(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する検体処理システムおよび検体処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、いわゆる双腕ロボットが各腕を協調動作させながら検体処理を行う場合について説明するが、ロボットは双腕ロボットに限らず、単腕ロボットであってもよい。また、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「平行」や、「垂直」といった表現を用いる場合があるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
まず、実施形態に係る検体処理方法について
図1を用いて説明する。
図1は、検体処理方法の概要を示す模式図である。なお、
図1には、説明をわかりやすくするために、培養容器200における培養面201の中心Cから開放上面へ向かう法線向きを正方向とするZ軸、培養面201と平行なX軸およびY軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。
【0013】
図1に示すように、ヘラ100は、たとえば、セルスクレーパーであり、柄101と、柄101の一端に設けられるブレード102とを備える。柄101は、後述するロボットハンド30(
図3参照)によって保持される部位である。また、ブレード102は、弾性を有する素材で形成されており、ブレード102を培養面201に沿わせるように押し付けて進行方向501へ移動させると、進行方向501の後側へたわみつつ培養面201に密着する。なお、ブレード102は、培養面201に沿うことが可能であればその形状は問わない。また、柄101とブレード102とを別部品としてもよく、柄101とブレード102とを一つの部品として形成することとしてもよい。
【0014】
培養容器200は、たとえば、シャーレであり、円形の培養面201と、周壁202とを備える。かかる培養面201で細胞が培養される。また、周壁202は、培養面201の外周から立ち上がる円筒状の形状を有する。なお、培養容器200の上面(Z軸正方向の端面)は開放されている。
【0015】
また、
図1には、培養面201の外周側における掻き取りの開始位置S、ブレード102の延伸向きに沿う線B、中心C、開始位置Sにおける径方向の線R、線Bと線Rとのなす角である角度αをあわせて示している。なお、開始位置Sは、培養面201の外周(周壁202の内側)にブレード102の一端が沿う位置である。
【0016】
ヘラ100および培養容器200は、それぞれ後述するロボットハンド30に保持され、相対的に移動することで、上記した細胞の掻き取りが実行される。以下、実施形態に係る検体処理方法を具体的に説明する。
【0017】
図1に示すように、実施形態に係る検体処理方法では、ヘラ100の進行方向501に対し、ヘラ100におけるブレード102の延伸向きを斜めにした状態で、培養容器200における培養面201の外周側から細胞を掻き取る。
【0018】
図1には、開始位置Sにおける径方向に沿う線Rに対し、ブレード102の延伸向き(線B参照)を培養容器200の上面視で時計回りに角度αだけずらした場合を示している。つまり、
図1には、進行方向501に対してブレード102の中心C寄りの端を遅らせた場合を示している。ヘラ100は、かかる角度αを保ったまま、培養面201の外周に沿って一周する。ここで、角度αは0度よりも大きい任意の角度である。
【0019】
すなわち、ヘラ100は、
図1に示す培養容器200の中心線A100まわりに公転しつつ(同図の回転向きA1a参照)、回転軸A200回りに自転する(同図の回転向きA2a参照)。この際、1公転につき1自転することで、上記したように角度αを維持しつつ、掻き取りを行うことができる。
【0020】
従来、培養面201の外周側の細胞を掻き取る場合、上記した角度αを0度にした状態で掻き取り動作が行われていた。しかし、このように、外周と垂直な状態で掻き取りを行うと、ブレード102の周壁202に接する部分が摩擦力によって変形して隙間が生じ、かかる隙間から掻きとった細胞が進行方向501の後側に漏れることがあった。
