とは異なる物質からなる接着剤を用いてもよい。
【0048】
微細溝204は、摩擦材210の表面に微細溝211を形成する際に芯金201上に凹状に除去加工される部分であり、芯金201の摩擦材210が設けられた表面における同摩擦材210で覆われた以外の部分、すなわち、芯金201の板面における露出部205に湿式摩擦プレート200の平面視で微細溝211に連続的に繋がるように円弧状に延びる溝状に形成されている。本実施形態においては、微細溝204は、溝幅が約100μmで最深部の深さが約10μmの断面形状が円弧状に形成されている。この微細溝204は、微細溝211とともに湿式摩擦プレート200の平面視で3つの円環を形成するように形成されている。この場合、3つの円環状は、芯金201の中芯を中心とする同心円で構成されている。
【0049】
油溝206は、湿式摩擦プレート200の芯金201の内周縁と外周縁との間で潤滑油を導く流路であるとともに湿式摩擦プレート200とクラッチプレート103との間に潤滑油を存在させておくためのオイル保持部分でもあり、互いに隣接する摩擦材210と摩擦材210との間の隙間で構成されている。本実施形態においては、油溝206は、小片状の4つの摩擦材210ごとの間に扇状に形成された部分と、2つの扇状の油溝206の間に配置された前記4つの摩擦材210の各間に直線状に延びて形成された部分とで構成されている。
【0050】
摩擦材210は、前記クラッチプレート103に対する摩擦力を向上させるものであり、芯金201の周方向に沿って貼り付けられた小片状の紙材によって構成されている。本実施形態においては、摩擦材210は、芯金201の周方向に延びる四角形状の4つ小片を直線状の3つの油溝206を介して芯金201の周方向にそれぞれ配置した小片群を扇状の8つの油溝206を介して芯金201の周方向に8つ配置して構成されている。この摩擦材210の表面には、微細溝211が形成されている。なお、摩擦材210は、湿式摩擦プレート200とクラッチプレート103との摩擦力を向上させることができる素材で構成されていれば、紙材以外の素材、例えば、コルク材、ゴム材またはガラス材などで構成することができる。
【0051】
微細溝211は、摩擦材210上における潤滑油の保持性および排出性を規定するための部分であり、摩擦材210の表面上に凹状に形成されている。本実施形態においては、微細溝211は、芯金201の周方向に沿って円弧状に延びる溝状に形成されている。この場合、微細溝211は、本実施形態においては、溝幅が約100μmで最深部の深さが約200μmの断面形状が円弧状に形成されている。この微細溝211は、微細溝204とともに湿式摩擦プレート200の平面視で3つの円環を形成するように形成されている。この場合、3つの円環は、芯金201の中芯を中心とする同心円で構成されている。なお、微細溝204,211の断面形状は円弧状以外の形状、例えば、方形状または三角形状などの形状であってもよいことは当然である。
【0052】
(湿式摩擦プレート200の製造)
次に、このように構成された湿式摩擦プレート200の製造方法について
図4を参照しながら説明する。まず、作業者は、第1工程として、芯金201および摩擦材210をそれぞれ用意する。具体的には、作業者は、芯金201は、別途のプレス加工によってスプライン202を有した円環状に形成される。また、摩擦材210は、別途の抄造加工によって帯状に形成される。これらのプレス加工および抄造加工は、従来から公知の手法であるため説明を省略する。
【0053】
次に、作業者は、第2工程として、芯金201の2つの板面に樹脂層203をそれぞれ形成する。具体的には、作業者は、
図5に示すように、樹脂層203の原料となる液体状の熱硬化性樹脂からなる樹脂層原料を刷毛またはローラなどの器具を用いて芯金201の2つの板面の各全面に塗布した後、加熱して乾燥させることで樹脂層原料が硬化した樹脂層203を形成することができる。この場合、作業者は、芯金201の表面に対して1回の塗布または複数回の重ね塗りによって樹脂層203を形成することができる。なお、
図5においては、樹脂層203をハッチングで示している。この第2工程が、本発明に係る樹脂層形成工程に相当する。
【0054】
