特許第6677544号(P6677544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677544
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】両面バーニッシング機
(51)【国際特許分類】
   B41F 13/24 20060101AFI20200330BHJP
   B41F 23/08 20060101ALI20200330BHJP
   B41F 23/04 20060101ALI20200330BHJP
   B41M 7/02 20060101ALI20200330BHJP
   B41F 11/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B41F13/24 138
   B41F23/08
   B41F23/04 A
   B41M7/02
   B41F11/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-56663(P2016-56663)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-170668(P2017-170668A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 博美
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−136852(JP,A)
【文献】 特開昭57−182440(JP,A)
【文献】 特表2003−511262(JP,A)
【文献】 特開2008−201120(JP,A)
【文献】 特開2000−103035(JP,A)
【文献】 特開2013−059925(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007017097(DE,A1)
【文献】 米国特許第05697297(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1839903(EP,A2)
【文献】 米国特許第6443058(US,B1)
【文献】 独国特許出願公開第102009000519(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2388139(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00 − 13/70
B41F 16/00 − 19/08
B41F 21/00 − 30/06
B41M 7/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの一方の面にニスを塗布する第1バーニッシングユニットと、
前記第1バーニッシングユニットよりシート搬送方向の下流側に配置され、シートの他方の面にニスを塗布する第2バーニッシングユニットとを有するバーニッシング部を備えた両面バーニッシング機において、
前記バーニッシング部よりもシート搬送方向の上流側に設けられ、シートに付加処理を行う付加処理部を備え、
前記付加処理部は、
シートにエンボス加工を施すエンボスユニットと、
前記エンボスユニットよりシート搬送方向の上流側に設けられ、シートに付加処理を施す特殊ユニットとを備え、
前記特殊ユニットは、
フレームと、
前記フレームに回転可能に支持され、シートを搬送する圧胴と、
前記フレームに回転可能に支持され、前記圧胴に対向する処理胴とを有する本体を備え、
シートにオフセット印刷を行うオフセット印刷ユニットと、
シートにフレキソ印刷を行うフレキソ印刷ユニットと、
シートにエンボス加工を施すエンボスユニットとのうちいずれか一つであり、
これらのオフセット印刷ユニットと、フレキソ印刷ユニットと、エンボスユニットとが相互に交換可能に構成され
前記オフセット印刷ユニットは、版胴とインキ装置とを有しかつ前記本体に対して着脱可能に支持されたオフセット印刷モジュールを含み、
前記フレキソ印刷ユニットは、アニロックスローラとチャンバー装置とを有しかつ前記本体に対して着脱可能に支持されたフレキソ印刷モジュールを含み、
前記特殊ユニットでオフセット印刷が行われる場合は、前記処理胴がゴム胴によって構成されるとともに、前記本体に前記オフセット印刷モジュールが取付けられ、
前記特殊ユニットでフレキソ印刷が行われる場合は、前記処理胴がフレキソ版胴によって構成されるとともに、前記本体に前記フレキソ印刷モジュールが取付けられ、
