特許第6677791号(P6677791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677791
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】腕時計
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/08 20060101AFI20200330BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20200330BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20200330BHJP
   G08B 21/18 20060101ALI20200330BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   G08B25/08 A
   G08B25/04 K
   G08B25/00 510M
   G08B21/18
   H04M11/04
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-241045(P2018-241045)
(22)【出願日】2018年12月25日
(62)【分割の表示】特願2014-224448(P2014-224448)の分割
【原出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2019-75151(P2019-75151A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】304035908
【氏名又は名称】株式会社アールエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】丸山 次郎
【審査官】 藤江 大望
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3110219(JP,U)
【文献】 特開2002−040175(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0160078(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0078694(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0282884(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0212339(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00−31/00
H04M3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が腕に装着する腕時計であって、
使用者に対する異常事態の発生を判定するための判定情報を取得する取得部と、
通知先と通信する通信部と、
前記判定情報に基づいて前記異常事態が発生しているか否かを判定し、前記異常事態が発生している時、前記異常事態の発生を示す異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信する制御部と、
前記腕時計の本体ケースにおいて使用者の腕に沿うように湾曲した部分にあり、時刻を表示する表示部と、
前記本体ケースの湾曲した部分において前記腕時計を装着する使用者から見て前記表示部の上側にあり、撮像方向が上側に傾斜する第1撮像部と、
前記本体ケースの湾曲した部分において前記腕時計を装着する使用者から見て前記表示部の下側にあり、撮像方向が下側に傾斜する第2撮像部と
を有することを特徴とする腕時計。
【請求項2】
前記本体ケースの湾曲した部分において、前記腕時計を装着する使用者から見て前記第2撮像部の下側にある第1ボタンを有し、
前記制御部は、前記第1ボタンが押されると、前記異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信することを特徴とする請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記本体ケースの側面にある設定操作のための第2ボタンを有し、
前記第1ボタンは、前記第2ボタンよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の腕時計。
【請求項4】
前記本体ケースの湾曲した部分において、前記腕時計を装着する使用者から見て前記第1撮像部の上側にあり、音声を出力する音声出力部を有し、
