(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、管の形状に沿って断熱材が設けられている。しかしながら、近年、例えば熱交換器と熱源装置とを接続する管等においては、管の更なる高断熱化のため、管を覆うように真空の断熱層(真空空間)を設けることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、管の高断熱化が可能となる管の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る管の断熱構造は、管の周方向に分割された複数のカバーと、複数のカバーを接続する接続部と、を備え、カバーは、内カバー部と、内カバー部との間に真空空間を形成する外カバー部と、を有する。
【0007】
この管の断熱構造では、管の周方向に分割された複数のカバーの内部に真空空間が形成されており、この複数のカバーが接続部により接続されている。これにより、真空空間からなる断熱層が管の全面を覆うこととなるため、管の高断熱化が可能となる。
【0008】
また、カバーは、内カバー部及び外カバー部の管の中心軸線方向における両端部に接合された一対の蓋部を有し、蓋部は、内カバー部及び外カバー部を真空空間側から支持する支持部を有してもよい。この場合、内カバー部及び外カバー部の両端部に接合される蓋部が、内カバー部及び外カバー部を真空空間側から支持するため、真空空間の反対側から内カバー部又は外カバー部に作用する力を蓋部が受け止める。これにより、内カバー部及び外カバー部が形成する真空空間を好適に保持することができる。
【0009】
また、カバーは、管の表面に沿って円弧状に延びる円弧部と、円弧部の両端部から管の径方向外方に延びる一対のフランジ部と、を有してもよい。この場合、カバーが一対のフランジ部を備えるため、この一対のフランジ部を利用することで、各カバーを容易に接続することができる。
【0010】
また、真空空間は、円弧部及びフランジ部に形成されていてもよい。この場合、フランジ部においても真空空間からなる断熱層が管を覆うこととなるため、管の一層の高断熱化が可能となる。
【0011】
また、フランジ部は、内カバー部及び外カバー部に接合された筒部を有し、接続部は、筒部に挿通されて隣接するカバーを締結してもよい。この場合、接続部は、内部に真空空間が形成されたフランジ部において隣接するカバー部を締結するが、接続部の締結力を筒部が受け止めるため、接続部の締結力に対するフランジ部の強度が向上する。これにより、フランジ部に形成された真空空間を好適に保持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、管の高断熱化が可能となる管の断熱構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一側面に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
本実施形態に係る管の断熱構造は、真空空間からなる断熱層を有する複数のカバーで管を覆う管の断熱構造である。特に、本実施形態では、一対のカバー(第1カバー及び第2カバー)で管を覆う管の断熱構造を説明する。管は、一例として、車両のエンジンの廃熱を熱源とするランキンサイクル装置において熱交換器と熱源とを繋ぐ配管(いわゆる繋ぎ配管)である。適用される車両としては、例えばトラックやバス等の商用車が挙げられる。なお、管の断熱構造は、ランキンサイクル装置における繋ぎ配管以外の管に適用してもよい。車両としては、特に限定されるものではなく、例えば大型車両や中型車両、普通乗用車、小型車両又は軽車両等の何れであってもよい。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係る管の断熱構造1では、断熱する管2の一例として、繋ぎ配管において略直角に屈曲する曲管部を用いる。管の断熱構造1は、管2の半面2aを覆う第1カバー100aと、第1カバーに固定されて管2の残りの半面2bを覆う第2カバー100bと、第1カバー100aと第2カバー100bとを接続する接続部200と、を備える。なお、管2の半面2a及び半面2bは、曲管部の管2の中心軸線を含む平面で管2を2等分したときの管2の側面(管の側面を周方向に2等分した円弧面)である。このため、半面2a及び半面2bは、それぞれ同一の周長を有し、第1カバー100a及び第2カバー100bは、それぞれ同一の構成を有する。そのため、以下の説明では、特に分けて説明する場合を除き、第1カバー100a及び第2カバー100bを纏めてカバー100として説明する。
【0017】
