特許第6677610号(P6677610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジーの特許一覧

特許6677610熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法
<>
  • 特許6677610-熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法 図000002
  • 特許6677610-熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法 図000003
  • 特許6677610-熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法 図000004
  • 特許6677610-熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677610
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/06 20060101AFI20200330BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20200330BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20200330BHJP
   F28F 13/08 20060101ALI20200330BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20200330BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F28F1/06
   F28F1/02 B
   F28F1/40 B
   F28F13/08
   F28D1/053 A
   F28F1/32 W
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-179115(P2016-179115)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-44707(P2018-44707A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】東山 直久
(72)【発明者】
【氏名】高木 基之
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0159253(US,A1)
【文献】 特開2006−320910(JP,A)
【文献】 特開2009−068742(JP,A)
【文献】 特開昭63−091492(JP,A)
【文献】 特開平07−190661(JP,A)
【文献】 実開昭61−066760(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F25B 39/02
F28F 1/02
F28F 1/06
F28F 1/32
F28F 1/40
F28F 13/08
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて配置される一組のタンクと、両端部がそれぞれ前記タンクに接続される複数のチューブと、隣接する前記チューブの間に設けられる複数のフィンとを有し、前記フィンを通過する空気との間で熱交換を行う熱交換器において、
前記チューブの内部には、前記空気の流通方向に沿って並んで冷媒の流通する複数の流路が設けられ、
前記チューブの長手方向に沿った端部には、該長手方向と直交し前記流通方向となる幅方向に幅狭状となった幅狭部が形成され、
前記複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路内には、壁部に対して内側へと突出した複数のリブが設けられると共に、前記幅狭部で内側に向かって前記壁部が膨出した膨出部を有し、前記チューブの前記壁部の外面は、前記膨出部が設けられた箇所において凹んでおり、
前記チューブの前記長手方向及び前記幅方向と直交する厚さ方向の両側の前記壁部の各々に、前記膨出部及び前記複数のリブが設けられ、
前記複数のリブは、前記膨出部から突出していることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項記載の熱交換器において、
前記膨出部は、複数の流路のうち前記チューブの幅方向端部に設けられた流路と隣接した2番目の流路に形成されることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
互いに間隔をおいて配置される一組のタンクと、両端部がそれぞれ前記タンクに接続される複数のチューブと、隣接する前記チューブの間に設けられる複数のフィンとを有し、前記フィンを通過する空気との間で熱交換を行う熱交換器に適用される前記チューブに対してサイジング加工を行うチューブの加工方法であって、
前記チューブの内部には、前記空気の流通方向に沿って並んで冷媒の流通する複数の流路が設けられ、
