特許第6677807号(P6677807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6677807N−アルキルグルカミンをベースとするユニバーサル顔料分散体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677807
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】N−アルキルグルカミンをベースとするユニバーサル顔料分散体
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20200330BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20200330BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20200330BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20200330BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20200330BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20200330BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20200330BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09B67/20 F
   C09D7/63
   C09D7/61
   C09D201/00
   C09D11/38
   C09D11/037
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-517392(P2018-517392)
(86)(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公表番号】特表2018-536042(P2018-536042A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016071750
(87)【国際公開番号】WO2017060051
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年10月31日
(31)【優先権主張番号】102015219608.9
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クプファー・ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ゼフィング・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】リューガー・イェルク
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−143828(JP,A)
【文献】 特開2006−160732(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0100127(US,A1)
【文献】 特表2014−523923(JP,A)
【文献】 特表2011−508816(JP,A)
【文献】 特表2002−542344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09B 67/20
C09D 7/63
C09D 11/037
C09D 11/38
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、バインダー不含水性顔料分散体:
(A)少なくとも1種の有機および/または無機顔料、
(B)1種または複数種の分散剤および/または界面活性剤
(C)式(I)の少なくとも1種の化合物
【化1】
[式中、R−C−アルキル、CHCHOHまたはCHCH(CH)OHを表す]、および
(F)水。
【請求項2】
がメチルまたはCHCHOHを表す、請求項1に記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項3】
がメチルを表す、請求項1に記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項4】
上記無機顔料が金属酸化物顔料であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項5】
顔料分散体のpH値が7より大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項6】
顔料分散体のpH値が8〜10の間であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項7】
顔料分散体の全重量を基準として、5〜80重量%の成分(A)を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項8】
顔料分散体の全重量を基準として、0.1〜30重量%の成分(B)を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項9】
顔料分散体の全重量を基準として、0.1〜10重量%の成分(C)を含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項10】
