(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の腰痛予防装置は、腰部に過度の負担がかかる危険を装着者に把握させるにとどまる(同文献段落[0011])。
そのため、負担値がリスク値に達するまでは発動しない。また、負担値がリスク値に達しても警告音が発信されるだけである。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、保護対象部位の適度な屈曲を妨害することなく当該部位が危険な姿勢になることを阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の「保護装置」は、
複数の可変剛性要素を含み屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定
し、かつ、物理的作用を優先的に及ぼすべき優先対象を決定する決定手段と、決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた物理的作用を可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示
し、決定手段により優先対象が決定される度に、該優先対象に対して物理的作用を優先的に及ぼすよう実行手段に指示する指示手段と、を具備
し、決定手段が、姿勢の継続時間に応じて該姿勢の継続を妨げる効果の高い位置にある可変剛性要素を優先対象として決定する。
上記課題を解決するため、本発明の「保護装置」は、複数の可変剛性要素を含み屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定し、かつ、物理的作用を優先的に及ぼすべき優先対象を決定する決定手段と、決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた物理的作用を可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示し、決定手段により優先対象が決定される度に、該優先対象に対して物理的作用を優先的に及ぼすよう実行手段に指示する指示手段と、を具備し、決定手段が、屈曲部位の屈曲に加わる捻転の態様に応じて該屈曲と該捻転の双方を妨げる効果の高い位置にある可変剛性要素を優先対象として決定する。
上記課題を解決するため、本発明の「保護装置」は、屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて、保護対象部位の危険姿勢に対し可変剛性体の剛性を十分に大きく変化させる保護作用を決定するとともに、該危険姿勢に先行する先行姿勢に対し該保護作用を部分的に緩和した予備作用を決定する決定手段と、決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた物理的作用を可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示する指示手段とを具備する。
上記課題を解決するため、本発明の一態様である「保護装置の制御方法」は、屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて態様が決定される度に、該態様に応じた前記物理的作用を前記可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示する指示ステップと、を含む。
上記課題を解決するため、本発明の一態様である「制御プログラム」は、屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定する決定機能と、前記決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた前記物理的作用を前記可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示する指示機能と、を保護装置のコンピュータに実現させる。
上記課題を解決するため、本発明の一態様である「記録媒体」にコンピュータ読取り可能に記録されるプログラムは、屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定する決定機能と、前記決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた前記物理的作用を前記可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示する指示機能と、を保護装置のコンピュータに実現させる。
