特許第6677557号(P6677557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677557
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/10 20060101AFI20200330BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20200330BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20200330BHJP
【FI】
   G01J5/10 C
   G06F1/20 Z
   F24F11/88
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-70195(P2016-70195)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181346(P2017-181346A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 圭
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−242041(JP,A)
【文献】 特開2014−002124(JP,A)
【文献】 特開2014−074948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0123562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 − F24F 11/89
F24F 110/00
F24F 120/00
F24F 130/00
F24F 140/00
G01J 5/00 − G01J 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICT機器を収容するラックの表面温度を非接触型の温度センサによって監視する温度監視システムの前記温度センサの設置を支援するための支援装置であって、
前記ラックを配置するための3次元空間の第1方向に沿って並んだ複数の前記ラックから成るラック列の前記第1方向の長さと前記3次元空間の前記第1方向と垂直な第2方向の前記ラック列の高さとを含む前記ラック列の寸法データと、前記3次元空間の前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向に隣り合う前記ラック列同士の前記第3方向の間隔を含む間隔データと、前記温度センサの視野角を含む視野角データと、
監視対象のラック列と前記第3方向に隣り合う他のラック列の上面における温度センサ位置を示す温度センサ位置データとに基づいて、前記3次元空間における前記温度センサの監視可能領域データを生成する監視可能領域データ生成部と、
前記監視可能領域データに基づいて、監視範囲の情報を表示装置に表示する表示制御部と
前記寸法データと、前記間隔データと、前記監視可能領域データとに基づいて、前記監視対象のラック列が監視可能領域に含まれるような温度センサ設置位置を示す推奨温度センサ位置データを生成する温度センサ位置データ生成部と
を有し、
前記表示制御部は、監視範囲の情報として、前記推奨温度センサ位置データの前記温度センサ設置位置を示す温度センサイメージを前記ラック列を示すラック列イメージとともに前記表示装置に表示する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の支援装置において、
外部からの操作を入力する操作入力部と、
前記間隔データを生成する間隔データ生成部とを更に有し、
前記表示制御部は、前記操作入力部に入力された操作に応じて、前記表示装置に前記ラック列を示すラック列イメージを表示し、
前記間隔データ生成部は、前記表示装置に表示された前記第3方向に隣り合う前記ラック列イメージ間の距離に応じて前記間隔データを生成する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の支援装置において、
前記監視可能領域データ生成部は、前記間隔データが変更された場合に、変更された前記間隔データに基づいて前記監視可能領域データを更新し、
前記表示制御部は、前記監視可能領域データの更新に応じて、前記監視範囲の情報の表示を更新する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の支援装置において、
前記監視可能領域データ生成部は、前記寸法データが変更された場合に、変更された前記寸法データに基づいて前記監視可能領域データを更新し、
前記表示制御部は、前記監視可能領域データの更新に応じて、前記監視範囲の情報の表示を更新する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項5】
請求項に記載の支援装置において、
前記温度センサ位置データ生成部は、監視対象のラック列の前記高さおよび前記間隔と、前記視野角とに基づいて、視野幅を算出するとともに、前記視野幅と、前記監視対象のラック列の前記長さとに基づいて、前記監視対象のラック列の表面温度を監視するために必要な前記温度センサの個数と前記監視対象のラック列に対する前記温度センサの前記第1方向の位置を算出することにより、前記温度センサ位置データを生成する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項6】
ICT機器を収容するラックの表面温度を非接触型の温度センサによって監視する温度監視システムの前記温度センサの設置をコンピュータを用いて支援するための支援方法であって、
前記コンピュータが、前記ラックを配置するための3次元空間の第1方向に沿って並んだ複数の前記ラックから成るラック列の前記第1方向の長さと前記3次元空間の前記第1方向と垂直な第2方向の前記ラック列の高さとを含む前記ラック列の寸法データと、前記3次元空間の前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向に隣り合う前記ラック列同士の前記第3方向の間隔を含む間隔データと、前記温度センサの視野角を含む視野角データと、監視対象のラック列と前記第3方向に隣り合う他のラック列の上面における温度センサ位置を示す温度センサ位置データとに基づいて、前記3次元空間における前記温度センサの監視可能領域データを生成するステップと、
前記コンピュータが、前記寸法データと、前記間隔データと、前記監視可能領域データとに基づいて、監視対象のラック列が監視可能領域に含まれるような温度センサ設置位置を示す推奨温度センサ位置データを生成するステップと、
前記コンピュータが、監視範囲の情報として、前記推奨温度センサ位置データの前記温度センサ設置位置を示す温度センサイメージを前記ラック列を示すラック列イメージとともに表示装置に表示するステップと
