【実施例】
【0046】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、重合方法やこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは、特に断らない限り質量基準である。
【0047】
(合成例1:メタクリル樹脂−1)
本発明の実施例でバインダー樹脂として使用するメタクリル樹脂(ブロックコポリマー)は、国際公開第2008/139980号、国際公開第2009/136510号、国際公開第2010/027093号の文献を参考にして作製した。下記に作製手順の概略を述べる。1リッターのセパラブルフラスコに、撹拌翼、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付け、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、BDGと略記)を350.5部、ヨウ素を1.0部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−70と略記)を3.7部、触媒としてアイオドスクシンイミド(以下、NISと略記)を0.1部、さらに、ベンジルメタクリレート(以下、BzMAと略記)を52.8部、イソブチルメタクリレート(以下、IBMAと略記)を99.4部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。
【0048】
2時間後、ヨウ素の褐色が消え、この間に、重合開始剤であるV−70が、ヨウ素と反応してヨウ素化合物である重合開始化合物となったことが確認できた。さらに、上記の温度を維持して3時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ30.1%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。以下、重合率は、上記と同様の方法で算出した。また、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)を展開溶媒とするGPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(Mnと略記)が11200、分散度1.19であった。以下、分子量はTHF溶媒を展開溶媒とするGPCの示差屈折率検出器の測定値である。以上のようにして、Aのブロックコポリマー(以下、A鎖と略記する場合がある)を得た。
【0049】
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、メタクリル酸(以下、MAAと略記)を15.1部、ベンジルメタクリレート(以下、BzMAと略記)61.6部添加して、さらに40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロック(以下、B鎖と略記する場合がある)、を形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると128.4mgKOH/gである。B鎖中の酸価は、以下のように算出した。
【0050】
まず、B鎖組成1部あたりのMAA量を求める。
15.1/(15.1+61.6)=0.197部
次いで、MAAの分子量を86.1、KOHの分子量を56.1として用いると、B鎖の酸価は、下記のように算出される。以下、B鎖中の酸価は、同様の方法にて算出した。
(0.197/86.1)×56.1×1000=128.4mgKOH/g
【0051】
このポリマー溶液は固形分50.0%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは17500、分散度は1.33であった。A鎖を形成した際よりも分子量が高分子量側にずれていることが確認されたことより、A−Bブロックコポリマーが形成されたと考えられる。B鎖の分子量は、A−Bブロックコポリマーの分子量からA鎖の分子量を引いた値として算出することができ、Mn=6300と算出された。さらに、サンプリング物を、トルエン、エタノールにて希釈した後、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、0.1%エタノール性水酸化カリウム溶液を用いた酸塩基滴定によってA−Bブロックコポリマー全体の実測の酸価を求めた。その結果、実測の酸価は、43.0mgKOH/gであった。なお、以下、実測の酸価は、いずれも上記と同様の操作を行い、算出した値である。上記のA−Bブロックコポリマーを、以下、メタクリル樹脂−1と呼ぶ。
【0052】
(合成例2〜4:メタクリル樹脂−2〜−4)