カバー100は、管2の表面に沿って円弧状に延びる円弧部110と、円弧部110の両端部から管2の径方向外方に延びる一対のフランジ部120,120と、を有する。円弧部110及びフランジ部120,120の内部には、管2を覆う断熱層となる真空空間Vが形成されている。フランジ部120は、フランジ部120を貫通する貫通孔130が形成されており、接続部200は、貫通孔130に挿通されて隣接するカバー100を締結する。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、カバー100は、管2の半面2a(又は半面2b)を覆うように配置される内カバー部10と、内カバー部10に対して管2とは径方向反対側に配置されて内カバー部10との間に真空空間Vを形成する外カバー部20と、内カバー部10及び外カバー部20の管2の中心軸線A方向における両端部に接合された一対の蓋部30,30と、を有する。内カバー部10、外カバー部20及び蓋部30,30は、例えば管2の中心軸線Aに同心となる真空空間Vを、内カバー部10及び外カバー部20の間に形成する。
【0019】
内カバー部10は、カバー100において管2に近接する側(内側)の外郭を構成する板部材である。内カバー部10は、例えばプレス等により形成される。内カバー部10の材料は、例えばステンレス鋼製である。内カバー部10の厚さは、例えば1mmである。内カバー部10の材料及び厚さは、この例に限定されず、真空空間Vを保持する強度を確保可能であればよい。
【0020】
内カバー部10は、管2の表面に沿って円弧状に延びる円弧部11と、円弧部11の両端部から管2の径方向外方に延びる一対のフランジ部12a,12bと、を有する。
【0021】
円弧部11は、カバー100の円弧部110の一部を構成する。円弧部11は、管2の中心軸線Aに同心となる円弧方向において、管2の半面2a(又は半面2b)を覆う範囲で延在している。
【0022】
フランジ部12a,12bは、カバー100のフランジ部120の一部を構成する。フランジ部12aは、曲管部の曲率中心側に位置する円弧部11の端部から当該曲率中心側に向かって延びている。フランジ部12bは、曲管部の曲率中心の反対側に位置する円弧部11の端部から当該曲率中心の反対側に向かって延びている。フランジ部12a,12bには、それぞれフランジ部12a,12bを貫通する複数の貫通孔13が形成されている。
【0023】
外カバー部20は、カバー100において管2から離間する側(外側)の外郭を構成する板部材である。外カバー部20は、例えばプレス等により形成される。外カバー部20は、例えばステンレス鋼製である。外カバー部20の厚さは、例えば1mmである。外カバー部20の材料及び厚さは、この例に限定されず、真空空間Vを保持する強度を確保可能であればよい。
【0024】
外カバー部20は、管2の表面に沿って円弧状に延びる円弧部21と、円弧部21の両側から管2の径方向外方に延びる一対のフランジ部22a,22bと、フランジ部22a,22bの各先端から延びる一対の屈曲部24a,24bと、を有する。
【0025】
円弧部21は、カバー100の円弧部110の一部を構成する。円弧部21は、管2の中心軸線Aに同心となる円弧方向において、管2の半面2a(又は半面2b)を覆う範囲で延在している。
【0026】
フランジ部22a,22bは、カバー100のフランジ部120の一部を構成する。フランジ部22aは、曲管部の曲率中心側に位置する円弧部21の端部から当該曲率中心側に向かって延びている。フランジ部22bは、曲管部の曲率中心の反対側に位置する円弧部21の端部から当該曲率中心の反対側に向かって延びている。フランジ部22a,22bには、それぞれフランジ部22a,22bを貫通する複数の貫通孔23が、フランジ部12a,12bの貫通孔13と対応する位置に形成されている。
【0027】
屈曲部24a,24bは、カバー100のフランジ部120の一部を構成する。屈曲部24aは、フランジ部22aに対して略直角に屈曲しており、フランジ部22aの先端から内カバー部10のフランジ部12a側に向けて延びている。そして、屈曲部24aの先端は、フランジ部12aに接合されている。屈曲部24bは、フランジ部22bに対して略直角に屈曲しており、フランジ部22bの先端から内カバー部10のフランジ部12b側に向けて延びている。そして、屈曲部24bの先端は、フランジ部12bに接合されている。
【0028】
内カバー部10及び外カバー部20は、管2の中心軸線A方向に沿って同一断面に形成されている。このため、内カバー部10及び外カバー部20の管2の中心軸線A方向における両端部には、一対の開口が形成される。当該開口は、内カバー部10の円弧部11及びフランジ部12a,12bと外カバー部20の円弧部21及びフランジ部22a,22bとの間に形成され、管2の径方向における当該開口の幅は、屈曲部24a,24bの長さと同じである。
【0029】
