(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一主面、第二主面および側面を有する結晶シリコン基板と;前記結晶シリコン基板の第一主面上に順に設けられた、第一真性シリコン系薄膜、第一導電型シリコン系薄膜、受光面透明電極層、および受光面金属電極と;前記結晶シリコン基板の第二主面上に順に設けられた、第二真性シリコン系薄膜、前記第一導電型シリコン系薄膜とは異なる導電型を有する第二導電型シリコン系薄膜、裏面透明電極層、および裏面金属電極と、
を備える結晶シリコン系太陽電池であって、
前記結晶シリコン基板は、第一主面および第二主面にテクスチャを有し、
前記受光面金属電極および前記裏面金属電極は、いずれもパターン状に設けられており、
前記裏面透明電極層は、第二主面の周縁には設けられておらず、
第二主面の周縁には、端部平坦化金属層が、前記裏面透明電極層と離間して設けられている、結晶シリコン系太陽電池。
前記結晶シリコン基板の第一主面の全面、第二主面の全面および側面の全ての領域に、前記第一真性シリコン系薄膜および前記第二真性シリコン系薄膜のうちの少なくともいずれか一方が設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶シリコン系太陽電池。
前記第一導電型シリコン系薄膜は、第一主面の全面および側面に設けられており、前記第二導電型シリコン系薄膜は、第二主面の全面および側面に設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の結晶シリコン系太陽電池。
前記受光面金属電極および前記裏面金属電極は、レジストパターンの開口下に露出した導電層を起点として電解メッキにより形成される、請求項9に記載の結晶シリコン系太陽電池の製造方法。
前記裏面側のレジスト層が、裏面透明電極層上の全面を覆い、かつ裏面の周縁には形成されないように印刷が行われる、請求項11に記載の結晶シリコン系太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる結晶シリコン系太陽電池100の模式的断面図である。
図2は、結晶シリコン系太陽電池100の裏面側の平面図である。
【0016】
結晶シリコン系太陽電池100は、いわゆるヘテロ接合太陽電池であり、結晶シリコン基板10の第一主面上に、第一真性シリコン系薄膜21、第一導電型シリコン系薄膜31、受光面透明電極層41、および受光面金属電極71を備え、結晶シリコン基板10の第二主面上に、第二真性シリコン系薄膜22、第二導電型シリコン系薄膜32、裏面透明電極層42、および裏面金属電極72を備える。この結晶シリコン系太陽電池100は、第一主面側(
図1の上側)が受光面であり、第二主面側(
図1の下側)が裏面である。
【0017】
結晶シリコン基板10は、n型またはp型の導電型を有する。正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きいため、結晶シリコン基板10としては、n型単結晶シリコン基板が好ましく用いられる。
【0018】
結晶シリコン基板10は、第一主面および第二主面の表面にテクスチャ構造を有する。シリコン基板の表面にテクスチャが設けられることにより、表面での光反射が低減し、シリコン基板内に取り込まれる光量を増大できる。テクスチャの凹凸高さは、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0019】
受光面の第一真性シリコン系薄膜21、および裏面の第二真性シリコン系薄膜22としては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましく用いられる。結晶シリコン基板10の表面に、真性シリコン系薄膜が設けられることにより、結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。
【0020】
第一真性シリコン系薄膜21上には第一導電型シリコン系薄膜31が設けられ、第二真性シリコン系薄膜22上には第二導電型シリコン系薄膜32が設けられる。第一導電型シリコン系薄膜31と第二導電型シリコン系薄膜32とは、異なる導電型を有し、一方がp型、他方がn型である。受光面側のへテロ接合が逆接合である場合に、光生成キャリアの回収効率が高められる。そのため、結晶シリコン基板10がn型である場合、受光面側の第一導電型シリコン系薄膜31がp型、裏面側の第二導電型シリコン系薄膜32がn型であることが好ましい。
