(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料から放出された電子をエネルギー分光するエネルギー分光部と、前記エネルギー分光部でエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されている複数の検出部を備えた検出装置と、を含む電子分光装置における測定方法であって、
前記検出部の検出感度を補正するための補正係数を、前記検出部ごとに算出する補正係数算出工程と、
前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を設定して、複数の前記検出部の検出結果を取得する第1測定結果取得工程と、
前記第1測定結果取得工程で取得された複数の前記検出部の検出結果を前記補正係数で補正して、第1電子分光スペクトルデータを取得する第1データ取得工程と、
前記補正係数算出工程の前に、複数の前記検出部の検出結果を取得する処理を、前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を変更して、複数回繰り返す第3測定結果取得工程と、
を含み、
前記補正係数算出工程では、前記第3測定結果取得工程で取得された複数の前記検出部の検出結果に基づいて、前記補正係数を算出する、測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図18は、従来の電子分光装置において、シングルモードでスペクトル収集を行う場合を説明するための図である。
図18には、1回目の測定から100回目の測定まで、5個のチャンネルトロン(−2ch〜+2ch)で検出できる電子のエネルギーを記載している。以下、
図18を参照しながら、従来の電子分光装置におけるスペクトル収集について説明する。
【0008】
まず、ユーザーがスペクトルの収集条件を設定する。スペクトル収集条件は、開始エネルギーEs、終了エネルギーEe、エネルギー間隔I、指定チャンネルトロンP、および測定時間D等を含む。
【0009】
電子分光装置は、これらの条件が設定されると、指定チャンネルトロンPで開始エネルギーEsから終了エネルギーEeが検出できるように、指定チャンネルトロンPで検出されるエネルギーを変更して、繰り返し測定を行う。
図18に示す例では、開始エネルギーEs=E
1、終了エネルギーEe=E
100、指定チャンネルトロンP=+1chに設定されている。なお、測定時間Dは、1回の測定において、チャンネルトロンが電子を検出
する時間である。
【0010】
上記のスペクトル収集条件で測定を行うことにより、指定チャンネルトロンP=+1chにおいて、エネルギーE
1からエネルギーE
100の範囲の電子分光スペクトルデータを得ることができる。
【0011】
従来の電子分光装置では、上記のようにスペクトルを収集するために、繰り返し何度も測定を行わなければならないため(
図18に示す例では100回)、スペクトル収集に要する時間が長くなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、スペクトル収集に要する時間を短縮できる電子分光装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る電子分光装置は、
試料から放出された電子をエネルギー分光するエネルギー分光部と、
前記エネルギー分光部でエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されている複数の検出部を備えた検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、電子分光スペクトルデータを取得する処理部と、を含み、
前記処理部は、
前記検出部の検出感度を補正するための補正係数を、前記検出部ごとに算出する補正係数算出処理と、
前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を設定して、複数の前記検出部の検出結果を取得する第1測定結果取得処理と、
前記第1測定結果取得処理で取得された複数の前記検出部の検出結果を前記補正係数で補正して、第1電子分光スペクトルデータを取得する第1データ取得処理と、
前記補正係数算出処理の前に、複数の前記検出部の検出結果を取得する処理を、前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を変更して、複数回繰り返す第3測定結果取得処理と、
を行い、
前記補正係数算出処理では、前記第3測定結果取得処理で取得された複数の前記検出部の検出結果に基づいて、前記補正係数を算出する。
【0014】
このような電子分光装置では、検出部の検出感度を補正できるため、複数の検出部を用いて互いに異なるエネルギーの電子を同時に検出することができる。したがって、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0015】
(2)本発明に係る電子分光装置において、
前記処理部は、
前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を前記第1測定結果取得処理における電子のエネルギー範囲と異なる範囲に設定して、複数の前記検出部の検出結果を取得する第2測定結果取得処理と、
前記第2測定結果取得処理で取得された複数の前記検出部の検出結果を前記補正係数で補正して、第2電子分光スペクトルデータを取得する第2データ取得処理と、
を行い、
前記第1測定結果取得処理における複数の前記検出部が検出するエネルギーと、前記第2測定結果取得処理における複数の前記検出部が検出するエネルギーとは、重複しない。
