【文献】
木島誠,“W−CDMA無線アクセス技術”,電気学会誌,2000年 2月 1日,Volume 120, Number 2,Pages 77-79
【文献】
SHEPARD, C. 外2名,“Control Channel Design for Many-Antenna MU-MIMO”,MOBICOM '15: PROCEEDINGS OF THE 21ST ANNUAL INTERNATIONAL CONFERENCE ON MOBILE COMPUTING AND NETWORKING [online],2015年 9月,Pages 578-591,URL,DOI:10.1145/2789168.2790120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る測位システムにおいては、移動局及び固定局の数に応じた周波数帯を確保する必要があり、周波数帯が逼迫するという問題がある。複数の移動局の位置を演算する場合、移動局の数に応じて無線通信の周波数帯を確保する必要があり、周波数逼迫の問題はより深刻になる。
【0007】
特許文献2に係る測位システムにおいては、周波数逼迫の問題は解消されるが、一の固定局に近い位置にある移動局と、当該固定局から遠い位置にある移動局とから同時的に電波が送信された場合、スペクトラム拡散変調された電波であっても、固定局は遠方の移動局から送信された電波の逆拡散復調に失敗するおそれがある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、周波数逼迫の問題を解消すると共に、高品質な無線通信を実現することができる移動局、及び当該移動局を備える測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る移動局は、複数の固定局から送信された第1周波数帯の電波を受信し、各固定局から送信された電波の送信時及び受信時の時間差に基づいて演算される自身の位置又は該時間差に係る情報を前記固定局へ送信する移動局であって、前記位置又は前記時間差に係る情報を含み、自身に固有の符号に基づいて変調された第2周波数帯の電波を送信する送信部と、該送信部から送信される電波の強度を、前記時間差に応じて変更する変更部とを備える。
【0010】
本発明にあっては、移動局は、固定局から送信された第1周波数帯の電波を受信し、固定局から送信された電波の送信時及び受信時の時間差に基づいて演算される自身の位置又は該時間差に係る情報を含み、自身に固有の符号に基づいて変調された第2周波数帯の電波を固定局へ送信する。また、移動局は、固定局へ送信する電波の強度を、前記時間差に応じて変更させる。つまり、移動局は、固定局の距離に応じて電波の強度を変更させる。例えば、移動局は、前記時間差が長い程、送信する電波の強度を増大させる。
移動局は自身に固有の符号を用いて変調された第2周波数帯の電波を固定局へ送信する構成であるため、同一の第2周数帯で電波を送信する複数の移動局が存在していても、固定局は、各移動局から送信された電波を受信し、受信した電波に含まれる情報を取得することができる。また、移動局は、送信する電波の強度を、固定局との距離に応じて変更させる構成であるため、固定局は複数の移動局との距離の長短に拘わらず、各移動局から送信された電波を受信し、受信した電波に含まれる情報を取得することができる。
なお、移動局の位置演算は、移動局自身が実行しても良いし、固定局側で実行しても良いし、双方で実行しても良い。
【0011】
本発明に係る移動局は、前記変更部は、前記複数の固定局からそれぞれ送信された電波の送信時及び受信時の時間差の内、最短の時間差に応じて、前記送信部から送信される電波の強度を変更する。
【0012】
本発明にあっては、移動局は、複数の固定局からそれぞれ送信された電波の送信時及び受信時の時間差の内、最短の時間差に応じて、送信する電波の強度を変更させる。つまり、移動局は、直近の固定局と、移動局との距離に応じて送信する電波の強度を変更させる。例えば、移動局は、前記時間差が長い程、送信する電波の強度を増大させる。
従って、少なくとも移動局に最も近い一つの固定局は、当該移動局から送信された電波を受信し、受信した電波から情報を取得することができる。また、移動局は、遠隔地の固定局にまで強い強度の電波を到達させる構成では無く、少なくとも直近の固定局に、十分な強度の電波を到達させる構成であるため、各固定局へ送信する電波の電力を抑えることができる。
