(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に記載のものは、それぞれ被験者の外耳道、顎に装着されるため、装着状態を維持するのに被験者の身体的負担が大きいという問題がある。また、特許文献3に記載のものは、動きと音との2種類の異種の信号を処理しているため、処理アルゴリズムが複雑になるという問題がある。同様に、特許文献4に記載のものは、距離と加速度信号(姿勢)との2種類の異種の信号を処理しているため、処理アルゴリズムが複雑になるという問題がある。さらに、被験者が例えば頭を振ると、測距センサが顎に対して相対的に変位してノイズが生じ、計数精度が低下するという問題もある。また、特許文献5に記載のものは、密閉チューブと半導体圧力センサを用いる場合は、高価になり、また、装着状態を維持するのに被験者の身体的負担が大きいという問題がある。また、ストレインゲージを用いる場合は、出力信号が眼鏡フレームの形状および材質(特に、可撓性)に依存するため、様々な眼鏡フレームに適用される場合、処理アルゴリズムが複雑になるという問題がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、装着状態を維持するのに被験者の身体的負担が少なく、安価に構成され、しかも、簡単な信号処理で精度良く咀嚼回数を計測できる咀嚼計を提供することにある。
【0011】
また、この発明の課題は、そのような咀嚼計を含むシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明の咀嚼計は、
被験者の側頭部に装着されるべき棒状物に取り付けられ、咀嚼に伴う側頭筋の動きに基づいて咀嚼回数を計測する咀嚼計であって、
上記棒状物に対してそれぞれ別体として構成され、この咀嚼計の使用に際して、上記棒状物のうち上記側頭筋を覆う頭皮に対向する部分に取り付けられる感圧センサモジュールと、上記棒状物のうち上記感圧センサモジュールが取り付けられる部分とは異なる部分に取り付けられる本体とを備え、
上記感圧センサモジュールは、
上記側頭筋からの圧力を受けて上記側頭筋の動きに応じた圧力の変化を電気抵抗の変化として出力するシート状の感圧センサと、
この感圧センサを上記棒状物に沿って着脱可能に取り付けるためのセンサホルダとを含み、
上記センサホルダは、
上記棒状物のうち上記頭皮に対向する側の面に沿って配される板部を含み、
上記板部は、上記頭皮に対向する側の対向面に、この板部に対して垂直な方向に突起した突起部を有し、
上記シート状の感圧センサは、上記突起部を含んで上記対向面を覆う態様で、上記板部の上記対向面に沿って取り付けられ、
上記本体は、
上記感圧センサの出力に基づいて咀嚼回数を計数する信号処理部を搭載し、
この本体を上記棒状物に沿って着脱可能に取り付けるための取付部材を含むことを特徴とする。
【0013】
本明細書で、「棒状物」とは、例えば眼鏡フレームのテンプル、カチューシャ(ヘアバンドの一種)の端部近傍部分など、棒状の物体を広く指す。「棒状物」は、複合的な構造をもつ物(例えば、上に挙げた眼鏡フレーム)の一部であってもよく、湾曲または屈曲していてもよい。
【0014】
この発明の咀嚼計では、感圧センサモジュールと本体は、被験者の側頭部に装着されるべき棒状物に対してそれぞれ別体として構成されている。この咀嚼計の使用に際して、感圧センサモジュールは、上記棒状物のうち側頭筋を覆う頭皮に対向する部分に取り付けられる。ここで、上記感圧センサモジュールを構成するシート状の感圧センサは、センサホルダを介して上記棒状物に沿って着脱可能に取り付けられる。また、上記本体は、上記棒状物のうち上記感圧センサモジュールが取り付けられる部分とは異なる部分に沿って、取付部材を介して着脱可能に取り付けられる。このように上記感圧センサモジュールと上記本体が上記棒状物に取り付けられた状態で、上記棒状物が被験者の側頭部に簡単に装着される。この咀嚼計は上記棒状物とともに被験者の側頭部に装着されることから、例えば被験者の外耳道または顎に装着される場合に比して、装着状態を維持するのに被験者の身体的負担が少ない。
【0015】
この咀嚼計の動作時には、上記シート状の感圧センサが、上記側頭筋からの圧力を受けて上記側頭筋の動きに応じた圧力の変化を電気抵抗の変化として出力する。上記本体に搭載された信号処理部が、上記感圧センサの出力に基づいて咀嚼回数を計数する。ここで、被験者の咀嚼動作に応じて、上記側頭筋は隆起と平坦化とを繰り返す。これにより、被験者の咀嚼動作に応じて、上記感圧センサの出力は大、小を繰り返して変化する。したがって、上記信号処理部がこの上記感圧センサの出力の変化を検出することにより、例えば動きと音のような2種類の異種の信号を処理する場合に比して、簡単な信号処理で咀嚼回数を計測できる。また、上記シート状の感圧センサは、上記棒状物を介することなく上記側頭筋からの圧力を受けるので、この咀嚼計が様々な棒状物に取り付けられる場合であっても、上記信号処理部は、簡単な信号処理で咀嚼回数を計測できる。
【0016】
また、上記シート状の感圧センサは上記棒状物と被験者の側頭部との間に挟まった状態で装着されているので、被験者が例えば頭を振ったとしても、被験者の側頭部に対して相対的に変位するのを抑制できる。したがって、例えば耳に引っ掛けられるクリップにセンサが設けられる場合に比して、精度良く咀嚼回数を計測できる。
また、上記センサホルダの上記板部は、上記頭皮に対向する側の対向面に、この板部に対して垂直な方向に突起した突起部を有する。また、上記シート状の感圧センサは、上記突起部を含んで上記対向面を覆う態様で、上記板部の上記対向面に沿って取り付けられている。したがって、被験者の側頭筋が隆起したとき、この側頭筋と上記突起部との間に挟まれて上記シート状の感圧センサのうち上記突起部に対応する部分がより強く圧迫される。これにより、被験者の咀嚼動作に応じて、上記感圧センサの出力は大きく変化する。つまり、感度が向上する。この結果、さらに精度良く咀嚼回数を計測できる。
【0017】
また、上記シート状の感圧センサは、例えば密閉チューブと半導体圧力センサを用いる場合に比して、安価に構成される。したがって、この咀嚼計は、全体として比較的安価に構成され得る。
【0018】
一実施形態の咀嚼計では、
上記センサホルダは
、
上記板部のうち、上記棒状物の長手方向に沿った両側の側縁からそれぞれ上記板部に対して垂直に上記棒状物が存在する側へ延在する一対のアーム部
を含み、
上記板部と上記一対のアーム部とが上記棒状物を取り囲んで保持
