(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡性スチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、軽量性、断熱性、強度、衛生性に優れ、食品容器、緩衝材、断熱材などに広く利用されている。
【0003】
近年では、環境問題が重要視され、プラスティック製品中に含まれる揮発性有機物を低減させる検討が数多く見受けられる。特に、シックハウス問題等から住宅関連資材等に使用される樹脂成形品に対しては種々の規制も設けられはじめており、部材を構成する原料樹脂中に存在する揮発性有機物を低減させることは非常に重要になって来ている。
【0004】
また、スチレン単量体の製造過程で副産物として生成するフェニルアセチレンは、スチレンの重合において、重合阻害物質として働き、フェニルアセチレンが多いと、最終製品中の残存スチレン量が多くなる。すくない揮発性有機物が要求される部材には、残存スチレン量を低減させるために、低濃度のフェニルアセチレンであるスチレン単量体が原料として使用されている。
【0005】
特許文献1、2では、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネートを使用することで、発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量が大幅に低下する製造方法が開示されている。しかし、この方法では追加量の範囲が記載されていない。フェニルアセチレン含有量の多いスチレンを使用すると、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネートは追加量を増やす必要がある。この場合、重合終了後に実施する110〜120℃の処理時に分子量の低下が大きく、最終製品の分子量が低くなる傾向にあった。その結果、耐熱性や強度が悪化するという問題があった。
【0006】
特許文献3では10時間半減期温度が50℃から80℃の低温型重合開始剤とn−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート又はt−ヘキシルパーオキシイソプロピレンモノカルボネートを使用することで、水漏れ防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が開示されている。しかし、残存スチレン量に関する記載はなく、特許文献で開示される方法では残存スチレン量は十分に低下しにくいという問題があった。
【0007】
特許文献4、特許文献5では、1,1−ビス(t-ブチルパーオキシ)−3,3,3−トリメチルシクロヘキサンや1,1−ビス(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のケタール構造を有し、10時間半減期温度が100℃以上110℃以下である開始剤を併用することによって、発泡性スチレン系樹脂粒子中の残存スチレン量を大幅に減少させる製造方法が開示されている。しかし、フェニルアセチレン量が50ppm以上存在するスチレン単量体を用いた場合、当該方法では、残存スチレン量を十分に低下しにくいといった問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、フェニルアセチレンの含有量が多いスチレン系単量体を使用しても、残存スチレン量が少なく、良好な耐熱性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、、特定の重合開始剤及び追加量を採用することで、フェニルアセチレンの含有量が50ppm以上のスチレンを使用しても、残存スチレン300ppm以下にでき、かつ良好な耐熱性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることがが出来ることを見出し本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
[1]スチレン系樹脂種粒子に、フェニルアセチレンの含有量が50ppm以上であるスチレン系単量体を含浸させながら重合せしめることによって得られる発泡性スチレン系樹脂粒子であって、スチレン系樹脂種粒子とスチレン系単量体の総量100重量部に対して、一般式(1)に示される化合物0.050重量部〜0.180重量部を重合開始剤として使用することを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中のR
1は、分岐アルキル基、R
2は分岐鎖又は直鎖のアルキル基を表す。)
[2]残存スチレンモノマーの含有量が300ppm以下であことを特徴とする[1]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【0014】
[3]重量平均分子量が25〜35万であることを特徴とする[1]または[2]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【0015】
[4]一般式(1)のR
1構造がt−ブチル基あるいはt−アミル基であり、R
2構造が2−エチルヘキシル基、あるいはイソプロピル基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【0016】
[5]一般式(1)に示される化合物の10時間半減期温度が96℃以上110℃以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【0017】
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法により得られたことを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
【0018】
[7][6]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡してなることを特徴とする予備発泡粒子。
【0019】
[8][7]に記載の予備発泡粒子を型内成形してなることを特徴とする発泡成形体。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、残存スチレン量を少なくでき、更に良好な耐熱性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0022】
本発明は、スチレン系樹脂種粒子に、フェニルアセチレンの含有量が50ppm以上であるスチレン系単量体を含浸させながら重合せしめることによって得られる発泡性スチレン系樹脂粒子であって、スチレン系樹脂種粒子とスチレン系単量体の総量100重量部に対して、一般式(1)に示される化合物0.050重量部〜0.180重量部を重合開始剤として使用することを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
【0023】
本発明に用いるスチレン系樹脂粒子は、一般的に知られているスチレン系樹脂の粒状物で、スチレン、及び、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられ、さらにスチレンと共重合が可能な成分、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体も包含する。これら共重合が可能な成分を1種又は2種以上使用し共重合に供しても良い。
