特許第6677579号(P6677579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6677579計時器用逆転器およびそれを含む自動巻き腕時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677579
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】計時器用逆転器およびそれを含む自動巻き腕時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 5/02 20060101AFI20200330BHJP
   G04B 5/08 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   G04B5/02
   G04B5/08
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-115299(P2016-115299)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-3588(P2017-3588A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2019年1月28日
(31)【優先権主張番号】15171705
(32)【優先日】2015年6月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515117936
【氏名又は名称】ソシエテ アノニム ドゥ ラ マニュファクチュール ドルロジュリー オーデマ ピゲ エ シ
【氏名又は名称原語表記】Societe anonyme de la Manufacture d’horlogerie Audemars Piguet & Cie
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム キルショフ
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−127944(JP,A)
【文献】 特開2014−41127(JP,A)
【文献】 特開2000−321370(JP,A)
【文献】 特開昭49−10072(JP,A)
【文献】 特開2003−344559(JP,A)
【文献】 米国特許第4809250(US,A)
【文献】 独国実用新案第202004021843(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用逆転器であって、
− 回転軸(X−X’)を中心として、第1の回転方向、および第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転する第1の入力車(2)と、
− 第1の入力車(2)により担持される少なくとも1つの第1の衛星ピニオン(18)と、
− 第1の角穴車(20)を含む出力可動アセンブリ(7)であって、この角穴車と共に第1の衛星ピニオン(18)が、第1および第2の回転方向のうち第1の回転方向のみに第1の入力車(2)との関係において出力可動アセンブリ(7)を回転係止するコハゼを形成している、出力可動アセンブリと、
を含む計時器用逆転器であって、
− 第1の入力車(2)および出力可動アセンブリ(7)と同じ回転軸(X−X’)を有する第2の入力車(3)と、
− 第1および第2の回転方向のうち第1の回転方向のみで第2の入力車(3)との関係において出力可動アセンブリ(7)を回転係止するコハゼを共に形成する、少なくとも1つの第2の衛星ピニオン(12)と第2の角穴車(14)と、
を含むことを特徴とする、計時器用逆転器。
【請求項2】
第2の入力車(3)が第2の衛星ピニオン(12)を担持し、出力可動アセンブリ(7)が、第1の角穴車(20)に結合される第2の角穴車(14)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用逆転器。
【請求項3】
第1の入力車(2)および第2の入力車(3)が出力可動アセンブリ(7)に、回転可能な形で取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の計時器用逆転器。
【請求項4】
