(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677488
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】ブラシレス直流電気モータ及び電動パワーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 1/10 20060101AFI20200330BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20200330BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20200330BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20200330BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
H02K1/10
H02K1/18 C
H02K3/28 J
H02K3/18 P
B62D5/04
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-230242(P2015-230242)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-111921(P2016-111921A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】201410705241.6
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ルイ フェン チン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン ユ
(72)【発明者】
【氏名】ニン スン
(72)【発明者】
【氏名】カイ ウー
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−104112(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/084901(WO,A1)
【文献】
特表2005−518176(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/054439(WO,A1)
【文献】
特開2007−331639(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/136258(WO,A1)
【文献】
特開2004−215483(JP,A)
【文献】
特開2014−138530(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/050172(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0214630(US,A1)
【文献】
特開2013−162726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/10
B62D 5/04
H02K 1/18
H02K 3/18
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブモータと、
第2のサブモータと、を備えるブラシレス直流電気モータであって、
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、共通のロータを共有し、各サブモータは、前記電気モータの結合ステータを共に形成する独立ステータを備え、前記第1のサブモータの前記ステータは、複数の歯と、複数の巻線とを備え、前記第2のサブモータの前記ステータは、複数の歯と、複数の巻線とを備え、前記第1のサブモータの前記各歯及び前記第2のサブモータの前記各歯は、円周方向に不均等に配置され、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、同時に作動して、前記第1のサブモータと前記第2のサブモータの出力パワーの合計を出力するように構成され、前記2つのサブモータの一方が破損すると、他方のサブモータは独立して作動可能であることを特徴とするブラシレス直流電気モータ。
【請求項2】
前記ブラシレス直流電気モータは、二相電気モータであり、下式を満たす:
【数1】
ここで、Npはロータ極数を表し、Nsは前記結合ステータのスロット数を表し、Np及びNsは偶数であることを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項3】
前記ブラシレス直流電気モータは、三相電気モータであり、下式を満たす:
【数2】
ここで、Npはロータ極数を表し、偶数であり、Nsは前記結合ステータのスロット数を表し、
であることを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項4】
前記第1のサブモータの前記各歯は、互いに隣接して配置され、環部の半分を実質的に形成し、前記第2のサブモータの前記各歯は、互いに隣接して配置され、前記環部の他の半分を実質的に形成することを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項5】