していることを特徴とする。
【0019】
この一実施形態の咀嚼計では、上記センサホルダは、上記板部のうち、上記棒状物の長手方向に沿った両側の側縁からそれぞれ上記板部に対して垂直に上記棒状物が存在する側へ延在する一対のアーム部を含んでいる。この咀嚼計の使用に際して、上記センサホルダの上記板部が上記棒状物のうち上記頭皮に対向する側の面に沿って配されると、上記板部と上記一対のアーム部とが上記棒状物を取り囲んで保持する状態になる
。したがって、上記感圧センサモジュールは、上記棒状物のうち側頭筋を覆う頭皮に対向する部分に簡単に取り付けられる。
【0020】
また、上記センサホルダの上記板部と上記一対のアーム部とが上記棒状物を取り囲んで保持する構成では、上記一対のアーム部がガイドとして働いて、上記センサホルダ(したがって、上記感圧センサモジュール)は上記棒状物の長手方向に沿ってスライドし得る。したがって、被験者は、自身の側頭部のうち側頭筋に上記感圧センサモジュールが対向するように、上記棒状物に対する上記感圧センサモジュールの取り付け位置を、上記棒状物の長手方向に沿って可変して調節することが容易になる。
【0021】
一実施形態の咀嚼計では、
上記センサホルダの上記板部は、上記棒状物の長手方向に沿った細長い形状を有し、
上記一対のアーム部は、上記板部の上記両側の側縁のうち長手方向に関して互いに反対側の端部からそれぞれ上記棒状物が存在する側へ延在していることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の咀嚼計では、上記棒状物が長手方向に関して真っ直ぐ延びている場合だけで無く、湾曲または屈曲している場合であっても、上記一対のアーム部がそれぞれ上記棒状物の上面、下面に当接し得る。また、上記棒状物の断面サイズが多少大きかったり小さかったりしても、上記一対のアーム部がそれぞれ上記棒状物の上面、下面に当接し得る。したがって、上記感圧センサモジュールが様々な棒状物に簡単に取り付けられ得る。
【0023】
【0024】
【0025】
一実施形態の咀嚼計では、
上記センサホルダの上記板部は、上記棒状物の長手方向に沿った細長い形状を有し、
上記突起部は、上記板部の長手方向に関して互いに離間して複数設けられ、
上記シート状の感圧センサは、上記板部の長手方向に関して、スリットを介してそれぞれ上記突起部に対応するセンサ部分に区分されていることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の咀嚼計では、仮に被験者の側頭部に対する上記棒状物の装着位置が長手方向に関して多少ばらついたとしても、上記シート状の感圧センサのうち、上記板部の長手方向に関して区分された複数のセンサ部分(それぞれ上記突起部に対応する部分)のいずれかが、側頭筋に対向し得る。したがって、上記シート状の感圧センサは、上記複数のセンサ部分のいずれかによって、上記側頭筋の動きに応じた圧力の変化を電気抵抗の変化として確実に出力できる。また、上記シート状の感圧センサの上記複数のセンサ部分は、スリットを介して区分されているので、上記複数のセンサ部分が互いに干渉することがなく、ノイズが低減される。したがって、上記シート状の感圧センサの出力のSN比(信号対ノイズ比)が向上する。この結果、さらに精度良く咀嚼回数を計測できる。
【0027】
一実施形態の咀嚼計では、
上記突起部はドーム状または半球状に突起しており、
上記シート状の感圧センサは、上記突起部に対応するセンサ部分に、互いに離間して並行かつ渦巻き状に配置された一対の導電層パターンを有することを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の咀嚼計では、
上記シート状の感圧センサは、上記突起部に対応するセンサ部分に、互いに離間して並行かつ渦巻き状に配置された一対の導電層パターンを有する。したがって、単に平面的に広がった導電層を有する場合に比して、上記シート状の感圧センサのシート面内での硬さが緩和される。これにより、上記ドーム状または半球状の突起部によって押される円形状の領域が、各導電層パターンの渦巻きの中心から径方向外向きに容易に広がる。さらには、一対の導電層パターンのうち、渦巻きの方向に沿って抵抗変化に寄与する部分の長さが大きく伸びる。したがって、上記感圧センサの出力は大きく変化する。つまり、感度が向上する。この結果、さらに精度良く咀嚼回数を計測できる。
【0029】
一実施形態の咀嚼計では、上記棒状物と、上記棒状物に取り付けられた上記感圧センサモジュールとを一体として筒状に覆うセンサカバーを備えたことを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の咀嚼計では、上記棒状物と、上記棒状物に取り付けられた上記感圧センサモジュールとを一体として筒状に覆うセンサカバーを備える。したがって、このセンサカバーによって、上記感圧センサモジュールを上記棒状物にしっかりと取り付けることが可能になる。また、このセンサカバーによって、上記シート状の感圧センサが保護されて、信頼性が向上する。また、この咀嚼計が取り付けられた上記棒状物が被験者の側頭部に装着された状態では、被験者の側頭筋を覆う頭皮と耳介との間に上記センサカバーによって覆われた上記感圧センサモジュールが挟まれ、上記被験者の側頭筋を覆う頭皮に上記センサカバーが当接する。したがって、上記シート状の感圧センサが露出している場合に比して、被験者にとって装着感が良くなる。
【0031】
センサカバーの材料は、例えば上記感圧センサのシートよりも柔軟な布からなるのが望ましい。
【0032】
一実施形態の咀嚼計では、上記信号処理部は、上記感圧センサの出力に対して閾値を設定し、上記感圧センサの出力が上記閾値を超えるか又は下回る回数に応じて上記咀嚼回数を計数することを特徴とする。
【0033】
この一実施形態の咀嚼計では、上記信号処理部は、上記感圧センサの出力に対して閾値を設定し、上記感圧センサの出力が上記閾値を超えるか又は下回る回数に応じて上記咀嚼回数を計数する。したがって、信号処理が簡単に行われる。
【0034】
一実施形態の咀嚼計では、上記本体は、この本体の外周面のうち上記被験者の視野に入る側の部分に、上記信号処理部が上記咀嚼回数を計数するのに応じて、上記被験者の咀嚼動作に関する情報を表示する表示器を有することを特徴とする。
【0035】
ここで、「咀嚼動作に関する情報」とは、例えば、咀嚼動作1回毎に一時的に点灯することによって咀嚼動作が正しく行われていることを表す情報、1回の食事における咀嚼回数などを指す。