合成例1で使用したIBMAとBzMAのモノマー混合物を、それぞれ下記のモノマーに替えた以外はすべて同様にして、メタクリル樹脂−2〜−4を合成した。合成例2ではt−ブチルシクロヘクシルメタクリレート(TBCHMA)に、合成例3では、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)に、合成例4では、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)に替えた以外はすべて合成例1と同様にして、それぞれの樹脂を合成した。合成して得たものをそれぞれメタクリル樹脂−2〜−4とした。得られたメタクリル樹脂−1〜−4の詳細を表1にまとめて示した。
【0053】
【0054】
(合成例−5:メタクリル樹脂−5)
合成例4において、DCPMAの量の半分をラウリルメタクリレート(以下、LMAと省略)に替えた以外は合成例1と同様にして樹脂の合成を行った。得られた樹脂をメタクリル樹脂−5とした。
【0055】
(合成例−6:メタクリル樹脂−6)
合成例1において、IBMAの代わりにTBCHMAに、BzMAの代わりにDCPOEMAに替えた以外は合成例1と同様にして樹脂の合成を行った。得られた樹脂をメタクリル樹脂−6とした。
【0056】
(合成例−7、−8::メタクリル樹脂−7、−8)
合成例6のヨウ素の量を1.2倍、1.4倍使用した以外は、合成例6と同様にして樹脂の合成を行った。これをそれぞれ、メタクリル樹脂−7、メタクリル樹脂−8とした。
【0057】
これらの合成例5〜8で得られたメタクリル樹脂−5〜−8の詳細を、表2にまとめて示した。
【0058】
(合成例9:メタクリル樹脂−9)
合成例1のIBMAをBzMAに替えた以外、すなわち、A鎖はBzMAのみで構成されている以外は合成例1と同様にして樹脂の合成を行った。得られた樹脂を、メタクリル樹脂−9とし、その性状を表3にまとめた。
【0059】
【0060】
(比較合成例1:比較メタクリル樹脂−1)
合成例1と同様の装置を使用して、BDGを350.5部仕込んで、撹拌し、45℃へ加温した。次いで、別容器にBzMA114.4部、IBMA99.4部、メタクリル酸15.1部、V−70を7.0部混合し、均一化した。系が45℃に達した時、モノマー混合物の1/3を添加し、さらに2時間滴下した。45℃で2時間撹拌し、次いで、50℃に加温して2時間重合した。重合率はほぼ100%であり、Mn12600、PDI2.15であった。酸価も43.2mgKOH/gを示した。これを比較メタクリル樹脂−1とする。これは、ランダム型のメタクリル樹脂である。
【0061】
(製造例1:実施例1の赤色のインクジェット用インク−1)
イオン交換水675質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル50質量部に、顔料分散剤として、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸(30/20/20/15/15質量比)共重合体(数平均分子量15000)のアンモニア中和物の水溶液(固形分28.0%)の125質量部を溶解し、この中に、C.I.ピグメントレッド 122(大日精化工業製)150質量部を添加し、ディゾルバーで十分撹拌混合して、顔料と顔料分散剤とを含む混合物を得た。
【0062】
この混合物を、直径1mmのジルコニアビーズを分散メディアとし、分散メディアの容積率が40容量%であるペイントシェイカーに入れて、120分間分散させることにより顔料分散液を得た。さらに、この顔料分散液を遠心分離処理(7500回転、20分間)し、その後、10μmのメンブレンフィルターでろ過して粗粒を除き、イオン交換水で調整して、顔料濃度が14%である赤色の水性顔料分散液を得た。
【0063】
次いで、イオン交換水520・8部と、アンモニア水1.4部を別容器に混合して均一化し、ディスパーで撹拌しながら、合成例1で得られたメタクリル樹脂−1を76.8部添加して、メタクリル樹脂の水溶液を作製した。この結果、半透明の白っぽいエマルジョンが得られた。これに、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを120質量部、アンモニア水1質量部、フッ素系界面活性剤であるサーフロンS−211(商品名、旭硝子社製)の1%水溶液30質量部、先に調製した赤色の水性顔料分散液250部を添加し、合計を1000質量部とした。そして、10分撹拌後、5μmのメンブランフィルターで濾過して粗粒を除き、赤色のインクジェット用インク−1を得た。得られた赤色のインクジェット用インク−1の粘度は、25℃で3.53mPa・sであった。赤色のインクジェット用インク−1について、その他の物性値を表4に示した。
【0064】
(製造例2〜4:実施例2〜4のインクジェット用インク−2〜−4)
