【文献】
服部憲治郎 監修,寺尾啓二 著,第1節 6.ワサビ香気成分(アリルイソチオシアネート、AITC)の安定化,食品開発者のためのシクロデキストリン入門,2004年 9月,pp.118-119
【文献】
Ohta Y et al.,Kinetic and Thermodynamic Analyses of the Cyclodextrin-Allyl Isothiocyanate Inclusion Complex in an,Biosci.Biotechnol.Biochem.,1994年,63(7),pp.190-193
【文献】
Ohta Y et al.,Retarding Effect of Cyclodextrins on the Decomposition of Organic Isothiocyanates in an Aqueous Solu,Biosci.Biotechnol.Biochem,2004年,68(3),pp.671-675
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0001】
本発明は一般的に安定化スルフォラファンおよびその類似体に関する。本発明はまた一般的にスルフォラファンおよびその類似体の安定化方法に関する。
【0002】
フェネチルイソチオシアナート(PEITC)およびスルフォラファンのようなイソチオシアナートは発癌および腫瘍形成を阻害し、従って癌の発生および増殖に対する化学的予防剤として有用であることが判明している。これらの化合物は様々なレベルに作用する。最も注目されるのは、これらの化合物がシトクロームP450酵素の阻害によって発癌を阻害すると判明したことである。シトクロームP450酵素は、ベンゾ[ザ]ピレンおよび他の多環式芳香族炭化水素(PAH)のような化合物を、突然変異を生起して癌発生を誘発するより極性のエポキシ−ジオールに酸化する。フェネチルイソチオシアナート(PEITC)はある種の癌細胞系においてアポトーシスを誘発し、またいくつかの場合には現用のいくつかの化学治療薬に耐性の細胞においてもアポトーシスを誘発できることが判明した。
【0003】
上記のようなスルフォラファンは、キャベツ、ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、芽キャベツ、カリフラワー、カリフラワースプラウト、パクチョイ、ケール、コラード、アルジュラ、コールラビー、からし菜、かぶ、ラディシュおよびクレソンのようなアブラナ科野菜に見出される抗癌性および抗菌性化合物として知られている。これらの植物中にはグルコラファニンとして結合した形態グルコシノラートが存在する。スルフォラファンはしばしば、酵素反応による植物細胞損傷の際にグルコラファニンから形成される。
【0004】
スルフォラファンを製造するための様々な合成方法が当業界で公知である。スルフォラファンは早くも1948年にSchimdおよびKarrerによって合成された(Schimd H.and Karrer,P.;Helvetica Chimica Acta.1948;31;6:1497−1505)。Schimd合成によればラセミ混合物が得られる。1948年以来に開発されてきた他のスルフォラファン合成方法でもスルフォラファンはラセミ混合物になり易い。さらに、スルフォラファンは不安定な油として知られている。スルフォラファンは不安定性であるためその製造および流通させる事が難しい。
【0005】
シクロデキストリンは、1−4結合した5個以上のα−D−グルコピラノシド単位から成る環状オリゴ糖のファミリーである。明確に特性決定された最も大きいシクロデキストリンは32個の1,4−無水グルコピラノシド単位を含有しているが、他方では(十分に特性決定されていない混合物として)150員環の(およびもっと大きい)環状オリゴ糖も知られている。
【0006】
シクロデキストリンは、それらの構造から生まれる独特の性質を有するので疎水性分子と共にホスト−ゲスト複合体を形成できる。シクロデキストリンは、シクロデキトリンに水溶性を与える十分に親水性の外側部を有している。シクロデキストリンの内部が親水性であることは知られているが、シクロデキストリンの外側部に比較すると疎水性であると考えることができる。
【0007】
天然のシクロデキストリン、特にベータ−シクロデキストリンは水中溶解度が小さく、それらが親水性薬物と複合体を形成するときはしばしば固体薬物−シクロデキストリン複合体の沈殿が生じる。たとえば、ベータ−シクロデキストリンの水中溶解度は室温で約18.5mg/mLにすぎない。この低い水中溶解度がシクロデキストリン結晶格子中の強力な分子内水素結合形成に少なくとも部分的に関与する。水素結合形成性ヒドロキシル基のいずれかをメトキシ基のような疎水性部分で置換するだけでベータ−シクロデキストリンの水中溶解度は増加するであろう。さらにこれらの操作では多数の異性体生成物が高い頻度で生じるので、化学的修飾によって結晶質シクロデキストリンを非晶質混合物に変換しそれらの水中溶解度を増加することができる。
【0008】
現在の医薬的に重要なシクロデキストリン誘導体は、アルファ−、ベータ−およびガンマ−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体、スルホブチルエーテルベータ−シクロデキストリンのようなスルホアルキルエーテルシクロデキストリン、ランダムにメチル化されたベータ−シクロデキストリンのようなアルキル化シクロデキストリン、ならびに、グルコシル−およびマルトシル−ベータ−シクロデキストリンのような様々な分枝状シクロデキストリンを含む(T.Loftsson and M.E.Brewster,“Cyclodextrins as pharmaceutical excipients”,Pharm.Technol.Eur.,9(5),26−34(1997);T.Loftsson and M.E.Brewster,“Pharmaceutical applications of cyclodextrins.1.Drug solubilization and stabilization”,J.Pharm.Sci.85(10),1017−1025(1996);R.A.Rajewski and V.J.Stella,“Pharmaceutical applications of cyclodextrins.2.In vivo drug delivery”,J.Pharm.Sci.85(11),1142−1169(1996);T.Irie and K.Uekama,“Pharmaceutical applications of cyclodextrins.3.Toxicological issues and safety evaluation”,J.Pharm.Sci.,86(2),147−162(1997);V.J.Stella and R.A.Rajewski,“Cyclodextrins:their future in drug formulation and delivery”,Pharm.Res.,14(5),556−567(1997);T.Loftsson,“Increasing the cyclodextrin complexation of drugs and drug bioavailability through addition of water−soluble polymers”,Pharmazie,53,733−740(1998))。
【0009】
水溶液中でシクロデキストリンは、中心の中空部分に局在する水分子が完全薬物分子によって置換されるかまたはもっと高い頻度では薬物構造の何らかの親油性部分によって置換されるプロセスを介して多くの薬物と共に複合体を形成する。シクロデキストリンの中空部分に包接された薬物分子は、複合体の希釈もしくは包接薬物が何らかの他の適当な分子(たとえば胃腸管内の食物脂質または胆汁塩)で置換されることによって解離されるか、または、複合体が親油性生体膜(たとえば胃腸管の粘膜)の極めて近傍に局在している場合には薬物が最も高い親和性を有しているマトリックスに転移するであろう。重要なことは、薬物−シクロデキストリン複合体の形成中に共有結合が形成または破壊されないので、複合体が遊離薬物およびシクロデキストリン分子と動的平衡にあることである(R.A.Rajewski and V.J.Stella,“Pharmaceutical applications of cyclodextrins.2.In vivo drug delivery”,J.Pharm.Sci.85(11),1142−1169(1996)。