【0016】
このような電子分光装置では、第1測定結果取得処理における複数の検出部が検出するエネルギーと、第2測定結果取得処理における複数の検出部が検出するエネルギーとは重複しないため、スペクトルを収集する際の測定の繰り返し回数を減らすことができる。したがって、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0019】
(
3)本発明に係る電子分光装置において、
前記処理部は、前記第3測定結果取得処理で取得された複数の前記検出部の検出結果から、第3電子分光スペクトルデータを取得する第3データ取得処理を行ってもよい。
【0020】
このような電子分光装置では、補正係数を算出するための第3測定結果取得処理で取得した複数の検出部の検出結果も電子分光スペクトルデータとして用いるため、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0021】
(
4)本発明に係る電子分光装置において、
前記検出部は、チャンネルトロンを含んで構成されていてもよい。
【0022】
(
5)本発明に係る電子分光装置において、
前記検出部は、複数のチャンネルトロンを含んで構成され、
前記検出部の検出結果は、前記複数のチャンネルトロンの検出結果の和であってもよい。
【0023】
(
6)本発明に係る測定方法は、
試料から放出された電子をエネルギー分光するエネルギー分光部と、前記エネルギー分光部でエネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されている複数の検出部を備えた検出装置と、を含む電子分光装置における測定方法であって、
前記検出部の検出感度を補正するための補正係数を、前記検出部ごとに算出する補正係数算出工程と、
前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を設定して、複数の前記検出部の検出結果を取得する第1測定結果取得工程と、
前記第1測定結果取得工程で取得された複数の前記検出部の検出結果を前記補正係数で補正して、第1電子分光スペクトルデータを取得する第1データ取得工程と、
前記補正係数算出工程の前に、複数の前記検出部の検出結果を取得する処理を、前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を変更して、複数回繰り返す第3測定結果取得工程と、
を含み、
前記補正係数算出工程では、前記第3測定結果取得工程で取得された複数の前記検出部の検出結果に基づいて、前記補正係数を算出する。
【0024】
このような測定方法では、検出部の検出感度を補正できるため、複数の検出部を用いて互いに異なるエネルギーの電子を同時に検出することができる。したがって、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0025】
(
7)本発明に係る測定方法において、
前記エネルギー分光部でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を前記第1測定結果取得工程における電子のエネルギー範囲と異なる範囲に設定して、複数の前記検出部の検出結果を取得する第2測定結果取得工程と、
前記第2測定結果取得工程で取得された複数の前記検出部の検出結果を前記補正係数で補正して、第2電子分光スペクトルデータを取得する第2データ取得工程と、
を含み、
前記第1測定結果取得工程における複数の前記検出部が検出するエネルギーと、前記第2測定結果取得工程における複数の前記検出部が検出するエネルギーとは、重複しない。
【0026】
このような測定方法では、第1測定結果取得工程における複数の検出部が検出するエネルギーと、第2測定結果取得工程における複数の検出部が検出するエネルギーとは重複しないため、スペクトルを収集する際の測定の繰り返し回数を減らすことができる。したがって、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0029】
また、以下では、本発明に係る電子分光装置として、オージェ電子分光装置を例に挙げて説明するが、本発明に係る電子分光装置はこれに限定されない。例えば、本発明に係る電子分光装置は、X線光電子分光装置であってもよい。
【0030】
1. 電子分光装置
まず、本実施形態に係る電子分光装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電子分光装置100を模式的に示す図である。
【0031】
電子分光装置100は、オージェ電子分光法により試料の分析を行うための装置である。オージェ電子分光法とは、電子線等により励起されて試料から放出されるオージェ電子のエネルギーを測定することによって、元素分析を行う手法である。
【0032】
電子分光装置100は、
図1に示すように、電子線照射装置10と、試料ステージ20と、エネルギーアナライザー30(エネルギー分光部の一例)と、検出装置40と、照射制御装置50と、エネルギーアナライザー制御装置52と、計数演算装置54と、処理部60と、を含む。
【0033】
電子線照射装置10は、電子線を試料Sに照射する。電子線照射装置10は、電子銃12と、電子レンズ14と、偏向器16と、を含んで構成されている。
【0034】
電子銃12は、電子線を放出する。電子レンズ14は、電子銃12から放出された電子線を集束させる。偏向器16は、電子レンズ14で集束された電子線を偏向させる。偏向器16によって、電子線を試料S上で走査することもできる。
【0035】