【0036】
この一実施形態の咀嚼計では、上記本体は、この本体の外周面のうち上記被験者の視野に入る側の部分に、表示器を有する。この表示器は、上記信号処理部が上記咀嚼回数を計数するのに応じて、上記被験者の咀嚼動作に関する情報を表示する。この表示器の表示によって、被験者は、例えば自身の咀嚼動作が正しく行われていることなど、自身の咀嚼動作に関する情報を認識できる。
【0037】
一実施形態の咀嚼計では、上記本体は、上記被験者の咀嚼動作に関する情報をこの本体の外部へ送信可能な通信部を備えたことを特徴とする。
【0038】
この一実施形態の咀嚼計では、上記被験者の咀嚼動作に関する情報を、通信部によって、上記本体の外部へ送信することができる。これにより、上記被験者の咀嚼動作に関する情報を、様々な用途に利用することができる。
【0039】
別の局面では、この発明のシステムは、
上記咀嚼計と、この咀嚼計とは別体として設けられたコンピュータ装置とを含むシステムであって、
上記コンピュータ装置は、
上記咀嚼計からの上記被験者の咀嚼動作に関する情報を受信可能な通信部と、
上記咀嚼計からの上記被験者の咀嚼動作に関する情報を処理して、上記被験者の咀嚼動作に関する画像を作成する表示処理部と、
上記表示処理部によって作成された画像を表示する表示器と
を備えたことを特徴とする。
【0040】
ここで、「コンピュータ装置」とは、名称の如何にかかわらず、例えばスマートフォン、タブレット端末など、実質的にコンピュータ装置であれば足りる。
【0041】
「咀嚼動作に関する画像」とは、例えば、上記被験者の咀嚼動作の回数を日ごとに集計処理して得られた棒グラフなどを指す。
【0042】
この発明のシステムでは、上記コンピュータ装置の通信部が、上記咀嚼計からの上記被験者の咀嚼動作に関する情報を受信する。表示処理部は、上記咀嚼計からの上記被験者の咀嚼動作に関する情報を処理して、上記被験者の咀嚼動作に関する画像を作成する。上記コンピュータ装置の表示器は、上記表示処理部によって作成された画像を表示する。この画像を見たユーザ(被験者以外の者であってもよい。)は、上記被験者の咀嚼動作に関する情報を視覚を通して直感的に認識できる。
【発明の効果】
【0043】
以上より明らかなように、この発明の咀嚼計は、装着状態を維持するのに被験者の身体的負担が少なく、安価に構成され、簡単な信号処理で精度良く、咀嚼回数を計測できる。
【0044】
また、この発明のシステムによれば、ユーザは、被験者の咀嚼動作に関する情報を視覚を通して直感的に認識できる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
(咀嚼計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の咀嚼計(符号90で示す。)が眼鏡フレーム201の左テンプル204に着脱可能に取り付けられた状態を示している。なお、眼鏡フレーム201の左テンプル204は、複合的な構造をもつ物としての眼鏡200の一部であり、棒状物の一例である。この例では、眼鏡200は、一般的な構造のものであり、前枠202と、右左一対のテンプル203,204とを含んでいる。例えば、左テンプル204は、前枠202から後方に延在するストレート部分205と、ストレート部分205の後方に連なり、被験者の耳に引っ掛けられるように湾曲または屈曲したモダン部分206とを含んでいる。
【0048】
図1から分かるように、この咀嚼計90は、左テンプル204のうちのモダン部分206に取り付けられる感圧センサモジュール2と、左テンプル204のうちのストレート部分205に取り付けられる本体1と、それらの感圧センサモジュール2と本体1とを接続する1本の信号ケーブル33とを備えている。感圧センサモジュール2と本体1と信号ケーブル33は、眼鏡フレーム201(左テンプル204)に対してそれぞれ別体として構成されている。
【0049】
また、
図3は、左テンプル204のストレート部分205に取り付けられた咀嚼計90の本体1を、眼鏡フレーム201の内側(被験者の視野に入る側)から見たところを示している。
図4は、左テンプル204のモダン部分206に取り付けられた咀嚼計90の感圧センサモジュール2を、
図3と同じ側から見たところを示している。
【0050】
図1によって分かるように、この例では、本体1は、ケーシング1Mの外周面のうち眼鏡フレーム201の外側に相当する部分に表示器140Aと操作部130とを有している。また、
図3によって分かるように、ケーシング1Mの外周面のうち眼鏡フレーム201の内側に相当する部分に表示器140Bと取付部材5とを有している。
図1中の表示器140Aは、この例ではOLED(有機発光ダイオード)からなり、咀嚼回数を表示するために用いられる。操作部130は、この例でプッシュ式スイッチからなり、被験者が動作開始(測定開始および/または表示開始)を指示するために用いられる。
図3中の表示器140Bは、この例では1個のLED(発光ダイオード)からなり、咀嚼動作1回毎に一時的に点灯して、被験者が咀嚼動作を正しく行っていることを表すために用いられる。取付部材5は、この例ではケーシング1Mの外周面のうち内側に相当する部分に固定された面状ファスナからなっている。この取付部材5は、左テンプル204を覆うように折り返されて半円筒状になり、本体1を左テンプル204のストレート部分205に沿って着脱可能に取り付けるために用いられる。
【0051】
図4によって分かるように、感圧センサモジュール2は、この例では、センサホルダ3と、シート状の感圧センサ50とを含んでいる。左テンプル204(モダン部分206)に対して感圧センサモジュール2が装着された状態では、さらにセンサカバー4が設けられる。センサカバー4は、左テンプル204のうちのモダン部分206と、モダン部分206の内側に沿って取り付けられたセンサホルダ3および感圧センサ50とを一体として円筒状に覆う。この例では、センサカバー4は、片面(外周面)に多数の微細なループを有する伸縮容易で柔軟な布と、この布の他方の面(内周面)に設けられた多数の微細なフックとを有する面状ファスナからなっている。このセンサカバー4によって、感圧センサモジュール2をモダン部分206にしっかりと取り付けることが可能になる。また、このセンサカバー4によって、シート状の感圧センサ50が保護されて、信頼性が向上する。なお、センサカバー4は、伸縮容易で柔軟な布からなるので、シート状の感圧センサ50の出力には殆ど影響を与えない。
【0052】
