【実施例】
【0051】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[ポリマーセメント組成物の調製及び評価]
以下の(1)〜(5)の原材料を準備した。
(1)合成樹脂
・合成樹脂A:市販のエチレン/塩化ビニル共重合樹脂エマルション[エチレン/塩化ビニル=30/70(質量比)、固形分濃度:50質量%、ガラス転移温度(Tg):0℃]
合成樹脂Aは以下の手順で調製した。
【0053】
・合成樹脂B:スチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:54質量%、ガラス転移温度(Tg):−29℃)
【0054】
合成樹脂Bは以下の手順で調製した。予め、容器にイオン交換水400質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B) 54質量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 42質量部と、スチレン 434質量部と、n−ブチルアクリレート 462質量部と、2−エチルヘキシルアクリレート 504質量部と、2−ヒドロキシメタクリレート 49質量部と、メタクリル酸 7質量部を配合して、単量体乳化混合液を調製した。
【0055】
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水 620質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)5.4質量部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が80℃になるまで加温した。
【0056】
次に、上述のとおり調製した単量体乳化混合液の2質量%を分取した。この単量体乳化混合液100質量部に対して、過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)14質量部を添加して、約20分間初期重合を行った。同じ温度で、残りの単量体乳化混合液と過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)70質量部を同時に滴下しながら、4時間重合反応を行った。
【0057】
滴下終了後、さらに1時間、80℃に保ったまま攪拌を継続して行った。その後、同じ温度で有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。このようにして、合成樹脂Bを調製した。
【0058】
・合成樹脂C:スチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:54質量%、ガラス転移温度(Tg):−34℃)
【0059】
合成樹脂Cは以下の手順で調製した。予め、容器にイオン交換水400質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B) 54質量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 42質量部と、スチレン 416質量部と、n−ブチルアクリレート 608質量部と、2−エチルヘキシルアクリレート 576質量部と、2−ヒドロキシメタクリレート 49質量部と、メタクリル酸 7質量部を配合して、単量体乳化混合液を調製した。
【0060】
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水 620質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)5.4質量部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が80℃になるまで加温した。
【0061】
次に、上述のとおり調製した単量体乳化混合液の2質量%を分取した。この単量体乳化混合液100質量部に対して、過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)14質量部を添加して、約20分間初期重合を行った。同じ温度で、残りの単量体乳化混合液と過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)70質量部を同時に滴下しながら、4時間重合反応を行った。
【0062】
滴下終了後、さらに1時間、80℃を保ったまま攪拌を継続して行った。その後、同じ温度で有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。このようにして、合成樹脂Cを調製した。
【0063】
・合成樹脂D:スチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:54質量%、ガラス転移温度(Tg):−39℃)
【0064】
合成樹脂Dは以下の手順で調製した。予め、容器にイオン交換水400質量部と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B) 54質量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル 42質量部と、スチレン 540質量部と、n−ブチルアクリレート 315質量部と、2−エチルヘキシルアクリレート 645質量部と、2−ヒドロキシメタクリレート 49質量部と、メタクリル酸 7質量部を配合して、単量体乳化混合液を調製した。
【0065】
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水 620質量部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)5.4質量部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が80℃になるまで加温した。
【0066】