【0024】
本発明におけるスチレン系樹脂粒子は、水性懸濁液中に分散したスチレン系樹脂種粒子にスチレン系単量体を添加して該種粒子に含浸させながら重合せしめる、いわゆる懸濁シード重合法によって製造されたものを使用することができる。
【0025】
懸濁シード重合法に用いる樹脂種粒子は、(1)通常の懸濁重合法、(2)重合性単量体を規則的な振動下にノズルを通すことにより液滴群として水性媒体中に分散させ、合着および付加的な分散を生じせしめることなく重合させる方法、などによって得ることができる。
【0026】
スチレン系樹脂種粒子の量は、目的とするスチレン系樹脂粒子の量に対して5〜60重量%であることが好ましい。5重量%未満になる場合、水性懸濁液に添加する重合性単量体が樹脂種粒子内で重合せずに、単独で重合する割合が増える傾向にあり、60重量%を超える場合は、一回の重合工程でより多くのモノマーを重合させることが出来ずに、不経済である。
【0027】
発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は200〜600μmであることが好ましい。粒子径が200μmを下回ると、重合時の収率が極端に悪化しコストアップが避けられないのに加え、発泡剤の保持性が低下してビーズライフが短くなる傾向を有するため好ましくなく、600μmを越えると、床下地材を成形する際、金型への充填性が悪くなる傾向を有するため好ましくない。発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径を200〜600μmとするために、スチレン系樹脂種粒子の粒径は200〜300μmが好ましい。
【0028】
本発明で使用する分散剤としては、一般的に懸濁重合に用いられている分散剤、例えば、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩が挙げられる。これら、難水溶性無機塩を用いる場合には、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダなどのアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。また、難溶性無機塩は得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径を調節するために、重合中に1回以上追加することもある。
【0029】
フェニルアセチレン量は50ppm以上である。好ましくは50〜250ppmである。より好ましくは50〜200ppmである。
【0030】
フェニルアセチレン量が250ppmを超える場合には、一般式(1)で示される化合物の使用量を増やす必要があるが、その反面、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量が大きく低下する傾向にある。その結果、耐熱性が低下することが問題となる。
【0031】
本発明で使用する重合開始剤は、一般式(1)で示される化合物であり、R
1はt−ブチル基又はt−アミル基、R
2は分岐鎖又は直鎖のアルキル基構造をもつものであり、具体的には、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等があげられる。
【0033】
(式中のR
1は、分岐アルキル基、R
2は分岐鎖又は直鎖のアルキル基を表す。)
一般式(1)のR
1構造がt−ブチル基あるいはt−アミル基であり、R
2構造が2−エチルヘキシル基、あるいはイソプロピル基であることが、残存スチレン量低減の点で好ましい。
【0034】
特に、一般式(1)の化合物の中で、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度99℃)が、最終製品である発泡スチレン系樹脂粒子の残存スチレン量を低減することができるため好ましい。
【0035】
前記一般式(1)に示す化合物の使用量は、スチレン系樹脂種粒子とスチレン系単量体の総量100重量部に対して、0.050重量部以上0.180重量部以下であり、好ましくは0.060重量部以上0.150重量部以下である。一般式(1)に示す化合物の使用量が、当該範囲内であると、適度な分子量の樹脂が得られ、かつ、残存スチレン量を低減させることが出来る。 0.050重量部未満では、残存スチレン量が多くなり、また残存スチレンの可塑効果で耐熱性が低下する傾向にある。0.180重量部を超える場合、残存スチレン系単量体量を低減させる効果は十分であるが、樹脂の分子量が低下する傾向があり、耐熱性が悪化する。
【0036】
本発明においては、前記一般式(1)については10時間半減期温度が96℃以上110℃以下である事が好ましい。この範囲であれば重合中の開裂量を極力抑制し、熱処理、あるいは発泡剤含浸工程中に効率よく残存スチレン量を減少させる事ができる。10時間半減期温度が95℃未満の場合、重合中の開裂量が増加し、樹脂の分子量を低下させるため好ましくない。この問題の解決方法として、重合温度を下げることも可能であるが、その場合重合時間が延びるため、工業生産上好ましくない。また、逆に10時間半減期温度が110℃を超える場合、熱処理、あるいは発泡剤含浸中に開裂する開始剤の量が不足し、十分に残存スチレン量を減少させることができない。
【0037】
一般式(1)の化合物を使用する場合は、好ましくは110℃以上120℃以下で熱処理工程や発泡剤含浸工程を一定時間実施する
熱処理工程や発泡剤含浸工程の温度が110℃以上120℃以下の場合、特に、前記一般式(1)の10時間半減期温度が96℃以上110℃以下である化合物を使用する為、効率よく、スチレン単量体の安定に重合が進行する。しかし、110℃未満の場合、一般式(1)の化合物のラジカル発生が少なくなり、生産性が低下し、120℃を超えると、重合機の内圧が高くなり、重装備の耐圧を有する重合機が必要となる。
【0038】
発泡性スチレン系樹脂粒子の製造において、一般的には、主に樹脂を形成するための開始剤と主に残存スチレン量を低下させるための開始剤を併用させることが通常行われている。そして、これらの開始剤の選定は重合温度、重合時間、および必要とする樹脂の分子量を勘案して適宜決められる。よって、本発明においても、一般式(1)に示される化合物に、一般に用いられる他の重合開始剤を1種或いは2種以上併用することにより、重合温度、重合時間、樹脂の分子量等の選択幅をより広げた上で、残存スチレン量を低減した良好な製品を得ることができるので、併用することは極めて好ましい実施態様である。ここに、一般に用いられる他の重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル−t−ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチルのような有機化酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などが例示される。
【0039】
一般式(1)に示される化合物は、種樹脂が水中に分散した状態なら、重合開始前に追加しても良いし、重合後半に追加しても良い。例えば、重合工程への昇温前に追加する場合、又は重合時間が6時間で終了する処方において重合5時間目に追加する場合においても十分に残存スチレン量が十分に低下する。