製造例1で使用したC.I.ピグメントレッド 122(大日精化工業製)150質量部を、それぞれ、C.I.ピグメントブルー 15:3(大日精化工業製)、C.I.ピグメントイエロー155(クラリアントジャパン製)、C.I.ピグメントブラック7(デグサ)に替えた以外は製造例1と同様にして、青色のインクジェット用インク(粘度は、25℃で3.22mPa・s)、黄色のインクジェット用インク(粘度は、25℃で3.90mPa・s)、黒色のインクジェット用インク(粘度は、25℃で3.10mPa・s)を得た。これらの各色のインクジェット用インクについて、その他の物性値を表4に示した。
【0065】
(製造例5:実施例5の白色のインクジェット用インク)
イオン交換水271質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル50質量部に、顔料分散剤として、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸(30/20/20/15/15質量比)共重合体(数平均分子量=15000)のアンモニア中和物の水溶液(固形分28.0%)の179質量部を溶解し、この中に、C.I.ピグメントホワイト6(石原産業業製)500質量部を添加し、ディゾルバーで十分撹拌混合して、顔料と顔料分散剤とを含む混合物を得た。
【0066】
この混合物を、直径1mmのジルコニアビーズを分散メディアとし、分散メディアの容積率が40容量%であるペイントシェイカーに入れて、120分間分散させることにより顔料分散液を得た。その後、10μmのメンブレンフィルターでろ過して粗粒を除き、顔料濃度が50%である白色の水性顔料分散液を得た。
【0067】
次いで、イオン交換水577部と、アンモニア水3部を別容器に混合して均一化し、ディスパーで撹拌しながら、合成例1で得られたメタクリル樹脂−1を90部添加して、メタクリル樹脂の水溶液を作製した。この結果、半透明の白っぽいエマルジョンが得られた。これに、ジエチレングリコールモノブチルエーテル120質量部、フッ素系界面活性剤であるサーフロンS−211の1%水溶液30質量部、先に調製した白色の水性顔料分散液180部を添加し、合計を1000質量部とした。そして、10分撹拌後、5μmのメンブランフィルターで濾過して粗粒を除き、白色のインクジェット用インクを得た。得られた白色のインクの粘度は、25℃で5.12mPa・sであった。得られた白色のインクジェット用インクについて、その他の物性値を表4に示した。
【0068】
(製造例6:実施例6の赤色のインクジェット用インク−2)
製造例1で使用した、顔料分散剤であるスチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸(30/20/20/15/15質量比)共重合体(数平均分子量15000)のアンモニア中和物の水溶液(固形分28.0%)の替わりに、先の合成例8で得たメタクリル樹脂−8を使用した以外は同様にして、インクジェット用インクの作製を行った。これを赤色のインクジェット用インク−2とする。すなわち、この例では、顔料分散剤として、本発明で規定するブロックコポリマーを利用している。
【0069】
表4に、実施例1〜6の各色のインクジェット用インクの物性をまとめて示した。
【0070】
(製造例7〜14、比較製造例1:実施例7〜14の赤色のインク−3〜−10、比較例1の比較赤色インク−1)
製造例1で使用したメタクリル樹脂−1を、合成例2〜9及び比較合成例1でそれぞれに得た、メタクリル樹脂−2〜9と、比較メタクリル樹脂−1に、それぞれ替えた以外は製造例1と同様にして赤色のインクジェット用インクの調製を行った。得られた各インクを、赤色インク−3〜−10と、比較赤色インク−1とし、その物性を表5にまとめて示した。
【0071】
【0072】
(製造例15〜17:実施例15〜17の赤色のインク−11〜−13)
製造例1のインク処方時に使用したジエチレングリコールモノブチルエーテルを、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルに替えた以外は製造例1と同様にして赤色のインクジェット用インクの調製を行い、得られたインクを赤色インク−11とした。また、トリエチレングリコールジメチルエーテルに替えた以外は製造例1と同様にして得た赤色のインクジェット用インクを、赤色インク−12とし、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルに替えた以外は製造例1と同様にして得た赤色のインクジェット用インクを、赤色インク−13とした。得られた赤色インク11〜13の物性を。それぞれ表6にまとめて示した。なお、顔料分散剤は、製造例1で使用したものと全て同様のものを用いた。
【0073】
(比較製造例2、3:比較例2、3の赤色の比較インク−2、−3)
製造例1のインク処方時に使用したジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)を、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)に替えた以外は製造例1と同様にして赤色のインクジェット用インクの調製を行い、得られたインクを比較赤色インク2とした。また、エチレングリコールに替えた以外は製造例1と同様にして得た赤色のインクジェット用インクを、比較赤色インク3とした。比較赤色インク2、3の物性を表6にまとめて示した。
