特許第6677592号(P6677592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677592
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】コンクリート構造体の表面被覆工法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/71 20060101AFI20200330BHJP
   C04B 28/06 20060101ALI20200330BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20200330BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200330BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20200330BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200330BHJP
   E04B 1/62 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   C04B41/71
   C04B28/06
   C04B24/26 C
   C04B24/26 F
   C04B24/26 G
   C04B24/26 A
   B05D7/00 D
   B05D1/36 Z
   B05D7/24 302K
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 302A
   E04B1/62 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-130649(P2016-130649)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-2538(P2018-2538A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】宇部興産建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】松野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】貫田 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸田 靖彦
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−7408(JP,A)
【文献】 特開2007−1804(JP,A)
【文献】 特開2010−150083(JP,A)
【文献】 特開2010−143824(JP,A)
【文献】 特開平11−240744(JP,A)
【文献】 特開2000−219559(JP,A)
【文献】 特開2002−326855(JP,A)
【文献】 特開2002−348165(JP,A)
【文献】 特開2004−262748(JP,A)
【文献】 特開平1−282172(JP,A)
【文献】 特開2018−2537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/71
C04B 2/00 − 32/02
B05D 1/36
B05D 7/00
B05D 7/24
E04B 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体の表面にポリマーセメント組成物を固形分に換算して0.3〜0.7kg/mの塗布量で塗布して第1塗布層を形成する第1塗布工程と、
前記第1塗布層の上にポリマーセメント組成物を塗布して第2塗布層を形成する第2塗布工程と、を有し、
前記ポリマーセメント組成物は、セメント及び合成樹脂を含み、
前記合成樹脂は、塩化ビニル系樹脂及びスチレン/アクリル共重合樹脂を含み、
前記合成樹脂全体に対し、
前記塩化ビニル系樹脂の含有量が55〜85質量%、及び、前記スチレン/アクリル共重合樹脂の含有量が15〜45質量%である、コンクリート構造体の表面被覆工法。
【請求項2】
前記第1塗布工程と前記第2塗布工程の間、及び前記第2塗布工程の後に、前記第1塗布層、及び前記第2塗布層を養生する養生工程を有する、請求項1に記載のコンクリート構造体の表面被覆工法。
【請求項3】
前記第2塗布層の上にポリマーセメント組成物を塗布して第3塗布層を形成する第3塗布工程を有する、請求項1又は2に記載のコンクリート構造体の表面被覆工法。
【請求項4】
前記スチレン/アクリル共重合樹脂のガラス転移温度が−45〜−20℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリート構造体の表面被覆工法。
【請求項5】
前記塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度が−15〜10℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンクリート構造体の表面被覆工法。
【請求項6】
前記塩化ビニル系樹脂がエチレン/塩化ビニル共重合樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンクリート構造体の表面被覆工法。
【請求項7】
