(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱電モジュールに対して提供された前記第1の電力量が前記熱電モジュールのための最大電力量または略最大電力量である、請求項1から3のいずれか1項に記載の動作方法。
前記熱電モジュールに対して提供された前記第1の電力量は、前記熱電モジュールの性能係数が最大化された点または略最大化された点である、請求項1から3のいずれか1項に記載の動作方法。
前記第1の閾値は、前記熱電モジュールが前記第1の閾値より高い温度で動作されることによって損傷され得ることを示す、請求項1から5のいずれか1項に記載の動作方法。
前記熱電モジュールに対して前記第1の電力量を提供することが、前記熱電モジュールに対して第1の電流量を提供することを備え、前記熱電モジュールに対して前記第2の電力量を提供することが、前記熱電モジュールに対して第2の電流量を提供することを備えた、請求項1から7のいずれか1項に記載の動作方法。
前記熱電モジュールに対して前記第1の電力量を提供することが、前記熱電モジュールに対して第1の電圧量を提供することを備え、前記熱電モジュールに対して前記第2の電力量を提供することが、前記熱電モジュールに対して第2の電圧量を提供することを備えた、請求項1から7のいずれか1項に記載の動作方法。
前記熱電モジュールに対して前記第1の電力量を提供することが、1より多い熱電モジュールのサブセットに対して前記第1の電力量を提供することをさらに備え、前記熱電モジュールに対して前記第2の電力量を提供することが、前記熱電モジュールの少なくとも1つのサブセットに対して前記第1の電力量より小さい前記第2の電力量を提供することと、前記熱電モジュールの少なくとも1つの他のサブセットに対して前記第1の電力量を提供し続けることと、をさらに備えた、請求項1から11のいずれか1項に記載の動作方法。
少なくとも1つのプロセッサにおいて実行されるときに、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項1から12のいずれか1項に記載の前記動作方法を実行させる指令を備えた、コンピュータプログラム。
【発明の概要】
【0006】
熱電モジュールの排熱限度を緩和するためのシステム及び方法が開示される。いくつかの実施形態において、熱電モジュールの動作方法は、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供することと、熱電モジュールの高温側の温度が第1の閾値より高いことを決定することと、を含む。動作方法は、高温側の温度が第1の閾値より高いという決定に応じて、熱電モジュールに対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供することをさらに含む。動作方法は、熱電モジュールの高温側の温度が第2の閾値より低いことを決定することと、熱電モジュールに対して第3の電力量を提供することと、をさらに含む。いくつかの実施形態において、これは、特に熱電モジュールの高温側が受動的に冷却されるときに、熱電モジュールの排熱限度を緩和する。
【0007】
いくつかの実施形態において、第3の電力量は、第1の電力量と等しい。いくつかの実施形態において、第3の電力量は、第1の電力量と等しくない。
【0008】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールに対して提供された第1の電力量は、熱電モジュールのための最大電力量または略最大電力量である。いくつかの実施形態において、熱電モジュールに対して提供された第1の電力量は、熱電モジュールの性能係数が最大化された点または略最大化された点である。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の閾値は、熱電モジュールの高温側が飽和したことを示す。いくつかの実施形態において、第1の閾値は、熱電モジュールの高温側が第1の閾値より高い温度で動作されることによって損傷され得ることを示す。
【0010】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールは、冷却チャンバを冷却するように動作可能であり、熱電モジュールに対して提供された第2の電力量は、少なくとも冷却チャンバの温度が上昇しないような電力量である。
【0011】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供することは、熱電モジュールに対して第1の電流量を提供することを備え、熱電モジュールに対して第2の電力量を提供することは、熱電モジュールに対して第2の電流量を提供することを備える。いくつかの実施形態において、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供することは、熱電モジュールに対して第1の電圧量を提供することを備え、熱電モジュールに対して第2の電力量を提供することは、熱電モジュールに対して第2の電圧量を提供することを備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールの高温側は、受動的に冷却される。