【0013】
本発明に係る移動局は、スペクトラム拡散されたミリ波の電波を送受信する。
【0014】
本発明にあっては、移動局は、スペクトラム拡散されたミリ波の電波を送受信する。ミリ波は周波数帯が30〜300GHzの電波である。従って、移動局の位置をセンチメートルオーダで演算することが可能である。
【0015】
本発明に係る測位システムは、第1周波数帯の電波を送信する複数の固定局と、上述のいずれか一つの複数の移動局とを備える。
【0016】
本発明にあっては、測位システムは、複数の固定局と、複数の移動局とを備える。移動局は共通の第2周波数帯の電波を用いて、固定局から送信された電波の送信時及び受信時の時間差に基づいて演算される自身の位置又は該時間差に係る情報を含む電波を送信することができる。また、移動局は、固定局との距離に応じて送信する電波の強度を変更させる構成であるため、固定局は複数の移動局との距離の長短に拘わらず、各移動局から送信された電波を受信し、受信した電波に含まれる情報を取得することができる。
【0017】
本発明に係る測位システムは、前記固定局は、指向性を有するアンテナを備え、該アンテナにて指向性を有する第1周波数帯の電波を異なる複数の方向へ時分割送信する。
【0018】
本発明にあっては、固定局は、指向性を有する電波を異なる複数の方向へ時分割送信する。移動局は、固定局から異なる複数の方向へ送信された電波の内、少なくとも一つの電波の送信時及び受信時の時間差に基づいて演算される位置又は該時間差に係る情報を固定局へ送信する。固定局から電波が送信される一の方向において、固定局と、移動局との間に電波を遮る遮蔽物があったとしても、他の方向において遮蔽物が無ければ、移動局は固定局から他の方向へ送信される電波を直接受信することができる。
【0019】
本発明に係る測位システムは、前記固定局は、電波の受信感度が最大になる方向を時分割で変更するようにしてあり、前記移動局は、前記固定局から前記複数の方向へ送信された各電波の受信状態の良否を検出する検出部と、該検出部による検出結果に基づいて、前記移動局から送信される電波の前記固定局における受信感度が最大になるタイミングを特定する特定部とを備え、前記送信部は、前記特定部にて特定されたタイミングで電波を送信する。
【0020】
本発明にあっては、固定局のアンテナは指向性を有しており、電波を異なる方向へ時分割で送信すると共に、受信感度が最大になる方向を時分割で変更し、移動局から送信される電波を受信する。移動局の特定部は、移動局から送信される電波を固定局が最大感度で受信するタイミングを特定する。そして、送信部は、特定部にて特定されたタイミングに電波を送信する。
従って、固定局は、移動局から送信される電波を良好な受信感度で受信することができる。
【0021】
本発明に係る測位システムは、第1周波数帯及び第2周波数帯は重複しており、前記固定局及び移動局は、電波を時分割で送信及び受信する。
【0022】
本発明にあっては、固定局及び移動局は重複する周波数帯の電波を時分割で送信及び受信する。従って、より効果的に無線周波数逼迫の問題を解消することができる。なお、固定局及び移動局が送信する電波の周波数帯は完全に同一であっても良いし、部分的に重複するものであっても良い。
【0023】
本発明に係る測位システムは、前記移動局は、前記複数の固定局に対して移動し、被搬送体を搬送する搬送装置に搭載されている。
【0024】
本発明にあっては、移動局は搬送装置に搭載されている。従って、測位システムは、被搬送体を搬送する搬送装置の位置に係る情報を固定局へ送信することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、周波数逼迫の問題を解消すると共に、高品質な無線通信を実現することができる移動局、及び当該移動局を備える測位システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る測位システムの一構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る測位システムは、電波を送信する複数の固定局1、2、3と、各固定局1、2、3による電波の送信を制御する制御装置4と、複数の移動局5とを備える。
【0028】
