特許第6677452号(P6677452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677452
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20200330BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   G01N27/28 R
   G01N27/416 338
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-84244(P2015-84244)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-232554(P2015-232554A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2018年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-99805(P2014-99805)
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-99806(P2014-99806)
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義治
(72)【発明者】
【氏名】呉 凱
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雄二
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−544266(JP,A)
【文献】 特開2001−074735(JP,A)
【文献】 特開平07−234218(JP,A)
【文献】 特表2008−518204(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0286149(US,A1)
【文献】 特開2012−202716(JP,A)
【文献】 特表2011−508872(JP,A)
【文献】 特開平06−294769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
G01N 33/493
G01N 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを用いて測定対象物に関する物理量を測定する測定装置において、
筐体と、
前記センサと電気的に接続される制御部と、
前記センサを保持するセンサ保持部を備えた移動部材と、
前記センサを前記センサ保持部から離脱させて廃棄する廃棄機構とを備え、
前記移動部材は、測定時に前記センサ保持部を前記筐体の外部に突出させさらに、前記移動部材は、前記センサと前記制御部を電気的に接続する導電部材を備える、測定装置。
【請求項2】
前記導電部材と前記制御部とを電気的に接続するフレキシブル基板を備える、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記移動部材は、前記導電部材と一体成形されている、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記センサ保持部は、待機時には前記筐体内に収納されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記移動部材は、メインスライダーとサブスライダーとを含み、前記センサは、前記メインスライダーと前記サブスライダーとの間に挟みこまれて保持される、請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
複数のセンサが内蔵されたセンサカートリッジを収容する収容部を備え、
前記移動部材は、待機時に、前記センサカートリッジの開口部を塞ぐ密閉部を有し、前記センサを前記筐体の外部に突出させるように移動する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記密閉部を前記センサカートリッジの開口部に向かって押圧する押圧部材を備える、請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記密閉部は、撓み部材である、請求項6または7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記密閉部は、弾性ゴムを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記移動部材は、前記センサを保持するセンサ保持部を備え、測定時に前記センサを保持した前記センサ保持部を前記筐体の外部に突出させる、請求項6から9のいずれか一項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを用いて測定対象物の物理量を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や職場で血糖値を測定できる装置として、使い捨てセンサ(センサチップ)を用いて血糖値を測定する、血糖自己測定器等と呼ばれている測定装置が知られている。
【0003】
そのような測定装置は、血糖値を測定する度にセンサをセットして使用する測定装置(以下、センサ非内蔵型装置と表記する)と、複数のセンサを内部に収容し、測定時に所定の操作を行うと装置内の1センサが測定位置に移動する測定装置(以下、センサ内蔵型装置と表記する)とに、大別することが出来る。
【0004】
センサ非内蔵型装置には、通常、短冊状の、その長手方向の一方の端(以下、後端と表記する)側に電極が設けられ、他方の端(以下、先端と表記する)側に血液導入口が設けられたセンサが用いられており、センサ非内蔵型装置の筐体には、そのようなセンサを挿入するためのセンサ挿入口が設けられている。そして、センサ非内蔵型装置は、血液をセンサの血液導入口に接触させる作業(以下、点着作業と表記する)が容易に行えるようにするために、センサ挿入口にセンサの後端側を挿入して固定すると、センサの先端側が装置の筐体から2cm程度突出した状態となる装置として構成されている。
【0005】
また、一般的なセンサ内蔵型装置も、点着作業を容易に行えるようにするために、装置内のセンサ収容部(通常、センサカートリッジ)から取り出されたセンサの先端側が1〜2cm程度その筐体から突出する装置として構成されている。
【0006】
尚、センサを複数個繋いだような形状を有する取り外し可能多領域センサが用いられたセンサ内蔵型装置(例えば、特許文献1)も知られているが、当該センサ内蔵型装置も、取り外し可能多領域センサの一部(1センサ分)がその筐体から突出する装置となっている。
【0007】
また、複数のセンサを収容したセンサカートリッジをセットして使用する測定装置用のセンサカートリッジ内に収容されるセンサは、水分(湿度)により劣化し得るものである。センサを複数個繋いだような形状を有する取り外し可能多領域センサが用いられたセンサ内蔵型装置ため、センサカートリッジ内に乾燥剤を入れることや、測定装置の非使用時にセンサカートリッジを密閉するための密閉機構をセンサカートリッジ側や測定装置側に組み込むことが提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−151721号公報