次に、作業者は、第3工程として、芯金201の2つの板面に摩擦材210を貼り付ける。具体的には、作業者は、液体状の接着剤を刷毛またはローラなどの器具を用いて芯金201における樹脂層203の全面に塗布した後、この接着剤が乾燥する前に摩擦材210を載置して樹脂原料を乾燥させる。本実施形態においては、接着剤は、樹脂層203の原料と同じ液体状の熱硬化性樹脂からなる樹脂層原料を用いる。すなわち、樹脂層203を構成する樹脂原料は、接着剤で構成されている。また、この場合、作業者は、帯状に延びる摩擦材210を芯金201に載置した状態で切断して摩擦材210を小片状に形成してもよいし、予め小片状に形成した摩擦材210を芯金201に載置するようにしてもよい。これにより、摩擦材210は、芯金201における樹脂層203上に固着される。
【0055】
なお、この第3工程においては、作業者は、接着剤を摩擦材210を配置する位置にのみ、または摩擦材210を配置する周方向に沿って円環状にのみ塗布することもできる。また、作業者は、樹脂層203が接着剤で構成されている場合には、前記第2工程における樹脂層原料を芯金201上に塗布した直後に摩擦材210を配置して樹脂層原料を硬化させることができる。すなわち、第2工程と第3工程とは同時に実行することもできる。この第3工程が、本発明に係る摩擦材固着工程に相当する。
【0056】
次に、作業者は、第4工程として、芯金201の両面に貼り付けられた各摩擦材210に微細溝211をそれぞれ形成する。この場合、作業者は、レーザ加工装置300を用いて微細溝211の形成加工を行う。ここで、レーザ加工装置300は、芯金201上の摩擦材210に対してレーザ光Lを照射して微細溝211を形成するための機械装置である。このレーザ加工装置300は、公知の機械装置であり詳細な説明は割愛するが、その構成を
図6を用いて簡単に説明しておく。
【0057】
レーザ加工装置300は、主として、レーザ発振器(図示せず)、レーザ調整光学系(図示せず)、レーザヘッド301、ワークテーブル302および制御装置(図示せず)をそれぞれ備えて構成されている。レーザ発振器は、摩擦材210上に微細溝211を形成するためのレーザ光Lを出射するための機械装置である。本実施形態においては、レーザ発振器は、周波数が300kHz、出力が60W、パルス幅がナノ秒、ピコ秒またはフェムト秒などのパルス幅の短いパルスレーザ光を発振する発振器で構成されている。レーザ調整光学系は、レーザ発振器が出射したレーザ光Lのビーム径、ビーム形状および収差の補正などの各種調整を行いつつレーザヘッド301に導くレンズおよびミラーなどの各種光学素子および光ファイバなどからなる光学部品で構成されている。
【0058】
レーザヘッド301は、レーザ調整光学系から導かれたレーザ光Lをワークテーブル302に向かって出射して湿式摩擦プレート上に集光する光学装置である。このレーザヘッド301は、ワークテーブル302に対して互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸方向に変位可能に構成されている。ワークテーブル302は、レーザヘッド301に対向する位置で摩擦材210が貼り付けられた芯金201を着脱自在に保持する装置である。なお、レーザヘッド301とワークテーブル302との位置関係は相対的なものであるため、レーザヘッド301に代えてワークテーブル302を変位させるように構成してもよいことは当然である。
【0059】
制御装置は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、レーザ加工装置300の全体の作動を総合的に制御する。具体的には、制御装置は、作業者の指示に従ってレーザ発振器、レーザ調整光学系およびレーザヘッド301の各作動を制御して摩擦材210上にレーザ光Lを照射しつつ変位させて微細溝211を形成する。
【0060】
この第4工程において、作業者は、摩擦材210が貼り付けられた芯金201をワークテーブル302上に保持させた後、レーザ加工装置300の制御装置に対して微細溝211の加工を指示する。この指示に応答して、制御装置は、レーザヘッド301からレーザ光Lを出射させながら同レーザヘッド301をX軸方向およびY軸方向に変位させることで摩擦材210上でレーザ光Lを変位させて微細溝211を形成する。
【0061】
具体的には、制御装置は、
図7に示すように、芯金201における露出部205上にレーザ光Lの照射を開始してこの位置P
1を始点としてレーザ光Lを出射し続けた状態を維持しながらレーザヘッド301を円環状に変位させるとともに位置P
