特許第6677528号(P6677528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677528
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】鉄道車両構体
(51)【国際特許分類】
   B61D 19/02 20060101AFI20200330BHJP
   B61D 19/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B61D19/02 B
   B61D19/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-33177(P2016-33177)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-149255(P2017-149255A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴洋
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−340256(JP,A)
【文献】 特開平06−305420(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208516(WO,A1)
【文献】 米国特許第05467558(US,A)
【文献】 中国実用新案第204605808(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/02
B61D 19/00
B62D 31/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口にプラグドア構造体が設けられた側構体を有する鉄道車両構体であって、
前記プラグドア構造体は、
前記乗降口の中央部に対して対称に開閉し、前記側構体の外面と略面一になった状態で前記乗降口を閉状態とする一対の戸体と、
前記一対の戸体のそれぞれにおける戸先端部に上下方向に設けられ、前記乗降口が閉状態である場合に互いに突き当たる一対の戸先ゴムと、
前記一対の戸体のそれぞれの車両内側の面に接触するように設けられた板状のひれゴムと、を備え、
前記戸先ゴムは、内側部分と、前記内側部分よりも車両外側に位置する外側部分と、を有し、
前記内側部分と前記外側部分との間には、前記戸体の上端側において前記内側部分が前記外側部分よりも上側まで延在することにより、車両外側を向く段差面が形成され、
前記ひれゴムは、前記段差面と対向して前記車両外側から見て前記段差面を遮蔽する遮蔽部を有している、鉄道車両構体。
【請求項2】
前記遮蔽部の下端は、前記戸先ゴムの前記外側部分の上端に接触している、請求項1記載の鉄道車両構体。
【請求項3】
前記遮蔽部の内面は、前記段差面に接触している、請求項1又は2記載の鉄道車両構体。
【請求項4】
前記側構体には、前記ひれゴムの内面に接触する戸当りゴムが更に設けられ、
前記戸当りゴムは、前記乗降口が前記閉状態である場合に前記ひれゴムの少なくとも前記遮蔽部に接触する接触部を有し、
前記接触部は、前記側構体に固定された支持部材によって支持されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項5】
前記接触部の下端は、前記戸先ゴムの前記内側部分の上端に接触する、請求項4記載の鉄道車両構体。
【請求項6】
前記側構体には、前記乗降口の前記中央部の位置に、前記戸先ゴムの上方で上下方向に延在する柱部が更に設けられ、
前記遮蔽部は、前記乗降口が前記閉状態である場合に前記柱部に突き当たる、請求項1〜5のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【請求項7】
前記戸先ゴムの一方の前記内側部分は、前記戸先ゴムの他方の前記内側部分に向かって突出する突部を有し、
前記戸先ゴムの他方の前記内側部分は、前記突部が嵌合する凹部を有している、請求項1〜6のいずれか一項記載の鉄道車両構体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両構体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両構体の乗降口を開閉するためのドア機構として、プラグドア構造体が採用される場合がある。特許文献1,2に記載のプラグドア装置では、一対の戸体が乗降口の中央部に対して対称に開閉し、側構体の外面と略面一になった状態で乗降口が閉状態となる。このようなプラグドア装置を適用した鉄道車両構体によれば、戸体を収容するための戸袋を省略できるほか、ドアと構体とがフラットになることにより車両外観を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2594529号公報