【0021】
第一導電型シリコン系薄膜31上には受光面透明電極層41が設けられ、第二導電型シリコン系薄膜32上には裏面透明電極層42が設けられる。受光面透明電極層41は、第一主面の全面に設けられていてもよく、第一主面の周縁に設けられていなくてもよい。
図1に示すように、受光面透明電極層41は、第一主面の全面に設けられ、かつ側面および第二主面の周縁にも回り込んで形成されていてもよい。
【0022】
裏面透明電極層42は、第二主面の周縁には設けられておらず、第二主面の周縁において、裏面透明電極層形成領域の外周には、裏面透明電極層非形成領域が存在する。そのため、受光面透明電極層41が裏面の周縁に回り込んで形成されている場合でも、受光面透明電極層の回り込み部415との間には、電極が設けられていない領域(離間領域)50が存在し(
図6E参照)、受光面透明電極層41と裏面透明電極層42とは離間している。
【0023】
受光面透明電極層41上には、パターン状の受光面金属電極71が設けられ、裏面透明電極層42上にはパターン状の裏面金属電極72が設けられる。受光面のみならず裏面の金属電極がパターン状に設けられていることにより、太陽電池の裏面側からも光を取り込むことができる。金属電極のパターン形状は特に限定されず、例えば、
図2に示すように、一方向(x方向)に延在するバスバー電極721、およびバスバー電極721に直交して延在するフィンガー電極722からなるグリッド状に金属電極が設けられる。
【0024】
後に詳述するように、受光面金属電極71および裏面金属電極72は、電解メッキにより形成されるメッキ金属層であることが好ましい。受光面金属電極71および裏面金属電極72は、複数の金属層から構成されてもよい。例えば、銅層の上に、銀や錫等の耐久性の高い金属層が設けられることにより、金属電極の劣化を抑制し、太陽電池の耐久性を向上できる。
【0025】
受光面透明電極層41と受光面金属電極71との間には、受光面金属シード61が設けられていてもよい。裏面透明電極層42と裏面金属電極72との間には、裏面金属シード62が設けられていてもよい。受光面金属シード61および裏面金属シード62は、それぞれ受光面金属電極71および裏面金属電極72と同様にパターニングされていることが好ましい。
【0026】
図2に示すように、第二主面の周縁には端部平坦化金属層75が設けられている。端部平坦化金属層75は裏面透明電極層42と離間しており、両者の間には、第二導電型シリコン系薄膜32が露出した離間領域51が存在する。裏面の周縁に端部平坦化金属層75が設けられることにより、複数の太陽電池100を接続してモジュール化した際に、隣接して配置された太陽電池間の隙間に入射した光を、太陽電池の裏面側から効率的に取り込むことができる。
【0027】
図3は、複数の太陽電池100を、配線部材155を介して接続した太陽電池モジュール200の平面図である。
図4Aは、
図3のA−A線の位置における断面図であり、
図4Bは
図3のB−B線の位置における断面図である。
【0028】
太陽電池モジュール200では、隣接する太陽電池の表裏のバスバー電極711,721が配線部材155を介して接続され、太陽電池ストリングを形成している。太陽電池ストリングの受光面側(
図4Aおよび
図4Bの上側)には、受光面保護材151が設けられ、裏面側(
図4Aおよび
図4Bの下側)には裏面保護材152が設けられている。保護材151,152の間に封止材157が充填されることにより、太陽電池ストリングが封止されている。
【0029】
図4Bでは、太陽電池モジュール200において、太陽電池100に太陽光が入射する様子が概念的に示されている。太陽電池に照射された光L
Aは、受光面から太陽電池に入射して、シリコン基板10で吸収されて光キャリアを生成し、発電に寄与する。隣接する太陽電池間の隙間に照射された光は、太陽電池100の裏面に設けられた裏面保護材152に到達する。隙間に照射された光を、裏面保護材152により受光面側に反射させ、太陽電池に入射させることにより、光利用効率が高められ、モジュール発電量を向上できる。
【0030】
太陽電池間の隙間に照射され、裏面保護材152で反射された光の一部(特に、入射角度θ
1が小さい光L