【0010】
薬物−シクロデキストリン複合体の製造には様々な方法が応用されてきた(T.Loftsson and M.E.Brewster,“Pharmaceutical applications of cyclodextrins.1.Drug solubilization and stabilization”,J.Pharm.Sci.85(10),1017−1025(1996);T.Loftsson and M.E.Brewster,“Cyclodextrins as pharmaceutical excipients”,Pharm.Technol.Eur.,9(5),26−34(1997))。溶液中の複合体は通常は過剰量の薬物をシクロデキストリン水溶液に添加することによって製造される。形成された懸濁液を平衡させ(所望の温度で1週間以内の期間)、次いで濾過または遠心して透明な薬物−シクロデキストリン複合体溶液を形成する。複合体形成の律速段階はしばしば薬物分子の相−相転移なので、超音波処理によって過飽和溶液を形成し次いで沈殿させることによってこのプロセスを短縮することがときどきは可能である。
【0011】
固体複合体を製造するためには、薬物−シクロデキストリン水溶液から蒸発または昇華たとえば噴霧−乾燥または凍結−乾燥によって水を除去するとよい。固体薬物−シクロデキストリン複合体の製造には、混練法、共沈、中和および粉砕技術を含む他の方法も使用できる。混練法では、薬物をベータ−シクロデキストリンのような水に微溶性のシクロデキストリンの水性スラリーに加える。混合物をしばしば高温で十分に混合してペーストにし、次いでペーストを乾燥する。この技術は多くの場合、100℃を上回る温度および真空下で作動できる市販のミキサーを用いて単一段階で行うように修正できる。混練法は水に微溶性の薬物の固体シクロデキストリン複合体を製造するための費用効果的手段である。有機溶媒の添加によるシクロデキストリン複合体の共沈も可能である。残念なことに、沈殿剤として使用される有機溶媒がしばしば複合体形成を妨害するので、この方法は混練法ほど好ましくはない。いくつかの特定条件下ではある種の有機溶媒、たとえば10%(v/v)の酢酸水溶液が複合体形成を促進することが知見された。イオン化可能薬物の固体複合体はときには薬物を酸性(塩基性薬物の場合)または塩基性(酸性薬物の場合)シクロデキストリン水溶液に溶解する中和法によって製造できる。次に適当なpH調整(すなわち、非イオン化薬物の形成)によって薬物の溶解度を低下させ、溶液から複合体を回収する。最後に、薬物とシクロデキストリンとの物理的混合物を粉砕し次いで混合物を密閉容器中で60から90℃に加熱することによって固体薬物−シクロデキストリン複合体を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施態様に詳細に言及する。本発明の1つ以上の実施例を以下に提示する。実施例のおのおのは本発明を説明するために提供されたものであり本発明を限定するものではない。実際、発明の範囲または要旨を逸脱することなく本発明の様々な修正および変更が可能であることは当業者に明らかであろう。たとえば、1つの実施態様の一部として例示または記述した特徴を別の実施態様に使用してさらに別の実施態様を生み出すことができる。従って、このような修正および変更は特許請求の範囲およびその等価の概念の範囲内に存在し本発明に包含されることとする。本発明の他の目的、特徴および様相は以下の詳細な記載に開示されこれらの記載から明らかである。平均的な当業者は、この論文が代表的実施態様だけを記載していること、本発明のもっと広い様相を制限するものではないことを理解されたい。
【0020】
図1は、スルフォラファンの改良形成方法を表す。1つの実施態様において、カリウムフタルイミドをテトラメチレンジブロミドと合せてブロモブチルフタルイミド(中間体A)を形成する。次に、ブロモブチルフタルイミドをメタノールおよびナトリウムの存在下でメチルメルカプタン(MeSH)と合せて中間体Bを形成する。乾燥後、中間体Bを過酸化水素およびメチルtert−ブルエーテル(MTBE)と合せて中間体Cのラセミ混合物を形成する。
【0021】
鏡像異性的に富化された中間体C(
図2)を形成し最終的に鏡像異性的に富化されたスルフォラファンを形成するための非対称酸化(修正Sharpless)反応は、チタン(IV)イソプロポキシド、酒石酸ジエチルおよびt−ブチルヒドロペルオキシドの1:1:2混合物のようなSharpless試薬の添加を含む。別の実施態様においてはSharpless試薬が−20℃のジクロロメタンのような溶媒中のチタン(IV)イソプロポキシド、酒石酸ジエチル、水およびt−ブチルヒドロペルオキシドの1:2:1:1混合物であろう。平均的な当業者は、鏡像異性的に富化されたスルフォラファンを製造するためには鏡像異性的に純粋な形態の酒石酸ジエチルを使用しなければならないことを理解されるであろう。従って、(+)または(−)異性体はスルフォラファンの所望のキラリティーに従属して選択されるべきである。酸化は典型的にはジクロロメタン中、低温(すなわち、約0℃未満)で行われる。
【0022】
次に、中間体C(所望のスルフォラファン次第でラセミ混合物または鏡像異性的に純粋な形態)をエタノール中のメチルアミンと合せて、中間体Dを形成する。最後に、中間体Dをクロロホルム、水酸化ナトリウムおよびチオホスゲンと合せてスルフォラファンを形成する。
【0023】
別の目的において、本発明はスルフォラファンまたはその類似体とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物である。1つの実施態様において、適当なシクロデキストリンは、W6(アルフア)シクロデキストリン(6糖環分子)、W7(ベータ)シクロデキストリン(7糖環分子)、W8(ガンマ)シクロデキストリン(8糖環分子)およびそれらの混合物の1つ以上から選択され得る。当業界で公知の他のシクロデキストリンも本組成物に有用であると考えられ、本発明は上に挙げた特定のシクロデキストリンに限定されない。
【0024】
1つの実施態様においてスルフォラファンは鏡像異性的に富化されたスルフォラファンであろう。別の実施態様においてはスルフォラファンがラセミ混合物であろう。また別の実施態様においては複合体中にスルフォラファンの複数の鏡像異性体がなんらかの割合で存在するであろう。
【0025】
スルフォラファンの類似体を利用する実施態様において、適当な類似体は非限定的に、6−イソチオシアナト−2−ヘキサノン、エキソ−2−アセチル−6−イソチオシアナトノルボルナン、エキソ−2−イソチオシアナト−6−メチルスルホニルノルボルナン、6−イソチオシアナト−2−ヘキサノール、1−イソチオシアナト−4−ジメチルホスホニルブタン、エキソ−2−(1’−ヒドロキシエチル)−5−イソチオシアナトノルボルナン、エキソ−2−アセチル−5−イソチオシアナトノルボルナン、1−イソチオシアナト−5−メチルスルホニルペンタンおよびシス−またはトランス−3−(メチルスルホニル)シクロヘキシルメチルイソチオシアナートおよびそれらの混合物を含む。
【0026】
また別の実施態様において、本発明の組成物は、シクロデキストリンとスルフォラファンおよびスルフォラファン類似体との複合体を含み得る。
【0027】
別の目的において、本発明はスルフォラファンおよびその類似体の安定化方法である。方法は、スルフォラファンまたはその類似体を少なくとも1種のシクロデキストリンに接触させて、スルフォラファンまたはその類似体とシクロデキストリンとの複合体を形成させる段階を含む。
【0028】
スルフォラファンまたはその類似体を少なくとも1種のシクロデキストリンに接触させる段階は、シクロデキストリンを溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁させて第一溶液または懸濁液を形成する段階を含む。同様に、スルフォラファンまたはその類似体を同じまたは異なる溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁させて第二溶液または懸濁液を形成し、次いで、第一溶液または懸濁液に合せて、本発明によるスルフォラファンまたはその類似体と少なくとも1つのシクロデキストリンとの複合体を形成する。次に、複合体を溶液から分離し、場合によっては精製して、安定化されたスルフォラファンの複合体を得る。