【特許文献2】特開平6−305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなプラグドア構造体が設けられた鉄道車両構体では、乗降口が閉状態である場合に、雨水等が車両構体内に浸入することを防止し、車両構体内の水密性を確保することが求められる。そのため、例えば、一対の戸体のそれぞれにおける戸先端部に上下方向に一対の戸先ゴムを設け、これらの戸先ゴムを互いに突き当てることによって戸体間の水密性を確保することが考えられる。しかしながら、プラグドア構造体を採用する場合、一般的な引き戸を用いる場合と異なり、側構体の形状に対応させるために戸体の上端側の形状を一様に形成できないことがあり、戸先ゴムを戸体の上端まで至るように設けることが困難となる場合がある。戸先ゴムが戸体の上端まで至っておらず、戸先ゴムの上方に車両外側から見て隙間が形成されてしまうと、鉄道車両構体の水密性が不十分となるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、プラグドア構造体を採用した場合であっても十分な水密性を確保できる鉄道車両構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄道車両構体は、乗降口にプラグドア構造体が設けられた側構体を有する鉄道車両構体であって、プラグドア構造体は、乗降口の中央部に対して対称に開閉し、側構体の外面と略面一になった状態で乗降口を閉状態とする一対の戸体と、一対の戸体のそれぞれにおける戸先端部に上下方向に設けられ、乗降口が閉状態である場合に互いに突き当たる一対の戸先ゴムと、一対の戸体のそれぞれの内面側に設けられた板状のひれゴムと、を備え、戸先ゴムは、内側部分と、内側部分よりも車両外側に位置する外側部分と、を有し、内側部分と外側部分との間には、戸体の上端側において内側部分が外側部分よりも上側まで延在することにより、車両外側を向く段差面が形成され、ひれゴムは、段差面と対向して車両外側から見て段差面を遮蔽する遮蔽部を有している。
【0007】
この鉄道車両構体では、プラグドア構造体を構成する一対の戸体の戸先端部に設けられた戸先ゴムに内側部分と外側部分とが設けられ、戸体の上端側において内側部分が外側部分よりも上側まで延在することで、車両外側を向く段差面が形成されている。また、この段差面には、戸体の内面側に設けられた板状のひれゴムの遮蔽部が対向しており、遮蔽部によって車両外側から見て段差面が遮蔽されている。このような段差面及び遮蔽部の協働により、閉状態において戸体間に車両外側から見て隙間が形成されることが回避されるので、プラグドア構造体を採用した場合であっても十分な水密性を確保できる。
【0008】
また、本発明の鉄道車両構体では、遮蔽部の下端は、戸先ゴムの外側部分の上端に接触していてもよい。これによれば、戸体間に車両外側から見て隙間が形成されることが確実に回避されるので、水密性を向上できる。
【0009】
また、本発明の鉄道車両構体では、遮蔽部の内面は、段差面に接触していてもよい。これによれば、戸体間に車両外側から見て隙間が形成されることがより確実に回避されるので、水密性を更に向上できる。
【0010】
また、本発明の鉄道車両構体では、側構体には、ひれゴムの内面に接触する戸当りゴムが更に設けられ、戸当りゴムは、乗降口が閉状態である場合にひれゴムの少なくとも遮蔽部に接触する接触部を有し、接触部は、側構体に固定された支持部材によって支持されていてもよい。これによれば、接触部及び支持部材によって遮蔽部が確実に支持され、遮蔽部の変位や変形等が抑制されるので、水密性を更に向上できる。
【0011】
また、本発明の鉄道車両構体では、接触部の下端は、戸先ゴムの内側部分の上端に接触してもよい。これによれば、接触部及び支持部材によって遮蔽部がより確実に支持されるので、水密性を更に向上できる。
【0012】
また、本発明の鉄道車両構体は、側構体には、乗降口の中央部の位置に、戸先ゴムの上方で上下方向に延在する柱部が更に設けられ、遮蔽部は、乗降口が閉状態である場合に柱部に突き当たってもよい。これによれば、閉状態において遮蔽部が柱部に突き当たることにより、戸体間に車両外側から見て隙間が形成されることが確実に回避されるので、水密性を更に向上できる。
【0013】