を含む
ことを特徴とする支援方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項に記載された各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデータセンタ等の施設におけるICT機器を収容するラックの表面温度を非接触型の温度センサによって監視する温度監視システムにおける非接触型温度センサの設置を支援するための支援装置、支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等のICT(Information and Communication Technology)機器が設置されたデータセンタやサーバルーム等の施設では、ICT機器を安全に運用するため、空調システムによってICT機器が収容される空間の温度が管理されている。
例えば、データセンタ向けの空調システムでは、ICT機器を収容したラックを複数列並べて配置し、ラック列間の空間(通路)をICT機器からの空気が排気される通路(ホットアイル)と、床や天井等から冷気が給気される通路(コールドアイル)とに分けて空調制御を行うことにより、ラック列が設置される空間の温度が所定値になるようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
他方、オフィス空間などでは、サーモパイルアレイセンサなどの非接触の温度センサを利用して、人の在不在検知による照明制御や、分布を考慮した空調制御を行う技術の開発が進められている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−63049号公報
【特許文献2】特開2014−16223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したデータセンタの多くは、ICT機器の冷却状態等の把握・監視を目的として、接触型の温度センサが多点設置されている。しかし、接触型の温度センサは温度の計測できる領域が設置地点のみに限定され、詳細な温度把握・監視が困難であるため、サーモパイルアレイセンサなどの非接触型の温度センサによる面的な温度計測が求められている。 一般に、オフィスにおいては、上記非接触型温度センサは床を垂直に観測する向きで天井に設置されるケースが多い。このとき、床から天井までの高さは通常一定であるため、各温度センサの監視可能領域は一定であり、センサの水平方向設置位置は、例えば、この監視可能領域が監視したい領域を含むように決めればよい。
【0006】
しかし、データセンタにおいては、例えば対向するラック間で、ラック上部にセンサを設置する場合、ラック間距離に依存して監視可能な領域の広さが変化する。このとき、ラックが多数ある場合にラック間距離が一律ではなかったり、ラック間距離が最終確定してなかったりすると、複数通りのラック間距離を想定したセンサ配置計画が必要になる。すなわち、監視したい領域が監視可能領域に含まれるようなセンサの設置位置はそれぞれのラックの間の距離によって変化する。このとき、それぞれのセンサについて、実際にセンサを設置し、熱画像を見て監視領域を確認しながら設置位置を決める方法は大きな作業コストがかかる。計算により監視可能領域を求めるにしても、ラック間距離が複数ある場合は計算ミスが発生する可能性が高くなる。また、ラック間距離が最終確定していない場合(ラックの配置とセンサの配置を同時に計画する場合など)、例えばラック列を3列横に配置するとして、真ん中のラック列を右に寄せると、右側のラック列間距離が小さくなると同時に、左側のラック列間距離が大きくなる。これらの点などについて計算ミスや見落としが発生しやすく、設置のやり直しやセンサの過剰発注、または不足による追加発注など、非効率の原因となるおそれがある。
【0007】
このように、データセンタにおいて非接触温度センサを用いた温度監視システムを実現する際、システム導入時やレイアウト変更時における温度センサの調達作業で非効率が発生しやすく、改善が必要であると本願発明者らは考えた。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、非接触型温度センサを用いた温度監視システムの導入時やレイアウト変更時におけるセンサ調達作業の非効率を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る支援装置(1)は、ICT機器を収容するラック(50)の表面温度を温度センサ(6)によって監視する温度監視システム(100)の温度センサの設置を支援するための支援装置であって、ラックを配置するための3次元空間(30)の第1方向(Y)に沿って並んだ複数のラックから成るラック列(5)の第1方向の長さ(L)と3次元空間の第1方向と垂直な第2方向(Z)のラック列の高さ(h)とを含むラック列の寸法データ(141)と、3次元空間の第1方向および第2方向と垂直な第3方向(X)に隣り合うラック列同士の第3方向の間隔(d)を含む間隔データ(143)と、温度センサの視野角(φ)を含む視野角データ(142)と、任意の温度センサ位置を示す温度センサ位置データ(144)とに基づいて、3次元空間における温度センサの監視可能領域データ(145)を生成する監視可能領域データ生成部(17)と、監視可能領域データに基づいて、監視範囲の情報を表示装置(16)に表示する表示制御部(15)とを有することを特徴とする。
【0010】
上記支援装置は、外部からの操作を入力する操作入力部(11)と、間隔データを生成する間隔データ生成部(12)とを更に有し、表示制御部は、操作入力部に入力された操作に応じて表示装置にラック列を示すラック列イメージ(45)を表示し、間隔データ生成部は、表示装置に表示された第3方向に隣り合うラック列イメージ間の距離に応じて間隔データを生成してもよい。
【0011】
上記支援装置は、温度センサ位置データ生成部(13)をさらに有し、温度センサ位置データ生成部は、寸法データと、間隔データと、監視可能領域データとに基づいて、監視対象のラック列が監視可能領域に含まれるような温度センサ設置位置を示す推奨温度センサ位置データを生成し、表示制御部は、監視範囲の情報として、温度センサ設置位置を示す温度センサイメージ(46)をラック列イメージとともに表示装置に表示してもよい。
【0012】
上記支援装置において、表示制御部は、温度センサの監視可能領域(61)の情報を表示装置に表示する。監視可能領域(61)の情報の表示方法は、ラック列イメージの監視可能領域部分の色を変える、線を表示する、図形を表示する、などの方法を用いることができる。
【0013】
上記支援装置において、監視可能領域データ生成部は、間隔データが変更された場合に、変更された間隔データに基づいて監視可能領域データを更新し、表示制御部は、監視可能領域データの更新に応じて、監視範囲の情報の表示を更新してもよい。
【0014】