出力可動アセンブリ(7)が少なくとも1つの保持用肩部(26)を含み、この保持用肩部(26)および第1の角穴車(20)が、互いの間に第1の入力車(2)を軸方向に保持していることを特徴とする、請求項3に記載の計時器用逆転器。
【請求項5】
出力可動アセンブリ(7)が、組立て用シャフト(16)と、この組立て用シャフト(16)上を滑動させられかつ第1の角穴車(20)を組立て用シャフト(16)に結合するような形でこの第1の角穴車(20)を支持する少なくとも1つの組立て用リング(23)とを含み、第1の入力車(2)が、保持用肩部(26)を含む組立て用リング(23)に、回転する形で取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載の計時器用逆転器。
【請求項6】
出力可動アセンブリ(7)が、少なくとも第1の入力車(2)、第2の入力車(3)、および第1の角穴車(20)を通過する組立て用シャフト(16)を含むことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一つに記載の計時器用逆転器。
【請求項7】
第1および第2の衛星ピニオン(12、18)が、第1の入力車(2)と第2の入力車(3)の間に位置設定されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の計時器用逆転器。
【請求項8】
第1の衛星ピニオン(18)の円形経路と第2の衛星ピニオン(12)の円形経路の間に位置設定された分離板(24)を含むことを特徴とする、請求項7に記載の計時器用逆転器。
【請求項9】
第1の回転方向でのみ第1の入力車(2)との関係において出力可動アセンブリ(7)を回転係止するような形で第1の角穴車(20)と協働することができる、複数の第1の衛星ピニオン(18)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の計時器用逆転器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の計時器用逆転器(1)を含むことを特徴とする、自動巻き腕時計。
【請求項11】
第1および第2の入力車(2、3)を反対方向に回転駆動するための歯車列(5、6)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の自動巻き腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計製作の分野に関する。より具体的には、本発明は、計時器用逆転器(reverser for a timepiece)およびこの逆転器を含む自動巻き腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
1956年に公開された独国特許発明第952879号明細書は、自動巻き腕時計用のフリーホイール装置クラッチについて記載している。この装置は、キチ車(winding wheel)により駆動される2つの入力車(input wheel)を含む。これらの入力車の各々は、ピニオン(pinion)に結合され、このピニオンの周りを、下位車(lower wheel)により担持される爪を形成する衛星ピニオンが移動できる。2つの下位車は互いに噛合っている。それらのうちの1つは、出力車(output wheel)に結合されている。キチ車が第1の方向に回転した場合、駆動力は、第1の入力車、第1のピニオン、第1の衛星、および出力車に結合された第2の下位車と噛合う第1の下位車を通って、出力車に伝達される。キチ車が第1の方向とは反対の第2の方向に回転した場合、駆動力は、第2の入力車、第2のピニオン、および出力車に結合された第2の下位車が担持する第2の衛星を通って、出力車に伝達される。
【0003】
1954年に公開された仏国特許発明第1079576号明細書は、ぜんまい仕掛け機構用の自動巻き装置を提案している。この装置において、キチ車は、爪を形成する第1の衛星ピニオンを担持している。このキチ車は、爪を形成する第2の衛星ピニオンを担持するホイールと噛合う。キチ車の運動は2方向を有する可能性がある。その方向に応じて、この運動は、出力車に対して第1の向きまたは第2の向きで伝達される。より厳密には、キチ車が第1の方向に回転した場合、第1の衛星ピニオンは第1の出力ピニオンを駆動する。キチ車が第1の方向とは反対の第2の方向に回転した場合、第2の衛星ピニオンは第2の出力ピニオンを駆動する。同じ出力車が、第1の出力ピニオンからの駆動力または第2の出力ピニオンからの駆動力を受けとる。
