【実施例】
【0039】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、不融化工程は、大気圧下で行った。
【0040】
各実施例及び比較例につき、以下の方法により評価した。
(1)ピッチ繊維の軟化点(℃)
前述の方法により測定した。
【0041】
(2)不融化工程における雰囲気成分中の酸素濃度(容積%)
前述の方法により測定した。平均酸素濃度は、不融化開始時点から不融化終了時点までの総処理時間に対し等間隔に14点測定し、平均した。
【0042】
(3)不融化したピッチ繊維の酸素(O)含有量(%)
全自動元素分析装置(Elementar Analytical社製商品名Vario EL IIIを用い、測定をおこなった。
【0043】
(4)得られた繊維状活性炭の繊維径(μm)、断面積(nm
2)
得られた繊維状活性炭の繊維径を、JIS K 1477:2007 7.3.1のa法に準じ、測定器としてアンリツ株式会社製商品名レーザ外径測定器M550Aを用い、測定、算出した。また、断面積は、測定、算出した繊維径から算出した。
【0044】
(5)得られた繊維状活性炭の比表面積(m
2/g)
窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)で測定した。
【0045】
(6)得られた繊維状活性炭の機械的強度(GPa)、伸度(%)、引張弾性率(GPa)
得られた繊維状活性炭を、JIS K 1477:2007 7.3.2に準じ、上記(4)で算出した断面積を用い、測定器として株式会社島津製作所社製引張試験機商品名SIMADZU EZ−EXを用いて、測定、算出した。なお、機械的強度は小数点以下2桁、伸度は有効数字2桁に、JIS Z 8401に規定の基づきに数値を丸めた。
【0046】
(7)不融化したピッチ繊維の融着の有無
不融化したピッチ繊維を無作為に500g採取し、目視にて融着の有無を観察し、下記基準により評価した。
◎・・・融着の発生が全く無く、生産効率上全く問題ないレベルであった。
○・・・融着の発生が少なく、生産効率上問題ないレベルであった。
△・・・融着の発生がやや多く、生産効率上やや問題あるレベルであった。
×・・・融着の発生がかなり多く、生産効率上かなり問題あるレベルであった。
【0047】
(8)不融化したピッチ繊維の焼失の有無
実施例1の不融化したピッチ繊維の歩留(質量)を仮に100とした場合に、各実施例の不融化したピッチ繊維の歩留を相対比較し、評価した。
【0048】
(実施例1)
まず、有機質材料として石炭系ピッチ原料を、溶融押出し機により溶融して押出し、紡糸機及びサクションガン方式の延伸機により牽引細化し、単糸径約20μmの石炭系ピッチ長繊維からなり、目付け量450g/m
2のウェブシートを調製した。得られた長繊維の軟化点は、280℃であった。
【0049】
得られたウェブシートを、有機質材料の搬送方向に複数の室に区画されており、各室の雰囲気が有機質材料の搬送方向に向かうにつれて漸次高くなるように設定されている不融化炉に搬送し、不融化工程をおこなった。不融化工程における雰囲気温度としては、開始125℃から最終382℃まで、昇温速度が1〜9℃/分の範囲内となるよう(平均昇温速度が4℃/分としつつ、前記軟化点(℃)より50℃低い温度以上、前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの昇温速度が1℃/分〜3℃/分)、各室の雰囲気温度及び有機質材料の搬送速度を設定した。処理時間の合計としては、59分であった。不融化工程における雰囲気成分を調整し、初期酸素濃度が31容積%、不融化する上記有機質材料の軟化点(℃)より50℃低い温度以上該軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度230℃以上260℃以下のときの酸素濃度)は20容積%以上27.5容積%以下の範囲内(最大27.2容積%、最小26.2容積%)とした。また、前記軟化点(℃)より10℃高い温度以上のときの酸素濃度(すなわち、290℃以上382℃以下のときの酸素濃度)を27.5容積%以下(最大25.5容積%、最小20.8容積%)とした。また、不融化する有機質材料の軟化点(℃)より20℃低い温度以上該軟化点(℃)より10℃高い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度260℃以上290℃以下のときの酸素濃度)は、20容積%以上29容積%以下(最大28.0容積%、最小26.6容積%)とした。平均酸素濃度は27.8容積%であった。不融化したピッチ繊維の酸素(O)含有量(%)は、不融化処理した有機質材料を用いて測定した。
【0050】
次いで、上記不融化した有機質材料を、賦活化した。具体的に、不融化したピッチ繊維ウェブシートを947℃で41分間飽和水蒸気に暴露し、賦活処理をおこない、炭素材料(繊維状活性炭)を得た。得られた繊維状活性炭の繊維径、断面積、強度、伸度及び引張弾性率は、得られた繊維状活性炭を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
まず、有機質材料として石炭系ピッチ原料を、溶融押出し機により溶融して押出し、紡糸機及びサクションガン方式の延伸機により牽引細化し、単糸径約20μmの石炭系ピッチ長繊維からなり、目付け量(450g/m
2)のウェブシートを調製した。得られた長繊維の軟化点は、280℃であった。