また、本発明の鉄道車両構体では、戸先ゴムの一方の内側部分は、戸先ゴムの他方の内側部分に向かって突出する突部を有し、戸先ゴムの他方の内側部分は、突部が嵌合する凹部を有していてもよい。これによれば、突部と凹部との嵌合により閉状態における戸先ゴム間の水密性が高められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラグドア構造体を採用した場合であっても十分な水密性を確保できる鉄道車両構体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄道車両構体を車両外側から見た図である。
図2図1の鉄道車両構体を車両外側から見た図である。
図3】戸体の開閉動作を説明するための図である。
図4図2の一部拡大図である。
図5図1の鉄道車両構体の一部を車両外側から見た斜視図である。
図6図1の鉄道車両構体の一部を車両内側から見た斜視図である。
図7図6のA−A線に沿っての戸先ゴムの断面図である。
図8図6のA−A線に沿っての戸先ゴムの断面図である。
図9】各部の位置関係を示す図であり、図6のB−B線に沿っての断面図である。
図10】各部の位置関係を示す図であり、図6のB−B線に沿っての断面図である。
図11】変形例に係る鉄道車両構体の一部を車両外側から見た斜視図である。
図12】変形例における各部の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0017】
図1及び図2に示される鉄道車両構体1は、鉄道車両を構成するための構体である。鉄道車両構体1は、車両の側部を構成する側構体2、床部を構体する床構体、及び屋根部を構成する屋根構体等を備えている。鉄道車両構体1は、これらの各構体が互いに接合されることにより、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。側構体2には、乗客の乗り降りのための乗降口3(図2)が形成されている。乗降口3には、プラグドア構造体10が設けられている。
【0018】
プラグドア構造体10は、矩形板状の一対の戸体20を備えている。一対の戸体20は、乗降口3の中央部C(図2)に対して対称に開閉するドアである。以下、図3を参照しつつ、一対の戸体20の開閉動作を説明する。なお、以下では、一方の戸体20の開閉動作を説明し、他方の戸体20については同様であるので説明を省略する。
【0019】
図3に示されるように、戸体20には、戸先側(中央部C側)の下端に戸先側案内具21が設けられ、戸尻側(中央部Cの反対側)の下端に戸尻側案内具22が設けられている。鉄道車両構体1には、戸先側案内具21のピン21aが配置される戸先側溝部4、及び戸尻側案内具22のピン22aが配置される戸尻側溝部5が設けられている。戸先側溝部4は、戸尻側に近づくほど戸体20に近づくように戸体20に対して斜線状に延びている。戸尻側溝部5は、戸体20に向かって凸となるように湾曲した湾曲部5aと、湾曲部5aの戸尻側に連続して設けられ、戸体20に沿って直線状に延びる直線部5bと、を有している。これらの戸先側案内具21、戸尻側案内具22、戸先側溝部4、及び戸尻側溝部5は、例えば車両の床面よりも下側に配置されている。
【0020】
戸体20は、図3に実線で示されるように、戸体20の外面20aが側構体2の外面2aと略面一になった状態で乗降口3を閉状態(図1)とする。このとき、戸先側案内具21のピン21aは、戸先側溝部4の戸先側の端部に位置し、戸尻側案内具22のピン22aは、戸尻側溝部5の戸先側の端部に位置している。また、戸体20は、図3に二点鎖線で示されるように、戸体20の少なくとも一部と側構体2とが互いに対向する状態で乗降口3を開状態(図2)とする。このとき、戸先側案内具21のピン21aは、戸先側溝部4の戸尻側の端部に位置し、戸尻側案内具22のピン22aは、戸尻側溝部5の戸尻側の端部に位置している。なお、戸体20の外面20aと側構体2の外面2aとが略面一である状態には、これらが互いに完全に同一平面上にある場合だけでなく、外面20aと外面2aとが車両の幅方向に僅かにずれている場合が含まれる。
【0021】
乗降口3が開状態から閉状態となる場合には、ピン21aが戸先側溝部4内を戸尻側から戸先側に移動すると共に、ピン22aが戸尻側溝部5内を戸尻側から戸先側に移動することで、戸体20が、開状態における位置から閉状態における位置まで移動する。この際、本実施形態では、戸先側溝部4及び戸尻側溝部5が上述した形状に形成されているので、戸体20の戸先側は徐々に車両内側に移動するのに対し、戸体20の戸尻側は閉状態における位置に近づいた後に一気に車両内側に引き込まれる。乗降口3が閉状態から開状態となる場合には、これとは逆の動作により、戸体20は閉状態における位置から開状態における位置まで移動する。
【0022】
