(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維質基材と、前記繊維質基材の表面側に設けられたポリウレタン樹脂層と、前記繊維質基材の裏面側にポリウレタン樹脂からなる接着剤層を介して貼り付けられた織物と、を備え、前記ポリウレタン樹脂層の表面に複数の開口部を有する複合表皮材であって、
前記複数の開口部は、前記ポリウレタン樹脂層の表面から前記繊維質基材を貫通する孔であって、前記ポリウレタン樹脂層の表面における開口率が1〜15%であり、
前記織物は、経糸密度が25〜50本/25.4mmであり、かつ緯糸密度が30〜50本/25.4mmであり、
前記接着剤層の単位面積当たりの質量が15〜100g/m2であり、
前記複合表皮材の通気度が5〜100cm3/cm2・sであり、
前記複合表皮材の経方向及び緯方向の引裂き強度が各々20〜150Nであり、
前記複合表皮材の経方向及び緯方向の引張強度が各々50N/cm以上であり、
前記接着剤層には前記開口部に対応した位置に当該開口部に連通した貫通孔が形成され、該貫通孔が前記織物により覆われた
ことを特徴とする車両用複合表皮材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る車両用複合表皮材は、繊維質基材と、その表面側に設けられた開口部を有するポリウレタン樹脂層と、繊維質基材の裏面側に接着剤層を介して貼り付けられた織物と、を備えるものであり、前記繊維質基材と前記ポリウレタン樹脂層を含む合成皮革と、前記織物とが、複合一体化された表皮材である。
【0014】
図1は、一実施形態に係る車両用複合表皮材1の断面構造を模式的に示したものである。該複合表皮材1において、繊維質基材2の表面(オモテ面)側には、ポリウレタン樹脂層3が設けられており、繊維質基材2とポリウレタン樹脂層3とで合成皮革4が形成されている。この例では、ポリウレタン樹脂層3は、表皮樹脂層31と接着樹脂層32とからなり、繊維質基材2上に接着樹脂層32を介して表皮樹脂層31が積層されている。
【0015】
ポリウレタン樹脂層3の表面(即ち、合成皮革4の表面)には、通気性を向上するための複数の開口部5が設けられている。開口部5は、ポリウレタン樹脂層3の表面から繊維質基材2を貫通して設けられており、すなわち、ポリウレタン樹脂層3と繊維質基材2を貫通する孔として設けられている。なお、図示しないが、ポリウレタン樹脂層3の表面には、皮革様のシボ模様などの凹凸模様が常法に従い設けられてもよい。
【0016】
繊維質基材2の裏面(ウラ面)(即ち、合成皮革4の裏面)には、接着剤層6を介して織物7が積層されている。これにより、合成皮革4の開口部5が、その裏面側から織物7により覆われている。
【0017】
なお、本明細書において、合成皮革及び複合表皮材の表面とは、合成皮革及び複合表皮材の表裏両面のうち、使用時(即ち、車両への装着状態)に使用者(乗員)から見える方の面をいい、裏面とは、表面とは反対側の面をいう。また、繊維質基材などの各層の表面とは、当該層の表裏両面のうち、合成皮革及び複合表皮材の表面と同じ方向に向いた面をいい、各層の裏面とは、当該層の表面とは反対側の面をいう。
【0018】
本実施形態における繊維質基材としては、特に限定されるものではなく、織物、編物、不織布等、用途に合わせて適宜選択すればよい。
【0019】
繊維質基材を構成する繊維の素材は、特に限定されることなく従来公知の天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維等を用いることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。車両内装材用途に適した強度を有する点から、繊維の素材は合成繊維が好ましく、さらにはポリエステルを用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係る合成皮革は、上記繊維質基材上にポリウレタン樹脂層が積層されたものであり、繊維質基材に直接又は接着樹脂層を介してポリウレタン樹脂層を形成してなるものである。ポリウレタン樹脂層は、繊維質基材上に形成されるポリウレタン樹脂からなる層であり、1層構造には限られず、2層又は3層構造でもよい。なお、接着樹脂層を形成するためにポリウレタン樹脂の接着剤を用いる場合、上記の
図1に示すように、接着樹脂層32もポリウレタン樹脂層3の一部を構成する。
【0021】
ポリウレタン樹脂層の形成方法は、特に限定されない。例えば、具体的には、ポリウレタン樹脂液を、ナイフコーティング、ロールコーティング、グラビア、スプレーなどの方法で繊維質基材の片面に塗布後、乾式凝固または湿式凝固させることにより、直接、ポリウレタン樹脂層を積層してもよい。もしくは、所定のポリウレタン樹脂液を、上記ナイフコーティングなどの方法で離型性基材に塗布後、乾式凝固または湿式凝固させることによりポリウレタン樹脂層を形成し、これを繊維質基材の片面に圧着することにより、直接、ポリウレタン樹脂層を積層してもよい。さらにもしくは、上記離型性基材上に形成されたポリウレタン樹脂層を、繊維質基材の片面に接着剤を用いて貼り合せることにより、ポリウレタン樹脂層を積層してもよい。
【0022】