前記結合ステータは、12個のスロットを有し、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つの歯を備え、前記6つの歯は、2つのU相歯と、2つのV相歯と、2つのW相歯とに分割され、同じ位相の前記2つの歯は、90度間隔で互いに離間していることを特徴とする、請求項4に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項6】
前記結合ステータは、12個のスロットを有し、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つの歯を備え、前記6つの歯は、2つのU相歯と、2つのV相歯と、2つのW相歯とに分割され、前記2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間し、前記2つのV相歯は、180度間隔で互いに離間し、前記2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間していることを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項7】
前記結合ステータは、12個のスロットを有し、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つの歯を備え、前記6つの歯は、2つのU相歯と、2つのV相歯と、2つのW相歯とに分割され、前記2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間し、前記2つのV相歯は、90度間隔で互いに離間し、前記2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間していることを特徴とする、請求項1に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項8】
前記第2のサブモータのトルクのn次高調波形は、前記第1のサブモータのトルクのn次高調波形に対して、(2k+1)/2周期分ずれており、ここで、
であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項9】
前記第2のサブモータの標準位置は、前記第2のサブモータによって生じるトルクリプルが、前記第1のサブモータによって生じるトルクリプルと同じときの、前記第1のサブモータに対する前記第2のサブモータの位置として規定され、前記第2のサブモータは、円周方向に前記標準位置に対して機械角度Δθだけ回転されて、前記電気モータの前記トルクリプルを低減することを特徴とする、請求項8に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項10】
とし、nを、改善したい前記高調波の次数を表し、mを、前記電気モータの位相数を表すときに、
【数3】
であることを特徴とする請求項9に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項11】
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、単一の制御装置によって制御されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項12】
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、それぞれ、2つの制御装置によって制御され、前記2つのサブモータの電流は位相差を有し、前記第2のサブモータのトルクのn次高調波形は、前記第1のサブモータのトルクのn次高調波形に対して、(2k+1)/2周期分ずれるようになっており、ここで、
であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のブラシレス直流電気モータ。
【請求項13】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールに固定されるステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムに固定されるステアリングギヤと、
前記ステアリングギヤに駆動連結される電気モータと、を備える電動パワーステアリングシステムであって、
前記電気モータは、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のブラシレス直流電気モータであることを特徴とする電動パワーステアリングシステム。
【請求項14】
ステアリングホイールと、
車両を操舵するように構成される操舵機構と、
前記操舵機構に駆動連結される電気モータと、
前記電気モータを制御するための少なくとも1つの制御装置と、を備える車両用電動パワーステアリングシステムであって、