各移動局5は、図示しない搬送装置に搭載されている。搬送装置は、被搬送体を搬送する装置であり、室内Rを移動する。被搬送体は、室内Rに設置された図示しない処理装置で処理される溶接部品、電子部品、基板、ウエハ等の各種ワークである。搬送装置は、例えば、所定のルートを移動する無人搬送車、天井又は床上に設置された軌道を移動する搬送シャトル等の移動体である。搬送装置の動作は生産管理システムMES(Manufacturing Execute System)によって集中管理されている。なお、室内Rには固定局1、2、3から送信された電波を一部遮蔽する図示しない遮蔽物が存在しており、搬送装置は遮蔽物を回避しながら室内Rを移動する。
【0029】
固定局1、2、3は、移動局5の移動経路に干渉しないよう、室内Rの適宜箇所に離隔して設置されている。例えば複数の固定局1、2、3は、室内Rの各隅に設置されている。固定局1、2、3には制御装置4が有線接続されており、各固定局1、2、3は制御装置4の制御に従って同期して動作する。具体的には、固定局1、2、3は、移動局5の位置演算に必要な電波を異なるタイミングで順次送信している。
【0030】
図2は、実施形態1に係る固定局1の一構成例を示すブロック図である。複数の固定局1、2、3は同一構成であるため、一の固定局1の構成を説明する。固定局1は、固定局アンテナ1a、送信部11、受信部12、送受切替部13、及び固定局制御部14を備える。
【0031】
固定局制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶部、入出力ポート等を有するマイコンである。固定局制御部14は、制御装置4の制御に従って送信部11及び受信部12による電波の送受信を制御する。固定局制御部14は、各移動局5の位置演算に必要な情報を含むスペクトラム拡散された電波を送信部11に送信させ、各移動局5の位置に係る情報を受信部12にて受信し、受信して得た情報を制御装置4へ送信する処理を実行する。
【0032】
送受切替部13は、固定局1が送受信する信号の入出力経路を切り替える回路である。具体的には、送受切替部13は送信部11から出力される信号を固定局アンテナ1aへ出力し、受信部12に入力されないように信号の入出力経路を切り替える。また、送受切替部13は、固定局アンテナ1aにて受信した信号を受信部12へ出力し、送信部11に入力されないように信号の入出力経路を切り替える。
【0033】
送信部11は、
図1に示すように、拡散符号PN0を用いてスペクトラム拡散変調された周波数f0の電波(第1周波数帯の電波)を送信する回路である。送信部11は、拡散符号発生器11a、情報変調部11b、搬送波発生器11c、拡散変調部11d及び送信信号増幅器11eを備える。
【0034】
拡散符号発生器11aは、図示しない基準時計が発振する計時信号に同期して、信号をスペクトラム拡散させるための拡散符号PN0を発生させ、発生させた拡散符号PN0の信号を情報変調部11bへ出力する。固定局1、2、3の基準時計は、制御装置4の制御によって同期している。拡散符号PN0は例えば疑似雑音符号であり、拡散符号発生器11aは、基準時計が発振する計時信号を参照し、所定時点を起点にして拡散符号PN0の発生を開始し、拡散符号PN0の信号を出力する。拡散符号PN0は、複数の各固定局1、2、3に共通の符号である。
【0035】
情報変調部11bは、固定局制御部14から出力された位置演算に必要な情報を含む信号を、拡散符号PN0の信号に乗算することによって変調し、変調された信号を拡散変調部11dへ出力する。位置演算に必要な情報は、例えば、固定局1、2、3を識別する情報等を含む。
【0036】
搬送波発生器11cは、ミリ波の搬送波に係る信号を発生させ、発生させた搬送波の信号を拡散変調部11dへ出力する。ミリ波は周波数が30〜300GHzの電波である。実施形態1に係る搬送波発生器11cは、周波数f0、例えば60GHzの搬送波に係る信号を出力する。
【0037】
拡散変調部11dは、情報変調部11bにて変調された拡散符号PN0の信号と、搬送波発生器11cから出力された搬送波の信号とを乗算することによって、スペクトラム拡散変調された信号を生成し、スペクトラム拡散変調された信号を送信信号増幅器11eへ出力する。スペクトラム拡散変調された信号は、基準時計に同期して発生した拡散符号PN0を用いて変調された信号であるため、固定局1から当該信号が送信される送信時の情報を含むことになる。
【0038】
送信信号増幅器11eは、拡散変調部11dから出力された信号を増幅させ、増幅させた信号を、送受切替部13を介して固定局アンテナ1aへ出力することによって、スペクトラム拡散変調された第1周波数帯のミリ波の電波を移動局5へ送信させる。