前記複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路内には、壁部に対して内側へと突出した複数のリブが設けられ、
前記チューブの長手方向及び幅方向と直交する厚さ方向の両側の前記壁部の各々に、前記複数のリブが設けられ、
前記チューブの加工方法は、
加工用治具を構成する互いに近接離間可能な一対のブロック体の各々に設けられた挿入溝に、前記チューブの前記長手方向の端部を挿入する挿入工程と、
前記挿入溝に前記チューブの前記長手方向の前記端部が挿入された状態の前記一対のブロック体を互いに接近させる方向に移動させることで、前記チューブの前記幅方向の両端部を前記幅方向内側に向かって押圧し、前記チューブの前記長手方向の前記端部に前記幅方向で幅狭状となった幅狭部を形成する押圧工程と、を含み、
前記押圧工程では、前記チューブの前記幅方向の前記両端部への押圧により、前記幅狭部の前記複数のリブが設けられた箇所で前記壁部を内側に向かって湾曲するように塑性変形させて、前記チューブの前記厚さ方向の両側の前記壁部の各々に、内側に膨出した膨出部を形成する、チューブの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用空調装置に用いられ、該車両の停車時における空気を冷却して冷風を供給可能な熱交換器及び該熱交換器に用いられ冷媒の流通するチューブの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、車両に搭載される車両用空調装置に用いられ、車両の停車時においてエンジンが停止した状態で蓄冷材容器に蓄えられた冷熱と空気との熱交換を行うことで冷風を送風可能な蓄冷機能付きエバポレータを提案している(特許文献1参照)。
【0003】
この蓄冷機能付きエバポレータは、一組のヘッダタンクと、該ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部とを有し、該熱交換コア部を構成する複数のチューブの間に蓄冷材容器を備えている。この蓄冷材容器の内部には蓄冷材が封入され、隣接する2本のチューブの間にフィンの代わりに配置されると共に、その側板には外側に向かって突出した複数の凸部が形成され、隣接するチューブと前記凸部とが当接した状態でろう付けによって接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−149814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の提案に関連してなされたものであり、蓄冷材の封入された蓄冷材容器を設けることなくエンジン停止時における冷却性能の低下を抑制することが可能な熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、互いに間隔をおいて配置される一組のタンクと、両端部がそれぞれタンクに接続される複数のチューブと、隣接するチューブの間に設けられる複数のフィンとを有し、フィンを通過する空気との間で熱交換を行う熱交換器において、
チューブの内部には、空気の流通方向に沿って並んで冷媒の流通する複数の流路が設けられ、
チューブの長手方向に沿った端部には、長手方向と直交し流通方向となる幅方向に幅狭状となった幅狭部が形成され、
複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路内には、壁部に対して内側へと突出した複数のリブが設けられると共に、幅狭部で内側に向かって壁部膨出した膨出部を有し、チューブの壁部の外面は、膨出部が設けられた箇所において凹んでおり、
チューブの長手方向及び幅方向と直交する厚さ方向の両側の壁部の各々に、膨出部及び複数のリブが設けられ、
複数のリブは、膨出部から突出していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、熱交換器を構成する複数のチューブの内部には、空気の流通方向に沿って並んだ複数の流路が設けられ、この複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路内には、壁部に対して内側へと突出したリブが設けられると共に、内側に向かって壁部の膨出した膨出部が形成される。
【0008】
従って、複数の流路のうちの少なくとも1つ以上の流路内にリブ及び膨出部を設けることで、他の流路と比較して通路断面積を小さくできるため、エンジン停止時においても冷媒を流路内に好適に残留させておくことができる。
【0009】
その結果、従来技術に係る熱交換器のようにチューブの間にエンジンが停止した際の冷却を行うための蓄冷材及び蓄冷材容器を設けることなく、リブ及び膨出部を有した流路内に残留している冷媒と空気との間で熱交換を行って冷却させることでエンジン停止時における冷却性能の低下を抑制することができる。
【0010】
また、チューブの長手方向に沿った端部に、長手方向と直交し流通方向となる幅方向に幅狭状となった幅狭部を形成し、膨出部を幅狭部に形成するとよい。
【0011】
さらに、本発明は、互いに間隔をおいて配置される一組のタンクと、両端部がそれぞれタンクに接続される複数のチューブと、隣接するチューブの間に設けられる複数のフィンとを有し、フィンを通過する空気との間で熱交換を行う熱交換器に適用されるチューブに対してサイジング加工を行うチューブの加工方法であって、