1に戻った時点でレーザ光Lの出射を停止する。これにより、芯金201においては、露出部205および摩擦材210の各表面に平面視で連続的に繋がった円環状の微細溝204および微細溝211がそれぞれ形成される。なお、
図7においては、レーザ光Lが変位する円軌道を破線で示している。
【0062】
この場合、微細溝204は、芯金201の表面に樹脂層203が形成されているため樹脂層203が形成されていない場合に比べて溝幅が狭いおよび/または深さが浅い凹状の溝が形成される。本発明者らの実験によれば、樹脂層203の厚さを2μmの厚さに形成することで溝の深さを60%〜65%減少させて浅くすることができることを確認した。そして、制御装置は、芯金201における径方向の他の2つの位置P
2,P
3で前記と同様にレーザ光Lの出射とともに円環状に変位させて円環状の微細溝204および微細溝211をそれぞれ形成する。この第4工程が、本発明に係る微細溝形成工程に相当する。
【0063】
次いで、作業者は、ワークテーブル302上から芯金201を取り出すことで芯金201の片面側に対する微細溝211の形成作業が終了する。したがって、作業者は、微細溝204および微細溝211がそれぞれ形成された芯金201を裏返してもう一方の表面に対して同様の作業を行って3つの円環状の微細溝204および微細溝211をそれぞれ形成する。これにより、作業者は、芯金201の両面における摩擦材210の表面にそれぞれ微細溝211を形成することができる。この後、作業者は、摩擦特性の調整工程および検査工程を実施して湿式摩擦プレート200を完成させるが、本発明に直接関わらないためそれらの説明は省略する。
【0064】
(湿式摩擦プレート200の作動)
次に、上記のように構成した湿式摩擦プレート200の作動について説明する。この湿式摩擦プレート200は、前記したように湿式多板クラッチ装置100内に組み付けられて用いられる。そして、この湿式多板クラッチ装置100は、前記したように、車両におけるエンジンと変速機との間に配置されるものであり、車両の操作者によるクラッチ操作レバーの操作によってエンジンの駆動力の変速機への伝達および遮断を行なう。
【0065】
すなわち、車両の操作者(図示せず)がクラッチ操作レバー(図示せず)を操作してプッシュロッド106を後退(図示左側に変位)させた場合には、プッシュロッド106の先端部がレリーズベアリング107aを押圧しない状態となり、押圧カバー107がコイルバネ108cの弾性力によってクラッチプレート103を押圧する。これにより、クラッチプレート103および湿式摩擦プレート200は、摩擦板ホルダ104の外周面にフランジ状に形成された受け部104b側に変位しつつ互いに押し当てられて摩擦連結された状態となる。この結果、入力ギア102に伝達されたエンジンの駆動力がクラッチプレート103、湿式摩擦プレート200、摩擦板ホルダ104およびシャフト105を介して変速機に伝達される。
【0066】
一方、車両の操作者がクラッチ操作レバー(図示せず)を操作してプッシュロッド106を前進(図示右側に変位)させた場合には、プッシュロッド106の先端部がレリーズベアリング107aを押圧する状態となり、押圧カバー107がコイルバネ108cの弾性力に抗しながら図示右側に変位して押圧カバー107とクラッチプレート103とが離隔する。これにより、クラッチプレート103および湿式摩擦プレート200は、押圧カバー107側に変位しつつ互いに押し当てられて連結された状態が解除されて互いに離隔する。この結果、クラッチプレート103から湿式摩擦プレート200への駆動力の伝達が行われなくなり、入力ギア102に伝達されたエンジンの駆動力の変速機への伝達が遮断される。
【0067】
このクラッチプレート103と湿式摩擦プレート200とが摩擦接触した状態において摩擦材210の表面に形成された微細溝211は、摩擦材210上に存在している潤滑油の摩擦材210外への排出性を向上させる。また、クラッチプレート103と湿式摩擦プレート200とが離隔した状態において摩擦材210の表面に形成された微細溝211は、摩擦材210上に存在している潤滑油の摩擦材210での保持性を向上させる。
【0068】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、湿式摩擦プレート200およびその製造方法は、芯金201の板面における露出部分である露出部205と摩擦材210との間でレーザ光Lの出射を中断させることなく連続的に出射し続けて摩擦材210の表面に微細溝211を形成しているため、レーザ光Lを出射するレーザヘッド301に対する芯金201の位置決め精度を緩和することができるとともにレーザ光Lの照射制御も簡易化することができ摩擦材210に対する微細溝211の形成作業の効率を向上させることができる。