上記支援装置において、監視可能領域データ生成部は、寸法データが変更された場合に、変更された寸法データに基づいて監視可能領域データを更新し、表示制御部は、監視可能領域データの更新に応じて、監視範囲の情報の表示を更新してもよい。
【0015】
上記支援装置において、温度センサ位置データ生成部は、監視対象のラック列の高さおよび間隔と視野角とに基づいて、視野幅(W)を算出するとともに、視野幅と監視対象のラック列の長さとに基づいて、監視対象のラック列の表面温度を監視するために必要な温度センサの個数(n)と監視対象のラック列に対する温度センサの第1方向の位置を算出することにより、温度センサ位置データを生成してもよい。
【0016】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を括弧を付して記載している。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したことにより、本発明によれば、ラック列間隔に応じた監視可能領域の変化を確認することができ、これらの見落としや計算ミスを防ぐことで、温度監視システムの導入時や温度監視システムが導入されたサーバルームのレイアウト変更時の温度センサの調達作業を効率化し、システムの導入コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る支援装置の支援対象である温度監視システムの構成を示す斜視図である。
図2】本発明に係る支援装置の支援対象である温度監視システムの構成を示す平面図である。
図3】温度センサの配置例を示す図である。
図4】温度センサの視野角に基づく温度検出可能領域の一例を示す図である。
図5】温度センサの監視対象のラック列に対する監視可能領域の一例を示す図である。
図6】複数の温度センサを配置した場合の監視可能領域とラック列との関係を示す図である。
図7】図本発明の一実施の形態に係る支援装置の構成を示す図である。
図8】支援装置の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図9】支援装置の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図10】支援装置の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図11】監視範囲の情報を表示する処理の流れを示すフロー図である。
図12】視野幅Wの算出方法を説明するための図である。
図13】温度センサアイコンを表示する処理の流れを示すフロー図である。
図14】支援装置の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図15】支援装置の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図16】推奨温度センサ位置データの生成方法を説明するための図である。
図17】温度センサ位置データの生成方法の処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0020】
<温度監視システム>
図1は、本発明の一実施の形態に係る支援装置の支援対象である温度監視システムの構成を示す斜視図であり、図2は、上記温度監視システムの構成を示す平面図である。
【0021】
図1に示される温度監視システム100は、例えばデータセンタやサーバルーム等においてICT機器を収容するラックの表面温度を非接触型の温度センサによって監視するシステムである。本発明の一実施の形態に係る支援装置は、温度監視システム100で使用される非接触型の温度センサの設置を支援するための装置である。
【0022】
先ず、温度監視システムについて説明する。
図2,3に示される温度監視システム100は、データセンタやサーバルーム等の所定の3次元空間30に配置されたラック50の表面温度を監視する。
【0023】
ここで、ラック50の表面温度とは、ラック50単体の表面の温度のみならず、ラック50に収容されたICT機器等の表面の温度も含む。
【0024】
ラック50は、ICT機器(図示せず)を収容する台である。ラック50としては、19インチラック等を例示することができる。ラック50は、3次元空間30のY方向(第1方向)に沿って複数並べて配置され、一つのラック列5を構成している。例えば、図1、2には、3次元空間30に10個のラック50から成る5組のラック列5がX軸方向(第3方向)に所定の間隔をもって配置されている場合が示されている。
【0025】
3次元空間30(以下、単に、「空間30」と表記することがある。)には、少なくとも1つの空調機33が配置されており、当該空間の温度が所定値になるように制御されている。具体的には、図1、2に示されるように、X軸方向に隣り合うラック列5間の通路を、ICT機器からの空気が排気されるホットアイル32と、床39(または天井等)に設置された冷却ファン34から冷気が給気されるコールドアイル31とに分けて空調制御を行うことにより、空間30の温度が所定値になるように制御されている。なお、図2において、各ラック50に付された模様は、ラック50(ICT機器)内を流れる空気の向きを表している。
【0026】
ラック列5の上面50A、すなわちラック列5の床39に固定される面とZ方向(第2方向)に反対側の面には、温度センサ6が設置されている。図2に示されるように、夫々の温度センサ6は、例えばセンサハブ35を介して接続されており、各温度センサ6によって検出されたラック列5の表面温度を示すデータ(例えば熱画像データ)は、LAN等の通信回線36を通ってPC等の監視端末37や上位システム38等に送信される。
【0027】
監視端末37は、受信したデータに基づいて、ラック列5等の熱画像等をLCD等の表示装置に表示する。ユーザは、監視端末37を用いることにより、ラック列5等の表面温度分布を知ることができ、空調の冷却状況、熱だまり、および異常発熱等の発生を認識することが可能となる。
【0028】
ここで、温度センサ6について詳細に説明する。
温度センサ6は、物体の表面温度を二次元的に計測する非接触型センサである。本実施の形態では、温度センサ6がサーモパイルアレイセンサである場合を一例として説明する。
【0029】
また、本実施の形態では、センサ設置位置の制約の一例として、温度センサ6は、監視対象のラック列5とX方向に隣り合う他のラック列5の上面50Aに設置されるものとする。具体的には、図3に示すように、温度センサ6は、監視対象のラック列5_1とX方向に隣り合う他のラック列5_2の上面50Aに、温度センサ6の温度検出面Sがラック列5_1の監視対象面50Bの方向を向くように配置されるものとする。ここで、温度検出面Sとは、温度センサにおいて温度を検知することができるセンサ表面であり、例えばサーモパイルアレイセンサの場合には、受光素子内部の複数の熱電対が2次元的に配列された面である。
【0030】