【0039】
固定局アンテナ1aは、指向性を有しており、固定局アンテナ1aの電波送信方向を周期的に切り替えることによって、異なる複数方向へ電波を送信する。例えば、固定局1は、
図1に示すように第1方向へ電波A1を送信し、次いで、第2方向へ電波A2を送信し、次いで第3方向へ電波A3を送信する。なお、電波の送信方向の切り替えは、固定局1が基準時計の計時信号を参照し、所定周期で自立的に切り替えるように構成しても良いし、制御装置4の制御に従って切り替える構成でも良い。
【0040】
受信部12は、スペクトラム拡散変調された電波を受信する回路である。受信部12は、受信信号増幅器12a、発振器12b、混合器12c、逆拡散符号発生器12d及び相関器12eを備える。
【0041】
受信信号増幅器12aは、固定局アンテナ1aが電波を受信して得た信号を増幅させ、増幅された信号を混合器12cへ出力する。
【0042】
発振器12bは、固定局アンテナ1aが受信した信号の周波数を変換するための信号を混合器12cへ発振する素子である。
【0043】
混合器12cは、受信信号増幅器12aから出力された信号と、発振器12bから出力された信号とを混合することによって、周波数変換を行う。混合器12cにて周波数変換された信号は、増幅され、図示しないフィルタを通じて相関器12eへ出力される。
【0044】
逆拡散符号発生器12dは、スペクトラム拡散変調された信号を逆拡散するための逆拡散符号を、基準時計が発振する計時信号に同期して発生させ、発生した逆拡散符号の信号を相関器12eへ出力する。逆拡散符号発生器12dは、複数の移動局5でスペクトラム拡散変調された信号を逆拡散するための逆拡散符号をそれぞれ発生させることができ、時間的に切り替えて各移動局5に対応する逆拡散符号の信号を相関器12eへ出力する。逆拡散符号は、
図1に示すように、各移動局5で用いられる拡散符号PN1、PN2を時間反転させた信号であり、逆拡散符号発生器12dは、基準時計が発振する計時信号を参照し、所定時点を起点にして逆拡散符号の発生を開始し、逆拡散符号の信号を出力する。
【0045】
相関器12eは、混合器12cから出力された信号と、逆拡散符号発生器12dから出力された逆拡散符号の信号とを比較することによって、受信した信号に重畳している拡散符号PN1、PN2と、逆拡散符号発生器12dから出力された逆拡散符号との相関を取る。そして、相関器12eは、各符号の相関が最大になるように調整し、受信した信号を復調する。相関器12eは、信号の逆拡散によって復調された信号を固定局制御部14へ出力する。
【0046】
図3は、実施形態1に係る移動局5の一構成例を示すブロック図である。複数の移動局5は同一構成であるため、一の移動局5の構成を説明する。移動局5は、移動局アンテナ5a、受信部51、送信部52、送受切替部53及び移動局制御部54を備える。
【0047】
移動局制御部54は、例えばCPU、RAM、記憶部、入出力ポート等を有するマイコンである。移動局制御部54は、固定局1、2、3から送信された電波を受信部51にて受信して移動局5の位置を演算し、位置に係る情報を送信部52に送信させる処理を実行する。なお、移動局制御部54は、移動局5の位置演算に必要な情報として、固定局1、2、3及び移動局5間における電波の送信時及び受信時の時間差、電波を受信した時点等の情報を固定局1、2、3へ送信し、制御装置4が移動局5の位置を演算するように構成しても良い。
【0048】
送受切替部53は、移動局5が送受信する信号の入出力経路を切り替える回路である。具体的には、送受切替部53は、移動局アンテナ5aにて受信した信号を受信部51へ出力し、送信部52に入力されないように信号の入出力経路を切り替える。また、送受切替部53は送信部52から出力される信号を移動局アンテナ5aへ出力し、受信部51に入力されないように信号の入出力経路を切り替える。
【0049】
受信部51は、スペクトラム拡散変調された固定局1、2、3からの電波を受信する回路である。受信部51は、受信信号増幅器51a、発振器51b、混合器51c、逆拡散符号発生器51d及び相関器(検出部)51eを備える。
【0050】
受信信号増幅器51aは、移動局アンテナ5aが電波を受信して得た信号を増幅させ、増幅された信号を混合器51cへ出力する。
【0051】
発振器51bは、移動局アンテナ5aが受信した信号の周波数を変換するための信号を混合器51cへ発振する素子である。