前記特殊ユニットでエンボス加工が行われる場合は、前記処理胴がエンボス胴によって構成されることを特徴とする両面バーニッシング機。
【請求項2】
請求項1記載の両面バーニッシング機において、
前記特殊ユニットの前記圧胴の周面に対向して配設され、前記オフセット印刷ユニットあるいは前記フレキソ印刷ユニットでシートに印刷されたインキを固化させる第1乾燥装置と、
前記第1バーニッシングユニットと前記第2バーニッシングユニットとの間に設けられ、前記第1バーニッシングユニットで塗布されたニスを固化させる第2乾燥装置と、
前記第2バーニッシングユニットよりシート搬送方向の下流側に設けられ、前記第2バーニッシングユニットで塗布されたニスを固化させる第3乾燥装置とを備えたことを特徴とする両面バーニッシング機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の両面バーニッシング機において、
さらに、
前記特殊ユニットに印刷済シートを供給するシート供給装置と、
前記特殊ユニットの前記圧胴の周面に対向して配設された第1撮像装置を有し、この第1撮像装置によって撮像された印刷済シートの一方の面の画像を検査する第1検査装置と、
前記特殊ユニットよりシート搬送方向の下流側に位置するエンボスユニットの圧胴の周面に対向して配設された第2撮像装置を有し、この第2撮像装置によって撮像された印刷済シートの他方の面の画像を検査する第2検査装置とを備えたことを特徴とする両面バーニッシング機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加価値を高める付加処理部を備えた両面バーニッシング機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマーを素材とする紙幣は、耐久性の向上を図るために、両面にコーティングが施されている。このコーティングを実施可能な従来のコーティング装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に開示されたコーティング装置は、シートの表面にコーティングを施す表面側コーティングユニットと、シートの裏面にコーティングを施す裏面側コーティングユニットとを備えている。これらのコーティングユニットは、それぞれアニロックスローラとチャンバー装置などを備えており、シートの搬送方向に並べて配置されている。
【0003】
一方、従来のコーティング装置としては、例えば特許文献2に記載されているように、使用者が触ったときの触感が異なる凸部分をシートに設けることができるものがある。この特許文献2に開示されているコーティング装置は、スクリーン印刷によってシートに部分的に厚くなる凸部分を形成する構成が採られている。この特許文献2に示すコーティング装置を使用することにより、シートに付加価値を付けることができる。なお、シートに凸部分を設けることが可能な従来の印刷方法としては、スクリーン印刷の他に凹版印刷が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−103035号公報
【特許文献2】特開2014−148045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリマー素材のシート、特に紙幣においては偽造防止技術や使用者への配慮或いは使用感の向上などの付加価値を付けるために印刷済のポリマー素材のシートに追加の印刷を行ったり、触感が異なる凸部を設けたりして付加価値を付けることが望まれている。追加の印刷は、シートに既に印刷されている画像が損なわれることがないように、印刷方法をシートに合わせて変えて実施することが望ましい。このような追加の印刷は、特許文献1に記載されているコーティング装置では不可能である。
【0006】
一方、ポリマー素材のシートに触感が異なる凸部を設けるためには、特許文献2に記載されているコーティング装置を使用することが考えられる。しかし、ポリマー素材のシートは、ニスやインキなどの塗布液を厚く付けることが難しいものであるから、特許文献2に示すコーティング装置や従来の凹版印刷機では触感が異なる凸部を形成することは難しい。