【0007】
上記各発明において、「屈曲部位の内側」とは、当該部位が屈曲する際に内側に隠れる側をいう。
上記各発明において、「可変剛性体」は、保護装置が具備する要素又はその集合であってもよいし、保護装置が具備しない要素又はその集合であってもよい。
上記各発明において、「物理的作用の態様」は、物理的作用を及ぼす対象と物理的作用の程度の少なくともいずれかを含む。
上記各発明において、「実行手段」は、保護装置が具備してもよいし、具備しなくてもよい。
【0008】
上
記各「保護装置」には、以下に例示するように、種々の技術的限定を加えてもよい。
例えば、可変剛性要素は複数の粒状物が充填されたエアバッグであり、物理的作用はエアバッグの内部の気体を外部に流出させる作用であるという技術的限定を加えてもよい。
また、例えば、可変剛性体は筋肉群であり、物理的作用は筋肉群に対して低周波電流を流す作用であるという技術的限定を加えてもよい。
さらに、上記課題を解決するため、本発明の「保護装置」は、複数の可変剛性要素を含み屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させる物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定し、かつ、物理的作用を優先的に及ぼすべき優先対象を決定する決定手段と、決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた物理的作用を可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示し、決定手段により優先対象が決定される度に、該優先対象に対して物理的作用を優先的に及ぼすよう実行手段に指示する指示手段とを具備し、可変剛性要素は複数の粒状物が充填されたエアバッグであり、物理的作用はエアバッグの内部の気体を外部に流出させる作用である。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様である「保護装置」は、屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性を変化させ、可変剛性体である筋肉群に対して低周波電流を流す物理的作用の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定する決定手段と、決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた物理的作用を可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示する指示手段とを具備する。
この「保護装置」には、以下に例示するように
、次の技術的限定を加えてもよい。
例えば、
可変剛性体は複数の可変剛性要素を含み、決定手段が、物理的作用を優先的に及ぼすべき優先対象を決定し、指示手段が、決定手段により優先対象が決定される度に、該優先対象に対して物理的作用を優先的に及ぼすよう実行手段に指示するという技術的限定を加えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて屈曲部位の内側にある可変剛性体の剛性が変化する。
したがって、保護対象部位が危険な姿勢であるほど可変剛性体の剛性がより大きくなるように設定すれば、当該部位の適度な屈曲を妨害することなく当該部位が危険な姿勢になることが阻止される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.実施形態の概要]
本実施形態は、人の腰部(「保護対象部位」の一例。)に装着される保護装置に関する。
本実施形態に係る保護装置は、腰部の適度な前屈動作(「屈曲」の一例。)を妨害することなく腰部が腰痛の原因となる深い前屈姿勢(好ましくない姿勢)になることを強制的に阻止するように構成されている。
ここでは、人の動作(前屈動作及び引起動作)に連動して腰部の筋力を補助する腰部筋力補助具と併用する想定で、腰部筋力補助具及び保護装置の概要を順次説明する。
【0013】
[1−1.腰部筋力補助具の構造]
図1に、腰部筋力補助具の背面図を例示する。