【0052】
得られたウェブシートを、有機質材料の搬送方向に複数の室に区画されており、各室の雰囲気が有機質材料の搬送方向に向かうにつれて漸次高くなるように設定されている不融化炉に搬送し、不融化処理をおこなった。不融化工程における雰囲気温度としては、開始125℃から最終382℃まで、昇温速度が1〜9℃/分の範囲内となるよう(平均昇温速度が4℃/分としつつ、前記軟化点(℃)より50℃低い温度以上、前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの昇温速度が1℃/分〜3℃/分)、各室の雰囲気温度及び有機質材料の搬送速度を設定した。処理時間の合計としては、59分であった。不融化工程における雰囲気成分を調整し、初期酸素濃度が31容積%、不融化する上記有機質材料の軟化点(℃)より50℃低い温度以上該軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度230℃以上260℃以下のときの酸素濃度)は20容積%以上27.5容積%以下の範囲内(最大27.0容積%、最小25.7容積%)とした。また、前記軟化点(℃)より10℃高い温度以上のときの酸素濃度(すなわち、290℃以上382℃以下のときの酸素濃度)を27.5容積%以下(最大27.1容積%、最小24.5容積%)とした。また、不融化する有機質材料の軟化点(℃)より20℃低い温度以上該軟化点(℃)より10℃高い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度260℃以上290℃以下のときの酸素濃度)は、20容積%以上29容積%以下(最大27.3容積%、最小26.8容積%)とした。平均酸素濃度は27.4容積%であった。不融化したピッチ繊維の酸素(O)含有量(%)は、不融化処理した有機質材料を用いて測定した。
【0053】
次いで、上記不融化した有機質材料を、賦活化した。具体的に、不融化したピッチ繊維ウェブシートを947℃で41分間飽和水蒸気に暴露し、賦活処理をおこない、炭素材料(繊維状活性炭)を得た。得られた繊維状活性炭の繊維径、断面積、強度、伸度及び引張弾性率は、得られた繊維状活性炭を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
まず、有機質材料として石炭系ピッチ原料を、溶融押出し機により溶融して押出し、紡糸機及びサクションガン方式の延伸機により牽引細化し、単糸径約20μmの石炭系ピッチ長繊維からなり、目付け量(450g/m
2)のウェブシートを調製した。得られた長繊維の軟化点は、280℃であった。
【0055】
得られたウェブシートを、有機質材料の搬送方向に複数の室に区画されており、各室の雰囲気が有機質材料の搬送方向に向かうにつれて漸次高くなるように設定されている不融化炉に搬送し、不融化処理をおこなった。不融化工程における雰囲気温度としては、開始125℃から最終382℃まで、昇温速度が1〜9℃/分の範囲内となるよう(平均昇温速度が4℃/分としつつ、前記軟化点(℃)より50℃低い温度以上、前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの昇温速度が1℃/分〜3℃/分)、各室の雰囲気温度及び有機質材料の搬送速度を設定した。処理時間の合計としては、59分であった。不融化工程における雰囲気成分を調整し、初期酸素濃度が31容積%、不融化する上記有機質材料の軟化点(℃)より50℃低い温度以上該軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度230℃以上260℃以下のときの酸素濃度)は20容積%以上27.5容積%以下の範囲内(最大27.1容積%、最小26.2容積%)とした。また、前記軟化点(℃)より10℃高い温度以上のときの酸素濃度(すなわち、290℃以上382℃以下のときの酸素濃度)を27.5容積%以下(最大27.1容積%、最小26.3容積%)とした。また、不融化する有機質材料の軟化点(℃)より20℃低い温度以上該軟化点(℃)より10℃高い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度260℃以上290℃以下のときの酸素濃度)は、20容積%以上29容積%以下(最大27.6容積%、最小26.9容積%)とした。平均酸素濃度は27.7容積%であった。不融化したピッチ繊維の酸素(O)含有量(%)は、不融化処理した有機質材料を用いて測定した。
【0056】
次いで、上記不融化した有機質材料を、賦活化した。具体的に、不融化したピッチ繊維ウェブシートを窒素雰囲気下947℃で41分間飽和水蒸気に暴露し、賦活処理をおこない、炭素材料(繊維状活性炭)を得た。得られた繊維状活性炭の繊維径、断面積、強度、伸度及び引張弾性率は、得られた繊維状活性炭を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
まず、有機質材料として石炭系ピッチ原料を、溶融押出し機により溶融して押出し、紡糸機及びサクションガン方式の延伸機により牽引細化し、単糸径約20μmの石炭系ピッチ長繊維からなり、目付け量(450g/m
2)のウェブシートを調製した。得られた長繊維の軟化点は、280℃であった。
【0058】