【0074】
【0075】
(実施例18〜27:インクジェット印刷方法)
表7に示した実施例の赤色インク−1〜−10をそれぞれに用い、プレートヒーター付きインクジェット印刷機〔(株)マスターマインド製のMMP825H(商品名)〕を使用して、下記のようにしてインクジェット記録方式で画像を印刷した。具体的には、表面処理を施してないポリ塩化ビニルフィルム〔コントロールタック180−10(商品名)、3M社製、「塩ビ」と略記〕を、予めプレートヒーターで表面温度が50℃になるように加熱してから印刷した。この結果、実施例18〜27の印刷方法では、レベリング性に問題なく、良好な画像が印刷できた。
【0076】
次いで、実施例18〜27の印刷方法でそれぞれ得られた画像について、セロハンテープ剥離試験にて密着性の確認を行った。方法としては、印刷後、印刷物をドライヤーで十分に乾燥させ、ベタ部分にセロテープ(登録商標)を十分に押し当て、セロテープ(登録商標)を剥がした時の印刷物の剥がれ具合を目視で観察した。そして、以下の基準で評価した。
◎:全く剥がれない
○:僅かに剥がれる
△:剥がれる面積の方が小さい
×:剥がれる面積の方が大きい
【0077】
その結果、実施例18〜27の印刷方法でそれぞれ得られた画像については、ほとんど剥離することなく、良好であった。特に、実施例19のインクはまったく剥がれていなかった。これは分散剤に本発明のメタクリル樹脂を使用したためと考えられる。
【0078】
(比較例4:インクジェット印刷方法)
比較赤色インク−1を用いた以外は実施例18〜27と同様の方法で、表面処理を施してない塩ビを被印刷基材とし、その表面温度が50℃になるように加熱してからインクジェット印刷した。この結果、比較例4の印刷方法では、筋が入ってしまい良好な印画物を得ることができなかった。その理由は、本比較例の印刷方法で使用した比較例1の水性インクジェット用インクの比較赤色インク−1では、バインダーとして添加したメタクリル樹脂にランダム型のポリマーを使用しており、吐出の際、液滴がスプラッシュし、吐出性が悪いためであると考えられる。また、得られた画像について、実施例18〜27の場合と同様にしてセロハンテープ剥離試験を行った。その結果、比較例4の印刷方法で得られた画像では、画像がセロテープ(登録商標)で剥離し、密着性が劣るものであった。
【0079】
(比較例5:インクジェット印刷方法)
赤色インク−2を用いた実施例19で、被印刷基材に使用したポリ塩化ビニルフィルムを加熱せず、表面温度が25℃である以外は実施例19と同様にして印刷した。その結果、ポリ塩化ビニルフィルム表面でインクが弾いてしまい、充分にレベリングせず、セロハンテープ剥離試験の結果も密着性が劣るものであり、良好な画像が印刷できなかった。表7に示したように、実施例19と比較例5の評価結果から、予め被印刷基材を加温しておくことが有効であることが確認できた。
【0080】
(実施例28〜30:インクジェット印刷方法)
実施例18で使用した赤インク−1を、赤色インク−11〜−13にそれぞれ変えた以外は実施例18と同様にインクジェット印刷した。その結果、実施例28〜30のいずれの場合も、吐出性、レベリング性、得られた画像の密着性とも良好であった。
【0081】
(比較例6、7:インクジェット印刷方法)
実施例18で使用した赤インク−1を、赤色比較インク−2、−3にそれぞれ変えた以外は実施例18と同様に印刷した。その結果、表7に示したように、比較例6の印刷方法の場合は、インク中の水溶性溶媒であるエチレングリコールモノブチルエーテルの乾燥性が速いためインクの乾燥も速くなり、ノズル詰まりを起こし、吐出性は不良であった。レベリング性、得られた画像の密着性にも劣っていた。また、比較例7は、吐出性は良好であるものの、水溶性溶媒であるエチレングリコールの溶解力が弱いために、インクが塩ビ表面ではじいてしまい、レベリング性が不良であった。
【0082】
【0083】
(実施例31:インクジェット印刷方法)
実施例1〜5の5色のインクを使用しフルカラー印刷をし、実施例18と同様の方法で印刷を行い、評価したところ、インクの吐出性、レベリング性、得られた画像の密着性とも良好であった。
【0084】
(実施例32〜41:インクジェット印刷方法)
実施例の赤色のインクジェット用インク−1〜−10をそれぞれに用い、プレートヒーター付きインクジェット印刷機〔(株)マスターマインド製のMMP825H(商品名)〕を使用して、下記のようにしてインクジェット記録方式で画像を印刷した。具体的には、表面処理を施してないポリプロピレンフィルム〔ユポ80(UV)KV11(商品名)、リンテック社製、「PP」と略記)を、予めプレートヒーターで表面温度が50℃になるように加熱してから印刷した。この結果、実施例32〜41の印刷方法では、吐出性、レベリング性とも良好な印刷ができた。