【0029】
あるいは、スルフォラファンまたはその類似体を少なくとも1種のシクロデキストリンに接触させる段階が、少なくとも1種のシクロデキストリンを溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁させて溶液または懸濁液を形成し、次いでスルフォラファンまたはその類似体を該溶液または懸濁液に添加して本発明の複合体とする段階を含んでもよい。
【0030】
さらに、スルフォラファンまたはその類似体を少なくとも1種のシクロデキストリンに接触させる段階が他の方法で行われてもよい。たとえば、スルフォラファンまたはその類似体とシクロデキストリンとの双方を完全に溶解させる溶媒を利用し得る。別の実施態様においては、シクロデキストリンを溶媒または溶媒混合物に溶解または懸濁させ、次いで回転気化器(rotovap)に配置する。次に、この溶液または懸濁液にスルフォラファンまたはその類似体を非希釈の(neat)形態で直接噴霧するかまたは溶媒もしくは溶媒混合物中のスルフォラファンまたはその類似体の溶液もしくは懸濁液として直接噴霧する。
【0031】
また、二塩基性溶媒系を使用して接触段階を行ってもよい。たとえば、スルフォラファンまたはその類似体を別の不混和性溶媒と合せる(懸濁液または溶液にする)。次に複合体が形成されるまで不混和性溶媒を十分に混合する。次にこの文中に記載した単離技術の1つによって複合体を単離する。
【0032】
溶媒の非存在下で接触段階を行うのが望ましい場合もあろう。たとえば、噴霧乾燥法においては、霧状にしたスルフォラファンまたはその類似体を非希釈のシクロデキストリンに吹付けるかまたは噴霧することによって本発明の複合体を形成する。
【0033】
1つの実施態様において、シクロデキストリンの溶解または懸濁段階は、W6(アルファ)シクロデキストリン、W7(ベータ)シクロデキストリン、W8(ガンマ)シクロデキストリンおよびそれらの組合せの1つ以上から選択されたシクロデキストリンを溶解または懸濁させる段階を含む。シクロデキストリンの溶解または懸濁段階はまた、当業界で公知の1種以上の他のシクロデキストリンの溶解または懸濁を含む。
【0034】
さらに、シクロデキストリンの溶解または懸濁段階は、不完全無極性から極性までの溶媒を含むグループから選択された溶媒にシクロデキストリンを溶解または懸濁させる段階を含む。本発明に従って有用であると考えられる適当な溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、高分子量アルコール、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ギ酸、酢酸、ホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、高分子量ケトン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素、ヘキサン、ヘキサン異性体、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘプタン異性体、C
8−C
16溶媒、鉱油、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチレンクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエンおよびそれらの混合物の1種以上を含む。
【0035】
本発明に従って懸濁液を形成するためには約5.0よりも大きい誘電定数を有している溶媒が有用であると考えられる。本発明に従って溶液を形成するためには約20.0よりも大きい誘電定数を有している溶媒が有用であると考えられる。理論によって束縛されないが、最も有用な溶媒は、酢酸エチルおよびジクロロメタンのような不完全無極性の溶媒であると考えられる。
【0036】
本発明の複合体を形成するために有用であると考えられるスルフォラファンおよびスルフォラファン類似体は、6−イソチオシアナト−2−ヘキサノン、エキソ−2−アセチル−6−イソチオシアナトノルボルナン、エキソ−2−イソチオシアナト−6−メチルスルホニルノルボルナン、6−イソチオシアナト−2−ヘキサノール、1−イソチオシアナト−4−ジメチルホスホニルブタン、エキソ−2−(1’−ヒドロキシエチル)−5−イソチオシアナトノルボルナン(isothiocyanatonorborane)、エキソ−2−アセチル−5−イソチオシアナトノルボルナン、1−イソチオシアナト−5−メチルスルホニルペンタンおよびシス−またはトランス−3−(メチルスルホニル)シクロヘキシルメチルイソチオシアナートおよびそれらの混合物の1種以上を含む。
【0037】
溶液から複合体を取出す任意追加段階は、分離技術として有用であることが当業界で知られた方法によって行うとよい。本発明に有用であると考えられる分離技術は、沈殿、濾過、真空化、凍結乾燥(フリーズドライ)、噴霧乾燥および蒸留を含む。1つの実施態様においては、エタノールのようなアルコールを溶液に添加することによって複合体を溶液から沈殿させる。
【0038】
別の実施態様においては、転動乾燥機内でシクロデキストリンにスルフォラファンを噴霧する。この実施態様において、噴霧されるスルフォラファンは純粋形態でも溶液形態でもよい。同様に、シクロデキストリンも純粋形態でも溶液形態でもよい。
【0039】
溶解段階の各々は選択された溶媒に適した温度で行われる。たとえば、ある種の溶媒にシクロデキストリンおよびスルフォラファンが溶解するためには高温が必要であろうが、他の溶媒にシクロデキストリンおよびスルフォラファンが溶解するためには低温が必要であろう。いくつかの実施態様においては、シクロデキストリンおよびスルフォラファンが室温で溶解できるであろう。平均的な当業者はシクロデキストリンおよびスルフォラファンと選択された溶媒との関係を認識し、認識した関係に基づいて温度を決定できるであろう。
【0040】
本発明に従って形成された安定化スルフォラファンは室温または室温よりも高い温度もしくは低い温度で保存できる。概して室温よりも低い温度で保存された安定化スルフォラファンが最大の安定性を示すが(
図5に示す)、安定化スルフォラファンは非安定化スルフォラファンに比べてすべての温度で改善された安定性を示す。
【0041】
スルフォラファンはたいていのイソチオシアナートと同様に当業界では親水性分子として知られている。従って、スルフォラファンとシクロデキストリンとの複合体はシクロデキストリン単独よりも水中溶解度が大きいと平均的な当業者は予想されるであろう。本発明の発明者らは、予想に反してスルフォラファンとシクロデキストリンとの複合体が実際にはシクロデキストリン単独よりも水中溶解度が小さいことを発見した。さらに、複合体の水中溶解度が低いので、複合体未形成シクロデキストリンを溶液中に残存させながら複合体を溶液から分離することが可能である。
【0042】
理論によって束縛されないが、スルフォラファンは親水性分子ではあるがシクロデキストリンに比較して実際は疎水性であると考えられる。別の言い方をすると、スルフォラファンおよびその類似体は他のイソチオシアナートほど親水性ではないらしい。従って、シクロデキストリンの相対的に疎水性の中心に複合体化されると、複合体の総合的な水中溶解度は低下し、分離可能になる。
【0043】
このような製造方法のいずれかに関する修正は当業者に公知であるかまたは容易に明らかであろう。本発明は特定の製造方法のいずれかに限定されるものではない。
【0044】
別の目的において、本発明は、治療を要する対象に抗癌治療および/または抗菌治療を提供する方法である。方法は、安定化スルフォラファンを対象に投与する段階を含む。
【0045】
容易な参考例として本発明をヒト対象への投与に関して記載する。しかしながら、この記載がヒトへの投与に限定されないこと、明白な否定の記述がないならば哺乳類のような他の動物への投与も含むことは理解されよう。たとえば、ヒトの治療に有用である以外にも、これらの複合物(combination)は、ウマ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ヒツジ、ブタなどを含む哺乳類の治療に有用である。
【0046】