図2及び
図3に示されるように、蓋部30は、内カバー部10及び外カバー部20の管2の中心軸線A方向における端部に形成された開口を塞ぐ蓋本体31と、内カバー部10及び外カバー部20を真空空間V側から支持する支持部32と、を有する。蓋本体31は、例えばステンレス鋼の平板状の部材であり、内カバー部10及び外カバー部20の管2の中心軸線A方向における端面に当接されている。支持部32は、例えばステンレス鋼の平板状の部材であり、蓋本体31の内カバー部10及び外カバー部20側の面に接合されることで、蓋本体31の内カバー部10及び外カバー部20側の面から真空空間V側に突出している。支持部32は、例えばスポット溶接によって蓋本体31に接合されている。
【0030】
支持部32は、内カバー部10の円弧部11に当接される当接面33と、内カバー部10のフランジ部12aに当接される当接面34aと、内カバー部10のフランジ部12bに当接される当接面34bと、外カバー部20の円弧部21に当接される当接面35と、外カバー部20のフランジ部22aに当接される当接面36aと、外カバー部20のフランジ部22bに当接される当接面36bと、外カバー部20の屈曲部24aに当接される当接面37aと、外カバー部20の屈曲部24bに当接される当接面37bと、を有する。当接面33、当接面34a、当接面34b、当接面35、当接面36a、当接面36b、当接面37a、当接面37bは、それぞれ、円弧部11、フランジ部12a、フランジ部12b、円弧部21、フランジ部22a、フランジ部22b、屈曲部24a、屈曲部24bの内周面に対応した形状に形成されている。
【0031】
図1及び
図4に示されるように、フランジ部120は、内カバー部10及び外カバー部20に接合される筒部40を有する。筒部40は、接続部200の締結力を受け止める。筒部40は、フランジ部120に挿入されて内周面に貫通孔130を形成する円筒状の胴部41と、胴部41の一方端部から胴部41の径方向外方に延びるフランジ部42と、を有する。
【0032】
胴部41は、フランジ部42とは反対側の端面において、フランジ部12a,12bの外カバー部20側の面に接合されている。また、胴部41は、フランジ部42側の端部の外周面において、フランジ部22a,22bに形成された貫通孔23の内周面に接合されている。フランジ部42は、胴部41側の面において、フランジ部22a,22bの内カバー部10とは反対側の面に接合されている。胴部41の材料は、例えばステンレス鋼製である。胴部41の肉厚は、例えば2mmである。フランジ部42の材料は、例えばステンレス鋼製である。フランジ部42の肉厚は、例えば2mmである。筒部40(胴部41及びフランジ部42)の材料及び肉厚は、この例に限定されず、真空空間Vを保持する強度を確保可能、且つ、接続部200(後述のボルト210及びナット220)による締結時に座屈しない強度を確保可能な材料及び肉厚であればよい。
【0033】
接続部200は、筒部40(貫通孔130)に挿入されるボルト210と、ボルト210にねじ込まれるナット220と、により構成される。そして、接続部200は、隣接するカバー100のフランジ部120を重ね合せ、このフランジ部120に設けられた筒部40に挿入したボルト210にナット220をねじ込むことで、隣接するカバー100をフランジ部120において締結する。
【0034】
以上のように構成されたカバー100は、例えば、次にように作製することができる。
【0035】
まず、内カバー部10、外カバー部20、蓋部30,30及び筒部40を用意する。次に、内カバー部10、外カバー部20、蓋部30,30及び筒部40の各接合予定箇所にろう材を取り付け、真空炉内で、内カバー部10、外カバー部20、蓋部30,30及び筒部40を仮組み立てする。そして、真空炉を真空加熱することで、内カバー部10、外カバー部20、蓋部30,30及び筒部40をろう付けする。これにより、円弧部110及びフランジ部120,120に、内カバー部10と外カバー部20とに挟まれる真空空間Vが形成されたカバー100が得られる。
【0036】
以上、本実施形態に係る管の断熱構造1では、管2の周方向に分割された複数のカバー100(第1カバー100a及び第2カバー100b)の内部に真空空間Vが形成されており、この複数のカバー100が接続部200により接続されている。これにより、真空空間Vからなる断熱層が管2の全面を覆うこととなるため、管2の高断熱化が可能となる。
【0037】
また、内カバー部10及び外カバー部20の両端部に接合される蓋部30,30が、内カバー部10及び外カバー部20を真空空間V側から支持するため、真空空間Vの反対側から内カバー部10又は外カバー部20に作用する力を蓋部30,30が受け止める。これにより、内カバー部10及び外カバー部20が形成する真空空間Vを好適に保持することができる。