試料ステージ20は、試料Sを保持し、試料Sを移動させることができる。試料ステージ20は、例えば、試料Sを傾斜する機構(ゴニオメーター)を備えていてもよい。
【0036】
エネルギーアナライザー30は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから発生するオージェ電子をエネルギー分光する。エネルギーアナライザー30は、インプットレンズ32と、静電半球型アナライザー34と、を含んで構成されている。
【0037】
インプットレンズ32は、入射した電子を静電半球型アナライザー34に導く。また、インプットレンズ32は、電子を減速させることによってエネルギー分解能を可変にする。インプットレンズ32において、電子を減速させるほど分解能は良くなるが、感度は低下する。インプットレンズ32は、複数の静電レンズ33を含んで構成されている。
【0038】
静電半球型アナライザー34は、内半球電極35aと、外半球電極35bと、を有している。静電半球型アナライザー34では、内半球電極35aと外半球電極35bとの間に電圧を印加することで、印加した電圧に応じたエネルギー範囲の電子を取り出すことができる。
【0039】
検出装置40は、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光された電子を検出する。
【0040】
図2は、検出装置40を模式的に示す図である。検出装置40は、複数のチャンネルトロン42を含んで構成されている。
図2に示す例では、検出装置40は、5個のチャンネルトロン42を有しているが、その数は特に限定されない。チャンネルトロン42は、電子を検出し、増幅した信号を出力する検出器である。
【0041】
複数のチャンネルトロン42は、エネルギーアナライザー30の出射面(エネルギー分散面)において、エネルギー分光された電子のエネルギー分散方向に並んで配置されている。そのため、複数のチャンネルトロン42は、互いに異なるエネルギーの電子を検出することができる。その結果、検出装置40では、異なるエネルギーの電子を同時に検出することができる。複数のチャンネルトロン42は、内半球電極35aから外半球電極35bに向かう方向に沿って配列されている。
【0042】
図3は、検出装置40の機能を説明するための図である。
【0043】
複数のチャンネルトロン42には、
図3に示すように、−2ch〜+2chのチャンネル番号が割り当てられている。具体的には、静電半球型アナライザー34の電極35a,35b間の中心を通る電子を検出するチャンネルトロン42が、0chである。また、チャンネルトロン42(P=0ch)から、内半球電極35a側に向かって順に、チャンネ
ルトロン42(P=−1ch)、チャンネルトロン42(P=−2ch)が配置されている。また、チャンネルトロン42(P=0ch)から、外半球電極35b側に向かって順に、チャンネルトロン42(P=+1ch)、チャンネルトロン42(P=+2ch)が配置されている。
【0044】
複数のチャンネルトロン42は、隣り合うチャンネルトロン42間のエネルギー間隔ΔEが同じになるように配列されている。そのため、チャンネルトロン42(P=0ch)が検出できるエネルギーをEとした場合、チャンネルトロン42(P=−2ch)が検出できるエネルギーはE−2・ΔEであり、チャンネルトロン42(P=−1ch)が検出できるエネルギーはE−ΔEである。また、チャンネルトロン42(P=+1ch)が検出できるエネルギーはE+ΔEであり、チャンネルトロン42(P=+2ch)が検出できるエネルギーはE+2・ΔEである。
【0045】
照射制御装置50は、電子線照射装置10を制御する。照射制御装置50は、例えば、処理部60からの制御信号に基づいて、電子線が試料S上の所定の位置に照射されるように、電子線照射装置10を制御する。
【0046】
エネルギーアナライザー制御装置52は、エネルギーアナライザー30を制御する。エネルギーアナライザー制御装置52は、例えば、処理部60からの制御信号に基づいて、エネルギーアナライザー30の内半球電極35aと外半球電極35bとの間に電圧を印加する。
【0047】
計数演算装置54は、チャンネルトロン42で検出された電子を計数する。計数演算装置54は、チャンネルトロン42で検出された電子の計数結果(すなわち検出結果)を処理部60に送る。
【0048】
処理部60は、計数演算装置54から送られた検出装置40の検出結果(すなわち、複数のチャンネルトロン42の検出結果)に基づいて、オージェ電子分光スペクトルデータ(電子分光スペクトルデータの一例)を取得する処理や、照射制御装置50およびエネルギーアナライザー制御装置52を制御するための制御信号を生成する処理等の処理を行う。なお、処理部60の処理の詳細については後述する。
【0049】
処理部60の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)でプログラムを実行することにより実現することができる。なお、処理部60の機能の少なくとも一部を、ASIC(ゲートアレイ等)などの専用回路により実現してもよい。
【0050】
2. 電子分光装置の動作
次に、電子分光装置100の動作について説明する。
【0051】
電子銃12から放出された電子線は、電子レンズ14によって集束されて試料S上に照射される。このとき、偏向器16を用いて試料S面上で電子線を走査することもできる。電子線が照射された試料Sからは、オージェ電子、二次電子等が放出される。
【0052】
試料Sから放出されたオージェ電子は、インプットレンズ32に入射し、静電レンズ33により減速され、静電半球型アナライザー34に入射する。入射したオージェ電子は、静電半球型アナライザー34でエネルギー分光され、静電半球型アナライザー34の出射面(エネルギー分散面)において所定の方向(エネルギー分散方向)にエネルギー(運動エネルギー)に応じて分散される。