治療方法の第一成分は、上述の方法に従って安定化されたスルフォラファンまたはその類似体である。本発明に有用な成分は、製剤が医薬用途に適した品質および安定性を有している限りいかなる純度およびグレードでもよい。成分は純粋形態で提供されることもでき、または、それらの生理的活性もしくは安全性に悪影響を与えない不純物もしくは普通の会合化合物を随伴してもよい。
【0047】
方法はさらに、医薬的に許容される他の成分の投与を含む。この文中の“医薬的に許容される”という用語は、修飾された名詞が医薬製品中での使用に適していることを意味する形容詞として使用されている。
【0048】
本発明の安定化スルフォラファンが医薬的に許容される担体と共に供給されるとき、医薬組成物が形成される。
【0049】
本発明の医薬組成物は、この文中に記載した障害の予防または治療に適した組成物を目的とする。医薬組成物は、安定化スルフォラファンまたはその類似体と少なくとも1種の医薬的に許容される担体または医薬的に許容される賦形剤とを含む。担体および賦形剤という用語はこの文中で互換的に使用されている。
【0050】
医薬的に許容される担体および賦形剤は、(1種以上の)医薬化合物の副作用を最小にすることができまた治療効果がなくなるほど(1種以上の)化合物の薬効を削減または阻害しないように選択される。
【0051】
医薬的に許容される担体はまた、(1種以上の)化合物の所望の投与経路に基づいて選択できる。所望投与経路は、経口、経小腸、非経口、注射、口腔内および外用の1つ以上でよい。たとえば1つの実施態様において、担体は経口投与に適している。いくつかの実施態様において、組成物は、胃腸管または腸管への(1種以上の)化合物の送達を促進するための適当な担体または追加補助剤を含む。
【0052】
担体は、組成物の他の成分に適合性でありレシピエントに有害でないという意味で許容される担体でなければならない。担体は固体または液体またはその双方でよく、(1種以上の)有効化合物を0.01から95重量%の量で含有できる単位薬用量組成物たとえば錠剤を形成するように、(1種以上の)化合物に配合されるのが好ましい。
【0053】
本発明の医薬組成物は公知の製薬技術のいずれか、たとえば、成分の混合によって調製できる。
【0054】
本発明の治療用化合物が個別形態であるかまたは合一形態であるか、経小腸的に投与されるかまたは非経口的に投与されるかにかかわりなく、治療用化合物のおのおのは医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはこの文中に記載した他の配合成分のいずかれと共に適当な医薬配合物に含有される。
【0055】
医薬的に許容される担体は非限定的に、生理食塩水、リンゲル液、リン酸塩溶液またはバッファ、緩衝生理食塩水および当業界で公知の他の担体を含む。医薬組成物はまた、安定剤、抗酸化剤、着色剤および希釈剤を含み得る。医薬的に許容される担体および添加剤は、医薬化合物の副作用を最小にできかつ治療効果がなくなるほど化合物の薬効を削減または阻害しないように選択される。“薬理学的に有効な量”という用語は、組織、系、動物またはヒトの体内で研究者または臨床医が求める生物学的または医学的応答を誘発する薬物または医薬剤の量を意味する。この量が治療有効量になり得る。
【0056】
本発明の医薬組成物は経小腸的および/または非経口的に投与し得る。非経口投与は、皮下、筋肉内、皮内、静脈内および当業界で公知の他の投与方法を含む。経小腸投与は、溶液、錠剤、持続放出カプセル、腸溶性コーテッドカプセル、シロップ、飲料、食物および他の栄養サプリメントを含む。投与するときの本発明の医薬組成物の温度は体温または体温に近い温度でよい。
【0057】
より特定的には本発明の医薬組成物またはそれらが含まれている組成物は、たとえば錠剤、コーテッド錠剤、糖衣錠、トローチ剤、甘味入り錠剤、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、硬質もしくは軟質カプセルまたはシロップもしくはエリキシル剤として経口投与できる。経口使用予定の組成物は当業界で公知の医薬組成物製造方法のいずれかに従って調製でき、このような組成物は、医薬的にエレガントで服用し易い製剤を提供するために甘味料、着香料、着色料および保存料から成るグループから選択された1種以上の補助剤を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適した医薬的に許容される無毒性賦形剤に混合された有効成分を含有する。これらの賦形剤はたとえば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;トウモロコシデンプンまたはアルギン酸のような造粒および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアラビアガムのような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような滑沢剤であろう。錠剤は剤皮なしでもよく、または、胃腸管での崩壊および吸着を遅らせて長期間の持続作用を与えるために公知技術によって剤皮をかけてもよい。たとえば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような徐放性材料を使用し得る。
【0058】
経口使用するための配合物はまた、有効成分を炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンのような不活性固体希釈剤に混合した硬質ゼラチンカプセルとして提供されてもよく、あるいは、有効成分がそのままの形態で存在するか水またはピーナツ油、液体パラフィン、様々なハーブエキスのいずれか、乳もしくはオリーブ油のような油媒体に混合した軟質ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0059】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤に混合された有効物質を含有するように製造できる。このような賦形剤は、懸濁化剤たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガムである。分散または湿潤剤は天然産生ホスファチドたとえばレシチン、または、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物たとえばポリオキシエチレンステアレート、または、エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合物たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、脂肪酸とヘキシトールとから誘導された部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物たとえばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、または、脂肪酸と無水ヘキシトールとから誘導された部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであろう。
【0060】
水性懸濁液はまた、エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートのような1種以上の保存料、1種以上の着色料、1種以上の着香料、または、ショ糖もしくはサッカリンのような1種以上の甘味料を含有し得る。
【0061】
油性懸濁液は、オメガ−3脂肪酸、植物油たとえばピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココヤシ油、または、液体パラフィンのような鉱油に有効成分を懸濁させることによって配合し得る。油性懸濁液は増粘剤たとえば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有し得る。
【0062】
上記に提示したような甘味料および着香料は服用し易い経口製剤を提供するために添加される。これらの組成物はアスコルビン酸のような抗酸化剤の添加によって保存可能になる。
【0063】
水を加えて水性懸濁液を調製するための適当な分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁化剤および1種以上の保存料に混合された有効成分を提供する。適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤の例は上記で既に言及した。追加の賦形剤たとえば甘味料、着香料および着色料も存在し得る。