前記ステアリングホイールは、前記少なくとも1つの制御装置に入力を供給し、前記電気モータは、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のブラシレス直流電気モータであることを特徴とする車両用電動パワーステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関し、特に、ブラシレス直流電気モータ、及びこのブラシレス直流電気モータを用いる電動パワーステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス直流電気モータ(BLDCモータ)は、巻線を備えるステータと、永久磁石を備えるロータと、ステータに電力を供給するように構成される制御装置とを含む。公知のBLDCモータのステータは、ステータコアと、ステータコアの周りに巻き付けられる巻線とを含む。巻線は、M相巻線を含み、各相巻線は、複数の平行な分岐を含む。1つの相巻線の1つの分岐が切断されると、その相巻線と他の相巻線との間に不平衡が生じ、電気モータの高トルクリプルを引き起こし、その結果、高振動になる。特に、車両を操舵するための電動パワーステアリングシステムのブラシレス直流電気モータが破損したとき、運転者がステアリングホイールを回転させた場合、巻線が短絡して、短絡電流を発生することによって、遅延トルクを発生して、ステアリングホイールの回転を妨げる場合がある。したがって、公知のBLDCモータには、潜在的に安全を脅かす危険がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改良されたブラシレス直流電気モータ、特に、電動パワーステアリングシステムに適したものが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、第1のサブモータと、第2のサブモータとを含むBLDCモータを提供するものである。前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、共通のロータを共有し、各サブモータは、結合ステータを共に形成する独立ステータを含む。前記第1のサブモータの前記ステータは、複数の歯と、複数の巻線とを含み、前記第2のサブモータの前記ステータは、複数の歯と、複数の巻線とを含む。前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、協働して、単一のモータとして作動するか、又は、独立して作動することができる。前記第1のサブモータの前記各歯及び前記第2のサブモータの前記各歯は、円周方向に交互に噛み合って配置されるか、又は、軸方向に並列に配置される。
【0005】
前記BLDCモータは、Np個のロータ極と、前記ステータのNs個のスロットとを有する二相電気モータであり、ここで、Np及びNsは偶数であり、下式を満たすことが好ましい。
【数1】
【0006】
代替例として、前記BLDCモータは、Np個のロータ極と、前記ステータのNs個のスロットとを有する三相電気モータであり、下式を満たす:
【数2】
ここで、Npは偶数であり、
である。
【0007】
前記第1のサブモータの前記各歯及び前記第2のサブモータの前記各歯は、前記円周方向に沿って交互に噛み合って且つ均等に配置されることが好ましい。例えば、前記モータの前記結合ステータのスロット数は、12個であり、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つの歯を備える。前記6つの歯は、2つのU相歯と、2つのV相歯と、2つのW相歯とに分割され、同じ位相を有する前記2つの歯は、対称に配置され、180度間隔で互いに離間している。代替例として、同じ位相を有する各2つの歯は、90度間隔で互いに離間している。
【0008】
前記第1のサブモータの前記各歯及び前記第2のサブモータの前記各歯は、円周方向に沿って交互に噛み合って且つ不均等に配置されることが好ましい。例えば、前記結合ステータのスロット数は、12個であり、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つの歯を備え、前記6つの歯は、2つのU相歯と、2つのV相歯と、2つのW相歯とに分割される。前記2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間し、前記2つのV相歯は、180度間隔で互いに離間し、前記2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間している。代替例として、前記2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間し、前記2つのV相歯は、90度間隔で互いに離間し、前記2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間している。
【0009】
代替例として、前記第1のサブモータの前記各歯は、互いに隣接して配置され、環部の半分を実質的に形成し、前記第2のサブモータの前記各歯は、互いに隣接して配置され、前記環部の他の半分を実質的に形成する。前記ブラシレス直流電気モータの前記ステータのスロット数は、12個であり、前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各々は、6つの歯を備え、前記6つの歯は、2つのU相歯と、2つのV相歯と、2つのW相歯とに分割され、同じ位相の各2つの歯は、90度間隔で互いに離間している。
【0010】
代替例として、前記第1のサブモータの前記各歯は、互いに離間する2組の歯に分割され、各組の前記各歯は、円周方向に互いに隣接して配置され、前記第2のサブモータの前記各歯は、互いに離間する2組の歯に分割され、各組の前記各歯は、円周方向に互いに隣接して配置される。前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータの各組の歯は、U相歯と、V相歯と、W相歯とを有することが好ましい。
【0011】
前記第2のサブモータのトルクのn次高調波形は、前記第1のサブモータのトルクのn次高調波形に対して、(2k+1)/2周期分ずれており、ここで、
であることが好ましい。
【0012】