また、詳細な説明は省略するが、戸体20には、上端側にも戸先側案内具及び戸尻側案内具が設けられ、鉄道車両構体1には、それらに対応する戸先側溝部及び戸尻側溝部が設けられている。これらの各案内具及び各溝部は、例えば乗降口3よりも上側に配置されている。また、鉄道車両構体1には、例えば乗降口3よりも上側の位置に、駆動源や、駆動源からの駆動力を戸体20へ伝達するための機構等を備えた駆動装置が設けられている。また、例えば側構体2における乗降口3の左右両側には、戸体20の開閉動作を円滑に行わせるための一対のスタビライザーが設けられている。
【0023】
ここで、図4図6を参照しつつ、側構体2における乗降口3の上縁に沿う部分、及び戸体20の上端部について説明する。図6に特に示されるように、側構体2における乗降口3の上縁に沿う位置には、側構体2が車両内側に向かって凹んでいることにより、戸体配置部6が形成されている。戸体配置部6には、乗降口3が閉状態である場合に戸体20の上端部が配置される。戸体20の上端部は、車両内側に配置された内側壁部23を含んで構成されており、戸体20の上端部には、内側壁部23が上側に向かうほど車両外側に向かうように傾斜していることにより、逃げ部24が形成されている。このように、戸体20の上端部は、側構体2における乗降口3の上縁に沿う部分の形状に対応した形状をなしている。
【0024】
続いて、図4図10を参照しつつ、プラグドア構造体10について更に説明する。プラグドア構造体10は、一対の戸先ゴム30A,30Bと、一対のひれゴム40と、を更に備えている。
【0025】
一対の戸先ゴム30A,30Bは、例えばCR(クロロプレン)ゴム等のゴムにより形成されている。一対の戸先ゴム30A,30Bは、一対の戸体20のそれぞれにおける戸先端部に上下方向に設けられ、乗降口3が閉状態である場合に互いに突き当たる。戸先ゴム30A,30Bは、凹部31A,31B(図7,8)を有し、凹部31A,31Bに戸体20の戸先端部が配置された状態で戸体20に固定されている。戸先ゴム30A,30Bの上端は、戸体20の逃げ部24よりも下側に位置している。すなわち、戸先ゴム30A,30Bの上端は、戸体20の上端よりも下側に位置している。戸先ゴム30A,30Bの下端は、例えば車両の床面に接触している。
【0026】
戸先ゴム30Aは、内側部分32Aと、内側部分32Aに連続して設けられ、内側部分32Aよりも車両外側に位置する外側部分33Aと、を有している。内側部分32Aと外側部分33Aとの間には、戸体20の上端側において内側部分32Aが外側部分33Aよりも上側まで延在することにより、車両外側を向く段差面34A(図7,8)が形成されている。この例では、段差面34Aは、戸体20の外面20a(側構体2の外面2a)と平行な平面状をなしている。
【0027】
戸先ゴム30Bは、戸先ゴム30Aと同様に、内側部分32Bと、内側部分32Bに連続して設けられ、内側部分32Bよりも車両外側に位置する外側部分33Bと、を有している。内側部分32Bと外側部分33Bとの間には、戸体20の上端側において内側部分32Bが外側部分33Bよりも上側まで延在することにより、車両外側を向く段差面34B(図7,8)が形成されている。この例では、段差面34Bは、戸体20の外面20aと平行な平面状をなしている。
【0028】
図7及び図8に示されるように、戸先ゴム30Aの内側部分32Aは、戸先ゴム30Bの内側部分32Bに向かって突出する突部35を有している。突部35の横断面(水平断面)は、突出方向の先端側に近づくほど幅狭となると共に、先端面が内側部分32Bに向かって凸となるように湾曲した略台形状をなしている。突部35の先端側には、突部35の内部を上下に延在する孔35aが形成されている。また、戸先ゴム30Aの外側部分33Aは、戸先ゴム30Bの外側部分33Bに向かって突出するように設けられた突当部36Aを有している。突当部36Aの先端面は、外側部分33B側に向かって凸となるように湾曲している。外側部分33Aには、外側部分33Aの内部を上下に延在する孔37Aが形成されている。孔35a及び孔37Aは、突部35又は突当部36Aの変形を容易にするために形成されている。
【0029】
戸先ゴム30Bの内側部分32Bは、突部35が嵌合する凹部38を有している。凹部38は、突部35に対応する形状をなしている。また、戸先ゴム30Bの外側部分33Bは、戸先ゴム30Aの外側部分33Bの突当部36Aと対称形状をなす突当部36Bを有している。外側部分33Bには、外側部分33Bの内部を上下に延在する孔37Bが形成されている。孔37Bは、突当部36Bの変形を容易にするために形成されている。
【0030】
図8に示されるように、乗降口3が閉状態となった場合、戸先ゴム30Aの内側部分32Aと戸先ゴム30Bの内側部分32Bとが互いに突き当たると共に、戸先ゴム30Aの外側部分33Aと戸先ゴム30Bの外側部分33Bとが互いに突き当たる。このとき、突部35と凹部38とが互いに嵌合すると共に、突当部36Aと突当部36Bとが互いに突き当たって密着する。これにより、戸先ゴム30A,30Bが延在している位置において一対の戸体20間が水密に閉塞される。