【0053】
エネルギーに応じて分散されたオージェ電子は、エネルギー分散方向に並んで配置され
た複数のチャンネルトロン42で検出される。複数のチャンネルトロン42で検出された電子は、チャンネルトロン42ごとに計数演算装置54で計数され、その計数結果が処理部60に送られる。
【0054】
次に、電子分光装置100において、オージェ電子分光スペクトル(以下、単に「スペクトル」ともいう)を収集する際の動作について説明する。
図4は、電子分光装置100における、スペクトルを収集する処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、検出感度測定(ステップS12)の流れの一例を示すフローチャートである。
図6は、高速測定(ステップS16)の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
(1)スペクトル収集条件の設定(ステップS10)
まず、ユーザーがスペクトル収集条件を設定する。ユーザーは、電子分光装置100の設定部(ユーザーインターフェイス、図示せず)を操作して、スペクトル収集の条件を設定する。設定部でのスペクトル収集条件の設定が処理部60の処理に反映される。
【0056】
スペクトル収集の条件は、開始エネルギーEs、終了エネルギーEe、エネルギー間隔I、有効チャンネルトロン数N、指定チャンネルトロンP、および測定時間D等を含む。
【0057】
開始エネルギーEsは、測定を開始するときのエネルギーである。終了エネルギーEeは、測定を終了するときのエネルギーである。エネルギー間隔Iは、スペクトルデータのエネルギー間隔である。有効チャンネルトロン数は、測定に使用するチャンネルトロン42の数である。指定チャンネルトロンは、基準となるチャンネルトロンである。測定時間Dは、1回の測定において、チャンネルトロン42が電子を検出する時間である。
【0058】
以下、開始エネルギーEs=E
1、終了エネルギーEe=E
100、エネルギー間隔I=1.0eV、有効チャンネルトロン数N=5、指定チャンネルトロン42(P=+1ch)、隣り合うチャンネルトロン間のエネルギー間隔ΔE=1.0eVに設定されている場合について説明する。なお、エネルギーE
nとエネルギーE
n+1とのエネルギー差は、1.0eVとする(nは任意の数)。
【0059】
(2)検出感度測定(ステップS12)
次に、処理部60は、検出感度測定を行い、5個のチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。
【0060】
図7は、検出感度測定において、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)で検出できる電子のエネルギーを示す図である。
【0061】
図7に示すように、検出感度測定では、まず、指定チャンネルトロン42(P=+1ch)で開始エネルギーEs=E
1が測定されるようにエネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー範囲を設定して、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)で電子を検出する(1回目の測定(n=1))。1回目の測定では、エネルギーE
1の電子およびエネルギーE
2の電子が検出され、エネルギーE
1およびエネルギーE
2のスペクトルデータ(検出結果)を取得できる。
【0062】
次に、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を1.0eVだけずらして、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)で電子を検出する(2回目の測定(n=2))。2回目の測定では、エネルギーE
1の電子、エネルギーE
2の電子、およびエネルギーE
3の電子が検出され、エネルギーE
1〜E
3のスペクトルデータを取得できる。
【0063】
このようにして、上記測定を有効チャンネルトロン数分だけ繰り返す。すなわち、ここでは、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を1.0eVずつずらしながら、5回の測定が行われる。
【0064】
3回目の測定(n=3)では、エネルギーE
1の電子、エネルギーE
2の電子、エネルギーE
3の電子、およびエネルギーE
4の電子が検出され、エネルギーE
1〜E
4のスペクトルデータを取得できる。4回目の測定(n=4)では、エネルギーE
1の電子、エネルギーE
2の電子、エネルギーE
3の電子、エネルギーE
4の電子、およびエネルギーE
5の電子が検出され、エネルギーE
1〜E
5のスペクトルデータを取得できる。5回目の測定(n=5)では、エネルギーE
2の電子、エネルギーE
3の電子、エネルギーE
4の電子、エネルギーE
5の電子、およびエネルギーE
6の電子が検出され、エネルギーE
3〜E
6のスペクトルデータを取得できる。
【0065】
次に、検出感度測定における処理部60の処理について、
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0066】
処理部60は、まず、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー範囲を設定し、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する(ステップS120)。