前記セメントがアルミナセメントを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコンクリート構造体の表面被覆工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリート構造体の表面被覆工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを保護する目的で種々の材料をコンクリートの表面に被覆する工法(表面被覆工法)が知られている。特許文献1では、特定のガラス転移温度を有するアクリル系ポリマーを含有するポリマーセメント組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−143824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクリル系ポリマーを含有する従来のポリマーセメント組成物は、ある程度の付着性及びひび割れ追従性を有するものの、コンクリート構造体中の鉄筋の腐食要因となる酸素を遮る性能が十分ではない。このため、コンクリートを長期間保護することが困難である。
【0005】
表面被覆の施工に関しては、コンクリート構造体の表面にポリマーセメント組成物を塗布すると、コンクリート構造体に含まれる水分の蒸発によって気泡が生じ、塗布層(保護層)の膨れが発生する場合がある。ここで、ポリマーセメント組成物の硬化物の酸素を遮る性能が高くなると、気泡が生じ易くなると考えられる。このため、下地調整材等で表面気泡(あばた)による凹凸を平坦化する工程や、コンクリート構造体の表面と塗布層との接着性を確保するためにプライマー塗布する工程等が必要となり、施工管理が煩雑になってしまうことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、一つの側面において、施工管理の煩雑さを低減することが可能なコンクリート構造体の表面被覆工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一つの側面において、コンクリート構造体の表面にポリマーセメント組成物を固形分に換算して0.3〜0.7kg/mの塗布量で塗布して第1塗布層を形成する第1塗布工程と、第1塗布層の上にポリマーセメント組成物を塗布して第2塗布層を形成する第2塗布工程と、を有し、ポリマーセメント組成物は、セメント及び合成樹脂を含み、合成樹脂は、塩化ビニル系樹脂及びスチレン/アクリル共重合樹脂を含み、合成樹脂全体に対し、塩化ビニル系樹脂の含有量が55〜85質量%、及び、スチレン/アクリル共重合樹脂の含有量が15〜45質量%である、コンクリート構造体の表面被覆工法を提供する。
【0008】
上記ポリマーセメント組成物は、セメント及び合成樹脂を含み、合成樹脂は、塩化ビニル系樹脂及びスチレン/アクリル共重合樹脂を含み、合成樹脂全体に対し、塩化ビニル系樹脂の含有量が55〜85質量%、及び、スチレン/アクリル共重合樹脂の含有量が15〜45質量%であることから、酸素透過阻止性、付着性及びひび割れ追従性のすべての性能に優れる。
【0009】
塩化ビニル系樹脂は、酸素透過阻止性に優れるものの、硬くて柔軟性が低い。柔軟性が高い樹脂としてアクリル系樹脂が挙げられる。しかしながら、アクリル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂よりも酸素透過阻止性に劣る。ここで、種々の樹脂の組み合わせを検討した結果、アクリル系樹脂の中でもスチレン/アクリル共重合樹脂が、柔軟性のみならず付着性に優れており、これらを所定の割合で含有することによって、酸素透過阻止性及び付着性と、ひび割れ追従性という互いにトレードオフの関係にある特性を満足することができる。
【0010】
このように、酸素透過阻止性に優れるポリマーセメント組成物をコンクリート構造体の表面被覆工法に用いると、コンクリート構造体に含まれる水分の蒸発等によって生じる気泡が残留しやすくなり、表面の凹凸が大きくなる傾向にある。しかしながら、本発明の表面被覆工法では、第1塗布層を形成する第1塗布工程と、第1塗布層の上に第2塗布層を形成する第2塗布工程とを備えている。
【0011】
第1塗布工程では、ポリマーセメント組成物を0.3〜0.7kg/mの塗布量で塗布して第1塗布層を形成していることから、ダレの発生を抑制するとともにコンクリート構造体に含まれる水分の蒸発等によって生じる気泡が抜けやすくなり、第1塗布層の表面に凹凸を生じ難くすることができる。したがって、表面の凹凸を平坦化する工程及びプライマーを塗布する工程を、省略又は簡略化することができる。さらに、この表面被覆工法で用いるポリマーセメント組成物は、付着性及びひび割れ追従性にも優れる。これらの相乗作用によって、施工管理の煩雑さを低減することができる。
【0012】
すなわち、特定のポリマーセメント組成物を用いるとともに、このポリマーセメント組成物を塗布する最初の工程において、ポリマーセメント組成物を所定量塗布していることから、施工管理の煩雑さを低減することができる。
【0013】
上記表面被覆工法は、第1塗布工程と第2塗布工程の間、及び第2塗布工程の後に、第1塗布層、及び第2塗布層を養生する工程(養生工程)を有することが好ましい。このような養生工程を有することによって、第1塗布層及び第2塗布層の乾燥及び硬化により成膜を促進させることができる。これによって、コンクリート構造体の内部から水分等が徐々に蒸発しても、表面に凹凸が生じることを抑制することができる。したがって、第2塗布層の表面を一層平坦化することができる。
【0014】