B1)は、再度太陽電池間の隙間を透過して受光面側に到達し、受光面保護材151の空気界面で再反射され、受光面側からセルに入射する。セル間の隙間に照射され裏面保護材152で反射された光の一部(特に、入射角度θ
2が大きい光L
B2)は、太陽電池の裏面に到達する。裏面保護材152から太陽電池の裏面側に到達する反射光の大半は、太陽電池の周縁領域に到達する。
【0031】
図5Aおよび
図5Bは、裏面保護材152で反射されて太陽電池の裏面の周縁領域に到達した光の反射の様子を表す概念図である。
図5Aでは、太陽電池の裏面の周縁に、平坦化金属層75が設けられている。
図5Bでは、太陽電池の裏面の周縁に、膜厚が小さく、テクスチャの凹凸形状を緩和する作用(平坦化作用)を有していない金属層275(例えば、透明電極層の回り込み部415上にスパッタにより形成された金属層)が設けられている。
【0032】
図5Bの金属層275は平坦化作用を有していないため、太陽電池の裏面の周縁はシリコン基板10のテクスチャの凹凸形状を継承した表面凹凸形状を有している。裏面保護材152で反射されて太陽電池の裏面の周縁領域に到達した光は、表面凹凸を有する金属層275により、様々な方向に反射される。金属層275で反射された光は、裏面保護材152等で反射を繰り返し、一部の光は太陽電池の裏面や受光面から太陽電池内に入射する。しかし、反射回数の増大に伴って、封止材157等による光吸収量が増大するため、太陽電池に入射する光量が減少する。
【0033】
一方、
図5Aでは、太陽電池の裏面の周縁に平坦化金属層75が設けられており、シリコン基板10のテクスチャの凹凸形状が緩和され平坦化された表面形状を有している。裏面保護材152で反射されて太陽電池の裏面の周縁領域に到達した光は、平坦化金属層75により反射される。表面が平坦化されているため、太陽電池間の隙間(図の右側)から平坦化金属層75に到達した光は、太陽電池の中央側(図の左側)に向けて反射されやすい。太陽電池の中央側に反射された光は、裏面保護材152と平坦化金属層75との間で反射を繰り返し、裏面から太陽電池に入射する。
図5Bのように不定方向に反射される場合と比べると、
図5Aのように太陽電池の中央側に反射される光は、少ない反射回数で裏面側から太陽電池に入射するため、太陽電池に取り込まれる反射光量が増大する。したがって、裏面の周縁に平坦化金属層75が設けられることにより、モジュールの光取り込み量を増大し、モジュール発電量を向上できる。
【0034】
シリコン基板10の裏面に設けられたテクスチャの凹凸を平坦化するためには、平坦化金属層75は厚みが大きいことが好ましい。平坦化金属層75の厚みは、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がより好ましい。また、シリコン基板10の裏面のテクスチャの凹凸高低差よりも、平坦化金属層75の厚みが大きいことが好ましい。平坦化金属層75の凹凸高低差は、シリコン基板10の凹凸高低差の0.5倍以下が好ましく、0.3倍以下がより好ましく、0.1倍以下がさらに好ましい。平坦化金属層75の凹凸高低差が小さく表面が平坦化されているほど、裏面から太陽電池への反射光の取り込み量が増大する傾向がある。平坦化金属層75の凹凸高低差は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。凹凸高低差は、算術平均粗さRaの2倍で定義される。
【0035】
厚みの大きい平坦化金属層75の形成には、メッキ法が適している。特に、生産性の観点からは、受光面金属電極71や裏面金属電極72を電解メッキにより形成し、これらの金属電極の形成と同時に、電解メッキにより平坦化金属層75を形成することが好ましい。
【0036】
以下では、
図6A〜Jを参照して、n型単結晶シリコン基板10の受光面側に第一導電型シリコン系薄膜としてp型シリコン系薄膜31を備え、裏面側の第二導電型シリコン系薄膜としてn型シリコン系薄膜32を備えるヘテロ接合太陽電池100の製造工程の一例を説明する。
【0037】
まず、第一主面(受光面)および第二主面(裏面)の両面にテクスチャが形成されたn型単結晶シリコン基板を準備する(
図6A)。テクスチャの形成方法は特に限定されない。例えば、単結晶シリコン基板では、アルカリを用いた異方性エッチング処理により、ピラミッド状のテクスチャを形成できる。
【0038】