前記制御部は、前記通知先から送信された音声出力の指示情報を前記通信部が受信した時、前記指示情報に応じた音声を前記音声出力部から出力させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の腕時計。
【請求項5】
前記第1撮像部の撮像方向と前記第2撮像部の撮像方向とは、45度の角度で交わることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の腕時計。
【請求項6】
前記腕時計を装着する使用者から見て前記第1撮像部の側方にあり、前記第1撮像部の撮像を補助する第1点灯部と、
前記腕時計を装着する使用者から見て前記第2撮像部の側方にあり、前記第2撮像部の撮像を補助する第2点灯部と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の腕時計。
【請求項7】
前記取得部は、前記腕時計の位置情報を取得
前記腕時計は、使用者が辿るべきルートが登録されるメモリを有し
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報と前記メモリに登録されたルートとに基づいて異常事態の発生の有無を判定し、異常事態が発生したと判定すると、異常事態の発生を示す異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の腕時計。
【請求項8】
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報によるルートと前記メモリに登録されたルートとのずれに基づき、異常事態の発生の有無を判定することを特徴とする請求項7に記載の腕時計。
【請求項9】
前記メモリには、使用者が辿るべきルートの各地点の通過時刻が登録され、
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報に基づく前記各地点の通過時刻と、前記メモリに登録された前記各地点の通過時刻とのずれに基づき、異常事態の発生の有無を判定することを特徴とする請求項7又は8に記載の腕時計。
【請求項10】
前記取得部は、前記腕時計の位置情報を取得し、
使用者が辿るべきルート、および使用者が辿るべきルートの各地点の通過時刻が登録されるメモリと、
使用者の脈拍数を取得する脈拍数取得部と、
前記腕時計の外部の音を取得する音取得部と、を有し、
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報によるルートと前記メモリに登録されたルートとのずれが基準レベルを超えると異常事態の発生と判定し、または、前記取得部が取得する位置情報に基づく前記各地点の通過時刻と、前記メモリに登録された使用者が辿るべきルートの前記各地点の通過時刻とのずれが基準レベルを超える場合に異常事態の発生と判定し、
前記脈拍数取得部が取得する使用者の脈拍数の変化のパターンと、前記メモリに登録される基準のパターンとのずれが、前記メモリに登録される基準レベルを超える場合に異常事態の発生と判定し、
前記音取得部が取得する前記腕時計の外部の音量が、前記メモリに登録される基準レベルを超える場合に異常事態の発生と判定し、
前記ルートの前記基準レベル、脈拍の前記基準レベル、および音量の前記基準レベルは、複数のレベルの中から受け付けたレベルに一括して登録することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の腕時計。
【請求項11】
前記ルートは、登校ルートおよび下校ルートであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一つに記載の腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防犯機能を有する腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な防犯装置として、異常事態が発生した際に使用者が操作することで大音量の音を出力する防犯ブザーが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−078192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防犯ブザーでは、緊急に異常事態が発生する場合、音を出力するための操作が間に合わず、音を出力できないおそれがある。また、従来の防犯ブザーでは、大音量を出力しても周囲に人がおらず、異常事態の発生を誰にも伝えることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、使用者に発生した異常事態をより確実に伝えることができる機能を備えた腕時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)使用者が腕に装着する腕時計であって、