【0069】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態における湿式摩擦プレート200と同様の構成部分には湿式摩擦プレート200に付した符号に対応する符号を付して、その説明は省略する。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、樹脂層203は、摩擦材210の接着性を有する樹脂材料で構成した。しかし、樹脂層203は、必ずしも接着性を有する必要はなくレーザ光Lの進行を妨げるまたは光強度を低下させる機能を有していればよい。したがって、樹脂層203は、摩擦材210の接着性を有さない樹脂材料で構成することができる。この場合、摩擦材210は、芯金201上または接着性を有さない樹脂材料で構成された樹脂層203上に塗布された接着剤によって芯金201上に固着される。
【0071】
また、上記実施形態においては、樹脂層203は、芯金201の表面を人が視認できる程度の透明または半透明に形成されている。しかし、樹脂層203は、芯金201の表面を人が視認できない不透明に形成することでもきる。この場合、樹脂層203は、黒色などの濃色のほかにレーザ光Lを反射する鏡面色または金属色に形成することができる。
【0072】
また、上記実施形態においては、樹脂層203は、芯金201における2つの板面の各全面に形成した。しかし、樹脂層203は、芯金201の板面における摩擦材210が設けられていない部分、すなわち、外部に露出した部分である露出部205のうちの少なくとも一部、より具体的には、摩擦材210に微細溝211を形成する際にレーザ光Lが変位する経路上に形成されていればよい。したがって、樹脂層203は、芯金201の板面における摩擦材210が設けられていない露出部205のみ形成してもよいし、
図8に示すように、摩擦材210に形成される微細溝211の径方向の範囲に対応して周方向に円環状に延びる領域にのみ形成することもできる。なお、
図8においては、樹脂層203をハッチングで示している。
【0073】
また、上記実施形態においては、湿式摩擦プレート200は、芯金201の2つの板面にそれぞれ樹脂層203を形成して構成した。これにより、湿式摩擦プレート200は、芯金201における露出部205に微細溝211が形成されることを防止または軽減することができる。しかし、湿式摩擦プレート200は、芯金201の露出部205に微細溝211が形成されることが許容できる場合には樹脂層203を省略して構成することもできる。これによれば、湿式摩擦プレート200は、構成を簡単化することができる。また、湿式摩擦プレートの製造工程においても樹脂層形成工程を省略することができるため、製造負担を軽減することができる。
【0074】
また、湿式摩擦プレート200は、芯金201の2つの板面にそれぞれ形成した樹脂層203を微細溝204が形成された後に除去することもできる。具体的には、作業者は、芯金201の2つの板面にそれぞれ形成した樹脂層203を有機溶剤などの薬剤または切削加工を用いて除去する樹脂層除去工程を実行することができる。これによれば、湿式摩擦プレート200は、樹脂層203の形成による重量の増加および樹脂層203が残存することによる美観の低下を防止することができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、微細溝211は、芯金201の周方向に沿って断続的に延びる円環状に形成されて微細溝204とともに全体として連続的な円環状に形成した。しかし、微細溝211は、摩擦材210上における潤滑油の保持性および排出性をコントロールすることができる形状に形成されるものである。したがって、微細溝211は、円環状以外の形状、例えば、
図9および
図10にそれぞれ示すように、芯金201の周方向に沿って断続的に延びる螺旋状に形成されて微細溝204とともに全体として連続的な螺旋状に形成することができる。また、微細溝211は、
図11に示すように、芯金の径方向に沿って直線状または曲線状に形成することもできる。
【0076】