図5は、感圧センサモジュール2を、センサカバー4が未装着の状態で、眼鏡フレーム201(左テンプル204)の外側から見たところを示している。また、
図6は、感圧センサモジュール2を、センサカバー4が未装着の状態で、眼鏡フレーム201(左テンプル204)の内側から見たところを示している。これらの
図5、
図6から分かるように、センサホルダ3は、左テンプル204の長手方向Xに沿った細長い形状を有し、左テンプル204の内側(頭皮に対向する側)の面204aに沿って配される板部3aと、この板部3aから延在する一対のアーム部3b,3cとを含んでいる。板部3aのうち頭皮に対向する側の対向面3a1に沿って、シート状の感圧センサ50が貼り付けられている。
【0053】
図7は、センサホルダ3の構造を詳細に示している。また、
図8(B)は、センサホルダ3を板部に対して垂直な方向から見たところを示している。
図8(A)、
図8(D)、
図8(E)は、それぞれ、センサホルダ3を
図8(B)における上方、左側方、右側方から見たところを示している。
図8(C)は、
図8(B)におけるC−C線矢視断面を示している。
【0054】
これらの図から分かるように、センサホルダ3の板部3aは、左テンプル204の長手方向Xに沿った細長い、略矩形の平板状の形状を有している。一対のアーム部3b,3cは、板部3aのうち、左テンプル204の長手方向Xに沿った両側の側縁3e1,3e2からそれぞれ板部3aに対して垂直に
図7において右奥側(
図6において左テンプル204が存在する側)へ延在している。より詳しくは、一対のアーム部3b,3cは、板部3aの両側の側縁3e1,3e2のうち長手方向Xに関して互いに反対側の端部3f1,3f2からそれぞれ
図7において右奥側へ延在している。
【0055】
これにより、咀嚼計90の使用に際して、
図5、
図6に示したようにセンサホルダ3の板部3aが左テンプル204のうち頭皮に対向する側の面204aに沿って配されると、板部3aと一対のアーム部3b,3cとが左テンプル204を取り囲んで保持する状態になる。また、センサホルダ3の板部3aのうち頭皮に対向する側の対向面3a1に沿って、シート状の感圧センサ50が取り付けられている。これにより、シート状の感圧センサ50がセンサホルダ3を介して左テンプル204のうち頭皮に対向する側の面204aに沿って配された状態になる。したがって、被験者は、感圧センサモジュール2を、左テンプル204のうち側頭筋99(
図2参照)を覆う頭皮に対向するモダン部分206に簡単に取り付けることができる。また、左テンプル204が長手方向Xに関して真っ直ぐ延びている場合だけでなく、湾曲または屈曲している場合であっても、一対のアーム部3b,3cがそれぞれ左テンプル204(この例では、モダン部分206)の上面、下面に当接し得る。また、左テンプル204の断面サイズが多少大きかったり小さかったりしても、一対のアーム部3b,3cがそれぞれ左テンプル204の上面、下面に当接し得る。したがって、被験者は、感圧センサモジュール2を様々なテンプルなどの、様々な棒状物に簡単に取り付けることができる。
【0056】
また、上述のようにセンサホルダ3の板部3aと一対のアーム部3b,3cとが左テンプル204を取り囲んで保持する構成では、一対のアーム部3b,3cがガイドとして働いて、センサホルダ3(したがって、感圧センサモジュール2)は左テンプル204の長手方向Xに沿ってスライドし得る。したがって、被験者は、自身の側頭部98のうち側頭筋99(
図2参照)に感圧センサモジュール2が対向するように、左テンプル204に対する感圧センサモジュール2の取り付け位置を、左テンプル204の長手方向Xに沿って可変して調節することが容易になる。
【0057】
図7および
図8(A)〜
図8(B)中に示すように、センサホルダ3の板部3aは、頭皮に対向する側の対向面3a1に、この板部3aに対して垂直な方向にドーム状(半球状でもよい。)に突起した突起部3p1,3p2を有している。なお、突起部3p1,3p2は、板部3aの長手方向Xに関して互いに離間して複数(この例では、2個)設けられている。シート状の感圧センサ50は、これらの突起部3p1,3p2を含んで対向面3a1を覆うように貼り付けられている。
【0058】
センサホルダ3の対向面3a1のうち長手方向Xに関して互いに反対側の端部3f1,3f2近傍には、それぞれ長手方向Xに関して突起部3p1,3p2へ向かうのに連れて次第に隆起するように傾斜した一対の隆起部3d1,3d2が設けられている。これらの一対の隆起部3d1,3d2は、長手方向Xに関してシート状の感圧センサ50を位置決めするために働く。板部3aの長手方向Xに関して−X側の端部3f1近傍には、信号ケーブル33が嵌合される凹溝3xと、信号ケーブル33が内包する3本の配線(図示せず)用のスペースを確保するための凹部3wとが設けられている。
【0059】
この例では、板部3aの長手方向Xの寸法は28mm、それに垂直な幅方向の寸法は8mmにそれぞれ設定されている。板部3aに対して垂直にアーム部3b,3cが延在する寸法は4.6mmに設定されている。突起部3p1,3p2が対向面3a1から突起した寸法(高さ)は0.7mm、突起部3p1,3p2の直径は4mm、突起部3p1,3p2の中心間距離は8.5mmにそれぞれ設定されている。
【0060】
図9は、シート状の感圧センサ50を分解状態で示している。感圧センサ50は、電気的絶縁性を有するフレキシブル基板51と、このフレキシブル基板51上に形成された一対の渦巻き層50P−1,50P−2と、一対の渦巻き層50P−1,50P−2にそれぞれ対応する厚さ30μmのリング状のスペーサ層50Q−1,50Q−2と、一対の渦巻き層50P−1,50P−2にそれぞれ対応する円形の導電層50R−1,50R−2とを、厚さ方向に積層して構成されている。渦巻き層50P−1,50P−2の中心は、それぞれ上述の突起部3p1,3p2の中心に対応する。
【0061】
図10に示すように、渦巻き層50P−1は、互いに離間して並行かつ渦巻き状に配置された一対の導電層パターンE0−1,E1−1を有している。同様に、渦巻き層50P−2は、互いに離間して並行かつ渦巻き状に配置された一対の導電層パターンE0−2,E1−2を有している。渦巻き層50P−1の一方の導電層パターンE0−1と渦巻き層50P−2の一方の導電層パターンE0−2とは、フレキシブル基板51の片側(
図10において下側)の縁部に沿って長手方向Xに延在する共通の配線パターン55を介して、−X側の端部に設けられた電極端子55eに電気的に接続されている。渦巻き層50P−1の他方の導電層パターンE1−1は、フレキシブル基板51の反対側(