顔料分散体の全重量を基準として、0.1〜10重量%の量で、1つまたは複数のポリアルキレングリコール類を成分(D)として含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項11】
顔料分散体の全重量を基準として、0〜30重量%の量で、水性顔料分散体の製造のための慣用のさらなる添加剤を成分(E)として含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体であって、DIN11890−2に従って測定されるそのVOC含有量が0.2%より小さいことを特徴とする、バインダー不含水性顔料分散体。
【請求項13】
水性の、水で希釈が可能なおよび溶剤含有の、ラッカー、塗料およびインクの着色のための、請求項1〜12のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、水系の、バインダー不含の顔料分散体、ならびに全ての種類の水性および溶媒含有の塗料、エマルションペイントおよび着色用ラッカーの着色のためのそれらの使用である。
【背景技術】
【0002】
市場においておよび文献において、多数の水性の顔料分散体(顔料ペーストとも呼ばれる)が知られており、これらは水性エマルションペイントおよびラッカーの着色のために使用される。これらの顔料分散体は、建築資材店、塗装工場および塗装専門店において調色ペースト(Abtoenpasten)として使用される。このために、計量装置および調色装置を用いて、水性の顔料ペーストが水性の塗料およびラッカーに添加される。ベース塗料との相容性を改善するために、顔料分散体は通常、塩基を用いて塩基性pH値に調節される。このためにアルカリ、例えばNaOHまたはKOHあるいはまたアミン塩基、例えばアルカノールアミン類、例えば2−アミノ−2−メチル−プロパン−1−オール(AMP−90/95,Angus社)を使用することは当業者には十分に知られており、例えばUS2012/0024193(特許文献1)には、α位で分岐した2級アルカノールアミン類とも一緒に記載されている。
【0003】
European Coatings Journal,2009,Vol.07の第26〜28頁(非特許文献1)もまた、そのような2級アルカノールアミン類を中和剤および共分散剤として含む青色顔料ペーストがより高い着色力をもたらすことを教示しており、2−(sec−ブチルアミノ)エタノール(Alpamine(登録商標)N41,Arkema社)の例では、調色された塗料に関するコストをそれによって削減できることが示されている。
【0004】
溶剤含有塗料およびラッカーもまた、そのように着色することができる。そのために特別な溶剤ベースペーストが市販されており、さらに、水性の着色のためにも、全ての種類の塗料、エマルションペイントおよび着色用ラッカーの着色のためにも適切なユニバーサル顔料分散体がますます使用されている。
【0005】
WO2013/016270(特許文献2)は、バインダー含有塗料において使用され、光沢および湿潤摩耗の改善をもたらす、VOC不含の2級および3級アルカノールアミン類を教示している。
【0006】
さらなるVOC不含アミノアルコール類の製造およびバインダー含有塗料における中和剤としてのそれらの使用が、US2011/0146536(特許文献3)で教示されている。
【0007】
水性のバインダー含有塗料におけるトリヒドロキシモノアミン類またはトリヒドロキシジアミン類の中和能力が、WO2010/126657(特許文献4)またはUS2010/0326320(特許文献5)に記載されている。粘度、隠蔽力、黄変、光沢、耐湿潤摩耗性および付着力に関して、得られる塗料およびコーティングの特性が同様に記載されている。
【0008】
EP1676831(特許文献6)は、水性の、バインダー含有の印刷用インクに使用できるN,N−ジアルキルグルカミン類を教示している。
【0009】
US2002/04066(特許文献7)は、アルキル−、ヒドロキシアルキル−またはアリールアミン類を含有する、水性の、分散剤不含印刷用インクを教示している。
【0010】
実際には、これらのユニバーサル顔料分散体は溶媒含有塗料およびラッカーにおいて不十分な相容性のみを有することが判明し、これは、使用した水性顔料分散体がそれらの完全な着色力または隠蔽力を発揮せず、従って所望の色相を達成するためにはより多くの顔料分散体を添加しなければならないことを示す。このような過剰な消費は、塗料およびラッカーの着色の際により高いコストを生じさせる。さらに、上記のアミン塩基は、VOC含有量の増加に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2012/0024193
【特許文献2】WO2013/016270
【特許文献3】US2011/0146536
【特許文献4】WO2010/126657
【特許文献5】US2010/0326320
【特許文献6】EP1676831
【特許文献7】US2002/04066
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】European Coatings Journal,2009,Vol.07の第26〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、水性コーティングとも溶剤含有コーティングとも相容性である、水性の、バインダー不含顔料分散体を提供することである。さらに、上記顔料分散体にはVOC含有成分は添加されないべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、N−アルキルグルカミン類をpH値調節のためにかつ共分散剤として使用する、水性の、バインダー不含顔料分散体により、上記の目的が達成されることが見出された。