図3において、参照符号φは温度センサ6の視野角であり、例えばサーモパイルアレイセンサ等の温度センサの仕様書等に記載されている値である。また、参照符号Pは、温度センサ6の温度検出面Sと垂直な温度センサ6の軸であり、温度センサ6の温度検出面Sの向きを表している。
【0031】
温度センサ6は、視野角φに基づいて温度検出可能領域60が定められている。
図4に、温度センサ6の視野角φに基づく温度検出可能領域60の一例を示す。本実施の形態では、温度センサ6の温度検出可能領域60が図4に示すような正四角すい状であるものとして説明する。
【0032】
例えば、温度センサ6の温度検出可能領域60が正四角すい状である場合、視野角φは、上記正四角すいの頂点Aから底面に垂直に分割したときの断面の三角形の頂点Aの角度である。この場合、監視対象のラック列に対する温度センサ6の監視可能領域61は、図5に示す範囲となる。すなわち、監視対象のラック列5_1とX方向に隣り合うラック列5_2に設置した温度センサ6によってラック列5_1の表面温度を監視することが可能な範囲(監視可能領域61)は、正四角すい状の温度検出可能領域60を監視対象のラック5_1の面50Bによって切断した場合の断面形状と等しくなり、図5に示すような台形状となる。
【0033】
図5の例の場合、ラック列5_1の面50Bのうち1つの温度センサ6によって表面温度の監視が可能な範囲は、ハッチングが付された監視可能領域61となる。そのため、ラック列5_1の面50B全体を漏れなく監視できるようにするためには、図2に示したように、監視対象の1つのラック列5_2に対して複数の温度センサ6をY軸方向に適切に並べて設置すればよい。これによれば、図6に示すように、1つのラック列5_1の表面温度を漏れなく監視することが可能となる。なお、監視対象はラック列全体には限られず、必要に応じて指定するようにしてもよい。
【0034】
ここで、ラック列5に対する温度センサ6の監視可能領域61のY方向の長さを視野幅Wと称する。例えば、図5に示すように、温度センサ6の正四角すい状の温度検出可能領域60の底面の一つの辺60Aをラック列5と床39との境界に合せた場合に定められる監視可能領域61の短辺(上底)abの長さを視野幅Wとする。
【0035】
<支援装置>
次に、本実施の形態に係る支援装置1について説明する。
図7は、本発明の一実施の形態に係る支援装置の構成を示す図である。
本実施の形態に係る支援装置1は、上述した温度監視システム100における温度センサ6の設置を支援するための装置であり、温度センサ6の監視可能領域61を自動的に算出する機能と、算出した監視可能領域61の情報を含む監視範囲の情報をラック列の配置情報とともに表示装置に表示させる機能と、推奨する温度センサの設置位置を算出する機能とを有している。
【0036】
図7に示すように、支援装置1は、操作入力部11、間隔データ生成部12、温度センサ位置データ生成部13、記憶部14、表示制御部15、監視可能領域データ生成部17、および表示装置16を備える。
【0037】
支援装置1は、例えば、ハードウェア資源であるコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから実現される。より具体的には、上記コンピュータを構成する、CPU等のプログラム処理装置、およびRAM(Random Access Memory)、ROM、およびHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置と、キーボード、マウス、およびタッチパネル等の外部から情報を入力するための入力装置と、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して各種情報の送受信を有線または無線で行うための通信装置と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置等のハードウェア資源がプログラムによって制御されることにより、上述した操作入力部11、温度センサ位置データ生成部13、間隔データ生成部12、記憶部14、および表示制御部15が実現される。なお、上記プログラムは、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供されるようにしてもよい。
【0038】
操作入力部11は、ユーザからの操作を入力するキーボード、マウス、およびタッチパネル等であり、上記操作に応じた信号を出力する。
【0039】
間隔データ生成部12は、3次元空間30のX軸方向に隣り合うラック列5同士のX軸方向の間隔dを含む間隔データ143を生成する機能部である。
【0040】
監視可能領域データ生成部17は、寸法データ141と、視野角データ142と、間隔データ143と、温度センサ位置データ144とに基づいて、温度センサの監視可能領域61の情報を含む監視可能領域データ145を生成する機能部である。
【0041】
温度センサ位置データ生成部13は,3次元空間30における温度センサの設置位置を示す温度センサ位置データ144を生成する機能部である。温度センサ位置データ生成部13は、例えば、ユーザのマウス操作等により、温度センサを示すアイコン等のイメージがドラッグ&ドロップ等によって画面上に表示された場合に、操作入力部11から出力された上記操作に応じた信号に基づいて、温度センサ位置データ144を生成する。また、詳細は後述するが、温度センサ位置データ生成部13は、寸法データ141と、視野角データ142と、間隔データ143とに基づいて、推奨する温度センサ設置位置を示す温度センサ位置データ144を自動生成する。
【0042】
記憶部14は、監視可能領域データ生成部17による演算に用いられる各種データを記憶する機能部である。記憶部14には、例えば、ラック列5のY軸方向の長さLとラック列5のZ軸方向の長さ(高さ)hとを含むラック列の寸法データ141と温度センサ6の視野角φを含む視野角データ142とが予め記憶されるとともに、間隔データ生成部12によって生成された間隔データ143と、温度センサ位置データ生成部13によって生成された温度センサ位置データ144と、監視可能領域データ生成部14によって生成された監視可能領域データ145が記憶される。
【0043】
表示制御部15は、LCD等の表示装置16に各種情報を表示させるための機能部である。例えば、表示制御部15は、操作入力部11を介して入力されたユーザの操作に応じて、3次元空間30のX−Y平面に対応する配置領域41を表示装置16の画面上に表示するとともに、記憶部14に記憶された寸法データ141や温度センサ位置データ144、監視可能領域データ145等に基づいて、ラック列5を示すラック列アイコン45の他に、温度センサ6を示す温度センサアイコン46および温度センサ6の視野角φに基づく監視可能領域61等の監視範囲の情報を表示装置16の画面上に表示する。なお、ラック列アイコン45は、ラック列イメージの一例であり、温度センサアイコン46は、温度センサイメージの一例である。
【0044】
図8〜10は、支援装置1の表示装置16に表示される表示画面の一例を示す図である。
【0045】