前記第2のサブモータの標準位置は、前記第2のサブモータによって生じるトルクリプルが、前記第1のサブモータによって生じるトルクリプルと同じ場合の、前記第1のサブモータに対する前記第2のサブモータの位置として規定され、前記第2のサブモータは、円周方向に前記標準位置に対して機械角度Δθだけ回転されて、前記電気モータの前記トルクリプルを低減することが好ましい。
【0013】
前記角度は下式を満たし、
【数3】
ここで、nは、改善したい前記高調波の次数を表し、mは、前記電気モータの位相数を表すことが好ましい。
【0014】
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、単一の制御装置によって制御されることが好ましい。
【0015】
前記第1のサブモータ及び前記第2のサブモータは、それぞれ、2つの制御装置によって制御される。前記2つのサブモータの電流は位相差を有し、前記第2のサブモータのトルクのn次高調波形は、前記第1のサブモータのトルクのn次高調波形に対して、(2k+1)/2周期分ずれるようになっており、ここで、
であることが好ましい。
【0016】
本発明は、更に、上記ブラシレス直流電気モータを利用する電動パワーステアリングシステムを提供するものである。
【0017】
前記第1のサブモータ及び第2のサブモータは、それらが、協働して、単一のモータとして作動して、定格電力を出力するように構成される。前記各サブモータの一方が故障した場合、他方のサブモータが独立して作動することにより、ブラシレス直流電気モータの信頼性及び安全性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のブラシレス直流電気モータ斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態のBLDCモータのステータの概略図である。
【
図3a】
図2のBLDCモータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの巻線回路間の接続を示す配線概略図である。
【
図3b】
図2のBLDCモータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの巻線回路間の接続を示す配線概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態のBLDCモータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各ステータの概略図である。
【
図5】本発明の別の実施形態のBLDCモータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各ステータの概略図である。
【
図6】本発明の更に別の実施形態のブラシレス直流電気モータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各ステータの概略図である。
【
図7】本発明の更に別の実施形態のBLDCモータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各ステータの概略図である。
【
図8】本発明の更に別の実施形態のBLDCモータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各ステータの概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態のBLDCモータのステータの概略図である。
【
図10】制御装置によって制御される、本発明の一実施形態のブラシレス直流電気モータのブロック図である。
【
図11】2つの制御装置によって制御される、本発明の一実施形態のブラシレス直流電気モータのブロック図である。
【
図12a】
図2のブラシレス直流電気モータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各トルクの一次高調波形を示す図である。
【
図12b】
図2のブラシレス直流電気モータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各トルクの一次高調波形を示す図である。
【
図13a】別の実施形態のブラシレス直流電気モータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各トルクの一次高調波形を示す図である。
【
図13b】別の実施形態のブラシレス直流電気モータの第1のサブモータ及び第2のサブモータの各トルクの一次高調波形を示す図である。
【
図14】本発明の別の実施形態のブラシレス直流電気モータのステータの概略図である。
【
図15】本発明の別の実施形態のブラシレス直流電気モータのステータの概略図である。
【
図16】本発明の電気モータを用いる電動パワーステアリングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、添付図面の図を参照して、単なる例示として本発明の好ましい実施形態を説明する。図において、複数の図に現れる同一の構造体、要素又は部品は、一般に、それらが現れる全ての図において同じ符号で表記される。図内に示される構成部品及び構造部の寸法は、一般に、便宜のため及び提示の明確さのために選択されたものであり、必ずしも縮尺通りではない。
【0020】
本発明によるBLDCモータは、2つのサブモータを含む。2つのサブモータは、共通のロータを共有し、各サブモータは、独立ステータと、独立入力端子とを含む。電気モータの通常動作時、2つのサブモータは、単一の電気モータとして一緒に作動する。2つのサブモータの一方が破損した場合、他方のサブモータは独立して作動して、電気モータの信頼性及び安全性を確保することができる。本発明による電気モータは、特に、車両を操舵するための電動パワーステアリングシステムに適しているが、この特定用途に限定されるものではない。