【0007】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、ポリマーを素材とするシートに付加価値を付けることが可能な両面バーニッシング機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る両面バーニッシング機は、シートの一方の面にニスを塗布する第1バーニッシングユニットと、前記第1バーニッシングユニットよりシート搬送方向の下流側に配置され、シートの他方の面にニスを塗布する第2バーニッシングユニットとを有するバーニッシング部を備えた両面バーニッシング機において、前記バーニッシング部よりもシート搬送方向の上流側に設けられ、シートに付加処理を行う付加処理部を備え、前記付加処理部は、フレームと、前記フレームに回転可能に支持され、シートを搬送する圧胴と、前記フレームに回転可能に支持され、前記圧胴に対向する処理胴とを有する本体を備え、シートにエンボス加工を施すエンボスユニットと、前記エンボスユニットよりシート搬送方向の上流側に設けられ、シートに付加処理を施す特殊ユニットとを備え、前記特殊ユニットは、シートにオフセット印刷を行うオフセット印刷ユニットと、シートにフレキソ印刷を行うフレキソ印刷ユニットと、シートにエンボス加工を施すエンボスユニットとのうちいずれか一つであり、これらのオフセット印刷ユニットと、フレキソ印刷ユニットと、エンボスユニットとが相互に交換可能に構成され、前記オフセット印刷ユニットは、版胴とインキ装置とを有しかつ前記本体に対して着脱可能に支持されたオフセット印刷モジュールを含み、前記フレキソ印刷ユニットは、アニロックスローラとチャンバー装置とを有しかつ前記本体に対して着脱可能に支持されたフレキソ印刷モジュールを含み、前記特殊ユニットでオフセット印刷が行われる場合は、前記処理胴がゴム胴によって構成されるとともに、前記本体に前記オフセット印刷モジュールが取付けられ、前記特殊ユニットでフレキソ印刷が行われる場合は、前記処理胴がフレキソ版胴によって構成されるとともに、前記本体に前記フレキソ印刷モジュールが取付けられ、前記特殊ユニットでエンボス加工が行われる場合は、前記処理胴がエンボス胴によって構成されているものである。
【0010】
本発明は、前記両面バーニッシング機において、前記特殊ユニットの前記圧胴の周面に対向して配設され、前記オフセット印刷ユニットあるいは前記フレキソ印刷ユニットでシートに印刷されたインキを固化させる第1乾燥装置と、前記第1バーニッシングユニットと前記第2バーニッシングユニットとの間に設けられ、前記第1バーニッシングユニットで塗布されたニスを固化させる第2乾燥装置と、前記第2バーニッシングユニットよりシート搬送方向の下流側に設けられ、前記第2バーニッシングユニットで塗布されたニスを固化させる第3乾燥装置とを備えていてもよい。
【0011】
本発明は、前記両面バーニッシング機において、さらに、前記特殊ユニットに印刷済シートを供給するシート供給装置と、前記特殊ユニットの前記圧胴の周面に対向して配設された第1撮像装置を有し、この第1撮像装置によって撮像された印刷済シートの一方の面の画像を検査する第1検査装置と、前記特殊ユニットよりシート搬送方向の下流側に位置するエンボスユニットの圧胴の周面に対向して配設された第2撮像装置を有し、この第2撮像装置によって撮像された印刷済シートの他方の面の画像を検査する第2検査装置とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、エンボス加工と、特殊ユニットによる処理とがバーニッシング部よりシート搬送方向の上流側でシートに施される。このため、両面のバーニッシングの他に、付加処理部によってシートに付加価値が付けられる。特殊ユニットは、オフセット印刷と、フレキソ印刷と、エンボス加工とのうちいずれか一つの処理を行うものであるから、付加価値を付与するにあたって自由度が高いものである。
したがって、本発明によれば、大きな付加価値を有するシートを得ることが可能な両面バーニッシング機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る両面バーニング機の構成を示す側面図である。
図2】スケルトン胴と第3圧胴の一部を示す側面図である。
図3】オフセット印刷ユニットの構成を示す側面図である。
図4】フレキソ印刷ユニットの構成を示す側面図である。
図5】特殊ユニットとなるエンボスユニットの構成を示す側面図である。
図6】エンボスユニットと第2圧胴の一部を示す側面図である。
図7】制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る両面バーニッシング機の一実施の形態を図1図7によって詳細に説明する。
