(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677690
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】襠付き靴下の編成方法
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20200330BHJP
D04B 1/26 20060101ALI20200330BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
A41B11/00 G
D04B1/26
D04B1/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-192523(P2017-192523)
(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公開番号】特開2019-65425(P2019-65425A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003919
【氏名又は名称】株式会社ナイガイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕治
【審査官】
住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−115475(JP,A)
【文献】
国際公開第02/052966(WO,A1)
【文献】
特開平09−256248(JP,A)
【文献】
特許第3004200(JP,B2)
【文献】
米国特許第02932829(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00
D04B1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に対向して配置された針床を具備する横編機において、親指用指袋の爪先側から筒状に編成が行われ、親指用指袋の付け根まで編成した後に親指用指袋を編成していた編針に隣接する前後の複数本の編針に編糸をジグザグに給糸して襠編成用の編み出し部とし、襠編成用編針と親指用指袋編成用編針とにより少なくとも1往復キャリッジを走行させて編目を編成し、その後に隣接する指袋の編成を行うことを特徴とする襠付き靴下の編成方法。
【請求項2】
第二指用指袋および第三指用指袋の編成を行った後に、襠部分を含む各指袋の付け根部分に筒状の三本胴の編地を編成し、その後に他の指袋の編成を行うことを特徴とする請求項1記載の襠付き靴下の編成方法。
【請求項3】
第二指用指袋、第三指用指袋および第四指用指袋の編成を行った後に、襠部分を含む各指袋の付け根部分に筒状の四本胴の編地を編成し、その後に第五指用指袋の編成を行うことを特徴とする請求項1記載の襠付き靴下の編成方法。
【請求項4】
三本胴の編成時に襠部分の幅を減らし目により減じていくことを特徴とする請求項2記載の襠付き靴下の編成方法。
【請求項5】
四本胴の編成時に襠部分の幅を減らし目により減じていくことを特徴とする請求項3記載の襠付き靴下の編成方法。
【請求項6】
前記襠編成用編針により編成される襠の幅が2〜10mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の靴下の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指袋付き靴下およびその編成方法に関するものである。本発明における指袋付き靴下は靴下の爪先部に5本の指袋を備えたものでもよいし、親指用指袋・第二〜四指用指袋・第五指用指袋の3つの指袋を備えたもの、足袋のように親指用指袋と他の指用指袋を供えたものなどでもよい。
本発明のおける靴下は、一般的にソックスと称するものはもちろんのこと、フットカバー(カバーソックス、インナーソックス、ヌードソックス等と称されることもある)や指先から土踏まずまでの短い爪先カバーを含むものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な靴下の爪先部分は5本の指を一緒に収容する1つの指袋からなるものであるが、最近では、指が隣接する指と密着していることにより蒸れて臭いが発生したり、水虫の原因となったりするので、各指を別々の指袋に収納する靴下が開発され、多く販売されるようになった。
【0003】
例えば、特許第3004200号公報(特許文献1)、特開2000−239950号公報(特許文献2)、特開2002−61054号公報(特許文献3)、特開2008−115475号公報(特許文献4)などには5本指靴下の編成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3004200号公報
【特許文献2】特開2000−239950号公報
【特許文献3】特開2002−61054号公報
【特許文献4】特開2008−115475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1〜3に開示されている編成方法では、親指用指袋から第五指用指袋までの各指袋はその付け根部分が隣接する指袋の付け根部分と隣接した状態、または付け根部分が重なりあった状態で指股を形成している。
一方、人間の足においては、足の親指は第1関節付近の部分が太く、親指の付け根部分はそれよりも細くなっている。そのため、親指と隣接する第二指(人差し指)とは、親指の第1関節付近で接触し、親指の付け根部分と第二指の付け根部分との間の指股は広く、隙間ができている。
【0006】