上記表面被覆工法は、第2塗布層の上にポリマーセメント組成物を塗布して第3塗布層を形成する第3塗布工程を有していてもよい。このように塗布層の形成を3回又はそれ以上に分けて行うことによって、塗布層表面の一層の平坦化を図りつつ、コンクリート構造体中の鉄筋の腐食を一層抑制することができる。この場合、第2塗布工程と第3塗布工程の間、及び第3塗布工程の後に、養生工程を行ってもよい。
【0015】
上記ポリマーセメント組成物は、合成樹脂100質量部に対して、セメントを20〜120質量部含有することが好ましい。これによって、塗布性と成膜性を十分に向上することができる。本明細書において、成膜とは、ポリマーセメント組成物中のセメントの水和反応による硬化や、水和反応による水分の消費又は蒸発による水分の消費等によるポリマー粒子の融着によって塗膜を形成することであり、成膜性とは、塗膜の形成し易さや塗膜の性能をいう。
【0016】
スチレン/アクリル共重合樹脂のガラス転移温度は−45〜−20℃であることが好ましい。これによって酸素透過阻止性とコンクリート構造体の表面への付着性を一層高水準にすることができる。同様の観点から、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は−15〜10℃であることが好ましい。
【0017】
塩化ビニル系樹脂はエチレン/塩化ビニル共重合樹脂を含むことが好ましい。これによって、酸素透過阻止性及び付着性と、ひび割れ追従性という互いにトレードオフの関係にある特性を、一層高い水準で満足することができる。
【0018】
セメントはアルミナセメントを含有することが好ましい。これによって、第1塗布層及び第2塗布層の成膜速度を早くすることができる。また、コンクリート構造体の表面に形成されたポリマーセメント硬化物からなる保護層が水分との接触によって白化の発生を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一つの側面において、施工管理の煩雑さを低減することが可能なコンクリート構造体の表面被覆工法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のコンクリート構造体の表面被覆工法の一実施形態を以下に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0021】
本実施形態のコンクリート構造体の表面被覆工法に用いられるポリマーセメント組成物は、セメントと合成樹脂とを含む。合成樹脂は、塩化ビニル系樹脂及びスチレン/アクリル共重合樹脂を含む。合成樹脂全体を基準として、塩化ビニル系樹脂を55〜85質量%及びスチレン/アクリル共重合樹脂を15〜45質量%含み、好ましくは、塩化ビニル系樹脂を56〜80質量%及びスチレン/アクリル共重合樹脂を20〜44質量%含み、より好ましくは、塩化ビニル系樹脂を57〜75質量%及びスチレン/アクリル共重合樹脂を25〜43質量%含み、さらに好ましくは、塩化ビニル系樹脂を58〜72質量%及びスチレン/アクリル共重合樹脂を28〜42質量%含む。
【0022】
塩化ビニル系樹脂及びスチレン/アクリル共重合樹脂を上述の割合で含有することによって、酸素透過阻止性、付着性及びひび割れ追従性の全ての特性を高水準にすることができる。一方、合成樹脂全体を基準として、スチレン/アクリル系樹脂の含有割合が15質量%未満であるとひび割れ追従性が低下し、45質量%を超えると酸素透過阻止性が低下する傾向がある。
【0023】
塩化ビニル系樹脂としては、クロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン及び1,2−ジクロロエチレン等から選ばれる少なくとも一種のモノマーを重合したもの、さらにこれらのモノマーと共重合可能なエチレン、スチレン及び酢酸ビニル等から選ばれる少なくとも一種のビニル化合物とを共重合させたものが挙げられる。これらのなかでも、塩化ビニルとエチレンとの共重合体であるエチレン/塩化ビニル共重合樹脂が好ましい。
【0024】
塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−15〜10℃の範囲であり、より好ましくは−10〜8℃の範囲であり、さらに好ましくは−8〜5℃の範囲であり、特に好ましくは−5〜2℃の範囲である。
【0025】
ガラス転移温度が上述の範囲にある塩化ビニル系樹脂を含有することによって、酸素透過阻止性、付着性及びひび割れ追従性を一層向上することができる。このような塩化ビニル系樹脂を、水中に分散させてエマルション化した形態、又は乾燥して粉末化した形態で配合してポリマーセメント組成物を調製することができる。
【0026】
スチレン/アクリル共重合樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート等から選ばれる(メタ)アクリレート化合物等の1種又は2種以上のモノマーと、スチレンと共重合させたものが挙げられる。
【0027】
スチレン/アクリル共重合樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−45〜−20℃の範囲であり、より好ましくは−43〜−25℃の範囲であり、さらに好ましくは−40〜−27℃の範囲である。
【0028】
ガラス転移温度が上述の範囲にあるスチレン/アクリル共重合樹脂を含有することによって、酸素透過阻止性、付着性及びひび割れ追従性がより向上する。ガラス転移温度が−20℃を超えるとひび割れ追従性が低下し、−45℃未満であると付着性が低下する傾向がある。当該樹脂は、水中に分散させてエマルション化した形態、又は乾燥して粉末化した形態で配合してポリマーセメント組成物を調製することができる。
【0029】