【0004】
上述の文献独国特許発明第952879号明細書、および仏国特許発明第1079576号明細書の装置は、とりわけ、大きな空間を占有するという欠点を有し、それらの公開からほぼ60年が経過しているにもかかわらず、今日に至るまでこの嵩高性の問題を満足のいく形で解決することができた者は誰もいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第952879号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第1079576号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サイズが実質的に削減された計時器逆転器が構想され、本発明を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る計時器用逆転器は、
− 回転軸を中心として、第1の回転方向、および第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転する第1の入力車(input wheel)と、
− 第1の入力車により担持される少なくとも1つの衛星ピニオンと、
− 第1の角穴車(ratchet)を含む出力可動アセンブリ(output mobile assembly)であって、この角穴車と共に第1の衛星ピニオンが、第1および第2の回転方向のうち第1の回転方向のみに出力可動アセンブリを第1の入力車との関係において回転係止(locking)するコハゼ(click)を形成している、出力可動アセンブリ
を含む。
【0008】
本発明に係る計時器用逆転器は,
− 第1の入力車および出力可動アセンブリと同じ回転軸を有する第2の入力車と、
− 第1および第2の回転方向のうち第1の回転方向のみに出力可動アセンブリを第2の入力車との関係において回転係止するコハゼを共に形成する、少なくとも1つの第2の衛星ピニオンと第2の角穴車と、
をさらに含むという点において、前述の仏国特許発明第1079576号明細書の機構と区別される。
【0009】
本発明に係る計時器用逆転器は、単純な構造を有することができるという利点を有する。この計時器用逆転器は、第1の入力車、第2の入力車、衛星ピニオン、および出力可動アセンブリが共に、予め組立てることのできる1つのサブアセンブリを形成でき、このサブアセンブリの構成部品は共に自立した状態であり続けることができるという別の利点を有する。
【0010】
以上で定義した計時器用逆転器は、詳細には以下で定義する特徴の中の1つまたは複数の他の有利な特徴を単独でまたは組合せた形で包含することができる。
【0011】
有利には、第2の入力車は、第2の衛星ピニオンを担持し、出力可動アセンブリは、第1の角穴車に結合される第2の角穴車を含む。このような場合には、出力可動アセンブリが下流側から回転駆動された時点、例えば歯車列が香箱真(barrel arbor)を運動学的に出力可動アセンブリに連結する場合に手巻きを理由としてこの香箱真から回転駆動された時点で、第2の衛星ピニオンは、第2の角穴車を中心として回転せず、自転する。
【0012】
有利には、第1および第2の入力車は出力可動アセンブリに、回転する形で取り付けられている。このような場合、逆転器は単純な構造、および/または削減された嵩高さを有することができる。
【0013】
有利には、出力可動アセンブリは、少なくとも1つの保持用肩部(shoulder)を含み、この保持用肩部および第1の角穴車は、互いの間に第1の入力車を軸方向に保持している。このような場合、第1の角穴車は、その角穴車機能に加えて保持機能も果たし、これにより、簡略化が導かれる。
【0014】
有利には、出力可動アセンブリは、組立て用シャフト(shaft)と、この組立て用シャフト上を滑動させられかつこの第1の角穴車を組立て用シャフトに結合するような形で第1の角穴車を支持する少なくとも1つの組立て用リングとを含み、第1の入力車は、保持用肩部を含む組立て用リングに、回転する形で取り付けられている。このような場合、逆転器の組立て、および/またはその構成要素の少なくとも一部分の製造を簡略化することができる。
【0015】
有利には、出力可動アセンブリは、少なくとも第1の入力車、第2の入力車、および第1の角穴車を通過する組立て用シャフトを含む。このような場合、逆転器の組立て、および/またはその構成要素の少なくとも一部分の製造を簡略化することができる。
【0016】