ポリウレタン樹脂層を構成するポリウレタン樹脂は特に限定されるものでなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐摩耗性及び耐光堅牢性の観点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、求める機能と用途に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、従来公知の添加剤、例えば着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、塗料、発泡剤、離型材などを含有させてもよい。これらは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
ポリウレタン樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば、50〜500μmでもよく、100〜300μmでもよい。
【0025】
本実施形態に係る複合表皮材に用いられる合成皮革は開口部を有する。開口部は、ニードルパンチング、放電、レーザー照射など従来公知の手段により形成することができる。開口部は、ポリウレタン樹脂層の表面から繊維質基材まで貫通する孔である。
【0026】
合成皮革表面(即ち、ポリウレタン樹脂層の表面)における開口部の占める割合(面積比率)である、開口率は、1〜15%である。開口率が1%以上であることにより、蒸れやべたつきを解消するに十分な通気度が得られる。一方、開口率が15%以下であることにより、強度の観点で優れる。開口率は、より好ましくは5〜15%であり、5〜10%でもよい。
【0027】
開口部の形状は特に限定されず、丸、三角、四角等の幾何学模様から意匠性を考慮して選択することが可能である。耐久性の観点から、丸が好ましい。また、開口部の大きさも特に限定されず、例えば0.15〜7.50mm
2でもよい。
【0028】
本実施形態に係る複合表皮材は、前記開口部を有する合成皮革の裏面(即ち、繊維質基材面)に接着剤層を介して織物を積層してなる。
【0029】
合成皮革の裏面側に積層するために用いられる織物は、糸条を経(タテ)と緯(ヨコ)に組み合わせて作った布地であり、織組織は、特に限定されるものではなく、例えば、三原組織である平織、斜文織、朱子織;これら三原組織の変化組織;なし地組織等の特別組織;さらにこれらを2種以上組み合わせた混合組織、さらにこれらを組み合わせ多層構造にした多重組織等を挙げることができる。なかでも、通気性の観点から、平織を用いることが好ましい。
【0030】
織物を構成する繊維の素材は、特に限定されることなく、従来公知の天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維等を用いることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。車両内装材用途に適した強度を有する点から、繊維の素材は合成繊維が好ましく、さらにはポリエステルを用いることが好ましい。
【0031】
織物を構成する繊維の断面形状は、特に限定されることなく、通常の丸型であっても、扁平型、楕円型、三角形、中空型、Y型、T型、U型等の異型であってもよい。
【0032】
織物を構成する糸条のタイプは、フィラメント糸(長繊維糸)、紡績糸(短繊維糸)のいずれであってもよい。さらに、フィラメント糸、特にマルチフィラメント糸は、必要に応じて撚りをかけてもよいし、仮撚加工や流体攪乱処理(タスラン加工、インターレース加工など)等により、捲縮性や嵩高性を付与してもよい。なかでも、風合い(手持ち感)の観点から、紡績糸が好ましい。
【0033】
織物を構成する繊維の繊度(単繊維繊度)は、1〜2000dtex、または2〜2000番手であることが好ましい。単繊維繊度が1dtex以上または2000番手以下であることにより、強度を向上することができる。また、単繊維繊度が2000dtex以下または2番手以上であることにより、風合いが粗硬になりにくく、シート張り込み性を向上することができる。
【0034】
織物を構成する糸条の繊度(糸繊度)は、150〜2000dtex、または1〜1000番手であることが好ましい。糸繊度が150dtex以上または1000番手以下であることにより、強度を向上することができる。また、糸繊度が2000dtex以下または1番手以上であることにより、風合いが粗硬になりにくく、シート張り込み性を向上することができる。
【0035】
本実施形態において、織物の経糸密度は25〜50本/25.4mmである。経糸密度が25本/25.4mm以上であることにより、強度を向上することができる。また、経糸密度が50本/25.4mm以下であることにより、通気性を確保することができる。織物の経糸密度の下限は30本/25.4mm以上でもよく、上限は35本/25.4mm以下でもよい。
【0036】
本実施形態において、織物の緯糸密度は30〜50本/25.4mmである。緯糸密度が30本/25.4mm以上であることにより、強度を向上することができる。また、緯糸密度が50本/25.4mm以下であることにより、通気性を確保することができる。織物の緯糸密度の下限は35本/25.4mm以上でもよく、上限は45本/25.4mm以下でもよい。
【0037】