図10において上側)の縁部に沿って長手方向Xに延在する配線パターン57を介して、−X側の端部に設けられた電極端子57eに電気的に接続されている。渦巻き層50P−2の他方の導電層パターンE1−2は、両側の配線パターン55,57に沿って長手方向Xに延在する配線パターン56を介して、−X側の端部に設けられた電極端子56eに電気的に接続されている。
【0062】
フレキシブル基板51のうち長手方向Xに関して一対の渦巻き層50P−1,50P−2の間に相当する隙間には、このフレキシブル基板51を厚さ方向に貫通する矩形状のスリット51sが形成されている。
図9から分かるように、シート状の感圧センサ50は、板部3aの長手方向Xに関して、このスリット51sを介してそれぞれ突起部3p1,3p2に対応するセンサ部分50−1,50−2に区分されている。
【0063】
この例では、フレキシブル基板51の長手方向Xの寸法は20mm、それに垂直な幅方向の寸法は7.5mmにそれぞれ設定されている。スリット51sのX方向寸法は1.5mm、それに垂直な方向の寸法は4.5mmにそれぞれ設定されている。
【0064】
感圧センサモジュール2は、シート状の感圧センサ50の電極端子55e,56e,57eに信号ケーブル33が内包する3本の配線(図示せず)を接続し、上述のセンサホルダ3の板部3aの対向面3a1を覆うようにシート状の感圧センサ50を貼り付けるとともに、凹溝3xに信号ケーブル33の端部近傍部分を嵌合することによって、組み立てられている。
【0065】
感圧センサモジュール2が組み立てられた状態で、シート状の感圧センサ50に対して荷重が加わったとき、それぞれ突起部3p1,3p2に対応するセンサ部分50−1,50−2は、抵抗値が大きく変化する。詳しくは、シート状の感圧センサ50のうち突起部3p1,3p2に対応するセンサ部分50−1,50−2がより強く圧迫される。これにより、被験者の咀嚼動作に応じて、感圧センサ50の抵抗値(出力)は大きく変化する。つまり、感度が向上する。
【0066】
また、シート状の感圧センサ50は、例えば突起部3p1に対応するセンサ部分50−1に、互いに離間して並行かつ渦巻き状に配置された一対の導電層パターンE0−1,E1−1を有する。したがって、単に平面的に広がった導電層を有する場合に比して、シート状の感圧センサ50のシート面内での硬さが緩和される。これにより、ドーム状の突起部3p1によって押される円形状の領域が、渦巻き層50P−1の中心から径方向外向きに容易に広がる。さらには、一対の導電層パターンE0−1,E1−1のうち、渦巻きの方向に沿って抵抗変化に寄与する部分の長さが大きく伸びる。したがって、突起部3p1に対応するセンサ部分50−1の抵抗値(出力)は大きく変化する。突起部3p2に対応するセンサ部分50−2についても同様である。この結果、さらに感度が向上する。
【0067】
具体的には、シート状の感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2は、それぞれ
図11に例示するような抵抗値の変化を示す。この例では、荷重が20g、50g、100g、500g、1000gと変化するのに伴って、シート状の感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2の抵抗値は、それぞれ30Ω、12.5Ω、6.6Ω、2Ω、1.25Ωというように変化している。
【0068】
また、仮に被験者の側頭部98(
図2参照)に対するシート状の感圧センサ50の装着位置が長手方向Xに関して多少ばらついたとしても、シート状の感圧センサ50のうち、板部3aの長手方向Xに関して区分された2つのセンサ部分50−1,50−2(それぞれ突起部3p1,3p2に対応する部分)のいずれかが、側頭筋99に対向し得る。したがって、シート状の感圧センサ50は、2つのセンサ部分50−1,50−2のいずれかによって、側頭筋99の動きに応じた圧力の変化を電気抵抗の変化として確実に出力できる。また、シート状の感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2は、スリット51sを介して区分されているので、2つのセンサ部分50−1,50−2が電気的に互いに干渉することがなく、ノイズが低減される。したがって、シート状の感圧センサ50の出力のSN比(信号対ノイズ比)が向上する。
【0069】
上述のシート状の感圧センサ50は、例えば密閉チューブと半導体圧力センサを用いる場合に比して、安価に構成される。したがって、この咀嚼計90は、全体として比較的安価に構成され得る。
【0070】
図13は、咀嚼計90の制御系のブロック構成を示している。この咀嚼計90は、既述の操作部130、表示器140(表示器140A,140Bを表す。)に加えて、本体1に、制御部110と、記憶部115と、通信部180と、電源部170とを搭載している。
【0071】
制御部110は、ソフトウェアによって動作するCPU(中央演算処理ユニット)を含み、信号処理部として働いて感圧センサ50の出力に基づいて咀嚼回数を計数する処理や、その他の各種処理を実行する。
【0072】
記憶部115は、この例では、非一時的にデータを記憶し得るEEPROM(電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ)を含んでいる。記憶部115には、制御部110を制御するための制御プログラムが格納されている。また、この例では、記憶部115には、制御部110によって計数された咀嚼回数が記憶される。
【0073】
通信部180は、制御部110によって制御されて所定の情報をネットワークを介して外部の装置に送信したり、また、外部の装置からの情報をネットワークを介して受信して制御部110に受け渡したりする。このネットワークを介した通信は、この例では無線通信(例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) low energy)通信など)とする。ネットワークは、典型的には家庭内LAN(Local Area Network)、病院内LANであるが、これに限定されず、インターネットなどであってもよい。
【0074】
電源部170は、充電池(2次電池)および充電端子を含み、この咀嚼計90内の各部へ電力を供給する。
【0075】
(咀嚼計の使用および動作)