また、上記実施形態においては、摩擦材210は、芯金201の周方向に沿って複数の小片を油溝206を構成する隙間を介して断続的に並べて設けた。しかし、摩擦材210は、湿式多板クラッチ装置100の仕様に応じて適宜設けられるものである。したがって、摩擦材210は、
図10に示すように、芯金201の周方向に連続的に延びる円環状に形成することもできる。すなわち、湿式摩擦プレート200は、油溝206を省略して構成することができる。この場合、微細溝211は、芯金201の周方向に沿って連続的または断続的に延びる円環状または螺旋状に形成することができる。
【0077】
また、上記実施形態においては、湿式摩擦プレート200は、芯金201の露出部205に微細溝204が形成されている。しかし、微細溝204は、露出部205上に形成する樹脂層203の形成態様によって露出部205に形成されることを防ぐことができる。具体的には、微細溝204は、厚さを厚くしたり、レーザ光Lの透過性を少なくして光を反射率または吸収率を向上させることで露出部205に形成されることを防ぐことができる。なお、微細溝204は、樹脂層203にレーザ光Lが吸収されたり、露出部205に微細溝204が形成される際の熱によって樹脂層203に形成されることもある。
【0078】
また、上記実施形態においては、第4工程の微細溝形成工程においては、芯金201における露出部205上でレーザ光Lの出射を開始して摩擦材210上にレーザ光Lを変位させて照射するように構成した。これによれば、芯金201上における摩擦材210に対して出射時および出射直後の不安定なレーザ光Lが照射されることを防止して微細溝211を安定的に形成することができる。しかし、この微細溝形成工程においては、
図10に示すように、芯金201の外側(
図10においては、芯金201の内側)の位置P
4でレーザ光Lの出射を開始して芯金201における露出部205上または摩擦材210上にレーザ光Lを変位させて照射することもできる。これによれば、芯金201上における露出部205または摩擦材210に出射時および出射直後の不安定なレーザ光が照射されることを防止して微細溝204,211を安定的に形成することができる。なお、
図10における湿式摩擦プレート200においては、螺旋状の微細溝211を芯金201の内周側から外周側に連続的に形成した後、摩擦材210の外周部を経て芯金201の外周部の外側の位置P
5までレーザ光Lを出射し続けてレーザ光Lの出射を停止している。
【0079】
また、上記実施形態においては、湿式摩擦プレート200は、シャフト105と一体的に回転駆動する摩擦板ホルダ104に保持されている。すなわち、湿式摩擦プレート200は、エンジンの回転駆動力によって回転駆動するクラッチプレート103に対向配置されて湿式多板クラッチ装置100における出力軸であるシャフト105と一体的に回転駆動する対向側プレートに適用した。しかし、湿式摩擦プレート200は、エンジンの回転駆動力によって回転駆動する駆動側プレートとしてのクラッチプレート103に適用することもできる。
【0080】
また、上記実施形態においては、レーザ加工装置300は、レーザヘッド301を互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸方向に変位可能に構成した。しかし、レーザ加工装置300は、芯金201上の摩擦材210に対して微細溝211を形成することができるように構成されていれば他の構成を採用することができる。したがって、レーザ加工装置300は、例えば、レーザヘッド301および/またはワークテーブル302の変位に代えてまたは加えてレーザヘッド301内にガルバノスキャナーまたはポリゴンミラーを備えてレーザ光をX軸方向およびY軸方向にそれぞれ走査するように構成することができる。また、レーザ加工装置300は、可動的または固定的に構成されたワークテーブル302上で摩擦材210が貼り付けられた芯金201を保持してこの芯金201をワークテーブル302上で回転駆動またはX軸方向およびY軸方向にそれぞれ走査するように構成することもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、本発明に係る湿式摩擦プレートを湿式多板クラッチ装置100に用いられる湿式摩擦プレート200に適用した例について説明した。しかし、本発明に係る湿式摩擦プレートは、油中で使用される湿式摩擦プレートであればよく、湿式多板クラッチ装置100ほかに、原動機による回転運動を制動するブレーキ装置に用いられる湿式摩擦プレートにも適用できるものである。