【0013】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールは、冷却チャンバを冷却するように動作し、第1の電力量及び/または第2の電力量は、冷却チャンバの温度、熱電モジュールの高温側の温度、冷却チャンバの外部の環境の温度、及び/または性能指数のような熱電モジュールの電気的特性に基づいて決定される。
【0014】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供することは、1より多い熱電モジュールのサブセットに対して第1の電力量を提供することをさらに含み、熱電モジュールに対して第2の電力量を提供することは、熱電モジュールの少なくとも1つのサブセットに対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供することと、熱電モジュールの少なくとも1つの他のサブセットに対して第1の電力量を提供し続けることと、をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、熱電冷凍システムは、冷却チャンバ、熱交換器及びコントローラを含む。熱交換器は、低温側ヒートシンクと、高温側ヒートシンクと、低温側ヒートシンク及び高温側ヒートシンクの間に配置された熱電モジュールと、を含む。コントローラは、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供し、熱電モジュールの高温側の温度が第1の閾値より高いことを決定し、熱電モジュールに対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供し、熱電モジュールの高温側の温度が第2の閾値より低いことを決定し、熱電モジュールに対して第3の電力量を提供するように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールを動作させるためのコントローラは、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供し、熱電モジュールの高温側の温度が第1の閾値より高いことを決定し、熱電モジュールに対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供し、熱電モジュールの高温側の温度が第2の閾値より低いことを決定し、熱電モジュールに対して第3の電力量を提供するように適合される。
【0017】
いくつかの実施形態において、コンピュータプログラムは、少なくとも1つのプロセッサにおいて実行されるときに、少なくとも1つのプロセッサに本明細書に開示された1つの方法を実行させる指令を含む。いくつかの実施形態において、搬送波は、コンピュータプログラムを含み、搬送波は、電子的信号、光学的信号、無線信号またはコンピュータ可読記憶媒体の1つである。
【0018】
いくつかの実施形態において、熱電モジュールを動作させるためのコントローラは、電力提供モジュール及び温度決定モジュールを含む。電力提供モジュールは、熱電モジュールに対して第1の電力量を提供し、熱電モジュールに対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供し、熱電モジュールに対して第3の電力量を提供するように動作する。温度決定モジュールは、熱電モジュールの高温側の温度が第1の閾値より高いことを決定し、熱電モジュールの高温側の温度が第2の閾値より低いことを決定するように動作する。
【0019】
当業者は、添付図面と共に好適な実施形態に係る以下の詳細な説明を読んだ後、本開示の範囲を認識し、その付加的な態様を理解する。
【0020】
組み込まれて本明細書の一部を形成する添付図面は、本開示の様々な態様を示し、記載と共に、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に説明される実施形態は、当業者が実施形態を実施するのを可能とする必要な情報を示し、実施形態の実施の最良の態様を示す。添付図面を考慮して以下の説明を読むと、当業者は、本開示の概念を理解し、これらの概念の用途が特に本明細書に指定されるものではないことを理解する。これらの概念及び用途が、本開示及び添付された特許請求の範囲の範囲内にあることを理解されたい。
【0023】
本明細書において様々な要素を記載するために第1(first)、第2(second)等の語が使用され得るが、これらの要素は、これらの語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの語は、他から1つの要素を識別するためにのみ使用される。たとえば、本開示の範囲からの逸脱なく第1の要素は、第2の要素と称され得るものであり、同様に、第2の要素は第1の要素と称され得る。本明細書において使用されるように、「and/or」という語は、関連する記載されたアイテムの1つまたは複数の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0024】
「below」または「above」または「upper」または「lower」または「horizontal」または「vertical」のような相対語は、図に示されるような別の要素、層または領域に対する1つの要素、層または領域の関係を記載するために本明細書において使用され得る。これらの語及び上述されたものが図中に示された方向に加えて装置の異なる方向を包含することを意図することが理解される。