この咀嚼計90は、例えば次のようにして使用される。なお、咀嚼計90の出荷段階では、既に、感圧センサモジュール2は組み立てられた状態にあり、信号ケーブル33を介して本体1と接続されているものとする。
【0076】
(1)まず、被験者は、眼鏡フレーム201の左テンプル204に対して咀嚼計90を取り付ける。
【0077】
具体的には、まず、
図3に示したように、被験者は、咀嚼計90の本体1を、取付部材5を介して、眼鏡フレーム201の左テンプル204のストレート部分205に沿って着脱可能に取り付ける。次に、
図5および
図6に示したように、被験者は、感圧センサモジュール2を、センサホルダ3を介して、左テンプル204のモダン部分206に沿って着脱可能に取り付ける。なお、感圧センサモジュール2を、本体1よりも先に取り付けてもよい。次に、
図4に示したように、被験者は、センサカバー4によって、モダン部分206と、モダン部分206に取り付けられた感圧センサモジュール2とを一体として筒状に覆う。
【0078】
これにより、
図1に示したように、眼鏡フレーム201の左テンプル204に対して咀嚼計90を着脱可能に簡単に取り付けることができる。
【0079】
(2) 次に、
図2に示すように、被験者は、眼鏡200(眼鏡フレーム201)を頭部に装着する。これにより、咀嚼計90が左テンプル204に取り付けられた状態で被験者の側頭部98に簡単に装着される。
【0080】
このように、この咀嚼計90は左テンプル204とともに被験者の側頭部98に装着される。したがって、例えば被験者の外耳道または顎に装着される場合に比して、装着状態を維持するのに被験者の身体的負担が少ない。また、この装着状態では、被験者の側頭筋99を覆う頭皮と耳介97との間にセンサカバー4によって覆われた感圧センサモジュール2が挟まれ、被験者の側頭筋99を覆う頭皮にセンサカバー4が当接する。したがって、シート状の感圧センサ50が露出している場合に比して、被験者にとって装着感が良くなる。
【0081】
(3) 次に、被験者は、操作部130のプッシュ式スイッチを押して咀嚼計90の動作開始を指示するとともに、食事を始めて咀嚼動作を開始する。
【0082】
被験者の咀嚼動作に応じて、側頭筋99は隆起と平坦化とを繰り返す。咀嚼計90は、シート状の感圧センサ50が、側頭筋99からの圧力を受けて側頭筋99の動きに応じた圧力の変化を電気抵抗の変化として出力する。特に、被験者の側頭筋99が隆起したとき、この側頭筋99と突起部3p1,3p2との間に挟まれてシート状の感圧センサ50のうち突起部3p1,3p2に対応するセンサ部分50−1,50−2が強く圧迫される。これにより、被験者の咀嚼動作に応じて、感圧センサ50の出力は大きく変化する。本体1に搭載された制御部110が、感圧センサ50の出力に基づいて咀嚼回数を計数する。
【0083】
具体的には、
図12に示すように、被験者の咀嚼動作に応じて、感圧センサ50の出力は大、小を繰り返して変化する。なお、
図12では、横軸は時間(s)を表し、また、縦軸は感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2に一定の電流を通電したときの降下電圧(mV)を表している(この降下電圧は、感圧センサ50の抵抗値に比例する。)。
図12中には、感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2のそれぞれの出力C1,C2が表されている。制御部110はこれらの出力C1,C2の変化を検出する。この例では、感圧センサ50の出力C1,C2に対して閾値α1,α2を設定し、感圧センサ50の出力C1,C2が閾値α1,α2を超えるか又は下回る回数に応じて咀嚼回数を計数する。なお、閾値α1,α2は、この例では、咀嚼動作開始前の出力レベルに応じて設定するものとする。この
図12の例では、被験者の側頭部98に対する感圧センサモジュール2(シート状の感圧センサ50)の装着位置に起因して、感圧センサ50の一方のセンサ部分50−1の出力C1が他方のセンサ部分50−2の出力C2よりも大きくなっている。これに応じて、制御部110は、感圧センサ50の一方(出力が大きい方)のセンサ部分50−1の出力C1に基づいて咀嚼回数を計数する。これにより、簡単な信号処理で精度良く咀嚼回数を計測できる。1回の食事中に計測された咀嚼回数は、リアルタイムで累計されて記憶部115に記憶される。
【0084】
このように感圧センサ50の出力に基づいて計数するようにした場合、例えば動きと音のような2種類の異種の信号を処理する場合に比して、簡単な信号処理で咀嚼回数を計測できる。また、シート状の感圧センサ50は、左テンプル204を介することなく側頭筋99からの圧力を受けるので、この咀嚼計90が様々な棒状物に取り付けられる場合であっても、制御部110は、簡単な信号処理で咀嚼回数を計測できる。
【0085】
また、シート状の感圧センサ50は左テンプル204と被験者の側頭部98との間に挟まった状態で装着されているので、被験者が例えば頭を振ったとしても、被験者の側頭部98に対して感圧センサ50が相対的に変位するのを抑制できる。したがって、例えば耳に引っ掛けられるクリップにセンサが設けられる場合に比して、精度良く咀嚼回数を計測できる。
【0086】
(4) この例では、制御部110は、この本体1の外周面のうち内側(被験者の視野に入る側)の部分に設けられた表示器140B(
図3参照)を、被験者の咀嚼動作に関する情報の提供として、咀嚼動作1回毎に一時的に(例えば0.2秒間)点灯させる。食事中にこの表示器140Bの点灯を見た被験者は、自身が咀嚼動作が正しく行っていることを認識できる。
【0087】
また、制御部110は、この本体1の外周面のうち外側の部分に設けられた表示器140A(
図1参照)に、記憶部115に記憶されている咀嚼回数を更新しながらリアルタイムで表示させる。これにより、食事終了後に眼鏡200(眼鏡フレーム201)および咀嚼計90を頭部から取り外した後、被験者は、表示器140Aを見て、自身の1回の食事における咀嚼回数を認識できる。
【0088】
また、制御部110は、通信部180を制御して、被験者の咀嚼動作に関する情報(感圧センサ50の出力を表すデータをそのまま含んでいてもよい。)を、ネットワークを介して外部のコンピュータ装置、例えば被験者自身のスマートフォン600(
図14参照)に送信してもよい。これにより、被験者の咀嚼動作に関する情報を、様々な用途に利用することができる。
【0089】
(システムの構成)