【0021】
そこで、本実施形態に係る検体処理方法では、
図1に示したように、ヘラ100の進行方向501に対し、ヘラ100におけるブレード102の延伸向きを斜めにして培養面201における外周側の細胞を掻き取ることとした。このようにすることで、ブレード102と周壁202との間に隙間が生じにくいので細胞の収集率を向上させることができる。
【0022】
図1では、ブレード102の他端(中心Cに近いほうの端)を、一端(周壁202に沿う端)における径方向よりも進行方向501の後側に傾けた場合を示した。以下では、かかる姿勢を「外側先行姿勢」、かかる姿勢による掻き取り動作を「外側先行姿勢での掻き取り動作」と記載する。なお、外側先行姿勢での掻き取り動作の詳細については、
図4A等を用いて後述する。
【0023】
なお、本実施形態に係る検体処理方法では、ブレード102の他端(中心Cに近いほうの端)を、一端(周壁202に沿う端)における径方向よりも進行方向501の前側に傾けた姿勢で掻き取り動作を行うこともできる。
【0024】
以下では、かかる姿勢を「内側先行姿勢」、かかる姿勢による掻き取り動作を「内側先行姿勢での掻き取り動作」と記載する。なお、内側先行姿勢での掻き取り動作の詳細については、
図8A等を用いて後述する。
【0025】
次に、本実施形態に係る検体処理システム1の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、検体処理システム1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、検体処理システム1は、双腕ロボット10と、ロボットコントローラ50と、入力装置60とを備える。また、双腕ロボット10および入力装置60は、ロボットコントローラ50に接続されている。なお、後述するように、入力装置60を省略することとしてもよい。
【0026】
双腕ロボット10は、右腕および左腕に相当する2つの独立したロボットアームを備えるロボットである。双腕ロボット10は、ロボットコントローラ50からの指示に従って所定の作業を行う。なお、双腕ロボット10は、外部とは隔離された作業部屋に設置され、上記した検体処理を実行する。
【0027】
ここで、双腕ロボット10の構成および配置の一例について
図3を用いて説明しておく。
図3は、双腕ロボット10の構成および配置を示す上面模式図である。同図に示すように、双腕ロボット10は、安全キャビネット5内に配置される。また、安全キャビネット5の内部には作業台5aが配置され、安全キャビネット5の外部にはロボットコントローラ50が配置される。
【0028】
安全キャビネット5は、たとえば、内部空間が負圧に調整された作業部屋である。このように、内部空間を負圧にすることで、バイオメディカル分野において用いられる試薬が気化しても安全キャビネット5の外部に漏れ出すことがない。また、安全キャビネット5内には、過酸化水素水などの洗浄液を噴霧するミスト機構を配置することができ、双腕ロボット10に付着した試薬などを洗浄することが可能である。
【0029】
作業台5aは、双腕ロボット10が試薬の注入や撹拌、細胞掻き取りといった検体処理を行う際に使用する器具等を載置する台である。なお、かかる器具としては、上記したヘラ100や培養容器200の他、試験管、ピペット、スポイト、スプーン、撹拌機などがある。なお、これらの器具は、作業台5aに直接載置されてもよく、作業台5aに配置された治具(たとえば、ヘラ立て)などに載置されてもよい。
【0030】
双腕ロボット10は、基部11と、胴体部12と、右腕部20Rと、左腕部20Lとを備える。基部10は、安全キャビネット5の床面などに固定される。胴体部12は、基端側が基部11に固定されるとともに、先端側に右腕部20Rと、左腕部20Lとを備える。なお、胴体部12は、いわゆる腰回りに先端側を旋回させるスイング軸A0を備える。
【0031】
図3に示すように、右腕部20Rおよび左腕部20Lは、たとえば、それぞれが冗長軸を有する7軸の多関節ロボットである。このように冗長軸を有する多関節ロボットを用いることで、作業者の作業内容を忠実に再現することができる。また、右腕部20Rおよび左腕部20Lの先端には、可動式の把持爪を用いた保持機構を有するロボットハンド30がそれぞれ取り付けられる。なお、保持機構としては、把持に限らず、吸着などの機構を用いることとしてもよい。