【0025】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、本開示を限定することを意図しない。本明細書において使用されるように、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他のことを示さない限り、複数形を同様に含むことを意図する。「comprises」、「comprising」、「includes」及び/または「including」という語は、本明細書において使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはその群の存在または付加を妨げないことがさらに理解される。
【0026】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての語(技術的及び科学的用語を含む)は、本開示の属する当業者の1人に通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において使用される語が本明細書及び関連する技術の文脈においてそれらの意味と一致した意味を有するものとして解釈されるべきであり、明確に本明細書において定義されない限り、理想化された、または過度に形式的な意味に解釈されるべきではないことがさらに理解される。
【0027】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、冷却チャンバ12と、低温側ヒートシンク20及び高温側ヒートシンク18の間に配置された少なくとも1つの熱電モジュール(TEM)22(本明細書において単数でTEM22または複数でTEM(TEMs)22と称される)を含む熱交換器14と、TEM22を制御するコントローラ16と、を有する熱電冷凍システム10を示す。冷却を提供するためにTEM22が使用されるとき、それは、時々熱電冷却器(TEC)22と称され得る。
【0028】
TEM22は、好適には薄いフィルム装置である。1つまたは複数のTEM22がコントローラ16によって起動されるとき、起動されたTEM22は、高温側ヒートシンク18を加熱し、低温側ヒートシンク20を冷却し、これにより、冷却チャンバ12から熱を引き出すための伝熱を容易にするように動作する。より詳細には、本開示のいくつかの実施形態によれば、1つまたは複数のTEM22が起動されるとき、高温側ヒートシンク18は加熱され、これにより蒸発器を形成し、低温側ヒートシンク20は冷却され、これにより凝縮器を形成する。
【0029】
凝縮器として機能し、低温側ヒートシンク20は、低温側ヒートシンク20と結合された受容ループ24を介した冷却チャンバ12からの除熱を容易とする。受容ループ24は、熱電冷凍システム10の内壁26に対して熱的に結合される。内壁26は、冷却チャンバ12を画定する。1つの実施形態において、受容ループ24は、内壁26内に一体化され、または、内壁26の表面において直接的に一体化される。受容ループ24は、冷媒(たとえば、2相クーラント)が受容ループ24を通して流れ、または通過するのを可能とする任意の形式の配管によって形成される。受容ループ24及び内壁26の熱的結合により、冷媒は、受容ループ24を通して冷媒が流れるときに冷却チャンバ12から熱を引き出す。受容ループ24は、たとえば、銅管、プラスチック管、ステンレス鋼管またはアルミニウム管等で形成されても良い。
【0030】
蒸発器として機能し、高温側ヒートシンク18は、高温側ヒートシンク18に対して結合された排出ループ28を介した冷却チャンバ12の外部の環境への排熱を容易とする。排出ループ28は、熱電冷凍システム10の外壁30または外肌に対して熱的に結合される。
【0031】
冷却チャンバ12から熱を取り除くための熱的及び機械的プロセスは、これ以上説明されない。さらに、
図1に示される熱電冷凍システム10がTEM22の使用及び制御の特定の実施形態にすぎないことに留意されたい。本明細書に記載の全ての実施形態は、TEM22の任意の他の使用と同様に熱電冷凍システム10に適用することを理解されたい。
【0032】
図1に示される例示的実施形態で続けると、コントローラ16は、冷却チャンバ12内の所望の設定点温度を維持するためにTEM22を制御するように動作する。概して、コントローラ16は、所望の設定点温度を維持するために、TEM22を選択的に起動/停止し、TEM22に提供された電力量を選択的に制御し、及び/またはTEM22のデューティサイクルを選択的に制御するように動作する。さらに、好適な実施形態において、コントローラ16は、分離して、または独立して1つまたは複数の、いくつかの実施形態において、2またはそれ以上のTEM22のサブセットを制御することを可能とされ、それぞれのサブセットは、1つまたは複数の異なるTEM22を含む。したがって、実施例のように、4つのTEM22が存在する場合、コントローラ16は、第1の個別のTEM22、第2の個別のTEM22、及び2つのTEM22の群を分離して制御することを可能とされても良い。この方法によって、コントローラ16は、要求を示すときに、たとえば、選択的に1つ、2つ、3つ、または4つのTEM22を独立して最大化された効率で起動できる。
