(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)メッシュ状の熱可塑性樹脂からなる第1のシート層と当該第1のシート層のそれぞれの面に設けられた熱可塑性樹脂からなる第2および第3のシート層とが熱融着されたシート複合層に椅子のフレームの形状に沿った背凭れ又は座部、若しくは背凭れから座部の形状に対応した形状に打ち抜き加工し、当該打ち抜き加工されたシート複合層に熱を加え軟化させた状態でプレス加工を行い変形させ、その後冷却固化するステップと、
b)熱可塑性樹脂からなるクッション材に熱をかけて軟化させた状態でプレス加工を行い変形させ、その後冷却固化するステップと、
c)前記プレス加工されたシート複合層と前記プレス加工されたクッション材とを接着するステップと、
からなる、椅子シート製造方法であって、
前記ステップa)において前記シート複合層に対して使用するプレス加工機と、前記ステップb)において前記クッション材に対して使用するプレス加工機とが同じプレス加工機であって、シート複合層およびクッション材を成型するための異なる型枠アダプターがそれぞれのステップで使用されるか、または別のプレス加工機で使用される、椅子シート製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クッション材により荷重の吸収効果を高めて体形に沿うように変形するようにすると、むしろ背や腰を変形させて負担が生じ、長時間の使用によって座り疲れを生じることにもなる。
【0006】
さらに座や背靠れの硬質部からの感触を受けて硬くすわり心地が悪くなる、という問題も発生する。
【0007】
しかも、人によって体形が異なり、必ずしも用意された椅子がその人にとって座り心地が良いとは限らない。特に、椅子の座や背凭れが固い素材からできている場合には特にそれが顕著である。
【0008】
本発明は、椅子の座や背凭れの形状の基本的な形状を維持して体を支持しかつ適度なクッション性を発揮できる新たな構造を有する椅子を提供することを目的とする。
【0009】
さらに本発明は、広く荷重を分散させて全体で支えながら、背凭れの腰や、お尻、ふとものの裏や、さらには腰からふとものの裏にかけてしっかり体をつつむことのできる新たな構造を有する椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の椅子は、メッシュ状の熱可塑性樹脂からなる第1のシート層と第1のシート層のそれぞれの面に熱融着された熱可塑性樹脂からなる第2および第3のシート層から少なくともなり、椅子のフレームの形状に対応した形状の背凭れ又は座部、若しくは背凭れおよび座部を有するプレス加工シート複合層と、そのプレス加工シート複合層の面と接着される面を有し、背凭れの腰部分、又は座部のお尻からふとももの裏部分、若しくは背凭れの腰部分から座部のふとももの裏部分にかけて凹部を有する熱可塑性樹脂からなるプレス加工クッション層と、からなっている。
【0011】
さらに、本発明の椅子は、プレス加工シート複合層には椅子のフレームに沿って形成された複数の穴を有しており、その穴に貫通してプレス加工シート複合層を椅子のフレームに固定する取り付け部材からなり、プレス加工クッション層がプレス加工シート複合層によって支持されるようにしている。
【0012】
プレス加工シート複合層の融着によって密接にネット状に広がった連結作用により、加重が分散されて薄い椅子シートにもかかわらず椅子シートに求められる高い強度を有し、全体で受け止める理想的な耐圧分布を発揮する。また、プレス加工シート複合層の一方の面とプレス加工クッション層の一方の面とが接着されているために、しっかりとクッション層を支えることとなる。したがって、クッション層に部分的に加重が加わっても、クッション層とプレス加工シート複合層の相互作用により、加重耐圧が分散されてユーザに分散された反発力を与え、しかもその基礎となるプレス加工シート複合層の基本の形状を崩すことがなく、これによって、椅子シート全体も極度の変形が避けられ、ユーザの使用感の向上も図られる。
【0013】
これは、使用する人の体形の違いや、座っている途中で位置をずらしたりした場合にも効果があり、加重位置の変化に対してもシート全体が極度に変形することがない範囲で、その人の体型、加重に合わせたシートの変化をもたらし、ごつごつした当たりをも感じさせることがない。
【0014】