【0067】
具体的には、処理部60は、指定チャンネルトロン42(P=+1ch)で開始エネルギーEs=E
1が測定されるようにエネルギー範囲を設定するための制御信号を生成し、エネルギーアナライザー制御装置52に送る。そして、処理部60は、計数演算装置54からチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を受け取る。これにより、処理部60は、1回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。
【0068】
次に、処理部60は、設定された有効チャンネルトロン数(N=5)だけ測定が行われたか否かの判定を行う(ステップS122)。
【0069】
処理部60は、有効チャンネルトロン数だけ測定が行われていないと判定した場合(ステップS122でNoの場合)、エネルギー範囲を1回目の測定からエネルギー間隔I=1.0eVだけずれるように変更する(ステップS124)。具体的には、処理部60は、エネルギー範囲を1回目の測定からエネルギー間隔I=1.0eVだけずれるように設定するための制御信号を生成し、エネルギーアナライザー制御装置52に送る。
【0070】
そして、処理部60は、計数演算装置54からチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を受け取る。これにより、処理部60は、2回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。(ステップS120)。
【0071】
処理部60は、有効チャンネルトロン数(N=5)だけ、ステップS120〜ステップS124の処理を繰り返し行い、3回目〜5回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。
【0072】
処理部60は、有効チャンネルトロン数(N=5)だけ測定が行われたと判定した場合(ステップS124でYesの場合)、検出感度測定処理を終了する。
【0073】
(3)補正係数の算出(ステップS14)
次に、処理部60は、検出感度測定で得られたチャンネルトロン42(P=−2ch〜
+2ch)の検出結果に基づいて、補正係数を算出する。ここで、補正係数とは、チャンネルトロン42の検出感度を補正するための係数である。補正係数は、チャンネルトロン42ごとに算出される。補正係数によって、チャンネルトロン42の検出結果(計数結果)を補正することができ、チャンネルトロン42の検出感度のばらつきの影響を低減できる。
【0074】
処理部60は、
図8に示すように、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)において同じエネルギー(
図8に示す例ではエネルギーE
2)の電子を検出した結果を用いて、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の計数が同じになるように、補正係数を算出する。
【0075】
具体的には、処理部60は、補正係数を、指定チャンネルトロンに設定されたチャンネルトロン42(P=+1ch)を基準として、他のチャンネルトロン42のゲイン(比率)を算出することで求める。例えば、チャンネルトロン42(P=−2ch)の検出結果(計数結果)が80、チャンネルトロン42(P=−1ch)の検出結果が150、チャンネルトロン42(P=0ch)の検出結果が110、チャンネルトロン42(P=+1ch)の検出結果が90、チャンネルトロン42(P=+2ch)の検出結果が120の場合、補正係数は、それぞれ、0.88(P=−2ch)、1.66(P=−1ch)、1.22(P=0ch)、1.0(P=+1ch)、1.33(P=+2ch)となる。
【0076】
(4)高速測定(ステップS16)
次に、処理部60は、高速測定を行い、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。
【0077】
図9は、高速測定において、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)で検出できる電子のエネルギーを示す図である。
【0078】
高速測定では、
図9に示すように、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)が検出する電子のエネルギーが重複しないように、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する処理を、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー範囲を変更して複数回繰り返す。
【0079】
すなわち、高速測定では、6回目の測定(n=6)でチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)が検出する電子のエネルギーE
7,E
8,E
9,E
10,E
11と、7回目の測定(n=7)でチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)が検出する電子のエネルギーE
12,E
13,E
14,E
15,E
16とは、重複しない。7回目以降も同様であり、6回目の測定から24回目の測定まで、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)が検出する電子のエネルギーは重複しない。
【0080】