図14は、上述の咀嚼計90とスマートフォン600とを含むシステム(全体を符号700で示す。)の構成を例示している。このシステム700は、咀嚼計90と、コンピュータ装置としてのスマートフォン600とを、ネットワーク900を介して互いに無線通信可能に備えている。
【0090】
スマートフォン600は、本体600Mと、この本体600Mに搭載された、制御部610と、記憶部620と、操作部630と、表示器640と、通信部680と、電源部690とを含んでいる。このスマートフォン600は、市販のスマートフォンに、後述のアプリケーションソフトウェアをインストールしたものである。
【0091】
制御部610は、CPUおよびその補助回路を含み、スマートフォン600の各部を制御し、記憶部620に記憶されたプログラムおよびデータに従って処理を実行する。例えば、操作部630を介して入力された指示に基づいて、通信部680から入力されたデータを処理し、処理したデータを、記憶部620に記憶させたり、表示器640で表示させたり、通信部680を介して出力させたりする。
【0092】
記憶部620は、制御部610でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、制御部610で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)とを含む。また、記憶部620の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカード、SSD(Solid State Drive))などが用いられてもよい。
【0093】
操作部630は、この例では、表示器640上に設けられたタッチパネルからなっている。なお、キーボードその他のハードウェア操作デバイスを含んでいても良い。
【0094】
表示器640は、この例ではLCD(液晶表示素子)または有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイからなる表示画面を含む。表示器640は、制御部610による制御に従って、様々な画像を表示画面に表示させる。
【0095】
通信部680は、制御部610による制御に従って、ネットワーク900を介して、咀嚼計90との間で無線通信(例えば、BLE通信など)可能に構成されている。
【0096】
電源部690は、この例では充電池を含み、このスマートフォン600の各部へ電力を供給する。
【0097】
ユーザ(被験者以外の者であってもよい。)は、スマートフォン600に予め、アプリケーションソフトウェア(これを「咀嚼数表示プログラム」と呼ぶ。)をインストールしておくものとする。この咀嚼数表示プログラムは、咀嚼計90からの被験者の咀嚼動作に関する情報(特に、咀嚼回数を表すデータ)を処理して、被験者の咀嚼動作に関する画像を作成するためのものである。
【0098】
具体的には、ユーザが咀嚼数表示プログラムを起動させると、スマートフォン600の通信部680が、ネットワーク900を介して、咀嚼計90からの被験者の咀嚼動作に関する情報を受信する。続いて、制御部610が表示処理部として働いて、その被験者の咀嚼動作に関する情報を処理して、例えば
図15,
図16に示すように、被験者の咀嚼動作に関する画像を作成する。表示器640は、制御部610によって作成された被験者の咀嚼動作に関する画像を表示する。
【0099】
(表示例)
図15は、スマートフォン600の表示器640に表示された咀嚼動作に関する画像の一例として、1日における咀嚼回数の時間推移を表す日データモードの画面を示している。この日データモードの画面は、上部から順に、今日の日付け(この例では、2016/07/10)を表す日付け表示領域641と、1日における咀嚼回数の時間推移を表す棒グラフ領域642と、今日の現在時刻までに累計された咀嚼回数を表す咀嚼数表示領域643とを含んでいる。棒グラフ領域642には、横軸を時間、縦軸を咀嚼回数として、1日における1時間毎の咀嚼回数が棒グラフで表示されている。咀嚼数表示領域643には、今日の現在時刻までに累計された咀嚼回数が数値で表示されている。この日データモードの画面を見たユーザは、被験者の1日における咀嚼回数の時間推移を直感的に認識できる。
【0100】
なお、咀嚼数表示領域643の下方には、1日における食事の開始時刻、終了時刻を記録するためのイベントボタン644が表示されている。また、この画面の最下部には、次に述べる月データモードの画面を表示させるための月データモードボタン645と、この日データモードの画面を表示させるための日データモードボタン646と、後述の設定モードの画面を表示させるための設定ボタン647と、センサ調整モードの画面を表示させるためのセンサ調整ボタン648と、ロガーモードの画面を表示させるためのロガーボタン649とが表示されている(
図16〜
図19において同様。)。
【0101】
図16は、スマートフォン600の表示器640に表示された咀嚼動作に関する画像の別の例として、1月における日毎の咀嚼回数の推移を表す月データモードの画面を示している。この月データモードの画面は、上部から順に、今日が属する月(この例では、2016/07)を表す月表示領域650と、1月における日毎の咀嚼回数を数値で表すカレンダ領域651と、1月における日毎の咀嚼回数を折れ線グラフで表示する折れ線グラフ表示領域652とが表示されている。カレンダ領域651では、最上欄に日曜日から土曜日までを表す頭文字「S」、「M」、「T」、「W」、「T」、「F」、「S」が表示されている。この例では、2016年7月の1日〜10日までの各日を表す数字と、各日に対応する咀嚼回数(数値)とが、上下一対の枡目に並べて表示されている。なお、1日における咀嚼回数の目標値に達成した日の咀嚼回数(数値)を赤色で表示する一方、1日における咀嚼回数の目標値に達成しなかった日の咀嚼回数(数値)を黒色で表示するなど、1日における咀嚼回数の目標値に達成したか否かに応じて表示色を異ならせるのが望ましい。折れ線グラフ表示領域652では、この例では2016年7月の1日〜10日までの日毎の咀嚼回数が折れ線グラフで表示されるとともに、1日における咀嚼回数の目標値(この例では、3000回)を示すライン653が表示されている。この日データモードの画面を見たユーザは、被験者の1月における日毎の咀嚼回数の推移と、咀嚼回数が目標値に達した日および達しなかった日とを直感的に認識できる。
【0102】
