(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677512
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】口腔内スキャナによってコンピュータープログラムを制御する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61C 5/77 20170101AFI20200330BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
A61C5/77
A61C19/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-559505(P2015-559505)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-511674(P2016-511674A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2014053903
(87)【国際公開番号】WO2014131866
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年12月19日
【審判番号】不服2018-13424(P2018-13424/J1)
【審判請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】102013203449.0
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,サッシャ
【合議体】
【審判長】
内藤 真徳
【審判官】
栗山 卓也
【審判官】
関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/035444(WO,A2)
【文献】
特開2002−41199(JP,A)
【文献】
実開昭63−169115(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータープログラムを制御する方法であって、光学マーカーが口腔内スキャナ(1)によって検出されると、前記コンピュータープログラムを所定の状態に切り替える制御信号が前記コンピュータープログラムに送られ、前記コンピュータープログラムは、CAD/CAMプログラムであり、前記所定の状態は、画像フィールドの変更、画像領域の削除、画像計算、修復計算又は患者の名前の入力であり、
前記光学マーカーは、走査体(6)に貼付され、
前記走査体(6)は、顎の中の歯科インプラント延長部として配置される、
方法。
【請求項2】
前記光学マーカー(2a、2b、2c、2d)は、二次元バーコードであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンピュータープログラムを制御する方法であって、光学マーカーが口腔内スキャナ(1)によって検出されると、前記コンピュータープログラムを所定の状態に切り替える制御信号が前記コンピュータープログラムに送られ、前記コンピュータープログラムは、CAD/CAMプログラムであり、前記所定の状態は、画像フィールドの変更、画像領域の削除、画像計算、修復計算又は患者の名前の入力であり、
前記光学マーカーは、走査体(6)からなり、
前記走査体(6)は、顎の中の歯科インプラント延長部として配置される、
方法。
【請求項4】
前記光学マーカー(2a、2b、2c、2d)は、二次元バーコードであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータープログラム、並びに口腔内スキャナによってコンピュータープログラムを制御するための方法及び装置に関する。それに加えて、本発明は、本発明に従うコンピュータープログラムを記憶するデータ媒体に関する。更に、本発明は、コンピュータープログラムを制御するための口腔内スキャナの使用、及び口腔内スキャナを備え、光学マーカーが口腔内スキャナによって検出されたときに制御信号を発生するように設計されている装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内走査システムによって、歯科医は、連続記録方法によって、又は2、3の個別の画像を記録することによって口腔の三次元表示を作成することができる。手持ち式カメラの先端部は、それによって、記録されるべき歯の上方のわずかに離れたところに誘導される。三次元モデルは、CAD/CAMソフトウェア(コンピュータ利用設計/コンピュータ支援製造)を使用して、カメラによって編集されたデータから作成することができる。これは、次に修復の基礎として使用することができる。