【0015】
本発明の対象は、以下を含有する水性顔料分散体である
(A)少なくとも1種の有機および/または無機顔料、
(B)1種または複数種の分散剤および/または界面活性剤
(C)式(I)の少なくとも1種の化合物
【0016】
【化1】
[式中、Rは、H、C−C−アルキル、CHCHOHまたはCHCH(CH)OHを表す]、
(D)任意選択的に1種または複数種のポリアルキレングリコール類、
(E)任意選択的に、水性顔料分散体の製造のための慣用のさらなる添加剤、および
(F)水。
【0017】
好ましい顔料調合物は成分
(A)5〜80重量%、
(B)0.1〜30重量%、
(C)0.1〜10重量%、
(D)0〜10重量%、
(E)0〜30重量%、
(F)100%まで添加、
を含み、ここでそれぞれ顔料分散体の全重量を基準とする。
【0018】
さらなる好ましい形態において、本発明の顔料分散体は、pH値>7を有し、特に好ましい形態において、8〜10の間のpH値を有する。
【0019】
さらなる好ましい形態において、本発明の顔料分散体は、DIN11890−2に従って測定されるVOC含有量<1%を示す。
【0020】
本発明の顔料分散体の成分(A)は、好ましくは、微細な有機もしくは無機の白色−もしくは有彩顔料またはそのような種々の顔料の混合物である。ここで、特に好ましい有機顔料の代表的な選択としては、モノアゾ顔料およびジスアゾ顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー81、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー87、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー111、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー191、ピグメントイエロー213、ピグメントイエロー214、ピグメントレッド38、ピグメントレッド144、ピグメントレッド214、ピグメントレッド242、ピグメントレッド262、ピグメントレッド266、ピグメントレッド269、ピグメントレッド274、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ34またはピグメントブラウン41;β−ナフトール顔料およびナフトールAS顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントレッド2、ピグメントレッド3 ピグメントレッド4、ピグメントレッド5、ピグメントレッド9、ピグメントレッド12、ピグメントレッド14、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド146、ピグメントレッド147、ピグメントレッド170、ピグメントレッド184、ピグメントレッド187、ピグメントレッド188、ピグメントレッド210、ピグメントレッド247、ピグメントレッド253、ピグメントレッド254、ピグメントレッド256、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ38またはピグメントブラウン1;レーキ化アゾ顔料および金属錯体顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:3、ピグメントレッド48:4、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド257、ピグメントオレンジ68またはピグメントオレンジ70;ベンズイミダゾリン顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー120、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー175、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントイエロー194、ピグメントレッド175、ピグメントレッド176、ピグメントレッド185、ピグメントレッド208、ピグメントバイオレット32、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ72またはピグメントブラウン25;イソインドリノン顔料およびイソインドリン顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー139またはピグメントイエロー173;フタロシアニン顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー16、ピグメントグリーン7またはピグメントグリーン36;アンサントロン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料およびチオインジゴ顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントイエロー196、ピグメントレッド122、ピグメントレッド149、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177、ピグメントレッド179、ピグメントレッド181、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントレッド263、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23またはピグメントオレンジ43;トリアリールカルボニウム顔料、特にカラーインデックス顔料のピグメントレッド169、ピグメントブルー56またはピグメントブルー61が挙げられる。