図1に示す両面バーニッシング機1は、図1において最も右側に位置するフィーダーユニット2から最も左側に位置するデリバリーユニット3までシート4を送り、搬送途中でシート4に複数の処理を施す装置である。フィーダーユニット2から送られるシート4は、例えば紙幣となるような、ポリマーを素材とするシートである。このシート4の表裏両面には、絵柄や文字、番号等の画像が予め印刷されている。この実施の形態において、フィーダーユニット2が「シート供給装置」に相当する。
【0015】
このシート4に施す複数の処理とは、詳細は後述するが、フィーダーユニット2と隣接する付加処理部5において実施される処理と、この付加処理部5とデリバリーユニット3との間に位置するバーニッシング部6において実施されるバーニッシングである。ここでいうバーニッシングとは、シート4にニスを塗布する塗布処理である。
【0016】
この両面バーニッシング機1のフィーダーユニット2は、多数のシート4が積み重ねられたフィーダーパイル7と、最も上に位置するシート4を1枚ずつフィーダーボード8上に送り出すサッカー9などを備えている。フィーダーボード8は、シート4をフィーダーユニット2から付加処理部5側に送る。フィーダーボード8送られたシート4は、スイング装置11によって第1渡胴12に送られる。第1渡胴12は、付加処理部5の第1圧胴13に対接している。このため、シート4は、この第1渡胴12を介して第1圧胴13に送られる。
【0017】
第1圧胴13は、第2圧胴14に対接している。第2圧胴14は、第3圧胴15に対接している。第3圧胴15は、スケルトン胴16に対接している。スケルトン胴16は、乾燥胴17に対接している。乾燥胴17は、第4圧胴18に対接している。第4圧胴18は、後述するデリバリーユニット3にシート4を送る。
【0018】
このため、シート4は、第1圧胴13から付加処理部5の第2圧胴14と、バーニッシング部6の第3圧胴15、スケルトン胴16、乾燥胴17、第4圧胴18などを介してデリバリーユニット3に搬送される。シート4を搬送する機能を有するこれらの胴は、図2に示すように、シート4の先端であるくわえ側端部(搬送方向下流側の端部)を選択的にくわえるくわえ爪装置21を有している。
【0019】
これらの胴のうち、スケルトン胴16を除く他の全ての胴(第1渡胴12、第1圧胴13、第2圧胴14、第3圧胴15、乾燥胴17、第4圧胴18)は、シート4が重ねられ当該シート4が支持される有効面22を有している。第1渡胴12は、くわえ爪装置21と有効面22とが1組設けられている。第1圧胴13と、第2圧胴14と、第3圧胴15と、乾燥胴17および第4圧胴18は、それぞれくわえ爪装置21と有効面22とを2組ずつ有しており、いわゆる2倍胴である。
スケルトン胴16は、図2に示すように、2組のくわえ爪装置21が両端部に設けられた扁平の柱状に形成されている。このスケルトン胴16の回転軌跡16aの内側には、くわえ爪装置21に保持されたシート4とスケルトン胴16との接触を防ぐために空間Sが形成されている。
【0020】
この両面バーニッシング機1のデリバリーユニット3は、シート4を搬送するためのデリバリーチェーン23と、シート4が排出される第1〜第3のデリバリーパイル24〜26とを有している。デリバリーチェーン23は、一対のスプロケット27,28に巻き掛けられており、これらのスプロケット27,28によって駆動されて回転する。デリバリーチェーン23は、スプロケット27,28の軸線方向に離間した位置にそれぞれ設けられている。これら2本のデリバリーチェーン23には、図示してはいないが、複数の爪竿が所定の間隔をあけて支持されている。これらの爪竿には、シート4のくわえ側端部をくわえるグリッパー(図示せず)が設けられている。
【0021】
第1〜第3のデリバリーパイル24〜26のうち、シート搬送方向の上流側に位置する第1および第2のデリバリーパイル24,25には良品が排出され、第3のデリバリーパイル26には不良品が排出される。この良否判定の説明は後述する。
第1〜第3のデリバリーパイル24〜26の上方には、シート4を第1〜第3のデリバリーパイル24〜26に振り分けて排出するための振り分け機構29が設けられている。この振り分け機構29は、シート4がグリッパーに保持されている状態からこのシート4がグリッパーから解放される状態に当該グリッパーを切り替える。この振り分け機構29の動作は、後述する制御装置31(図7)によって制御される。
【0022】
付加処理部5は、図1に示すように、後述するバーニッシング部6よりもシート搬送方向の上流側に設けられており、第1圧胴13を含む特殊ユニット32と、第2圧胴14を含むエンボスユニット33とを備えている。