つまり、受圧面である座面や背凭れ面の凹面がしっかり形成されて椅子として形状を損なわずに、腰やおしり、そしてふとものの裏から受ける荷重をプレス加工クッション層とその基材のプレス加工シート複合層とから得られるバランスの取れた撓みでしっかり受け止めることのできる座面若しくは背凭れ面が形成されることで、使用する人の体形に合わせてわずかな撓みを生じながら荷重が全体に広がり、使用者が硬質の感触を椅子から受けることもなく、接触面全体でしっかり包まれて支えられている感触を与えることができるようになった。
【0015】
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、ビニル系ポリマーまたは縮合系ポリマーとすることが可能である。例えば、ビニル系ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの群から選択され、前記縮合系ポリマーは、ポリエステル、ポリアミドの群から選択されうる。
【0016】
さらに本発明は、a)メッシュ状の熱可塑性樹脂からなる第1のシート層と第1のシート層のそれぞれの面に設けられた熱可塑性樹脂層からなる第2および第3のシート層とが熱融着されたシート複合層に椅子のフレームの形状に沿った背凭れ又は座部、若しくは背凭れから座部の形状に対応した形状に打ち抜き加工し、当該打ち抜き加工されたシート複合層に熱を加え軟化させた状態で前記椅子のフレームに沿った面を形成するようにプレス加工を行い変形させ、その後冷却固化するステップと、b)熱可塑性樹脂からなるクッション材に熱をかけて軟化させた状態で椅子の表面を形成するようにプレス加工を行い変形させ、その後冷却固化するステップと、c)プレス加工されたシート複合層とプレス加工されたクッション材とを接着するステップと、からなる、椅子シート製造方法である。
【0017】
特に、ステップa)で使用するプレス加工機と、ステップb)で使用するプレス加工機とは同じ加工機でも良く、シート複合層およびクッション材を成型するための異なる型枠アダプターがそれぞれのステップで使用される。
【0018】
上記椅子シート製造方法でプレス加工されたシート複合層を椅子のフレームに固定し、その固定した状態でシート複合層の一方の面にプレス加工されたクッション材の面を合わせて接着させて椅子シートを形成することもできる。
【0019】
さらに、プレス加工機の型は、圧縮成型するシートの縁に沿って一対の型が互いに勘合する面を有し、成型されたクッション材の縁が形成されるようにして、成型されたシート複合層との縁を合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図を参照して本発明による椅子の構造を説明する。
図1は本発明による椅子1の前方全体斜視図、
図2は後方全体斜視図である。
図3aは、椅子1のシートSと椅子フレーム4の取り付け構造を示す断面図であり、
図3bは、シートSを椅子1のフレームに取り付けるための取り付け具5の一例であるネジを使った取り付け方法を模式的に示した図である。
【0022】
椅子1は、椅子フレーム4と椅子フレーム4の取り付けられたシートSとから構成されている。
【0023】
この例では、椅子1の座部から背凭れに至ってシートSが折れ曲がるようにして座部と背凭れの複数の箇所で取り付け具5を介して椅子フレーム4に取り付けられている。
【0024】
図3a、3bを参照してより具体的に説明すると、シートSは、プレス加工シート複合層2とプレス加工クッション層3が重ねられて接着された構成となっている。プレス加工シート複合層2に形成された孔2dにネジの先端を通してフレーム4に設けられたねじ穴に取り付け具5の一例であるネジ5をネジ込み、ネジ5の頭部がプレス加工シート複合層2を押さえるようにしてプレス加工シート複合層2がフレーム4に固定されている。
【0025】
本発明の椅子1のシートSは、後の製造方法で詳述するように、シート複合層2の芯材として熱可塑性樹脂からなるメッシュ状の第1のシートとその両面に固着された第2、第3のシートからなり、椅子1のフレーム4の形状に対応してプレスによって3次元形状に成型されたプレス加工シート複合層2と、さらにプレス加工シート複合層2のうちのユーザが座る面側にある第3のシートの面と接着可能なようにプレスによって3次元形状に成型されたプレス加工クッション層3が接着された構造となっている。
【0026】
プレス加工シート複合層2およびプレス加工クッション層3は、通常使用する常温時ではより高い温度時と比較してより強い弾性を有する熱可塑性樹脂の材料から選択されている。したがって、略平坦な熱可塑性樹脂の材料を加熱し変形性の高い状態でプレス加工し、その後冷却をして固化させることで椅子1で示したシェル形状に合わせた型を有したプレス加工シート複合層2およびプレス加工クッション層3を作ることができる。