【0033】
熱電冷凍システム10が例示的実施態様にすぎず、本明細書に開示されたシステム及び方法が他のシステムにも同様に適用可能であることに留意されたい。さらに、コントローラ16に対する特定の参照が本明細書においてなされるが、コントローラ16に起因する任意の機能が任意の他のコントローラまたは機構によって実現され得ることを理解されたい。
【0034】
手順の前に、TEM22に提供される電力量に対する冷却容量、及び、TEM22に提供される電力量に対する効率の簡潔な説明は有益となる。これに関し、
図2は、TECの入力電流に対するTECの冷却容量(Q)及び冷却効率を示すグラフである。冷却効率は、より詳細には性能係数(COP)によって示される。
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、様々な周囲温度の、TEM22の性能係数(COP)とTEM22に対して提供された電力量との間の関係を示す。TEM22に対して提供された電力量は、TEM22に対して提供された電流量、及び/または、TEM22に対して提供された電圧量として表現されても良い。TEM22に対して提供された電力量が増加するとき、TEM22の冷却容量も増加する。TEM22のための最大電力量の、または略最大電力量の電力量は、Q
maxとして示される。したがって、TEM22がQ
maxで動作するとき、TEM22は、可能な最大熱量を取り除く。
図2は、TEM22に対して提供される電力量に応じたTEM22のCOPを示す。冷却用途のため、TEM22のCOPは、除熱のためのTEM22に対する仕事量入力に亘る、取り除かれた熱の比率である。TEM22のCOPが最大化される熱量、または容量(Q)は、Q
COPmaxとして示される。したがって、TEM22の効率、またはCOPは、TEM22に対して提供される電力量がTEM22のCOPが最大化される点、または略最大化される点であるときに最大化される。
【0035】
TEM22のためのCOP曲線の形状は、動作周囲温度(冷却チャンバ12の外部の環境の温度またはTEM22が動作する環境の温度とも称される)、取り除かれる熱量、TEM22の低温側の温度(TEM22が冷却チャンバ12を冷却するために動作可能なときに冷却チャンバ12の温度と称されることもある)、TEM22の高温側の温度、(性能指数のような)TEM22の電気的特性、TEM22に対して提供される電力量のような変数に依存する。これらのシステムパラメータの1つが変化するとき、TEM22のCOP曲線が変化しても良く、したがって、1つまたは複数のシステムパラメータに基づいてTEM22のCOPを最大化し得る電力量が変化しても良い。
図2は、この1つの実施例を示す。セ氏温度18(℃)及び25℃に等しい周囲温度におけるTEM22のための2つのCOP曲線が示される。簡易性のため、他のシステムパラメータが固定される一方で周囲温度のみが変化する。この実施例において、周囲温度が18℃から25℃へと変化するとき、TEM22の全体のCOPは、減少する。特に、TEM22のCOPを最大化する電力量も増加する。TEM22のCOPを最大化する周囲温度と電力量との間の関係の線形近似を付与するトレンド線が示される。このトレンド線は、1つの実施例にすぎず、関係をモデルするまたは補間(または外挿)する他の手段が使用され得る。
【0036】
TEM22のCOPを最大化する正確な電力量は、変化され得る多くの要因に基づくため、TEM22のCOPを最大化する電力量において中央化される受け入れ可能な電力量の範囲が決定される。この範囲は、帯域とも称され、その帯域内の任意の電力量は、概してTEM22のCOPを最大化する電力量とみなされる。いくつかの実施形態において、帯域は、プラス10%またはマイナス10%TEM22のCOPを最大化する電力量であるが、これは、特定の実施態様であり、TEM22のCOPを最大化する電力量の決定及び/またはCOP曲線の形状の精度に依存し得る。
【0037】
TEM22を動作させるための最も効率的な方法は、TEM22のCOPを最大化する電力量を提供することであり、コントローラ16またはTEM22の制御のいくつかの他の手段は、1つまたは複数のシステムパラメータに基づいてTEM22のCOPを最大化する電力量の決定を探求する。このように、
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、TEM22の効率を増すためのTEM22の動作方法を示す。コントローラ16は、1つまたは複数のシステムパラメータに基づいてTEM22のCOPを最大化し得る第1の電力量を決定する(ステップ100)。上述のように、この決定は、多くの異なるパラメータに基づいても良い。いくつかの実施形態において、決定は、他のパラメータを一定または無視できるものと仮定すれば、周囲温度のような1つのパラメータにのみ基づく。いくつかの実施形態において、電力量は、ルックアップテーブルを参照することによって決定されても良い。コントローラ16は、次いでTEM22に対して第1の電力量を提供する(ステップ102)。このように、TEM22は、システムパラメータの現在値にとって最も効率的な方法で動作する。