また、織物の1インチ間の総dtex数(1インチ間に存在する糸のdtex数の和)は、経方向で3000〜40000dtexであり、緯方向で4500〜60000dtexであることが好ましい。総dtex数が下限値以上であることにより、強度を向上することができ、また、上限値以下であることにより、通気性を向上することができる。同じく、1インチ間の総番手数(1インチ間に存在する糸の総太さ)は、経方向で0.025〜50番手であり、緯方向で0.02〜33番手であることが好ましい。総番手数が下限値以上であることにより、通気性を向上することができ、また、上限値以下であることにより、強度を向上することができる。
【0038】
上記織物を、合成皮革の繊維質基材の裏面側に、ポリウレタン樹脂からなる接着剤層を介して貼り付ける。すなわち、接着剤としてポリウレタン樹脂を用いて、上記織物を、開口部を有する合成皮革の繊維質基材面に積層する。
【0039】
接着剤としては、反応性ホットメルトポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。反応性ホットメルトポリウレタン樹脂を用いることにより、接着剤が繊維質基材や織物に浸透することがないため、得られる複合表皮材の風合いを損なうことがない。詳細には、ホットメルトタイプを用いることで、浸透性の制御が容易になり、複合表皮材の風合いを維持することができる。また、反応性タイプを用いることにより、可逆変化を抑えて、耐久性を得ることができる。
【0040】
具体的には、反応性ホットメルトポリウレタン樹脂からなる接着剤を、ナイフコーティング、ロールコーティング、グラビア、T−ダイ等の方法で、合成皮革の繊維質基材面に塗布後、反応性ホットメルトポリウレタン樹脂が粘稠性を有するうちに、織物に圧着することにより、織物を貼り付けることが好ましい。
【0041】
上記接着剤を合成皮革の繊維質基材面に塗布することにより、接着剤層によって織物の通気性が阻害されることを防ぐことができる。詳細には、一実施形態において、反応性ホットメルトポリウレタン樹脂からなる接着剤を合成皮革の繊維質基材面に塗布し、該接着剤が粘稠性を有するうちに織物に圧着する場合、開口部を有する繊維質基材に塗布された接着剤は、当該開口部において開口した状態に塗布され、その状態で織物が圧着される。そのため、
図1に示すように、合成皮革4の開口部5が接着剤層6により塞がれず、開口した状態となり、該開口が織物7により覆われた状態となる。すなわち、接着剤層6には、合成皮革4の開口部5に対応した位置に当該開口部5に連通した貫通孔51が形成され、該貫通孔51が通気性を持つ織物7により覆われている。そのため、複合表皮材としての通気性を向上することができる。
【0042】
反応性ホットメルトポリウレタン樹脂を構成するポリウレタン樹脂は、特に限定されるものでなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐加水分解性の観点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂が好ましい。反応性ホットメルトポリウレタン樹脂としては、湿気硬化型ポリウレタン樹脂でもよく、紫外線硬化型ポリウレタン樹脂でもよく、湿気硬化及び紫外線硬化型ポリウレタン樹脂でもよい。
【0043】
接着剤層の単位面積当たりの質量(即ち、接着剤の塗布量)は、15〜100g/m
2であることが好ましい。塗布量が15g/m
2以上であることにより、強度を向上することができる。また、塗布量が100g/m
2以下であることにより、通気性を向上することができる。接着剤の塗布量は、より好ましくは15〜50g/m
2であり、更に好ましくは20〜45g/m
2であり、更に好ましくは30〜45g/m
2である。
【0044】
なお、本実施形態に係る車両用複合表皮材の製造方法は、上記の説明から明らかであるが、好ましい一態様を包括して記載すれば、一実施形態に係る製造方法は、
繊維質基材と、その表面側に設けられたポリウレタン樹脂層と、を備える合成皮革であって、前記ポリウレタン樹脂層の表面から前記繊維質基材を貫通する孔である複数の開口部を有し、前記ポリウレタン樹脂層の表面における開口率が1〜15%である合成皮革を作製する工程と、
前記繊維質基材の裏面に、反応性ホットメルトポリウレタン樹脂からなる接着剤を15〜100g/m
2の塗布量で塗布し、経糸密度が25〜50本/25.4mmかつ緯糸密度が30〜50本/25.4mmの織物を、前記接着剤からなる接着剤層を介して貼り付ける工程と、
を含むものである。
【0045】
本実施形態に係る車両用複合表皮材は、通気度が5〜100cm
3/cm
2・sである。これにより、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消することができる。通気度は、より好ましくは20〜80cm
3/cm
2・sであり、30〜60cm
3/cm
2・sでもよい。
【0046】
また、該複合表皮材の経方向及び緯方向の引裂き強度は各々20〜150Nであり、該複合表皮材の経方向及び緯方向の引張強度は各々50N/cm以上である。これにより、車両内装材用途としての十分な強度を満たし、耐久性を向上することができる。複合表皮材の経方向及び緯方向の引裂き強度は、より好ましくは各々40〜140Nであり、各々60〜120Nでもよい。また、複合表皮材の経方向及び緯方向の引張強度は、より好ましくは各々100N/cm以上であり、各々150N/cm以上でもよい。引張強度の上限は、特に限定されないが、例えば300N/cm以下でもよい。ここで、複合表皮材の経方向及び緯方向は、上記織物の経方向及び緯方向と同じである。