チューブの内部には、空気の流通方向に沿って並んで冷媒の流通する複数の流路が設けられ、
複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路内には、壁部に対して内側へと突出した複数のリブが設けられ、
チューブの長手方向及び幅方向と直交する厚さ方向の両側の壁部の各々に、複数のリブが設けられ、
チューブの加工方法は、
加工用治具を構成する互いに近接離間可能な一対のブロック体の各々に設けられた挿入溝に、チューブの長手方向の端部を挿入する挿入工程と、
挿入溝にチューブの長手方向の端部が挿入された状態の一対のブロック体を互いに接近させる方向に移動させることで、チューブの幅方向の両端部を幅方向内側に向かって押圧し、チューブの長手方向の端部に幅方向で幅狭状となった幅狭部を形成する押圧工程と、を含み、
押圧工程では、チューブの幅方向の両端部への押圧により、幅狭部の複数のリブが設けられた箇所で壁部を内側に向かって湾曲するように塑性変形させて、チューブの厚さ方向の両側の壁部の各々に、内側に膨出した膨出部を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、熱交換器を構成するチューブに複数の流路が設けられ、この複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路内に、壁部に対して内側へと突出したリブと、内側に向かって壁部を膨出させた膨出部とを設けることにより、リブ及び膨出部を有した流路の通路断面積を他の流路の通路断面積より小さくし、エンジン停止時において冷媒を流路内に残留させておくことができる。その結果、従来技術に係る熱交換器のようにチューブの間にエンジンが停止した際の冷却を行うための蓄冷材及び蓄冷材容器を設けることなく、リブ及び膨出部を有した流路内に残留している冷媒と空気とで熱交換を行って冷却することでエンジン停止時における冷却性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る熱交換器の外観斜視図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図3Aは、図2のIIIA−IIIA線に沿った断面図であり、図3Bは、図3Aのチューブにおける幅方向端部近傍を示す拡大断面図である。
図4図4A図4Cは、チューブの一端部にサイジング加工を行うことで挿入部を形成する場合の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る熱交換器を示す。
【0016】
この熱交換器10は、図1に示されるように、例えば、その内部に冷媒の流通するエバポレータとして用いられ、一組の第1及び第2ヘッダ(タンク)12、14と、前記第1ヘッダ12と第2ヘッダ14との間を接続する複数のチューブ16と、前記チューブ16の間に設けられ波状に折曲された複数のフィン18とを含み、前記第1及び第2ヘッダ12、14の幅方向と直交する熱交換器10の厚さ方向(矢印A1方向)に空気が通過することで前記冷媒との熱交換が行われる。
【0017】
第1ヘッダ12は、その一端部に冷媒の供給・排出される導入管20及び導出管22が設けられ、その内部が幅方向(矢印B1、B2方向)と直交する厚さ方向(矢印A1、A2方向)に2分割されている。第2ヘッダ14は、第1ヘッダ12に対して所定間隔離間して略平行に設けられ、その内部は第1ヘッダ12と同様に厚さ方向(矢印A1、A2方向)に2分割されている。
【0018】
チューブ16は、例えば、アルミニウム材料からなる断面扁平状に形成され、所定長さを有した一直線状に形成される。このチューブ16は、略鉛直方向(図1中、矢印C1、C2方向)に延在し、第1及び第2ヘッダ12、14の幅方向(矢印B1、B2方向)に沿って互いに等間隔離間するように設けられると共に、図2に示されるように、前記第1及び第2ヘッダ12、14の厚さ方向(空気の流れ方向)に一対となるように所定間隔離間して2列に設けられる。
【0019】
一方、各チューブ16の内部には、図3A及び図3Bに示されるように、冷媒の流通する複数(例えば、10本)の流路24が長手方向(図1及び図2中、矢印C1、C2方向)に沿って形成される。この流路24は、例えば、断面矩形状に形成されチューブ16の幅方向(矢印A1、A2方向)に沿って互いに等間隔離間するように形成されると共に、該チューブ16の一端部から他端部まで貫通している。
【0020】
また、チューブ16において幅方向端部となる一対の第1流路26a、26bは、その幅方向端部が断面三角形状に形成され、互いに向かい合う内壁面にはそれぞれ複数(例えば、2本ずつ)の第1リブ30が形成される。この第1リブ30は、例えば、内壁面から離間する方向に向かって先細となる断面三角形状に形成され、互いに向かい合うように形成されると共に、前記チューブ16の長手方向(図2中、矢印C1、C2方向)に沿って延在している。
【0021】
さらに、第1流路26a、26bに対して幅方向内側に隣接した第2流路32a、32bには、互いに向かい合う内壁面に複数(例えば、4本ずつ)の第2リブ36がそれぞれ形成されると共に、前記チューブ16の長手方向(図2中、矢印C1、C2方向)に沿って延在している。なお、第2リブ36は、第1リブ30と同様に断面三角形状に形成される。