【特許文献2】特許第3954393号公報
【特許文献3】特表2008−504532号公報
【特許文献4】特許第5095850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
センサの製造コスト及び販売価格を低減するという観点からは、上記したような測定装置(センサ内蔵型装置、センサ非内蔵型装置)のセンサを小型化することが好ましいこと
になる。ただし、センサを小型化すると、測定時にセンサの血液導入口が装置の筐体に近くなるため、点着作業が行い難くなってしまう。
【0010】
そして、センサの小型化により点着作業が困難になるという問題は、使い捨てセンサを使用する測定装置(例えば、汚水、汚物等の温度を使い捨てセンサを用いて測定する測定装置)であれば発生し得るものである。
【0011】
また、既存の密閉機構は、いずれも、比較的に構成が複雑なものとなっている。そして、構成が複雑な密閉機構をセンサカートリッジ側や測定装置側に組み込んだのでは、センサカートリッジや測定装置の製造コストが上昇してしまう。
【0012】
そこで、本発明の課題は、点着作業が行い難くならない形でセンサを小型化できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の、センサを用いて測定対象物に関する物理量を測定する測定装置は、筐体と、前記センサと電気的に接続される制御部と、前記センサを保持するセンサ保持部を備えた移動部材と、を備え、前記移動部材は、前記センサ保持部を前記筐体の外部に突出させるように移動可能であり、さらに、前記移動部材は、前記センサと前記制御部を電気的に接続する導電部材を備える。
【0014】
すなわち、本発明に係る測定装置は、センサを保持する部分(センサ保持部)が、装置の筐体から突出する構成を有している。そして、センサを保持する部分が、装置の筐体から突出すれば、センサのサイズが小さくても、点着作業を容易に行うことが出来る。従って、本発明に係る測定装置は、センサを小型化しても、点着作業が行い難くならない装置となっていると言うことが出来る。
【0015】
本発明に係る測定装置は、前記導電部材と前記制御部とを電気的に接続するフレキシブル基板を備える装置として実現しても良い。また、本発明に係る測定装置の"移動部材"は、前記導電部材と一体成形されている部材であっても良い。
【0016】
また、本発明に係る測定装置を、『前記センサ保持部は、待機時には前記筐体内に収納されている』装置として実現しておいても、『前記移動部材は、メインスライダーとサブスライダーとを含み、前記センサは、前記メインスライダーと前記サブスライダーとの間に挟みこまれて保持される』装置として実現しておいても良い。
【0017】
また、本発明の、センサを用いて測定対象物に関する物理量を測定する測定装置は、筐体と、複数のセンサが内蔵されたセンサカートリッジを収容する収容部と、前記センサを筐体外部に突出させるように移動する移動部材と、を備え、前記移動部材は、待機時に、前記センサカートリッジの開口部を塞ぐ密閉部を有する。
【0018】
すなわち、本発明の測定装置は、収容部に収容されているセンサカートリッジの開口部が、待機時に、センサカートリッジ内のセンサを装置(筐体)外に突出させるための移動部材が有している密閉部により塞がれる構成を有している。そして、そのような構成は、部品点数が少ない形で実現できるものである。従って、本発明によれば、セットされているセンサカートリッジを待機時に密閉できる測定装置を安価に実現(製造)できることになる。
【0019】
また、上記構成を採用しておけば、センサカートリッジとして、密閉用の構成/機構を何ら備えていないものを使用できる。従って、本発明によれば、消耗品であるセンサカー
トリッジを安価にユーザに提供できることにもなる。
【0020】
本発明に係る測定装置の"密閉部"は、センサカートリッジの開口部を塞ぐことが出来るものであれば良い。 例えば、密閉部によるセンサカートリッジの密閉性を向上させるた
めに、"密閉部"として、撓み部材を採用しておいても良い。また、"密閉部"として、筐体に、前記密閉部を前記センサカートリッジの開口部に向かって押圧する押圧部材を備えさせておいても良い。押圧部材と撓み部材の両方を備えていても良い。さらに、"密閉部"として、弾性ゴムを含むものを採用しておいても良い。
【0021】
また、本発明に係る測定装置を実現するに際して、『前記移動部材は、前記センサを保持するセンサ保持部を備え、測定時に前記センサ保持部を前記筐体外部に突出させるように移動可能である』構成を採用しておいても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、点着作業が行い難くならない形でセンサを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る測定装置の外観図である。
図2図2は、センサカートリッジがセットされている第1実施形態に係る測定装置の、厚さ方向に直交する面で切った要部断面図である。
図3図3は、センサカートリッジ内に収容される、センサ体が巻回されたリールハブの外観図である。
図4A図4Aは、フィルム状センサの構成例の説明図である。
図4B図4Bは、センサ体の構成例の断面図である。
図4C図4Cは、センサ体の構成例の上面図である。
図5図5は、センサカートリッジの外観図である。
図6図6は、第1実施形態に係る測定装置の機能を説明するための図である。
図7図7は、第1実施形態に係る測定装置の、前面近傍の前面に平行な断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係る測定装置の各部の動作を説明するための図である。
図9図9は、第1実施形態に係る測定装置の各部の動作を説明するための図である。
図10図10は、第1実施形態に係る測定装置の各部の動作を説明するための図である。
図11図11は、スライダーの上面側から見た外観図である。
図12図12は、スライダーの下面側から見た外観図である。
図13図13は、封止用ゴムの取り付け位置を説明するための図である。
図14図14は、第1実施形態に係る測定装置の構成を説明するための図である。
図15図15は、第1実施形態に係る測定装置が備えるセンサ廃棄機構の構成を説明するための図である。
図16図16は、第1実施形態に係る測定装置の電気的な構成を説明するための図である。
図17図17は、第1実施形態に係る測定装置にセットできるセンサカートリッジの構成の説明図である。
図18図18は、本発明の第2実施形態に係る測定装置にセットされるセンサカートリッジに使用されているセンサ体の構成の説明図である。
図19A図19Aは、本発明の第3実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明するための図である。
図19B図19Bは、第3実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明するための図である。
図19C図19Cは、第3実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明するための図である。