n型単結晶シリコン基板10の第二主面に、第二真性シリコン系薄膜22およびn型シリコン系薄膜32が形成され(
図6B)、n型単結晶シリコン基板10の第一主面に、第一真性シリコン系薄膜21およびp型シリコン系薄膜31が形成される(
図6C)。
【0039】
前述のように、真性シリコン系薄膜21,22の材料としては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。真性シリコン系薄膜21,22の膜厚は、3〜16nmが好ましく、4〜14nmがより好ましく、5〜12nmがさらに好ましい。なお、本明細書における「膜厚」とは、製膜面上の厚みを指し、テクスチャ斜面の法線方向を厚み方向とする。
【0040】
導電型シリコン系薄膜31,32としては、非晶質シリコン系薄膜、微結晶シリコン系薄膜(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が用いられる。シリコン系薄膜としては、シリコン以外に、シリコンオキサイド、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等のシリコン系合金を用いることもできる。これらの中でも、導電型シリコン系薄膜は、非晶質シリコン薄膜であることが好ましい。導電型シリコン系薄膜31,32の膜厚は、3〜30nmが好ましい。
【0041】
シリコン系薄膜21,22,31,32は、プラズマCVD法により製膜されることが好ましい。これらのシリコン系薄膜の製膜順序は特に限定されないが、生産性向上の観点から、第一真性シリコン系薄膜21とp型シリコン系薄膜31は、同一の製膜装置を用いて、連続して製膜が行われることが好ましい。同様に、第二真性シリコン系薄膜22とn型シリコン系薄膜32は、連続して製膜が行われることが好ましい。
図6Bおよび
図6Cでは、第二主面側のシリコン系薄膜22,32の製膜が先に行われる形態が示されているが、第一主面上への第一真性シリコン系薄膜21およびp型シリコン系薄膜31の製膜と、第二主面上への第二真性シリコン系薄膜22およびn型シリコン系薄膜32の製膜の順序は、どちらが先でもよい。
【0042】
シリコン系薄膜の形成時には、第一主面および第二主面の周縁をマスクで被覆した状態で製膜を行ってもよく、マスクを用いずに製膜を行ってもよい。シリコン系薄膜21,22,31,32のうちの一部の薄膜の製膜時にはマスクを用い、他の薄膜はマスクを用いずに製膜を行ってもよい。
【0043】
マスクを使用せずに、CVD法等のドライプロセスによりシリコン系薄膜が製膜されると、シリコン基板10の第二主面上に製膜されたシリコン系薄膜22,32は、製膜時の回り込みによって、シリコン基板10の側面および第一主面の周縁にも形成される。シリコン基板10の第一主面上に製膜されたシリコン系薄膜21,31は、製膜時の回り込みによって、シリコン基板10の側面および第二主面の周縁にも形成される。
【0044】
第一真性シリコン系薄膜21および第二真性シリコン系薄膜22が側面および製膜面の反対側の面に回り込んで形成されることにより、結晶シリコン基板10の第一主面の全面、第二主面の全面および側面の全ての領域に、第一真性シリコン系薄膜21および第二真性シリコン系薄膜22のうちの少なくともいずれか一方が設けられる。両主面および側面の全領域に真性シリコン系薄膜が設けられることにより、シリコン基板の表面パッシベーション効果が高められる。
【0045】
マスクを使用せずにp型シリコン系薄膜31およびn型シリコン系薄膜32を製膜すると、p型シリコン系薄膜31は第一主面の全面および側面に設けられ、n型シリコン系薄膜32は第二主面の全面および側面に設けられる。これらの導電型シリコン系薄膜は、製膜面の反対側の面にも回り込んで形成される。このように、シリコン基板表面の全面に導電型シリコン系薄膜が設けられることにより、シリコン基板内で生成した光キャリアを回収できる領域、すなわち太陽電池の有効発電領域が拡大する。
【0046】
p型シリコン系薄膜31上に、受光面透明電極層41が形成され(
図6D)、n型シリコン系薄膜32上に、裏面透明電極層42が形成される(
図6E)。受光面透明電極層41上には受光面金属シード層610が形成されることが好ましく、裏面透明電極層42上には裏面金属シード層620が形成されることが好ましい。
【0047】