【0038】
コントローラ16は、次いで、少なくとも1つのシステムパラメータが変化したかどうかを決定する(ステップ104)。いくつかの実施形態において、次いでチェックが周期的に実行されても良いが、一方で他の実施形態において、変化の決定がほとんど即時であっても良い。さらに、コントローラ16が電力量を決定するために全てよりも少ないシステムパラメータを用いる場合、次いで、コントローラ16は、任意の使用されないシステムパラメータがいつ変化したのかを決定する必要はない。少なくとも1つのシステムパラメータが変化したという決定に応じて、コントローラ16は、1つまたは複数のシステムパラメータに基づいてTEM22のCOPを最大化し得る第2の電力量を決定する(ステップ106)。コントローラ16は、次いでTEM22に対して第2の電力量を提供する(ステップ108)。このように、コントローラ16は、TEM22の動作の効率を増すためにTEM22に対して提供される電力量を更新することができる。いくつかの実施形態において、手順は、任意でステップ104へと戻り、1つまたは複数のシステムパラメータが変化した場合、コントローラ16は、再びTEM22のCOPを最大化し得る電力量を決定する。
【0039】
いくつかの実施形態において、更新された電力量は、1つまたは複数のシステムパラメータが変化したという決定を示すことなく、周期的にまたはその他の方法で計算されても良いことに留意されたい。さらに、システムパラメータに対する変化によって、第2の電力量は、第1の電力量と同じ、または略同じであっても良い。
【0040】
図3がTEM22の効率を増すためのTEM22の動作方法を示す一方で、
図4及び
図5は、
図1に示された実施例との関係で上述されたような1つまたは複数のTEM22を含み得る熱電冷凍システム10の動作方法を示す。特に、
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、電力がオンにされたときの、またはプルダウン動作の間の熱電冷凍システム10の動作方法を示す。
【0041】
本明細書において使用されるように、プルダウン動作は、冷却チャンバ12内の温度が受け入れ可能な温度より高く、コントローラ16が受け入れ可能な範囲へと温度を低下させるように動作する状況に関する。冷却チャンバ12のための所望の温度は、設定点温度と称される。定常状態動作は、冷却チャンバ12の温度が設定点温度を含む範囲内である状況に関する。この範囲は、動作状態の間の急速な振動を避けるためのヒステリシスの形式を提供する。いくつかの実施形態において、設定点温度は、4℃であっても良く、定常状態の範囲は、3℃から5℃であっても良い。より高い精度での設定点温度の維持が望まれる場合、したがって定常状態範囲はより小さくしても良い。動作状態の間の振動の比率の減少が望まれる場合、したがって定常状態の範囲はより小さくしても良い。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、
図4は、熱電冷凍システム10の電力オンまたはリセットにより開始する(ステップ200)。温度は電力オフにより、定常状態範囲より高くなり得るため、熱電冷凍システム10は、この電力オン、またはプルダウン動作の間のリセット状態で開始する。コントローラ16は、おそらく熱電冷凍システム10の前部のユーザインタフェースから、または、デバイスのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)から設定点レジスタを読み込み、設定点温度を決定させる(ステップ202)。コントローラ16は、次いで少なくとも1つのTEM22の温度制御及びΔTを計測する(ステップ204)。TEM22のΔTは、TEM22の高温側の温度とTEM22の低温側の温度との間の差に関する。コントローラ16は、周囲温度をさらに計測する(ステップ206)。コントローラ16は、実施態様により必要な任意の他のシステムパラメータを決定しても良い。
【0043】
コントローラ16は、次いでいくつかの実施形態による少しの安全チェックを実行する。コントローラ16は、周囲温度が4℃以上かどうかをチェックする(ステップ208)。周囲温度が4℃より低い場合、再び様々なシステムパラメータを計測するため、手順はステップ204に戻る。周囲温度が少なくとも4℃である場合、次いで、コントローラ16は、熱交換器の温度が最大限度以上かどうかを次いで決定する(ステップ210)。
【0044】
いくつかの実施形態において、この温度は、TEM22の高温側の温度と等しい。さらに、いくつかの実施形態において、単一の最大値を有する代わりに、温度が第1の閾値より高いかどうかの代わりのテストが存在し、次いで、TEM22の高温側が冷却されたとき、温度が第2の閾値より低いかどうかのテストが存在する。このように、ヒステリシスは、過熱状態へと任意に構築され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、第1の閾値は、TEM22の高温側が飽和し、いかなる付加的な熱も受け入れることができないことを示す。さらに、第1の閾値は、TEM22が第1の閾値より高い温度で動作されることによって損傷され得ることを示し得る。こうした高温は、冷却チャンバ12から大きな熱量が取り除かれたとき、または、TEM22がより劣った効率で動作されたときに生じ得る。TEM22の高温側における熱の蓄積は、熱交換器の取り出し側が、熱が生成されるより高速で熱を取り除くのに不十分なときに、さらに生じ得る。この状況は、TEM22の高温側が受動的に冷却されるときに生じ得る。
