特許第6677480号(P6677480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6677480-履歴型ダンパー及び建物の制振構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677480
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】履歴型ダンパー及び建物の制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20200330BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20200330BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20200330BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   E04H9/02 311
   F16F15/02 Z
   F16F15/023 A
   F16F7/12
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-210415(P2015-210415)
(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公開番号】特開2017-82455(P2017-82455A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−045560(JP,A)
【文献】 特開2005−325529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の矩形状の架構面内に設置される履歴型ダンパーであって、
凹六角形の横断面形状を有する鋼製の扁平な筒体であって前記凹六角形6つの及び6つの頂点にそれぞれ位置する6つの平坦な面部及び6つの折り曲げられた角部を有する筒体を備え、
前記筒体は、前記架構面を規定する矩形の2つの対角線の一方に沿って配置される2つの斜材の間に配置され、
前記筒体の6つの面部は、前記2つの斜材の端部にそれぞれ固定される互いに相対する2つの面部と、該2つの面部間にあって前記凹六角形の180度を超える内角を規定する他の2つの面部を1組とする2組の他の面部とからなる、履歴型ダンパー。
【請求項2】
前記筒体は折り曲げ加工を施された帯鋼片であって互いに突き合わされかつ接合された両端面を有する帯鋼片からなり、前記帯鋼片の両端面は前記6つの角部間のいずれかに存する、請求項1に記載の履歴型ダンパー。
【請求項3】
矩形状の架構と、
前記架構に設置された請求項1又は2に記載の履歴型ダンパーとを含む、建物の制振構造。
【請求項4】
さらに、一対の粘性型ダンパーを含み、
両粘性型ダンパーは、前記架構面を規定する矩形の2つの対角線の他方に沿ってかつ前記履歴型ダンパーを間において配置され、また、前記履歴型ダンパーの2組の他の2つの面部の一方と前記架構とにそれぞれピン結合されている、請求項3に記載の建物の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に加わる地震エネルギを吸収し、これにより建物が負担する地震力を低減する制振装置である履歴型ダンパーと該履歴型ダンパーを含む建物の制振構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の制振のために、建物の梁及び柱が構成する矩形状の架構内に、鋼材の塑性変形を利用して地震エネルギを吸収する履歴型ダンパーを配置することが行われている。このような履歴型ダンパーの一つとして、従来、鋼材により全体に矩形状を呈するように形成された、互いに相対する2対の角部を有するものが提案されている。この履歴型ダンパーは、その2対の角部がそれぞれ建物の架構の2つの対角線上に位置するように配置され、2対の角部に固定される2対の斜材を介して、架構に取り付けられる。
【0003】
この履歴型ダンパーは、建物が地震のために架構の形状が矩形から平行四辺形に変化し、これに伴って架構の両対角線の長さに変化が生じ、引張力と圧縮力とを受ける。このとき、履歴型ダンパーの2対の角部において角度の変化を伴う塑性変形が生じ、これにより、建物に加わる地震エネルギが吸収される。