【0027】
尚、この例では、シートSは、背凭れから座部に至り一体的に成型されてものを示しているが、座部のみ、あるいは背凭れのみを個別に成型するようにしてもよい。また、ここでは図示していないが、薄いカバーをシートS全体又は部分的に取り付けて、目的とする色や表面の感触を有するシートを椅子1として提供できる。
【0028】
複合層2の加工前の芯材である第1のシートは、メッシュ状の熱可塑性樹脂であり、熱融着後の解けた樹脂の厚さが不均一に接合されている(尚、この溶融して不均一の厚さに広がった状態も、説明を容易にするために「メッシュ、またはメッシュ状」の言葉で便宜的に代用する)。さらに、成型加工された複合層2とクッション層3との相互作用により、シートSに加わる力が広く分散されながらしっかりと荷重を支えることができるようになり、薄いシート形状であっても強くより理想的な耐圧分布を発揮することになるため、クッション性を持たせながら利用者の形状に適合しやすい形状とすることも可能となる。
【0029】
つまり、熱可塑性樹脂の特性を利用し、熱可塑性の基材とその基材の形状に適合して形成されたクッション性の層とによって、成型後の椅子1のシートSの3次元的な形状を理想的な形状に確保しながらメッシュ状の作用により力の分散が確保されて、薄いシートSでも形状が極端に崩れることがなく、ユーザに適度な反発力を返すことで、椅子としての使い心地が向上する。
【0030】
さらに、シートSの基本的形状と変形性にも対応するクッション層とによって強い弾性を基本にもちながらも緩やかな汎発性と力の分散に応じた変形性の両立がシートS全体で確保できたことで、椅子にとって重要な、人それぞれに応じて異なる形状への適合性と基本的な形状の維持とを両立させる非常にバランスのとれたシェル構造を提供することが可能となったのである。
【0031】
したがって、椅子1のシートSは、より人体の体型に適合するように、腰からふとももの裏にかけて人体の形状に沿うような凹部が形成されるように深く絞り加工を施すことができる。
【0032】
この深い絞り加工は、後に説明するプレス加工の型に予め設けられおり、型で形成された深い絞り加工が可能であり、しかも成型後であってもその形状が確保できるために、理想のシート構造を容易に提供でき、これによって腰に負担がかかりにくくなり、長時間の使用でも疲れにくい形状を持った椅子1を提供することができたのである。
【0033】
椅子1の例では、メッシュとして使用した第1のシートの熱可塑性樹脂はポリエチレンを使用し、熱可塑性樹脂を挟み込む第2、第3のシート層、そしてクッション層は、ポリエステルを主成分とする綿状に交差した繊維を使用している。ポリエステルの綿状の繊維を主成分としたシートSとすることで、身体の温度を妨げることなく、身体から発生する熱や汗などの成分がシートSから通気する。しかも人体の重さに対抗できるシートSの厚さも薄くすることができるために、他のシートでは実現不可能な高い通気性をも確保することができた。
【0034】
さらに、薄いシート構造であっても耐荷重性と適度な変形性が維持できるため軽量化を実現することができた。軽量化は使用する道具として非常に重要な機能の一つであり、製造、運搬、利用のすべての面で取り扱いを容易とする。また廃棄においても、使用する材料をポリエステル等の熱可塑性材料を利用することで、リサイクルも可能となる。
【0035】
次に、椅子1、特にシートSの製造方法について説明する。
最初にプレス加工シート複合層2となる基礎シート2(プレス加工シート複合層に対応するものとして、同じ参照符号を使用して説明する)の製造方法について説明する。
【0036】
図4を参照すると、基礎シート2は、芯材シート2aと芯材シート2aをそれぞれ両側から挟む2つの表層シート2b、2cから構成されている。
【0037】
芯材シート2aは熱可塑性樹脂、この例では、ポリエチレンをメッシュ状に組み合わせて厚さ略4mmのシート状にしたものであり、表層シート2b、2cは、それぞれポリエステルの綿状の繊維を厚さ略4mmのシート状にしたものである。
【0038】
表層シート2b、2cと芯材シート2aとを重ね合わせた状態で熱圧着装置10のうちの熱圧着プレート11bの面上に載置する。熱圧着装置10は、互いに対抗する平らな面を有する熱圧着プレート11a、11bからなり、熱圧着プレート11a、11b間で圧接するようになっている。熱圧着プレート11a、11bは、熱圧着プレート11a、11bの表面から熱を放出するようにヒータ12がその中に埋設されている。
【0039】