【0064】
本発明の治療用複合体(combination therapy)を含有するシロップおよびエリキシル剤は、甘味料たとえばグリセロール、ソルビトールまたはショ糖と共に配合され得る。このような配合物はまた、粘滑薬、保存料、着香料、着色料を含有し得る。
【0065】
主題方法および該方法において使用される組成物はまた、水性もしくは油性の無菌注射用懸濁液の形態で皮下、静脈内、筋肉内もしくは胸骨内に注入するかまたは外用によって非経口的に投与できる。このような懸濁液は、上記に言及したような適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤または他の適格な補助剤を使用する公知の技術に従って配合し得る。滅菌注射用製剤はまた、非経口的に許容される無毒性希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液たとえば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用し得る適格なビヒクルおよび溶媒としては水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌不揮発油も溶媒または懸濁媒体として慣用である。合成モノ−またはジグリセリドのような無刺激性の不揮発油のいずれかをこの目的に使用し得る。さらに、n−3ポリ不飽和脂肪酸も注射剤の製造に使用し得る。
【0066】
多くの場合に好ましい投与経路は経小腸(たとえば経口)である。経口投与は溶液、錠剤、持続放出カプセル、腸溶性コーテッドカプセルおよびシロップを含む。医薬組成物は医薬的に許容される慣用の無毒性担体、アジュバント、ビヒクルを所望に応じて含有する薬用量単位配合物として投与され得る。
【0067】
経口使用予定の組成物は医薬組成物の製造業界で公知のいずれかの方法に従って調製でき、このような組成物は、医薬的にエレガントで服用し易い製剤を提供するために甘味料、着香料、着色料および保存料から成るグループから選択された1種以上の補助剤を含有し得る。
【0068】
医薬的に許容される担体はまた、(1種以上の)化合物の所望の投与経路に基づいて選択できる。たとえば、好ましい実施態様において担体は経口投与に適している。いくつかの実施態様において組成物は胃腸管または腸管への(1種以上の)化合物の送達を促進するために適当な担体または追加補助剤を含む。
【0069】
担体は、組成物の他の成分に適合性でありレシピエントに有害でないという意味で許容される担体でなければならない。担体は固体または液体または双方でよく、(1種以上の)有効化合物を0.01から95重量%の量で含有できる単位薬用量組成物たとえば錠剤が得られるように化合物に配合されるのが好ましい。
【0070】
本発明の医薬組成物は公知の製薬技術のいずれか、たとえば、成分の混合によって調製できる。
【0071】
錠剤は、錠剤の製造に適した医薬的に許容される無毒性賦形剤に混合された有効成分を含有している。これらの賦形剤はたとえば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;トウモロコシデンプン、アルギン酸のような造粒および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアラビアガムのような結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような滑沢剤であろう。
【0072】
経口投与に適した医薬組成物は、おのおのが本発明に有用な少なくとも1種の治療用化合物を所定量で含有する個別単位として、粉末または顆粒として、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液または水中油型もしくは油中水型エマルションとして提供できる。指摘したように、このような組成物は(1種以上の)有効化合物を(1種以上の補助成分を構成できる)担体に会合させる段階を含む適当な製薬方法のいずれかによって調製できる。一般的に組成物は、有効化合物を液体または微粉砕固体担体または双方に均一かつ均質に混合し次いで必要ならば生成物を付形することによって調製する。
【0073】
たとえば、錠剤は、化合物の粉末または顆粒を場合により1種以上の補助成分と共に圧縮または成形することによって調製できる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒のような自由流動形態の化合物を場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤および/または界面活性/分散剤と混合し適当な機械で圧縮することによって調製できる。成形錠剤は、粉末化し不活性液体希釈剤で湿潤させた化合物を適当な機械で成形することによって製造できる。
【0074】
本発明の複合物(combination)の経口デリバリーは、いくつかのメカニズムによって胃腸管および/または腸管に薬物を長期間または持続送達する当業界で公知の配合物を含み得る。これらは非限定的に、小腸のpH変化に基づいてpH感受性の薬剤放出を行う剤形、錠剤またはカプセルが徐々に浸食される剤形、配合物の物理的特性に基づいて胃内に滞留する剤形、腸管の粘膜性内壁に薬剤が生体付着する剤形、または、有効薬物が酵素的に放出される剤形を含む。本発明の方法、複合物(combination)および組成物に有用な治療用化合物のいくつかは、有効薬物分子を作用部位に送達する時間的期間を剤形の操作によって延長することで所期の効果を発揮する。従って、腸溶性コーテッド配合物および腸溶性コーテッド調節放出配合物は本発明の範囲に包含される。適当な腸溶性コーティングは、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルとのアニオン性ポリマーを含む。
【0075】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は錠剤を含むことができ、錠剤は剤皮なしでもよくまたは胃腸管内での崩壊および吸収を遅らせて長期間の持続作用を提供するために公知技術によって剤皮をかけてもよい。たとえば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような徐放性材料を使用し得る。
【0076】
安定化スルフォラファンまたはその類似体を含有するシロップおよびエリキシル剤は甘味料たとえばグリセロール、ソルビトールまたはショ糖と共に配合され得る。このような配合物はまた、粘滑薬、保存料、着香料、着色料を含有し得る。経口投与用の液体剤形は、水のような常用の不活性希釈剤を含有する医薬的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。このような組成物はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、着香料および芳香料のような補助剤を含み得る。
【0077】
水を加えて水性懸濁液を調製するための適当な分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁化剤および1種以上の保存料に混合された有効成分を提供する。適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤の代表例は上記に既に言及した。
【0078】
この文中に提示したように本発明はまた“口腔内”投与または舌下投与を包含し、この種類には化合物を含有する甘味入り錠剤またはチューインガムがある。化合物は通常はショ糖およびアラビアガムまたはトラガカントガムのような香料入り基材中に保持されており、トローチはゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアラビアガムのような不活性基材中の化合物を含んでいる。
【0079】