【0032】
また、
図3に示すように、右腕部20Rは、基端側から先端側へ向けて、第1アーム21、第2アーム22、第3アーム23、第4アーム24、第5アーム25、第6アーム26および第7アーム27を備える。なお、左腕部20Lも右腕部20Rと同様の構成であるので、ここでの説明を省略する。
【0033】
第1アーム21は、第1軸A1まわりに回転可能に基端側が胴体部12に支持される。第2アーム22は、第2軸A2まわりに旋回可能に、基端側が第1アーム21の先端側に支持される。第3アーム23は、第3軸A3まわりに回転可能に基端側が第2アーム22の先端側に支持される。第4アーム24は、第4軸A4まわりに旋回可能に基端側が第3アーム23の先端側に支持される。
【0034】
第5アーム25は、第5軸A5まわりに回転可能に基端側が第4アーム24の先端側に支持される。第6アーム26は、第6軸A6まわりに旋回可能に基端側が第5アーム25の先端側に支持される。第7アーム27は、第7軸A7まわりに回転可能に基端側が第6アーム26の先端側に支持される。そして、ロボットハンド30は、第7アーム27の先端側に支持される。
【0035】
なお、上記した説明では、「旋回可能」および「回転可能」という表現を用いたが、旋回とは、隣り合うアームのなす角度を変化させる動作を指す。また、回転とは、隣り合うアームのなす角度を変化させずに相対的に回転させる動作を指す。
【0036】
双腕ロボット10は、たとえば、右腕部20Rのロボットハンド30でヘラ100を、左腕部20Lのロボットハンド30で培養容器200をそれぞれ保持し、右腕部20Rおよび左腕部20Lを協調動作させる。これにより、双腕ロボット10は、
図1で説明した掻き取り動作を実行する。したがって、外周側201aの掻き取りを確実かつ正確に行うことができる。なお、双腕ロボット10が、ヘラ100および培養容器200のいずれか一方のみを保持し、他方は作業台5aなどに固定して掻き取り動作を行うこととしてもよい。
【0037】
図2の説明に戻り、ロボットコントローラ50について説明する。ロボットコントローラ50は、制御部51と、記憶部52とを備える。制御部51は、判定部51aと、切替部51bと、動作制御部51cとを備える。また、記憶部52は、種別情報52aと、教示情報52bとを記憶する。
【0038】
ここで、ロボットコントローラ50は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0039】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部51の判定部51a、切替部51bおよび動作制御部51cとして機能する。
【0040】
また、判定部51a、切替部51bおよび動作制御部51cの少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0041】
また、記憶部52は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、種別情報52aおよび教示情報52bを記憶することができる。なお、ロボットコントローラ50は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0042】
制御部51は、双腕ロボット10の動作制御を行う。判定部51aは、掻き取り動作の対象となる培養容器200の細胞の種別に応じて上記した「外側先行姿勢」および「内側先行姿勢」のいずれの掻き取り動作を行うかを判定する。
【0043】
具体的には、判定部51aは、入力装置60から細胞の種別を示す識別子などを受け取ると、受け取った識別子を記憶部52の種別情報52aと対比する。ここで、種別情報52aは、識別子と姿勢(外側先行姿勢または内側先行姿勢)とを対応付けた情報である。
【0044】
判定部51aは、受け取った識別子で種別情報52aを検索し、かかる識別子が外側先行姿勢および内側先行姿勢のいずれに対応するかを取得する。そして、取得した姿勢を判定結果として切替部51bへ通知する。