【0021】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態による電気モータ10は、ハウジング12と、ハウジング12に受け入れられる第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30とを含む。第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、1つのロータ40を共有する。第1のサブモータ20は、いくつかの歯と、いくつかの歯の周りにそれぞれ巻き付けられる複数の巻線とを含む。第2のサブモータ30は、いくつかの歯と、いくつかの歯の周りにそれぞれ巻き付けられる複数の巻線とを含む。第1のサブモータ20の各歯及び第2のサブモータ30の各歯は、電気モータ10の円周方向に交互に配置され、まとめて、電気モータ10のステータを構成する。
【0022】
本実施形態では、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、両方とも、三相電気モータである。第1のサブモータ20の各歯及び各巻線は、それぞれ、U相、V相、及びW相に対応する歯及び巻線に分割される。具体的には、第1のサブモータ20は、U相歯Tu1及びTu2、V相歯Tv1及びTv2、W相歯Tw1及びTw2、及びこれらに対応するU相巻線Cu1及びCu2、V相巻線Cv1及びCv2、W相巻線Cw1及びCw2を含む。同様に、第2のサブモータ30の各歯及び各巻線は、U相、V相、及びW相に対応する歯及び巻線に分割される。具体的には、第2のサブモータ30は、U相歯T’u1及びT’u2、V相歯T’v1及びT’v2、W相歯T’w1及びT’w2、及びこれらに対応するU相巻線C’u1及びC’u2、V相巻線C’v1及びC’v2、W相巻線C’w1及びC’w2を含む。
【0023】
第1のサブモータ20の同じ位相の各歯は、対称に配置され、180度間隔で互いに離間している。第2のサブモータ30の同じ位相の各歯も、対称に配置され、180度間隔で互いに離間している。第1のサブモータ20の各歯及び第2のサブモータ30の各歯は、交互に配置される。すなわち、第1のサブモータ20の各歯は、第2のサブモータ30の2つの歯の間に配置され、第2のサブモータ30の各歯は、第1のサブモータ20の2つの歯の間に配置される。
【0024】
図3を参照すると、第1のサブモータには、3つの入力端子、すなわち、U1,V1,及びW1が設けられる。第2のサブモータにも、3つの入力端子、すなわち、U2,V2,及びW2が設けられる。第1のサブモータの入力端子及び第2のサブモータの入力端子は、互いに独立している。したがって、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、共に、単一の電気モータ10として作動するか、又は、独立して作動することができる。電気モータ10の通常動作時、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、同時に作動する。一方のサブモータが破損した場合、例えば、1つの巻線に短絡又は開路が生じ、制御装置は、破損したサブモータへの電力を遮断して、破損したサブモータを停止する。この時、他方のサブモータは、作動し続け、負荷を駆動する。また、破損したサブモータの電力が遮断され、破損したサブモータは作動を停止するので、破損した電気モータの作動による非常に大きなトルクリプル及び遅延トルクを回避することができる。
【0025】
上記実施形態では、第1のサブモータ20の同じ位相の各歯は、180度の角間隔で分配される。第2のサブモータ30の同じ位相の各歯も、180度の角間隔で分配される。
図4に示す代替実施形態では、第1のサブモータの同じ位相の各歯は、90度の角間隔で配置される。第2のサブモータの同じ位相の各歯も、90度の角間隔で配置される。
【0026】
図5に示す代替実施形態では、第1のサブモータの2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間している。第1のサブモータの2つのV相歯は、180度間隔で互いに離間している。第1のサブモータの2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの2つのV相歯は、180度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間している。
【0027】
図6に示す代替実施形態では、第1のサブモータの2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間している。第1のサブモータの2つのV相歯は、90度間隔で互いに離間している。第1のサブモータの2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの2つのU相歯は、180度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの2つのV相歯は、90度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの2つのW相歯は、90度間隔で互いに離間している。
【0028】