前記使用者に対する異常事態の発生を判定するための判定情報を取得する取得部と、
通知先と通信する通信部と、
前記判定情報に基づいて前記異常事態が発生しているか否かを判定し、前記異常事態が発生している時、前記異常事態の発生を示す異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信する制御部と、
前記腕時計の本体ケースにおいて前記使用者の腕に沿うように湾曲した部分にあり、時刻を表示する表示部と、
前記本体ケースの湾曲した部分において前記腕時計を装着する使用者から見て前記表示部の上側にあり、撮像方向が上側に傾斜する第1撮像部と、
前記本体ケースの湾曲した部分において前記腕時計を装着する使用者から見て前記表示部の下側にあり、撮像方向が下側に傾斜する第2撮像部と
を有することを特徴とする腕時計。
(2)
前記本体ケースの湾曲した部分において、前記腕時計を装着する使用者から見て前記第2撮像部の下側にある第1ボタンを有し、
前記制御部は、前記第1ボタンが押されると、前記異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信することを特徴とする(1)に記載の腕時計。
(3)
前記本体ケースの側面にある設定操作のための第2ボタンを有し、
前記第1ボタンは、前記第2ボタンよりも大きいことを特徴とする(2)に記載の腕時計。
(4)
前記本体ケースの湾曲した部分において、前記腕時計を装着する使用者から見て前記第1撮像部の上側にあり、音声を出力する音声出力部を有し、
前記制御部は、前記通知先から送信された音声出力の指示情報を前記通信部が受信した時、前記指示情報に応じた音声を前記音声出力部から出力させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の腕時計。
(5)
前記第1撮像部の撮像方向と前記第2撮像部の撮像方向とは、45度の角度で交わることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載の腕時計。
(6)
前記腕時計を装着する使用者から見て前記第1撮像部の側方にあり、前記第1撮像部の撮像を補助する第1点灯部と、
前記腕時計を装着する使用者から見て前記第2撮像部の側方にあり、前記第2撮像部の撮像を補助する第2点灯部と、を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一つに載の腕時計。
(7)
使用者が腕に装着する腕時計であって、
前記腕時計の位置情報を取得する取得部と、
通知先と通信する通信部と、
前記使用者が辿るべきルートが登録されるメモリと、
前記取得部が取得する位置情報と前記メモリに登録されたルートとに基づいて異常事態の発生の有無を判定し、異常事態が発生したと判定すると、異常事態の発生を示す異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信する制御部と、
を有することを特徴とする腕時計。
(8)
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報によるルートと前記メモリに登録されたルートとのずれに基づき、異常事態の発生の有無を判定することを特徴とする(7)に記載の腕時計。
(9)
前記メモリには、使用者が辿るべきルートの各地点の通過時刻が登録され、
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報に基づく前記各地点の通過時刻と、前記メモリに登録された前記各地点の通過時刻とのずれに基づき、異常事態の発生の有無を判定することを特徴とする(7)又は(8)に記載の腕時計。
(10)
使用者の脈拍数を取得する脈拍数取得部と、
前記腕時計の外部の音を取得する音取得部と、を有し、
前記制御部は、前記取得部が取得する位置情報によるルートと前記メモリに登録されたルートとのずれが基準レベルを超えると異常事態の発生と判定し、または、前記取得部が取得する位置情報に基づく前記各地点の通過時刻と、前記メモリに登録された使用者が辿るべきルートの各地点の通過時刻とのずれが基準レベルを超える場合に異常事態の発生と判定し、
前記脈拍数取得部が取得する使用者の脈拍数の変化のパターンと、前記メモリに登録される基準のパターンとのずれが、前記メモリに登録される基準レベルを超える場合に異常事態の発生と判定し、
前記音取得部が取得する前記腕時計の外部の音量が、前記メモリに登録される基準レベルを超える場合に異常事態の発生と判定し、
前記ルートの前記基準レベル、脈拍の前記基準レベル、および音量の前記基準レベルは、複数のレベルの中から受け付けたレベルに一括して登録することを特徴とする(7)に記載の腕時計。
(11)