前記特許文献1〜3に開示されているような従来の5本指靴下は、親指と第二指の間の指股にゆとりがなく、着用すると窮屈感があり、親指や第二指をそれぞれ自由に動かし難かった。
前記特許文献4には親指と人差指の指股に襠を伏目により形成することが開示されている。しかしながら、伏目による襠は編成工程が非常に繁雑であり(特許文献4の請求項7に記載のように隣接する筒状編地の一方の端部の編目を他方の針床に退避させて空けた編針に、隣接する筒状編地の他方の端部の編目を移し、移した編目に退避させた編目を重ねて重ね目を形成し、重ね目をニットした編目に対する伏目処理で形成する)、伏目の襠の編成に時間がかかると言う問題がある。更に、伏目による襠は編目が重ね目があることおよび伏目そのものにより襠の部分が厚くなり、靴下を着用した際に襠部分が指股にフィットせず、ゴロツキ感があり、履き心地がよくなかった。また、伏目の編目ループが横方向であるため足の指を開く方向に伸び難くい等の問題がある。
【0007】
本発明は前述したような従来の問題を解決し、親指の指袋と第二指との間の指股に襠を設けて、靴下を着用した際に親指や第二指をそれぞれ自由に動かし易くすると共に、襠部分が指股にフィットし、着用感のよい襠付き靴下を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明はこのような襠付き靴下を容易に製造できる編成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、前後に対向して配置された針床を具備する横編機において、親指用指袋の爪先側から筒状に編成が行われ、親指用指袋の付け根まで編成した後に親指用指袋を編成していた編針に隣接する前後の複数本の編針に編糸をジグザグに給糸して襠編成用の編み出し部とし、その後に隣接する指袋の編成を行うことを特徴とする襠付き靴下の編成方法により前記目的を達成する。
【0011】
本発明においては、親指用指袋の付け根まで編成した後に親指用指袋を編成していた編針に隣接する前後の複数本の編針に編糸をジグザグに給糸して襠編成用の編み出し部とした後、襠編成用編針と親指用指袋編成用編針とにより少なくとも1往復キャリッジを走行させて編目を編成し、その後に隣接する指袋の編成を行うことが好ましい。
また、前記襠編成用編針により編成される襠の幅が2〜10mmであることが好ましい。
【0012】
本発明においては、第二指用指袋および第三指用指袋の編成を行った後に、襠部分を含む各指袋の付け根部分に筒状の三本胴の編地を編成し、その後に他の指袋の編成を行ってもよいし、或いは第二指用指袋、第三指用指袋および第四指用指袋の編成を行った後に、襠部分を含む各指袋の付け根部分に筒状の四本胴の編地を編成し、その後に第五指用指袋の編成を行ってもよい。
この場合、三本胴または四本胴の編成時に襠部分の幅を減らし目により減じていくことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複数本の指袋を有する靴下は、親指用指袋と隣接する指袋の間の指股に襠が設けられており、該襠は前後の針床の編針にジグザグに給糸された編糸から編み出されているので、襠の部分は厚みがなく、指股にフィットし、親指用指袋および隣接する指袋が足の指にフィットし、靴下の履き心地がよい。
また、本発明によれば、襠はジグザグに給糸された編糸から編み出されているので、横方向の伸びがよく、足の指を拡げたり、動かしたりし易い。
【0014】
本発明によれば、親指用指袋の爪先側から筒状に編成が行われ、親指用指袋の付け根まで編成した後に親指用指袋を編成していた編針に隣接する前後の複数本の編針に編糸をジグザグに給糸して襠編成用の編み出し部とし、その後に隣接する指袋の編成を行うので、特許文献4の編成方法のように編目を移したり、伏目を形成したりの繁雑で手間の掛かる工程が不要であり、効率よく編成することができる。
また、襠の編成のために増えた編目(すなわち、広くなった横幅)は第五指用指袋の編成までに減らし目により減じれば、その後は通常の大きさとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の襠付き靴下の一実施例の部分(爪先から足部の一部)を示す平面図である。
【
図2】本発明の襠付き靴下の編成方法の一実施例における爪先部の編成工程を概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示した実施例に基いて詳細に説明する。
本発明の靴下は、爪先部に複数本の指袋を有する靴下であり、5本の指袋を備えたものでもよいし、親指用指袋・第二〜四指用指袋・第五指用指袋の3つの指袋を備えたもの、足袋のように親指用指袋と他の指用指袋を供えたものなどでもよい。
図1に示した靴下は5本の指袋を備えたものであり、
図1には靴下の爪先から足部の一部のみを図示し、残りの足部から履き口までは省略している。
【0017】
本発明の靴下は前後に対向して配置された針床を具備する横編機において編成されるものである。
図1に示した実施例では親指用指袋1の爪先1aから編成が開始され、親指用指袋1の付け根1bまで編成した後に親指用指袋1と第二指用指袋2の間の指股に襠6が設けられ、その後、第二指用指袋2、第三指用指袋3、第四指用指袋4が編成され、続いて四本胴7が編成され、第五指用指袋5の編成が終わると、足部8から履き口部(図示せず)までの編成が行われる。
【0018】
本発明は、親指用指袋1を編成していた編針に隣接する前後の複数本の編針に編糸をジグザグに給糸して襠6の編み出し部としたことを特徴とするものであり、本発明においては、編糸は靴下に通常使用するものであれば、特に限定されない。