透明電極層41,42の材料は導電性酸化物が好ましく、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、および酸化錫等が、単独でまたは複合酸化物として用いられる。中でも、導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウム錫(ITO)等のインジウム系酸化物が好ましい。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。透明性、導電性、および光反射低減の観点から、受光面透明電極層41および裏面透明電極層42の膜厚は、10〜200nm程度が好ましい。
【0048】
透明電極層41,42の製膜方法としては、CVD法、スパッタ法、蒸着法等のドライプロセスが好ましく、中でも、スパッタ法等の物理気相堆積法や、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用したCVD(MOCVD)法等が好ましい。透明電極層41,42上に金属シード層610,620が設けられる場合、両者を連続して製膜可能であることから、スパッタ法が特に好ましい。
【0049】
前述のように、裏面透明電極層42は、第二主面の周縁には形成されない。例えば、
図4Eに示すように第二主面の周縁をマスク9で被覆した状態で、裏面透明電極層42を製膜することにより、第二主面の周縁に、裏面透明電極層非形成領域が設けられる。
【0050】
図6Dに示すように、受光面透明電極層41は、第一主面の周縁および側面に形成され、さらに裏面に回り込んで回り込み部415が設けられていてもよい。受光面透明電極層の形成時にもマスクを用い、第一主面の周縁をマスクで被覆した状態で製膜を行ってもよい。マスクの位置合わせ回数を低減して生産効率を高める観点から、
図6Dおよび
図6Eに示すように、受光面透明電極層41はマスクを用いずに製膜が行われ、裏面透明電極層42はマスクを用いて製膜が行われることが好ましい。
【0051】
第二主面の周縁に、裏面透明電極層非形成領域が設けられているため、受光面透明電極層が裏面に回り込んで製膜され回り込み部415が形成されている場合でも、第二主面の周縁には、透明電極層41,42のいずれも形成されていない離間領域50が設けられる。このように、裏面透明電極層42が受光面透明電極層41と離間しており、両者が導通していないことにより、シリコン基板10の表裏でのリーク電流が低減し、太陽電池の変換効率が高められる。また、受光面透明電極層41上および裏面透明電極層42上に、電解メッキにより金属電極71,72を形成する場合に、電流リークに起因する不所望の金属の析出を抑制できる。受光面透明電極層と裏面透明電極層とが電気的に切り離されているため、受光面透明電極層41上への受光面金属電極71の形成と、裏面透明電極層42上への裏面金属電極72の形成とを、電解メッキにより同時に行う場合でも、両者の厚みを独立に制御できる。
【0052】
受光面金属シード層610および裏面金属シード層620は、電解メッキにより受光面金属電極71および裏面金属電極72を形成する際の導電性下地層として作用し、メッキ効率の向上に寄与する。また、透明電極層41,42の表面に金属シード層610,620が設けられることにより、メッキ液による透明電極層の侵食を防止できる。
【0053】
金属シード層610,620を構成する金属材料としては、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム、およびこれらの合金等が用いられる。金属シード層610,620の膜厚は特に限定されない。電解メッキ後のエッチング除去の容易性を考慮すると、金属シード層610,620の膜厚は、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましい。一方、金属シード層自体に高い導電性を持たせ、かつピンホール等による透明電極層41,42の露出を防止する観点から、金属シード層610,620の膜厚は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上がさらに好ましい。
【0054】
金属シード層610,620の形成方法は特に限定されないが、透明電極層41,42の表面全体を効率的に被覆するためには、スパッタ法、蒸着法等のドライプロセスや、無電解メッキが好ましい。透明電極層41,42と金属シード層610,620とを連続製膜可能であることから、スパッタ法が特に好ましい。