図20A図20Aは、本発明の第4実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明するための図である。
図20B図20Bは、第4実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明するための図である。
図20C図20Cは、第4実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明するための図である。
図21図21は、センサカートリッジの密閉性を向上させるために採用可能な技術を説明するための図である。
図22図22は、センサカートリッジの密閉性を向上させるために採用可能な他の技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《第1実施形態》
図1に、本発明の第1実施形態に係る測定装置の外観を示す。
【0025】
本実施形態に係る測定装置は、センサカートリッジをセットして使用する血糖値測定装置である。図1に示してあるように、測定装置は、筐体10、筐体10の前面(図1における手前側の面)に配設されたLCD(Liquid Crystal Display)11、3つの押しボタンスイッチ12及びスピーカ13を備えている。また、測定装置は、筐体10の側面に配置されているスライダーノブ15aを操作することにより、スライダーノブ15aと共に上下にスライドするスライダー15を備えている。
【0026】
まず、図2図5を用いて、測定装置にセットされるセンサカートリッジ30の構成を説明する。尚、これらの図のうち、図2は、センサカートリッジ30がセットされている測定装置の、厚さ方向に直交する面(スライダーノブ15aのほぼ中央を通る面)で切った要部断面図である。図3は、センサカートリッジ30内に収容される、センサ体40が巻回されたリールハブ32の外観図である。図4Aは、フィルム状センサ45の構成例の説明図であり、図4Bは、センサ体40の構成例の断面図であり、図4Cは、センサ体40の上面図である。図5は、センサカートリッジ30の、図2と同じ側から見た外観図である。
【0027】
図2に示した断面図から明らかなように、センサカートリッジ30は、センサ体40が巻回されているリールハブ32をケース31内に収容したものである。測定装置の筐体10には、センサカートリッジ30を収容するためのカートリッジ収容部10aが設けられている。
【0028】
センサ体40(図3)は、複数の小型なフィルム状センサ45が、台紙フィルム41上に接着強度が比較的に弱い材料にて台紙フィルム41の長さ方向に等間隔に接着されているテープ状部材である。センサ体40の、フィルム状センサ45が配置されていない部分には、フィルム状センサ45の配置間隔(隣接する各2つのフィルム状センサ45の中心間の間隔;以下、センサ配置間隔と表記する)と同間隔で、角丸長方形状の孔42が設けられている。
【0029】
センサ体40の台紙フィルム41は、柔軟で比較的に延びにくいフィルムで形成されている。従って、台紙フィルム41としては、樹脂フィルム、2種以上の樹脂フィルムの積層体、樹脂フィルムと金属フィルムの積層体、樹脂フィルムに金属線等を埋め込んだもの
等を使用することが出来る。ただし、台紙フィルム41は、フィルム状センサ45の水分による劣化を抑止できるようにするために、吸湿性を有するものであってもよい。その場合には、台紙フィルム41を、吸湿性物質を含む材質(吸湿性フィルムと他のフィルムとの積層体等)で形成することが好ましい。
【0030】
台紙フィルム41上に配置される各フィルム状センサ45は、例えば、図4Aに模式的に示してあるような構成を有するセンサである。すなわち、フィルム状センサ45は、例えば、グルコースと反応する酵素や電子受容体等を保持する酵素膜57と、酸化還元電位もしくは酸化還元電流を検出するための複数の電極56a及び56bとが形成されている基板55上に、U字状のスペーサ58を介して貫通孔59aが設けられているカバー59を積層した、その先端部に点着された血液を酵素膜に供給するための流路68が基板55、スペーサ58及びカバー59により画定されているセンサである。
【0031】
センサカートリッジ30には、センサ体40として、フィルム状センサ45の配置面側が凸となるように曲げると、フィルム状センサ45が台紙フィルム41から剥がれるものが使用される。より具体的には、センサ体40としては、或るフィルム状センサ45が配置されている部分をフィルム状センサ45の配置面側が凸となるように所定曲率以下の曲率で湾曲させると、湾曲させた部分上に配置されているフィルム状センサ45の端部に、台紙フィルム41との間の接着力を超える曲げ応力が発生するものが使用される。
【0032】
上記のような仕様を満たすセンサ体40は、例えば、図4Bに示した構成を採用することにより製造することが出来る。すなわち、フィルム状センサ45として、電極等を形成した、基板55としてのPET(polyethylene terephthalate)シート上に、スペーサ58としての両面シートテープとカバー59としての親水性フィルムとを積層したものを使用する。また、台紙フィルム41として、乾燥剤シート(吸湿性シート)上に基材シート(例えばPETシート)を積層したものを使用し、フィルム状センサ45と台紙フィルム41との間の接着に、粘着シート(例えばEasy peelシート)を使用する。
【0033】
上記のような仕様を満たすセンサ体40は、例えば、図4B及び図4Cに示した構成を採用することにより製造することが出来る。すなわち、フィルム状センサ45として、電極等を形成した、基板55としてのPET(polyethylene terephthalate)シート上に、スペーサ58としての両面シートテープとカバー59としての親水性フィルムとを積層したものを使用する。また、台紙フィルム41として、乾燥剤シート(吸湿性シート)41b上に基材シート(例えばPETシート)41aを積層したものを使用し、フィルム状センサ45と台紙フィルム41との間の接着に、粘着シート(例えばEasy peelシート)4
5aを使用する。
【0034】
図4B及び4Cに示した構成を有するセンサ体40は、フィルム状センサ45間にもフィルムが存在している積層体を形成した後、粘着シートよりも上側の不要な部分(フィルム状センサ45間の部分)を粘着シートの途中までハーフカットして除去してから孔42を形成する(又は、孔42を形成してから、粘着シートよりも上側の不要な部分を、粘着シートの途中までハーフカットして除去する)ことにより製造することが出来る。なお、ハーフカットは、ピナクル刃やトムソン刃や金型、もしくは、レーザーカッター等で行うことが出来る。
【0035】
そして、本実施形態に係るセンサ体40は、図3から明らかなように、各フィルム状センサ45の幅が台紙フィルム41の幅よりも狭く、且つ、各フィルム状センサ45が台紙フィルム41の幅方向の中央部に配置されたものとなっている。従って、このセンサ体40は、不要な部分をハーフカットにより一括して除去することにより、製造することが出来る。
【0036】
センサ体40が巻回されるリールハブ32(図2及び図3)は、ドーナッツ状の2つのフランジ32bの中央の開口部間を、筒状部32aによってセンサ体40の幅よりも僅かに広い間隔で接続した部材である。