特殊ユニット32は、エンボスユニット33よりシート搬送方向の上流側に設けられており、付加処理部5の骨格をなすフレーム34Aと、第1圧胴13と、この第1圧胴13に対向する処理胴35とを備えている。ここで、フレーム34Aと、第1圧胴13と、処理胴35とにより特殊ユニット32の本体34が構成される。
【0023】
第1圧胴13は、フレーム34Aに回転自在に支持されており、駆動装置36(図7参照)によって駆動されて回転する。この実施の形態においては、第1圧胴13が「シートを搬送する圧胴」に相当する。この駆動装置36は、この両面バーニッシング機1の他の胴や、フィーダーユニット2およびデリバリーユニット3に設けられている回転体を駆動する本機モータである。駆動装置36の動作は、制御装置31(図7参照)によって制御される。
【0024】
処理胴35は、特殊ユニット32による処理内容に対応したものによって構成されている。この実施の形態による特殊ユニット32は、シート4の一方の面に後述する3種類の処理のうちいずれか1つの処理を施すことが可能である。3種類の処理とは、オフセット印刷と、フレキソ印刷と、エンボス加工である。
特殊ユニット32でオフセット印刷が行われる場合は、図3に示すように、処理胴35がオフセット印刷用のゴム胴35Aによって構成されるとともに、本体34にオフセット印刷モジュール41が取付けられる。この場合の特殊ユニット32は、オフセット印刷ユニット32Aになる。
【0025】
ゴム胴35Aは、詳細には図示してはいないが、本体34のフレーム34Aに着脱可能かつ回転可能に取付けられた胴本体37と、この胴本体37の外周面に巻き付けられたブランケット38とを備えている。
オフセット印刷モジュール41は、ゴム胴35Aに対接する版胴42と、この版胴42にインキを供給するためのインキ装置43とを有している。このオフセット印刷モジュール41は、本体34に対して着脱可能である。
【0026】
特殊ユニット32でフレキソ印刷が行われる場合は、図4に示すように、処理胴35がフレキソ版胴35Bによって構成されるとともに、本体34にフレキソ印刷モジュール44が取付けられる。この場合の特殊ユニット32は、フレキソ印刷ユニット32Bになる。
フレキソ版胴35Bは、本体34のフレーム34Aに着脱可能かつ回転可能に取付けられた胴本体45と、この胴本体45の外周面に巻き付けられたフレキソ印刷用の版46とを備えている。
フレキソ印刷モジュール44は、フレキソ版胴35Bに対接するアニロックスローラ47と、このアニロックスローラ47にインキを供給するためのチャンバー装置48とを有している。このフレキソ印刷モジュール44は、本体34に対して着脱可能である。
【0027】
特殊ユニット32でエンボス加工が行われる場合は、図5に示すように、処理胴35がエンボス胴35Cによって構成される。この場合の特殊ユニット32は、エンボスユニット32Cになる。
エンボス胴35Cは、本体34のフレーム34Aに着脱可能かつ回転可能に取付けられた胴本体51と、この胴本体51の外周面に巻き付けられたエンボス加工用の版52とを備えている。この版52には、図示してはいないが、シート4の一方の面に押し付けられてシート4を塑性変形させ、シート4の他方の面に凸部を形成する突起が設けられている。このエンボスユニット32Cによってシート4に形成される凸部は、例えば、目が不自由な人でも触感で理解できる認識マークとすることができる。
【0028】
このように、この実施の形態による特殊ユニット32は、オフセット印刷ユニット32Aと、フレキソ印刷ユニット32Bと、エンボスユニット32Cとのうちいずれか1つである。これらのオフセット印刷ユニット32Aと、フレキソ印刷ユニット32Bと、エンボスユニット32Cは、相互に交換可能である。
【0029】
オフセット印刷モジュール41とフレキソ印刷モジュール44で使用するインキは、紫外線硬化型インキである。これらのモジュール41,44によってシート4に転写あるいは塗布されたインキは、シート4が第1圧胴13によって搬送されている途中で第1乾燥装置53(図1参照)によって硬化される。
【0030】
第1乾燥装置53は、第1圧胴13の周面に対向して配設され、第1圧胴13に向けて紫外線を照射する。なお、オフセット印刷モジュール41とフレキソ印刷モジュール44において、例えば溶剤が蒸発して固化する種類のインキが用いられる場合は、第1乾燥装置53はシート4に例えば赤外線を照射してインキを乾燥させるものが用いられる。第1乾燥装置53は、インキを硬化または乾燥させる、言い換えるとインキを固化させる装置である。
【0031】