前記ルートは、登校ルートおよび下校ルートであることを特徴とする(7)〜(10)のいずれか一つに記載の腕時計。 実施形態のウェアラブル端末は、使用者が装着するウェアラブル端末であって、前記使用者に対する異常事態の発生を判定するための判定情報を取得する取得部と、所定の通知先と通信する通信部と、前記判定情報に基づいて前記異常事態が発生しているか否かを判定し、前記異常事態が発生している時、前記異常事態の発生を示す異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信する制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
実施形態のウェアラブル端末では、子供等の使用者に異常事態が急に発生した場合でも、制御部が、取得部が取得する判定情報に基づいて使用者に対する異常事態の発生を判定する。そして、制御部が異常事態の発生を示す異常発生情報を、保護者等の通知先に自動的に送信するので、実施形態では、使用者の手動による操作なしに通知先の人間に異常事態の発生を伝えることができる。
【0008】
実施形態は、前記使用者の応答を要請する応答要請情報の出力の指示情報を前記通知先から前記通信部が受信した時、前記応答要請情報を前記使用者に報知する報知部と、前記応答要請情報に対する応答情報を前記使用者の操作によって入力するための第1入力部と、を有し、前記制御部は、前記第1入力部に前記応答情報が入力された時、前記応答情報を前記通知先に前記通信部を介して送信してもよい。
【0009】
実施形態では、「大丈夫?」等の使用者の応答を要請する応答要請情報の出力の指示情報を通知先から通信部が受信する時、報知部が「大丈夫?」等の応答要請情報を、テキスト表示したり音声メッセージとして出力したりすることにより使用者に報知する。応答要請情報に対する「大丈夫だよ」等の応答情報を使用者が第1入力部に入力すると、制御部は、応答情報を通知先に送信する。実施形態によれば、保護者等の通知先が使用者の安否を確認できる。
【0010】
実施形態は、音声を出力する音声出力部を有し、前記制御部は、前記通知先から送信された音声出力の指示情報を前記通信部が受信した時、前記指示情報に応じた音声を前記音声出力部から出力させてもよい。
【0011】
実施形態によれば、保護者等の通知先が異常発生情報を受信した際に、子供等の使用者のウェアラブル端末から例えば「大丈夫?」、「現場に直行する!!」、「助けて!!」等の音声を出力させることができ、使用者の応答を待ったり、使用者を襲う犯人を使用者から遠ざけるようにしたり、周囲の人に助けを求めることができる。
【0012】
実施形態では、前記判定情報は、前記ウェアラブル端末の位置を示す位置情報、前記使用者の脈拍数を示す情報、前記ウェアラブル端末の加速度を示す情報、および前記ウェアラブル端末の外部の音を示す情報の少なくとも1つであってもよい。
【0013】
実施形態によれば、制御部は、例えば位置情報に基づいて、子供等の使用者の登校ルートや下校ルートが設定されたルートから一定以上ずれた場合に異常事態が発生していると判定する。あるいは、制御部は、使用者の腕の加速度を示すウェアラブル端末の加速度や、外部の音量が、通常起こりえない値をとった場合に異常事態の発生と判定する。あるいは、制御部は、例えば脈拍数の変化が通常起こりえないパターンを示した時、異常事態が発生していると判定する。ウェアラブル端末が例えばこのように構成されることにより、制御部は、使用者に異常事態が発生しているか否かを自動的に判定できる。
【0014】
実施形態は、前記ウェアラブル端末の外部を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した画像を記憶するメモリ部と、を有し、前記制御部は、前記異常事態が発生している時、前記メモリ部に記憶された前記画像を前記通知先に前記通信部を介して送信してもよい。
【0015】
実施形態は、前記ウェアラブル端末の外部の音を取得する音取得部と、前記音取得部が取得した音を記憶するメモリ部と、を有し、前記制御部は、前記異常事態が発生している時、前記メモリ部に記憶された前記音の情報を前記通知先に前記通信部を介して送信してもよい。
【0016】
実施形態によれば、制御部は、通知先に異常発生情報を送信する際に、使用者を襲ったりした犯人の画像や、犯人との会話を送ることができる。また、実施形態では、犯人がウェアラブル端末を使用者から剥ぎ取ったり壊したりする場合、制御部が自動的に異常事態の発生と判定することができるので、ウェアラブル端末が剥ぎ取られたり壊されたりする前に犯人の画像や犯人との会話を通知先に送ることができる。
【0017】
実施形態は、前記異常発生情報を前記使用者の操作によって入力するための第2入力部を有し、前記制御部は、前記第2入力部に前記異常発生情報が入力された時、前記異常発生情報を前記通知先に前記通信部を介して送信してもよい。
【0018】