【0037】
このリールハブ32は、カートリッジ30の組み立て時に、センサ体40が巻回された状態でケース31内に収容されるものである。具体的には、ケース31には、ケース31の厚さ方向(図2の紙面に垂直な方向)に延びた、リールハブ32の筒状部32aの内径よりも僅かに小さな外径を有するリールハブ取付軸が設けられている。そして、リールハブ32は、カートリッジ30の組み立て時に、筒状部32aの周囲にセンサ体40を巻回した後、筒状部32a内にリールハブ取付軸を挿入する形でケース31内に収容されるものとなっている。
【0038】
尚、フィルム状センサ45が設けられている面を外側に向けた形でセンサ体40をリールハブ32に巻回すると、測定装置の振動等に因り、リールハブ32に巻回されているセンサ体40の最外周部分のフィルム状センサ45が台紙フィルム41から剥がれてしまう虞がある。そのため、センサ体40のリールハブ32への巻回は、図3に示してあるように、フィルム状センサ45が設けられている面を内側に向けた形で行っておくことが好ましい。また、図3には、台紙フィルム41の先端までフィルム状センサ45が設けられているセンサ体40を示してあるが、カートリッジ30に組み込まれるリールハブ32に巻回されているセンサ体40は、先端側の所定長の部分(以下、リード部と表記する)に、フィルム状センサ45が配設されておらず、センサ配置間隔で孔42が形成されているものである。
【0039】
ケース31(図2)の、リールハブ取付軸の周りには、リールハブ32の、ケース31と対向する側のフランジ32bに設けられている突起と係合することにより、センサ体40を巻き取る方向へのリールハブ32の回転を抑止する複数の突起が設けられている。
【0040】
ケース31には、ケース31の厚さ方向に延びたローラ取付軸も設けられている。そして、ケース31内には、複数のピンがその外側面に等間隔に配置された円筒形状を有するローラ34が、ローラ取付軸を中心に回転可能なように収容されている。
【0041】
上記したセンサ体40の孔42(図3)は、このローラ34のピンが入り込む孔である。従って、ローラ34の直径及びローラ34の外側面に配置されるピン数と、センサ配置間隔とは、各ピンがセンサ体40の各孔42に入るように定められる。
【0042】
ローラ34の図2における手前側には、ローラ34と共に回転する、図5に示したよう形状の嵌合部38が設けられている。
【0043】
すなわち、ローラ34の手前側には、中心側に向かって突出している部分を有する円形状の凹部38aが形成されている嵌合部38が設けられている。そして、センサカートリッジ30のケース31の、当該嵌合部38と対向する部分には、開口部が設けられている。
【0044】
さらに、図2に示してあるように、ケース31の、スライダー15側を向いた側壁の先端側の部分には、フィルム状センサ45が通る形状の開口部であるセンサ取出口35と、台紙フィルム41が通る形状の開口部であるフィルム回収口36とが、フィルム状センサ45の長さよりも短い間隔で、設けられている。また、ケース31の側壁形状は、"セン
サ取出口35とフィルム回収口36とそれらの間に存在する側壁部分"(以下、センサカ
ートリッジ30のポート部と表記する)が他の部分よりも少し内側に凹むように定められ
ている。
【0045】
ケース31内には、ケース31の厚さ方向に延びた曲面壁39も設けられている。この曲面壁39の形状は、図2に示してあるように、曲面壁39が設けられていない部分から入ってくるセンサ体40(台紙フィルム41)が、曲面壁39により画定されるフィルム収容空間内に渦を巻いた形で収容されることになるように、定められている。
【0046】
そして、センサカートリッジ30内の台紙フィルム41は、センサ取出口35及びフィルム回収口36を通過し、ローラ34の外周面に沿って巻き取られた後、フィルム収容空間内に回収される。なお、使用開始前のセンサカートリッジ30では、上記したリード部がフィルム収容空間内におさまっている。
【0047】
以下、本実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明する。
【0048】
本実施形態に係る測定装置は、待機時は(血糖値の測定時以外は)、スライダーノブ15aが、図1に示した位置(以下、待機位置と表記する)、つまりスライダー可動範囲の中央付近に位置する。そして、本実施形態に係る測定装置は、図6(A)に示してあるように、スライダーノブ15aを、最も上側の位置(以下、センサ取出位置と表記する)、つまりスライダー可動範囲の一端付近に一旦スライドさせてから、図6(B)に示しあるように最も下側の位置(以下、測定位置と表記する)、つまりスライダー可動範囲の筐体10の開口部に近い端にスライドさせれば、スライダー15及び補助スライダー18が、それらの先端部分の間にフィルム状センサ45を挟んだ状態で、筐体10に設けられている開口部(以下、スライダー突出口と表記する)から突出するように構成されている。
【0049】
まず、スライダーノブ15aをセンサ取出位置にスライドさせた場合に機能する測定装置の機械的な構成を説明する。
【0050】
図7に、本実施形態に係る測定装置の、前面近傍の前面に平行な断面図を示す。
図示してあるように、測定装置は、仕切板51、複合歯車52、爪部53、駆動歯車54を備える。仕切板51は、その裏面(図7にて見えていない側の面)側にセンサカートリッジ30がセットされる板状部材である。駆動歯車54は、その回転軸を中心に回転可能なように仕切板51に対して固定されている歯車である。この駆動歯車54の回転軸は、筐体10内にセットされているセンサカートリッジ30のローラ34の嵌合部38と中心が一致する位置に、仕切版51を貫通する形で設けられている。また、駆動歯車54の回転軸は、センサカートリッジ30がセットされると、センサカートリッジ30のローラ34の嵌合部38(図5参照)と嵌合する形状を有している。
【0051】
複合歯車52は、通常の歯車52aと爪車52bとを回転中心を合わせて重ねた歯車である。複合歯車52は、仕切板51に対して回転可能に固定されている。また、複合歯車52の回転軸の位置は、歯車52aが駆動歯車54とかみ合うように定められている。爪部53は、スライダー15に対して固定されている部材である。この爪部53は、スライダー15が待機位置に位置しているときに、複合歯車52の爪車52bとかみ合う形状の先端部53aを有している。
【0052】
そして、本実施形態に係る測定装置の各部の形状及び/又はスライダー15の待機位置からセンサ取出位置までの移動距離は、以下の2条件を満たすように、定められている。[条件1]スライダー15がセンサ取出位置まで移動すると、センサ取出口35上にスライダー15が存在しない状態となる。
[条件2]スライダー15が待機位置からセンサ取出位置まで移動した場合における『ローラ34のラジアン単位の回転角×ローラ34の半径』が、センサ体40のセンサ配置間
隔(センサ体40の、隣接する各2フィルム状センサ45間の中心間隔)と一致する。
【0053】