【0022】
また、上述した第1及び第2リブ30、36は、流路24内を流れる冷媒の伝熱面積を増やす目的で設けられるものであり、例えば、その数量や断面形状は上述した構成に限定されるものではなく、さらに、第2流路32a、32bに対して幅方向内側となる3つ目以降の流路24に設けられていてもよい。
【0023】
このチューブ16の一端部及び他端部には、図2に示されるように、幅方向(矢印A1、A2方向)に所定幅だけ絞られた幅狭状の一対の挿入部38a、38bが形成される。
【0024】
この挿入部38a、38bは、例えば、チューブ16の一端部及び他端部をそれぞれ幅方向中央に向かって押し潰すことによって形成され、前記一端部及び他端部以外の部位に対して幅方向(矢印A1、A2方向)に所定の潰し代でそれぞれ均等に潰され形成される。そのため、挿入部38a、38bは、チューブ16において、図3Aに示されるように、複数の流路24のうち、幅方向端部から2番目となる第2流路32a、32bが押し潰され、この第2流路32a、32bには、第2リブ36の形成される壁部40がそれぞれ内側に向かって断面円弧状に膨出した膨出部42が形成される。
【0025】
すなわち、第2流路32a、32bが他の流路24と比較して幅狭となり、その通路断面積が他の流路24の通路断面積に対して小さくなる。
【0026】
換言すれば、第2流路32a、32bは、第2リブ36の形成された一方及び他方の壁部40が互いに接近するようにそれぞれ内側に向かって断面円弧状に変形して形成される。
【0027】
そして、図2に示されるように、チューブ16の挿入部38a、38bがそれぞれ第1及び第2ヘッダ12、14の内部へと挿入されろう付け等によって固定されることで、前記第1及び第2ヘッダ12、14の内部とチューブ16の流路24とが連通する。
【0028】
フィン18は、図1に示されるように、例えば、アルミニウム材料等の薄板を成形することで断面波状に折曲され、第1及び第2ヘッダ12、14の幅方向(矢印B1、B2方向)に隣接配置された2つのチューブ16に対して交互に接するように配置されると共に、波状の断面形状で熱交換器10の厚さ方向(矢印A1、A2方向)に沿って所定幅だけ延在するように形成されている。
【0029】
本発明の実施の形態に係る熱交換器10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にチューブ16の一端部に対してサイジング加工を行って挿入部38aを形成する場合について図4A図4Cを参照しながら説明する。
【0030】
先ず、サイジング加工に用いられる加工用治具44について簡単に説明する。この加工用治具44は、断面長方形状で厚さ中央にチューブ16の挿入可能な挿入溝46を有した一対のブロック体48a、48bからなり、前記チューブ16の幅方向(矢印A1、A2方向)に接近・離間自在に設けられる。
【0031】
また、ブロック体48a、48bの互いに向かい合う端面50には挿入溝46が開口し、幅方向(矢印A1、A2方向)に沿って略同一長さでそれぞれ一直線状に形成されると共に、その断面形状はチューブ16の断面形状(断面扁平状)に対応して形成されている。
【0032】
この挿入溝46は、一方のブロック体48aの長さと他方のブロック体48bの長さとを合わせた長さがチューブ16の幅寸法より短くなるように形成されており、この長さと幅寸法の差とが挿入部38aの潰し代となる。
【0033】
すなわち、一方のブロック体48aと他方のブロック体48bとは、互いに向かい合う端面50を境として対称形状となるように形成される。
【0034】
次に、上述した加工用治具44を用いてチューブ16の一端部に挿入部38aをサイジング加工で形成する場合には、図示しない治具等によってチューブ16を固定した状態とし、その一端部に対してチューブ16の幅方向外側から加工用治具44のブロック体48a、48bをそれぞれ接近させる。そして、図4Aに示されるように、チューブ16の幅方向端部からブロック体48a、48bの挿入溝46へと挿入し、さらに互いに接近させる方向へと移動させていく。これにより、ブロック体48a、48bはチューブ16の幅方向に沿って移動することとなる。
【0035】
さらにブロック体48a、48bを移動させることで、図4Bに示されるように挿入溝46の端部にそれぞれチューブ16の幅方向端部が当接した状態となり、この状態からさらにブロック体48a、48bを互いに接近させることで前記幅方向端部が互いに接近する方向へと押圧される。その結果、例えば、チューブ16の幅方向端部にそれぞれ押圧力が付与され、この押圧力は、幅方向内側に向かって圧縮するように付勢され、且つ、チューブ16の外側がブロック体48a、48bによって規制されているため壁部40を厚さ方向内側に向かって変形させるように働く。
【0036】
これにより、チューブ16へ付与される幅方向内側への押圧力が、第2流路32a、32bにおいて第2リブ36の形成される方向、すなわち、厚さ方向内側へと逃げることで、前記第2リブ36の形成される壁部40が湾曲するように塑性変形して膨出部42が形成される。