1種以上の安定化スルフォラファン、安定化スルフォラファン類似体を処方する主題方法において、これらを含む組成物は皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内または水性もしくは油性の無菌注射用懸濁液の形態の注入によって非経口的に投与できる。このような懸濁液は上記に言及した適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤または他の適格な補助剤の適正な分散を使用する公知の技術に従って配合され得る。滅菌注射用製剤はまた、非経口的に許容される無毒性希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液たとえば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用し得る適格なビヒクルおよび溶媒としては水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌不揮発油も溶媒または懸濁媒体として慣用である。合成モノ−またはジグリセリドのような無刺激性の不揮発油のいずれかをこの目的に使用し得る。さらに、n−3ポリ不飽和脂肪酸も注射剤の製造に使用し得る。
【0080】
非経口投与に適した便利な医薬組成物は本発明の化合物の滅菌水性製剤を含む。これらの製剤は好ましくは静脈内投与されるが、皮下、筋肉内または皮内注射または注入によって投与することもできる。このような製剤は化合物を水に混合し得られた溶液を滅菌しかつ血液と等張性にすることによって簡便に調製できる。本発明の注射用組成物は一般にこの文中に開示された化合物を0.01から10%w/w/の量で含有している。
【0081】
注射用製剤、たとえば、水性または油性の滅菌注射用懸濁液は、適当な分散またはゲル化剤と懸濁化剤とを使用する公知の技術に従って配合し得る。滅菌注射用製剤はまた非経口的に許容される無毒性希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液たとえば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用し得る適格なビヒクルおよび溶媒としては水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌不揮発油も溶媒または懸濁媒体として慣用である。合成モノ−またはジグリセリドのような無刺激性の不揮発油のいずれかをこの目的に使用し得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸も注射剤の製造に使用し得る。
【0082】
有効成分はまた、たとえば生理食塩水、デキストロースまたは水を適当な担体として使用した組成物の形態で注射によって投与できる。各有効治療用化合物の適当な1日用量は前述の経口投与と同じ血清レベルが得られる用量である。
【0083】
皮膚に外用投与するための適当な医薬組成物は好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、粉末、ゼリー、洗眼薬、溶液または懸濁液、エアゾールまたは油の形態を有している。使用できる担体は、石油ゼリー(たとえばワセリン
(R))、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコールおよびそれらの2種以上の組合せである。(1種以上の)有効化合物が一般には組成物の0.01から50%w/w、たとえば0.01から2%の濃度で存在している。
【0084】
本発明はまた安全で有効な量の等張化剤たとえば塩化ナトリウムのような塩を含有し、より好ましくはソルビトールおよびマンニトールのような非電解質等張化剤を含有する。
【0085】
本発明の組成物の成分の溶解度は組成物中の界面活性剤または他の適当な助溶媒によって増進される。このような助溶媒はポリソルベート20、60および80、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤(たとえばプルロニックF−68、F−84およびP−103)、シクロデキストリンまたは当業界で公知の他の補助剤を含む。典型的にはこのような助溶媒は0.01重量%から2重量%までのレベルで使用される。
【0086】
医薬的に許容される賦形剤および担体は上記に挙げたような材料をすべて包含する。効果的な配合物および投与手順に関する上記の考察は当業界で公知であり標準文献に記載されている。たとえば、Gennaro,A.R.,
Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20
th Edition,(Lippincott,Williams and Wilkins),2000;Hoover,John E.,
Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania,1975;Libermanら,Eds.,
Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;およびKibbeら,Eds.,
Handbook of Pharmaceutical Excipients(3
rd Ed.),American Pharmaceutical Association,Washington,1999を参照できる。
【0087】
本発明の方法においては、この文中に記載した障害および/または関連した状態の治療および/または予防を要する対象がある量の本発明の安定化スルフォラファンおよび/または安定化スルフォラファン類似体によって治療され、この場合、個々の成分の量が薬用量、すなわち治療有効量または予防有効量として十分な量を供給する。
【0088】
この文中に使用した“有効量”は、公知技術の使用によって得られた結果および類似の環境下で得られた結果の観察によって何らかの治療効果を有していると平均的な当業者が容易に判断できるような本発明の治療用複合物(combination therapy)の用量すなわち対象に投与すべき量および対象への投与頻度を意味する。有効な用量すなわち対象に投与すべき量および対象への投与頻度は公知技術の使用によって得られた結果および類似の環境下で得られた結果の観察によって平均的な当業者が容易に決定できる。
【0089】
“治療的に有効な”および“治療、予防または阻害に有効な”という表現は、抗癌治療、予防的化学治療、抗菌治療および/または他の医学的治療などの治療において最終目標に到達できるような各薬剤の使用量であると定義する。
【0090】
所望の生物学的効果を達成するために必要な本発明の安定化化合物の量はもちろん、選択された具体的化合物、その使用目的、投与モード、治療される宿主、レシピエントの臨床状態のような多数の要因に左右されるであろう。
【0091】
軽微であっても有益な効果が得られたならば、発癌性、腫瘍形成性または抗菌性の症状が軽減または改善されたと考える。
【0092】
“治療有効量”は、発癌、腫瘍形成および細菌に誘発された潰瘍のような状態を治療、予防または阻害するために必要な安定化スルフォラファンの量であると定義する。
【0093】
この文中に使用した“予防的に有効な”という用語は、癌または細菌に誘発された潰瘍のような状態の発生頻度の減少を生起する安定化スルフォラファンの量を表す。“予防的”という用語は、癌および細菌に誘発された状態の予防を表し、“治療的”という用語は既存の癌または細菌に誘発された状態の有効な治療を表す。
【0094】
この文中に使用した“有効量”は、用量すなわち対象に投与すべき量および対象への投与頻度を意味しており、公知技術の使用によって得られた結果および類似環境下で得られた結果の観察によって平均的な当業者が容易に決定できる。
【0095】
この文中に提示された本発明の組成物および方法に関する投薬量は防御化学的結果または予防化学的結果を調べることによって証明された薬効に基づいて決定および調整し得る。さらに、平均的な当業者は発癌または腫瘍形成症状の有無をいかにして測定および定量するかを承知しているであろう。
【0096】
本発明組成物の好ましい投薬量は、防御化学的効果、予防化学的効果および/または抗菌効果を与えるために有効な量である。
【0097】
投薬量が、Goodman & Gilman’s
The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ninth Edition(1996),Appendix II,pp.1707−1711の指針によって決定できることも当業者は理解されるであろう。
【0098】