【0004】
ところで、従来の履歴型ダンパーの角部は、該角部における塑性変形が所要の地震エネルギの吸収効果を発揮するように、所定の剛性を有することが求められる。従来の履歴型ダンパーにあっては、角部に斜材を固定するための継手が設けられる。このため、角部の剛性の設定は継手を含む角部全体について行う必要がある。しかし、継手を含む角部全体についての剛性を算出することには困難を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−95901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、全体に多角形状を呈し、複数の部を有する履歴型ダンパーであって前記角部に求められる剛性の算定が容易である履歴型ダンパーを提供し、また、前記履歴型ダンパーを含む建物の制振構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建物の矩形状の架構面内に設置される履歴型ダンパーに係り、履歴型ダンパーは、凹六角形の横断面形状を有する鋼製の扁平な筒体であって前記凹六角形6つの及び6つの頂点にそれぞれ位置する6つの平坦な面部及び6つの折り曲げられた角部を有する筒体を備える。前記筒体は、前記架構面を規定する矩形の2つの対角線の一方に沿って配置される2つの斜材の間に配置され、前記筒体の6つの面部は、前記2つの斜材の端部にそれぞれ固定される互いに相対する2つの面部と、該2つの面部間にあって前記凹六角形の180度を超える内角を規定する他の2つの面部を1組とする2組の他の面部とからなる。前記筒体は折り曲げ加工を施された帯鋼片であって互いに突き合わされかつ接合された両端面を有する帯鋼片からなり、前記帯鋼片の両端面は前記6つの角部間のいずれかに存するものとすることができる。
【0008】
本発明は、また、建物の制振構造に係り、制振構造は、前記建物の矩形状の架構と、前記架構に設置された前記履歴型ダンパーとを含む。好ましくは、さらに、一対の粘性型ダンパーを含む。両粘性型ダンパーは、前記架構面を規定する矩形の2つの対角線の他方に沿ってかつ前記履歴型ダンパーを間において配置され、また、前記履歴型ダンパーの2組の他の2つの面部の一方と前記架構とにそれぞれピン結合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記履歴型ダンパーが設置された架構を有する建物が地震の発生により水平方向に揺れ、前記架構の形状が矩形から平行四辺形に変化するとき、前記2つの斜材を介して、前記履歴型ダンパーを構成する筒体がその2つの面部において前記筒体を引き伸ばしまた押し縮めようとする外力を交互に受ける。このとき、前記筒体の各角部に角度の変化を伴う塑性変形が生じ、前記建物に作用する地震力が緩和される。
【0010】
本発明にあっては、前記履歴型ダンパーを構成する筒体は、その2つの面部において、前記2つの斜材の端部に固定され、いずれの角部も前記筒体の固定に関与しない。このことから、想定される地震力の緩和に必要とされる前記角部の剛性について、前記筒体を構成する鋼材の厚さ、幅又は種類の選択により、容易に設定することができる。
【0011】
前記履歴型ダンパーが設置された前記架構内に、さらに、一対の粘性型ダンパーを設置することができる。前記履歴型ダンパー及び前記粘性型ダンパーは、それぞれ、比較的の大きい地震力の緩和及び比較的小さい地震力の緩和に寄与する制振装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】建物の架構と該架構内に設置された履歴型ダンパー及び一対の粘性型ダンパーとを示す斜視図である。
図2図1に示す架構並びに履歴型ダンパー及び一対の粘性型ダンパーの正面図である。
図3】建物の架構の地震発生前及び発生後における形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2を参照すると、建物10の架構12内に制振装置である履歴型ダンパー14と一対のオイルダンパーのような粘性型ダンパー16とが設置されている。
【0014】