【0037】
最後に、図4Cに示されるように、一方のブロック体48aと他方のブロック体48bとが互いに当接するまで移動することで、チューブ16の一端部が所定幅だけ潰され膨出部42の形成された挿入部38aが形成され、前記ブロック体48a、48bを互いに離間する方向へと移動させ前記チューブ16を取り出すことで、前記挿入部38aのサイジング加工が完了する。
【0038】
なお、チューブ16の他端部に対してサイジング加工を行って挿入部38bを形成する場合も、上述した一端部へのサイジング加工と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0039】
次に、上述したように挿入部38a、38bの形成されたチューブ16を含む熱交換器10の動作について説明する。
【0040】
先ず、図示しない車両におけるエンジンが駆動して圧縮機が作動している場合には、図示しない配管を通じて導入管20から導入された冷媒は、第1ヘッダ12から複数のチューブ16の流路24を通じて下方へと流れ第2ヘッダ14へと導入される。そして、複数のチューブ16を通じて第2ヘッダ14から第1ヘッダ12へと再び戻った冷媒が導出管22から排出される。このように、第1ヘッダ12と第2ヘッダ14との間で冷媒が複数のチューブ16における流路24を循環し、冷媒とフィン18を通過する空気との間で熱交換がなされ、該空気が冷却されて下流側(矢印A1方向)へと供給される。
【0041】
次に、車両が停車した状態でエンジンが停止し、それに伴って、圧縮機の作動が停止した場合には、チューブ16の一端部及び他端部における第2流路32a、32bに膨出部42が設けられ、他の流路24と比較して通路断面積が小さく、且つ、その内壁面に複数の第2リブ36が形成されているため、エンジンが駆動していた際に循環していた冷媒が他の流路24と比較して第2流路32a、32bから排出されにくく内部に残留している。換言すれば、第2流路32a、32b内に所定量の冷媒を残留させておくことが可能となる。そのため、エンジンが停止した状態においても、空気がフィン18及びチューブ16の間を通過することで、各チューブ16の第2流路32a、32bに残留している冷媒の冷熱がフィン18へと伝えられ空気と熱交換されることで冷却され冷風として下流側へと供給される。
【0042】
すなわち、エンジンの停止に伴って圧縮機が停止した状態においても、熱交換器10を通過する空気が各チューブ16の第2流路32a、32bに残留している冷媒によって好適に冷却される。
【0043】
以上のように、本実施の形態では、熱交換器10を構成する複数のチューブ16に幅方向に沿って複数の流路24を有し、該チューブ16の一端部及び他端部に形成され第1及び第2ヘッダ12、14に挿入される挿入部38a、38bにおいて、幅方向端部から2番目となる第2流路32a、32bに内側に向かって膨出した膨出部42を形成すると共に、内壁面に複数の第2リブ36を形成している。
【0044】
そのため、挿入部38a、38bにおける第2流路32a、32bの通路断面積が他の流路24の通路断面積より小さくなり、エンジン停止時においても一方の挿入部38aと他方の挿入部38bとの間となる前記第2流路32a、32b内に冷媒を好適に残留させておくことが可能となる。その結果、従来技術に係る熱交換器のようにチューブの間にエンジンが停止した際の冷却を行うための蓄冷材及び蓄冷材容器を設けることなく、各チューブ16の第2流路32a、32b内に残留している冷媒と空気との熱交換を行って冷却させることでエンジン停止時における冷却性能の低下を抑制することが可能となる。
【0045】
このように、チューブ16の間に蓄冷材容器を設ける必要がないことから、部品点数及び製造の削減並びに軽量化を図ることができると共に、全てのチューブ16の間にフィン18を設けることができるため、冷媒と空気との伝熱面積を従来の熱交換器より増加させることができ、しかも、前記チューブ16の間を空気が通過する際に流れを阻害するものがないため通気抵抗を低減することも可能となる。
【0046】
また、チューブ16の一端部及び他端部に対してサイジング加工を行って挿入部38a、38bを形成する際、同時に第2流路32a、32bに臨む壁部40を変形させ膨出部42を形成することができるため、該膨出部42を形成するための新たな製造工程や加工コストが増加してしまうことなく好適である。
【0047】
さらに、第2リブ36を有した第2流路32a、32bに膨出部42を形成することで、リブを有していない他の流路24に膨出部42を設ける場合と比較し、より通路断面積を小さくすることができると共に、隣接する第2リブ36の間の表面張力を利用して冷媒を上方(矢印C2方向)へと移動させることができるため、チューブ16の上下方向において均等に冷媒を残留させ熱交換を均等に行うことができる。
【0048】
なお、本発明に係る熱交換器及び該熱交換器に用いられるチューブの加工方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
10…熱交換器 16…チューブ
18…フィン 24…流路
32a、32b…第2流路 36…第2リブ
38a、38b…挿入部 42…膨出部
44…加工用治具 48a、48b…ブロック体
図1
図2
図3
図4