以下の実施例は本発明の様々な実施態様を記載する。この文中の特許請求の範囲に包含される他の実施態様はこの文中に開示した本発明の明細書または実施態様の考察から当業者に明らかであろう。明細書も実施例も共に単なる例であると考えられるべきであり、本発明の範囲および要旨は実施例に後続する特許請求の範囲によって示されることとする。実施例中のすべてのパーセンテージは否定の指示がないならば重量基準の値である。
【実施例1】
【0099】
この実施例は、スルフォラファンのラセミ混合物の形成方法を示す。反応経路を
図1に示す。
【0100】
中間体A:
カリウムフタルイミド(65g,350mmol,1.00当量)およびテトラメチレンジブロミド(200g,930mmol,2.66当量)を合せて(非希釈で)、12時間加熱した。余剰のテトラメチレンジブロミドを回転蒸発(回転気化器)によって除去した。得られた残渣をエタノールで消化し、濾過した。静置中に結晶化した材料を濾過し、エタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。濾液と洗浄液とを集めて濃縮すると第二のクロップが得られた。クロップの合計重量は60.5g(収率61%)であった。
中間体B:
すべてのガラス器具類を乾燥した(N
2流/加熱ガン)。撹拌棒を備えた2L容の丸底フラスコに、300mLの無水メタノールを充填した。ナトリウム(6.48g,281.8mmol,1.06当量)を慎重に添加した。室温で、メチルメルカプタン(MeSH,13.56g,281.8mmol,1.06当量)をシリンジから一回で充填した。[MeSH(気体状)はドライアイス/アセトン低温フィンガートラップを備えたドライアイス/アセトン浴に入れた別の多口丸底フラスコにトラップし、ドライ/フリーザー冷却シリンジに移した。]ブロモブチルフタルイミド(75.0g,265.8mmol,1.00当量)を300mLの無水メタノールに懸濁させ、反応混合物に加えた。反応混合物を窒素下に室温で一夜撹拌した。反応混合物のアリコートをガスクロマトグラフィーで分析して反応完了を確認した。次に、300mLの水を反応混合物に添加し、回転気化器で蒸留してアルコールを除去すると、この時点で生成物が溶液から沈殿した。生成物(白色固体)を濾別し、2×150mlの冷水で洗浄した。生成物を40℃の真空オーブンに入れて一夜乾燥すると、65.2g(98%収率)の白色固体が得られ、ガスクロマトグラフィーによればこれは98.4%の純度を示した。生成物を窒素下で保存した。
【0101】
この手順はHelvetica Chimica Acta.1948:31;6:1497−1505に報告された手順を準用したものである。実際の手順はいくつかの点で報告された手順とは違っていた。まず、報告手順では反応溶媒として無水アルコール(EtOH)を使用した。報告手順はまた、反応混合物を室温で一夜撹拌した後に混合物を数時間還流させる追加段階を含んでいた。原典では反応混合物の事後処理も違っていた。たとえば、NaBrをアルコールから濾別し、濾液を濃縮して残渣とした。次に残渣を二硫化炭素−エーテル混合物に溶解し、水および炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。3つの実験の記録収率は約82から92%の範囲であった。
【0102】
平均的な当業者は、先に報告された手順に比べて本発明の手順は含まれる段階の数が少なく、反応総時間が短縮され、収率が向上していることを理解されるであろう。
【0103】
中間体C:
中間体B(45.0g,180.5mmol,1.00当量)を580mLの酢酸とエタノールとの1:1混合物に懸濁させた(完全溶解しない)。懸濁液を氷/ブライン浴で冷却した。過酸化水素溶液(120.014 M AQ、予め滴定、15.02mL,180.5mmol,1.00当量)を添加し、反応混合物を室温に加温して一夜撹拌した。処理中に材料が溶解し、淡黄色溶液となった。アリコートを薄層クロマトグラフィー(非希釈のEtOAc)によって点検して反応完了を確認した。反応混合物を回転気化器で濃縮し(不完全、溶媒の〜90%を除去)、400mLのメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)で希釈すると、この時点で生成物(淡黄色固体)が溶液から沈殿した。固体を濾別し、追加量の100mLのMTBEで洗浄した。MTBE濾液から第二クロップを収集した。双方のクロップの合計重量は44.5g(収率95%)であり、HPLC純度は〜95%であった。NMRは残留酢酸を示した。材料をそれ以上精製しなかった。
【0104】
この手順は前出の参照文献に報告された手順から準用した。報告された手順は2つの異なる処理を提示した。第一の処理は溶媒として酸でなく無水アセトンを使用し、反応混合物を室温で5日間維持した。第二の処理は氷酢酸を使用し、発熱を緩和するために反応混合物を冷却した。参照方法の最終処理は無水エーテルを使用する生成物の沈殿である。
【0105】
平均的な当業者は本発明の手順によって反応時間を短縮できまた反応を周囲条件で実行できることを理解されるであろう。
【0106】
中間体D:
撹拌棒を備えた500mL容の丸底フラスコを乾燥し(N
2流/加熱ガン)、中間体C(35.34g,133.19mmol,1.0当量)を充填した。メチルアミン(エタノール中の33wt%溶液,175mmL,〜10当量)を丸底フラスコに充填した。固体中間体Cは約45分でゆっくりと溶液に取込まれた。さらに1時間後、溶液から固体が沈殿し始めた(メチルフタルイミドと推定される)。反応混合物を十分に密封して室温で一夜撹拌した。反応混合物を50mLのエタノールで希釈し(固体がある程度溶解)、濾過して、メチルフタルイミド副生物を除去した。固体副生物を追加量の2×25mLのエタノールで洗浄した。濾液を回転気化器(浴温度約30℃未満)で洗浄した。残渣を50gのシリカに吸着させ、50gのシリカでカラムにかけた。残留メチルフタルイミド副生物の洗浄には3カラムボリュームのジクロロメタンで十分であった。ジクロロメタン中の40%の9:1のメタノール:水酸化アンモニウムを使用して生成物を溶出した。19.1gの淡黄色油が得られた。これはGCによって純粋であったが水を含有しており、NMRによって水酸化アンモニウムが収集された。油を1ミリバールおよび185℃の空気浴温度でクーゲルロール(kuglrhor)蒸留すると、11.80gの黄色油が得られた(収率65.5%)。これはGCで99%を上回る純度を有していた。ポット残渣は3.14gと計量され、熱分解があり得ることを示す。
【0107】
スルフォラファン
撹拌棒を備えた1L容の丸底フラスコに、中間体D(10.8g,79.9mmol,1.00当量)、300mLのクロロホルムおよび133mLの1NのNaOH(水性)溶液(132.8mmol,1.66当量)を充填した。2相溶液に、チオホスゲン(13.78g,119.8mmol,1.50当量)を充填した。反応混合物を1時間激しく撹拌した後、アリコートを薄層クロマトグラフィーによって点検した。混合物を〜300mLのクロロホルムおよび200mLのブラインで希釈した。有機相を除去し、水相を2×500mLのクロロホルムで再度抽出した。有機相を集めて、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を20gのシリカに吸着させ、50gのシリカでカラムにかけ、クロロホルム中の0から4%のメタノールで溶出させた。12.14g(収率85.7%)の所望生成物を淡黄色油として収集した。
【0108】
スルフォラファンの安定化
スルフォラファンを3種類のシクロデキストリン:W6(アルフア)、W7(ベータ)およびW8(ガンマ)に配合した。これらのシクロデキストリンはWacker Chemie AG(CAVAMAX
TMブランド、食品グレードまたは医薬グレード)から購入した。
【0109】
3つの異なる条件/手順を使用してスルフォラファンを配合した。
【0110】
タイプA:全部の材料(シクロデキストリン/スルフォラファン)を窒素で掃気した水(CO
2除去)に溶解する。室温で一夜撹拌する。真空下で一定重量まで乾燥する(浴を30℃未満に維持する)。(回収は理論的定量である。一般に5から10%の水分を含むシクロデキストリンが乾燥するので重量減が生じる。)シクロデキストリンに対するスルフォラファンの典型的な配合量は〜1%wt/wtであった。理論的配合量は、配合物に取込まれたスルフォラファンの量を最終乾燥重量で除算することによって算定する。