【0055】
透明電極層41,42および金属シード層610,620の製膜順序は特に限定されないが、生産性向上の観点から、受光面透明電極層41と受光面金属シード層610は、同一の製膜装置を用いて、連続して製膜が行われることが好ましい。そのため、マスクを用いずに受光面透明電極層41を製膜する場合、受光面金属シード層610もマスクを用いずに製膜が行われ、裏面に回り込み部65が形成されることが好ましい。裏面透明電極層42と裏面金属シード層620は、連続して製膜が行われることが好ましい。マスクを用いて裏面金属シード層620を形成する場合は、裏面透明電極層42の製膜時に用いたマスクをそのまま用いてもよい。同一のマスクを用いて裏面透明電極層と裏面金属シード層620とを連続製膜することにより、マスクの位置合わせ回数を低減し、生産性を向上できる。
図6Dおよび
図6Eでは、第一主面側の受光面透明電極層41および受光面金属シード層610の製膜が先に行われる形態が示されているが、第二主面上への裏面透明電極層42および裏面金属シード層620製膜が、第一主面上への第一主面側の受光面透明電極層41および受光面金属シード層610の製膜よりも先に行われてもよい。
【0056】
受光面透明電極層41上にはパターン状の受光面金属電極71が形成され、裏面透明電極層42上にはパターン状の裏面金属電極72が形成される。透明電極層41,42上に金属シード層610,620が設けられている場合は、金属シード層上に金属電極が形成される。
図6F〜Hに示すように、レジストを用いることにより、パターン状の金属電極をメッキ法により形成できる。
【0057】
レジストを用いた金属電極の形成においては、まず受光面および裏面にレジスト層910,920が形成される(
図6F)。スクリーン印刷等の印刷法により、受光面および裏面のそれぞれに、レジスト層910,920が形成されることが好ましい。シリコン基板よりも小面積でレジスト層の印刷を実施することにより、レジスト材料の利用効率が高められる。
【0058】
裏面側のレジスト層920は、裏面透明電極層42上(および裏面金属シード層620上)の全面を覆うように設けられることが好ましい。裏面透明電極層42上の全面を覆い、かつ裏面の周縁には設けられないように、レジスト層920を印刷することにより、裏面透明電極層42と離間した端部平坦化金属層75をメッキ法により形成できる。
【0059】
受光面側のレジスト層910および裏面側のレジスト層920のそれぞれに対して、露光および現像を行うことにより、開口96,97が設けられたレジストパターン91,92が形成される(
図6G)。
【0060】
受光面および裏面のそれぞれに、レジストパターン91,92を形成後に、開口96,97の下に露出した導電層(透明電極層41,42または金属シード層610,620)を起点として、電解メッキにより、金属電極71,72が形成される(
図6H)。金属電極71,72の材料は、電解メッキで形成できる金属であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム、およびこれらの合金等が形成される。これらの中でも、電解メッキによる析出速度が大きく、導電率が高く、かつ材料が安価であることから、メッキ金属電極を構成する金属は、銅、または銅を主成分とする合金であることが好ましい。
【0061】
金属電極71,72の形成は、メッキ液中に陽極を浸漬し、透明電極層41,42(あるいはその表面に形成された金属シード層610,620)をメッキ液と接触させた状態で、陽極と透明電極層との間に電圧を印加することにより行われる。銅を主成分とするメッキ金属電極は、例えば酸性銅メッキにより形成される。酸性銅メッキに用いられるメッキ液は、硫酸銅、硫酸、水等を含む公知の組成のものが使用可能である。このメッキ液に、0.1〜10A/dm
2程度の電流を流すことにより、レジスト開口下の導電層上に銅を析出させることができる。メッキ時間は、電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
【0062】
受光面金属電極71と裏面金属電極72は、どちらが先に形成されてもよい。生産性の観点からは、電解メッキにより両者を同時に形成することが好ましい。例えば、受光面透明電極層41(または受光面金属シード層610)および裏面透明電極層42(または裏面金属シード層620)のそれぞれに給電を行うことにより、受光面と裏面に同時にメッキ金属電極71,72を形成できる。