なお、以下では、温度センサ位置データ生成部13が、寸法データ141と、視野角データ142と、間隔データ143とに基づいて、複数の温度センサの監視可能領域61により、ラック列表面全体が監視対象としてカバーされるように温度センサ位置データ144を自動算出する場合を例にとり、説明する。
【0046】
図8〜10に示すように、支援装置1は、表示装置16の表示画面40に、空間30のX−Y平面に対応する配置領域41と、空間30に設置可能なラック列5を示すコンポーネントを少なくとも一つ含むパレット領域42とを表示する。例えば、配置領域41に表示されるグリッド(目盛り)は、空間30のX−Y平面の長さに対応している。
【0047】
例えば、ユーザから、パレット領域42内の所定のラック列5を示すコンポーネント420を配置領域41上にドラック&ドロップする操作が操作入力部11を介して入力された場合、操作入力部11がその操作に応じた信号を出力し、表示制御部15が操作入力部11から出力された信号に応じて、選択されたラック列5に対応するラック列アイコン45を配置領域41上に表示させる。
【0048】
また、ユーザから、配置領域41に配置されたラック列アイコン45に対するドラック&ドロップの操作が操作入力部11を介して入力された場合、操作入力部11がその操作に応じた信号を出力し、表示制御部15が操作入力部11から出力された信号に応じて、選択されたアイコン45の配置領域41上の表示位置を変更する(アイコン45の移動)。
【0049】
また、上述した図8と同様の操作を行うことにより、図9に示すように、複数のラック列5に対応するラック列アイコン45_1〜45_m(mは2以上の整数)をグラフィック画面41上に配置することができる。
このとき、本実施の形態に係る支援装置1は、隣り合うラック列アイコン45_1〜45_nが、少なくとも一部がX軸方向に互いに対向する面を有している場合には、監視範囲の情報として、例えば、互いの表面全体の温度を監視するための温度センサ6を示す温度センサアイコン46を配置領域41に表示する。つまり、表示されているラック列が、複数の温度センサの監視可能領域により監視対象としてカバーされるように温度センサ位置が計算されることを予めユーザに認知させた上で、監視可能領域を示す情報として温度センサアイコン46を表示する。なお、温度センサアイコン46の具合的な表示方法については、後述する。
【0050】
また、図10に示すように、支援装置1は、監視範囲の情報として、監視可能領域61を示すアイコン47を表示する。
【0051】
ここで、アイコン47の形状は特に制限されないが、例えば図10に示すように、アイコン47を監視可能領域61をZ方向から認識できるような表示であることが好ましい。より具体的には、アイコン47は、監視可能領域61の視野幅Wが認識できるような表示であることが好ましい。例えば、図5に示した監視可能領域61の点a,b(視野幅W)と、温度センサ6の温度検出面Sとを結んだ三角形状としてもよい。または,ラック列アイコン45_1〜45_mの、図5に示した監視可能領域61の点a,bを結んだ線に対応する部分に視野幅Wを示す線状のアイコンを表示してもよいし、または同じ部分をアイコンを用いずに単に色を変更して表示してもよい。
【0052】
また、監視可能領域61を示すアイコン47の表示方法としては、温度センサアイコン46が画面上に配置されたときに、表示制御部15がユーザからの操作入力に依らずに、監視可能領域データ145に基づいて自動的にアイコン47を表示してもよいし、表示制御部15がユーザからの操作入力に応じて、監視可能領域データ145に基づいてアイコン47を表示してもよい。例えば、ユーザから、配置領域41に表示されている温度センサアイコン46を選択する操作が操作入力部11を介して入力された場合には、操作入力部11がその操作に応じた信号を出力し、表示制御部15が操作入力部11から出力された信号に応じて、図10に示すように、選択された温度センサアイコン46に対応する温度センサ6の監視可能領域61を示すアイコン47を配置領域41上に表示させてもよい。
【0053】
次に、監視範囲の情報の表示方法について詳細に説明する。
ここでは、ユーザのマウス操作等により、パレット領域42内からコンポーネント420〜422のうちの何れか一つが選択され、配置領域41にドラック&ドロップすることによってラック列が画面上に表示された後に、ユーザによるドラッグ&ドロップ等の操作により、温度センサアイコン46がそのラック列上に配置される場合を例にとり、説明する。
【0054】
図11は、監視範囲の情報を表示する処理の流れを示すフロー図である。
先ず、例えば、ユーザのマウス操作等により選択された1つのパレットに対応するラック列アイコン45が配置領域41内に表示されると、間隔データ生成部12が、互いに少なくとも一部がX方向に対向する面を有する他のラック列アイコン45があるか否かを判定する(S1)。
【0055】
ステップS1において、上記他のラック列アイコン45がない場合には、間隔データ生成部12は間隔データ143を生成せず、表示制御部15は選択されたコンポーネントに対応するラック列アイコン45のみを配置領域41に表示させて、監視範囲の情報を表示する処理を終了する。
【0056】
一方、ステップS1において、上記他のラック列アイコン45がある場合には、間隔データ生成部12が間隔データ143を生成する(S2)。具体的には、間隔データ生成部12は、配置領域41に表示された互いに隣り合う2つのラック列アイコン45の配置領域41上の距離から、上記2つのラック列アイコン45に対応する2つのラック列5間の空間30上のX方向の距離(間隔d)を算出し、算出した間隔dを含む間隔データ143を記憶部14に記憶する。
【0057】
次に、例えば、ユーザによるドラッグ&ドロップ等の操作により、画面上に表示されたラック列アイコン45上に温度センサアイコン46が配置されると、温度センサ位置データ生成部13が、温度センサ位置データ144を生成する(S3)。具体的には、温度センサ位置データ生成部13は、温度センサアイコン45の画面上の位置に基づいて、温度センサ6の空間30におけるX座標、Y座標、Z座標の情報を含む温度センサ位置データ144を生成し、記憶部14に記憶する。
【0058】
ここでは、温度センサアイコン45が、監視対象ラック列に対向するラック列の、監視対象ラック列と対向する面に沿って配置され、ユーザは、温度センサアイコン45を操作することによって、温度センサ6のY座標を決めることができるものとする。すなわち、温度センサ6のX座標はラック列のX座標によって決まり、温度センサ6のY座標はユーザが配置した温度センサアイコン45の画面上の位置によって決まる。また、温度センサ6のZ軸方向の高さはラック列5のZ軸方向の高さに対して無視できるものとすると、温度センサ6のZ座標は、その温度センサ6を設置するラック列5の高さ(h)となる。
【0059】
次に、監視可能領域データ生成部17が、監視可能領域データ145を生成する(S4)。