次に、上述のとおり調製した単量体乳化混合液の2質量%を分取した。この単量体乳化混合液100質量部に対して、過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)14質量部を添加して、約20分間初期重合を行った。同じ温度で、残りの単量体乳化混合液と過硫酸ナトリウム水溶液(濃度:5質量%)70質量部を同時に滴下しながら、4時間重合反応を行った。
【0067】
滴下終了後、さらに1時間、80℃を保ったまま攪拌を持続して行った。その後、同じ温度で有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。このようにして、合成樹脂Dを調製した。
【0068】
・合成樹脂E:市販のエチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:60質量%、ガラス転移温度(Tg):−50℃)
【0069】
合成樹脂A〜Eのガラス転移温度は以下の手順で測定した。ガラス板上に合成樹脂エマルションを適量滴下し、60℃で16時間乾燥し、9.5〜10.5mgの乾燥塗膜を得た。示差走査熱量計(島津製作所社製、商品名:DSC−50)を用い、以下の測定条件でガラス転移温度を測定した。まず、室温から150℃に10分間で昇温し、150℃を10分間保持した。その後、計算で求められる各合成樹脂のTgよりも50℃低い温度まで下げ、再度150℃まで10分間で昇温した。この昇温の際に、1回目のTgの測定を行った。次に、1回目で測定したTgよりも50℃低い温度まで降温した。この降温の際に2回目のTgの測定を行った。この2回目のTgの値を、各合成樹脂のガラス転移温度とした。
【0070】
(2)アルミナセメント
・市販アルミナセメントを準備した。このアルミナセメントの主な化学成分の質量割合は、Al
2O
3が48.57質量%、CaOが39.49質量%、SiO
2が4.54質量%、Fe
2O
3が1.97質量%であった。ブレーン比表面積は、3160cm
2/gであった。なお、化学成分は、JIS R 5202に準じて測定し、ブレーン比表面積は、JIS R 5201に準じて測定した。
【0071】
(3)細骨材
以下の粒度を有する珪砂を準備した。
・100メッシュ(150μm)篩通過質量80%以上、140メッシュ(106μm)篩通過質量40%以上、70メッシュ(212μm)篩通過質量95%以上、200メッシュ(75μm)篩通過質量20%以上
【0072】
(4)消泡剤
・シリコーン系消泡剤(市販品)
【0073】
上記原材料を表1及び表2に示す質量割合で配合し、配合No.1〜14のポリマーセメント組成物を調製した。具体的には、得られた合成樹脂A〜Eを、固形分換算で250g計量し、合成樹脂エマルションを攪拌しながらアルミナセメント、細骨材及び消泡剤を表1及び表2に示す割合で添加し、3分間攪拌及び混合してポリマーセメント組成物を調製した。表1及び表2は、合成樹脂全体を100質量部としたときの各原材料の質量部を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
調製したポリマーセメント組成物の評価を以下のとおり行った。
(1)酸素透過阻止性
ガラス板上にPETフィルム及び和紙を貼り、その上に調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した。その後、大気中で、240分間放置して乾燥及び硬化により成膜させた。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した。第1塗布層と第2塗布層は、それぞれ同じ量のポリマーセメント組成物を塗布して形成した。ポリマーセメント組成物の塗布量の合計量は、表3及び表4に示すとおりであった。
【0077】
第2塗布層を塗布後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で14日間養生して、ポリマーセメント硬化物を得た。
【0078】
得られたポリマーセメント硬化物を直径18mmの円形に打ち抜き、試験体Aを得た。製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、以下の手順で試験体Aの酸素透過量測定を行った。
【0079】
(i)試験体Aの表面側を白金電極(陰極)に密着させた。
(ii)電極セルの中へ0.5N塩化カリウム溶液5mlを入れた。
(iii)蒸留水を満たしたビーカーの中に、試験体Aを密着させた白金電極を入れた。
(iv)蒸留水中に窒素ガスを200ml/分で吹き込み、酸素ガスを完全に追い出し記録計電流値が安定した後、記録計のゼロ点を合わせた。
(v)蒸留水中に酸素ガスを200ml/分で吹き込み、酸素の透過量が一定となった時の電流値を読み取った。そして、下式を用いて酸素透過量Q(mg/cm
2・日)を算出した。算出結果は表3及び表4に示すとおりであった。
【0080】
【数1】
上式中、i
∞は測定電流値(μA)を示し、Aは試験体Aと密着する白金電極の面積(cm
2)を示す。
【0081】
(2)付着強さ
70mm×70mm×20mmのモルタル板に、調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した。その後、大気中で、240分間放置して乾燥及び硬化により成膜させた。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した。第1塗布層と第2塗布層は、それぞれ同じ量のポリマーセメント組成物を塗布して形成した。ポリマーセメント組成物の塗布量の合計量は、表3及び表4に示すとおりであった。
【0082】
第2塗布層を形成した後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で14日間養生してポリマーセメント硬化物を得た。養生終了2日前に、JIS A6916:2000「建築用下地調整塗材」の付着強さ試験に準拠して付着強さ用試験ジグを取付けた。このようにして得られたポリマーセメント硬化物を試験体Bとした。
【0083】