【0021】
適切な無機顔料としては、例えばカーボンブラック顔料、例えばガスブラックまたはファーネスブラック;二酸化チタン類、硫化亜鉛類、酸化亜鉛類、酸化鉄類、磁鉄鉱類、酸化鉄マンガン類、酸化クロム類、ウルトラマリン、ニッケル−もしくはクロムアンチモンチタン酸化物類、マンガンチタンルチル類、酸化コバルト類、コバルトおよびアルミニウムの混合酸化物、ルチル混相顔料、希土類の硫化物、ニッケルおよび亜鉛を含むコバルトのスピネル類、銅、亜鉛およびマンガンを含む鉄およびクロムとをベースとするスピネル類、バナジン酸ビスマス類および体質顔料が挙げられる。特に、カラーインデックス顔料のピグメントイエロー184、ピグメントイエロー53、ピグメントイエロー42、ピグメントイエローブラウン24、ピグメントレッド101、ピグメントブルー28、ピグメントブルー36、ピグメントグリーン50、ピグメントグリーン17、ピグメントブラック7、ピグメントブラック11、ピグメントブラック33およびピグメントホワイト6が使用される。好ましくは、無機顔料の混合物も多くの場合に使用される。有機顔料と無機顔料の混合物も同様に、多くの場合に使用される。
【0022】
本発明の顔料分散体の成分(B)としては、慣用のポリマー性および界面活性剤型の分散剤またはそのような物質の混合物が適している。ここで、それは通常、非イオン性、アニオン性または両性の界面活性物質であり、これらは当業者に十分に知られている。多数の公知化合物から改めて代表的な選択を挙げるが、本発明の使用可能性はこれらに限定されない。
【0023】
ここで、特に好ましいポリマー性分散剤の代表的な選択としては、ホルムアルデヒドと置換されたおよび置換されていない長鎖および短鎖アルキルフェノール類(炭素数1〜20)との縮合生成物、ならびにそれらのアルコキシル化生成物、ノボラックおよび誘導体;置換されたフェノールとスチレンの縮合生成物を含めたスチレン−フェノール縮合物およびそれらのアルコキシル化生成物が挙げられる。さらに、これらの縮合生成物は、イオン性誘導体として、例えばスルフェート類、スルホネート類、コハク酸半エステル類、ホスフェート類、ホスホネート類またはカルボキシレート類およびそれらの塩として存在することができる。部分的または完全に中和されたアクリレート樹脂、修飾ポリアクリレート類、およびアクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステル類および/またはそれらのアミド類のコポリマーもまた挙げられる。対応するコポリマーのためのさらなるモノマー構成ユニットは、マレイン酸および/またはそのエステル、アミド類および/または無水物および/またはスチレンであってもよい。ポリマー性分散剤は大抵、1000〜100000g/mol、好ましくは2000〜50000g/molの間のMの平均モル質量を示し、ランダムポリマーまたはブロックポリマーとして存在することができる。
【0024】
ここで、特に好ましい界面活性剤型の分散剤の代表的な選択としては、直鎖状および分岐状の、飽和および不飽和アルキルスルホネート類、例えばドデシルスルホネート、ラウリルスルホネートおよびステアリルスルホネート、ならびに対応のアルキルホスフェート類が挙げられる。さらに、非分岐状または分岐状の、直鎖状または環状のC−C20−アルキル残基、または置換されているかまたは非置換のアリール残基、または直鎖状の脂肪アルコール類、脂肪酸、脂肪アミン類または脂肪アミド類を使用することができる。適切なアルキレンオキシド類の例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはスチレンオキシドである。これらのアルコキシル化生成物はさらに、イオン性の頭部基を、例えばスルフェート、スルホネート、コハク酸半エステル、ホスフェート、ホスホネートまたはカルボキシレートおよびそれらの塩として、備えていてもよい。さらに、レシチン類およびスルホスクシネート類も適している。
【0025】
成分(C)の意味において化合物(I)は、ポリヒドロキシ−アミン
【0026】
【化2】
[式中、Rは、H、C−C−アルキル、CHCHOHまたはCHCH(CH)OHであることができる]である。
【0027】
好ましくは、Rは、H、メチルまたはCHCHOHである。
【0028】
ポリヒドロキシ単位は、ヘキソース、好ましくはエピマーグルコースである。
【0029】
式(I)のアルキルグルカミン類の製造のための方法は、当業者に十分に知られている。それは、R=C−C−アルキルである化合物に関しては、例えばEP−A−1676831に記載の方法に従って、水素および遷移金属触媒の存在下における、N−アルキルポリヒドロキシルアミン類のアルデヒド類またはケトン類での還元アルキル化により行われる。ヒドロキシエチル−およびヒドロキシプロピル−N−メチル−グルカミンは、水溶液においてN−メチルグルカミンとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを反応させることにより製造することができる。式(I)の化合物は、純粋な物質として、または水溶液として使用することができる。3級アミン類、例えばジメチルグルカミン、ヒドロキシエチル−およびヒドロキシプロピル−N−メチル−グルカミンはあまりニトロソアミンを形成する傾向がないので、これらは本発明の分散体のために好ましい。