セメントとしては、塗布後の成膜を促進する観点、及び、ポリマーセメント硬化物としたときの水分との接触による白化を十分に抑制する観点から、アルミナセメントを含有することが好ましい。アルミナセメントは化学成分として、主に、Al、CaO、SiO、Feを含有する。アルミナセメント中に含まれる化学成分の好ましい質量割合(質量%)は、Alが25.0〜75.0質量%、CaOが20.0〜60.0質量%、SiOが0を超えて10.0質量%以下、Feが0を超えて25.0質量%以下であり、
より好ましい質量割合は、Alが30.0〜70.0質量%、CaOが25.0〜50.0質量%、SiOが0を超えて9.0質量%以下、Feが0を超えて20.0質量%以下であり、
さらに好ましい質量割合は、Alが30.0〜70.0質量%、CaOが25.0〜50.0質量%、SiOが0を超えて7.0質量%以下、Feが0を超えて5.0質量%以下である。
【0030】
アルミナセメントのブレーン比表面積は、2000〜5000cm/gであることが好ましい。
【0031】
アルミナセメントの化学成分は、JIS R 5202に準じて測定することができる。また、アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 5201に準じて測定することができる。セメントは、アルミナセメント以外のセメントを含有していてもよい。
【0032】
合成樹脂100質量部に対するセメントの含有量は、好ましくは20〜120質量部であり、より好ましくは30〜110質量部であり、さらに好ましくは35〜105質量部であり、特に好ましくは40〜100質量部である。このような割合で合成樹脂及びセメントを含有することによって、成膜を促進させ、硬化した塗膜の耐水性及び強度を高くすることができる。
【0033】
セメントは、主成分として、1〜90μmの粒子径を有するものであることが好ましい。例えば、セメント全体に対して、粒子径が1〜90μmであるものの割合が、好ましくは80質量%〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%、さらに好ましくは95質量%〜100質量%である。
【0034】
ポリマーセメント組成物は、細骨材、消泡剤、増粘剤、又は凝結調整剤を含んでいてもよい。細骨材としては、粒径1mm以下の骨材、好ましくは粒径0.032〜0.6mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.054〜0.425mmの骨材、特に好ましくは0.054〜0.3mmの骨材を主成分として含む。細骨材の粒径は、JIS Z 8801で規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定することができる。細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂及び砕砂等の砂類から選ばれる一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0035】
消泡剤としては、シリコーン系、アルコール系、ポリエーテル系等の合成物質、及び植物由来の天然物質等が挙げられる。消泡剤を含むことにより、コンクリート表面に塗布したときに、ポリマーセメント組成物の塗膜に含まれる気泡量を低減することができる。
【0036】
増粘剤は、セルロース系増粘剤を含むことが好ましい。セルロース系増粘剤の種類に特に制限はないが、好ましいセルロース系増粘剤としては、ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤及びヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤が挙げられる。セルロース系増粘剤は、材料分離抑制、及びダレ抑制に好ましい効果を与える。
【0037】
凝結調整剤としては、セメントの水和反応を促進する凝結促進剤、及びセメントの水和反応を遅延する凝結遅延剤が挙げられる。使用するセメントの化学成分や配合割合に応じてこれらを適宜選択することができる。
【0038】
ポリマーセメント組成物はスラリー状である。例えば、合成樹脂エマルションと他の原材料とを配合して混合し、スラリー状のポリマーセメント組成物を調製することができる。合成樹脂エマルションの固形分濃度は、例えば30〜70質量%である。調製にあたっては、一般的な固液攪拌機など、攪拌機能を有する各種機器を用いることができる。
【0039】
材料分離を抑制するとともに塗膜物性を高くする観点から、水を添加することなく、エマルション化した合成樹脂を配合して、スラリー状のポリマーセメント組成物とすることが好ましい。スラリー状のポリマーセメント組成物の水セメント比(W/C)は、塗布性と成膜性を良好にする観点から、例えば100〜200%である。
【0040】
本実施形態で用いるポリマーセメント組成物は、付着性、ひび割れ追従性、及び酸素透過阻止性の全ての特性に優れることから、コンクリート構造体の表面被覆工法に好適に用いることができる。表面被覆工法によって、上述のポリマーセメント組成物をコンクリート構造体の表面に塗布して成膜させると、コンクリート構造体の表面上にポリマーセメント硬化物で構成される保護層が形成される。これによって、コンクリート構造体中に埋設されている鉄筋の腐食を十分に抑制することができる。
【0041】
本実施形態の表面被覆工法(表面被覆方法)は、コンクリート構造体の表面に上述のポリマーセメント組成物を固形分に換算して0.3〜0.7kg/mの塗布量で塗布して第1塗布層を形成する第1塗布工程と、第1塗布層の上にポリマーセメント組成物を塗布して第2塗布層を形成する第2塗布工程と、を有する。コンクリート構造体の種類は特に限定されず、例えば、コンクリート擁壁、コンクリート柱、コンクリート床版、コンクリート橋脚等が挙げられる。