有利には、第1および第2の衛星ピニオンは、第1の入力車と第2の入力車の間に位置設定されている。このような場合、衛星ピニオンは、第1および第2の入力車により保護される。
【0017】
有利には、計時器用逆転器は、第1の衛星ピニオンの円形経路(circular path)と第2の衛星ピニオンの円形経路の間に位置設定された分離板を含む。こうして配置されたこのような分離板は、第1および第2の衛星ピニオンの間の不利な捕捉(catching)を防止することができる。これによって同様に、逆転器の構造を単純化し、かつ/または衛星ピニオンの少なくとも1つを片側で軸方向に保持する役割を果たすことによって厚みを削減することが可能になる。
【0018】
有利には、第1の角穴車は、コハゼ外歯(outer click toothing)を有し、第2の角穴車も同様に、コハゼ外歯を有する。
【0019】
有利には、計時器用逆転器は、第1の回転方向でのみ出力可動アセンブリを第1の入力車との関係において回転係止するような形で第1の角穴車と協働することができる複数の第1の衛星ピニオンを含む。このような場合、入力側で駆動方向の逆転中の経路損(path lost)を削減することができる。さらに、第1の衛星ピニオンによって達成される結合は、複数の点に分布させられる。その上、第1の衛星ピニオンを、その個別の質量全体の重心が少なくともおおよそ同心となるような形で、配置することができる。
【0020】
本発明は同様に、以上で定義されたものなどの計時器用逆転器を含む自動巻き腕時計をも、主題としている。
【0021】
上述の自動巻き腕時計は、詳細には以下で定義する特徴の中の1つまたは複数の他の有利な特徴を単独でまたは組合せた形で包含することができる。
【0022】
有利には、自動巻き腕時計は、第1および第2の入力車を反対方向に回転駆動するための歯車列を含む。
【0023】
他の利点および特徴は、非限定的な例として提供され以下の添付図面中に図示された本発明の特定の実施形態についての以下の説明から、より明確になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】逆転器の作動原理を示すブロック図である。
図2】巻き上げ運動を伝達しその方向に応じてこの巻き上げ運動を逆転させるための、またはさせないための機構の内部における、本発明の一実施形態に係る逆転器、およびこの逆転器に付随する減速可動アセンブリ(reduction mobile assembly)の斜視図である。
図3図2と同じ機構を表わし、異なる作動モードを例示しているという点でのみこの図2と区別される斜視図である。
図4a図2および3に見られる逆転器の斜視図である。
図4b図2、3、および4aの逆転器の一部分を表わす、断面斜視図である。
図4c図2、3、4a、および4bの逆転器の一部分を表わす、別の断面斜視図である。
図5図2、3、4a、4b、4c内に見られる逆転器の軸方向断面図であり、この逆転器の第1の作動モードを例示する。
図6図2、3、4a、4b、4c、および5の逆転器内で複数の実施例中に存在するコハゼが、このコハゼの衛星ピニオンの回転方向に応じてどのように機能するかを示す詳細図である。
図7図2、3、4a、4b、4c、および5の逆転器内で複数の実施例中に存在するコハゼが、このコハゼの衛星ピニオンの回転方向に応じてどのように機能するかを示す詳細図である。
図8図2、3、4a、4b、4c、および5の逆転器の第2の作動モードを例示するという点を除いて図5と同一である軸方向断面図である。
図9.10.11.12.13.14】図2、3、4a、4b、4c、5、および8の逆転器の衛星ピニオンを配置するための考えられる複数の変形形態の1つを各々が表わしている、軸方向断面での詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中および添付のクレーム中で使用されている意味合いにおいて、「逆転器」とは、図1が例示する、逆転器の入力側におけるその方向に応じて回転運動を逆転させるかまたはさせずにこの回転運動を伝達する機構である。この図1において、方向Aおよび方向Bは、逆転器が受けとる駆動力がとることのできる2つの相対する回転方向である。この逆転器は、方向Aの回転運動はそれを逆転させることなく伝達する。方向Bの回転運動を伝達する場合、逆転器は、この回転運動を逆転させる。したがって、逆転器の出力側における回転運動は、つねに方向Aのものである。
【0026】