図示の建物10は、架構12を構成する左右一対の鉄筋コンクリート製の柱18と、一対の柱18に連なりかつ両柱18間を水平に伸びる上下一対の鉄骨製の梁20とを備える。柱18は、これが鉄筋コンクリート製である図示の例に代えて、鉄骨製又は鉄骨鉄筋製であってもよい。同様に、梁20は、これが鉄骨製である図示の例に代えて、鉄骨鉄筋製又は鉄筋コンクリート製であってもよい。架構12を構成する一対の柱18及び一対の梁20は矩形状の架構面22を規定する。前記制振装置(履歴型ダンパー14及び粘性型ダンパー16)は、建物10が地震力を受けて水平方向に揺れ、これに伴って架構面22の形状が矩形から平行四辺形に変化するとき(図3参照)、地震エネルギを吸収し、建物10に作用する地震力を緩和する働きをなす。
【0015】
履歴型ダンパー14と一対の粘性型ダンパー16とは、これらのダンパー14、16が設置された架構12と共に、建物10の制振構造24を構成する。但し、制振構造24を構成する前記制振装置は、図示の例に代えて、一対の粘性型ダンパー16を欠く、履歴型ダンパー14のみからなるものとすることが可能である。
【0016】
履歴型ダンパー14は鋼製の扁平な筒体26を備える。履歴型ダンパー14は、筒体26の軸線が架構面22に直交するように架構12内に配置されている。筒体26は、好ましくは、梁20の厚さ寸法、図示の例にあっては梁20を構成するH形鋼のフランジの幅寸法にほぼ等しい軸線方向長さを有する。
【0017】
図示の筒体26は、多角形の一つである6つの辺及び頂点を有する六角形の横断面形状を有し、前記六角形の各辺に位置する平坦な面部26a、26b、26cと、前記六角形の各頂点に位置する折り曲げられた角部26d、26eとを有する。
【0018】
図示の例にあっては、前記六角形は、180度を超える少なくとも1つの内角を有する凹多角形の一つである凹六角形である。この凹六角形は、互いに相対しかつ互いに平行である等長の2辺(面部26a)と、これらの2辺間にあって「く」の字形に折れ曲がりかつ前記2辺(面部26a)に連なる等長の2辺(面部26b及び面部26c)を1組とする2組の2辺とを有する。前記2辺と両組の2辺とがそれぞれ180度以内の前記内角(角部26d)を規定し、また、各組の2辺がそれぞれ180度を超える前記内角(角部26e)を規定する。また、図示の例では、前記2組の2辺の一方(面部26b)同士及び他方(面部26c)同士がそれぞれ互いに平行である。なお、図示の例にあっては、前記平行な2辺(面部26a)のそれぞれが、各組の各辺(面部26b、26c)より大きい長さ寸法を有する。
【0019】
筒体26は、帯鋼片(図示せず)に折り曲げ加工を施すことにより角部26d、26eと、これらの間の面部26a、26b、26cとを形成し、その後、前記帯鋼片の両端面を互いに突き合わせて溶接し、相互接合することにより、形成することができる。ここにおいて、前記溶接は一般に前記溶接により接合される箇所の剛性を増大させる。このため、前記帯鋼片の互いに突き合わされる両端面(突合せ面)の位置が、角部26d、26eにはなく、角部26d、26d相互間又は角部26d、26e相互間にあるようにする。これにより、全ての角部26d、26eの剛性を、前記帯鋼片由来の一様なものとすることができる。
【0020】
なお、図1及び図2に示すところでは、図示の便宜のため、筒体26の角部26d、26eが筒体26の内面及び外面のそれぞれにおいて直線で描かれている。しかし、筒体26の各角部26d、26eは、折り曲げられていることから、実際には湾曲面を呈する。
【0021】
なお、前記六角形の辺の長さ及び頂角の大きさは任意に定めることが可能である。
【0022】
履歴型ダンパー14を構成する筒体26は、2つの斜材28を介して、架構12に固定されている。より詳細には、筒体26は、架構面22を規定する矩形の2つの対角線22a、22bの一方22a(図3)に沿って配置された2つの斜材28間に配置され、また、筒体26の各面部26aの任意の位置において、好ましくは各面部26aに連なる2つの角部26d相互間の中央位置において、各斜材28の各端部28a(図2)に固定されている。各斜材28の他端部28bは、架構12にこれを構成する柱18及び梁20の交差部において固定されている。
【0023】