熱圧着装置10は、一定の又はある範囲の温度の熱を基礎シート2に印加できるように、温度コントローラ15を有し、さらに、一定、またはある範囲の圧力で基礎シート2を押圧できるように、圧力を感知し制御する圧力コントローラ14を有していてもよく、あるいはどの程度までの厚さにするかを制御できるようしてもよい。
【0040】
また、目的とする圧力や圧縮した際の厚さと温度を一定時間またはある範囲の時間で印加できるように、圧力コントローラ14、温度コントローラ15、厚さコントローラ(図示せず)等の各種コントローラを制御する集中コントローラ16を設けるようにしてもよい。
【0041】
各種コントローラ14で管理されながら置かれた基礎シート2は、熱圧着プレート11a、11の両側から熱を印加されながら押圧される。基礎シート2の芯材シート2aは溶融温度以上の熱により溶融し、表層シート2b、2cに溶融した芯材シート2aの溶融した材料が浸透し、基礎シート2と表層シート2b、2c間が融着される。本例では、温度180℃、時間を1.5〜2分に設定して融着した。
【0042】
熱圧着装置10は、その融着が確保できる程度の温度と圧力を加えたのち、熱圧着プレート11aが退避されて、複数のシートが固着された融着シート2が提供される。
【0043】
基礎シートから得られるこの融着シート2の厚さは略4.0〜4.5mm程度であった。厚さは適宜選択しうるが、所定の範囲であることが好ましく、より好ましくは融着シート2の厚さは3.0mm〜5.5mm程度、より好ましくは、3.5〜5.0mm程度である。
【0044】
融着シートの厚さが薄すぎると、後で説明するプレス加工において型に一致するように嵌める作業の取り扱いが難しくなり、逆に厚すぎると変形性が悪くなるため型に一致するように嵌めることが難しくなり、しかも軽量化に反することにもなる。
【0045】
この融着シートの断面を観察すると、芯材のメッシュシートの部分は、融解して表層シート2b、2cに広がり、さらに平面方向にも広がって延びて芯材が厚いところと、薄いところまたは芯材が無い部分と、が周期的に存在することが観察された。芯材が薄く広がるか、芯材が無い部分も残って融着されるかは、その溶融の熱や圧力、時間に依存すると思われる。
【0046】
この一連の融着シート2の作成は、特許番号第4067283号を利用することができる。
【0047】
特許番号第4067283号は、芯材又は補強材機能を担う熱可塑性プラスチック製のメッシュの一面又は両面に、生地、フェルト、プラスチック発泡体、皮革、合成皮革又は不織布のいずれかで形成された任意面積のシート状物品を配して熱成形し、上記熱可塑性プラスチック製のメッシュの表面を軟化させ、上記シート状物品の目に絡みつかせて、上記熱可塑性プラスチック製のメッシュ及び上記シート状物品を融着一体化する工程を開示するものである。
【0048】
したがって、特許番号第4067283号に従った熱可塑性プラスチック製のメッシュ及びシート状物品を融着一体化する手法を採用することもできるし、あるいは、メッシュ状シートとシート状物品とを融着以外の他の方法、例えば、接着剤で接着するようにしてもよい。
【0049】
基礎シート2の両面の表層シート2b、2cは、同じ素材でもよく、適宜変更してよく、基礎シート2の複合シート間で固着できるならば基礎シート2の表層シート2b、2cも異なる素材を使用してもよい。
【0050】
融着シート2を、通常のプレス打ち抜き手段を使用して着座と背凭れ部分とが一体となったいわゆるシート1を平面に展開した形に打ち抜く。
図6は、打ち抜かれて形成された平面状の融着シート2を示している。打ち抜く際には同時に椅子のフレームに形成された取り付け穴に対応する位置に穴5を形成することが好ましい。
【0051】
この穴5は、予めフレームのネジ穴のネジが取り付けられた場合にも対応できるように、ネジ首が通る大きさの穴とネジ首は通らずネジ切りされた軸が通る大きさの穴とが連通した形状を有している。穴5は後でネジを挿してネジ止めできるように、単にネジ首が通ることのできる円形の穴としてもよく、それらの異なる形状の穴が混在するようにしてもよい。
【0052】
すでに述べたように、椅子1は、シェル上の形状のプレス加工シート複合層2と、プレス加工シート複合層2の一方の面で接合可能となるよう面の立体的形状が適合する面を有するプレス加工クッション層3、そして、パイプ4から基本的に構成されている。
【0053】
したがって、プレス加工シート複合層2とプレス加工クッション層3は順次に、または並行し、もしくは一緒にプレス加工することができ、その順番も任意に変更可能である。
【0054】
プレス加工シート複合層2およびプレス加工クッション層3の製造方法について説明する。
【0055】