【0046】
過熱状態が検出されるとき、コントローラ16は、アラームを設定する(ステップ212)。このアラームは、実施形態によって多くの形式を取り得る。ある場合において、アラームは、単に内部状態であり、一方で他の場合において、ディスプレイ上に情報が示されても良く、または使用者は、その他の方法でアラームを通知されても良い。コントローラ16は、次いでTEM22に対する出力が可能とされたかどうかを決定する(ステップ214)。出力が可能とされていない場合、TEM22の動作によっていかなる熱も付加されないため、コントローラ16は、TEM22の高温側の温度低下のいかなる方法も有し得ない。この場合、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ204へと戻る。他の実施形態において、コントローラ16は、ファンのように能動的な装置を用いることによるような、TEM22の高温側の温度を低下させるための付加的な選択を有しても良い。
【0047】
出力が可能とされた場合、コントローラ16は、TEM22に対して提供される電力量が最小の電力レベルかどうかを決定する(ステップ216)。最小の電力レベルではない場合、コントローラ16は、出力を減少させることによってTEM22に対して提供される電力量を低減させる(ステップ218)。提供される現在の電力量が最小の電力レベルである場合、次いでコントローラ16は、出力を停止し、リセットを発行する(ステップ220)。いずれにせよ、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ204へと戻る。
【0048】
TEM22の高温側が過熱されていない場合、コントローラ16は、設定され得るいかなるアラームも解除する(ステップ222)。たとえば、解決されていない過熱状況のためアラームがあらかじめ設定されていた場合、次いでアラームは、ここで解除される。コントローラ16は、ここで冷却チャンバ12の温度が定常状態上限より高いかどうかを決定する(ステップ224)。温度が定常状態上限より高い場合、熱電冷凍システム10は、動作のプルダウンモードにあるとみなされる。
【0049】
冷却チャンバ12の温度が制御上限以上と決定される場合(ステップ226)、コントローラ16は、出力を100%に設定し、TEM22に対して、TEM22のための最大電力量または略最大電力量のTEM22への電力量を提供する(228)。このような方法において、熱電冷凍システム10は、いくつかの実施形態によって最速で冷却チャンバ12の温度を引き下げることができる。冷却チャンバ12の温度が制御上限より低いと決定される場合、コントローラ16は、比例モードに出力を設定する(ステップ230)。比例モードにおいて、冷却チャンバ12の温度は、より遅く、より効率的な方法で低下されても良い。いずれにせよ、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ204へと戻る。
【0050】
コントローラ16が冷却チャンバ12の温度が定常状態上限より低いと決定する場合、次いでコントローラ16は、出力が可能とされたかどうかを決定する(ステップ232)。出力が可能とされていない場合、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ204へと戻る。出力が可能とされる場合、熱電冷凍システム10は、定常状態モードで動作されるものとみなされ、手順は、本開示のいくつかの実施形態による、略定常状態動作の熱電冷凍システム10の動作方法を示す
図5において継続する。
【0051】
図5に示されるように、コントローラ16は、少なくとも1つのTEM22の温度制御及びΔTを計測する(ステップ300)。実施態様によって、コントローラ16は、周囲温度のような、必要な任意の他のシステムパラメータをさらに決定する。再び、コントローラ16は、熱交換器の温度が最大限度以上どうかを決定する(ステップ302)。TEM22に提供される電力量が最小電力レベルではない場合(ステップ304)、コントローラ16は、出力を減少させることによってTEM22に対して提供される電力量を低減させる(306)。提供される現在の電力量が最小電力レベルである場合、次いでコントローラ16は、出力を停止させ、リセットを発行する(ステップ308)。いずれにせよ、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ300へと戻る。
【0052】
TEM22の高温側が過熱されていない場合、コントローラ16は、冷却チャンバ12の温度が設定点温度より高いかどうかをチェックする(ステップ310)。冷却チャンバ12の温度が設定点温度より低い場合、コントローラ16は、ここで冷却チャンバ12の温度が定常状態限度以下であるかどうか、出力がオンであるかどうか、及び、ΔTが現在の帯域内かどうかを決定する(ステップ312)。これら全てが真である場合、コントローラ16は、TEM22を停止し、0.xボルトへと出力を低減させ、この値を新しい定常状態出力値に記憶させ、以前の値を古い定常状態出力値に記憶させる(ステップ314)。これらの全ての状態が真ではない場合、次いで手順はステップ304へと戻り、TEM22に対して提供される電力量を低減させることを試みる。