図示の例にあっては、各斜材28がH形鋼からなり、該H形鋼はその長さ方向に伸びる軸線に対して直角な端面を有し、該端面において筒体26の平坦な面部26aに接している。但し、筒体26の横断面形状によっては、前記筒体の面部に接する斜材28の端面は該斜材の軸線に対して非直角である場合がある。なお、斜材28は、前記H形鋼以外の形鋼又は他の長尺材からなるものとすることができる。また、斜材28を構成する前記H形鋼は、筒体26の前記軸線方向長さより小さい幅寸法を有する。
【0024】
両斜材28は、履歴型ダンパー14を架構12内に設置するに先立ち、筒体26の両面部26aにそれぞれ固定しておくことができる。面部26aに対する斜材28の固定は、これらを溶接することにより、あるいは、予め面部26aに継手(図示せず)を固定しておき、前記継手と斜材28の端部28aとを複数対のボルト及びナット(図示せず)で固定することにより行うことができる。
【0025】
建物10が地震力を受けて水平方向へ左右に揺れるとき、架構12又は架構面22の形状が矩形から平行四辺形に変化し、これに伴って架構面22の両対角線22a、22bの長さが伸長し及び短縮する(図3参照)。このとき、履歴型ダンパー14を構成する筒体26が、2つの斜材28にそれぞれ固定された2つの面部26aにおいて、架構12から引張力及び圧縮力を交互に受け、筒体26は一方の対角線22aの伸長方向に関して交互に引き伸ばされまた押し縮められる。同時に、筒体26の各角部26d、26eに角度の変化を伴う塑性変形が生じる。具体的には、筒体26が引き伸ばされるとき、筒体26に、角部26dの内角の大きさが漸増しまた角部26eの内角の大きさが漸減する塑性変形が生じる。反対に、筒体26が押し縮められるとき、角部26dの内角の大きさが漸減しまた角部26eの内角の大きさが漸増する塑性変形が生じる。その結果、建物10に作用する地震エネルギが吸収され、建物10が負担する地震力が緩和される。
【0026】
履歴型ダンパー14の筒体26の各角部26d、26eの剛性の程度又は大きさは、前記帯鋼片の厚さ、幅、又は種類(鋼種)の選択により、任意にまた容易に定めることができる。筒体26の各角部26d、26eの剛性の程度又は大きさは、想定される規模の地震力の緩和に有効とされる前記塑性変形の程度を考慮して定められる。また、筒体26の各面部26a、26b、26cは、筒体26が一方の対角線22aの伸長方向に引き伸ばされまた押し縮められるとき、これに撓みがほとんど生じない程度の剛性を有する。各面部26a、26b、26cの剛性もまた前記帯鋼片の厚さ、幅、又は種類(鋼種)に基づいて、前記角部の剛性と共に、適切に定めることができる。
【0027】
履歴型ダンパー14と共に架構12内に設置される一対の粘性型ダンパー16は、架構面22を規定する前記矩形の2つの対角線22a、22bのうちの他方の対角線22bに沿ってかつ履歴型ダンパー14を間において配置され、また、履歴型ダンパー14の筒体26の2つの面部26a以外の他の2つの面部、図示の例にあっては互いに平行な2つの面部26bと、架構12を構成する柱18及び梁20の交差部(具体的には交差部に固定されたガセットプレート32)とにそれぞれピン30により結合(ピン結合)されている。
【0028】
地震のために建物10が水平方向へ左右に揺れ、このために架構面22の形状が矩形から平行四辺形に変化し、これに伴って架構面22の他方の対角線22bの長さが交互に短縮し及び伸長するとき(図3参照)、両粘性型ダンパー16は圧縮力及び引張力を交互に受ける。このとき、両粘性型ダンパー16は、その振動減衰機能により、架構12の形状変化の程度を軽減させる働きをなす。
【0029】
両粘性型ダンパー16は、地震が履歴型ダンパー14に前記塑性変形を生じさせる程の比較的大きい規模のものであるときは、履歴型ダンパー14と共同して、建物10に働く地震力の緩和に寄与する。反対に、地震が履歴型ダンパー14に前記塑性変形ではなく弾性変形を生じさせる程の比較的小さい規模のものであるときは、主として、両粘性型ダンパー16の働きが建物10に働く地震力の緩和に寄与する。
【符号の説明】
【0030】
10 建物
12 架構
14 履歴型ダンパー
16 粘性型ダンパー
18 柱
20 梁
22 架構面
24 制振構造
26 筒体
26a、26b、26c 筒体の面部
26d、26e 筒体の角部
28 斜材
28a 斜材の一端部
図1
図2
図3