具体的には、先ず、監視可能領域データ生成部17が、指定された温度センサ6の種類に応じた視野角データ142と、寸法データ141と、ステップS2で生成した間隔データ143と、を記憶部14から読み出し、その読み出したデータに基づいて視野幅Wを算出する。
【0060】
図12は、視野幅Wの算出方法を説明するための図である。
上述したように、温度センサ6は、図12において、ラック列5_2の上面の、監視対象のラック列5_2に近い側の端部Aに配置されているものとし、温度センサ6のZ軸方向の高さはラック列5のZ軸方向の高さに対して無視できるものとする。また、L≧Wであるとする。
【0061】
上述したように、視野幅Wとは、ラック列5に対する温度センサ6の監視可能領域61のY方向の長さであり、角度θrを、温度センサ6の正四角すい状の温度検出可能領域60の下方の側面がラック列5と床39との境界に接する値にした場合に定められる監視可能領域61の短辺abの長さである(図5参照)。
【0062】
視野幅Wは、図12に示される空間30のX−Z平面において、温度検出可能領域60の底面60Aの一つの辺CBに平行(角Aの二等分線となる軸Pに垂直)で監視対象のラック列5_1の上面の端部Sを通る線分GFの長さに等しい。
そこで、ステップS4では、監視可能領域データ生成部17が、下記式(1)を演算することにより、視野幅Wを算出する。ここで、dはラック列5_1とラック列5_2との間隔であり、φは温度センサ6の視野角である。また、θrは、床39の面に平行且つAおよびS点を通る線分ADと軸Pとのなす角であり、下記式(2)で表される。式(2)において、hはラック列5_1,5_2の高さである。
【0063】
【数1】
【0064】
【数2】
【0065】
次に、監視可能領域データ生成部17は、算出した視野幅Wと、ステップS3で生成された温度センサ位置データ144とに基づいて、監視可能領域データ145を生成する。より具体的には、監視可能領域データ生成部17は、視野幅Wに基づいてアイコン47のY方向の長さ(Y方向の表示範囲)を示す情報を生成するとともに、温度センサ位置データ144に基づいて、アイコン47を表示する画面上の位置(X,Y座標)の情報を生成し、監視可能領域データ145として記憶部14に記憶する。
【0066】
次に、表示制御部15が、ステップS4で生成された監視可能領域データ145に基づいて、監視範囲の情報を画面上に表示する(S5)。具体的には、表示制御部15は、監視可能領域データ145に基づいて、監視可能領域61を示すアイコン47を、監視範囲の情報として配置領域41に表示する。
以上の処理により、温度センサの監視範囲の情報を画面に表示することができる。
【0067】
次に、温度センサ位置データ144を自動算出する場合の温度センサアイコン46の表示方法について詳細に説明する。
図13は、温度センサアイコンを表示する処理の流れを示すフロー図である。
【0068】
先ず、間隔データを生成するまでの処理は、上述した図11のステップS1,S2と同様である。すなわち、ユーザのマウス操作等により選択された1つのパレットに対応するラック列アイコン45が配置領域41内に表示されると、間隔データ生成部12が、互いに少なくとも一部がX方向に対向する面を有する他のラック列アイコン45があるか否かを判定し、他のラック列アイコン45がない場合には、ラック列アイコン45のみを配置領域41に表示させて、監視範囲の情報を表示する処理を終了し、他のラック列アイコン45がある場合には、間隔データ生成部12が間隔データ143を生成し、記憶部14に記憶する。なお、間隔データ143の生成方法は、上述のとおりである。
【0069】
次に、監視可能領域データ生成部17が視野幅Wを算出する(S8)。視野幅Wの算出方法は、ステップS4と同様である。
【0070】
次に、温度センサ位置データ生成部13が、ステップS2で生成された間隔データ143と、寸法データ141と、視野角データ142と、ステップS8で算出された視野幅Wとに基づいて、推奨する温度センサの位置を示す温度センサ位置データ144(以下、「推奨温度センサ位置データ144」と称する。)を生成する(S9)。なお、ステップS9の具体的な処理内容については後述する。
【0071】
次に、表示制御部15が、ステップS9で生成した推奨温度センサ位置データ144に基づいて、温度センサアイコン46を、監視範囲の情報として配置領域41に表示する(S10)。このとき、監視範囲の情報として監視可能領域61を示すアイコン47も表示してもよい。
【0072】
その後、温度センサ位置データ生成部13は、配置領域41におけるラック列アイコン45の表示位置が変更されたか否かを判定する(S11)。例えば、ユーザ操作により、配置領域41に表示されているラック列アイコン45の一つが選択されて、配置領域41内の別の位置に移動された場合には、ステップS1に戻り、上述の処理(S1〜S10)が再度実行される。これにより、移動したラック列アイコン45に関連する推奨温度センサ位置データ144が更新され、更新された推奨温度センサ位置データ144に基づいて監視範囲の情報が更新される。
【0073】
具体的には、例えば図14に示すように、ラック列アイコン45_2が配置領域41の左方向(−X方向)に移動した場合、移動前に比べて、ラック列アイコン45_1に対応するラック列とラック列アイコン45_2に対応するラック列との間隔dが小さくなるとともに、ラック列アイコン45_2に対応するラック列とラック列アイコン45_3に対応するラック列との間隔dが大きくなる。そのため、ラック列アイコン45_1とラック列アイコン45_2の間隔に基づく間隔データ143と、ラック列アイコン45_2とラック列アイコン45_3の間隔に基づく間隔データ143とが更新され、ラック列アイコン45_2の表示とともに、ラック列アイコン45_1〜45_3上に設置される温度センサアイコン46の表示(個数および配置)も更新される。このとき、更新対象の温度センサ6の監視可能領域を示すアイコン47が表示されている場合には、図15に示すように、温度センサアイコン46の表示とともに、アイコン47の表示も更新される。
【0074】
一方、ラック列アイコン45の表示位置が変更されていない場合には、すなわち温度センサアイコン46が表示された後にラック列アイコン45が移動していない場合には、温度センサ位置データ生成部13は、表示されているラック列アイコン45に対応するラック列5の寸法データ141が変更されたか否かを判定する(S12)。
【0075】
例えば、ユーザ操作により、操作入力部11を介して、表示しているラック列アイコン45に対応するラック列5の高さhが変更された場合には、ステップS1に戻り、変更された寸法データ141を用いて上述の処理(S1〜S11)が再度実行される。これにより、高さhが変更されたラック列アイコン45に関連する推奨温度センサ位置データ144および監視可能領域データ145が更新され、更新された推奨温度センサ位置データ144および監視可能領域データ145に基づいて温度センサアイコン46の表示位置およびアイコン47が更新される。