要するに、図8に示してあるように、スライダーノブ15aの操作によりスライダー15が待機位置からセンサ取出位置まで移動すると、複合歯車52は、時計回りに回転し、駆動歯車54は、反時計回りに回転する。また、駆動歯車54の回転軸は、ローラ34の嵌合部38と嵌合しているため、ローラ34が、駆動歯車54と同じ角度だけ反時計回りに回転する。従って、スライダー15が待機位置からセンサ取出位置まで移動した場合における『ローラ34のラジアン単位の回転角×ローラ34の半径』が、センサ体40のセンサ配置間隔と一致するように各部の形状等を定めておけば、センサカートリッジ30内のセンサ体40を、図9に示してある矢印方向、すなわち、各フィルム状センサ45がセンサ取出口35側に進む方向に、"センサ配置間隔"分だけ送ることが出来る。
【0054】
そして、センサ体40は、フィルム状センサ45の配置面側が凸となるように曲がると、フィルム状センサ45が台紙フィルム41から剥がれる。従って、センサ体40が"セ
ンサ配置間隔"分だけ送られ、送られた部分の台紙フィルム41がセンサ取出口35の出
口近傍でおよそ90度曲がると、その曲がった部分に貼り付けられていた、フィルム状センサ45の部分が、台紙フィルム41から剥がれる。そして、その結果として、図9図10に示したように、フィルム状センサ45がセンサ取出口35から突出することになる。
【0055】
このとき、フィルム状センサ45がセンサ取出口35から突出したときに、スライダー15がセンサ取出口35上に位置していると、センサ取出口35から突出しているフィルム状センサ45をスライダー15によって搬送することができない。そのため、上記条件1も満たすように、測定装置の各部の形状等が定められているのである。
【0056】
次に、スライダーノブ15aをセンサ取出位置から測定位置にスライドさせた場合に機能する測定装置の機械的な構成を説明する。
【0057】
図11に、スライダー15の上面側(スライダーノブ15aが設けられている面側)から見た外観図を示す。また、図12に、スライダー15の下面側から見た外観図を示す。
【0058】
図12に示してあるように、スライダー15の先端部分の中央には、センサカートリッジ30のセンサ取出口35から突出しているフィルム状センサ45を前方に押し出すための2つの突起16bが設けられている。また、図11図12に示してあるように、スライダー15の先端部分の両側には、補助スライダー18の先端部分に設けられている構造と嵌合する形状の構造16aが設けられている。ここで、補助スライダー18は、スライダー15が待機位置と測定位置との間に位置している場合に限り、スライダー15と共に移動するように、筐体10内に配設されている。
【0059】
補助スライダー18の先端部分には、構造16aと係合する上記構造に加えて、フィルム状センサ45をスライダー15の先端部分との間に挟み込むための構造も設けられている。スライダーノブ15aの操作によりスライダー15がセンサ取出位置から測定位置へ移動した場合、まず、スライダー15の2つの突起16bによりフィルム状センサ45が前方に押し出される。次いで、スライダー15の先端部分に設けられている構造16aと補助スライダー18の先端部分に設けられている構造とが嵌合することにより、フィルム状センサ45がスライダー15の先端部分と補助スライダー18の先端部分との間に挟まれている状態であって、補助スライダー18がスライダー15と共に移動する状態が形成される。そして、その状態のまま、スライダー15及び補助スライダー18がスライダーノブ15aの測定位置までのスライドが完了したときに、図6(B)に示したように、フィルム状センサ45がスライダー15と補助スライダー18により保持される。
【0060】
また、図11及び図12に示してあるように、スライダー15は、先端側(各図における左側)が上下動可能なように形成された撓み部15cを備えている。この撓み部15cの先端側の下面には、封止用ゴム17が取り付けられている。撓み部15cの位置及び形状と封止用ゴム17の形状は、図13に示してあるように、少なくとも、スライダー15が待機位置に位置しているときに、封止用ゴム17がセンサカートリッジ30のポート部(センサ取出口35とフィルム回収口36とそれらの間の側壁とからなる部分)上に位置するように、定められ、撓み部15c及び封止用ゴム17により、センサ取出口35とフィルム回収口36が閉じられ、待機状態において、カートリッジ30の開口部(ポート部)を封止する。尚、封止用ゴム17の形状は、平板状であっても良いが、センサカートリッジ30のポート部の形状と同じ形状又は類似した形状であることが好ましい。
【0061】
図11に示してあるように、撓み部15c上面の、封止用ゴム17のほぼ中心に対応する部分には、円錐台状の突出部15dが設けられている。また、スライダー15の末端側(図11における右側)の中央部分には、孔15gが設けられており、スライダー15の幅方向の各側面には、幅方向に突出した突出部15eが設けられている。スライダー15には、各突出部15eをスライダー15の幅方向に変位しやすくするための開口部15fも設けられている。
【0062】
図14に示してあるように、スライダー15の孔15gと筐体10内の特定箇所との間は、コイルスプリングにより接続されている。また、筐体10内には、図14に示したような位置に、3組の突出部71x(x=a〜c)が設けられている。すなわち、筐体10内には、スライダー15の1組の突出部15eと係合することにより、コイルスプリングによって付勢されているスライダー15を測定位置で止めるための1組の突出部71aが設けられている。また、筐体10内には、スライダー15の1組の突出部15eと係合することにより、スライダー15を待機位置で止めるための1組の突出部71b、及び、スライダー15の1組の突出部15eと係合することにより、スライダー15をセンサ取出位置で止めるための1組の突出部71cも設けられている。
【0063】
さらに、筐体10の内面の、待機位置に位置しているスライダー15の突出部15dと対向する部分には、突出部15dを、センサカートリッジ30のポート部方向に押し下げるための付勢手段(図14では、板バネ)72が設けられている。既に説明したように、突出部15dの裏側には、封止用ゴム17が設けられている。従って、スライダー15が待機位置に位置している場合、センサカートリッジ30のポート部が封止用ゴム17により封止されることになる。なお、撓み部15cがセンサカートリッジ30の開口部(ポート部)に密着するようにしっかり押し下げられる場合には、封止用ゴム17は用いなくてもよい。
【0064】
また、図15に示してあるように、測定装置の筐体10のスライダー突出口(スライダー15及び補助スライダー18が突出する開口部)の近傍には、廃棄用ピン60と回転軸61と回転部材62と付勢部材63とを含むセンサ廃棄機構が設けられている。このセンサ廃棄機構の回転軸61は、筐体10に対して固定された、スライダー15の幅方向と平行な回転軸である。回転部材62は、回転軸61を中心に回転する部材である。廃棄用ピン60は、回転軸61と直交するように回転部材62に対して固定された棒状部材である。付勢部材63(図15では、コイルスプリング)は、回転部材62を介して、廃棄用ピン60を、廃棄用ピン60が筐体10の下面に平行となる方向に付勢する部材である。
【0065】
図15に示してあるように、センサ廃棄機構の廃棄用ピン60の長さは、筐体10の下面と平行になっている場合に、スライダー15と補助スライダー18との間に挟まれた状態でフィルム状センサ45が移動する平面と交差するように定められている。また、廃棄
