【実施例1】
【0018】
図1および
図2を参照して、本実施例の跳ね上げ式車両用シートの全体概要について説明する。
図1は本実施例の車両用シート1の斜視図である。
図2は
図1のシートをB−B’方向からみた図(底面図)である。なお、各図面では、構造が分かり易いように、シートの表皮材やワディング(中綿)を省略して示している。
【0019】
図1に示すように、本実施例の車両用シート1は、座席として使用しない場合にリクライニング機構5によりシートバック部4をシートクッション部3側に倒し、横方向(
図1の矢印方向)に跳ね上げて車体に固定する跳ね上げ式の車両用シートである。シートクッション部3およびシートバック部4には、シートの骨格材であるシートフレーム2が設けられている。シートクッション部3のシートフレーム2は、回動部(ヒンジ)6を介して回動機構7に接続されており、シート収納時にシートを横方向(
図1の矢印方向)に跳ね上げる際に回動部(ヒンジ)6が回転中心となって、シートが横方向(
図1の矢印方向)に回転する。
【0020】
シートクッション部3の底面側には、シートとして使用する際にシートを支持する脚部8が設けられている。なお、シートフレーム2や脚部8は、乗員の体重を支えるために鉄などの剛性の高い金属により形成されている。また、シートクッション部3の底面側には、
図2に示すように、シートを跳ね上げて車体に固定するロック機構の一部である固定ストラップ9が設けられている。固定ストラップ9のシートに連結されている側の端部とは反対側の端部を車体に設けられたフック等(図示せず)に係合させることで、跳ね上げたシートを車体に固定する。
【0021】
先ず、比較のために、
図5および
図6を参照して、従来の跳ね上げ式シートのロック機構について説明する。
図5は
図1に相当する従来の車両用シートのA部拡大図である。また、
図6は
図5のD−D’部断面図であり、ロック機構の固定ストラップ9とシートとの連結部の詳細を示している。
【0022】
従来の跳ね上げ式シートのロック機構は、
図5に示すように、シートフレーム2に溶接で固定された荷重受けワイヤー17、シートフレーム2にボルトで固定されたアンカープレートB18、および
図5では図示していない固定ストラップ9で構成されている。アンカープレートB18には、1つの開口20が設けられている。荷重受けワイヤー17およびアンカープレートB18は保護カバーである樹脂カバー10で覆われている。
【0023】
図6を用いて、
図5の構成をより詳細に説明する。アンカープレートB18は、ボルト12およびナット14によりシートフレーム2に接続されたブラケット13に連結固定されている。アンカープレートB18には開口20が設けられている。アンカープレートB18の近傍には、シートフレーム2に溶接により固定された荷重受けワイヤー17が配置されている。アンカープレートB18および荷重受けワイヤー17は、保護カバーである樹脂カバー10に覆われており、樹脂カバー10に設けられたスリット部16を貫通して、固定ストラップ9が配置されている。
【0024】
固定ストラップ9は樹脂カバー10の内側において、荷重受けワイヤー17とアンカープレートB18の端部の間を通り、アンカープレートB18の開口20を貫通して配置されており、アンカープレートB18の端部と開口20の間に固定されるように、端部が縫製部15により縫製されている。
【0025】
従来の跳ね上げ式シートでは、シート側のロック機構が
図6に示す構成となっており、固定ストラップ9によりシートを車体へ固定する際に、固定ストラップ9の車体方向へのテンション(張力)が生じ、そのテンション(張力)を荷重受けワイヤー17とアンカープレートB18で受けることになる。そして、シートを車体に固定する際に固定ストラップ9に掛かる荷重は、
図6の矢印方向に掛かる。従って、従来の跳ね上げ式シートのロック機構では、荷重受けワイヤー17とアンカープレートB18の両方を設ける必要がある。
【0026】
次に、
図3および
図4を参照して、本実施例の跳ね上げ式シートのロック機構について説明する。
図3は
図1のA部拡大図である。また、
図4は
図3のC−C’部断面図であり、ロック機構の固定ストラップ9とシートとの連結部の詳細を示している。
【0027】
本実施例の跳ね上げ式シートのロック機構は、
図3に示すように、シートフレーム2にボルト12で固定されたアンカープレートA11、および
図3では図示していない固定ストラップ9で構成されている。アンカープレートA11には、2つの開口19が設けられている。アンカープレートA11の横断面は略L字形状となっており、2つの開口19はL字の角部付近とボルト12で固定されていない面に設けられている。アンカープレートA11は保護カバーである樹脂カバー10で覆われている。
【0028】
図4を用いて、
図3の構成をより詳細に説明する。アンカープレートA11は、略L字形状の一方の平面がボルト12およびナット14によりシートフレーム2に接続されたブラケット13に連結固定されている。アンカープレートA11には2つの開口19が設けられている。アンカープレートA11は、保護カバーである樹脂カバー10に覆われており、樹脂カバー10に設けられたスリット部16を貫通して、固定ストラップ9が配置されている。
【0029】
固定ストラップ9は樹脂カバー10の内側において、アンカープレートA11の端部側に設けられた開口19を
図4の左側から右側へ貫通して配置されており、アンカープレートA11の2つの開口19の間に固定されるように、端部が縫製部15により縫製されている。言い換えれば、固定ストラップ9は、その端部がアンカープレートA11の2つの開口の間に固定され、シートを車体に固定する際に固定ストラップ9に張力が掛かる方向とは反対側のアンカープレートA11の端部側の開口19とアンカープレート端部の間の領域を通過するように設けられている。
【0030】
図4のようなアンカープレートA11の構造すなわち横断面を略L字形状で、かつ、固定ストラップ9が貫通してその間に縫製により固定される2つの開口19を設け、さらに
図4のような固定ストラップ9の配置にすることで、固定ストラップ9によりシートを車体へ固定する際に、固定ストラップ9の車体方向へのテンション(張力)をアンカープレートA11のみで受けることが可能になる。なお、アンカープレートA11のみで固定ストラップ9の荷重を受けるため、アンカープレートA11は鉄材などの剛性の高い金属材料により一体で形成するのが好ましい。
【0031】
以上説明したように、従来は荷重受けワイヤー17とアンカープレートB18の両方で支えていた固定ストラップ9の荷重を、アンカープレートA11のみで支えることができるため、荷重受けワイヤー17を設ける必要がなくなり、部品点数の削減が可能になる。 また、荷重受けワイヤー17の廃止により、荷重受けワイヤー17のシートフレーム2への溶接も不要になるため、製造コストを大幅に削減することができる。
【0032】
また、部品点数を削減することで、長期間使用した場合の部品の経時劣化によるトラブルの可能性を低減することができ、さらにアンカープレートA11を鉄材など剛性の高い金属材料を用いて一体で形成することにより、シート収納時に確実な車体へのシート固定が可能になる。
【0033】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。