実施形態によれば、使用者が周辺に不安を感じた際等に第2入力部を操作することで、通知先に異常発生情報を通知でき、通知先に助けを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ウェアラブル端末の斜視図である。
図2】撮像部の傾斜角度を説明するためのウェアラブル端末の断面図である。
図3】ウェアラブル端末の機能ブロック図である。
図4】登校ルートおよび下校ルートにおける各設定を示す図である。
図5】異常事態を判断するための各基準レベルの設定を示す図である。
図6】通知先の設定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、ウェアラブル端末1の斜視図である。
ウェアラブル端末1は、子供等の使用者の腕に装着される。ウェアラブル端末1は、時刻の表示機能に加え、防犯機能を有する。なお、時刻の表示機能を有していなくてもよい。ウェアラブル端末1は、使用者に対する異常事態の発生を自動的に検知し、該異常事態の発生を、子供の保護者等が使用する通信端末9(図3)に通知する。以下、ウェアラブル端末1の各機能を簡単に説明した後、各機能を用いたウェアラブル端末1の防犯機能を詳述する。
【0021】
ウェアラブル端末1は、表示部21が設けられる本体ケース2、および本体ケース2に接続して使用者の腕に巻かれるベルト3を備える。本体ケース2は、使用者の腕に沿うように湾曲している。
【0022】
ウェアラブル端末1は、表示部21、音取得部22、撮像部23、点灯部24、音声出力部25、第1入力部26、および第2入力部27を備える。
【0023】
表示部21は、本体ケース2の表面201にあり、本体ケース2内の後述する制御部44(図3)による制御の下、時刻やメッセージを表示する。なお、本体ケース2の表面201とは、ウェアラブル端末1が使用者に装着された際に外側を向く本体ケース2の外面を指し、本体ケース2の裏面は、ウェアラブル端末1が使用者に装着された際に内側を向く本体ケース2の外面を指す。
【0024】
音取得部22は、本体ケース2の表面201において表示部21の下側にある。音取得部22は、ウェアラブル端末1の外部の音を取得し、取得した音の情報を制御部44に出力する。なお、本実施形態において、本体ケース2の表面201において下側とは、本体ケース2の表面201に沿った平面方向において、ウェアラブル端末1の装着時に使用者から見て下側となる向きを意味し、本体ケース2の表面201において上側とは、ウェアラブル端末1の装着時に使用者から見て上側となる向きを意味する。同様に、本体ケース2の表面201において左側とは、ウェアラブル端末1の装着時に使用者から見て左側となる向きを意味し、本体ケース2の表面201において右側とは、ウェアラブル端末1の装着時に使用者から見て右側となる向きを意味する。
【0025】
撮像部23は、本体ケース2の表面201において表示部21を上下に挟む位置にある。撮像部23は、ウェアラブル端末1の外部の画像を撮像し、撮像した画像情報を制御部44に出力する。撮像部23として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を用いることができる。図2に示すように、上側の撮像部23は上側に、下側の撮像部23は下側に傾斜する。各撮像部23は、図2にて一点鎖線で示す撮像方向(撮像部23の光軸)が本体ケース2の内側で45度の角度で交わるように傾斜する。これにより、使用者の周囲の画像を両撮像部23によって幅広く撮像できる。なお、各撮像部23の傾斜角度は任意である。
【0026】
図1に戻って、点灯部24は、本体ケース2の表面201において各撮像部23の左右にあり、LED(Light Emitting Diode)によって構成される。点灯部24として、小型の電球を用いてもよい。点灯部24は、撮像部23による撮像を補助するためのものであり、例えばウェアラブル端末1の周囲の明るさに基づいて点灯するように制御部44に制御される。
【0027】
音声出力部25は、本体ケース2の表面201において表示部21より上側にあり、制御部44による制御の下、音声を出力する。
【0028】
第1入力部26は、本体ケース2の右側面202にあり、ボタンによって構成される。第1入力部26は、使用者の押し操作による入力を受け付け、受け付けた操作情報を制御部44に出力する。第1入力部26は、時刻等の設定のために用いられる。
【0029】
第2入力部27は、本体ケース2の表面201において表示部21より下側にあり、ボタンによって構成される。第2入力部27は、本体ケース2の右側面202にある第1入力部26より大きくなっており、押しやすくなっている。第2入力部27は、使用者の押し操作による入力を受け付け、受け付けた操作情報を制御部44に出力する。第2入力部27は、後述するが、緊急時に通知先に異常事態の発生を通知するために用いられる。
【0030】