図1に例示されるように、腰部筋力補助具10は、左背部ベルト11Lと左肩部弾性材12L,右脚部弾性材13R及び右外側腰部ベルト14Rとの間、並びに、右背部ベルト11Rと右肩部弾性材12R,左脚部弾性材13L及び左外側腰部ベルト14Lとの間で、一方にかかる張力を他方に作用させる機械的構造を有する。すなわち、左肩部弾性材12Lに接続する左背部ベルト11Lが、右脚部弾性材13Rに接続する右第1連結具15R及び右第2連結具16Rを介して、右外側腰部ベルト14Rと摺動自在に一体化している。また、右肩部弾性材12Rに接続する右背部ベルト11Rが、左脚部弾性材13Lに接続する左第1連結具15L及び左第2連結具16Lを介して、左外側腰部ベルト14Lと摺動自在に一体化している。
【0014】
図2に、腰部筋力補助具の腰部断面図を例示する。
図2は、
図1のA−A断面を表す。
図2に例示されるように、左外側腰部ベルト14L及び右外側腰部ベルト14Rは、腰部に巻かれる内側腰部ベルト30Aにそれぞれ装着される。左外側腰部ベルト14L及び右外側腰部ベルト14Rと内側腰部ベルト30Aとは、例えばマジックテープ(登録商標),ボタン,フック等により着脱可能に装着されるのが好ましい。
内側腰部ベルト30Aは帯状の伸縮部材(コルセット)であり、その一端部付近の外側面と他端部付近の内側面とが装着されることで人の腰部に巻き付けられる。初期状態における腰部の引締強度は装着者により調整されるものとする。内側腰部ベルト30Aの一端部付近の外側面と他端部付近の内側面とは、例えばマジックテープ(登録商標),ボタン,フック等により着脱可能に装着されるのが好ましい。
【0015】
[1−2.補助作用とその効果]
腰部筋力補助具10の装着者が上半身を前屈させると、背部体表面長の増大により左背部ベルト11L及び右背部ベルト11Rに張力が加わる。そして、この張力が左肩部弾性材12L,右脚部弾性材13R及び右外側腰部ベルト14R並びに右肩部弾性材12R,左脚部弾性材13L及び左外側腰部ベルト14Lにそれぞれ作用する。
左肩部弾性材12L及び右脚部弾性材13R並びに右肩部弾性材12R及び左脚部弾性材13Lは、左背部ベルト11L及び右背部ベルト11Rの張力が作用すると、自然長からいくらか伸長する。この伸長状態から自然長に戻ろうとする弾力(上体を引き起こさせる方向の復元力)により、上体が支持される。
【0016】
一方、右外側腰部ベルト14R及び左外側腰部ベルト14Lは、左背部ベルト11L及び右背部ベルト11Rの張力が作用すると、右第2連結具16R及び左第2連結具16Lの方向にそれぞれ引っ張られる。このとき右第2連結具16R及び左第2連結具16Lの方向への引張力により内側腰部ベルト30Aの張力が増大することで、体幹が引き締められる。
このように、腰部筋力補助具10の装着者が上半身を前屈させると、上体を支持する力と体幹を引き締める力とが受動的に発生し、腰部の筋力が補助される。
【0017】
[1−3.保護装置を装着した腰部筋力補助具の構造]
図3に、保護装置を装着した腰部筋力補助具の腰部断面図を例示する。
図3は、
図2における内側腰部ベルト30Aを、可変剛性要素471−474を備える保護装置が装着された内側腰部ベルト30Bに置換したものである。
図3に例示されるように、左外側腰部ベルト14L及び右外側腰部ベルト14Rは、腰部に巻かれる内側腰部ベルト30Bにそれぞれ装着される。左外側腰部ベルト14L及び右外側腰部ベルト14Rと内側腰部ベルト30Bとは、例えばマジックテープ(登録商標),ボタン,フック等により着脱可能に装着されるのが好ましい。
【0018】
内側腰部ベルト30Bは帯状の伸縮部材(コルセット)であり、その一端部付近の外側面に保護装置20(図示せず)が装着される。内側腰部ベルト30Bと保護装置20とは、脱落を回避するため、例えばネジ等により着脱可能に装着されるのが好ましい。また、保護装置20の周囲はクッション材(例えば、スポンジ等)により覆われるのが好ましい。
内側腰部ベルト30Bの一端部付近の外側面と他端部付近の内側面とが装着されることで人の腰部に巻き付けられる。初期状態における腰部の引締強度は装着者により調整されるものとする。内側腰部ベルト30Bの一端部付近の外側面と他端部付近の内側面とは、例えばマジックテープ(登録商標),ボタン,フック等により着脱可能に装着されるのが好ましい。
【0019】
可変剛性要素471−474は、装着時に身体の前方にくる位置の内側に装着される。可変剛性要素471−474は、使用時のズレを防止する観点で、例えばネジ等により内側腰部ベルト30Bにしっかりと装着されるのが好ましい。あるいは、内側腰部ベルト30Bを内外の二重構造とし、可変剛性要素471−474を内側腰部ベルト30B内に収納するように構成してもよい。