【0030】
本発明の分散体のポリアルキレングリコール類(成分(D))は、アルキレンオキシド類のホモーまたはコポリマーである。適切なアルキレンオキシド類の例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはスチレンオキシドである。さらに、1価、2価、3価、4価または5価のアルコールまたは一官能性、二官能性、三官能性、四官能性または五官能性アミンから出発され、分岐したまたは星状の構造を有するポリアルキレングリコール類を使用することができる。使用されるポリアルキレングリコール類は、通常、4〜1000モル、好ましくは4〜200モルのアルキレンオキシドを含む。
【0031】
さらに、使用できる、水性顔料分散体の製造のための慣用の添加剤(成分(E))は、防腐剤/殺生物剤、消泡剤、脱気剤(Entluefter)、フィラー、溶剤、光安定剤、酸化防止剤または増粘剤、沈降防止剤およびレオロジー添加剤である。追加的な湿潤剤は、例えば、ポリシロキサンエーテル類をベースとする湿潤剤であってもよい。
【0032】
本発明の水性の顔料分散体の製造のために使用される水(成分(F))、は、好ましくは、蒸留水または脱塩水の形態で使用される。飲料水(水道水)および/または天然源の水もまた使用することができる。
【0033】
本発明のさらなる対象はまた、本発明の顔料分散体の製造方法である。このために、通常は粉末、フレークまたは粒状物の形態で存在する成分(A)を、水(F)ならびに成分(B)および(C)および任意選択的に(D)および(E)の存在下で、それ自体は慣用の方法で分散させる。引き続き、任意選択的に、得られた水性の顔料分散体を所望の濃度に調節するために、さらに水(F)を混合することができる。好ましくは、液体成分(B)、(C)、(F)および任意選択的に(D)を最初に混合して均一化し、引き続き、粉末状、粒状またはフレーク状の固体成分(A)および(D)を仕込んだ混合物中に混ぜ入れて、顔料および任意選択的にフィラーをペースト化し、予備分散させる。引き続き、使用する顔料の粒の硬さに応じて、これを任意選択的に冷却下で、粉砕装置または分散装置を用いて微分散または微細化させる。このためには、撹拌機、ディゾルバー(鋸歯撹拌機)、ローター・ステーターミル、ボールミル、撹拌ボールミル、例えばサンドミル及びビーズミル、高速ミキサー、混練装置、ロールミルまたは高性能ビーズミルを使用することができる。顔料の微分散または粉砕は、所望の粒度分布になるまで行われ、0〜100℃の範囲の温度で、適切には10〜70℃の間の温度で、好ましくは20〜60℃で行うことができる。微分散に続いて、顔料調合物を水(F)でさらに希釈してもよい。しかしながら、本発明の顔料分散体の製造は上記方法に制限されず、従って例えば成分(C)を予備粉砕の後にのみ添加することもできる。
【0034】
本発明の顔料分散体は、全ての種類の高分子量材料の顔料着色または着色に適している。特に、本発明の顔料分散体は、水性および溶剤含有の無色および隠蔽性の塗料およびエマルションペイント、分散ラッカー(Dispersionslacken)、印刷インク、例えば繊維材料用印刷インク、フレキソ印刷用インク、装飾用インクまたは凹版印刷用インク、壁紙用着色料;水性の、水で希釈可能なおよび溶剤含有の、無色および隠蔽性のラッカー、木材着色料、木材保護系、および物品、例えば金属製、木製、プラスチック製、ガラス製、セラミック製、コンクリート製、繊維材料製、紙製またはゴム製の物品の表面被覆用のラッカーに適している。
【0035】
本発明の顔料分散体の特別な特性は、それらのユニバーサル調色ペーストとしての使用である。ユニバーサル調色ペーストは、水性塗料の着色のためにも、溶剤含有ラッカーの調色のためにも適している。水性顔料調合物を溶剤含有ラッカーの着色のために使用すると、顔料の凝集およびラッカー中における凝集顔料の浮遊が生じ得、これは有彩顔料の場合には着色力の喪失により、または白色顔料の場合には隠蔽力の喪失により明らかになる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.以下を含む、バインダー不含水性顔料分散体:
(A)少なくとも1種の有機および/または無機顔料、
(B)1種または複数種の分散剤および/または界面活性剤
(C)式(I)の少なくとも1種の化合物
【化3】
[式中、Rは、H、C−C−アルキル、CHCHOHまたはCHCH(CH)OHを表す]、および
(F)水。
2.RがメチルまたはCHCHOHを表す、上記1に記載のバインダー不含水性顔料分散体。
3.Rがメチルを表す、上記1に記載のバインダー不含水性顔料分散体。
4.上記無機顔料が金属酸化物顔料であることを特徴とする、上記1〜3のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
5.顔料分散体のpH値が7より大きいことを特徴とする、上記1〜4のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
6.顔料分散体のpH値が8〜10の間であることを特徴とする、上記1〜5のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
7.顔料分散体の全重量を基準として、5〜80重量%の成分(A)を含む、上記1〜6のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