【0045】
入力装置60としては、ロボットコントローラ50のペンダントなどの端末、キーボードやタッチパネルディスプレイなどの入力デバイス、あるいは、有線または無線接続されたコンピュータなどを用いることができる。なお、入力装置60としてバーコードスキャナを用い、培養容器200に付された細胞種別を示すバーコードを読み込むこととしてもよい。
【0046】
また、入力装置60自体を省略することとしてもよい。入力装置60自体を省略する場合、判定部51aは、たとえば、複数の培養容器200に対して外側先行姿勢および内側先行姿勢のいずれをとるかをあらかじめ定められた順序で決定することとすればよい。なお、当然ながら、復数の培養容器200に対して外側先行姿勢のみ、または内側先行姿勢のみをとることとしてもよい。
【0047】
切替部51bは、判定部51aの判定結果に基づいて教示情報52bの「ジョブ」の順序を切り替える。ここで、教示情報52bは、双腕ロボット10へ動作を教示するティーチング段階で作成され、双腕ロボット10の動作経路を規定するプログラムである「ジョブ」を含んだ情報である。
【0048】
切替部51bは、外側先行姿勢で培養面201の外周側を掻き取る場合には、外周側の掻き取り動作の後に、内側の掻き取り動作を行うようにジョブの順序を切り替える。また、内側先行姿勢で培養面201の外周側を掻き取る場合には、内側の掻き取り動作の後に、外周側の掻き取り動作を行うようにジョブの順序を切り替える。このようにすることで、「ジョブ」の生成時間の短縮化や、生成に要する作業の簡略化を図ることができる。
【0049】
動作制御部51cは、切替部51bによって順序が切り替えられた教示情報52bに基づいて双腕ロボット10の各関節部におけるアクチュエータ(図示せず)に指示することで、双腕ロボット10に所望の姿勢をとらせる。また、動作制御部51cは、アクチュエータにおけるエンコーダ値を用いてフィードバック制御を行うなどして双腕ロボット10の動作精度を向上させる。
【0050】
次に、検体処理システム1が実行する外側先行姿勢による掻き取り動作について
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。
図4Aは、外側先行姿勢による外周側201aの掻き取り動作を示す上面模式図であり、
図4Bは、外側先行姿勢による内側201bの掻き取り動作を示す上面模式図である。なお、
図4Aおよび
図4Bは、培養容器200を開放側、すなわち、Z軸正方向からみた図である。
【0051】
また、
図4Aおよび
図4Bに示すように、外側先行姿勢で培養面201における外周側201aの掻き取りを行う場合には、
図4Aに示すように培養面201の外周側201aの掻き取りを行った後に
図4Bに示すように培養面201の内側201bの掻き取りを行う。
【0052】
図4Aに示すように、進行方向501に沿って外側先行姿勢で培養面201における外周側201aの掻き取りを行う場合、ブレード102の他端(中心Cに近いほうの端)を、一端(周壁202に沿う端)における径方向よりも時計回りに角度αだけ傾ける。
【0053】
そして、角度αを保ったまま、開始位置Sから開始位置Sまで一周させる。なお、
図4Aには、参考のため、開始位置Sから時計回りに90度回転させたブレード102の姿勢を、姿勢102aとして破線で示している。
【0054】
ここで、ブレード102に外側先行姿勢をとらせて掻き取りを行った場合、ブレード102によって掻き取られた細胞は、培養面201の内側201bへ向く移動向き502に沿って移動する。
【0055】
つまり、掻き取られた細胞は、ブレード102の前側に滞留するのではなく、ブレード102に沿って移動向き502へ移動するので、培養面201の内側201bへ集められる。したがって、細胞が壊れやすい場合や剥がれにくい場合であっても、細胞を壊すことなく内側201bへ集めることができる。
【0056】
ここで、培養面201の外周側201aの掻き取りは、
図4Aに示す開始位置Sから開始され、時計回りに一周して開始位置Sまで行われる。すなわち、開始位置Sは、掻き取りの終了位置でもある。このように、掻き取りを一周にわたって行うことで、外周側201aの掻き取りを確実に行うことができる。