図7に示す別の代替実施形態では、第1のサブモータの6つの歯は、円周方向に互いに隣接して配置され、環部の半分を実質的に形成する。第1のサブモータの同じ位相の各2つの歯は、90度間隔で互いに離間している。第2のサブモータの6つの歯は、円周方向に互いに隣接して配置され、環部の他の半分を実質的に形成する。第2のサブモータの同じ位相の各2つの歯も、90度間隔で互いに離間している。
【0029】
図8は、本発明の代替実施形態を示す。この実施形態では、第1のサブモータは、2組の歯を含み、各組の歯は、円周方向に互いに隣接して配置されるU相歯と、V相歯と、W相歯とを含む。2組の歯は、互いに離間している。第1のサブモータの同じ位相の2つの歯は、180度間隔で互いに離間している。第2のサブモータは、2組の歯を含み、各組の歯は、円周方向に互いに隣接して配置されるU相歯と、V相歯と、W相歯とを含む。第2のサブモータの2組の歯は、互いに離間している。第2のサブモータの同じ位相の2つの歯も、180度間隔で互いに離間している。
【0030】
上記実施形態では、第1のサブモータの各歯及び第2のサブモータの各歯は、円周方向に配置される。
図9の実施形態による電気モータでは、第1のサブモータ及び第2のサブモータは、軸方向に並列に配置される。第1のサブモータは、12個の歯Tu1〜Tu4,Tv1〜Tv4,Tw1〜Tw4、及びこれらの歯の周りにそれぞれ巻き付けられる12個の巻線を含む。第2のサブモータは、12個の歯Tu1〜Tu4,Tv1〜Tv4,Tw1〜Tw4、及びこれらの歯の周りにそれぞれ巻き付けられる12個の巻線を含む。第1のサブモータ及び第2のサブモータは、軸方向に並列に同軸に配置される。
【0031】
図10及び
図11を参照すると、本発明による電気モータの第1のサブモータ及び第2のサブモータは、(
図10に示すような)単一の制御装置50によって制御することができる。この場合、制御装置50の各出力端子は、2つのスイッチを介して、第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30の対応する入力端子に電気的に接続される。代替の解決手段として、電気モータ10の第1のサブモータ20及び第2のサブモータ30は、それぞれ、(
図9に示すような)2つの制御装置51,52によって制御することもできる。この場合、2つの制御装置51,52の各々の出力端子は、それぞれ、1つのサブモータの対応する入力端子に接続される。
【0032】
三相電気モータを参照して、上記各実施形態を例示しているが、下式を満たす限り、他の種類のブラシレス直流電気モータも、本発明を実施することができる。
【0033】
二相電気モータの場合、下式を満たさなければならない:
【数4】
ここで、Npはロータ極数を表し、Nsはステータのスロット数を表し、Np及びNsは偶数である。
【0034】
三相電気モータの場合、下式を満たさなければならない:
【数5】
ここで、Npはロータ極数を表し、偶数であり、Nsはステータのスロット数を表し、
である。
【0035】
図1〜
図7の各実施形態では、同じ位相を有する第1のサブモータの巻線と第2のサブモータの巻線との間の機械角度差は、90度の倍数である。したがって、電気角度差は、機械角度差に極対数を乗算したもの、すなわち、360度の倍数に等しい。したがって、第1のサブモータ及び第2のサブモータの逆EMF(起電力)波形は同じである。1つの制御装置が、1つの電気モータとして同時に作動する2つのサブモータを制御する場合、制御装置によって2つのサブモータに供給される電流は同じである。このため、2つのサブモータのトルク波形は同じである。
図12a及び
図12bは、それぞれ、第1のサブモータ及び第2のサブモータの各トルクの一次高調波形(基本波形)を示す。
図12cは、第1のサブモータ及び第2のサブモータの合成トルクの一次高調波形、すなわち、電気モータ10のトルクの一次高調波形を示す。
図12cから、電気モータ10のトルクリプルが比較的高いことが分かる。
【0036】
電気モータ10のトルクの或る次数の高調波の波形を改善し、作動している電気モータ10のトルクリプルを低減し、作動している電気モータ10の安定性を向上させるため、本発明は、第2のサブモータのトルクの当該次数の高調波を、第1のサブモータのトルクの当該次数の高調波に対して、(2k+1)/2周期分ずらして(ここで、
である)、2つのサブモータが、協働して、1つの電気モータとして作動するとき、2つのサブモータのトルクの同じ次数の高調波が重なり、平坦線を形成し、トルクリプルを最小限にすることによって、電気モータ10をより安定して作動させることを提案するものである。
図13a及び
図13bは、それぞれ、第1のサブモータ及び第2のサブモータのトルクの一次高調波形(すなわち、基本波)を示す。
図13cは、改良された第1のサブモータ及び第2のサブモータの合成トルクの一次高調波形、すなわち、改良された電気モータ10のトルクの一次高調波形を示す。
図13cから、改良された電気モータ10のトルクの一次高調波は平坦であり、トルクリプルが最小限に抑えられていることが分かる。
【0037】
具体的には、
図14に示す実施形態は、
図2に示す電気モータを改良したものである。
図2の第1のサブモータに対する第2のサブモータの位置、すなわち、第2のサブモータによって生じるトルクリプルが第1のサブモータによって生じるトルクリプルと同じである位置を、標準位置として規定する場合、この実施形態の第2のサブモータの位置は、標準位置に対して機械角度Δθだけ回転されて、これにより、第2のサブモータによって生じるトルクのn次高調波は、第1のサブモータによって生じるトルクの同次数の高調波に対して、(2k+1)/2周期分ずれる。具体的には、下式を満たし、