【0040】
得られた本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、残存スチレン系単量体量が300ppm以下であり、好ましくは250pm以下である。下限は、実用的には0ppmになり難いので敢えて表示するなら1ppm以上である。
【0041】
本発明の重量平均分子量は25万〜35万であることが好ましい。より好ましくは27万〜30万である。25万未満では、耐熱性が悪化する傾向にある。35万以上の場合は、耐熱性は良好であるが、融着性が悪化する傾向にある。
【0042】
本発明において使用する発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタンなど炭素数3以上5以下の炭化水素等の脂肪族炭化水素類、およびジフルオロエタン、テトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類などの揮発性発泡剤が挙げられる。また、これらの発泡剤を併用することもできる。使用量としてはスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは2重量部以上6重量部以下、更に好ましくは2.5重量部以上5重量部以下である。2重量%より少ないと、予備発泡時間が長くなるとともに成形時の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、6重量%を越えると、5〜20倍という比較的低倍率に発泡する際に、粒子間の倍率ばらつきが大きくなる傾向を有するため好ましくない。
【0043】
本発明において使用する添加剤としては、目的に応じて可塑剤、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤等が使用できる。可塑剤としては、例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素等があげられ、これらは併用しても何ら差し支えない。気泡調整剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。難燃剤としては、臭素化スチレン、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体、臭素化ノボラック樹脂アリルエーテル、臭素化ポリ(1,3?シクロアルカジエン)及び臭素化ポリ(4?ビニルフェノールアリルエーテル)などの臭素化ポリマーやポリグリセリンジブロモプロピルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)等々の低分子化合物が上げられる。難燃助剤としては、例えば、クメンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン等の高温分解型の有機物があげられる。
【0044】
本発明においては、成形時に融着促進効果のあるステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、硬化ひまし油、硬化大豆油等の高級脂肪酸グリセライド、予備発泡時の集塊化防止効果のあるステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩を使用することができる。これらの添加剤は、発泡性スチレン系樹脂粒子とともにヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ユニバーサルミキサーなどの混合機内で一定時間混合することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子表面に被覆または付着させることができる。さらに、帯電防止剤として一般に使用されるグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド、アルキルスルフォン酸ナトリウム、などの1種または2種以上の併用も可能である。
【0045】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、公知の方法で発泡させて、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが出来る。例えば、一旦予備発泡粒子を作製し、その後型に該予備発泡粒子を充填し成形する方法や、発泡性スチレン系樹脂粒子を直接型に充填し発泡成型する方法等が挙げられる。発泡成形体の製造方法の例としては下記のような方法が挙げられる。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子を回転攪拌式予備発泡装置で、水蒸気を用いて80〜110℃程度で加熱することにより、嵩倍率がの予備発泡粒を得、得られた予備発泡粒子を所望の形状の金型内に充填し、水蒸気などを用いて100〜145℃程度で加熱することによりポリスチレン系樹脂発泡成形体とすることができる。 このようにして得られた、本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体は、残存スチレン系単量体量も少なく、耐熱性が良好なものとなる。
【0046】
本発明における発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡成形体とした時の発泡倍率が3〜30倍、好ましくは5〜20倍、更に好ましくは8〜15倍となるように予備発泡し、成形して建材として使用する。発泡倍率が3倍未満では、単位体積当りの使用樹脂量が多くなりコストアップとなるだけでなく、粒子同士の融着率が低下する傾向を有するため好ましくなく、30倍を超えると圧縮強度が低下するため好ましくない。
【実施例】
【0047】
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例、及び比較例中の樹脂の分子量、及び樹脂中の残存スチレン量、スチレン単量体中のフェニルアセチレン量、難燃性の評価については以下の方法で測定した。なお、「部」「%」は特に断りのない限り重量基準である。
【0048】
(分子量測定法)
発泡性スチレン系樹脂粒子をテトラヒドロフランに溶解し、GPC(東ソー(株)製HLC−8020、カラム:TSKgel Super HZM−H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1min.)にて測定した。
【0049】
(残存スチレン測定法)
発泡性スチレン系樹脂粒子を塩化メチレン(内部標準シクロペンタノール)に溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx−1、カラム温度条件:50→80℃(3℃/min)後、80→180℃昇温(10℃/min)、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、発泡性スチレン系樹脂粒子中に含まれる残存スチレン量(ppm)を定量した。
【0050】
(スチレン単量体中のフェニルアセチレン測定法)
フェニルアセチレン量0ppmのスチレンを用いて、フェニルアセチレン量とシクロペンタノール量の比から導いたフェニルアセチレン量の検量線を作成した。