【0038】
また、カバー100がフランジ部120,120を備えるため、このフランジ部120,120を利用することで、各カバー100を容易に接続することができる。
【0039】
また、フランジ部120,120においても真空空間Vからなる断熱層が管2を覆うこととなるため、管2の一層の高断熱化が可能となる。
【0040】
また、接続部200は、内部に真空空間Vが形成されたフランジ部120,120において隣接するカバー100を締結するが、接続部200の締結力を筒部40が受け止めるため、接続部200の締結力に対するフランジ部120,120の強度が向上する。これにより、フランジ部120,120に形成された真空空間Vを好適に保持することができる。
【0041】
以上、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0042】
例えば、上記実施形態では、複数のカバー100は、一対の第1カバー100a及び第2カバー100bで構成されるものとして説明したが、管2の周方向に分割されていればよく、3以上のカバーで構成されていてもよい。この場合、各カバー100の周長は、カバー100の個数に応じて適宜設定することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、第1カバー100aが覆う管2の半面2a及び第2カバー100bが覆う管2の残りの半面2bは、管2の側面を周方向に2等分した半円弧面であり、管2の半面2a及び半面2bは同一の周長を有していたが、管2の半面2a及び半面2bは、種々の周長とすることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、貫通孔130に挿入される筒部40を備えていたが、
図5に示す管の断熱構造1Aのカバー100(第1カバー100aA及び第2カバー100bA)のように、筒部40を備えていなくてもよい。
図5に示す管の断熱構造1Aでは、外カバー部20Aのフランジ部22aA、22bBは、筒部40の代わりに、フランジ部12a,12b側に向けて円筒状に延びる円筒部25aA,25bAを有している。
【0045】
円筒部25aA及び円筒部25bAは、外カバー部20Aの一部である。円筒部25aAは、フランジ部22aAからフランジ部12aに向けて円筒状に延びている。円筒部25aAの先端部の外周面は、フランジ部12aに形成された貫通孔13の内周面に接合されている。円筒部25bAは、フランジ部22bAからフランジ部12bに向けて円筒状に延びている。円筒部25bAの先端部の外周面は、フランジ部12bに形成された貫通孔13の内周面に接合されている。円筒部25aA及び円筒部25bAの内周面は、フランジ部120を貫通してボルト210が挿入される貫通孔130となる。
【0046】
そして、接続部200は、隣接するカバー100(第1カバー100aA及び第2カバー100bA)のフランジ部120を重ね合せ、このフランジ部120に設けられた円筒部25aA及び円筒部25bAに挿入したボルト210にナット220をねじ込むことで、隣接するカバー100をフランジ部120において締結する。
【0047】
以上のように構成された管の断熱構造1Aにおいても、管の断熱構造1と同様に、カバー100の円弧部110及びフランジ部120において真空空間Vが形成される。このため、複数のカバー100を容易に締結しつつ、管2の一層の高断熱化が可能となる。
【0048】
また、上記実施形態では、カバー100は、フランジ部120において真空空間Vが形成されていたが、
図6に示す管の断熱構造1Bのカバー100(第1カバー100aB及び第2カバー100bB)ように、フランジ部120において真空空間Vが形成されていなくてもよい。
図6に示す管の断熱構造1Bでは、外カバー部20は、フランジ部22a,22b及び屈曲部24a,24bを有しておらず、円弧部21の両端が内カバー部10のフランジ部12a,12bに接合されている。このため、内カバー部10の貫通孔13が、フランジ部120を貫通する貫通孔130となる。
【0049】
以上のように構成された管の断熱構造1Bにおいても、カバー100の円弧部110において真空空間Vが形成される。このため、複数のカバー100を容易に締結しつつ、管2の高断熱化が可能となる。
【0050】
また、上記実施形態では、カバー100は、フランジ部120を有していたが、フランジ部120を有しなくてもよい。このような構成であっても、複数のカバー100により管2を覆うことができるため、管2の高断熱化が可能となる。
【0051】
また、上記実施形態では、管2の断熱構造1として、略直角に屈曲する曲管部を断熱するものを例示したが、直線状に延びる直管部を断熱するものであってもよい。