【0042】
第1塗布工程では、例えばコテ、ローラー、ヘラ、刷毛、ブラシ等を用いてコンクリート構造体の表面にポリマーセメント組成物を塗布する。これによって、第1塗布層が形成される。第1塗布工程におけるポリマーセメント組成物の塗布量は、気泡の残留を十分に低減して表面を十分に平坦にする観点から、固形分換算で0.3〜0.7kg/mであり、好ましくは0.35〜0.65kg/mであり、より好ましくは0.4〜0.6kg/mである。
【0043】
ポリマーセメント組成物の塗布量が0.7kg/mを超えると、コンクリート構造体の水分等に起因して発生する気泡が第1塗布層を通過し難くなり、塗布層(保護層)の表面に膨れが生じ易くなる。また、塗布後にダレが発生し易くなる。一方、ポリマーセメント組成物の塗布量が0.3kg/m未満になると、層状に塗布することが困難になる傾向にある。
【0044】
第1塗布層を形成した後、第1塗布層を養生する工程(第1養生工程)を行ってもよい。この養生工程は、例えば、大気中、1〜24時間放置することによって行うことができる。このような養生工程を行うことによって、第1塗布層の成膜を促進することができる。これによって、コンクリート構造体の内部から水分等が徐々に蒸発しても、表面に凹凸が生じることを抑制することができる。したがって、最終的に得られる保護層の表面を十分に平坦にすることができる。
【0045】
第2塗布工程では、例えばコテ、ローラー、ヘラ、刷毛、ブラシ等を用いて第1塗布工程で形成された第1塗布層の上にポリマーセメント組成物を塗布する。これによって、第2塗布層が形成される。ここで用いるポリマーセメント組成物は、上述の性状を有するものであれば、第1塗布工程で用いるポリマーセメント組成物と同一物であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
第2塗布工程におけるポリマーセメント組成物の塗布量は、ダレの発生と鉄筋の腐食を十分に抑制する観点から、固形分換算で0.3〜2.0kg/mであり、好ましくは0.5〜1.5kg/mであり、より好ましくは0.7〜1.2kg/mである。ポリマーセメント組成物の塗布量が大きくなり過ぎると、ダレが発生しやすくなる傾向がある。一方、ポリマーセメント組成物の塗布量が小さくなり過ぎると、層状に塗布することが困難になる傾向にある。
【0047】
第2塗布層を形成した後、第2塗布層を養生する工程(第2養生工程)を行ってもよい。この養生工程は、例えば、大気中、2〜24時間放置することによって行うことができる。このような養生工程を行うことによって、第2塗布層の成膜を十分に進行させることができる。
【0048】
第2塗布工程又は第2養生工程の後に、第3塗布工程を行って第3塗布層を形成してもよい。このように塗布層の形成を3回に分けて行うことによって、塗布層表面の一層の平坦化を図りつつ、コンクリート構造体中の鉄筋の腐食を一層抑制することができる。第3塗布工程の後に、養生工程(第3養生工程)を行ってもよい。また、第3塗布工程の後に、養生工程及び追加の塗布工程を1回又は複数回繰り返し行ってもよい。
【0049】
上述の表面被覆工法によって、コンクリート構造体の表面上には、複数の塗布層を成膜してなる保護層が形成される。すなわち、当該保護層は、ポリマーセメント塗膜で構成される。この保護層は、酸素透過阻止性、ひび割れ追従性及び付着性の全ての特性に優れる。コンクリート構造体の表面上における保護層の付着量は、上述の特性を十分に高い水準にする観点から、好ましくは0.5〜10kg/mであり、より好ましくは1〜4kg/mである。酸素透過阻止性を一層高くする観点から、製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、実施例に記載の条件で測定される保護層の酸素透過量は、好ましくは0.05mg/cm・日以下であり、より好ましくは0.04mg/cm・日以下であり、さらに好ましくは0.03mg/cm・日以下である。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[ポリマーセメント組成物の調製及び評価]
以下の(1)〜(5)の原材料を準備した。
(1)合成樹脂
・合成樹脂A:市販のエチレン/塩化ビニル共重合樹脂エマルション[エチレン/塩化ビニル=30/70(質量比)、固形分濃度:50質量%、ガラス転移温度(Tg):0℃]
合成樹脂Aは以下の手順で調製した。
【0053】
・合成樹脂B:スチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:54質量%、ガラス転移温度(Tg):−29℃)
【0054】
合成樹脂Bは以下の手順で調製した。予め、容器にイオン交換水400質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B) 54質量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 42質量部と、スチレン 434質量部と、n−ブチルアクリレート 462質量部と、2−エチルヘキシルアクリレート 504質量部と、2−ヒドロキシメタクリレート 49質量部と、メタクリル酸 7質量部を配合して、単量体乳化混合液を調製した。
【0055】
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水 620質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)5.4質量部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が80℃になるまで加温した。