【0003】
かかる口腔内走査システムを使用するとき、作業を実行する歯科医は、典型的には、自身の手に口腔内走査カメラを持ち、手袋を着用し、患者の口腔と接触し、その結果、手袋が唾液又は血液で濡れる。歯科医が、それと同時にCAD/CAMソフトウェアを操作したいと思うと、歯科医は、ソフトウェアを実行するコンピュータのマウス、キーパッド又はタッチスクリーンを自身の手によって汚し、そこから患者の口の中に微生物を持ち込みさえする可能性がある。各々のコンピュータシステム上の入力インターフェースを介して制御することを必要としないCAD/CAMソフトウェアの非接触制御のための既知の方法はない。音声制御がかかるシステムに対して利用できない理由は、音声制御が歯科医が着用する口保護具、及び歯科医のオフィスの中の避けることができない周囲雑音に起因する問題に影響されやすいからであり、そのことは必要ならば最初に認識されなければならないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、したがって、歯科医療分野においてソフトウェアの非接触制御を可能にすることであり、歯科医は自身の手からカメラ又は別のスキャナを離す必要がない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、コンピュータープログラムを制御するための本発明に従う方法によって達成され、光学マーカーが口腔内スキャナによって検出されると、制御信号がコンピュータープログラムに送られて、コンピュータープログラムを所定の状態に切り替える。スキャナは、具体的には、2Dカメラ又は3Dスキャナである。コンピュータープログラムは、CAD/CAMプログラムである。
【0006】
所定の状態は、画像フィールドの変更、画像領域の削除、画像計算、修復計算、及び患者の名前の入力からなる群から選択される。歯科医は、このように、自身の手から口腔内スキャナを離すことなく、CAD/CAMプログラムの機能を制御することが可能である。したがって、例えば画像を記録するとき、歯科医は、口腔内スキャナをこの状態に割り当てられたマーカーに向けることによって画像フィールドを変更することができる。歯科医は、このように、口腔内スキャナをこの状態に割り当てられたマーカーに向けることによって、画像フィールドを変更することも可能である。したがって、歯科医が画像フィールドの検出と画像領域の削除との間で変更することも可能である。三次元画像計算又は歯の修復計算は、また、このようにして開始することができる。光学マーカーが、少なくとも1つの光学マーカーを有するキャリアーに貼付することが、この場合好ましい。作業中、歯科医は、例えば全ての所定の状態に対する光学マーカーを有するタブレットを所持してもよく、それにより、歯科医は、口腔内スキャナを各々の状態に割り当てられたマーカーに向けることによってそれらを変更することができる。追加の光学マーカーを患者カルテ情報に貼付することができ、例えば、それにより、口腔内スキャナを患者カルテ情報上のマーカーに向けることによって、患者の名前をコンピュータープログラムに入力することが可能である。本発明によれば、患者カルテ情報上のかかるマーカーは、また、歯科医の診療において使用される他のコンピュータープログラムによって認識することができる。したがって、例えば、スマートフォン又はタブレットコンピュータのカメラは、対応するアプリケーション(アプリ)の助けを借りてマーカーをスキャンすることができ、歯科医が直接、患者データ記録にアクセスすること、例えば、この場合はローカルに若しくはインターネットを介してアクセスすること、又は、マーカーと関連付けられた放射線医学ソフトウェア若しくはその医師の治療/患者管理ソフトウェアの各々の患者カルテ情報を開くことを可能にできる。
【0007】
光学マーカーは、好ましくは二次元バーコードである。これは、ソフトウェア自体によって生成されるか、又はインポートすることができる。外部で生成されたラベルに基づくバーコードを、このラベルを口腔内スキャナによって一回走査することによって知ることも可能である。かかる外部で生成されたラベルは、例えば、患者管理ソフトウェアに由来してもよい。本発明のこの実施形態において、患者カルテ情報は、処置の開始において紙形式で準備され、医師が、口腔内スキャナをそこに添付された二進コードの上を通過させて、対応する患者がコンピュータープログラムにおいて自動的に開かれる。かかるバーコードは、それが次に患者カルテ情報に添付することができるように、任意の2Dラベルプリンターにおいて印刷することができる。
【0008】