なお、ウェアラブル端末1の時刻表示モードのデフォルトの設定モードは、設定画面等を表示していない通常時には時刻表示を行う通常表示モードになっているが、ウェアラブル端末1は、時計禁止に対応した時刻表示禁止モードにも設定できるようになっている。時刻表示禁止モードでは、ウェアラブル端末1は、通常時は時刻表示を行わず、第1入力部26による時刻合わせ操作など、第1、第2入力部26、27を操作した際にのみ時刻表示を行う。
【0031】
使用者の腕に触れるベルト3の裏面301には、脈拍数取得部31が設けられる。
脈拍数取得部31は、使用者の脈拍数を取得する。脈拍数取得部31は、使用者の脈拍数を取得できればどのようなセンサーで構成されていてもよく、また、脈拍数取得部31の位置も任意である。脈拍数取得部31は、測定した脈拍数の測定情報を制御部44に出力する。例えば、脈拍数取得部31は、圧電式の脈拍センサーで構成されていてもよい。この場合、脈拍数取得部31は、テープ等によって使用者の腕部等に接触した状態で固定され、測定情報を有線や無線により本体ケース2内の制御部44に送信してもよい。この場合、制御部44は、脈拍数取得部31が取得する測定情報に基づいて脈拍数を取得できる。
【0032】
また、脈拍数取得部31を光学式の脈拍センサーで構成する場合、脈拍数取得部31は、本体ケース2の裏面に設けられ、使用者の腕の血管に光を照射し、反射光を受光してもよい。この場合、制御部44は、脈拍数取得部31が取得する反射光の測定情報に基づいて血流の変化を解析することで脈拍数を取得できる。
【0033】
図3は、ウェアラブル端末1の機能ブロック図である。
ウェアラブル端末1は、上述した各部の他、位置情報取得部41、加速度取得部42、メモリ部43、制御部44、通信部45、および電源部46を備える。
【0034】
位置情報取得部41は、本体ケース2内に収容され、ウェアラブル端末1の位置情報を取得する。位置情報取得部41は、例えば、GPS衛星から信号を受信するGPS(Global Positioning System)アンテナによって構成される。制御部44は、位置情報取得部41がGPS衛星から受信する信号に基づいてウェアラブル端末1の位置情報(経度、緯度)を取得できる。また、制御部44は、後述する通信部45を介して携帯電話の基地局から取得する情報を用いてウェアラブル端末1の位置情報を取得してもよい。この場合、通信部45は位置情報取得部41を兼ねる。
【0035】
加速度取得部42は、本体ケース2内に収容され、ウェアラブル端末1の加速度を取得する。後述するが、ウェアラブル端末1の加速度は、使用者の腕の動きを示すものとして使用され、使用者に対する異常事態の発生を判定するために用いられる。加速度取得部42は、測定した加速度情報を制御部44に出力する。
【0036】
メモリ部43は、本体ケース2内に収容され、制御部44による各種の制御に必要なプログラムや情報を記憶する。メモリ部43は、制御部44による制御の下、位置情報取得部41が取得する位置情報、撮像部23が取得する撮像画像、音取得部22が取得する音、加速度取得部42が取得する加速度、脈拍数取得部31が取得する脈拍数を、それらの情報が取得された時刻に関連付けて記憶する。
【0037】
制御部44は、本体ケース2内に収容され、入力された情報を処理、解析し、ウェアラブル端末1全体の動作を制御する。
【0038】
通信部45は、本体ケース2内に収容されるアンテナを備え、制御部44による制御の下、使用者の保護者等が使用する通信端末9との間で無線通信を行う。通信部45は、インターネットに接続してデータ通信を行うことが可能であるとともに、携帯電話網を用いてSMS(Short Message Service)を利用可能であるものとする。
【0039】
電源部46は、本体ケース2内に収容され、制御部44による制御の下、ウェアラブル端末1の各部に電力を供給する。
【0040】
以下、ウェアラブル端末1の防犯機能を詳述する。以下では、ウェアラブル端末1の使用者を子供とし、ウェアラブル端末1は、異常事態の発生を保護者の通信端末9等の通知先に通知するものとする。子供または保護者等は、ウェアラブル端末1に防犯機能を持たせる前に以下の設定(A)〜(C)を行う必要がある。
【0041】
(A)子供または保護者等は、子供に対する異常事態の発生をウェアラブル端末1が位置情報を用いて判定する際の基準として、メモリ部43に、子供の登校ルート、下校ルート、登校ルートおよび下校ルートの各地点の通過時刻を設定する(図4)。設定方法としては、例えば、子供が登校および下校する際の登校ルート、下校ルート、それら各ルートの各地点の通過時刻をウェアラブル端末1に複数回記録し、最もよく通るルートを登校ルートおよび下校ルートとして設定するとともに、各ルートの各地点の平均通過時刻を各地点の通過時刻として設定してもよい。
【0042】