第1乾燥装置53の上方には、第1撮像装置54が配置されている。この第1撮像装置54は、第1圧胴13の周面に対向して配設されており、第1圧胴13によって搬送されているシート4の一方の面を撮像し、画像データとして後述する制御装置31に送る。第1撮像装置54によって撮像された画像データには、フィーダーユニット2に装填される以前にシート4に印刷された画像と、オフセット印刷モジュール41またはフレキソ印刷モジュール44による印刷または塗布の結果が含まれている。第1撮像装置54による撮像箇所は、処理胴35よりもシート搬送方向の下流側で第1乾燥装置53による乾燥または硬化箇所よりもシート搬送方向の上流側である。
【0032】
特殊ユニット32よりシート搬送方向の下流側に設けられたエンボスユニット33は、図6に示すように、第2圧胴14と、この第2圧胴14に対接するエンボス胴55とを備えている。第2圧胴14は、本体34に回転自在に支持されている。この第2圧胴14の有効面22には、ブランケット56が巻き付けられている。
エンボス胴55は、本体34のフレーム34Aに回転可能に取付けられた胴本体57と、この胴本体57の外周面に巻き付けられたエンボス加工用の版58とを備えている。この版58には、図示してはいないが、シート4の他方の面に押し付けられてシート4を塑性変形させ、シート4の一方の面に凸部を形成する突起が設けられている。
このエンボスユニット33によってシート4に形成される凸部は、例えば、目が不自由な人でも触感で理解できる認識マークとすることができる。
【0033】
このエンボス胴55は、第2圧胴14に対接する位置と、第2圧胴14から離間する位置との間で移動可能に支持されている。特殊ユニット32でエンボス加工が施される場合には、このエンボス胴55を第2圧胴14から離すことができる。ここで、エンボスユニット33は、特殊ユニット32でオフセット印刷またはフレキソ印刷が施される場合に、エンボス胴55を第2圧胴14に対接させてシート4に対してエンボス加工を施すことができる。すなわち、特殊ユニット32によるオフセット或いはフレキソ印刷と両面バーニッシングに加えてエンボス加工を施すことができ、シート4に対して高い付加価値を付けることができるのである。
【0034】
エンボス胴55よりシート搬送方向の下流側に送られたシート4は、第2圧胴14によって搬送されている途中で第2撮像装置61によって撮像される。第2撮像装置61は、第3圧胴15の下方に位置付けられ、第2圧胴14の周面に対向して配設されている。この第2撮像装置61は、第2圧胴14によって搬送されているシート4の他方の面を撮像し、画像データとして後述する制御装置31に送る。第2撮像装置61によって撮像された画像データには、フィーダーユニット2に装填される以前に印刷された画像と、オフセット印刷モジュール41またはフレキソ印刷モジュール44による印刷または塗布の結果と、エンボスユニット33によるエンボス加工の結果とが含まれている。
【0035】
バーニッシング部6は、上述した第2圧胴14に対接する第3圧胴15を有する第1バーニッシングユニット62と、この第1バーニッシングユニット62よりシート搬送方向の下流側に配設された第2バーニッシングユニット63とを備えている。第1バーニッシングユニット62と第2バーニッシングユニット63とは、スケルトン胴16と乾燥胴17とを介して接続されている。
【0036】
第1バーニッシングユニット62は、第3圧胴15と、この第3圧胴15に対接する第1バーニッシング版胴64と、この第1バーニッシング版胴64に対接するアニロックスローラ65と、このアニロックスローラ65にニスを供給するチャンバー装置66などを備えている。この第1バーニッシングユニット62は、シート4の一方の面にニスを塗布するとともに、エンボスユニット32Cによって形成されたシート4の一方の面の凹部にニスを充填する。凹部にニスが充填されるとエンボス加工部分の強度が増す。このニスは、紫外線硬化型ニスである。
【0037】
第1バーニッシングユニット62によって一方の面にバーニッシングが施されたシート4は、第3圧胴15からスケルトン胴16に渡され、一方の面に接触するものが何もない状態でスケルトン胴16から乾燥胴17に送られる。一方の面に塗布されたニスは、シート4が乾燥胴17によって搬送されているときに第2乾燥装置67によって固化される。第2乾燥装置67は、第1バーニッシングユニット62と第2バーニッシングユニット63との間であって、乾燥胴17と対向する位置に配設されている。
この第2乾燥装置67は、紫外線を乾燥胴17の周面に向けて照射する。
【0038】