可変剛性要素471−474の大きさ及び厚さは、装着者の体型や想定される使用環境に合わせて調整するものとする。
【0020】
[1−4.保護作用とその効果]
本実施形態に係る保護装置20は、屈曲部位(腰部)の内側(腹側)にある可変剛性体(エアバッグから成る可変剛性要素471−474)の剛性を変化させる物理的作用(エアバッグに対する脱気作用)の態様を、該屈曲部位を含む保護対象部位の姿勢に応じて決定する決定手段と、前記決定手段により態様が決定される度に、該態様に応じた前記物理的作用を前記可変剛性体の少なくとも一部に対して及ぼすよう実行手段に指示する指示手段と、を少なくとも具備する。
【0021】
すなわち、本実施形態に係る保護装置20は、腰部の前側にある可変剛性要素471−474のうち少なくともいずれかの剛性を、腰部が危険な姿勢であるほどその剛性がより大きく(高く)なるように、変化させる。
剛性の小さい(低い)可変剛性要素は、腰部の前屈を妨げない。一方、剛性の大きい(高い)可変剛性要素は、腹部を外的に刺激して筋肉を硬化させることで腰部の前屈を物理的に妨げる。
したがって、本実施形態に係る保護装置20は、腰部の適度な前屈(屈曲)を妨害することなく腰部が危険な姿勢になることが阻止される。
【0022】
[2.実施形態の詳細]
保護装置20は、コンピュータを構成するチップを収納する本体部と、本体部に接続される姿勢センサ及び可変剛性ユニットと、を含む。
ここでは、保護装置20の構成(ハードウェア構成,機能構成)及び動作(保護動作)を順次説明する。
【0023】
[2−1.保護装置のハードウェア構成例]
図4に、保護装置のハードウェア構成例を示す。
図4に例示されるように、保護装置20は、全体の制御及び各種の情報処理を行うメインコントローラ210と、メインコントローラ210にワークスペースを提供するRAM(Random Access Memory)220と、メインコントローラ210に読み込まれるプログラムやデータを記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)230と、装着者の姿勢を検出する姿勢センサ240と、物理的作用を受けて剛性を変化させる可変剛性要素を含む可変剛性ユニット251−254と、時刻情報を出力する時計260と、を含む。
【0024】
メインコントローラ210と、RAM220,EEPROM230,姿勢センサ240,可変剛性ユニット251−254及び時計260とは、バスライン(例えば、CAN(Controller Area Network)バス)を介して接続される。
メインコントローラ210は、保護装置20全体を制御するとともに各種の情報処理を実行するコンピュータ装置である。また、メインコントローラ210は、EEPROM230に記憶されるプログラムやデータをRAM220に読み込んで後述の各機能を実現する。なお、メインコントローラ210と、RAM220と、EEPROM230とは、マイクロコントローラを構成する集積回路に組み込まれていてもよい。
【0025】
姿勢センサ240は、ジャイロセンサ,3軸加速度センサ,地磁気センサ等の既存のセンサのうち少なくとも1種類を含んで構成されるセンサユニットであり、上半身(例えば、背部,胸部など)及び下肢(例えば、大腿部,頸部など)にそれぞれ配置される。本実施形態では、ワイヤレス9軸センサを胸部,大腿部及び頸部に貼付し、腰部及び膝部の屈曲度合いをセンシングする。
姿勢センサ240は、3次元空間における自身の向きを特定し得るデータを所定時間間隔で又は要求に応じて出力する。姿勢センサ240から出力された信号は、必要に応じてデジタル信号に変換され、メインコントローラ210に取り込まれる。
【0026】
可変剛性ユニット251−254は、それぞれ、複数の粒状物(プラスチックビーズ)が充填されたエアバッグ(「可変剛性要素」の一例。粒子内蔵型機械拘束要素ともいう。)と、エアバッグ内の気体を外に流出させるとともに外の気体をエアバッグ内に流入させるポンプと、ポンプを駆動するドライバと、ドライバの動作を制御するコントローラと、を含む。本実施形態では、ビニールチューブに多数の発泡スチロール粒子を封入してエアバッグを構成する。
可変剛性ユニット251−254は、それぞれ、メインコントローラ210からの指示に応じて、エアバッグ内の気体の量を変化させる。本実施形態では、エアバッグ内の気体の充填量を3段階に変化させることができるものとする。したがって、可変剛性要素の剛性レベルも3段階(例えば、0:小,1:中,2:大)となる。