【0057】
なお、本実施形態では、培養面201における外周側201aの掻き取りを培養面201の外周に沿って一周(360度)行うこととしたが、一周よりも多く掻き取りを行うこととしてもよい。このようにすることで、培養面201における外周側201aの細胞の掻き取りをさらに確実に行うことができる。
【0058】
このように、外側先行姿勢での培養面201における外周側201aの掻き取りが完了すると、つづいて、
図4Bに示すように、培養面201における内側201bの掻き取りが行われる。
【0059】
内側201bの掻き取りは、まず、進行方向511に対してブレード102を垂直にした状態で進行方向511に沿ってまっすぐに行われ、開始位置をX軸の負方向にずらしながら、複数回行われる。なお、
図4Bには、内側201bの掻き取りを3回行う場合を例示しているが、かかる回数は、培養容器200における培養面201の大きさや、ヘラ100におけるブレード102の刃渡りの長さに応じて適宜調整することができる。
【0060】
ここで、
図4Bに示すように、進行方向511,512,513は、外周側201aの掻き取りにおける終了点、すなわち、
図4Bに示す開始点S側に向いている。このような向きで内側201bの掻き取りを行うことで効率的に細胞を集めることができる。なお、本実施形態では、内側201bの掻き取りを進行方向511,512,513に沿ってまっすぐに行う場合を示したが、掻き取りの軌道は直線に限らず、曲線であってもよく、直線と曲線との組合せであってもよい。
【0061】
また、ブレード102の掻き取り範囲は、外周側201aの掻き取りを行った領域と重なりをもつように設定される。これにより、外周側201aの掻き取り後に移動してしまった細胞をも確実に集めることができる。なお、
図4Bには、参考のため、進行方向511に沿った掻き取りの完了位置102bを示している。このように、完了位置102bは、培養面201における外周側201aの領域内に設けられる。
【0062】
つづいて、内側201bの掻き取りでは、進行方向512に沿って進行方向511と同様にブレード102を移動させる。ここで、ブレード102の掻き取り範囲は、進行方向511に沿ったブレード102の掻き取り範囲と重なりをもつように設定される。これにより、内側201bの細胞を確実に掻き取ることができる。
【0063】
つづいて、同様の要領で、進行方向513に沿った掻き取りが行われる。なお、
図4Bには、参考のため、進行方向513に沿った掻き取りの完了位置102cを示している。このように、
図4Aに示した外側先行姿勢での外周側201aの掻き取りの後に、
図4Bに示した内側201bの掻き取りを行うことで、壊れやすい細胞や、剥がれにくい細胞を壊すことなく一箇所に集めることができる。
【0064】
次に、検体処理システム1が実行する処理手順について
図5を用いて説明する。
図5は、検体処理システム1が実行する処理手順を示すフローチャートである。まず、双腕ロボット10は、ロボットコントローラ50の指示に従い、細胞回収液を培養容器200へ注入する処理を行う(ステップS101)。
【0065】
たとえば、双腕ロボット10は、一方の腕のロボットハンド30でスポイトを保持するとともに、他方の腕のロボットハンド30で培養容器200を保持する。そして、スポイト内に細胞回収液を吸い込む動作を行った後に、吸い込んだ細胞回収液を培養容器200へ注入する。
【0066】
つづいて、双腕ロボット10は、上記した細胞の掻き取り処理を行う(ステップS102)。たとえば、双腕ロボット10は、他方の腕で保持したスポイトをヘラ100に持ち替え、両腕を協調動作させながら細胞掻き取り処理を行う。なお、ステップS102の詳細な内容については、
図6を用いて後述する。
【0067】
つづいて、双腕ロボット10は、ステップS102で掻き取られた細胞の吸引処理を行い(ステップS103)、処理を終了する。たとえば、双腕ロボット10は、ヘラ100をスポイトに持ち替え、培養容器200の一箇所に集められた細胞を吸引する。そして、吸引した細胞を試験管へ放出する。
【0068】
次に、