本発明において、襠6の幅は特に限定されないが、狭くても足指の運動に自由がなく、広すぎても指股にフィットしなくなるので2〜10mmであることが好ましい。
【0019】
図2に示した本発明の襠付き靴下の編成方法の一実施例における爪先部の編成工程を説明する。
図2において符号a〜iは編成工程を示し、符号11、12は前後に対向して配置された針床の針列を示している。符号11は後側の針床の針列、符号12は前側の針床の針列を示し、一つ一つの点が編針13、14を示し、実線は編糸15を示す。
【0020】
まず、
図2のa工程では前後の針床における編針13、14のうち親指用指袋編成用編針13、14に編糸15がジグザグに給糸され、親指用指袋1の爪先1aの編み出しが行われる。次に
図2のb工程では前側の針床の編針14および後側の針床の編針13に編糸15を給糸して、各編針でニットして編目ループを形成する。なお、各編針でニットして編目ループを形成する場合、
図2では、編糸15が各編針を囲むような円として描かずに、編糸15が直線的に編針の上を通るように簡略化して描いている。
【0021】
図2のb工程では編糸15が前側の針床の編針14に給糸され、編目ループを形成した後、後側の針床の編針13に給糸され、編目ループを形成する。このように編糸15が前側の針床の編針14と後側の針床の編針13とを周回するように給糸・編成される。周回コースが多数回繰り返されて筒状の編地が編成され、所望の長さの親指用指袋1が形成される。
【0022】
次に、
図2のcの工程では、親指用指袋1の付け根1bまで編成した後に、続けて親指用指袋1を編成していた編針に隣接する前後の複数本の編針13、14に編糸15をジグザグに給糸して襠編成用編み出し部6aとする。
【0023】
図2のdの工程では、横編機のキャリッジ(図示せず)を1往復走行させて前側の針床における襠編成用編針14および親指用指袋編成用編針14から後側の針床における親指用指袋編成用編針13および襠編成用編針13まで給糸して各編針でニットして編目を形成する。
【0024】
続いて、
図2のeの工程では、横編機のキャリッジを走行して、前側の針床の襠編成用編針14および親指用指袋編成用編針14に給糸して各編針でニットして編目を形成する。なお、この工程を省略することも可能である。
【0025】
その後、
図2のfの工程で、隣接する指袋(第二指用指袋2)の編成を行うために、襠編成用編針に隣接する前後の複数本の編針13、14(すなわち、第二指用指袋編成用編針)に編糸15をジグザグに給糸して第二指用指袋2の編み出し部2aとする。
【0026】
図2のgの工程では編糸15が前側の針床の第二指編成用編針14と後側の針床の第二指用指袋編成用編針13とを周回するように給糸・編成される。周回コースが多数回繰り返されて筒状の編地が編成され、所望の長さの第二指用指袋2が形成される。
【0027】
図2のhの工程で、第二指に隣接する指袋(第三指用指袋3)の編成を行うために、第二指用指袋編成用編針に隣接する前後の複数本の編針13、14(すなわち、第三指用指袋編成用編針)に編糸15をジグザグに給糸して第三指用指袋3の編み出し部3aとする。
【0028】
図2のiの工程では編糸15が前側の針床の第三指用指袋編成用編針14と後側の針床の第三指用指袋編成用編針13とを周回するように給糸・編成される。周回コースが多数回繰り返されて筒状の編地が編成され、所望の長さの第三指用指袋3が形成される。
【0029】
次に、図示しないが、同様にして第四指用指袋を編成する。その後、
図1に示した実施例では、親指用指袋編成用編針、襠編成用編針、第二指用指袋編成用編針、第三指用指袋編成用編針および第四指用指袋編成用編針に給糸し、編成して、四本胴7を編成する。続いて、第五指用指袋を同様に編成する。
その後、従来のように、足部8から履き口部(図示せず)までを編成して、本発明の靴下を製造する。
【0030】
なお、本発明においても、襠の編成から第二指用指袋2の編み出し部2aに移る際、第二指用指袋2の付け根から第三指用指袋3の編み出し部3aに移る際、第三指用指袋3の付け根から第四指用指袋4の編み出し部4aに移る際、および四本胴の終わりのコースから第五指用指袋5の編み出し部5aに移る際には編糸15は切断されるが、従来公知のように横編機で使用されている端フックで編糸が保持された状態で切断され、一方の糸端は編地の中に入れられ、他方の糸端は後続の編成まで保持される。
【0031】
また、第二指用指袋から第五指用指袋までの各指股部は、隣接する指袋を編成する編針のうち数本の編針を共通に使用する公知の指重ね編成として編成してもよい。
【0032】
更に、
図1に示した実施例では四本胴7を設けているが、四本胴7を設けずに、第四指用指袋4を編成した後、直ちに第五指用指袋5を編成してもよい。或いは、第二指用指袋および第三指用指袋の編成を行った後に、襠部分を含む各指袋の付け根部分に筒状の三本胴の編地を編成し、その後に他の指袋の編成を行ってもよい。
【0033】
図1に示した実施例では、襠6を設けるために使用する編針の本数が増加し、靴下の足部8の幅が広くなるが、三本胴や四本胴の編成時に増加した襠相当分の幅を減らし目により減じて、足部8の幅を襠6がない状態まで減らしてもよい。例えは、襠の編み出し時に8目あった場合、2コースで1目減らし、徐々に1目ずつ減らし、1目にする。
【符号の説明】
【0034】
1 親指用指袋
1a 親指用指袋の編み出し部
1b 親指用指袋の付け根
2 第二指用指袋
2a 第二用指袋の編み出し部
3 第三指用指袋
4 第四指用指袋
5 第五指用指袋
6 襠
6a 襠の編み出し部
7 四本胴
8 足部
11 後側針床の針列
12 前側針床の針列
13 後側針床の編針
14 前後側針床の編針
15 編糸