それに加えて、本発明によれば、光学マーカーは走査体に貼付するか、又は走査体からなることが可能である。走査体は、例えば、米国特許出願公開第2008/0233537(A1)号に記載されているような二進コードを備えている走査体であってもよい。顎の中のインプラントの型式を決定するために、ユーザーは、ソフトウェアの対応する領域の従来のCAD/CAM走査によって、手動でインプラントの正しい型式を選択しなければならない。インプラントの位置を決定するために、走査データの中の取付けられた走査体の特定の三次元構造を検索し、次にその下にあるインプラントの位置及び向きを決定するアルゴリズムが通常使用される。例えば、走査体がその色及び/又はパターン構成のために光学マーカーとして使用されるならば、下にあるインプラントの型式は、本発明にしたがって自動的に決定することができる。例えば、二次元バーコードの形式の光学マーカーを、走査体の表面に貼付することも可能である。走査体に対応するインプラントが検出されたデータ記録の中に組み込まれた状態にコンピュータープログラムを切り替えることに加えて、本発明によれば、例えば、走査が口の他の領域における分解能と異なる、好ましくはより高い分解能によって実行される状態にコンピュータープログラムを切り替えることも可能である。それに加えて、このように、コンピュータープログラムを構築モードに切り替えるか、又は提案計算を開始することが可能である。かかる提案計算は、特に短縮形の単一の橋脚歯の自動生成、全体形の単一の橋脚歯、ネジで固定されたバー又はブリッジのためのポスト要素、又は単一層若しくは複数層の修復に関する決定についての自動生成を可能にする。走査体は、また、歯肉に貼付することができ、走査体又は走査体上の光学マーカーを検知すると、コンピュータープログラムは、穿孔場所がモデル走査の後に造られるべき穿孔テンプレートに記録されるか又は画定される状態に切り替えられる。本発明に従う方法は、したがって、コンピュータープログラムを制御するために口腔内スキャナの使用を可能にする。
【0009】
本発明は、また、コンピュータープログラム、特にCAD/CAMプログラムに関し、それは、本発明に従う方法によって制御することができる。コンピュータープログラムは、好ましくは、少なくとも1つの光学マーカーをモニター上に示すように設定され、光学マーカーは、コンピュータープログラムが口腔内スキャナによって光学マーカーを検出することによって切り替えられることができるコンピュータープログラムの状態を示す題銘を有している。したがって、コンピュータープログラムを制御するための光学マーカーを、例えば、CAD/CAMシステムのモニター上に表示することが可能であり、それにより、歯科医は、口腔内スキャナを使用してマーカーをそこで検出することができる。あるいは、表示は、また、別個のシステム、例えばタブレットコンピュータなどに示されてもよい。題銘は、テキスト又はグラフィックによって、コンピュータープログラムが口腔内スキャナを対応する光学マーカー上に誘導するとコンピュータープログラムが切り替えられる状態を歯科医に示す。アナログ媒体上に光学マーカーを提供することとは対照的に、この場合、1つの光学マーカーを選択することによって、いくつかの光学マーカーが隠され、他の光学マーカーが示されるようにメニュー構成を作成することが可能であり、その結果、コンピュータープログラムを制御するための光学マーカーが理解可能な態様で歯科医に提示することができる。
【0010】
本発明は、本発明に従うコンピュータープログラムを記憶するデータ媒体に更に関する。
【0011】
更に、本発明は、少なくとも1つの光学マーカーが配列されたキャリアーを備えているコンピュータープログラムを制御するための装置に関する。キャリアーは、例えば、積層の添付書類であってもよい。それぞれの光学マーカーは、コンピュータープログラムが口腔内スキャナによって光学マーカーを検出することによって切り替えられることができるコンピュータープログラムの状態を示す題銘を有する。光学マーカーは、この場合、好ましくは二次元バーコードである。
【0012】
口腔内スキャナとコンピュータとは、これらにおいて本発明に従うコンピュータープログラムが動作しているが、本発明にしたがって一つのセットとして提供することができる。このセットは、好ましくは、コンピュータープログラムを制御するために、本発明に従う装置も含む。
【0013】
口腔内スキャナを備えている装置は、光学マーカーが口腔内スキャナによって検出されると制御信号を生成するように、本発明にしたがって設計されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の例示的実施形態は、図面に表されており、以下の記述においてより詳細に説明される。
【
図1】口腔内カメラ、及び本発明に従う方法の実施形態において使用するためのコンピュータープログラムを制御する装置を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に従うコンピュータープログラムによってモニター上に生成されたいくつかの二次元バーコードを示す。