【0056】
次に、上述のとおり調製した単量体乳化混合液の2質量%を分取した。この単量体乳化混合液100質量部に対して、過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)14質量部を添加して、約20分間初期重合を行った。同じ温度で、残りの単量体乳化混合液と過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)70質量部を同時に滴下しながら、4時間重合反応を行った。
【0057】
滴下終了後、さらに1時間、80℃に保ったまま攪拌を継続して行った。その後、同じ温度で有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。このようにして、合成樹脂Bを調製した。
【0058】
・合成樹脂C:スチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:54質量%、ガラス転移温度(Tg):−34℃)
【0059】
合成樹脂Cは以下の手順で調製した。予め、容器にイオン交換水400質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B) 54質量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 42質量部と、スチレン 416質量部と、n−ブチルアクリレート 608質量部と、2−エチルヘキシルアクリレート 576質量部と、2−ヒドロキシメタクリレート 49質量部と、メタクリル酸 7質量部を配合して、単量体乳化混合液を調製した。
【0060】
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水 620質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)5.4質量部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が80℃になるまで加温した。
【0061】
次に、上述のとおり調製した単量体乳化混合液の2質量%を分取した。この単量体乳化混合液100質量部に対して、過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)14質量部を添加して、約20分間初期重合を行った。同じ温度で、残りの単量体乳化混合液と過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)70質量部を同時に滴下しながら、4時間重合反応を行った。
【0062】
滴下終了後、さらに1時間、80℃を保ったまま攪拌を継続して行った。その後、同じ温度で有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。このようにして、合成樹脂Cを調製した。
【0063】
・合成樹脂D:スチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:54質量%、ガラス転移温度(Tg):−39℃)
【0064】
合成樹脂Dは以下の手順で調製した。予め、容器にイオン交換水400質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B) 54質量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 42質量部と、スチレン 540質量部と、n−ブチルアクリレート 315質量部と、2−エチルヘキシルアクリレート 645質量部と、2−ヒドロキシメタクリレート 49質量部と、メタクリル酸 7質量部を配合して、単量体乳化混合液を調製した。
【0065】
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水 620質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)5.4質量部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が80℃になるまで加温した。
【0066】
次に、上述のとおり調製した単量体乳化混合液の2質量%を分取した。この単量体乳化混合液100質量部に対して、過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)14質量部を添加して、約20分間初期重合を行った。同じ温度で、残りの単量体乳化混合液と過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)70質量部を同時に滴下しながら、4時間重合反応を行った。
【0067】
滴下終了後、さらに1時間、80℃を保ったまま攪拌を持続して行った。その後、同じ温度で有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。このようにして、合成樹脂Dを調製した。
【0068】
・合成樹脂E:市販のエチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:60質量%、ガラス転移温度(Tg):−50℃)
【0069】