温度23℃の条件で、精密万能材料試験機((株)インテスコ製、商品名:210XLS)を用いて引張速度2mm/分の条件で試験体Bの引張試験を行い、JIS A6916:2000「建築用下地調整塗材」の付着強さ試験に準拠して付着強さを測定した。測定結果は表3及び表4に示すとおりであった。
【0084】
(3)ひび割れ追従性
中央に切り込みを入れた厚さ10mmのモルタル板(40mm×120mm)に、調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した。その後、大気中で、240分間放置して乾燥及び硬化により成膜させた。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した。第1塗布層と第2塗布層は、それぞれ同じ量のポリマーセメント組成物を塗布して形成した。ポリマーセメント組成物の塗布量の合計量は、表3及び表4に示すとおりであった。
【0085】
第2塗布層を形成した後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で14日間養生し、ポリマーセメント硬化物を得た。このようにして得られたポリマーセメント硬化物を試験体Cとした。
【0086】
精密万能材料試験機((株)インテスコ製、商品名:210XLS)を用い、測定温度−10℃又は23℃、及び、引張速度5mm/分の条件で試験体Cの引張試験を行った。測定温度−10℃及び23℃における最大荷重時の変位量をそれぞれ測定し、それぞれの変位量をひび割れ追従性とした。測定結果は表3及び表4に示すとおりであった。
【0087】
【表3】
【0088】
表3には、第1塗布層及び第2塗布層の合計の塗布量が1.6kg/m
2である参考例の結果を示した。表3の参考例2〜4は、いずれも酸素透過量が0.05mg/cm
2・日以下であり、優れた酸素透過阻止性を有していた。表3の参考例2〜4は、いずれも付着強さが1N/mm
2以上であり、優れた付着性を有することが確認された。表3の参考例2〜4は、23℃でのひび割れ追従性の評価が0.4mm以上、−20℃でのひび割れ追従性の評価が0.3mm以上であり、優れたひび割れ追従性を有することが確認された。すなわち、参考例2〜4は、付着性、ひび割れ追従性及び酸素透過阻止性のいずれの特性にも優れていた。
【0089】
【表4】
【0090】
表4には、第1塗布層及び第2塗布層の合計の塗布量が2.4kg/m
2である参考例の結果を示した。表4の参考例9〜13は、いずれも酸素透過量が0.03mg/cm
2・日以下であり、優れた酸素透過阻止性を有していた。表4の参考例9〜13は、いずれも付着強さが1N/mm
2以上であり、優れた付着性を有することが確認された。表4の参考例9〜13は、23℃でのひび割れ追従性の評価が0.4mm以上、−20℃でのひび割れ追従性の評価が0.3mm以上であり、優れたひび割れ追従性を有することが確認された。すなわち、参考例9〜13は、付着性、ひび割れ追従性及び酸素透過阻止性のいずれの特性にも優れていた。
【0091】
[ポリマーセメント組成物を用いた表面被覆工法]
(実施例1)
表1の配合No.7のポリマーセメント組成物を調製した。屋外に設置したコンクリート擁壁の表面の所定領域(400mm×900mm)に、調製したポリマーセメント組成物をコテで塗布して第1塗布層を形成した(第1塗布工程)。その後、大気中で、60分間放置して第1塗布層を乾燥及び硬化により成膜させた(養生工程)。成膜後、第1塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第2塗布層を形成した(第2塗布工程)。その後、大気中で、180分間放置して第2塗布層を乾燥及び硬化により成膜させた(養生工程)。成膜後、第2塗布層の上に上記ポリマーセメント組成物をコテで塗布して第3塗布層を形成した(第3塗布工程)。その後、大気中で、180分間放置して第3塗布層を乾燥及び硬化により成膜させた(養生工程)。
【0092】
第1塗布層、第2塗布層及び第3塗布層の形成に用いたポリマーセメント組成物の固形分換算の量は、表5に示すとおりであった。このようにして、コンクリート擁壁の表面上に、ポリマーセメント硬化物からなる保護層を形成した。第1、第2、第3の各塗布層を成膜後、表面の膨れの有無を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりとした。各工程後の評価結果は表5に示すとおりであった。
【0093】
A:膨れの数が0個であった。
B:膨れの数が1〜10個であった。
C:膨れの数が11個以上であった。
【0094】
(実施例2,3、比較例1)
第1塗布工程におけるポリマーセメント組成物の塗布量を表5に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして各工程を行って、コンクリート擁壁の表面上に、ポリマーセメント硬化物からなる保護層を形成し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果は表5に示すとおりであった。
【0095】
(比較例2)
第1塗布工程及び第2塗布工程におけるポリマーセメント組成物の塗布量を表5に示すとおりに変更したこと、及び、第3塗布工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして各工程を行って、コンクリート擁壁の表面上に、ポリマーセメント硬化物からなる保護層を形成し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果は表5に示すとおりであった。
【0096】
【表5】
【0097】
表5に示すとおり、実施例1〜3では、第1塗布工程後から保護層の表面に膨れが全く見られなかった。そして、全工程後も保護層の表面に膨れが発生せず、良好な仕上がりが得られた。一方、比較例1、2では、第1塗布工程の塗布直後から養生工程過程で多くの膨れが発生し、全工程後もその膨れは保護層の表面に残っていた。このように、第1塗布工程において、所定のポリマーセメント組成物を0.3〜0.7kg/m
2の塗布量で塗布することによって、表面の凹凸が十分に低減された保護層が形成できることが確認された。