図2および3において、本発明に係る逆転器1は、図1に例示された動作を実施することができる。この逆転器1は、第1の入力車2と第2の入力車3とを含み、その各々が周囲入力歯4を有する。
【0027】
入力車2および3の上流側で、入力ピニオン5と中間ピニオン6が、入力車2および3を反対方向に回転駆動するために具備された1つの歯車列を形成する。入力ピニオン5は、第1の入力車2と、およびそれ自体第2の入力車3と噛合う中間ピニオン6と噛合う。
【0028】
逆転器1の出力可動アセンブリ7は、逆転器1の出力側に位置設定された減速可動アセンブリ9を構成するホイールの歯と噛合う出力歯8を含む。
【0029】
図4aを見ればわかるように、第1の入力車2、第2の入力車3、および出力可動アセンブリ7は、同軸であり、同じ回転軸X−X’を有する。
【0030】
第2の入力車3は、図4bに見られる複数の衛星ピニオン12を担持する。図示された実施例では、これらの衛星ピニオン12の数は3つである。それより多い数または少ない数も可能である。例えば、単一の衛星ピニオン12しか存在しない可能性がある。各衛星ピニオン12は、シャフト13に回転する形で組付けられ、このシャフトは第2の入力車3の孔の中に圧入されていることによりこの第2の入力車に結合されている。各衛星ピニオン12は、爪の機能を果たし、それは、出力可動アセンブリ7を構成する組立て用シャフト16に結合されることによって出力可動アセンブリ7の一部を成している角穴車14のコハゼ歯(click toothing)15と係合している。衛星ピニオン12と角穴車14は一緒にコハゼを形成し、出力可動アセンブリ7が一方の方向だけで第2の入力車3に対して回転結合される。実際、第2の入力車3が出力可動アセンブリ7を回転駆動できる形で実施される結合は、2つの回転方向の一方における第2の入力車3の回転中に発生するが、この第2の入力車3の他方の回転方向への回転中には起こらない。
【0031】
第1の入力車2は、図4cに見られる複数の衛星ピニオン18を担持する。図示された実施例では、これらの衛星ピニオン18の数は3つである。それより多い数または少ない数も可能である。例えば、単一の衛星ピニオン18しか存在しない可能性がある。各衛星ピニオン18は、シャフト19に回転する形で取り付けられ、このシャフトは第1の入力車2の孔の中に圧入されていることによりこの第1の入力車に結合されている。各衛星ピニオン18は、爪の機能を果たし、それは、組立て用シャフト16に結合されることによって出力可動アセンブリ7の一部を成している角穴車20のコハゼ歯21と接触している。衛星ピニオン18と角穴車20は一緒にコハゼを形成し、一方の方向だけで出力可動アセンブリ7を第1の入力車2に対して回転結合する。実際、第1の入力車2が出力可動アセンブリ7を回転駆動できる形で実施される結合は、2つの回転方向の一方における第1の入力車2の回転中に発生するが、この第1の入力車2の他方の回転方向への回転中には起こらない。
【0032】
図5を見ればわかるように、組立て用リング22が角穴車14を組立て用シャフト16に結合し、これは出力歯8を画定する。組立て用リング23が角穴車20および分離板24を組立て用シャフト16に結合する。要するに、出力可動アセンブリ7は、互いに接合されている組立て用シャフト16、組立て用リング22、角穴車14、組立て用リング23、角穴車20、および分離板24を含む。
【0033】
入力車2および3は、回転軸X−X’を中心として出力可動アセンブリ7との関係において自由に回転することができるような形で出力可動アセンブリ7により担持されている。組立て用リング22に存在する保持用肩部25と角穴車14は、互いの間に第2の入力車3を保持している。組立て用リング23に存在する保持用肩部26と角穴車20は、互いの間に第1の入力車2を保持している。
【0034】
衛星ピニオン12および18、ならびに角穴車14および20は、入力車2および3の間に位置設定される。分離板24が、2つの平担化された空間、すなわち衛星ピニオン12が円運動する空間と衛星ピニオン18が円運動する空間を互いに分離する。分離板24は、一方の側で衛星ピニオン12および18を軸方向に保持し、こうしてこれらの衛星ピニオンを支持するシャフト13および19からこれらが滑り出るのを防ぐ。
【0035】
図5のサブアセンブリはコンパクトで、わずかな嵩しかない。そのさまざまな構成要素は、互いとの関係において組立てられた状態にとどまっている。図5のサブアセンブリは、腕時計のムーブメント内に組込まれる前に予め組立てることができる。