【0052】
混合器51cは、受信信号増幅器51aから出力された信号と、発振器51bから出力された信号とを混合することによって、周波数変換を行う。混合器51cにて周波数変換された信号は、増幅され、図示しないフィルタを通じて相関器51eへ出力される。
【0053】
逆拡散符号発生器51dは、スペクトラム拡散変調された信号を逆拡散するための逆拡散符号を、移動局5が備える時計が発振する計時信号に同期して発生させ、発生した逆拡散符号の信号を相関器51eへ出力する。逆拡散符号は、固定局1、2、3で用いられる拡散符号PN0を時間反転させた信号であり、逆拡散符号発生器51dは、時計が発振する計時信号を参照し、所定時点を起点にして逆拡散符号の発生を開始し、逆拡散符号の信号を出力する。
【0054】
相関器51eは、混合器51cから出力された信号と、逆拡散符号発生器51dから出力された逆拡散符号の信号とを比較することによって、受信した信号に重畳している拡散符号PN0と、逆拡散符号発生器51dから出力された逆拡散符号との相関を取る。そして、相関器51eは、各符号の相関が最大になる時点を求めることによって、受信した電波の送信時及び受信時の時間差、即ち固定局1、2、3及び移動局5間の電波の伝搬時間を特定し、特定された伝搬時間を移動局制御部54へ出力する。また、相関器51eは、信号の逆拡散によって復調された信号を移動局制御部54へ出力する。
【0055】
送信部52は、
図1に示すように、移動局5に固有の拡散符号PN1を用いてスペクトラム拡散変調された周波数f1の電波(第2周波数帯の電波)を送信する回路である。なお、本実施形態1においては、固定局1、2、3が送信する電波の第1周波数帯と、移動局5が送信する電波の第2周波数帯とは異なる。しかし、複数の各移動局5が利用する拡散符号PN1、PN2は互いに異なる固有の符号である。送信部52は、拡散符号発生器52a、情報変調部52b、搬送波発生器52c、拡散変調部52d及び送信信号増幅器(変更部)52eを備える。
【0056】
拡散符号発生器52aは、移動局5の時計が発振する計時信号に同期して、信号をスペクトラム拡散させるための拡散符号PN1を発生させ、発生させた拡散符号PN1の信号を情報変調部52bへ出力する。移動局5の時計は、固定局1、2、3の基準時計に同期している。拡散符号PN1は例えば疑似雑音符号であり、拡散符号発生器52aは、基準時計が発振する計時信号を参照し、所定時点を起点にして拡散符号PN1の発生を開始し、拡散符号PN1の信号を出力する。
【0057】
情報変調部52bは、移動局制御部54から出力された情報、例えば、移動局5の位置に係る情報、固定局1、2、3及び移動局5間の電波の伝搬時間に係る情報等を含む信号を、拡散符号PN0の信号に乗算することによって変調し、変調された信号を拡散変調部52dへ出力する。
【0058】
搬送波発生器52cは、ミリ波の搬送波に係る信号を発生させ、発生させた搬送波の信号を拡散変調部52dへ出力する。搬送波発生器52cが発生させる信号の周波数f1は、固定局1、2、3の搬送波発生器11cが発生させる信号の周波数f0と異なる。
【0059】
拡散変調部52dは、情報変調部52bにて変調された拡散符号PN1の信号と、搬送波発生器52cから出力された搬送波の信号とを乗算することによって、スペクトラム拡散変調された信号を生成し、スペクトラム拡散変調された信号を送信信号増幅器52eへ出力する。
【0060】
送信信号増幅器52eは、拡散変調部52dから出力された信号を増幅させ、増幅させた信号を、送受切替部53を介して移動局アンテナ5aへ出力することによって、スペクトラム拡散変調された第2周波数帯のミリ波の電波を移動局5へ送信させる。
【0061】
図4は、実施形態1に係る移動局制御部54の処理手順示すフローチャートである。移動局5の移動局制御部54は、相関器51eから出力される各電波の伝搬時間及び相関値等を取得する(ステップS11)。そして、移動局制御部54は、相関値が最大の電波に対応する伝搬時間を選択する(ステップS12)。固定局1は、
図1に示すように、異なる第1方向〜第3方向へ電波A1、電波A2及び電波A3を順次、時分割送信している。移動局5は、固定局1から各方向へ送信された電波A1、A2、A3を受信しており、移動局制御部54は、ステップS11で各電波A1、A2、A3の伝搬時間及び相関値を取得する。相関値が高い程は、固定局1から送信された電波の受信状態が良好であるため、移動局制御部54は、ステップS12で相関値が最大の伝搬時間を選択する。