図8は、そのプレス成型装置20の全体斜視図を示している。プレス成型装置20は、上下に設けられた対の型21、22からなり、型枠21a、22aと、上下の型21、22がぴったりと勘合する面21b、22bを有している。
【0056】
型枠21aの表面の形状は、出来上がりの椅子1のプレス加工シート複合層2の椅子の裏面、すなわち、ユーザが座る面とは反対の面の形状に合わせて作られている。一方、型枠22aの表面の形状は、出来上がりの椅子1のプレス加工クッション層3の椅子の表側、すなわち、ユーザが座る面の形状に合わせて作られている。シートSは、プレス加工シート複合層2とプレス加工クッション層3とから形成されているために、シートSの一部構成要素であるプレス加工シート複合層2の成型前の融着シート2にプレス加工を行う際に、型枠22aに設置されて融着シート2と型枠22aの間に介在する融着シート2用の型枠アダプター(図示せず)が使用される。さらに、プレス加工クッション層3にプレス加工を行う際には、型枠21aに設置されてプレス加工クッション層3の成型前のクッション材にプレス加工を行う際に、型枠21aに設置されてクッション材2と型枠21aの間に介在するクッション材3用の型枠アダプター(図示せず)が使用される。
【0057】
また、プレス成型装置20には、融着シート2の位置決めを行うための手段8a、8bが設けられている。
【0058】
上下の型21,22は、互いにぴったりと勘合する面21b、22bを有する。勘合する面21b、22bの内側の縁は型枠21、22aの境界であり、その境界がシートSの縁に相当する。
【0059】
まずプレス加工シート複合層2の成型方法について説明する。
打ち抜かれた融着シート2に熱を加えて変形性を高める。この加熱装置としては、すでに使用した熱圧着装置10を再利用することができる。ただし、先に説明した融着シート2の作成では、熱融着を目的とするものであるが、ここでは、後に行う型成形を行う際の型への取り付けを容易にするために、容易に変形可能な状態とするための加熱処理を目的とするためのものである。したがって、型成形の下準備として、融着シート2の融着温度以下の変形加工容易な温度に印加できる範囲のものであればよい。
【0060】
プレス成型装置20の型22aには、融着シート2用の型枠アダプターがセットされ、その後、その型枠アダプターの面に合わせて融着シート2をセットする。このとき、位置決め手段8a、8bと融着シート2に設けられた位置決め手段7a、7bとで、型枠アダプターの面上で正しい位置関係でセットされることが確実に行われるようになっている。
【0061】
具体的には、型20の位置決め手段8a、8bは、下の型22の両側に設けられたピン8a、8bであり、融着シート2に設けられた位置決め手段7a、7bは、そのピンが挿入できる穴7a、7bである。ただし、相互に位置決めできるものであれば、これに限定されるものではない。
【0062】
融着シート2を成型装置20にセットするには、変形加工容易な温度に高めたら、なるべくその温度が下がらないようにしながら、熱せられた融着シート2の穴7a、7bに夫々ピン8a、8bが入るように融着シート2を持っていき、挿入後、融着シート2を型枠22a上に置かれた型枠アダプター上に広げるようにすれば良い。
【0063】
厚さの略等しい切り抜きされた融着シート2は、その縁が型枠21、22aの縁、つまり勘合する面21b、22bの縁にあわせるようにセットされる。
【0064】
セットを終えると、上の型枠21aを下の型枠22aのほうに押し付け成型する。このとき、勘合面21b、22bがぴったり勘合するために、融着シート2の左右の中央から両側に延びた延出部分9のうちの型枠21、22aから外に延びた部分は、勘合面21b、22bによって実質的に切り取られ又は極めて薄くなり融着シートのプレス加工品から除去することができる。
【0065】
切抜きされ型枠に合わせてセットされて成型加工された融着シートを冷やすために、少なくとも一方の型に冷却空気又は環境に安全な冷却ガスが送り込まれて型枠の表面を冷却する。その冷却作用により冷やされた融着シート2は固化されてその型枠の形状を維持するようになる。固化された後、融着シート2は型から取り出される。ここで、融着シートのプレス加工は主に椅子形状に合わせた成形であり、プレス加工シート複合層2の厚さは融着シートの厚さと実質的に変化はなく、あってもわずかである。
【0066】
一方、プレス加工クッション層3は、この例では、基礎シート2の表層シート2b、2cと同じ材料であるポリエステルの繊維を綿状に立体的に絡み合わせて板状にしたクッションシート3を使用している。シートとしての適度なクッション性とを与えるために密度はおよそ34kg/m