【0047】
以上よりなる本実施形態の車両用複合表皮材であると、合成皮革に上記の開口率で開口部を設けたことにより、複合表皮材の通気度を高めて、車両内装材用途として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消することができる。また、該合成皮革の繊維質基材面に、特定の密度の織物を、反応性ホットメルトポリウレタン樹脂からなる所定量の接着剤層を介して貼り付けたことにより、合成皮革の通気度を低下させることなく、開口部を有することにより低下した合成皮革の引裂き強度、引張強度を向上させることができ、車両内装材用途としての十分な強度を付与することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例をあげて説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。得られた車両用複合表皮材の評価方法は以下の通りである。
【0049】
[通気度]
JIS L1096 8.26.1A法(フラジール形法)に準拠して室温(23℃)での通気度を測定した。測定値が大きいほど通気性が高いことを示す。
【0050】
[引裂き強度]
引裂き強度は、以下の引裂き試験において、引裂きにより試験片が切断するまでの最大荷重(N)である。詳細には、幅40mm、長さ150mmの試験片を、経方向及び緯方向から各々3枚採取した。試験片に短辺の中央から長辺に平行に内部へ長さ75mmの切り込みをいれた。室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で、引張試験機オートグラフAG−100A(株式会社島津製作所製)を用いて、試験片の切り込みを入れた辺の両側を、一対のつかみ具に表裏が逆になるようにつかみ間隔10mmで取り付け、移動速度200mm/minで試験片を引裂いた。試験片が切断するまでの最大荷重(N)を測定し、平均値を求めた。測定値が20N以上であれば、車両内装材用途として十分な引裂き強度であるといえ、数値が大きいほど、引裂き強度に優れる。
【0051】
[引張強度]
引張強度は、以下の引張試験において、引っ張りにより試験片が破断するまでの最大最大荷重(N)を試験片の幅(cm)で除した値(N/cm)である。詳細には、幅30mm、長さ150mmの試験片を、経方向及び緯方向から各々3枚採取した。室温20±2℃、湿度65±5%RHの状況下で、試験片の両端をつかみ具でたるみのないように挟み、引張試験機オートグラフAG−100A(株式会社島津製作所製)を用いて、つかみ幅30mm、つかみ間隔100mm、つかみ具の移動速度200mm/minで試験片を破断させた。試験片が破断するまでの単位幅当たりの最大荷重(N/cm)を測定し、平均値を求めた。測定値が50N/cm以上であれば、車両内装材用途として十分な引張強度であるといえ、数値が大きいほど、引張強度に優れる。
【0052】
[実施例1]
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製 クリスボンNY−328)100質量部に対して、ジメチルホルムアミド40質量部を加え粘度約2000mPa・sに調整してポリウレタン樹脂液を作製した。該ポリウレタン樹脂液を離型紙へ塗布厚さが200μmになるようにコーティングした後、130℃で2分間乾燥し、ポリウレタン樹脂からなる表皮樹脂層を形成した。
【0053】
ポリカーボネート系ポリウレタン接着剤(DIC株式会社製 クリスボンTA−205)100質量部に対してジメチルホルムアミド50質量部を加え、粘度を約4500mPa・sに調整した接着剤樹脂溶液を、上記で形成した表皮樹脂層に塗布厚さが200μmになるようにコーティングした後、100℃で1分間乾燥して接着樹脂層を形成した。得られた接着樹脂層と編物(ポリエステル繊維製トリコット編、目付:220g/m
2)を合わせて39.2N/cm
2条件下で1分間プレス圧着し、合成皮革を得た。
【0054】
得られた合成皮革を、パンチング加工機にて、合成皮革の表面側により孔開け加工を施すことにより、平均口径1.0mmの開口部を開口率6.3%にて形成し、開口部を有する合成皮革を得た。
【0055】
次いで、100℃に加熱した反応性ホットメルトポリウレタン樹脂(DIC株式会社製、NH128)からなる接着剤を、開口部を有する合成皮革の裏面(編物側)へ塗布量が40g/m
2になるようにコーティングした後、平織物(経糸:14番手双糸のポリエステル紡績糸、密度31本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.226、緯糸:10番手双糸のポリエステル紡績糸、密度41本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.122)を接着剤が粘稠性を有するうちに合わせて39.2N/cm
2条件下で1分間プレス圧着し、複合表皮材を得た。
【0056】
得られた複合表皮材の通気度は43cm
3/cm