他の固定局2から第1方向〜第3方向へ送信される電波B1、B2、B3についても同様であり、移動局制御部54は、ステップS12で各電波B1、B2、B3の中から、相関値が最大の伝搬時間を選択する。また、移動局制御部54は、固定局3から送信された電波C1、C2、C3の中から、相関値が最大の伝搬時間を選択する。
【0062】
次いで、移動局制御部54は、各固定局1、2、3から送信された各電波の伝搬時間に基づいて、移動局5及び搬送装置の位置を演算する(ステップS13)。例えば、移動局制御部54は、双曲線航法によって、移動局5の位置を演算する。具体的には、移動局制御部54は、位置が既知の2つの固定局1、2から送信された電波の伝搬時間から、固定局1、2を焦点とする双曲線を求め、また他の2つの固定局2、3から送信された電波の伝搬時間から、固定局2、3を焦点とする双曲線を求める。そして、移動局制御部54は、各双曲線が交わる点を、現在の移動局5の位置として特定する。
【0063】
次いで、移動局制御部54は、ステップS11で取得した各電波の伝搬時間の内、最も短い伝搬時間を特定する(ステップS14)。そして、移動局制御部54は、最も短い伝搬時間に応じて、送信信号増幅器52eの増幅率を変更する(ステップS15)。電波の増幅率は、伝搬時間が短い程、小さく、伝搬時間が長い程、大きい。なお、ステップS14及びステップS15の処理を実行する移動局制御部54及び送信信号増幅器52eは、電波の強度を、伝搬時間に応じて変更する変更部として機能する。
【0064】
そして、移動局制御部54は、移動局5に係る位置を示す信号を情報変調部52bへ出力し、拡散符号PN1にてスペクトラム拡散変調された電波を固定局1、2、3へ送信させる(ステップS16)。
本実施形態1に係る各移動局5は、任意のタイミングで、移動局5の位置に係る情報を含む電波を固定局1、2、3へ送信する。固定局1、2、3は各移動局5から送信される電波を常時監視しており、各移動局5から送信された電波を受信する。移動局5から送信された電波を受信した固定局1、2、3は、受信した電波に含まれる情報を復調し、復調して得た移動局5の位置に係る情報を制御装置4へ送信する。このようにして、制御装置4は、各移動局5の位置に係る情報を得ることができる。
なお、移動局5が、固定局1、2、3及び移動局5間の電波の伝搬時間に係る情報を固定局1、2、3へ送信する構成の場合、固定局1、2、3は、電波に含まれる当該情報を復調し、復調して得た情報を制御装置4へ送信する。制御装置4は、固定局1、2、3及び移動局5間の電波の伝搬時間に基づいて、各移動局5の位置を双曲線航法にて演算することができる。
【0065】
次いで、移動局制御部54は、測位処理の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS17)。例えば、終了条件としては、搬送装置が搬送作業を終えた場合、搬送装置が停止したまま所定時間が経過した場合等が挙げられるが、特に限定されるものでは無い。
測位処理の終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS17:NO)、移動局制御部54は処理をステップS11へ戻す。測位処理の終了条件を満たすと判定した場合(ステップS17:YES)、移動局制御部54は処理を終える。
【0066】
このように構成された実施形態1に係る測位システム及び移動局5によれば、固定局1、2、3及び移動局5は、2つの第1周波数帯及び第2周波数帯を用いて電波を送受信し、移動局5の位置を演算する構成であるため、周波数逼迫の問題をより効果的に解消することができる。
【0067】
また、複数の移動局5は、固定局1、2、3との距離に応じて、送信する電波の増幅率を変更する構成である。このため、固定局1、2、3は、移動局5との距離に拘わらず、各移動局5から送信された電波に含まれる情報を問題無く復調することができ、固定局1、2、3及び移動局5間の高品質な無線通信を実現することができる。
【0068】
更に、移動局5は、直近の固定局1、2、3との距離に応じた増幅率で、送信する電波を増幅させる。従って、移動局5は、直近の固定局1、2、3に十分な強度の電波を到達させることができる。また、遠隔地にある固定局1、2、3に強い電波を到達させる構成で無いため、固定局1、2、3へ送信する電波の電力を抑えることができる。
【0069】
図5は、移動局5から直近の固定局1、2、3へ電波が送信される様子を示す模式図である。