【0076】
一方、表示しているラック列アイコン45に対応するラック列5の長さLが変更された場合には、変更された寸法データ141に基づいて上記処理(S1〜S11)が再度実行され、長さLが変更されたラック列アイコン45に関連する推奨温度センサ位置データ144が更新され、更新された推奨温度センサ位置データ144に基づいて温度センサアイコン46の表示位置が更新される。
【0077】
一方、ラック列5の長さLまたは高さhが変更されていない場合には、推奨温度センサ位置データは変更されず、温度センサアイコン46の表示位置は更新されない。
以上の処理により、温度センサアイコン46を画面に表示させることができる。
【0078】
次に、上記ステップS9に示した推奨温度センサ位置データ144の生成方法について詳細に説明する。
【0079】
ここでは、推奨温度センサ位置データとして、監視対象のラック列が監視可能領域に含まれるために必要な温度センサの個数が最少となる温度センサの位置を示すデータを生成する場合を例にとり説明する。
【0080】
図16は、推奨温度センサ位置データの生成方法を説明するための図である。
以下の説明では、理解の容易化のために、一例として、X方向に少なくとも一部の面が向き合って配置された隣り合う2つのラック列のうち、一方のラック列の表面温度を他方のラック列の上面に設置した温度センサによって監視するものとし、各ラック列は監視対象の表面がY軸と平行になるようにX軸方向に並んで配置されるものとする。また、各ラック列は、その高さhが夫々等しいものとする。また、温度センサ6は、ラック列の上面の、監視対象のラック列に近い側の端部に配置され、温度センサ6の向き(軸P)は、Y方向に垂直であるとする。
【0081】
本実施の形態に係る推奨温度センサ位置データの生成方法では、図16に示すように、監視対象ラック列5_1に隣り合うラック列5_2のY方向の両端から所定の距離だけ離れた位置に温度センサ6を配置する。そして、ラック列5_2の両端から離れた位置に配置した温度センサ6によって監視できない領域がある場合には、上記温度センサ6に加えて更に追加の温度センサ6を配置するように、推奨温度センサ位置データ144を生成する。
【0082】
推奨温度センサ位置データ144としては、例えば、監視対象のラック列の表面温度を監視するために必要な温度センサ6の個数n(nは1以上の整数)と、監視対象のラック列に対する温度センサ6のY方向の位置とが含まれる。
【0083】
ここで、温度センサ6のY方向の位置とは、例えば、図16に示すように、監視対象のラック列5_1のX軸と平行な一方の面50Cを基準(y=0)としたときの、その基準に対する温度センサ6のY方向の位置であり、ラック列5_2のY方向の両端側に配置される1または2つの温度センサ6_1,6_nとラック列5_2の両端面からの距離Δy1(=W/2)と、隣り合う温度センサ6間のY軸方向の距離Δy2(=(L−W)/(n−1))とに基づいて決定される。
以下、図17を用いて、推奨温度センサ位置データの生成処理の流れについて説明する。
【0084】
図17は、推奨温度センサ位置データの生成方法の処理手順を示すフロー図である。
ステップS9に係る推奨温度センサ位置データの生成処理では、先ず、温度センサ位置データ生成部13が、ステップS8で算出された視野幅Wに基づいて、距離Δy1=W/2を算出する(S91)。
【0085】
次に、温度センサ位置データ生成部13が、ラック列5_1の温度を監視するために必要な温度センサの個数nを算出する(S92)。例えば、下記式(3)を演算することにより、温度センサの個数nを算出する。ここで、ceil(p)はp以上の最小の整数を返す関数であり、Lはラック列5のY軸方向の長さである。
【0086】
【数3】
【0087】
次に、温度センサ位置データ生成部13が、ステップS32で算出した温度センサの個数nが1であるか否かを判定する(S93)。n=1である場合には、温度センサ位置データ生成部13は、監視対象のラック列にX方向に隣り合う他のラック列上のy=W/2の位置に1個の温度センサ6を配置するように推奨温度センサ位置データ144を生成する(S94)。
【0088】
一方、ステップS93において、n=1でない場合、すなわちn≧2である場合には、温度センサ位置データ生成部13は、n=2であるか否かを判定する(S95)。
【0089】
ステップS95において、n=2である場合には、温度センサ位置データ生成部13は、監視対象のラック列に隣り合う他のラック列上のy=W/2の位置とy=(L−W/2)の位置に夫々温度センサ6を配置するように推奨温度センサ位置データ144を生成する(S96)。
【0090】
一方、ステップS95において、n=2でない場合、すなわちn≧3である場合には、温度センサ位置データ生成部13は、監視対象のラック列に隣り合う他のラック列上のy=W/2,(L−W/2)の位置に温度センサ6_1,6_nを夫々配置するとともに、y=W/2からy=(L−W/2)までの範囲に、Δy2=(L−W)/(n−1)の間隔で、(n−2)個の温度センサ6を配置するように推奨温度センサ位置データ144を生成する(S97)。
【0091】
<支援装置の効果>
以上、本実施の形態に係る支援装置によれば、監視対象のラック列の寸法データ141と、隣り合うラック列同士の間隔データ142と、視野角データ143と、温度センサ位置データ144とに基づいて監視可能領域データ145を生成し、生成した監視可能領域データ145に基づいて監視可能領域61を含む監視範囲の情報を表示装置に表示するので、監視可能領域61をユーザに直観的に認識させることが可能となる。これにより、温度監視システムを導入する際や、すでに温度間システムが導入されたデータセンタのレイアウトを変更する際の、温度センサ配置計画時に、ラック列間隔に応じた監視可能領域61の変化を確認できる。これにより、必要な温度センサの設置場所およびその個数を事前に見積もることが容易となり、作業コストを削減することが可能となる。また、上記監視領域の変化の見落としや計算ミスが低減され、温度センサの過剰発注や追加発注を回避することが可能となる。
【0092】
すなわち、本実施の形態に係る支援システムによれば、温度監視システムの導入時のコストを抑えることが可能となる。
【0093】
また、本実施の形態に係る支援システムによれば、3次元空間を示すグラフィック画面(配置領域41)上にラック列アイコン45を表示するとともに、表示されたラック列アイコン45_1と、当該ラック列アイコン45_1とX方向に隣り合う他のラック列アイコン45_2との間のX軸方向の距離に応じて間隔データ143を生成および更新するので、温度センサとラック列の両方の配置を設計する際にもユーザの利便性が向上する。例えば、レイアウト変更時などでラック列の配置が未確定な状況において、例えばセンサの個数を鑑みながらラック列の配置を決める場合等に特に有効である。
【0094】