図5のステップS102に示した細胞掻き取り処理の詳細な処理手順について
図6を用いて説明する。
図6は、細胞掻き取り処理の処理手順を示すフローチャートである。双腕ロボット10は、培養容器200およびヘラ100を各腕でそれぞれ保持する(ステップS201)。
【0069】
つづいて、双腕ロボット10は、
図4Aに示した培養面201における外周側201aの掻き取り処理を開始する(ステップS202)。まず、双腕ロボット10は、ヘラ100のブレード102の延伸向きを径方向からずらして待機する(ステップS203)。ここで、ヘラ100は、上記した外側先行姿勢をとる。
【0070】
そして、培養容器200における外周の開始位置S(
図4A参照)でヘラ100を底面(培養面201)へ押し付ける(ステップS204)。つづいて外周に対するヘラ100の角度を維持しつつヘラ100を外周に沿って移動させる(ステップS205)。
【0071】
つづいて、外周を一周したか否かを判定し(ステップS206)、一周していないと判定した場合には(ステップS206,No)、ステップS206の判定を繰り返す。一方、一周したと判定した場合には(ステップS206,Yes)、外周掻き取り処理を完了する(ステップS207)。
【0072】
そして、
図4Bに示した培養面201における内側201bの掻き取り処理を開始位置S(
図4B参照)へ向けて行い(ステップS208)、処理を終了する。
【0073】
次に、双腕ロボット10の両腕を用いた協調動作の一例について
図7を用いて説明する。
図7は、双腕ロボット10の協調動作を説明する図である。なお、双腕ロボット10は一方の腕のロボットハンド30でヘラ100を保持するとともに、他方の腕のロボットハンド30で培養容器200を保持するものとする。
【0074】
また、
図7では、
図4Aで説明した外周側の掻き取り動作を、培養容器200を傾ける向きを変更しながら行う場合について示している。同図に示すように、双腕ロボット10の培養容器200を保持する腕は、培養容器200の最下点Lが、ヘラ100の進行方向501の前側になるように培養容器200を傾ける向きを変化させる。
【0075】
具体的には、へラ100を回転軸A200まわりに自転させながら、培養容器200の中心線A100まわりに公転させる
図1に示した動作を、ヘラ100を保持した一方の腕が行う。そして、かかる動作と連動しつつ、他方の腕が培養容器200を傾ける向きを変化させる動作を行う。
【0076】
なお、
図7では、Z軸と平行な線Z1と、培養容器200の中心線A100を角度θだけ傾けた状態で、方向Z1aに沿って首振り運動させる例を示している。このようにすることで、培養面201から剥がされた細胞や、培養面201から浮き上がった細胞が、常にヘラ100の前方にある状態を維持することができるので、細胞の収集率を高めることができる。なお、角度θは0度よりも大きい任意の角度である。
【0077】
次に、検体処理システム1が実行する内側先行姿勢による掻き取り動作について
図8Aおよび
図8Bを用いて説明する。
図8Aは、内側先行姿勢による内側の掻き取り動作を示す上面模式図であり、
図8Bは、内側先行姿勢による外周側の掻き取り動作を示す上面模式図である。なお、
図8Aおよび
図8Bは、培養容器200を開放側、すなわち、Z軸正方向からみた図である。
【0078】
また、
図8Aおよび
図8Bに示すように、内側先行姿勢で培養面201における外周側201aの掻き取りを行う場合には、
図8Aに示すように培養面201における内側201bの掻き取りを行った後に、
図8Bに示すように培養面201における外周側201aの掻き取りを行う。
【0079】
図8Aに示すように、培養面201における内側201bの掻き取りを行う場合、
図4Bと同様の手順で掻き取りが行われる。
図8Aには、内側の掻き取りによって掻き取られる領域に対応する矩形の形状の内側201bの外形を示している。なお、掻き取りの手順は、
図4Bと同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0080】
このように、培養面201における内側201bの掻き取りが完了すると、つづいて、
図8Bに示すように、培養面201における外周側201aの掻き取りが行われる。