例えば、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー範囲を、エネルギー間隔Iの有効チャンネルトロン数倍(エネルギー間隔I×有効チャンネルトロン数N)だけずらしながら、繰り返し測定を行うことにより、上記のように、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)が検出する電子のエネルギーが重複しない。
図9に示す例では、エネルギー間隔Iが1.0eVであり、有効チャンネルトロン数が5であるため、エネルギー範囲を5.0eVずつずらして、繰り返し測定を行っている。
【0081】
次に、高速測定における処理部60の処理について、
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0082】
処理部60は、まず、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー
範囲を設定し、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する(ステップS160)。
【0083】
具体的には、処理部60は、エネルギー範囲を5回目の測定から+1.0eVだけずれるように設定するための制御信号を生成し、エネルギーアナライザー制御装置52に送る。そして、処理部60は、計数演算装置54からチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を受け取る。これにより、処理部60は、6回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。
【0084】
次に、処理部60は、取得した6回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果(計数結果)を補正係数で補正する(ステップS162)。これにより、処理部60は、エネルギーE
7〜E
11のスペクトルデータを取得する。
【0085】
なお、上述したように、補正係数は、チャンネルトロン42(P=+1ch)を基準として算出しているため、チャンネルトロン42(P=+1ch)の検出結果については補正を行わなくてもよい。
【0086】
次に、処理部60は、終了エネルギーEe=E
100の検出結果が取得されたか否かの判定を行う(ステップS164)。
【0087】
処理部60は、終了エネルギーEe=E
100の検出結果が取得されていないと判定した場合(ステップS164でNoの場合)、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー範囲を、6回目の測定におけるエネルギー範囲と重複しないように変更する処理を行う(ステップS166)。具体的には、処理部60は、エネルギー範囲を6回目の測定から+5.0eV(エネルギー間隔I×有効チャンネルトロン数N)だけずれるように設定するための制御信号を生成し、エネルギーアナライザー制御装置52に送る。
【0088】
そして、処理部60は、計数演算装置54からチャンネルトロン(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を受け取る。これにより、処理部60は、7回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する(ステップS160)。
【0089】
次に、処理部60は、取得した7回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を補正係数で補正する(ステップS162)。これにより、処理部60は、エネルギーE
12〜E
16のスペクトルデータを取得する。
【0090】
処理部60は、終了エネルギーEe=E
100の検出結果が取得されまで、ステップS160〜ステップS166の処理を繰り返し行い、エネルギーE
7〜E
100のスペクトルデータを取得する。
【0091】
処理部60は、終了エネルギーEe=E
100の検出結果が取得されたと判定した場合(ステップS164でYesの場合)、高速測定処理を終了する。
【0092】
(5)スペクトル生成(ステップS18)
次に、処理部60は、取得したエネルギーE
1〜E
100のスペクトルデータに基づいて、スペクトルを生成する。
【0093】
図10は、スペクトルデータとして用いられる電子のエネルギーの一例を示す図である。
【0094】
処理部60は、高速測定で取得したエネルギーE
7〜E
100のスペクトルデータに加えて、検出感度測定で取得されたエネルギーE
1〜E
6のスペクトルデータを取得し、取得したエネルギーE
1〜E
100のスペクトルデータからスペクトルを生成する。
【0095】
なお、処理部60は、検出感度測定(1〜5回目の測定)で取得されたチャンネルトロン42(P=+1ch)の検出結果をエネルギーE
1〜E
5のスペクトルデータとして取得する。また、処理部60は、検出感度測定(5回目の測定)で取得されたチャンネルトロン42(P=+2ch)の検出結果を補正係数で補正して、エネルギーE
6のスペクトルデータを取得する。
【0096】
図11は、処理部60で生成されたオージェ電子分光スペクトルを模式的に示す図である。
【0097】
図11に示すように、上記の処理を行うことにより、開始エネルギーEs=E
1から終了エネルギーEe=E
100のエネルギー範囲のスペクトルを生成することができる。処理部60は、生成したスペクトルを表示部(図示せず)に表示する制御を行い、表示部にスペクトルが表示される。
【0098】
本実施形態に係る電子分光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0099】