該設定は、子供または保護者等が、本体ケース2の右側面202の第1入力部26を操作して行ってもよいし、ウェアラブル端末1がwebサーバと通信可能になっており、子供または保護者等がPC等を介してwebサーバ(webページ)上でウェアラブル端末1の設定を行ってもよい。また、ウェアラブル端末1が携帯電話やPC(Personal Computer)等の機器と無線接続や有線接続できるようになっていて、子供または保護者等が、ウェアラブル端末1に接続する機器を用いてウェアラブル端末1の設定を行ってもよい。以下の設定(B)(C)も、同様に、子供または保護者等が、第1入力部26を操作して行ってもよいし、ウェアラブル端末1に接続する機器を用いて行ってもよい。
【0043】
(B)制御部44は、子供に対する異常事態の発生を、各部を用いて取得するパラメータ、すなわち位置情報、音量、加速度、脈拍数を用いて判定する。制御部44は、例えば音量、加速度が基準レベル(閾値)を超える場合に異常事態の発生と判定する。制御部44は、例えば測定される登校ルートおよび下校ルートと、設定された登校ルートおよび下校ルートとのずれ幅(距離)が、基準レベル(閾値)を超える場合に異常事態の発生と判定する。制御部44は、例えば各ルートの各地点で測定される通過時刻と、設定された通過時刻とのずれ幅が、基準レベル(閾値)を超える場合に異常事態の発生と判定する。制御部44は、脈拍数の変化のパターンと基準のパターンとのずれ幅が、基準レベル(閾値)を超える場合に異常事態の発生と判定する。
【0044】
そこで、子供または保護者等が、メモリ部43に各パラメータの基準レベルを設定できるようになっている。各パラメータの基準レベルは、互いに異なる複数のレベルA〜Dの中から選択することで一括して設定できてもよいし(図5)、パラメータ毎に設定できてもよい。なお、各パラメータの基準レベルはデフォルトで設定されていてもよい。
【0045】
(C)子供または保護者等は、子供に異常事態が発生した際の通知先(携帯電話やスマートフォンの電話番号やメールアドレス、PCや携帯通信機器のアドレス等)をメモリ部43に設定する。通知先は例えば3件まで設定できてもよい(図6)。
【0046】
以上の設定が登録済みである場合のウェアラブル端末1の動作例を以下、説明する。
制御部44は、子供が家を出てから帰るまでの間、撮像部23および音取得部22により数秒間隔で周囲の画像および音をメモリ部43に記録し続ける。音は、毎回、数秒継続して記録する。また、制御部44は、位置情報取得部41を用いて取得する位置情報、脈拍数取得部31を用いて取得する子供の脈拍数、加速度取得部42を用いて取得するウェアラブル端末1の加速度(子供の腕の動き)をメモリ部43に記録し続ける。
【0047】
制御部44は、位置情報に基づいて子供の登校ルートおよび下校ルートを監視する。制御部44は、子供の登校ルートまたは下校ルートと登録したルートとのずれ幅が基準レベルを超える場合、子供に異常事態が発生したと判定する。また、制御部44は、登校ルートおよび下校ルートの各地点の通過時刻と設定した通過時刻とのずれ幅が基準レベルを超える場合、子供に異常事態が発生したと判定する。
【0048】
制御部44は、測定される脈拍数、加速度、音量を監視し続け、脈拍数の変化パターンと基準のパターンとのずれ幅が基準レベルを超える場合や、加速度および音量が基準レベルを超える場合、子供に異常事態が発生したと判定する。
【0049】
制御部44は、子供に異常事態が発生したと判定する場合、保護者の通信端末9等の設定された通知先に電子メールやSMSによって異常事態の発生(本発明の異常発生情報に相当する)を通知する。制御部44は、電子メールによって異常事態の発生を通知する場合、異常事態の発生と判定した時刻の直近(数分前)に記録した撮像画像および音をファイル化し、電子メールに添付して送信する。また、制御部44は、異常事態の発生と判定した時刻の直近に記録した、あるいはその日に記録された位置情報、脈拍数、加速度をファイル化し、電子メールに添付して送信する。
【0050】
これらの情報は、予め通知先の通信端末9にインストールされたアプリケーションによって処理され、該通信端末9に表示される。例えば、通知先の通信端末9は、アプリケーションにより、電子メールに添付されたファイルに含まれる位置情報に基づいて子供の辿ったルートを地図上に表示したり、脈拍数の変化や腕の動き(加速度の変化)を表示したりすることができる。また、通知先の通信端末9は、異常事態の発生と判定した時刻の直近に取得された撮像画像および音を繰り返し再生できる。
【0051】
これにより、異常事態の発生と通知された際に、保護者は、子供の位置や辿った登校ルートおよび下校ルート、異常事態の発生時に子供の周囲にいた人間、子供が周囲の人間と交わした会話、子供の状態(脈拍数)を知ることができる。なお、異常事態の発生と通知された際に、通知先の通信端末9側から現在の子供(ウェアラブル端末1)の位置情報を取得できるものとする。