【0036】
図6および7は、上述のコハゼの動作を示す。衛星ピニオン12の歯は、非対称である。衛星ピニオン12が回転軸X−X’を中心にして方向Bに回転する場合、それは、自転できない状態で角穴車14の歯と結合し、したがって、図6に示されているようにこの角穴車14を自らと共に回転駆動する。図7では、衛星ピニオン12は、回転軸X−X’を中心にして方向Bと反対の方向Aに回転する。このような場合、この衛星ピニオン12は、角穴車14の歯により妨害されることなく、かつ回転軸X−X’を中心にしてこの角穴車14を自らと共に駆動することなく自転する。
【0037】
角穴車14との関係における衛星ピニオン12の挙動に関する前述のことは、角穴車20との関係における衛星ピニオン18の挙動にもあてはまる。
【0038】
再び図2を参照する。入力ピニオン5が方向Aに駆動される場合、このピニオンは第1の入力車2を方向Bに駆動し、逆転器1は図5に例示された通りに機能し、ここで矢印Tはこの機能中の駆動トルクの伝達を表わす。この図5において、衛星ピニオン18は回転軸X−X’を中心にして方向Bに駆動され、これらは角穴車20との関係において係止され、これらの衛星ピニオンはこの角穴車を自らと共にこの方向Bに駆動し、こうして、出力可動アセンブリ7が同様に方向Bに回転するようにしている。減速可動アセンブリ9が次に、方向Aに回転する。
【0039】
なおも図2を参照する。入力ピニオン5が方向Bに駆動される場合、このピニオンは中間ピニオン6を方向Aに駆動する。この中間ピニオン6は、次に第2の入力車3を駆動し、この入力車は方向Bに回転する。このとき逆転器1は図8に例示されている通りに機能し、ここで矢印Tは、この動作中の駆動トルクの伝達を表わす。この図8において、衛星ピニオン12は回転軸X−X’を中心にして方向Bに駆動され、これらは角穴車14との関係において係止され、これらの衛星ピニオンはこの角穴車を自らと共にこの方向Bに駆動し、こうして、出力可動アセンブリ7が同様に方向Bに回転するようにしている。減速可動アセンブリ9が次に、方向Aに回転する。
【0040】
結論としては、減速可動アセンブリ9は、入力ピニオン5が方向Aに駆動される場合、およびこの入力ピニオン5が方向Bに駆動される場合の両方において、方向Aに回転する。
【0041】
逆転器1は、詳細には、自動巻き上げのため、すなわち腕時計の向き(orientation)が変更された場合に自重により駆動される振動錐(図示せず)の動きから始まる腕時計の香箱(図示せず)の主ぜんまいの巻き上げのために使用可能である。振動錐は、入力ピニオン5をその時々で方向Aおよび方向Bに駆動する。この振動錐が変位(displace)した場合、減速可動アセンブリ9はつねに方向Aに駆動され、したがってそれは、振動錐の動きの方向の如何に関わらず、香箱の香箱真をつねに巻き上げ方向に駆動する。
【0042】
図3は、香箱の主ぜんまいが振動錐の動きの結果としてではなく手動で巻き上げられる場合の結果を示している。この図3では、減速可動アセンブリ9は、香箱真から方向Aに駆動され、一方入力ピニオン5は不動である。衛星ピニオン12および衛星ピニオン18はこのとき自転するが、回転軸X−X’を中心にしては回転せず、これは特に磨耗の観点から有利である。
【0043】
図9〜14は各々、衛星ピニオン12および18の考えられる多数の配置のうちの1つを表わしている。図10に示されている配置は、図2の逆転器1において使用されるものである。図9〜11の配置では、逆転器が組立てられた時に一方の軸方向でそれらを保持する分離板24が存在しない場合に、衛星ピニオン12および18が滑り出る可能性がある。
【0044】
本発明は、上述の実施形態にも、以上で提案された変形形態にも限定されない。詳細には、コハゼ歯15および21の少なくとも1つは、外部(external)ではなく、内部(internal)のものであり得る。
【符号の説明】
【0045】
1 逆転器
2 第1の入力車
3 第2の入力車
5 入力ピニオン
6 中間ピニオン
7 出力可動アセンブリ
8 出力歯
9 減速可動アセンブリ
12 衛星ピニオン
13 シャフト
14 角穴車
15 コハゼ歯
16 組立て用シャフト
18 衛星ピニオン
19 シャフト
20 角穴車
21 コハゼ歯
22 組立て用リング
23 組立て用リング
24 分離板
25 保持用肩部
26 保持用肩部
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14