なお、エアバッグ以外の要素(ポンプ,ドライバ及びコントローラ)を複数のエアバッグが共有する構成にしてもよい。この場合、ポンプによる脱気作用の有効/無効をエアバッグごとに切り替える機構を設けるとよい。
【0027】
[2−2.保護装置の機能構成例]
図5に、保護装置の機能構成例を示す。
図5に例示されるように、保護装置20は、複数の姿勢センサ240を含む検出部410と、同定部420と、決定部430と、記憶部440と、指示部450と、実行部460と、可変剛性体470と、を含む。可変剛性体470は、可変剛性要素471−474を包含する。
保護装置20の機能のうち同定部420,決定部430及び指示部450の機能は、組込装置向けOS(Operating System)と当該OS上で動作するプログラムとがメインコントローラ210にそれぞれインストールされ、当該プログラムがメインコントローラ210に読み込まれることにより実現される。
【0028】
メインコントローラ210にインストールされるべきプログラムは、製品出荷時にEEPROM230に記録されているのが好ましい。
なお、上記のプログラム及びその更新版は、各種の記録媒体(例えば、CD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disk),MOディスク(Magneto-Optical disk),フラッシュメモリ(flash memory)など)に記録された状態で配布され当該記録媒体から他のコンピュータ装置(例えば、PC(Personal Computer))を介して保護装置20に供給されてもよいし、通信ネットワークを介し搬送波に重畳させて提供され上記他のコンピュータ装置を介して保護装置20に供給されてもよい。
【0029】
同定部420は、検出部410から出力されるデータに基づき、保護装置20を装着する者の姿勢を同定(推定)する。
本実施形態では、OWAS(Ovako Working Posture Analysing System)による評価手法を利用するため、背部や下肢の姿勢がOWASで定義される姿勢分類中のいずれに該当するかをそれぞれ評価する。姿勢分類には、例えば、背部に関する4分類(1:曲げない,2:腰屈折,3:ひねりor体側屈,4:ひねりand体側屈)と下肢に関する4分類(1:座る,2:直立,3:膝屈折,4:膝立ち)が存在する。姿勢分類に関するデータは、記憶部440に記憶されているものとする。
必要に応じて、同定された姿勢と時計260から取得される時刻データとを含む姿勢ログデータを記憶部440に格納してもよい。
【0030】
決定部430は、同定部420により同定された姿勢の負担度や改善要求度を評価し、評価結果に応じて可変剛性体470の剛性を変化させる物理的作用(本実施形態では、脱気作用)の態様を決定する。
本実施形態では、OWASで定義されるAC(Action Category)が3以上と判定される場合に、背部や下肢の姿勢に応じて動作モードを決定する。AC判定に関するデータは、記憶部440に記憶されているものとする。
【0031】
図6に、各動作モードにおける各可変剛性要素の剛性レベルを例示する。
決定部430は、
図6に例示されるテーブルを参照し、物理的作用の対象及び程度を決定する。すなわち、どの可変剛性要素の剛性をどのレベルにするかを決定する。
例えば、「モード2」において、可変剛性要素471,472,473,474の剛性レベルは、それぞれ1,2,2,1となる。
【0032】
指示部450は、決定部430により物理的作用の態様が決定される度に、当該決定された態様に応じた物理的作用を可変剛性要素471−474の少なくともいずれかに及ぼすよう実行部460に指示する。
本実施形態では、実行部460に対し、可変剛性要素471−474の変化後の剛性レベル(0,1,2のいずれか)を指定する信号が出力されるものとする。
【0033】
実行部460は、指示部450からの指示に従い、指定された剛性レベルになるように可変剛性要素471−474の少なくともいずれかに対して物理的作用を及ぼす。
本実施形態では、可変剛性ユニットのポンプを駆動してエアバッグ内の気体の量を調整させる。
【0034】
[2−3.保護装置の動作]
図6及び
図7から
図9までを参照しつつ、保護装置の動作を説明する。
ここでは、好ましくない典型的な姿勢になり又はこれが継続した場合に、どの可変剛性要素の剛性をどのレベルに変化させるかを列挙していく。