合成樹脂A〜Eのガラス転移温度は以下の手順で測定した。ガラス板上に合成樹脂エマルションを適量滴下し、60℃で16時間乾燥し、9.5〜10.5mgの乾燥塗膜を得た。示差走査熱量計(島津製作所社製、商品名:DSC−50)を用い、以下の測定条件でガラス転移温度を測定した。まず、室温から150℃に10分間で昇温し、150℃を10分間保持した。その後、計算で求められる各合成樹脂のTgよりも50℃低い温度まで下げ、再度150℃まで10分間で昇温した。この昇温の際に、1回目のTgの測定を行った。次に、1回目で測定したTgよりも50℃低い温度まで降温した。この降温の際に2回目のTgの測定を行った。この2回目のTgの値を、各合成樹脂のガラス転移温度とした。
【0070】
(2)アルミナセメント
・市販アルミナセメントを準備した。このアルミナセメントの主な化学成分の質量割合は、Alが48.57質量%、CaOが39.49質量%、SiOが4.54質量%、Feが1.97質量%であった。ブレーン比表面積は、3160cm/gであった。なお、化学成分は、JIS R 5202に準じて測定し、ブレーン比表面積は、JIS R 5201に準じて測定した。
【0071】
(3)細骨材
以下の粒度を有する珪砂を準備した。
・100メッシュ(150μm)篩通過質量80%以上、140メッシュ(106μm)篩通過質量40%以上、70メッシュ(212μm)篩通過質量95%以上、200メッシュ(75μm)篩通過質量20%以上
【0072】
(4)消泡剤
・シリコーン系消泡剤(市販品)
【0073】
上記原材料を表1及び表2に示す質量割合で配合し、配合No.1〜14のポリマーセメント組成物を調製した。具体的には、得られた合成樹脂A〜Eを、固形分換算で250g計量し、合成樹脂エマルションを攪拌しながらアルミナセメント、細骨材及び消泡剤を表1及び表2に示す割合で添加し、3分間攪拌及び混合してポリマーセメント組成物を調製した。表1及び表2は、合成樹脂全体を100質量部としたときの各原材料の質量部を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
調製したポリマーセメント組成物の評価を以下のとおり行った。
(1)酸素透過阻止性
ガラス板上にPETフィルム及び和紙を貼り、その上に調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した。その後、大気中で、240分間放置して乾燥及び硬化により成膜させた。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した。第1塗布層と第2塗布層は、それぞれ同じ量のポリマーセメント組成物を塗布して形成した。ポリマーセメント組成物の塗布量の合計量は、表3及び表4に示すとおりであった。
【0077】
第2塗布層を塗布後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で14日間養生して、ポリマーセメント硬化物を得た。
【0078】
得られたポリマーセメント硬化物を直径18mmの円形に打ち抜き、試験体Aを得た。製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、以下の手順で試験体Aの酸素透過量測定を行った。
【0079】
(i)試験体Aの表面側を白金電極(陰極)に密着させた。
(ii)電極セルの中へ0.5N塩化カリウム溶液5mlを入れた。
(iii)蒸留水を満たしたビーカーの中に、試験体Aを密着させた白金電極を入れた。
(iv)蒸留水中に窒素ガスを200ml/分で吹き込み、酸素ガスを完全に追い出し記録計電流値が安定した後、記録計のゼロ点を合わせた。
(v)蒸留水中に酸素ガスを200ml/分で吹き込み、酸素の透過量が一定となった時の電流値を読み取った。そして、下式を用いて酸素透過量Q(mg/cm・日)を算出した。算出結果は表3及び表4に示すとおりであった。
【0080】
【数1】

上式中、iは測定電流値(μA)を示し、Aは試験体Aと密着する白金電極の面積(cm)を示す。
【0081】
(2)付着強さ
70mm×70mm×20mmのモルタル板に、調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した。その後、大気中で、240分間放置して乾燥及び硬化により成膜させた。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した。第1塗布層と第2塗布層は、それぞれ同じ量のポリマーセメント組成物を塗布して形成した。ポリマーセメント組成物の塗布量の合計量は、表3及び表4に示すとおりであった。
【0082】
第2塗布層を形成した後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で14日間養生してポリマーセメント硬化物を得た。養生終了2日前に、JIS A6916:2000「建築用下地調整塗材」の付着強さ試験に準拠して付着強さ用試験ジグを取付けた。このようにして得られたポリマーセメント硬化物を試験体Bとした。
【0083】
温度23℃の条件で、精密万能材料試験機((株)インテスコ製、商品名:210XLS)を用いて引張速度2mm/分の条件で試験体Bの引張試験を行い、JIS A6916:2000「建築用下地調整塗材」の付着強さ試験に準拠して付着強さを測定した。測定結果は表3及び表4に示すとおりであった。
【0084】
(3)ひび割れ追従性
中央に切り込みを入れた厚さ10mmのモルタル板(40mm×120mm)に、調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した。その後、大気中で、240分間放置して乾燥及び硬化により成膜させた。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した。第1塗布層と第2塗布層は、それぞれ同じ量のポリマーセメント組成物を塗布して形成した。ポリマーセメント組成物の塗布量の合計量は、表3及び表4に示すとおりであった。