【0052】
従って、子供が本実施形態のウェアラブル端末1を装着することで、子供に異常事態が発生した場合、通知先の保護者や保護者から連絡を受けた警察等が子供の現状確認を行いやすい。
【0053】
本実施形態では、ウェアラブル端末1が、子供の位置情報、脈拍数、加速度、周囲の音量を自動的に監視し、異常事態の発生を保護者の通信端末9等の通知先に通知するので、急に襲われるなどして子供に異常事態が発生した場合でも、異常事態の発生を通知先に伝えることができる。
【0054】
本体ケース2の下側にある第2入力部27は、子供が手動で保護者の通信端末9に異常事態の発生を通知するためのものである。制御部44は、第2入力部27が押されると、保護者の通信端末9等の通知先に異常事態の発生を通知する。なお、第2入力部27を押すことが、本発明における「異常発生情報を使用者の操作によって第2入力部27に入力すること」に相当する。
【0055】
メモリ部43は、定型メッセージとして、子供に呼びかけるための「大丈夫?」とのメッセージや、子供を襲ったり誘拐したりする犯人に警告するための「現場に直行する!!」とのメッセージや、周囲の人間に助けを求めるための「助けて!!」とのメッセージ等、数種類のメッセージを記憶している。制御部44は、保護者の通信端末9等の設定された通知先から、いずれかの定型メッセージの音声出力の指示情報を受け付けると、該定型メッセージを音声出力部25から出力する。
【0056】
これにより、本実施形態では、異常事態の発生が通知された時や、子供の帰りが遅い等で保護者等が不安な時に、保護者等は、子供のウェアラブル端末1の音声出力部25から音声メッセージを出力させることができる。そして、子供の応答を待ったり、子供を襲う犯人を子供から遠ざけるようにしたり、周囲の人に助けを求めることができる。
【0057】
メモリ部43は、通信先からの子供の応答を要請する「大丈夫?」等のメッセージ(本発明の応答要請情報に対応する)に対する応答メッセージ(本発明の応答情報に相当する)として、「大丈夫だよ」等の数種類の定型メッセージを記憶している。制御部44が通信先からの音声出力の指示情報に基づき、音声出力部25から「大丈夫?」等のメッセージを音声出力すると、子供は、本体ケース2の右側面202にある第1入力部26を操作して「大丈夫だよ」等のメッセージを選択し、該メッセージの送信を決定できる。選択されたメッセージの送信が決定されると、制御部44は、該メッセージを保護者の通信端末9等の通信先に送信する。このように、第1入力部26は、各種の設定の他、応答要請情報に対する応答情報(「大丈夫だよ」等のメッセージ)を子供の操作によって入力するためにも用いられる。
【0058】
(変形例)
前記実施形態では、使用者に対する異常事態の発生を判定するための情報を取得する取得部として、音取得部22、脈拍数取得部31、位置情報取得部41、加速度取得部42が設けられていた。しかしながら、これら各部22、31、41、42のいずれかのみが取得部として設けられていてもよい。制御部44は、音、脈拍数、位置情報、加速度のうちのいずれかの情報のみを監視し、いずれかの情報のみに基づいて異常事態の発生を判定してもよい。
【0059】
第1入力部26および第2入力部27は、例えば十字キー等のキーや、タッチセンサによって構成されていてもよい。
【0060】
前記実施形態では、応答要請情報の出力の指示情報を通知先の通信端末9から通信部45が受信する場合、音声出力部25は、「大丈夫?」等の応答要請情報を音声出力して使用者に報知する。しかしながら、応答要請情報は、テキストメッセージとして出力されてもよい。従って、通信部45が通知先から応答要請情報の出力の指示情報を受信すると、表示部21(本発明の報知部に相当する)が、「大丈夫?」等のテキストメッセージを応答要請情報として表示してもよい。
【0061】
前記実施形態では、通信部45は、インターネットや電話通信網に直接接続したが、通信部45は、使用者が携帯する携帯電話やスマートフォン等の通信機器とWiFi(Wireless Fidelity)やBluetooth(登録商標)等により無線通信あるいは有線通信してもよい。そして、通信部45は、該使用者の通信機器を介してインターネットや電話通信網に接続して設定された通知先と通信してもよい。この際、通知先は使用者の通信機器側に設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1:ウェアラブル端末
22:音取得部(取得部)
25:音声出力部(報知部)
26:第1入力部
27:第2入力部
31:脈拍数取得部(取得部)
41:位置情報取得部(取得部)
42:加速度取得部(取得部)
44:制御部
45:通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6