図17は、スマートフォン600の表示器640に表示された咀嚼数表示プログラムの設定モードの画面を例示している。この設定モードの画面では、1日における咀嚼回数の目標値を設定するための目標咀嚼数設定欄661と、咀嚼計90の表示器140Bを咀嚼動作1回毎に一時的に点灯させるか否かを設定するためのLED設定欄662と、咀嚼計90の記憶部115のデータを消去するためのデータクリア欄663とが表示されている。目標咀嚼数設定欄661には、この例では、1日における咀嚼回数の目標値が3000回として設定されている。この目標値は可変して設定可能になっている。また、LED設定欄662には、この例では、咀嚼計90の表示器140Bを咀嚼動作1回毎に一時的に点灯させること(ON)が設定されている。データクリア欄663によれば、ユーザは、遠隔操作によって咀嚼計90の記憶部115のデータを消去して、咀嚼計90を初期化できる。
【0103】
図18は、スマートフォン600の表示器640に表示された咀嚼数表示プログラムのセンサ調整モードの画面を例示している。このセンサ調整モードの画面では、「センサの位置を動かしてください」というメッセージ表示領域671と、眼鏡フレーム201の左テンプル204に沿って感圧センサモジュール2をスライドさせるべき向きを矢印M1,M2で示すスライド指示領域672とが表示されている。スライド指示領域672には、人の側頭部に眼鏡フレーム201の左テンプル204とともに感圧センサモジュール2が装着された態様を表す画像が模式的に表示されている。スマートフォン600の制御部610は、咀嚼計90から感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2の出力を表すデータを受けて、いずれのセンサ部分50−1,50−2の出力が大きいかを判断し、その判断結果に応じて、スライド指示領域672において感圧センサモジュール2をスライドさせるべき向きを矢印M1またはM2で表す。例えば、
図12中に例示したように感圧センサ50の一方のセンサ部分50−1の出力C1が他方のセンサ部分50−2の出力C2よりも大きいときは、被験者が感圧センサ50の他方のセンサ部分50−2を耳介に近づけることを促すように、矢印M2を表示させる。逆に、感圧センサ50の他方のセンサ部分50−2の出力C2が一方のセンサ部分50−1の出力C1よりも大きいときは、被験者が感圧センサ50の一方のセンサ部分50−1を耳介に近づけることを促すように、矢印M1を表示させる。このセンサ調整モードの画面を見たユーザは、被験者の側頭部に対する感圧センサモジュール2の装着位置を容易に調整することができる。
【0104】
図19は、スマートフォン600の表示器640に表示された咀嚼数表示プログラムのロガーモードの画面を例示している。このロガーモードの画面では、感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2の出力C1,C2の時間推移を表示するデータ表示領域681と、データ表示領域681における2つの出力C1,C2を識別するためのデータ識別表示682,683と、開始ボタン684と、停止ボタン685とが表示されている。ユーザが開始ボタン684を押すと、データ表示領域681に、感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2の出力C1,C2の時間推移がグラフで表示される。この例では、センサ部分50−1の出力C1がデータ識別表示682で示された実線で表され、また、センサ部分50−2の出力C2がデータ識別表示683で示された破線で表されている。なお、データ表示領域681の横軸は時間を任意単位で表し、縦軸は感圧センサ50の2つのセンサ部分50−1,50−2に一定の電流を通電したときの降下電圧を任意単位で表している。ユーザが停止ボタン685を押すか、または、開始から一定期間(例えば30秒間)が経過すると、データ表示領域681の表示は停止される。このロガーモードの画面を見たユーザは、咀嚼計90が正常に動作しているか否かを直感的に認識できる。また、センサ調整モードの画面における矢印M1またはM2によるスライド指示が正しいか否かも、直感的に確認できる。
【0105】
このように、このシステム700によれば、ユーザは、被験者の咀嚼動作に関する情報を視覚を通して直感的に認識できる。
【0106】
なお、咀嚼計90の通信部180とスマートフォン600の通信部680との間の通信は、無線または有線のいずれで行われてもよい。
【0107】
上述の実施形態では、咀嚼計90が眼鏡フレーム201の左テンプル204に取り付けられるものとしたが、右テンプル203に取り付けられてもよい。さらに、咀嚼計90は、眼鏡フレーム201に限られず、様々な棒状物に取り付けられて、被験者の側頭部に装着されてもよい。例えば、
図20は、咀嚼計90がカチューシャ300の端部近傍部分305に取り付けられた状態を示している。なお、カチューシャ300は、ヘアバンドの一種であり、略円弧状に湾曲した湾曲部分302と、湾曲部分302に連なる一対の略ストレートの端部近傍部分305,306とからなっている。このように咀嚼計90がカチューシャ300の端部近傍部分305に取り付けられて被験者の側頭部98に装着された場合であっても、簡単な信号処理で精度良く、咀嚼回数を計測できる。
【0108】
また、上の実施形態では、咀嚼計90の感圧センサモジュール2を構成するシート状の感圧センサ50は、板部3aの長手方向Xに関して互いに離間して2つのセンサ部分50−1,50−2に区分されているものとした。しかしながら、これに限られるものではなく、シート状の感圧センサ50は、板部3aの長手方向Xに関して3つ以上のセンサ部分50−1,50−2,…に区分されていてもよい。その場合、シート状の感圧センサ50の3つ以上のセンサ部分50−1,50−2,…にそれぞれ対応して、センサホルダ3の突起部3p1,3p2,…が同じ数だけ設けられるのが望ましい。これにより、さらに精度良く咀嚼回数を計測できる。また、仮に被験者の側頭部98(
図2参照)に対するシート状の感圧センサ50の装着位置が長手方向Xに関して多少ばらついたとしても、シート状の感圧センサ50は、3つ以上のセンサ部分50−1,50−2,…のいずれかによって、側頭筋99の動きに応じた圧力の変化を電気抵抗の変化として確実に出力できる。
【0109】
なお、シート状の感圧センサ50は、板部3aの長手方向Xに関して区分されておらず、1つの渦巻き層(1つのセンサ部分)のみを含んでいてもよい。その場合、センサホルダ3の突起部も1つで足りる。
【0110】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。