図5に示すように、一の移動局5が固定局2の近くにあり、他の移動局5が固定局3の近くにある。この場合、一の移動局5は固定局2との距離に応じて増幅された電波を送信し、他の移動局5は固定局3との距離に応じて増幅された電波を送信する。従って、固定局2は、一の移動局5から送信された電波を受信することができ、固定局3は、他の移動局5から送信された電波を受信することができる。
なお、固定局1、2、3が、移動局5から送信される電波を互いに異なるタイミングで時分割的に受信するように構成されている場合、各移動局5は、直近の固定局1、2、3の受信タイミングを特定し、特定された受信タイミングに合わせて電波を送信するように構成すれば良い。この場合、全ての移動局5が各固定局1、2、3へ、距離に応じた強度の電波を送信するように構成しても良いし、直近の固定局1、2、3のみへ、選択的に電波を送信するように構成しても良い。
【0070】
更にまた、本実施形態1の測位システムは、スペクトラム拡散されたミリ波の電波を用いて、移動局5の位置を演算する構成であるため、センチメートルオーダで移動局5の位置を演算することができる。
【0071】
更にまた、固定局1、2、3は、指向性を有する電波を、異なる複数方向へ送信するように構成しているため、受信状態が良好な電波を選択して移動局5の位置を演算することができる。従って、搬送装置が移動する室内Rに、固定局1、2、3から送信された電波を一部遮蔽する遮蔽物が存在していても、移動局5は、受信状態が良好な電波を用いて、移動局5の位置を正確に特定することができる。
【0072】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る測位システムの一構成例を示す模式図である。実施形態2に係る測位システムは、実施形態1と同様の固定局1、2、3、制御装置4及び移動局5を備え、送受信する電波の周波数帯及び移動局制御部54の処理手順が実施形態1と異なる。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
図7は、複数の固定局1、2、3が電波を送受信するタイミングを示したタイミングチャートである。横軸は時間を示し、上段横方向に並ぶ矩形部分は、固定局1、2、3から電波が送信されるタイミングを示し、下段横方向に並ぶ矩形部分は、移動局5から送信された電波を固定局1、2、3が受信するタイミングを示している。
固定局1、2、3及び移動局5は、共通の周波数f0の電波を送信するように構成されており、複数の固定局1、2、3は、
図7に示すように、それぞれ異なるタイミングで電波を時分割送信し、移動局5から送信される電波を互いに異なるタイミングで受信している。また、各固定局1、2、3は、電波を異なる複数の方向へ時分割送信している。更に、各固定局1、2、3は、同様にして、電波の受信感度が最大になる方向を時分割で変更している。
【0074】
図8は、移動局5が電波を送受信するタイミングを示したタイミングチャートである。横軸は時間を示しており、移動局5が各固定局1、2、3との間で電波を送受信するタイミングを示している。移動局5は、固定局1、2、3における電波の送受信タイミングに合わせて、固定局1、2、3との間で無線通信を行う。なお、移動局5は、必ずしも全てのタイミングで電波を送受信しておらず、必要に応じて、対応するタイミングで電波を送受信している。また、固定局1、2、3及び移動局5が送受信する電波の周波数帯は、完全に同一である必要は無く、周波数逼迫も問題を解消できる範囲で重複していれば足りる。
【0075】
図9は、実施形態2に係る移動局制御部54の処理手順示すフローチャートである。移動局制御部54は、実施形態1と同様、相関器51eから出力される各電波の伝搬時間及び相関値等を取得する(ステップS211)。そして、移動局制御部54は、固定局1、2、3から送信される電波の受信時及び伝搬時間に基づいて、各固定局1、2、3における電波の送信タイミング及び受信タイミングを特定する(ステップS212)。移動局制御部54は、固定局1、2、3における電波の送受信タイミングのパターンを予め記憶しており、各固定局1、2、3から送信される電波の受信時及び伝搬時間を利用して、電波の伝搬時間を考慮した固定局1、2、3における実際の送受信タイミングを特定する。
なお、移動局制御部54は、単純に移動局5に搭載された時計を参照し、各固定局1、2、3における電波の送受信タイミングを特定するように構成しても良い。