得られたウェブシートを、有機質材料の搬送方向に複数の室に区画されており、各室の雰囲気が有機質材料の搬送方向に向かうにつれて漸次高くなるように設定されている不融化炉に搬送し、不融化処理をおこなった。不融化工程における雰囲気温度としては、開始125℃から最終382℃まで、昇温速度が1〜9℃/分の範囲内となるよう(平均昇温速度が4℃/分としつつ、前記軟化点(℃)より50℃低い温度以上、前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの昇温速度が1℃/分〜3℃/分)、各室の雰囲気温度及び有機質材料の搬送速度を設定した。処理時間の合計としては、59分であった。不融化工程における雰囲気成分を調整し、初期酸素濃度が21.3容積%、不融化する上記有機質材料の軟化点(℃)より50℃低い温度以上該軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度230℃以上260℃以下のときの酸素濃度)を最大20.5容積%、最小20.1容積%とした。また、前記軟化点(℃)より10℃高い温度以上のときの酸素濃度(すなわち、290℃以上382℃以下のときの酸素濃度)を最大19.4容積%、最小16.3容積%とした。また、不融化する有機質材料の軟化点(℃)より20℃低い温度以上該軟化点(℃)より10℃高い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度260℃以上290℃以下のときの酸素濃度)は、最大20.3容積%、最小19.4容積%とした。平均酸素濃度は19.8容積%であった。不融化したピッチ繊維の酸素(O)含有量(%)は、不融化処理した有機質材料を用いて測定した。
【0059】
次いで、上記不融化した有機質材料を、賦活化した。具体的に、不融化したピッチ繊維ウェブシートを947℃で41分間飽和水蒸気に暴露し、賦活処理をおこない、炭素材料(繊維状活性炭)を得た。得られた繊維状活性炭の繊維径、断面積、強度、伸度及び引張弾性率は、得られた繊維状活性炭を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
まず、有機質材料として石炭系ピッチ原料を、溶融押出し機により溶融して押出し、紡糸機及びサクションガン方式の延伸機により牽引細化し、単糸径約20μmの石炭系ピッチ長繊維からなり、目付け量(450g/m
2)のウェブシートを調製した。得られた長繊維の軟化点は、280℃であった。
【0061】
得られたウェブシートを、有機質材料の搬送方向に複数の室に区画されており、各室の雰囲気が有機質材料の搬送方向に向かうにつれて漸次高くなるように設定されている不融化炉に搬送し、不融化処理をおこなった。不融化工程における雰囲気温度としては、125℃から最終382℃まで、昇温速度が1〜9℃/分の範囲内となるよう(平均昇温速度が4℃/分としつつ、前記軟化点(℃)より50℃低い温度以上、前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの昇温速度が1℃/分〜3℃/分)、各室の雰囲気温度及び有機質材料の搬送速度を設定した。処理時間の合計としては、59分であった。不融化工程における雰囲気成分を調整し、初期酸素濃度が32.0容積%、不融化する上記有機質材料の軟化点(℃)より50℃低い温度以上該軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度230℃以上260℃以下のときの酸素濃度)を最大28.1容積%、最小26.2容積%とした。また、前記軟化点(℃)より10℃高い温度以上のときの酸素濃度(すなわち、290℃以上382℃以下のときの酸素濃度)を最大25.6容積%、最小20.8容積%とした。また、不融化する有機質材料の軟化点(℃)より20℃低い温度以上該軟化点(℃)より10℃高い温度以下のときの酸素濃度(すなわち、雰囲気温度260℃以上290℃以下のときの酸素濃度)は、最大28.1容積%、最小26.2容積%とした。平均酸素濃度は26.9容積%であった。不融化したピッチ繊維の酸素(O)含有量(%)は、不融化処理した有機質材料を用いて測定した。
【0062】
次いで、上記不融化した有機質材料を、賦活化した。具体的に、不融化したピッチ繊維ウェブシートを窒素雰囲気下947℃で41分間飽和水蒸気に暴露し、賦活処理をおこない、炭素材料(繊維状活性炭)を得た。得られた繊維状活性炭の繊維径、断面積、強度、伸度及び引張弾性率は、得られた繊維状活性炭を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1〜3は、不融化工程における雰囲気温度を、有機質材料の軟化点(℃)より80℃以上低い温度から、前記軟化点より70℃以上高い温度まで、昇温させつつ、不融化工程における雰囲気成分を、平均酸素濃度が25容積%以上40容積%以下とし、前記軟化点(℃)より50℃低い温度以上前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度が20容積%以上27.5容積%以下としたことから、不融化工程において炭素材料とする有機質材料の融着の発生を抑制しつつ、得られた炭素材料の強度を向上させることが可能であった。
【0065】
一方、比較例1は、不融化工程における雰囲気成分が、平均酸素濃度が25容積%未満であったことから、得られた炭素材料は、機械的強度に劣るものであった。また、比較例2では、不融化する有機質材料の軟化点(℃)より50℃低い温度以上前記軟化点(℃)より20℃低い温度以下のときの酸素濃度が27.5%を超える場合を含むものであったことから、有機質材料の融着が発生した。