用ピン60の長さは、スライダー15の各部(2つの突起16bの間に存在する部分等;図12参照)とは接触しないようにも定められている。さらに、補助スライダー18の先端部分には、廃棄用ピン60が通る溝が形成されている。
【0066】
要するに、このセンサ廃棄機構の廃棄用ピン60は、スライダー突出口からフィルム状センサ45が出てきた場合、フィルム状センサ45に押されて倒れて(矢印65参照)、その先端がフィルム状センサ45の下面を摺動する状態となる。ただし、廃棄用ピン60は、付勢部材63により付勢されている。そのため、フィルム状センサ45が通過してしまえば、廃棄用ピン60は立ち上がり(矢印66参照)、その結果として、廃棄用ピン60の先端が、補助スライダー18及びスライダー15内に入っている状態が形成される。この状態で、スライダー15を待機位置に戻す操作がなされると、スライダー15の位置が待機位置となる前に、測定に使用したフィルム状センサ45が廃棄用ピン60と当接する。そして、廃棄用ピン60と当接するとフィルム状センサ45は移動できない状態となるが、スライダー15及び補助スライダー18は、廃棄用ピン60が立っていてもスライド可能である。従って、上記センサ廃棄機構を備えた本実施形態に係る測定装置では、血糖値の測定後、スライダーノブ15aの位置を待機位置に戻すだけで、使用済みのフィルム状センサ45を破棄できることになる。
【0067】
次に、測定装置の電気的な構成を説明する。
【0068】
本実施形態に係る測定装置の電気的な構成(回路構成)は、既存の血糖値測定装置と同様のものである。ただし、実施形態に係る測定装置は、測定時には、移動するスライダー15の先端部でフィルム状センサ45を保持している。そのため、スライダー15には、フィルム状センサ45の各電極を、測定装置内の制御ユニット14の対応する電極と接続するための配線等が形成される。例えば、フィルム状センサ45が2つの電極を備えたものである場合、図16(A)に模式的に示したように、スライダー15の下面には、フィルム状センサ45の各電極に接触させる電極81、測定装置内の制御ユニット14(図10(B))と接続される電極82、電極81・82間を接続する配線83が形成される。ここで、制御ユニット14とは、フィルム状センサ45に関する酸化還元電位を測定する処理や、測定結果から血糖値を算出する処理や、LCD11(図示略)やスピーカ13を制御する処理を行う、プロセッサ(ワンチップマイコン等)が用いられた回路のことである。尚、スライダー15の下面への電極・配線の形成は、導電性材料をスライダー15の下面に印刷することによっても、インモールド成形を利用して行うこと(スライダー15と各電極・配線とを一体成形してしまうこと)や、導電性材料を補助スライダー18の上面に印刷することによって行うことが出来る。また、電極81としては、板バネ式の電極や、ピンプローブを用いることも出来る。
【0069】
そして、本実施形態に係る測定装置は、スライダー15の装置内での位置が変わるものであるので、各電極82と制御ユニット14とをリード線にて接続しておくと、リード線が、測定装置内の部材に絡まって切断してしまうことが考えられる。そのため、図16(B)に模式的に示したように、各電極82と制御ユニット14との間の接続は、フレキシブルプリント基板84等を用いておくことが好ましい。
【0070】
また、スライダー15の各配線83(又は電極82)を、スライダー15の長さ方向に平行な部分が長いものとし、配線83(又は電極82)毎に、スライダー15の位置に因らず、その配線83(又は電極82)と接触するように、筐体側電極を筐体10に対して固定し、筐体10に対して固定した各筐体側電極と制御ユニット14との間をケーブル等で電気的に接続しておいても良い。さらに、スライダー15の各配線83又は電極82の長さ及び各筐体側電極の位置を、スライダー15が測定位置の近傍に位置している場合に限り、各配線83又は電極82と各筐体側電極とが接触するようにしておくことも出来る
【0071】
以上、説明したように、本実施形態に係る測定装置には、センサカートリッジ30内に収容されていたセンサ45を、装置(筐体10)外に搬出するためのスライダー15の撓み部15cに固定されている封止用ゴム17により、装置の非使用時(スライダー15が待機位置に位置している時)に、センサカートリッジ30を密閉する(センサカートリッジ30のポート部を塞ぐ)という、部品点数が少ない構成が採用されている。従って、本実施形態に係る測定装置は、極めて安価に製造することが出来るものとなっている。また、上記構成を採用したものであるが故に、本実施形態に係る測定装置用のセンサカートリッジ30は、密閉用の専用部材を設ける必要がないもの(つまり、安価に製造できるもの)となる。従って、本実施形態に係る測定装置によれば、ユーザに、消耗品であるセンサカートリッジ30を安価に提供できることにもなる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る測定装置は、血糖値の測定毎に、グルコースセンサ(フィルム状センサ45)をセットする必要がない装置であると共に、小型なフィルム状センサ45を用いているのも拘わらず、フィルム状センサ45への血液の点着作業が、測定装置の筐体10から少し離れた、点着作業が行いやすい位置で行える装置となっている。また、小型のセンサであって、測定装置にセットした状態で筐体10から突出している部分が小さい場合であっても、血液の点着の際に、血液が筐体10に付着することが防ぐことができ、衛生的である。しかも、測定装置を用いておけば、フィルム状センサ45の用意から破棄までをスライダーノブ15aを操作するだけで行うことが出来る。そして、センサカートリッジ30内のフィルム状センサ45を全て使用した場合には、センサカートリッジ30を交換すれば、複数回の測定が行えるようになるのであるから、本実施形態に係る測定装置は、極めて操作性の良い装置となっていると言うことも出来る。
【0073】
また、本実施形態に係る測定装置は、検体(血液)が点着された測定済みのフィルム状センサ45を測定装置内に回収しない装置である。従って、本実施形態に係る測定装置は、装置内部を衛生的な状態に保つことが出来る装置ともなっている。さらに、測定装置は、装置側にセンサカートリッジ30を封止するための機構を設けたものとなっている。従って、測定装置を用いておけば、センサカートリッジ30の価格を上げることなく、センサカートリッジ30内のセンサの水分/外気による劣化を抑止できることになる。
【0074】
以下、図17を用いて、第1実施形態に係る測定装置にセットするものとして開発したセンサカートリッジ30bの構成を、センサカートリッジ30と異なる部分を中心に説明する。
【0075】
図17図2とを比較すれば明らかなように、センサカートリッジ30bは、センサカートリッジ30のローラ34を、ローラ34a及びローラ34bに置き換えた構成を有している。
【0076】
ローラ34aは、複数のピンが外側面に設けられていないローラである。ローラ34bは、ローラ34aに台紙フィルム41を圧着させるための所謂ピンチローラである。
【0077】