特に、本実施形態では、姿勢との関係で優先度の高い位置にある可変剛性要素の剛性を優先的に変化させる構成を採用している。これは、可変剛性要素の剛性を変化させるのに相応の時間を要することから、危険姿勢を回避させる効果が高いと考えられる可変剛性要素を優先的に扱うこととしたものである。
なお、可変剛性要素471−474は、
図7から
図9までに例示すように、体幹部の腹側(屈曲部位の内側)に略水平方向に並べて配置されるものとする。また、OWASで定義されるACが2以下と判定される場合、全ての可変剛性要素の剛性レベルは初期値0(小)であるものとする。
【0035】
[2−3−1.正前屈が継続された場合の動作パターン]
同定部420により「正前屈」であると同定された場合、動作モードを「モード2」に決定する。
図6及び
図7(a)に例示されるように、「モード2」では、可変剛性要素472及び可変剛性要素473の剛性レベルが2になるように、可変剛性要素471及び可変剛性要素474の剛性レベルが1になるように、それぞれ調整される。
また、同定部420により「正前屈」であると連続して同定された場合、その継続時間が所定時間(例えば、10秒間など)以上であれば、動作モードを「モード3」に決定する。
図6及び
図7(b)に例示されるように、「モード3」では、可変剛性要素471−474の剛性レベルが2になるように調整される。
【0036】
[2−3−2.前屈に捻転が加わった場合の動作パターン]
同定部420により左側への「捻転(捻り)」が加わった「前屈」であると同定された場合、動作モードを「モード4」に決定する。
図6及び
図8(a)に例示されるように、「モード4」では、可変剛性要素471及び可変剛性要素472の剛性レベルが2になるように、可変剛性要素473及び可変剛性要素474の剛性レベルが0になるように、それぞれ調整される。
一方、同定部420により右側への「捻転(捻り)」が加わった「前屈」であると同定された場合、動作モードを「モード5」に決定する。
図6及び
図8(b)に例示されるように、「モード5」では、可変剛性要素473及び可変剛性要素474の剛性レベルが2になるように、可変剛性要素471及び可変剛性要素472の剛性レベルが0になるように、それぞれ調整される。
【0037】
[3.変形例]
[3−1:(変形例1)先行姿勢に対する予備作用]
上述の実施形態では、OWASで定義されるAC3以上の場合に、背部や下肢の姿勢に応じて動作モードを決定する例を示した。つまり、保護装置20は、保護対象部位の危険姿勢に対し可変剛性体470の剛性を十分に大きく変化させる保護作用を決定する。
これに対し、OWASで定義されるAC2以下の場合にも、危険姿勢に先行し危険姿勢に至る蓋然性の高い先行姿勢に対し保護作用を部分的に緩和した予備作用を及ぼす構成にしてもよい。
先行姿勢の検出には、先行姿勢と危険姿勢とを関連付けたパターンテーブルを利用するとよい。パターンテーブルは、記憶部440に格納しておくとよい。
【0038】
例えば、同定部420により「正前屈」に先行する「先行姿勢」であると同定された場合、動作モードを「モード6」に決定する。
図6及び
図9に例示されるように、「モード6」では、可変剛性要素472及び可変剛性要素473の剛性レベルが1になるように、可変剛性要素471及び可変剛性要素474の剛性レベルが0になるように、それぞれ調整される。
その後、同定部420により「正前屈」(危険姿勢)であると同定された場合、動作モードを「モード2」に決定する(
図7(a))。さらに、同定部420により姿勢が「正前屈」であると連続して同定された場合、その継続時間が所定時間(例えば、10秒間など)以上であれば、動作モードを「モード3」に決定する(
図7(b))。
【0039】
[3−2:(変形例2)低周波電流を流して腹部筋肉群を硬化させる]
上述の実施形態では、複数の粒状物(プラスチックビーズ)が充填されたエアバッグ(「可変剛性要素」の一例。)の内部の気体を外部に流出させる脱気作用(「物理的作用」の一例。)により、保護対象部位の危険姿勢を未然に回避させている。
これに対し、腹部の筋肉群(「可変剛性要素」の一例。)に対して低周波電流を流す作用(「物理的作用」の一例。)により、筋肉群の剛性を変化させて保護対象部位の危険姿勢を未然に回避させてもよい。腹部の筋肉群に流す電流の周波数やリズムは、人体の安全性や装着者の周囲の環境その他の事情を考慮して決定するのが好ましい。また、低周波電流を流す位置(パッドの貼付位置)は、可変剛性要素471−474と同様の配置としてもよいし、他の配置としてもよい。