【0053】
冷却チャンバ12の温度が設定点温度より高い場合、コントローラ16は、冷却チャンバ12の温度がさらに定常状態限度以上かどうかを決定する(ステップ316)。チャンバの温度が定常状態限度より低い場合、コントローラは、タイマー割り込みが設定されたかどうかを決定する(ステップ318)。それが設定された場合、コントローラ16は、古い定常状態出力に対する出力を設定する(ステップ320)。この後、または、それが設定されていない場合、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ300へと戻る。
【0054】
冷却チャンバ12の温度が定常状態限度以上である場合、コントローラ16は、チャンバの温度が制御上限以上かどうかを決定する(ステップ322)。チャンバが制御上限以上である場合、コントローラ16は、出力を100%へと設定し、TEM22に対してTEM22のための最大電力量または略最大電力量の電力量を提供する(ステップ324)。これは、熱電冷凍システム10が動作のプルダウンモードにあるとみなされることを示し、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順は
図4のステップ204へと戻る。
【0055】
チャンバが制御上限未満である場合、コントローラ16は、冷却チャンバ12の温度がヒステリシス値以上かどうかを決定する(ステップ326)。そうではない場合、コントローラ16は、新しい定常状態出力値へと出力を増加させ(ステップ328)、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順はステップ300へと戻る。いくつかの実施形態によれば、この新しい定常状態出力値は、1つまたは複数のシステムパラメータに基づいてTEM22のCOPを最大化させ得る電力量であっても良い。冷却チャンバ12の温度がヒステリシス値以上である場合、これは、熱電冷凍システム10が動作のプルダウンモードにあるとみなされることを再び示し、様々なシステムパラメータを再び計測するため、手順は
図4のステップ204へと戻る。
【0056】
上述のように、TEM22または熱交換器の過熱は、望まない動作を引き起こしまたはTEM22にとって危険となり得る。このように、
図4のステップ210及び
図5のステップ302の両方は、こうした過熱状態をチェックする。
図4及び
図5が電力を低減させ且つTEM22を停止することによって、TEM22の温度の低下を試みる一方で、これは、いくつかの状況において望ましくなくまたは非効率となり得る。このように、
図6は本開示のいくつかの実施形態による、TEM22の高温側の温度を低下させるためのTEM22の動作方法を示す。
【0057】
コントローラ16は、まずTEM22に対して第1の電力量を提供する(ステップ400)。コントローラ16は、次いでTEM22の高温側の温度が第1の閾値より高いかどうかを決定する(ステップ402)。あらかじめ記載されたように、いくつかの実施形態において、第1の閾値は、TEM22の高温側が飽和し、いかなる付加的な熱も受け入れることができないことを示す。さらに、第1の閾値は、TEM22が第1の閾値より高い温度で動作されることによって損傷され得ることを示し得る。温度が第1の閾値より高くない場合、コントローラ16は、第1の電力量を提供し続け、または過熱を含まない任意の他の制御法にしたがって動作する。TEM22の高温側の温度が第1の閾値より高い場合、コントローラ16は、TEM22に対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供する(ステップ404)。いくつかの実施形態において、この低減された電力は、TEM22の高温側の温度がTEM22を動作しながら低下するのを可能とする。
【0058】
いくつかの実施形態において、コントローラ16は、次いでTEM22の高温側の温度が第2の閾値より低いかどうかを決定する(ステップ406)。これは、TEM22が十分に冷却されたこと及びもはや飽和していないことを示す。いくつかの実施形態において、コントローラ16は、次いでTEM22に対して第1の電力量と等しくなり得るが必ずしも等しくなくても良い、第3の電力量を提供する。
図6は、手順がステップ400へと戻り、再び第1の電力量を提供する実施形態を示す。TEM22に対して提供される電力を増加させることによって、付加的な熱が伝達可能となる。
【0059】