要するに、このセンサカートリッジ30bは、センサ体40として、孔42(図3)が設けられていないものを使用できる構成を有している。従って、センサカートリッジ30bは、孔42を形成する工程が不要な分、センサカートリッジ30よりも安価に製造できるものとなっていると言うことが出来る。
【0078】
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る測定装置の構成を、上記した第1実施形態に係る測
定装置と異なる部分を中心に説明する。
【0079】
本発明の第2実施形態に係る測定装置にセットされる第2実施形態に係るセンサカートリッジは、センサカートリッジ30b(図17)内のセンサ体40を、図18に示した構成を有するセンサ体40bに置き換えたものである。そして、本発明の第2実施形態に係る測定装置は、スライダー15の先端部分の形状のみが、第1実施形態に係る測定装置と異なる装置として構成されている。
【0080】
すなわち、図18に示してあるように、第2実施形態に係るセンサカートリッジ内のセンサ体40bは、幅方向の両縁部の中央部分よりも少し先端側によった部分に突出部46を設けた複数のフィルム状センサ45bを、各フィルム状センサ45bの幅方向が台紙フィルム41の幅方向と平行となるように、台紙フィルム41上に接着したものとなっている。
【0081】
各フィルム状センサ45bがそのような形状を有しているため、第2実施形態に係るセンサカートリッジのセンサ取出口35からは、フィルム状センサ45bが、各突出部46が台紙フィルム41から剥がれている状態(つまり、各突出部46の下端下に、部材を挿入できる状態)で突出する。
【0082】
そして、センサ取出口35から突出しているフィルム状センサ45bの各突出部46の下端下に部材が挿入されるようにしておけば、スライダー15の形状や各部の位置関係が製造誤差等により設計上の形状や設計上の位置関係と多少異なっていても、その一部が台紙フィルム41に張り付いているフィルム状センサ45bを台紙フィルム41から剥がしてスライダー15に保持させることが出来る。
【0083】
そのため、本実施形態に係る測定装置のスライダー15は、センサ取出口35から突出したフィルム状センサ45bの両突出部46の下端と係合することによりフィルム状センサ45bを台紙フィルム41から剥がして保持できるように、その先端部分の形状を設計したものとなっている。
【0084】
《第3実施形態》
以下、図19A図19Cを用いて、本発明の第3実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明する。
【0085】
本実施形態に係る測定装置は、第1、第2実施形態に係る測定装置と同様にセンサカートリッジをセットして使用する装置である。ただし、本実施形態に係る測定装置は、複数のセンサ45を積み重ねた形で内部に収容したセンサカートリッジ130をセットして使用する装置として構成されている。尚、図示の都合上、図19A図19Cには、センサ45を比較的に大きなサイズのセンサとして示したが、本実施形態に係る測定装置にセットされるセンサカートリッジ130内に収容されるセンサ45は、小型のセンサである。
【0086】
図19A図19Cに示してあるように、センサカートリッジ130は、ケース131と、ケース131内に配置されたセンサ搭載板132と、当該センサ搭載板132をケース131の開口部(図19A図19Cにおける上面)方向に付勢する付勢手段133とを備える。また、センサカートリッジ130は、センサ搭載板132上に積み重ねられた複数のセンサ45を含む。
【0087】
尚、このセンサカートリッジ130は、開口部が薄いプラスチックフィルムで封止された状態でユーザに配布される。そして、センサカートリッジ130の測定装置へのセット時には、開口部が封止されている状態のセンサカートリッジ130が測定装置の筐体10
に設けられているカートリッジ収容部内にセット(収容)されてから、開口部を覆っているプラスチックフィルムを剥がす(引き出す)作業が行われる。
【0088】
また、センサカートリッジ130を測定装置にセットする作業は、スライダー150が図19Aに示した位置(以下、待機位置と表記する)に存在している状態で行われる。スライダー150は、スライダー15と同様に、図示を省略してあるスライダーノブをスライドさせることにより、待機位置、センサ取出位置、測定位置間を移動させることが出来る部材である。尚、センサ取出位置、測定位置とは、それぞれ、図19B図19Cに示してあるスライダー150の位置のことである。
【0089】
スライダー150の先端部分には、センサ45を接続できるコネクタ151が設けられている。また、スライダー150の、待機位置に位置している場合にセンサカートリッジ130(ケース131)の開口部と対向する部分には、当該開口部を覆える形状の、弾性を有する材料(ゴム等)からなる封止部材152が設けられている。また、スライダー150の、待機位置に位置している場合にセンサカートリッジ130(ケース131)の開口部と対向する部分は、開口部と密着しやすくするために、撓み構造などを備えていてもよい。さらに、スライダー150には、コネクタ151の各電極と制御ユニット14の各電極とをフレキシブルプリント基板88を介して電気的に接続するための配線等が形成されている。
【0090】
また、測定装置は、コイルスプリングによりセンサカートリッジ130方向に付勢された押圧部材155を備えている。この押圧部材155は、スライダー150が待機位置に位置している場合(図19A)には、スライダー150の封止部材152をセンサカートリッジ130の開口部に押し付ける部材として機能するものである。ただし、押圧部材155は、スライダー150がセンサ取出位置に位置している場合(図19B)には、センサ45が、センサカートリッジ130の開口部から、適切な量だけ突出するようにするための部材として機能する。尚、適切な量とは、センサ取出位置から測定位置へ移動中のスライダー150のコネクタ151に、センサ45がセットされることになる量のことである。
【0091】
本実施形態に係る測定装置も、他の各実施形態に係る装置と同様に、小型なセンサ45を用いているのも拘わらず、センサ45への血液の点着作業が、容易に(測定装置の筐体10が邪魔にならない形で)、行うことができ、さらに筐体への血液の付着を防止することができる。また、本実施形態に係る測定装置は、センサカートリッジ130を封止するための機構を、装置側に設けたものとなっている。従って、本実施形態に係る測定装置を用いておけば、センサカートリッジ130の価格を上げることなく、センサカートリッジ130内のセンサの水分/外気による劣化を抑止できることになる。
【0092】
本実施形態に係る測定装置には、センサカートリッジ130内に収容されていたセンサ45を、装置(筐体10)外に搬出するためのスライダー150が押圧部材155で押し付けられることにより、装置の非使用時(スライダー150が待機位置に位置している時)に、センサカートリッジ130を密閉する(センサカートリッジ30の開口部を塞ぐ)という構成が採用されている。この構成は、他の各実施形態に係る測定装置と同様に部品点数が少なく済むものである。従って、本実施形態に係る測定装置は、極めて安価に製造することが出来る。
【0093】
《第4実施形態》
以下、図20A図20Cを用いて、本発明の第4実施形態に係る測定装置の構成及び機能を説明する。