電子分光装置100では、処理部60は、チャンネルトロン42の検出感度を補正するための補正係数を、チャンネルトロン42ごとに算出する補正係数算出処理(ステップS14)と、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を設定して、複数のチャンネルトロン42の検出結果を取得する第1測定結果取得処理(ステップS160)と、第1測定結果取得処理で取得された複数のチャンネルトロン42の検出結果を補正係数で補正して、スペクトルデータを取得する第1データ取得処理(ステップS162)と、を行う。したがって、電子分光装置100では、複数のチャンネルトロン42の検出感度を補正できるため、複数のチャンネルトロン42を用いて、互いに異なるエネルギーの電子を同時に検出することができる。そのため、電子分光装置100では、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0100】
電子分光装置100では、処理部60は、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を第1測定結果取得処理における電子のエネルギー範囲と異なる範囲に設定して(ステップS166)、複数のチャンネルトロン42の検出結果を取得する第2測定結果取得処理と、第2測定結果取得処理で取得された複数のチャンネルトロン42の検出結果を補正係数で補正して、スペクトルデータを取得する第2データ取得処理と、を行い、第1測定結果取得処理における複数のチャンネルトロン42が検出するエネルギーと、第2測定結果取得処理における複数のチャンネルトロン42が検出するエネルギーとは、重複しない。そのため、電子分光装置100では、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0101】
例えば、
図18に示す従来例では、エネルギーE
1〜E
100のスペクトルデータを取得するために、100回の測定を行わなければならなかった。これに対して、本実施形態では、
図10に示すように、24回の測定で、エネルギーE
1〜E
100のスペクトルデータを取得することができる。このように、本実施形態では、従来例と比べて、スペクトルを収集する際の測定の繰り返し回数を減らすことができるため、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0102】
電子分光装置100では、処理部60は、補正係数算出処理(ステップS14)の前に
、複数のチャンネルトロン42の検出結果を取得する処理を、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を変更して、複数回繰り返す第3測定結果取得処理(ステップS12)を行い、補正係数算出処理では、第3測定結果取得処理で取得された複数のチャンネルトロン42の検出結果に基づいて、補正係数を算出する。そのため、電子分光装置100では、チャンネルトロン42の検出感度を補正するための補正係数を算出することができる。
【0103】
電子分光装置100では、処理部60は、第3測定結果取得処理(ステップS12)で取得された複数のチャンネルトロン42の検出結果から、スペクトルデータを取得する第3データ取得処理(ステップS18)を行う。このとき、処理部60は、複数のチャンネルトロン42の検出結果を補正係数で補正してスペクトルデータを取得してもよい。電子分光装置100では、検出感度測定における検出結果も、スペクトルデータとして用いるため、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0104】
本実施形態に係る測定方法は、チャンネルトロン42の検出感度を補正するための補正係数を、チャンネルトロン42ごとに算出する補正係数算出工程と、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を設定して、複数のチャンネルトロン42の検出結果を取得する第1測定結果取得工程と、当該第1測定結果取得工程で取得された複数のチャンネルトロン42の検出結果を補正係数で補正して、スペクトルデータを取得する第1データ取得工程と、を含む。そのため、本実施形態に係る測定方法によれば、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0105】
本実施形態に係る測定方法は、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光される電子のエネルギー範囲を第1測定結果取得工程における電子のエネルギー範囲と異なる範囲に設定して、複数のチャンネルトロン42の検出結果を取得する第2測定結果取得工程と、当該第2測定結果取得工程で取得された複数のチャンネルトロン42の検出結果を補正係数で補正して、スペクトルデータを取得する第2データ取得工程と、を含み、第1測定結果取得工程における複数のチャンネルトロン42が検出するエネルギーと、第2測定結果取得工程における複数のチャンネルトロン42が検出するエネルギーとは、重複しない。そのため、本実施形態に係る測定方法によれば、スペクトル収集に要する時間を短縮することができる。
【0106】
3. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。以下、上述した実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0107】
(1)第1変形例
上述した実施形態では、スペクトルデータのエネルギー間隔Iと、隣り合うチャンネルトロン間のエネルギー間隔ΔEと、が等しい(共に1.0eV)場合について説明したが、エネルギー間隔Iとエネルギー間隔ΔEとは異なっていてもよい。