いくつかの実施形態において、TEM22に対して提供される第1の電力量は、TEM22のための最大電力量または略最大電力量である。これは、設定点温度に至るため、熱電冷凍システム10が可能な限り急速に熱を取り除こうとするときの動作のプルダウンモードの場合に生じ得る。いくつかの実施形態において、TEM22に対して提供される第1の電力量は、TEM22のCOPが最大化される点、または略最大化される点である。これは、熱電冷凍システム10が最も効率的に熱を取り除こうとするときの動作の定常状態モードの場合に生じ得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、TEM22に対して提供される第2の電力量は、TEM22のCOPが最大化される点、または略最大化される点である。いくつかの実施形態において、TEM22に対して提供される第2の電力量は、少なくとも冷却チャンバ12の温度が上昇しないような電力量である。あらかじめ上述したように、いくつかの実施形態において、これは、特にTEM22の高温側が受動的に冷却されるときにTEM22の排熱限度を緩和する。
【0061】
図7は、本開示のいくつかの実施形態による、
図6の方法に係る1つの可能な実施態様を示す。
図7は、3つの線を含む。上部は、TEM22の排出側(高温側)の温度をプロットする。底部の線は、TEM22の低温側の温度をプロットする。中間線は、TEM22に対して電圧が付与されるときにTEM22に対して提供される電力をプロットする。プロットの開始において、TEM22の高温側及び低温側の温度は類似する。これは、熱電冷凍システム10が単に電力がオンにされたことまたは十分に長く開放されたままであるような、いくつかの他の理由のためプルダウンモードにあることを示し得る。
【0062】
開始において、コントローラ16は、TEM22に対して第1の電圧を提供する。この実施例において、TEM22の高温側の温度は、TEM22の低温側の温度が低下する間に上昇する。この実施例において、TEM22の高温側の温度のための第1の閾値は、50℃である。コントローラ16がTEM22の高温側の温度が50℃に至ったと決定するとき、コントローラ16は、電力を低減させ、TEM22に対して第1の電力量より小さい第2の電力量を提供する。このため、より小さい熱がTEM22の高温側に対してポンプ駆動され、冷却を開始する。さらに、TEM22の低温側の温度は、その低下を遅くされ、またはわずかに上昇されても良い。この電力量は、コントローラ16がTEM22の高温側が十分に冷却されたと決定するまでTEM22に対して提供される。
【0063】
コントローラ16がTEM22の高温側の温度が第2の閾値より低いと決定するとき、コントローラ16は、TEM22に対して第1の電力量を再び提供する。これは、TEM22の高温側を再び過熱させるが、TEM22の低温側は、ここでTEM22の高温側が最後に飽和したときより低温になる。コントローラ16は、TEM22の排熱限度を緩和しつつ、冷却チャンバ12の温度の急速なプルダウンを提供するように2つの電力の間で実行するこの動作を継続することができる。これは、TEM22の高温側が受動的に冷却されるときに特に有益となり得る。この実施例は2つの異なる電力量のみを示すが、本方法はそれに限定されない。いくつかの実施形態において、より大きい電力量またはより小さい電力量は、TEM22のCOPが最大化される点、または略最大化される点となり得るものであり、この値は、システムパラメータに基づいて回ごとに再計算されても良い。
【0064】
言い換えれば、これが熱サイフォンに基づいたシステムである場合、低温側の温度は、断熱されたチャンバ(たとえば、冷却チャンバ12)に固定される。高温側における放熱が飽和し、低温側の温度のさらなる低下が停止される点において、TEM22に対する電力は、低温側の温度のいかなる上昇をも緩和するレベルへと折り返されるが、高温側の温度が低下するのを可能とする。これは、低温側の断熱及びその高温側に亘る改良された熱的安定性を利用する。電力は、さらなる排熱を可能とし得る点まで高温側の温度が低下されるまで低減されて保持される。この点に至るとき、TEM22の電力は増加され、もう一度飽和へと高温側または放熱が増す。しかしながら、今回の間、高温側の温度がより下の点で開始するため、低温側の温度は低下する。電力及び温度のこのサイクルは、高温側周りの自然対流を増加させるためにかなり小さなポンプ駆動効果を形成するように多数回繰り返され得るものであり、さらなる全体の熱が放熱されるのを可能とし、低温側がその設定点温度へと低下するのを可能とする。
【0065】
図8は、本開示のいくつかの実施形態による、電力決定モジュール32、電力提供モジュール34及びシステムパラメータ決定モジュール36を含むTEM22を動作するためのコントローラ16の概略図である。電力決定モジュール32、電力提供モジュール34及びシステムパラメータ決定モジュール36は、コントローラ16のプロセッサによって実行されるときにソフトウェアにおいてそれぞれ実現され、コントローラ16を本明細書に記載の実施形態の1つによって動作させる。
【0066】
図9は、本開示のいくつかの実施形態による、電力提供モジュール38と温度決定モジュール40とを含む、TEM22を動作するためのコントローラ16の別の概略図を示す。電力提供モジュール38及び温度決定モジュール40は、コントローラ16のプロセッサによって実行されるときにコントローラ16に本明細書に記載の実施形態の1つによって動作させるソフトウェアにおいてそれぞれ実現される。
【0067】
当業者は、本開示の好適な実施形態に対する改良及び変更を理解する。こうした改良及び変更の全ては、本明細書及び以下の特許請求の範囲に開示された概念の範囲内とみなされる。