【0081】
図8Bに示すように、進行方向501に沿って内側先行姿勢で培養面201における外周側201aの掻き取りを行う場合、ブレード102の他端(中心Cに近いほうの端)を、一端(周壁202に沿う端)における径方向よりも反時計回りに角度βだけ傾ける。
【0082】
そして、角度βを保ったまま、開始位置Sから開始位置Sまで一周させる。なお、
図8Bには、参考のため、開始位置Sから時計回りに90度回転させたブレード102の姿勢を、姿勢102aとして破線で示している。
【0083】
ここで、ブレード102に内側先行姿勢をとらせて掻き取りを行った場合、ブレード102によって掻き取られた細胞は、培養面201の外周側201aへ向く移動向き502に沿って移動する。つまり、掻き取られた細胞は、ブレード102に沿って移動向き502へ移動するので、ブレード102の前面における周壁202側に集められる。したがって、細胞を効率よく一箇所に集めることができる。
【0084】
ここで、培養面201の外周側201aの掻き取りは、
図8Bに示す開始位置Sから開始され、時計回りに一周して開始位置Sまで行われる。すなわち、開始位置Sは、掻き取りの終了位置でもある。
【0085】
なお、本実施形態では、培養面201における外周側201aの掻き取りを培養面201の外周に沿って一周(360度)行うこととしたが、一周よりも多く掻き取りを行うこととしてもよい。このようにすることで、培養面201における外周側201aの細胞の掻き取りを確実に行うことができる。
【0086】
次に、
図5のステップS102に示した細胞掻き取り処理を内側先行姿勢で行った場合の詳細な処理手順について
図9を用いて説明する。
図9は、内側先行姿勢による細胞掻き取り処理の処理手順を示すフローチャートである。双腕ロボット10は、培養容器200およびヘラ100を各腕でそれぞれ保持する(ステップS301)。
【0087】
そして、双腕ロボット10は、外周側掻き取り処理の開始位置S(
図8B参照)へ向けた内側掻き取り処理を行う(ステップS302)。つづいて、双腕ロボット10は、ヘラ100に内側先行姿勢をとらせたうえで、開始位置Sから一周にわたり外周側掻き取り処理を行い(ステップS303)、処理を終了する。なお、ステップS303の詳細な手順は、
図6に示したステップS202〜ステップS207と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0088】
上述してきたように、本実施形態に係る検体処理システム1は、培養容器200と、ヘラ100と、ロボット10と、ロボットコントローラ50とを備える。培養容器200は、細胞が培養される円形の培養面201を有し、上面が開放されている。ヘラ100は、培養面201に付着した細胞を掻き取るブレード102を有する。ロボット10は、培養容器200またはヘラ100を保持可能なロボットハンド30を有する。ロボットコントローラ50は、ロボット10の動作を制御する。
【0089】
また、ロボットコントローラ50は、動作制御部51cを備える。動作制御部51cは、ブレード102の一端を培養面201の外周に沿わせながらヘラ100を培養容器200に対して相対的に移動させることで培養面201における外周側201aの細胞を掻き取る第1動作をロボット10に行わせる。その後、ヘラ100を培養容器200に対して相対的に移動させることで培養面201における内側201bの細胞を掻き取る第2動作をロボット10に行わせる。
【0090】
したがって、本実施形態に係る検体処理システム1によれば、ヘラ100のブレード102と培養容器200との間に隙間が生じにくいので、細胞の収集率を向上させることができる。また、培養面201の外周側201aを外側先行姿勢のヘラ100で掻き取ることで、壊れやすい細胞を壊すことなく効率よく回収することができる。
【0091】
なお、上記した実施形態では、培養容器200の上面視において、ヘラ100を培養容器200に対して相対的に時計回りに移動させる場合を示したが、反時計回りに移動させることとしてもよい。
【0092】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。