【0108】
以下、スペクトルデータのエネルギー間隔I=1.0eV、隣り合うチャンネルトロン間のエネルギー間隔ΔE=0.8eVである場合について説明する。
【0109】
図12は、第1変形例における検出感度測定において、チャンネルトロン42(P=+2ch〜−2ch)で検出できる電子のエネルギーを示す図である。
【0110】
本変形例では、処理部60は、補正係数を算出する処理において、対象エネルギーをE
1.0として補正係数を算出する。指定チャンネルトロン42(P=+1ch)以外で検
出された電子のエネルギーが対象エネルギーE
1.0と一致しない場合には、
図13に示すように、2つのエネルギーの内挿によって推定した値を用いて、補正係数を算出する。
【0111】
例えば、チャンネルトロン42(P=+2ch)の補正係数を算出する際には、1回目の測定におけるエネルギーE
0.8の検出結果と2回目の測定におけるエネルギーE
1.8の検出結果とからエネルギーE
1.0の検出結果を内挿により推定する。この推定されたエネルギーE
1.0の検出結果と、指定チャンネルトロン42(P=+1ch)のエネルギーE
1.0の検出結果と、からチャンネルトロン42(P=+2ch)の補正係数を算出する。チャンネルトロン42(P=−2ch,−1ch,0ch)についても、同様に、
図13において実線で囲まれた2回の測定の検出結果からエネルギーE
1.0の検出結果を内挿により推定し、補正係数を算出する。
【0112】
図14は、第1変形例における高速測定において、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)で検出できる電子のエネルギーを示す図である。
【0113】
本変形例では、処理部60は、高速測定において、エネルギーアナライザー30でエネルギー分光されるエネルギー範囲を+4.0eV(エネルギー間隔I×有効チャンネルトロン数N=0.8eV×5)だけずらしながら、繰り返し測定を行い、チャンネルトロン42(P=−2ch〜+2ch)の検出結果を取得する。
【0114】
ここで、取得したいスペクトルデータは、エネルギーE
1〜E
100の検出結果であるところ、指定チャンネルトロン42(P=+1ch)以外のチャンネルトロン42(P=−2ch,−1ch,0ch,+2ch)では、エネルギーE
1〜E
100を検出できない。そのため、本変形例では、複数のエネルギーの検出結果から内挿によってエネルギーE
1〜E
100のスペクトルデータを取得する。
【0115】
例えば、エネルギーE
5.0の検出結果は、5回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=+2ch)の検出結果(エネルギーE
4.8の検出結果)と、6回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch)の検出結果(エネルギーE
5.6の検出結果)と、から、内挿により推定する。また、例えば、エネルギーE
6.0の検出結果は、6回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−2ch)の検出結果(エネルギーE
5.6の検出結果)と、6回目の測定におけるチャンネルトロン42(P=−1ch)の検出結果(エネルギーE
6.4の検出結果)と、から、内挿により推定する。
【0116】
このようにして、処理部60は、エネルギーE
1〜E
100のスペクトルデータを取得することができる。
【0117】
第1変形例によれば、スペクトルデータのエネルギー間隔Iと、隣り合うチャンネルトロン間のエネルギー間隔ΔEと、が異なる場合であっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0118】
(2)第2変形例
上述した実施形態では、1つのチャンネルトロンから1つのスペクトルデータを取得していたが、複数のチャンネルトロンから1つのスペクトルデータを取得してもよい。すなわち、上述した実施形態では、1つのチャンネルトロンが1つの検出部を構成していたが、複数のチャンネルトロンが1つの検出部を構成していてもよい。
【0119】
図15は、第2変形例に係る検出装置の機能を説明するための図である。
【0120】
図15に示すように、検出装置40は、9個のチャンネルトロン42(P=−4ch〜
+4ch)を有している。このとき、処理部60は、チャンネルトロン42(P=−4ch,−3ch,−2ch)の検出結果(計数結果)の和をエネルギーE−ΔEの検出結果(計数結果)として取得する。また、処理部60は、チャンネルトロン42(P=−1ch,0ch,+1ch)の検出結果の和をエネルギーEの検出結果として取得する。また、処理部60は、チャンネルトロン42(P=+2ch,+3ch,+4ch)の検出結果の和をエネルギーE+ΔEの検出結果として取得する。
【0121】
本変形例では、電子を検出する検出部が複数のチャンネルトロン42を含んで構成され、当該検出部の検出結果は、複数のチャンネルトロン42の検出結果の和であるため、検出できる電子の信号量を増やすことができる。例えば、上述したように、3つのチャンネルトロンを1つの検出部とする場合、1つのチャンネルトロンを1つの検出部とする場合と比べて、3倍の信号量を得ることができる。
【0122】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0123】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。