【0063】
前述のように、受光面側の導電層41,610と裏面側の導電層42,620とが電気的に切り離されているため、受光面と裏面の電解メッキによる金属の析出速度を、それぞれ独立に制御できる。そのため、受光面金属電極71と裏面金属電極72とが、電解メッキにより同時に形成される場合でも、両者の厚みを独立に制御できる。例えば、裏面側のメッキ金属電極72の厚みを受光面側のメッキ金属電極71の厚みよりも小さくできる。電解メッキにより形成される金属電極の厚みが小さい場合は、レジストの厚みも小さくできる。そのため、表裏の電極パターン形状の相違や、フィンガー電極の本数等に応じて、金属電極の厚みを調整することにより、光取り込み効率やキャリア取出し効率に優れる太陽電池を形成できることに加えて、レジスト等の材料コストの低減も可能となる。
【0064】
メッキ金属電極71,72は、複数の層の積層構成としてもよい。例えば、銅等の導電率の高い材料からなる第一メッキ層を形成後、第一メッキ層よりも化学的安定性に優れる金属層を形成することにより、低抵抗で化学的安定性に優れた金属電極を形成できる。
【0065】
受光面透明電極層41(および受光面金属シード層)が、側面および裏面の周縁に回り込んで製膜され、回り込み部415(および65)が形成されている場合、電解メッキによる金属電極71,72の形成時に、この回り込み部もメッキ液に曝される。そのため、
図6Hに示すように、回り込み部415上にメッキ金属層75が析出する。裏面側のレジストパターン92は、裏面透明電極層42の外周にも設けられているため、回り込み部415上に析出したメッキ金属層75と、裏面透明電極層42(および裏面金属シード層620)とは離間している。
【0066】
このように、電解メッキにより裏面の端部に析出したメッキ金属層が、シリコン基板10の裏面に設けられたテクスチャの凹凸を平坦化する端部平坦化金属層75となり、太陽電池の裏面からの光取り込み量の増大に寄与する。第一透明電極層の回り込み部415上に平坦化金属層75が設けられる場合、端部平坦化金属層75は、受光面金属電極71と同時に電解メッキにより形成される。そのため、端部平坦化金属層75は、受光面金属電極71と同一の材料からなる。
【0067】
金属電極71,72、および端部平坦化金属層75を形成後、レジストパターン91,92が剥離除去される(
図6I)。透明電極層41、42上に金属シード層610,620が設けられている場合は、レジストパターンの剥離除去後に、金属電極71,72のパターン間に露出した金属シード層がエッチング除去される(
図6J)。これにより、透明電極層41,42と金属電極71,72との間に、金属シード61,62が設けられたパターン電極が得られる。
【0068】
図6A〜Jでは、裏面側の導電層(透明電極層42および金属シード層620)の製膜時にのみマスク9を用い、マスクを用いずにシリコン系薄膜21,31,22,32および受光面側の導電層42,620を製膜する例を示したが、シリコン系薄膜および受光面側の導電層も基板の周縁をマスクで被覆した状態で製膜を行ってもよい。
【0069】
例えば、第二主面の周縁をマスクで被覆した状態で第二真性シリコン系薄膜31およびn型シリコン系薄膜32を製膜すると、
図7に示すように、第二主面の周縁に、シリコン系薄膜および電極のいずれも設けられていない離間領域52が形成される。このように、表裏のシリコン系薄膜が離間されていれば、p型シリコン系薄膜とn型シリコン系薄膜との間のリークを抑制できる。第二主面の周縁のn型シリコン系薄膜32が設けられていない領域では、キャリア(電子)を回収できないため、この部分は発電ロスの原因となり得る。ただし、第二主面の周縁領域の端部平坦化金属層75に覆われている領域では裏面からの光が太陽電池に入射しないため、離間領域52およびその外周領域(端部平坦化金属層75が設けられている領域)における光キャリアの生成量は少ない。そのため、周縁領域にn型シリコン系薄膜が設けられていないことに起因するロスはわずかである。一方、端部平坦化金属層75の光反射作用により、n型シリコン系薄膜32が設けられている領域に裏面から入射する光の量が増大するため、トータルの発電量は向上する。