【0031】
一対のひれゴム40は、例えば、戸先ゴム30A,30Bと同一のゴムにより板状に形成されている。一対のひれゴム40は、一対の戸体20のそれぞれの内面側に設けられている。図4では、ひれゴム40の外縁の一部が破線で示されている。ひれゴム40は、例えばボルト等の固定部材により戸体20に固定されている。一対のひれゴム40のそれぞれは、戸体20の上端部に沿って延在する帯状の本体部41と、本体部41の戸先側の端部に連続して設けられ、戸体20の戸先端部に沿って上下方向に延在する矩形状の遮蔽部42と、を有している。本体部41の上側の一部は、戸体20から上側に突出している。本体部41は、乗降口3が閉状態である場合に、戸体配置部6に配置される。
【0032】
遮蔽部42の戸先側の一部は、戸体20から戸先側に突出している。遮蔽部42の上端は、戸体配置部6に位置している。各遮蔽部42の下端は、当該遮蔽部42に対応する戸先ゴム30A又は30Bの段差面34A又は34Bと対向している。より具体的には、各遮蔽部42の下端は、当該遮蔽部42に対応する戸先ゴム30A又は30Bの外側部分33A又は33Bの上端に接触している。各遮蔽部42の内面は、当該遮蔽部42に対応する戸先ゴム30A又は30Bの段差面34A又は34Bに接触している(図9)。
【0033】
また、側構体2には、戸当りゴム50が更に設けられている。戸当りゴム50は、例えば、戸先ゴム30A,30B及びひれゴム40と同一のゴムにより形成されている。戸当りゴム50は、本体部51と、一対の接触部52と、を有している。本体部51は、戸体配置部6における側構体2上に、乗降口3の上縁に沿って設けられている。本体部51の横断面(側構体2と直交する断面)は、上側に開口した略U字状をなしている。本体部51は、例えばボルト等の固定部材により側構体2に固定されている。本体部51は、乗降口3が閉状態である場合に、ひれゴム40の本体部41及び遮蔽部42の一部に接触する。これにより、戸体配置部6において戸体20の上端部と側構体2との間が水密に閉塞される。なお、戸体20が開状態における位置と閉状態における位置との間で移動する際にも、本体部51とひれゴム40の本体部41及び/又は遮蔽部42の一部とが接触してもよい。
【0034】
一対の接触部52は、乗降口3の中央部Cの左右両側において、本体部51から下側に垂下して設けられている。本体部51の横断面(水平断面)は、戸尻側に開口した略U字状をなしている。接触部52は、側構体2に固定された金属製の支持部材60によって支持されている。支持部材60の側構体2と直交する断面は、略L字状をなしており、支持部材60は、互いに交差する第1部分61と第2部分62とを有している。第1部分61は、例えばボルト等の固定部材により側構体2の床構体側の面に固定されている。第2部分62には、例えばボルト等の固定部材により接触部52が固定されている。接触部52は、乗降口3が閉状態である場合に、ひれゴム40の遮蔽部42の内面に接触する。すなわち、接触部52は、乗降口3が閉状態である場合の遮蔽部42に対応する位置に配置されている。各接触部52の下端は、乗降口3が閉状態である場合に、対応する戸先ゴム30A又は30Bの内側部分32A又は32Bの上端に接触する。
【0035】
図9及び図10に示されるように、戸体20が開状態における位置から閉状態における位置に移動すると、一方の遮蔽部42と他方の遮蔽部42とが互いに近づく。そして、乗降口3が閉状態となった場合、一方の遮蔽部42と他方の遮蔽部42とが中央部Cにおいて互いに重なり合うことによって、戸体20間における戸先ゴム30A,30Bの上方が水密に閉塞される。
【0036】
以上説明したように、鉄道車両構体1では、プラグドア構造体10を構成する一対の戸体20の戸先端部に設けられた戸先ゴム30A,30Bに内側部分32A,32Bと外側部分33A,33Bとが設けられ、戸体20の上端側において内側部分32A,32Bが外側部分33A,33Bよりも上側まで延在することで、車両外側を向く段差面34A,34Bが形成されている。また、この段差面34A,34Bには、戸体20の内面側に設けられた板状のひれゴムの遮蔽部42が対向しており、遮蔽部42によって車両外側から見て段差面34A,34Bが遮蔽されている。このような段差面34A,34B及び遮蔽部42の協働により、閉状態において戸体20間に車両外側から見て隙間が形成されることが回避されるので、プラグドア構造体10を採用した場合であっても十分な水密性を確保できる。
【0037】
また、鉄道車両構体1では、遮蔽部42の下端が、戸先ゴム30A,30Bの外側部分33A,33Bの上端に接触している。これにより、戸体20間に車両外側から見て隙間が形成されることが確実に回避されるので、水密性を向上できる。