8.顔料分散体の全重量を基準として、0.1〜30重量%の成分(B)を含む、上記1〜7のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
9.顔料分散体の全重量を基準として、0.1〜10重量%の成分(C)を含む、上記1〜8のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
10.顔料分散体の全重量を基準として、0.1〜10重量%の量で、1つまたは複数のポリアルキレングリコール類を成分(D)として含む、上記1〜9のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
11.顔料分散体の全重量を基準として、0〜30重量%の量で、水性顔料分散体の製造のための慣用のさらなる添加剤を成分(E)として含む、上記1〜10のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体。
12.上記1〜11のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体であって、DIN11890−2に従って測定されるそのVOC含有量が0.2%より小さいことを特徴とする、バインダー不含水性顔料分散体。
13.水性の、水で希釈が可能なおよび溶剤含有の、ラッカー、塗料およびインクの着色のための、上記1〜12のいずれか1つに記載のバインダー不含水性顔料分散体の使用。
【実施例】
【0036】

顔料分散体のVOC含有量は、101.3kPaで250℃未満の沸点を示す分散体の個々の成分の合計である。従って、VOC不含顔料分散体を処方するためには、沸点が250℃より高い成分のみが選択されるべきである。慣用のアミン類の使用では(例1および2、表1)、それらの使用濃度に依存して、これらが分散体のVOC含有量に100%寄与する。式(I)のポリヒドロキシアミンは、それらの高い融点および沸点のために、VOCが少ない。
【0037】
【表1】
【0038】
顔料分散体の製造
粉末、粒状物またはプレスケーキのいずれかとしての顔料を、分散剤および他の添加剤と一緒に、脱イオン水においてペーストにし、その後、ディゾルバー(例えばVMA−Getzmann GmbH製の型式AE3−M1)または他の適切な装置を用いて、好ましくは分散ディスクの助けを借りて、均一化し、予備分散させる。分散のために、液体成分、成分(B)および(C)を含む分散剤濃厚物ならびにさらなる成分(D)および(F)を粉砕容器に仕込み、混合する。引き続き粉末状の成分(A)および任意選択的に(E)を添加し、ディゾルバーを用いて予備分散する。後続の微分散をビーズミル(例えばVMA−GetzmannのAE3−M1)を用いるか、または他の適切な分散装置を用いて行い、ここで粉砕は、d=1.3〜1.7mmのサイズのジルコニウム混合酸化物ビーズを用いて冷却下で行う。引き続き粉砕メディアを取り出し、顔料調合物を単離する。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
【表9】
【0047】
【表10】
【0048】
【表11】
【0049】
当該分散体の特性分析のために、これらを最初に7日間60℃で置いた;ここで全てのペーストが上記期間にわたって安定であった。さらに、Haake VT 550−レオメーターにおいて1/60sのせん断速度および23℃の温度で、顔料分散体の粘度を決定した。結果を表3に示すが、これは顔料に典型的な粘度を示す。
【0050】
種々のベースコーティングに基づく顔料分散体の相容性の測定のために、2重量%の分散体を塗料およびラッカーA〜Dに入れて撹拌し、コントラストカード上に200μm付着させ、着色力を測定する。着色力の結果を表3に示すが、本発明の式(I)のポリヒドロキシ−アミンが、赤についても(例8および9)、黄色についても(例13および14)、最も高い着色力を示す。2−(secーブチルアミノ)エタノールを有するペースト(比較例7および12)は、溶剤含有コーティングと非相容性であり、使用中に凝集を引き起こし、従って比色分析は行わない。
【0051】
【表12】
【0052】
部またはパーセントに関する記載は、特段の明記がない限り、重量部または重量パーセントを表す。
【0053】
【表13】
【0054】
白色顔料に関しては、クリアコートでの着色力の測定は適していない。ここではむしろ、塗膜における顔料の微分散の実証として隠蔽力を測定することが適しており;完全な非相容性は顔料のカプセル化をもたらし、塗膜は透明になる(隠蔽力が存在しないかまたはほとんど存在しない)。この目的のために、下記の顔料分散体(例11〜15)を白色顔料で製造し、引き続き隠蔽力を測定した。このために、無色のベース塗料を10重量%のチタン分散体と混合し、400μmの塗膜を黒白コントラストカード上に付着させた。乾燥後、白および黒領域間のコントラストを測定した。
【0055】
【表14】
【0056】
【表15】
【0057】
【表16】
【0058】
【表17】
【0059】
隠蔽力測定の結果を表4に載せる。式(I)のポリヒドロキシアミン類を有する顔料分散体は、全般的に、水性コーティングおよびさらに溶剤含有コーティングにおける隠蔽力の生成に適している。
【0060】
式(I)のポリヒドロキシアミン類は、水性顔料分散体用の中和剤として適しており、その際にVOC含有量に寄与しない。式(I)のポリヒドロキシアミン類が最も高い色受容性(Farbakzeptanz)を担保し、溶剤含有系と水系との間の媒介者としてふるまうので、上記ペーストは、水系および溶剤含有両方の塗料、ラッカーおよびコーティングの着色に適している。
【0061】
【表18】