【0070】
前述のように、受光面側の透明電極層および金属シード層の製膜時に、第一主面の周縁をマスクで被覆した状態で製膜を行ってもよい。この場合、受光面透明電極層41および金属シード層610の裏面側への回り込み部は形成されない。受光面側の導電層の裏面側への回り込み部が形成されない場合でも、n型シリコン基板10上に、p型シリコン系薄膜31を介さずにn型シリコン系薄膜32が設けられた領域では、電解メッキ時のリーク電流により金属が析出する。すなわち、n型シリコン基板10の表面にn型シリコン系薄膜32のみが設けられp型シリコン系薄膜が設けられていない領域(n/n接合部分)、およびp型シリコン系薄膜31よりもn型シリコン系薄膜32の方がn型シリコン基板に近い側に位置している領域(n/n/p接合部分)には、金属電極71,72を形成するための電解メッキ時のリークに起因して、金属が析出する。
【0071】
p型シリコン系薄膜31よりも先にn型シリコン系薄膜32が製膜される場合は、側面および主面の周縁では、n型シリコン系薄膜32がp型シリコン系薄膜31よりもn型シリコン基板10に近い側に位置しているため、
図8に示すように、側面および主面の周縁の全体(レジストが設けられている領域を除く)に金属層が析出する。そのため、マスクを用いずに受光面側の導電層を製膜した場合と同様に、裏面端部平坦化金属層75が形成される。
【0072】
n型シリコン系薄膜32よりも先にp型シリコン系薄膜31が製膜される場合は、側面および主面の周縁では、p型シリコン系薄膜31がn型シリコン系薄膜32よりもn型シリコン基板10に近い側に位置している。そのため、
図9に示すように、第一主面および第二主面の周縁のp型シリコン系薄膜31とn型シリコン系薄膜とが重複していない領域に、メッキ金属層77,75が析出する。この形態において、裏面側に析出したメッキ金属層75も、裏面端部平坦化金属層として作用し得る。
【0073】
なお、太陽電池の裏面の端部に到達した反射光を、太陽電池の裏面側から効率よく取り込むためには、周縁領域のできる限り広い範囲に裏面端部平坦化金属層75が設けられていることが好ましい。そのため、マスクを用いて受光面側の導電層(受光面透明電極層41および受光面金属シード層610)を製膜する場合は、p型シリコン系薄膜31よりも先にn型シリコン系薄膜32の製膜を行うことが好ましい。
【0074】
本発明の太陽電池は、実用に供する際には、モジュール化される。太陽電池モジュールの構成は、
図3、
図4Aおよび
図4Bを参照して先に説明した通りである。
【0075】
配線部材155は、太陽電池のメッキ金属電極上に接続される。
図3に示すように、金属電極がフィンガー電極とバスバー電極を有するグリッド状のパターンを有する場合は、バスバー電極上に配線部材が接続される。配線部材と電極とは、はんだや導電性接着剤等を用いて電気的に接続される。
【0076】
複数の太陽電池100が封止材157を介して接続された太陽電池ストリングが、受光面保護材151および裏面保護材152に挟持され、太陽電池モジュールが形成される。例えば、太陽電池100の受光面側および裏面側のそれぞれに、封止材157を介して保護材151,152を配置して積層体とした後、積層体を所定条件で加熱することにより、封止材157を硬化させ、封止が行われる。封止材157としては、EVA,EEA,PVB,シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性の樹脂を用いることができる。
【0077】
受光面側保護材151としては、透光性および遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等が用いられる。隣接する太陽電池の間に照射された光を有効に利用するために、裏面保護材152は光反射性を有することが好ましい。光反射性の裏面保護材152としては、白色PETフィルムや、アルミニウム等の金属箔を樹脂フィルムで挟持した積層フィルム等が用いられる。
【0078】
裏面保護材152は、隣接する太陽電池間の隙間に対応する部分に、金属層等の光反射性の高い部材が設けられていてもよい。太陽電池間の隙間に対応する部分に設けられる光反射性部材が表面凹凸を有している場合、裏面保護材により反射される光の角度を所定方向に調整できる。そのため、太陽電池間の隙間に照射された光の利用効率をさらに向上できる。