【0111】
タイプB:酢酸エチル中のシクロデキストリンの懸濁液にスルフォラファンを添加する。室温で一夜乾燥する。真空下で一定重量まで乾燥する(浴を30℃未満に維持する)。(回収は理論的定量である。一般に5から10%の水分を含むシクロデキストリンが乾燥するので重量減が生じる。)シクロデキストリンに対するスルフォラファンの典型的な配合量は〜1から5%wt/wtであった。理論的配合量は配合物に取込まれたスルフォラファンの量を最終乾燥重量で除算することによって算定する。
【0112】
タイプC:シクロデキストリンの飽和水溶液にスルフォラファンを添加する。溶液を一夜静置する。沈殿物を濾過によって収集する。沈殿物が形成されないときは−4℃で一夜冷却する。真空下で一定重量まで乾燥する(浴を30℃未満に維持する)。回収率は概して低く、アルフアシクロデキストリンで28%、ベータシクロデキストリンの使用で26%およびガンマシクロデキストリンで62%である。理論的配合量は、乾燥配合物のNMR分析を用いて計算し、典型的には使用シクロデキストリン次第で7から13%である。
【0113】
表1は上記に記載のタイプA、タイプBおよびタイプCの手順に従って調製した各配合物のリストを含む。
【0114】
【表1】
【0115】
安定性分析の摘要
分析の概説:内部標準(DEET)法を使用するHPLC(254nmでUV検出)によってスルフォラファン配合物を分析した。クロマトグラフィー条件下でスルフォラファンがシクロデキストリンから完全に解離すると想定する。スルフォラファン標準(フリーザーに保存)を使用して各分析の応答率を決定する。初期試験で、この標準の濃度に対する応答の直線性が証明された。すべての分析において、注入したすべての標準の応答率(RF)は安定に維持されたので、フリーザー内の標準の安定性が証明された。
【0116】
保存条件:サンプルを3つの条件下で、すなわち、蓋を閉めて室温で、蓋をしてフリーザー(30℃)で、および蓋を開けて40℃のオーブンで保存した。これらのサンプルのスルフォラファン配合量を経時的に分析した。種々のサンプルの種々の保存条件下の安定性を
図3から5に示す。
【0117】
サンプル調製例:20mgから50mg(慎重に計量)の配合物サンプルを1mLの内部標準溶液(DMF中のDEET)に溶解する。ISTD溶液の量も慎重に計量する。窒素を吹込んだ1mLの脱イオン水でサンプルをさらに希釈する。サンプルをほぼ10分間超音波処理し、0.45μmのナイロンフイルターで濾過する。次に254nmでUV検出するHPLCによってサンプルを分析する。
【0118】
クロマトグラフィー条件
カラム:Agilent Eclipse XDB−C18,5μm,250×4.6mm,30℃
溶媒A:水中の0.1%ギ酸
溶媒B:MeCN
勾配:30分間で溶媒A中に5%から100%の溶媒B
流速:1.5mL/分
デテクタ:UV254nm,ESI−MS(pos/neg),確認用
保持時間:スルフォラファン:9.2分,DEET:15.5分。
【0119】
分析結果:結果は、理論的配合量に対するパーセンテージを時間の関数として示す(理論値の計算方法は上述した)。
【0120】
図3は室温で150日間保存した配合物の安定性データを示す。
図3からわかるように、室温で150日後に理論的配合量に対するパーセンテージが最も高かったのはアルファBサンプルであった。同じ期間後に理論的配合量に対するパーセンテージの下落が最も大きかったのはガンマCサンプルであった。
【0121】
図4は、40℃のオーブン中で蓋なし容器にほぼ150日までの期間保存した配合物の安定性データを示す。いくつかのサンプルは約150日よりも前に取出した。アルファCサンプルは最初の40日間の分解速度が最も遅かった。150日後、ベータBサンプルはスルフォラファンの初期理論的配合量の40%を維持しており、アルファBサンプルは初期理論配合量の約45%を維持していた。
【0122】
図5は、フリーザーに保存した配合物の安定性データを示す。アルファBサンプルおよびベータBサンプルをフリーザーにほぼ150日間維持した。他のサンプルはフリーザーにほぼ40日間維持した。40日後、各サンプルは初期理論的配合量の80%以上を維持していた。150日後、アルファBおよびベータBのおのおのはそれらの初期理論的配合量のほぼ90%を維持していた。
【実施例2】
【0123】
この実施例は、本発明の安定化スルフォラファン組成物の長期安定性試験を示す。
【0124】
前述の方法を拡大規模で使用してスルフォラファンを再度合成した。この合成によって約94グラムの生成物が得られた。表2に示すように、3つの配合物アルファB、アルファCおよびベータBを再現した。
【0125】
【表2】
【0126】
内部標準(DEET)法を使用するHPLC(254nmでUV検出)によってスルフォラファン配合物を分析した。スルフォラファン標準(フリーザーに保存)を使用して各分析の応答率を決定した。初期試験で、この標準の濃度に対する応答の直線性が証明された。すべての分析において、注入したすべての標準の応答率(RF)は安定に維持されたので、フリーザー内の標準の安定性が証明された。
【0127】
サンプル調製:
約300mg(慎重に計量)の配合物サンプルを8mLの内部標準溶液(DMF中のDEET、約2mg/mL)に溶解した。ISTD溶液の量も慎重に計量した。窒素を吹込んだ8mLの脱イオン水でサンプルをさらに希釈した。サンプルを〜10分間超音波処理し、0.45μmのナイロンフイルターで濾過した。次に254nmでUV検出するHPLCによってサンプルを分析した。
【0128】
クロマトグラフィー条件
カラム:Agilent Eclipse XDB−C18,5μm,250×4.6mm,30℃
溶媒A:H
2O中の0.1%ギ酸
溶媒B:MeCN
勾配:30分間で溶媒A中に5%から100%の溶媒B
流速:1.5mL/分
デテクタ:UV254nm,ESI−MS(pos/neg),確認用
保持時間:スルフォラファン:9.2分,DEET:15.5分。
【0129】
分析結果:結果は、“時点0”の配合量に対するパーセントを時間の関数として示す。アルファBサンプルの安定性試験の結果を
図6に示す。この図からわかるように、アルファBサンプル(上の表2に記載)は室温および低温で7ヶ月間維持した後も結合性を維持していたが、高温環境(40℃)中ではほぼ50%分解した。
【0130】
図7はアルファCサンプル(上の表2に記載)によって作成した安定性データを示す。この図からわかるように、アルファC複合体の安定性は低温、周囲温度および高温で7ヶ月間以上維持された。
【0131】
図8はベータBサンプル(上の表2に記載)によって作成した安定性データを示す。この図からわかるように、ベータB複合体の安定性は、低温および周囲温度で最初の4ヶ月間はいくらか低下したが、残りの3ヶ月の試験期間中は安定していた。ベータB複合体の高温サンプルはもっと分解が進んだが、非安定化スルフォラファンサンプルで予想されるよりも改善された安定性を示した。
【0132】
これらの実施例は、本発明のスルフォラファン複合体がスルフォラファンの安定性を改善することを示す。従って、スルフォラファンを抗癌治療剤、抗菌治療剤および他の用途の薬剤として製造しかつ流通させることがいっそう容易になる。さらに、安定性データは、スルフォラファン組成物が治療前に長期間保存できることを示す。
【0133】
すべての文書、刊行物、特許、特許出願、発表文、論文、報告、原稿、小冊子、単行本、インターネット転記、新聞記事、定期刊行物などを制限なく含むこの明細書に引用したすべての参考文献は、本明細書に参照されたことによってその記載内容全体がここに組込まれるものとする。
【0134】
この文中の参考文献の記載はそれらの著者による主張を要約しただけであり、いずれかの参考文献が従来技術を構成することを容認したものではない。出願人らは、引用した参考文献の正確さおよび適切さに異議を唱える権利を保留している。
【0135】
本発明の好ましい実施態様を特定の用語、デバイスおよび方法を用いて記載してきたが、このような記載は例示目的にすぎない。使用した語は制限語ではなく記述語である。後出の特許請求の範囲に提示された本発明の要旨または範囲を逸脱することなく平均的な当業者による変形および変更が可能であることを理解されたい。さらに、様々な実施態様の特徴が全体的または部分的に互換可能であることも理解されたい。