【0038】
また、鉄道車両構体1では、遮蔽部42の内面が、段差面34A,34Bに接触している。これにより、戸体20間に車両外側から見て隙間が形成されることがより確実に回避されるので、水密性を更に向上できる。
【0039】
また、鉄道車両構体1では、側構体2には、ひれゴム40の内面に接触する戸当りゴム50が更に設けられ、戸当りゴム50は、乗降口3が閉状態である場合にひれゴム40の遮蔽部42に接触する接触部52を有し、接触部52は、側構体2に固定された支持部材60によって支持されている。これにより、接触部52及び支持部材60によって遮蔽部42が確実に支持され、遮蔽部42の変位や変形等が抑制されるので、水密性を更に向上できる。また、遮蔽部42に加えて接触部52によっても閉状態において戸体20間が閉塞される(二重構造となっている)ので、水密性を更に向上できる。
【0040】
また、鉄道車両構体1では、接触部52の下端が、戸先ゴム30A,30Bの内側部分32A,32Bの上端に接触している。これにより、接触部52及び支持部材60によって遮蔽部42がより確実に支持されるので、水密性を更に向上できる。
【0041】
また、鉄道車両構体1では、戸先ゴム30Aの内側部分32Aは、戸先ゴム30Bの内側部分32Bに向かって突出する突部35を有し、内側部分32Bは、突部35が嵌合する凹部38を有している。これにより、突部35と凹部38との嵌合により閉状態における戸先ゴム30A,30B間の水密性が高められる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、図11及び図12に示される変形例のように構成されてもよい。変形例では、側構体2には、乗降口3の中央部Cの位置に、戸先ゴム30A,30Bの上方で上下方向に延在する柱部70が更に設けられている。遮蔽部42は、乗降口3が閉状態である場合に柱部70に突き当たる。これにより、閉状態において遮蔽部42が柱部70に突き当たることにより、戸体20間に車両外側から見て隙間が形成されることがより確実に回避されるので、水密性を更に向上できる。なお、変形例においても、上記実施形態と同様に、支持部材60により支持され、乗降口3が閉状態である場合にひれゴム40の遮蔽部42に接触する一対の接触部52が設けられていてもよい。
【0043】
また、段差面34A,34Bの形状は、上記形状に限られず、戸体20の外面20aと交差する平面状をなしてもよいし、曲面状をなしてもよい。段差面34A,34Bは、複数の面により構成されてもよい。また、戸先ゴム30Aの内側部分32Aに突当部36Aが設けられ、外側部分33Aに突部35が設けられ、戸先ゴム30Bの内側部分32Bに突当部36Bが設けられ、外側部分33Bに凹部38が設けられてもよい。突部35及び凹部38は設けられなくてもよく、突当部36A,36Bは設けられなくてもよい。
【0044】
また、各遮蔽部42は、当該遮蔽部42に対応する戸先ゴム30A又は30Bの段差面34A又は34Bと対向していればよく、各遮蔽部42の下端は、当該遮蔽部42に対応する戸先ゴム30A又は30Bの外側部分33A又は33Bの上端に接触していなくてもよい。また、各遮蔽部42の内面は、当該遮蔽部42に対応する戸先ゴム30A又は30Bの段差面34A又は34Bに接触していなくてもよい。この場合でも、戸体20の上端側に車両外側を向く段差面34A,34Bが形成されているので、水が戸先ゴム30A,30B上を伝って車両構体内に浸入することを抑制できる。
【0045】
また、戸先ゴム30A,30B、ひれゴム40、及び戸当りゴム50の構成材料は、互いに異なってもよい。また、ひれゴム40の本体部41と遮蔽部42とは別体であってもよく、戸当りゴム50の本体部51と接触部52とは一体であってもよい。また、各接触部52の下端は、乗降口3が閉状態である場合に、対応する戸先ゴム30A又は30Bの内側部分32A又は32Bの上端に接触しなくてもよい。接触部52は、ひれゴム40の遮蔽部42だけでなく本体部41にも接触してもよい。また、接触部52及び支持部材60は必ずしも設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…鉄道車両構体、2…側構体、2a…外面、3…乗降口、10…プラグドア構造体、20…戸体、30A,30B…戸先ゴム、32A,32B…内側部分、33A,33B…外側部分、34A,34B…段差面、35…突部、38…凹部、40…ひれゴム、42…遮蔽部、50…戸当りゴム、52…接触部、60…支持部材、70…柱部、C…中央部。
図1
図2
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図10
図11
図12