【
図3】本発明の一実施形態における顎の中の走査体の配列を示す。
【
図4】本発明の一実施形態における患者カルテ情報の二次元バーコードの配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態において、CAD/CAMプログラムは、歯修復のデジタル成形及び製作のための装置(例えば、出願人のCEREC AC+MC XL)上で動作する。口腔内3Dカメラ1は、
図1に示されているが、デジタル成形のための走査システムとして用いられる。CAD/CAMプログラムは、口腔内カメラ1が二次元バーコード2a、2b、2cの形式の光学マーカーを検出すると、様々な状態、例えば、画像フィールドの検出、画像領域の削除、画像計算、修復計算、及び患者名の入力などの間で切り替わるように設定される。二次元バーコード2a、2b、2cは、切替え状態を起動させるための積層シート3に貼付される。それぞれの二次元バーコード2a、2b、2cは、題銘21a、21b、21cを有し、その題銘から歯科医が各々の二次元バーコード2a、2b、2cが割り当てられた切替えプロセスを確認することができる。積層シート3は、CAD/CAMプログラムを制御する装置として用いられ、デジタル成形の間、歯科医によって作業面上に置くことができるか、又はCAD/CAMシステムのモニター上にもってくることができる。CAD/CAMプログラムは、また、題銘21a、21b、21cと共に、所定の状態を切り替えるための二次元バーコード2a、2b、2cをCAD/CAMシステム4のモニター41上に表示するように設定される。このことは、
図2において説明される。CAD/CAMシステム4は、光学マーカーが口腔内カメラによって検出されると、制御信号を生成するように設計されている。
【0016】
それに加えて、CAD/CAMプログラムは、
図3に示される顎5の中に口腔内カメラ1によって検出された走査体6を識別すると、所定の状態に切り替わるように設定され、走査体は、走査体6の下の顎5の中に位置するインプラントの上のインプラント延長部として配列される。走査体6を検知すると、CAD/CAMプログラムは、歯科医によって事前に決定することができる状態に切り替えられる。これは、例えば、走査に由来する三角形網が走査に由来する他の画像データと異なる解像度を経ている状態でありえる。
【0017】
口腔内3Dカメラ1によって検出された画像の中に二次元バーコード2a、2b、2c又は走査体6を認識することは、画像フィルタ方法、及び/又は、画像空間における微分画像の作成、周波数空間への伝送、類似のパターン、周波数若しくは信号の検索のような比較演算によって画像の中の既知の光学マーカーを検索する解析的方法、又は統計的方法によって行われる。
【0018】
バーコード2a、2b、2c又は走査体6が、画像データの中で光学マーカーとして認識されるならば、光学マーカーに割り当てられた機能が、コンピュータープログラムに記憶されている決定表に基づいて開始される。光学マーカーが画像データの中で全く認識されないならば、口腔内3Dカメラ1の走査モードが作動中である限り、画像データはコンピュータープログラム、例えば、三次元散乱プロット又は深度画像走査プロセスにおいて生じる走査プロセスに転送され、そこで画像データは後の三次元修復及びモデル計算のために記憶される。
【0019】
CAD/CAMプログラムを、口腔内カメラ1によって検出されたデータが特定の患者に割り当てられた状態に切り替えることは、口腔内カメラ1が、題銘21dを備え、患者カルテ情報7に貼付された二次元バーコード2dに向けられる本発明のこの実施形態において可能である。このことは、
図4に示されている。
【0020】
修復物が、歯科技工室から歯科医に送り返されたCAD/CAMプログラムからのデータに基づいて準備されるとき、このデータに患者/修復IDを運ぶ二次元バーコード2を提供することも可能であり、このとき、かかるバーコードは、修復物に随伴するか、又は包装に添付されている。修復作業を受けている歯科医は、次に口腔内カメラ1によってバーコード2を入力して、CAD/CAMプログラムに手動で入力する必要なしに、技工室にデジタルで転送される前にCAD/CAMプログラムにおいて命令を再開することができる。
【0021】
本発明のこの実施形態及びそれを制御するための方法によると、CAD/CAMプログラムは、このように、コンピュータープログラムを制御するための装置としてのキャリア3上に表示されるバーコード2a、2b、2c、又はモニター41上に表示されるバーコード2a、2b、2c及び患者カルテ情報7に選択的に表示されるバーコード2dと連携して、CAD/CAMソフトウェアの非接触制御を可能にし、このとき、歯科医は、口腔内カメラ1を自身の手から離す必要がない。