【0094】
本発明の第4実施形態に係る測定装置も、上記した第1、第2実施形態に係る測定装置と同様に、小型なフィルム状センサ45を用いて血糖値を測定する装置である。ただし、本実施形態に係る測定装置は、フィルム状センサ45を直接的にセットして使用する装置として構成されている。
【0095】
具体的には、図20A図20Cに示してあるように、本実施形態に係る測定装置は、センサ非内蔵型装置であり、センサカートリッジが測定装置内に内蔵されておらず、測定する度にユーザがセンサをセットするものである。筐体10と、筐体10の前面に配置されたLCD11とを備える。また、測定装置は、筐体10の前面に配置された、上下方向のスライド操作が可能なスライダーノブ85aと、スライダーノブ85aと共に移動するスライダー85とを備える。尚、本実施形態に係る測定装置の筐体10の、図20A図20Cにて隠れている方の側面には、複数の押しボタンスイッチが設けられている。また、筐体10内には、上記した制御ユニット14と同様の構成及び機能を有する制御ユニットが設けられている。
【0096】
スライダー85の先端部分には、フィルム状センサ45を接続できるコネクタ85bが設けられている。このコネクタ85bの各電極は、図16を用いて説明したものと同様の接続方法により第3実施形態に係る測定装置の制御ユニットと電気的に接続されている。また、コネクタ85bは、スライダーノブ85aが図20に示してある位置(以下、待機位置と表記する)に位置している場合、筐体10内に収容されている。
【0097】
本実施形態に係る測定装置を用いて血糖値を測定する場合、ユーザは、まず、待機位置に位置しているスライダーノブ85aを、測定位置(図20Bに示してある位置)までスライドさせる。
【0098】
この操作がなされると、スライダー85のコネクタ85aが筐体10に設けられている開口部から突出する(図20B)ので、ユーザは、コネクタ85aにフィルム状センサ45をセットする。この際、コネクタが筐体10から突き出た状態になっているため、センサが小さい場合でも、容易にコネクタにセンサをセットすることが可能となる。
【0099】
尚、フィルム状センサ45は小型なものである。そのため、本実施形態に係る測定装置において、小型なフィルム状センサ45をコネクタ85aにセットする作業を容易に行えるようするための治具88を用いて、フィルム状センサ45をコネクタ85aにセットするようにしてもよい。
【0100】
その後、ユーザは、コネクタ85aにセットしたフィルム状センサ45に血液を点着する作業を行うが、図20Cに示してあるように、本実施形態に係る測定装置では、フィルム状センサ45をコネクタ85aにセットすると、フィルム状センサ45が測定装置の筐体10から少し離れた場所に位置する。
【0101】
従って、本実施形態に係る測定装置を用いた場合にも、上記した第1、第2実施形態に係る測定装置を用いた場合と同様に、小型なフィルム状センサ45への血液の点着作業が容易に行えることになる。さらに、点着の際に、測定装置の筐体10に血液が付着することが防止され、衛生的である。
【0102】
《変形形態》
上記した各種技術は、様々な変形を行えるものである。例えば、第2実施形態に係るセンサカートリッジ内のセンサ体40bを、図3に示したセンサ体40のように、センサ配置間隔で孔42が開けられたものに変形することが出来る。また、各センサカートリッジ内に、乾燥剤を含めておくことも出来る。
【0103】
上記した各測定装置は、移動部材としてスライダーを用い、スライダー15と補助スライダー18との間に挟まれた状態でフィルム状センサ45が突出する装置であったが、各測定装置を、補助スライダー18がない装置に変形することも出来る。尚、各測定装置の補助スライダー18がない装置への変形は、例えば、以下の構成を採用することにより実現できる。スライダー15の先端部分に、フィルム状センサ45を挿入することにより、フィルム状センサ45を固定できると共にフィルム状センサ45と制御ユニット14との間を電気的に接続できるコネクタを設けておく。また、スライダー15の先端部分(コネクタ近傍の部分)に可撓性を持たせておく。そして、センサ取出口35上の通過時にスライダー15の先端部分をセンサカートリッジ30方向に移動させるための付勢機構を測定装置に設けておく。
【0104】
封止用ゴム17によるセンサカートリッジ30、30bの封止(密閉)がより良好に行われるようにするために、図21に模式的に示してあるように、センサカートリッジ30、30bのポート部を囲むように、閉曲線状の弾性部材50を配設しておいても良い。当然、封止部材152によるセンサカートリッジ130の封止がより良好に行われるようにするために、センサカートリッジ130の開口部(センサカートリッジ130における"
センサ突出口が形成されているポート部")を囲むように、閉曲線状の弾性部材を配設し
ておいても良い。
【0105】
さらに、センサカートリッジ30、30bの封止がより良好に行われるようにするために、図22に模式的に示してあるように、封止用ゴム17として、センサカートリッジ30、30bのポート部と嵌合する形状のものを採用しておいても良く、封止部材152として、センサカートリッジ130の開口部と嵌合する形状のものを採用しておいても良い。ただし、嵌合する部分の長さが過度に長いと、スライダー15、150をスライドさせにくくなる。そのため、上記のような形状の封止用ゴム17/封止部材152を採用する場合には、嵌合する部分の長さが過度に長くならないようにしておくことが好ましい。
【0106】
各実施形態に係る測定装置を、測定時に、スライダー15、150の先端部が筐体10から突出しない装置に変形しても良い。また、スライダー15、150を、先端部ではない部分でセンサを保持するものに変形しても良い。各実施形態に係る測定装置を、第2の位置がセンサカートリッジの封止とは無関係な装置(例えば、スライダーが、第1の位置や、第1の位置と第2の位置との間の位置に位置している場合に、センサカートリッジの封止が行われる装置)に変形しても良い。各実施形態に係る測定装置の封止用ゴム17、封止部材152の長さを長くすることにより、各実施形態に係る測定装置を、測定(点着)時にもセンサカートリッジが密閉される装置に変形することも出来る。また、上記した各測定装置/センサカートリッジから、幾つかの機能を取り除いておくことも出来る。各測定装置/センサカートリッジを、血液ではない測定対象物に関する何らかの物理量を測定するための装置/カートリッジに変形しても良いことは、当然のことである。
【符号の説明】
【0107】
10 筐体
10a カートリッジ収容部
11 LCD
12 ボタンスイッチ
13 スピーカ
14 制御ユニット
15、85、150 スライダー
15a、85a スライダーノブ
17 封止用ゴム
18 補助スライダー
30、30b、130 センサカートリッジ
31、131 ケース
32 リールハブ
35 センサ取出口
36 フィルム回収口
40、40b センサ体
41 台紙フィルム
45、45b フィルム状センサ
152 封止部材
図1
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図4B
図4C
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