3、硬さおよそ30kgfのものを使用しているが、その使用目的に応じて適宜変更してもよい。加熱による変形がしやすく、冷却して型形成が可能であり、通常の使用温度でクッション性を有し、吸湿性もあり反発弾性も強くへたり難い材料であれば、ポリエステルに限定されることはなく、密度や硬さもその繊維の性質に応じて適宜変更されうる。
【0067】
クッションシート3の厚さは略4mmであり、その大きさはシートSを平面に展開したよりも縦横ともに大きなサイズのものを使用する。融着シートと同様、クッションシート3をシートSのプレス加工クッション層の形状とするため、プレス加工前に変形性を容易にするための加熱を行う。加熱は融着シート2と同様に熱圧着装置10を再利用することができる。ただし、これも、後に行う型成形を行う際の型への取り付けを容易にするために、容易に変形可能な状態とするための加熱処理を目的とするためのものである。したがって、型成形の下準備として、そのクッションシート3の素材に応じた変形圧縮加工容易な温度に印加できる範囲のものであればよい。
【0068】
図1から明らかなように、椅子1は、座部から背凭れ部に至る過程で折れ曲がった形状をしている。従って、
図8に示したように、型形成ではその折れ曲がった形状に応じた型が用意されている。しかしながら、たとえ加熱して変形性を高めても、略平らなシート素材を折り投げる過程では通常その折れる部分から折れ皺が発生し品質の低下をきたす。特に、クッションシート3のユーザ側に面する部分は内側に折れているために、折れ目の線から両側に皺が伸びて品質の低下をきたしやすい。
【0069】
そこで、その皺の発生を未然に防止するため、折れ目にあたる部分から自然に折れが発生するように折れ癖をつけるための治具を加熱において設けるようにしてもよい。
【0070】
図7は、クッションシート3にプレス成型する前の折れ癖をつけるためのパイプ16を使用した例を示す。パイプ16は熱圧着プレート11bからの熱をクッションシート3に伝えることができるように、熱伝導性の高い、例えば金属を使用することが好ましい。また、パイプの形状のほか、折れ癖をつけることのできるものであれば、どのような形状の折れ癖部品を使用してもよい。
図7では、熱圧着プレート11bに置いた平坦なクッションシート3の間にパイプ16を挟みこんでいるが、これでもクッションシート3の自重により緩やかに折れ癖が起こることが確認された。
【0071】
プレス加工に話を戻すと、
図8のプレス成型装置20の型21aには、クッションシート3用の型枠アダプターがセットされている。
【0072】
クッションシート3は比較的大きいサイズを有し、その折癖がつけられた部分を”く”の字をした22aの頂上に合わせておき、その状態で型21を降ろして、勘合する面21b、22bが合わさるようにして押圧すると、その折癖から折られて型22aと型枠アダプターによる成型が行われる。このとき、余分なクッションシート3の外側の部分、つまり、シートSの縁から外側に相当する部分は、勘合する面21b、22bによって実質的に切り取られて、または極めて薄くなりクッションシート3から除去することができ、シートSの形状に沿ったプレス加工クッション層が成型される。
【0073】
成型加工されたクッションシート3を冷やすために、少なくとも一方の型に冷却空気又は環境に安全な冷却ガスが送り込まれて型枠の表面を冷却する。その冷却作用により冷やされたクッションシート3は固化しその型枠の形状を維持するようになる。固化された後、プレス加工クッション層3として型から取り出される。
【0074】
図9は、プレス成型装置20の型22によって作られる特徴的な形状を理解するために型枠22を前面から見た図である。多少特徴を強調しているために実際の寸法比率とは一致しない。型枠22aの見える稜線がシェルSの背凭れから座部の間の折れ曲がる部分を示している。
【0075】
稜線は椅子の中央で一番高く、そこから両側にむかってなだらかに低くなっている。実際の椅子の表面は、型枠22aの面の形状に一致しており、プレス成型装置20によって成型されたクッション層3は、シートSが人体の体型により適合するように、シートSのユーザが座る面が、腰からふともの裏側にかけて人体の形状に沿うような凹部が形成されるように深く絞り加工がされている。このようにプレス加工クッション層は立体的に凹部を形成していることから、プレス加工クッション層の厚さは位置によって異なる。尚、本例では、同一の型21,22を利用しているが、プレス加工シート複合層、プレス加工クッション層を別々の型で形成するようにしても良い。