【数6】
ここで、
であり、nは改善したい高調波の次数を表し、mは電気モータ10の位相数を表し、Npはロータ極数を表す。具体的には、3相且つ8極の電気モータ10の場合、電気モータ10のトルクの一次高調波形を改善したい場合、下式を満たさなければならない。
【数7】
【0038】
図15に示す実施形態は、
図9に示す電気モータを改良したものである。
図9の第1のサブモータに対する第2のサブモータの位置、すなわち、第2のサブモータによって生じるトルクリプルが第1のサブモータによって生じるトルクリプルと同じである位置を、標準位置として規定する場合、この実施形態の第2のサブモータの位置は、円周方向に標準位置に対して機械角度Δθだけ回転される。第2のサブモータの標準位置は、軸方向に第1のサブモータと位置合わせされるので、この実施形態は、第2のサブモータの位置が、円周方向に第1のサブモータに対して角度Δθだけ回転されると考えられる。その結果、第2のサブモータによって生じるトルクのn次高調波は、第1のサブモータのトルクの同次数の高調波に対して、(2k+1)/2周期分ずれる。具体的には、下式を満たし、
【数8】
ここで、
であり、nは改善したい高調波の次数を表し、mは電気モータ10の位相数を表し、Npはロータ極数を表す。
【0039】
実際には、
図14及び
図15による実施形態では、第2のサブモータの逆EMF波形は、第2のサブモータの位置を変更することによって、変更され、これによって、第1のサブモータ及び第2のサブモータの合成トルク波形を調整する。第1のサブモータ及び第2のサブモータが、それぞれ、2つの制御装置によって制御される場合、これらのサブモータは、2つのサブモータの逆EMFの同じ位相を確保しながら、2つのサブモータの電流の(2k+1)/2周期の位相差を得るように制御され、これによって、2つのサブモータの合成トルクの或る次数の高調波を改善し、したがって、電気モータをより安定して作動させることができる。
【0040】
図16は、本発明の電気モータ10を用いる電動パワーステアリングシステム60の概略図である。電動パワーステアリングシステム60は、ステアリングホイール61と、ステアリングホイール61に固定されるステアリングコラム62と、ステアリングコラム62に同軸に固定されるステアリングギヤ63とを含む。電気モータ10の回転軸は、駆動歯車16に駆動連結されて、電気モータ10のトルクを出力する。駆動歯車16は、ステアリングラック64を介して、ステアリングギヤ63に駆動連結される。したがって、電気モータ10が作動すると、駆動歯車16が回転して、運転者がステアリングラック64を移動させて、車両を操舵するのを助ける。運転者によるステアリングホイールの動きは、制御装置50に入力されて、電気モータ10の動作を制御する。電動パワーステアリングシステム60は、更に、ステアリングトルク変換器65と、ステアリングホイール61のトルク量及びトルクの方向を示す信号を検知し、その信号を制御装置50に転送するように構成されるステアリングホイール角度センサ66とを含む。制御装置50は、信号に応じて、電気モータ10に対応する命令を送信し、これにより、電気モータ10は、対応する量及び方向のステアリングトルクを出力することによって、補助電力を発生することができる。実際に実施する場合は、電気モータ10と駆動歯車16との間に、減速機構を設けて、出力トルクを増加させることができる。
【0041】
一実施形態では、ステアリングシステムは、補助トルクを供給して、運転者がステアリングホイール及びステアリングコラムを介してステアリングラックを移動させるのに必要な力を低減することによって、運転者が車両を操舵するのを助けるように構成される。代替実施形態では、運転者は、ステアリングホイールを用いて、操舵方向を制御装置に入力して、電気モータを作動させ、運転者の入力に応じてステアリングラックを駆動する。
【0042】
本出願の説明及び請求項において、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、「含む(contain)」及び「有する(have)」、並びにその変形形態は、説明する要素の存在を規定するために包括的な意味で使用され、追加の要素の存在を排除するものではない。
【0043】
明確にするために別個の実施形態に関連して説明されている本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供してもよいものと理解される。逆に、簡潔にするために1つの実施形態に関連して説明されている本発明の種々の特徴を、個別に又はそれらを適当に組み合わせて提供してもよい。
【0044】
上記の実施形態は単なる例示であり、請求項に定義する本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0045】
10 電気モータ
12 ハウジング
16 駆動歯車
20 第1のサブモータ
30 第2のサブモータ
40 ロータ
50,51,52 制御装置
60 電動パワーステアリングシステム
61 ステアリングホイール
62 ステアリングコラム
63 ステアリングギヤ
64 ステアリングラック
65 ステアリングトルク変換器
66 ステアリングホイール角度センサ
Tu1〜Tu4,Tv1〜Tv4,Tw1〜Tw4,T’u1,T’u2,T’v1,T’v2,T’w1,T’w2 歯
Cu1,Cu2,Cv1,Cv2,Cw1,Cw2,C’u1,C’u2,C’v1,C’v2,C’w1,C’w2 巻線