【0051】
スチレンに、内部標準シクロペンタノールを溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx−1、カラム温度条件:50→70℃(3℃/min)へ昇温し、70℃で30分保持後。70→170℃(10℃/min)へ昇温、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、スチレン中のフェニルアセチレン量(ppm)を定量した。
【0052】
(耐熱性評価)
発泡成形体を150×150×20(t)mmに切り出したサンプル片を、恒温恒湿室に24時間保管した後、70℃で24時間後の加熱寸法変化率を測定した。
◎:加熱寸法変化率が0.55%以上、0.60%未満。
○:加熱寸法変化率が0.60%以上、0.65%未満。
×:加熱寸法変化率が0.65%以上。 (融着性評価)
【0053】
得られた熱可塑性樹脂発泡体を破断し、破断面を観察して、粒子界面ではなく、粒子が破断している割合を求めて、以下の基準にて、融着性を判定した。
◎:粒子破断の割合が90%以上。
○:粒子破断の割合が70%以上、90%未満。
×:粒子破断の割合が70%未満。 (実施例1)
【0054】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>
撹拌機付属の6Lのオートクレーブに、純水重量85重量部、第3リン酸カルシウム0.57重量部、α―オレフィンスルフォン酸ソーダ0.00476重量部、塩化ナトリウム0.1重量部、粒子径が0.2〜0.3mmのスチレン系樹脂種粒子15重量部を仕込んだ後、攪拌を開始した。その後、開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.06重量部を仕込んだ。続いて、92℃まで昇温させた後、ベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.257重量部を4時間50分、フェニルアセチレン濃度80ppmのスチレン単量体85重量部は5時間45分かけて反応器中に仕込みながら重合した。更にスチレン添加終了間際にジビニルベンゼン0.012重量部仕込んだ。その後、30分間92℃を保持した後、直ちに120℃に昇温して1時間保持した。95℃に冷却後、系内にノルマルブタン70%濃度(イソブタン30%濃度)5.7重量部を仕込み更に3時間120℃で保持した後、冷却した。懸濁液を取り出し脱水・乾燥・分級して、粒子径が400〜600μm後、室温まで冷却して、オートクレーブから重合スラリーを取り出した。取り出した重合スラリーを洗浄、脱水・乾燥することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0055】
<予備発泡粒子の製造>
これを回転攪拌式予備発泡装置に投入して、約95℃の水蒸気中で嵩密度が100g/L(発泡倍率:10倍)になるまで約2分間発泡して予備発泡粒子を得た。
【0056】
<発泡成形体の製造>
得られた予備発泡粒子を室温で約24時間養生乾燥した後、縦450mm×横300mm×厚さ10mmの平板状金型内に充填し、0.08MPaの水蒸気で30秒加熱・冷却して取り出した成形体を30℃均熱乾燥機中で24時間養生した後、恒温恒湿室に更に24時間保管し、平板状発泡成形体を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.08重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0058】
(実施例3)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.12重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0059】
(実施例4)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.15重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0060】
(実施例5)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、フェニルアセチレン150ppmのスチレン単量体に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0061】
(実施例6)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、フェニルアセチレン150ppmのスチレン単量体、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.15重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0062】
(実施例7)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、t−アミルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.06重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0063】
(実施例8)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、ベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.205重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
(実施例9)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、フェニルアセチレン量200ppmに変更し、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.180重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0064】
(比較例1)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート0.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0065】
(比較例2)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、特開2011−46790号公報記載のt−ブチルパーオキシー2−エチルヘキシルモノカーボネート相当する0.045重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0066】
(比較例3)
<発泡性スチレン系樹脂粒子の製造>において、フェニルアセチレン濃度80ppmのスチレン単量体を使用した以外は、特開2004−155870号公報の方法で発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、型内発泡成形体を得た。評価結果を、表1に示す。
【0067】
【表1】