【0085】
次いで、実施例32〜41の印刷方法でそれぞれ得られた画像について、先に行ったのと同様のセロハンテープ剥離試験を行った。その結果、実施例の各インクジェット用インクを用いた実施例の印刷方法で得られた画像は、すべてほとんど剥離することがなかった。特に、表8に示したように、バインダー樹脂として、TBCHMAを形成成分とするメタクリル樹脂を使用した各インクを用いた、実施例34、38〜40の印刷方法で得られたに画像では全く剥離していなかった。
【0086】
(比較例8:インクジェット印刷方法)
比較赤色インク−1を用いた以外は、実施例32〜41の印刷方法と同様の方法で、表面処理を施してないPPを被印刷基材とし、その表面温度が50℃になるように加熱してからインクジェット印刷した。この結果、比較例8の印刷方法では、筋が入ってしまい良好な印画物を得ることができなかった。その理由は、比較赤色インク−1の水性インクジェット用インクでは、バインダーとして添加したメタクリル樹脂にランダム型のポリマーを使用しており、吐出の際、液滴がスプラッシュし、吐出性が悪いためであると考えられる。また、得られた画像について、前記したと同様にしてセロハンテープ剥離試験を行った。その結果、比較例8の印刷方法で得られた画像では若干の剥がれが見られ、実施例の場合に比べて密着性に若干劣るものであった。
【0087】
(比較例9:インクジェット印刷方法)
赤色インク−3を用いた実施例34で、被印刷基材に使用したポリプロピレンフィルムを加熱せず、表面温度が25℃である以外は実施例34と同様にしてインクジェット印刷した。その結果、ポリプロピレンフィルム表面でインクが弾いてしまい、充分にレベリングせず、良好な画像が印刷できなかった。また、得られた画像のセロハンテープ剥離試験の結果も密着性が劣るものであった。実施例34と比較例9の印刷方法の評価結果の比較から、予め被印刷基材を加温しておくことが有効であることが確認できた。
【0088】
(実施例42:インクジェット印刷方法)
実施例1〜5の5色のインクを使用しフルカラー印刷をし、実施例32と同様の方法で印刷を行い、評価したところ、インクの吐出性、レベリング性、得られた画像の密着性とも良好であった。
【0089】
【0090】
(実施例43〜52:インクジェット印刷方法)
赤色水性インクジェット用インク−1〜−10を用い、前記したと同様のプレートヒーター付きインクジェット印刷機で、下記のようにしてインクジェット記録方式で画像を印刷した。具体的には、表面処理を施してないポリエチレンフィルム〔LDPEフィルム、30μ、タキガワ社製、「PE」と略記)を、予めプレートヒーターで表面温度が50℃になるように加熱してから印刷した。この結果、実施例43〜52の印刷方法では、良好な画像が印刷できた。
【0091】
次いで、実施例43〜52の印刷方法でそれぞれ得られた画像について、先に行ったと同様のセロハンテープ剥離試験を行ったところ、実施例の各インクジェット用インクを用いた実施例の印刷方法で得られた画像は、すべてほとんど剥離することがなかった。特に、表9に示したように、バインダー樹脂として、TBCHMAを形成成分とするメタクリル樹脂を使用した各インクを用いた、実施例45、49〜51の印刷方法で得られたに画像では全く剥離していなかった。
【0092】
(比較例10:インクジェット印刷方法)
赤色比較インク−1を用い、実施例43〜52の印刷方法と同様の方法で、表面処理を施してないPEを被印刷基材とし、その表面温度が50℃になるように加熱してからインクジェット印刷した。その結果、比較例1の水性インクジェット用インクを用いた方法では、筋が入ってしまい良好な印画物を得ることができなかった。その理由は、メタクリル樹脂にランダム型のポリマーを使用しており、スプラッシュがあり、吐出性が悪いためであると考えられる。また、得られた画像について、前記したと同様にしてセロハンテープ剥離試験したところ、画像に若干の剥がれが見られ、実施例の場合に比べて密着性に若干劣るものであった。
【0093】
(比較例11:インクジェット印刷方法)
赤色インク−3を用いた実施例45で、被印刷基材のポリエチレンフィルムを加熱せず、表面温度が25℃である以外は実施例45と同様にしてインクジェット印刷した。この結果、ポリエチレンフィルム表面でインクが弾いてしまい、充分にレベリングせず、良好な画像が印刷できなかった。また、得られた画像のセロハンテープ剥離試験の結果も密着性が劣るものであった。実施例45と比較例11の印刷方法の評価結果の比較から、予め被印刷基材を加温しておくことが有効であることが確認できた。
【0094】
(実施例53)
実施例1〜5の5色のインクを使用しフルカラー印刷をし、実施例43と同様の方法で印刷を行い、評価したところ、インクの吐出性、レベリング性、画像の密着性とも良好であった。
【0095】