【0085】
第2塗布層を形成した後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で14日間養生し、ポリマーセメント硬化物を得た。このようにして得られたポリマーセメント硬化物を試験体Cとした。
【0086】
精密万能材料試験機((株)インテスコ製、商品名:210XLS)を用い、測定温度−10℃又は23℃、及び、引張速度5mm/分の条件で試験体Cの引張試験を行った。測定温度−10℃及び23℃における最大荷重時の変位量をそれぞれ測定し、それぞれの変位量をひび割れ追従性とした。測定結果は表3及び表4に示すとおりであった。
【0087】
【表3】
【0088】
表3には、第1塗布層及び第2塗布層の合計の塗布量が1.6kg/mである参考例の結果を示した。表3の参考例2〜4は、いずれも酸素透過量が0.05mg/cm・日以下であり、優れた酸素透過阻止性を有していた。表3の参考例2〜4は、いずれも付着強さが1N/mm以上であり、優れた付着性を有することが確認された。表3の参考例2〜4は、23℃でのひび割れ追従性の評価が0.4mm以上、−20℃でのひび割れ追従性の評価が0.3mm以上であり、優れたひび割れ追従性を有することが確認された。すなわち、参考例2〜4は、付着性、ひび割れ追従性及び酸素透過阻止性のいずれの特性にも優れていた。
【0089】
【表4】
【0090】
表4には、第1塗布層及び第2塗布層の合計の塗布量が2.4kg/mである参考例の結果を示した。表4の参考例9〜13は、いずれも酸素透過量が0.03mg/cm・日以下であり、優れた酸素透過阻止性を有していた。表4の参考例9〜13は、いずれも付着強さが1N/mm以上であり、優れた付着性を有することが確認された。表4の参考例9〜13は、23℃でのひび割れ追従性の評価が0.4mm以上、−20℃でのひび割れ追従性の評価が0.3mm以上であり、優れたひび割れ追従性を有することが確認された。すなわち、参考例9〜13は、付着性、ひび割れ追従性及び酸素透過阻止性のいずれの特性にも優れていた。
【0091】
[ポリマーセメント組成物を用いた表面被覆工法]
(実施例1)
表1の配合No.7のポリマーセメント組成物を調製した。屋外に設置したコンクリート擁壁の表面の所定領域(400mm×900mm)に、調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した(第1塗布工程)。その後、大気中で、60分間放置して第1塗布層を乾燥及び硬化により成膜させた(養生工程)。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した(第2塗布工程)。その後、大気中で、180分間放置して第2塗布層を乾燥及び硬化により成膜させた(養生工程)。成膜後、第2塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第3塗布層を形成した(第3塗布工程)。その後、大気中で、180分間放置して第3塗布層を乾燥及び硬化により成膜させた(養生工程)。
【0092】
第1塗布層、第2塗布層及び第3塗布層の形成に用いたポリマーセメント組成物の固形分換算の量は、表5に示すとおりであった。このようにして、コンクリート擁壁の表面上に、ポリマーセメント硬化物からなる保護層を形成した。第1、第2、第3の各塗布層を成膜後、表面の膨れの有無を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりとした。各工程後の評価結果は表5に示すとおりであった。
【0093】
A:膨れの数が0個であった。
B:膨れの数が1〜10個であった。
C:膨れの数が11個以上であった。
【0094】
(実施例2,3、比較例1)
第1塗布工程におけるポリマーセメント組成物の塗布量を表5に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各工程を行って、コンクリート擁壁の表面上に、ポリマーセメント硬化物からなる保護層を形成し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果は表5に示すとおりであった。
【0095】
(比較例2)
第1塗布工程及び第2塗布工程におけるポリマーセメント組成物の塗布量を表5に示すとおりに変更したこと、及び、第3塗布工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして各工程を行って、コンクリート擁壁の表面上に、ポリマーセメント硬化物からなる保護層を形成し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果は表5に示すとおりであった。
【0096】
【表5】
【0097】
表5に示すとおり、実施例1〜3では、第1塗布工程後から保護層の表面に膨れが全く見られなかった。そして、全工程後も保護層の表面に膨れが発生せず、良好な仕上がりが得られた。一方、比較例1、2では、第1塗布工程の塗布直後から養生工程過程で多くの膨れが発生し、全工程後もその膨れは保護層の表面に残っていた。このように、第1塗布工程において、所定のポリマーセメント組成物を0.3〜0.7kg/mの塗布量で塗布することによって、表面の凹凸が十分に低減された保護層が形成できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示によれば、施工管理の煩雑さを低減することが可能なコンクリート構造体の表面被覆工法が提供される。