また、監視範囲の情報として、温度センサ6を示す温度センサアイコン46をラック列アイコン45とともにグラフィック画面上に表示することにより、温度センサの配置をユーザに直観的に認識させることが可能となり、より容易に、より正確な温度センサの配置計画を行うことが可能となる。
【0095】
また、本実施の形態に係る支援装置によれば、例えば、グラフィック画面上のラック列アイコン45の移動や使用するラック列の種類の変更等により、隣り合うラック列同士の間隔データおよびラック列の寸法データの少なくとも一方が変更された場合には、監視可能領域を示す表示が自動的に更新されるので、ユーザの利便性を更に向上させることができる。
【0096】
更に、本実施の形態に係る支援装置によれば、ラック列の高さhおよび長さLや温度センサの視野角φ等の入手し易い情報を用いて監視可能領域データ145を生成するので、例えば、既存の温度監視システムにおいて使用するラックや温度センサの種類が変更された場合であっても、寸法データ141や視野角データ142を更新すればよく、監視可能領域データ145を生成するためのアルゴリズムを変更する必要がない。すなわち、支援対象の温度監視システムの構成変更に対して柔軟に対応することができる。
【0097】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0098】
例えば、図15には、隣り合うラック列5_1とラック列5_2とがY方向にずれがなく配置される場合の推奨温度センサ位置データの生成方法を例示したが、ラック列5_1とラック列5_2とが互いにX軸方向に少なくとも一部が対向する面を有していればよく、例えば、ラック列5_2がラック列5_1に対してY方向に±ΔY(<L)ずれていてもよい。この場合も上記と同様に、監視対象のラック列5_1の端面50Cを基準(y=0)として、温度センサ6のy方向の位置を算出することができる。
【0099】
また、グラフィック画面の表示の形態は、図8〜10等に示した例に限定されるものではない。例えば、ラック列アイコン45、温度センサアイコン46、および監視可能領域61のアイコン47の形状は、図8〜10に示したものに限定されず、種々変更可能である。また、温度センサの設置位置の情報として、温度センサアイコン46のみならず、3次元空間30上の座標情報等も画面上に表示してもよい。また、選択されたアイコン等の表示方法を変更してもよい。例えば、選択されたアイコンを点滅させる、色を反転させる等を行ってもよい。
【0100】
また、必要な温度センサ6の個数nを算出する具体的な演算として、式(3)を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、ceil(p)の代わりに、p以下の最大の整数を返す関数を用いてもよい。これによれば、例えば、一つのラック列5の面50Bの全体ではなく一部のみ表面温度が検出できればよいと考えるユーザ等のニーズにも対応することが可能となる。
【0101】
また、上記実施の形態では、推奨温度センサ位置データ144を自動算出する際の温度センサアイコン46の表示方法について説明したが(図13等参照)、温度センサ位置データ144をユーザの操作入力によって生成してもよい。
例えば、前述したように、ユーザのマウス操作等により、温度センサアイコン46がドラッグ&ドロップ等によって配置領域41上に配置された場合に、温度センサ位置データ生成14が配置領域41上の位置情報に基づいて温度センサ位置データ144を生成し、表示制御部15が、その温度センサ位置データ144と監視可能領域データ145とに基づいて監視範囲の情報を図10に示すようなアイコンで表示してもよい。
【0102】
また、上記実施の形態では、推奨温度センサ位置データとして、監視対象のラック列が監視可能領域に含まれるために必要な温度センサの個数が最少となる温度センサの位置を示すデータを生成する場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、余裕をみて最少個数より10パーセントほど多い温度センサ個数になるように推奨温度センサ位置データを算出してもよい。
【0103】
また、上記実施の形態では、監視範囲の情報の表示手法として、温度センサを示す情報(温度センサアイコン46)を表示する場合と、監視可能領域61を示す情報(アイコン47)および温度センサを示す情報(温度センサアイコン46)の双方を画面上に表示する場合とを例示したが、これに限られず、温度センサを示す情報(温度センサアイコン46)を表示せずに、監視可能領域61を示す情報(アイコン47)のみを表示してもよい。
【0104】
また、視野幅Wは図5に示したように監視可能領域の上部短辺長さとして算出したが、下記式(4)に示すようにZ方向の指定した高さvの関数W(v)を用いて、高さを指定して算出しても良い。ここで、Wlは、図5の台形状の監視可能領域の下部長辺の長さであり、図12の線分BCの長さとして下記式(5)により算出する。
【0105】
【数4】
【0106】
【数5】
【0107】
これにより、指定した高さにおける監視可能領域を確認したいユーザのニーズに対応できる。
【0108】
また、角度θrは式(2)により推奨の角度として算出したが、ユーザが指定した数値を用いてもよい。これにより、温度センサの設置角度を小さくすることでラック列の下部を監視せずに上部を広く監視したいユーザや、温度センサの設置角度を大きくすることで床の吹出口等の温度も同時に監視したいユーザのニーズに対応できる。
【0109】
また、監視範囲の情報の表示に関しては、ラック列の寸法データと、温度センサ位置データと、Z方向の高さvの関数としての視野幅W(v)とを用いて、ラック列の面50Bとその監視可能領域61を図5に示すように2次元的に表示してもよい。さらに、温度監視システムの構成を示す斜視図(図1)と温度検出可能領域(図4)と監視可能領域(図5)の情報を用いて、監視範囲の情報を3次元的に表示してもよい。
【符号の説明】
【0110】
100…温度監視システム、1…支援装置、5,5_1〜5_m…ラック列、50…ラック、50A,50B,50C…ラック列の面、6,6_1〜6_n…温度センサ、11…操作入力部、12…間隔データ生成部、13…温度センサ位置データ生成部、14…記憶部、15…表示制御部、16…表示部、17…監視可能領域データ生成部、30…3次元空間、31…コールドアイル、32…ホットアイル、33…空調機、34…冷却ファン、35…センサハブ、36…通信回線、37…監視端末、38…上位システム、39…床、40…表示画面、41…配置領域、42…パレット領域、420〜422…パレット、45,45_1〜45_m…ラック列アイコン、46…温度センサアイコン、47…監視可能領域を示すアイコン、60…温度検出可能領域、61…監視可能領域、141…寸法データ、142…視野角データ、143…間隔データ、144…温度センサ位置データ、145…監視可能領域データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17