【0076】
次いで、移動局制御部54は、相関値が最大の電波に対応する伝搬時間を選択し(ステップS213)、各固定局1、2、3から送信された各電波の伝搬時間に基づいて、移動局5及び搬送装置の位置を演算する(ステップS214)。次いで、移動局制御部54は、ステップS211で取得した各電波の伝搬時間の内、最も短い伝搬時間を特定する(ステップS215)。なお、ステップS215において、移動局制御部54は、ステップS213にて選択した各電波の相関値最大の伝搬時間の内、最も短い伝搬時間を特定するように構成しても良い。そして、移動局制御部54は、最も短い伝搬時間に応じて、送信信号増幅器52eの増幅率を変更する(ステップS216)。具体的には、移動局制御部54は、伝搬時間が長い程、送信信号増幅器52eの増幅率を増大させる。
【0077】
次いで、移動局制御部54は、最も伝搬時間が短い電波が送信された固定局1、2、3、及び当該固定局1、2、3における電波の受信感度が最大になるタイミングを特定する(ステップS217)。具体的には、移動局制御部54は、相関値が最大の電波を受信した時点と、ステップS213で特定した各固定局1、2、3における電波の送受信タイミングとを比較することによって、相関値が最大の電波が送信された固定局1、2、3と、当該固定局1、2、3が送信した電波の方向を特定することができる。良好な電波の送信元の固定局1、2、3へ電波を送信すれば、当該固定局1、2、3も移動局5から送信された電波を良好な状態で受信することができる。また、良好な電波が送信された方向に合わせて、移動局5から当該固定局1、2、3へ電波を送信すれば、固定局1乃至固定局3も移動局5から送信された電波を良好な状態で受信することができる。そこで、移動局制御部54は、ステップS217において、良好な電波を送信した固定局1、2、3が電波を受信タイミングであって、当該電波が送信された電波の受信感度が最大のタイミングを特定する。
【0078】
なお、相関器51eは、固定局1、2、3から複数の方向へ送信された各電波の受信状態の良否を検出する検出部として機能し、ステップS217を実行する移動局制御部54は、検出部による検出結果に基づいて、移動局5から送信される電波の固定局1、2、3における受信感度が最大になるタイミングを特定する特定部として機能する。
【0079】
次いで、移動局制御部54は、自身の時計の計時時間を参照し、ステップS217にて特定した送信タイミングにあるか否かを判定する(ステップS218)。送信タイミングにあると判定した場合(ステップS218:YES)、移動局制御部54は、移動局5に係る位置を示す信号を情報変調部52bへ出力し、拡散符号PN1にてスペクトラム拡散変調された電波を固定局1、2、3へ送信させる(ステップS219)。
【0080】
ステップS219の処理を終えた場合、又は送信タイミングに無いと判定した場合(ステップS218:NO)、移動局制御部54は、測位処理の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS220)。測位処理の終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS220:NO)、移動局制御部54は処理をステップS211へ戻す。測位処理の終了条件を満たすと判定した場合(ステップS220:YES)、移動局制御部54は処理を終える。
【0081】
このように構成された実施形態2に係る測位システム及び移動局5によれば、固定局1、2、3及び移動局5は同一の周波数f0の電波を時分割で送信及び受信するため、無線周波数逼迫の問題を解消することができる。
【0082】
また、移動局5は、当該移動局5から送信される電波を良好に受信できる固定局1、2、3へ選択的に電波を送信する構成である。従って、実施形態2に係る測位システムは、固定局1、2、3及び移動局5間でより高品質な無線通信を実現することができる。
【0083】
更に、固定局1、2、3は受信感度が最大になる方向を時分割で変更しているところ、移動局5は、当該移動局5から送信される電波の方向と、受信感度が最大になる方向とが合うタイミングで、選択的に電波を送信する。従って、実施形態2に係る測位システムは、固定局1、2、3及び移動局5間でより高品質な無線通信を実現することができる。
【0084】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。