第2バーニッシングユニット63は、乾燥胴17からシート4を受け取る第4圧胴18と、この第4圧胴18に対接する第2バーニッシング版胴68と、この第2バーニッシング版胴68に対接するアニロックスローラ69と、このアニロックスローラ69にニスを供給するチャンバー装置70などを備えている。
この第2バーニッシングユニット63は、シート4の他方の面にニスを塗布するとともに、エンボスユニット33によって形成されたシート4の他方の面の凹部にニスを充填する。凹部にニスが充填されるとエンボス加工部分の強度が増す。このニスも紫外線硬化型ニスである。
【0039】
第2バーニッシングユニット63によって他方の面にバーニッシングが施されたシート4は、第4圧胴18からデリバリーユニット3のグリッパに受け渡され、デリバリーチェーン23によって搬送される。この搬送は、シート4の他方の面に接触するものが何もない状態で行われる。シート4の他方の面に塗布されたニスは、シート4がデリバリーチェーン23によって搬送されているときに第3乾燥装置71によって硬化される。第3乾燥装置71は、第2バーニッシングユニット63よりシート搬送方向の下流側であって、デリバリーユニット3内に形成されたシート搬送路の下方に配設されている。この第3乾燥装置71は、紫外線を上方のシート4に向けて照射する。
なお、第1および第2バーニッシングユニット62,63において、例えば溶剤が蒸発して固化する種類のニスが用いられる場合は、第2および第3乾燥装置67,71はシート4に赤外線を照射してニスを乾燥させるものが用いられる。第2および第3乾燥装置67,71はニスを硬化または乾燥させる、言い換えるとニスを固化させる装置である。
【0040】
他方の面のニスが固化したシート4は、デリバリーユニット3の搬送方向下流側に位置するスプロケット28をデリバリーチェーン23が越えることによって、他方の面が上方を指向する状態になる。そして、このシート4は、制御装置31によって動作が制御された振り分け機構29によって第1〜第3のデリバリーパイル24〜26のうちのいずれか一つのデリバリーパイルに振り分けられて排出される。
【0041】
制御装置31は、図7に示すように、バーニッシング制御部72と、第1および第2検査部73,74とを有している。
バーニッシング制御部72は、この両面バーニッシング機1がシート4に印刷やバーニッシングを施すために必要な各種のアクチュエータの動作を制御する。
【0042】
第1検査部73は、第1撮像装置54と協働して第1検査装置75を構成するもので、第1撮像装置54から送られた画像データに基づいてシート4の一方の面の画像の良否判定を行う。
第2検査部74は、第2撮像装置61と協働して第2検査装置76を構成するもので、第2撮像装置61から送られた画像データに基づいてシート4の他方の面の画像の良否判定を行う。
この第1検査部73と第2検査部74が行う良否判定は、この両面バーニッシング機1に搬入される以前の工程でシート4に印刷された画像のみが対象になる場合と、この前工程による印刷に加えて、付加処理部5で行われた処理を含めた総合的な画像が対象になる場合とがある。
【0043】
第1検査部73および第2検査部74は、良否判定の結果が良であると判定されたシート4のみが第1または第2デリバリーパイル24,25に排出されるように、振り分け機構29の動作を制御する。このため、不良と判定されたシート4は、第3デリバリーパイル26に排出される。
【0044】
このように構成された両面バーニッシング機1においては、特殊ユニット32による処理と、エンボスユニット33によるエンボス加工とがバーニッシング部6よりシート搬送方向の上流側でシート4に施される。このため、シート4に付加処理部5によって付加価値が付けられる。
特殊ユニット32は、オフセット印刷と、フレキソ印刷と、エンボス加工とのうちいずれか一つの処理を選択的に行うことができ、シート4に対する多様な要求に応えることができて、付加価値を付与するにあたって自由度が高いものである。
したがって、この実施の形態によれば、大きな付加価値を有するシートを得ることが可能な両面バーニッシング機を提供できる。
【0045】
特殊ユニット32でフレキソ印刷を行う場合は、例えば透明なインキを使うことができる。この透明なインキによる印刷と、バーニッシング部6によるバーニッシングとが重なると、特殊な視覚効果が得られ、大きな付加価値となる。
特殊ユニット32でオフセット印刷を行う場合にも透明なインキを使うことができる。オフセット印刷で使用するインキの濃度は、ニスの濃度とは異なる。このため、濃度が異なる二種類の塗膜がシート4の一方の面に形成されるから、視覚と触感とが他方の面と異なって大きな付加価値となる。