2・sであり、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消できるものであった。また、該複合表皮材の引裂き強度は経方向75N、緯方向91Nであり、かつ引張強度は経方向159N/cm、緯方向231N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度と引張強度を持ち、耐久性に優れるものであった。
【0057】
[実施例2]
平織物(経糸:14番手双糸のポリエステル紡績糸、密度31本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.226、緯糸:10番手双糸のポリエステル紡績糸、密度35本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.143)を用いた以外は、すべて実施例1と同様にして複合表皮材を得た。
【0058】
得られた複合表皮材の通気度は45cm
3/cm
2・sであり、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消できるものであった。また、該複合表皮材の引裂き強度は経方向73N、緯方向76Nであり、かつ引張強度は経方向155N/cm、緯方向186N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度と引張強度を持ち、耐久性に優れるものであった。
【0059】
[実施例3]
平織物(経糸:14番手双糸のポリエステル紡績糸、密度49本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.143、緯糸:10番手双糸のポリエステル紡績糸、密度44本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.114)を用いた以外は、すべて実施例1と同様にして複合表皮材を得た。
【0060】
得られた複合表皮材の通気度は28cm
3/cm
2・sであり、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消できるものであった。また、該複合表皮材の引裂き強度は経方向110N、緯方向131Nであり、かつ引張強度は経方向193N/cm、緯方向277N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度と引張強度を持ち、耐久性に優れるものであった。
【0061】
[比較例1]
平織物(経糸:2000番手双糸のポリエステル紡績糸、密度18本/25.4mm、1インチ間の総番手数55.6、緯糸:2000番手双糸のポリエステル紡績糸、密度25本/25.4mm、1インチ間の総番手数40.0)を用いた以外は、すべて実施例1と同様にして複合表皮材を得た。
【0062】
得られた複合表皮材の通気度は46cm
3/cm
2・sであり、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消できるものであった。該複合表皮材の引裂き強度は経方向15N、緯方向13Nであり、かつ引張強度は経方向45N/cm、緯方向41N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度と引張強度が得られず、耐久性に劣るものであった。
【0063】
[比較例2]
平織物(経糸:2番手双糸のポリエステル紡績糸、密度60本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.017、緯糸:2番手双糸のポリエステル紡績糸、密度55本/25.4mm、1インチ間の総番手数0.018)を用いた以外は、すべて実施例1と同様にして複合表皮材を得た。
【0064】
得られた複合表皮材の通気度は1cm
3/cm
2・sであり、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消できるものではなかった。該複合表皮材の引裂き強度は経方向198N、緯方向193Nであり、かつ引張強度は経方向328N/cm、緯方向355N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度と引張強度を持ち、耐久性に優れるものであった。
【0065】
[比較例3]
合成皮革に対する孔開け加工を、平均口径8.0mmの開口部が開口率16.4%で形成されるようにし、また、接着剤の塗布量を12g/m
2とした以外は、すべて実施例1と同様にして複合表皮材を得た。
【0066】
得られた複合表皮材の通気度は133cm
3/cm
2・sであった。該複合表皮材の引裂き強度は経方向18N、緯方向17Nであり、引張強度は経方向138N/cm、緯方向185N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度が得られず、耐久性に劣るものであった。
【0067】
[比較例4]
接着剤の塗布量を120g/m
2とした以外は、すべて実施例1と同様にして複合表皮材を得た。
【0068】
得られた複合表皮材の通気度は3cm
3/cm
2・sであり、車両内装材として長時間利用した際の蒸れやべたつきを解消できるものではなかった。該複合表皮材の引裂き強度は経方向73N、緯方向94Nであり、引張強度は経方向152N/cm、緯方向238N/cmであり、車両内装材として十分な引裂き強度と引張強度を持ち、耐久性に優れるものであった。