特殊ユニット32で行われるフレキソ印刷あるいはオフセット印刷は、エンボスユニット33でシート4の一方の面に設けられる凸部と関連付けて行うことができる。
【0046】
この実施の形態において特殊ユニット32よりシート搬送方向の下流側に位置するエンボスユニット33は、第2圧胴14とエンボス胴55とを備えている。第2圧胴14は、実質的に、付加処理部5からバーニッシング部6にシート4を送るための渡胴として機能するものである。このため、この実施の形態によれば、エンボスユニット33を装備するにあたって、専用の胴を追加する必要はないから、コンパクトな両面バーニッシング機を提供できる。
【0047】
この実施の形態による特殊ユニット32は、フレーム34Aと、このフレーム34Aに回転可能に支持され、シート4を搬送する第1圧胴13と、フレーム34Aに回転可能に支持され、第1圧胴13に対向する処理胴35とを有する本体34を備えている。オフセット印刷ユニット32Aは、版胴42とインキ装置43とを有しかつ本体34に対して着脱可能に支持されたオフセット印刷モジュール41を含む。フレキソ印刷ユニット32Bは、アニロックスローラ47とチャンバー装置48とを有しかつ本体34に対して着脱可能に支持されたフレキソ印刷モジュール44を含む。
【0048】
特殊ユニット32でオフセット印刷が行われる場合は、処理胴35がゴム胴35Aによって構成されるとともに、本体34に前記オフセット印刷モジュール41が取付けられる。特殊ユニット32でフレキソ印刷が行われる場合は、処理胴35がフレキソ版胴35Bによって構成されるとともに、本体34にフレキソ印刷モジュール44が取付けられる。特殊ユニット32でエンボス加工が行われる場合は、処理胴35がエンボス胴35Cによって構成される。
このため、この実施の形態によれば、オフセット印刷と、フレキソ印刷と、エンボス加工の切換えを簡単に行うことが可能な両面バーニッシング機を提供できる。
【0049】
この実施の形態による両面バーニッシング機1は、第1〜第3乾燥装置53,67,71を備えている。第1乾燥装置53は、特殊ユニット32の第1圧胴13の周面に対向して配設され、オフセット印刷ユニット32Aあるいはフレキソ印刷ユニット32Bでシート4に印刷されたインキを固化させる。第2乾燥装置67は、第1バーニッシングユニット62と第2バーニッシングユニット63との間に設けられ、第1バーニッシングユニット62で塗布されたニスを固化させる。第3乾燥装置71は、第2バーニッシングユニット63よりシート搬送方向の下流側に設けられ、第2バーニッシングユニット63で塗布されたニスを固化させる。
このため、シート4に塗布されたニスやインキが塗布直後に固化するから、品質が高く、付加価値がより一層大きいシートを得ることが可能な両面バーニッシング機を提供できる。
【0050】
この実施の形態においては、特殊ユニット32に印刷済シート4を供給するフィーダーユニット2と、第1検査装置75および第2検査装置76を有している。第1検査装置75は、特殊ユニット32の第1圧胴13の周面に対向する第1撮像装置54を有し、印刷済シート4の一方の面の画像を検査する。第2検査装置75は、特殊ユニット32よりシート搬送方向の下流側に位置するエンボスユニット33の第2圧胴14の周面に対向する第2撮像装置61を有し、印刷済シート4の他方の面の画像を検査する。
このため、シート供給装置から送られる印刷済シート4の両面の画像を検査することができるから、シート4を良品と不良品とを分けることが可能になる。したがって、不良品が排除されて良品のみを得ることが可能な両面バーニッシング機を提供できる。
【符号の説明】
【0051】
1…バーニッシング機、2…フィーダーユニット(シート供給装置)、4…シート、5…付加処理部、6…バーニッシング部、13…第1圧胴(圧胴)、32…特殊ユニット、32A…オフセット印刷ユニット、32B…フレキソ印刷ユニット、32C,33…エンボスユニット、34…本体、34A…フレーム、35…処理胴、35A…ゴム胴、35B…フレキソ版胴、35C,55…エンボス胴、41…オフセット印刷モジュール、42…版胴、43…インキ装置、44…フレキソ印刷モジュール、45…フレキソ版胴、47…アニロックスローラ、48…チャンバー装置、53…第1乾燥装置、54…第1撮像装置(第1検査装置)、61…第2撮像装置(第2検査装置)、62…第1バーニッシングユニット、63…第2バーニッシングユニット、67…第2乾燥装置、71…第3乾燥装置、73…第1検査部(第1検査装置)、74…第2検査部(第2検査装置)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7