(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の床構造では、床衝撃音は低減できるものの、床剛性が低いため、床に大きな荷重が繰り返し加わった場合には、床の沈み込みが大きくなってしまうといった問題点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、十分な床衝撃音低減性能を確保しつつ、床の沈み込みを抑制することのできる床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床スラブと、床スラブのスラブ面上に設けられた吸音層と、吸音層上に設けられた下地層と、下地層上に設けられた仕上げ層とを備えた床構造であって、前記下地層は、前記吸音層側に設けられた制振用下地層と、前記仕上げ層側に設けられた遮音用下地層とを備え、
前記制振用下地層と前記遮音用下地層と前記仕上げ層とが前記吸音層上に積層され、前記遮音用下地層と前記制振用下地層とがそれぞれ複数の板部材から成り、前記制振用下地層を構成する板部材の一方の辺の延長方向を幅方向とし、他方の辺の延長方向を長さ方向としたとき、前記制振用下地層を構成する板部材は、前記幅方向に馬踏み目地張りされており、前記制振用下地層を構成する板部材が、前記板部材の角部の近傍、もしくは、
前記長さ方向の辺の近傍でかつ前記角部の幅方向にそれぞれ隣接する板部材の前記角部の近傍
のいずれか一方のみで、前記遮音用下地層を構成する板部材に固定さ
れていることを特徴とする。
このように、制振用下地層を構成する板部材と遮音用下地層を構成する板部材とを一体化する構成とすれば、制振用下地層の厚さを厚くすることなく、床剛性を高めることができるので、十分な床衝撃音低減性能を確保しつつ、床の沈み込みを抑制することができる。
このとき、前記制振用下地層を構成する板部材を馬踏み目地張りするとともに、制振用下地層を構成する板部材と遮音用下地層を構成する板部材とを、制振用下地層を構成する板部材の角部
の近傍、もしくは、前記長さ方向の辺の近傍でかつ前記角部の幅方向にそれぞれ隣接する板部材の前記角部の近傍のいずれか一方のみで固定
することで、
床剛性が不要に増加することを防止できるようにしたので、クッション性を低下させることなく、床の沈み込み
を抑制することができる。
【0007】
ま
た、前記制振用下地層を構成する板部材を、前記幅方向の両側の角部で、前記遮音用下地層を構成する板部材に固定したので、床剛性を効果的に高めることができる。
【0008】
また、前記制振用下地層を構成する板部材が、前記遮音用下地層を構成する板部材に固定されている箇所を固定箇所としたとき、前記固定箇所の下部に位置する吸音層を、スラブ面上に載置されるゴムブロック体と、前記ゴムブロック体の上に設けられた板部とを備えたゴム吸音層とし、前記固定箇所の下部以外の箇所に位置する吸音層を無機質繊維により形成される繊維吸音層としたので、クッション性を低下させることなく、床の沈み込みを抑制できる。
また、前記制振用下地層を構成する板部材を、前記遮音用下地層を構成する板部材と前記ゴム吸音層の板部とに固定したので、床剛性を更に向上させることができ、床の沈み込み抑制効果を更に高めることができる。
また、前記ゴム吸音層のゴムブロック体をスラブ面に接着固定して、スラブと一体化したので、床剛性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
実施の形態1.
図1(a),(b)は本実施の形態1に係る床構造1を示す図で、同図において、2は床スラブ、3は床スラブ2のスラブ面2S上に設けられた吸音層、4は吸音層3上に設けられた制振用下地層、5は制振用下地層4上に設けられた遮音用下地層、6は遮音用下地層5上に設けられた床仕上げ層である。
吸音層3は、例えば、グラスウール、または、ロックウール等の無機質繊維を板状に成形した複数の無機質繊維板3Pにより形成されて、床仕上げ層6から伝播される振動を吸収するとともに、スラブ面2Sの不陸を吸収する。
制振用下地層4は、例えば、パーティクルボードなどの木質板材から成る、平面視正方形状の下地合板4Pと、下地合板4Pの遮音用下地層5側に貼り付けられたアスファルトマットなどの制振シート4Qとを備える。
【0011】
また、本例では、制振シート4Qを、下地合板4Pと同じ大きさの正方形状のマットを用いるとともに、制振用下地層4を構成する制振シート4Q及び下地合板4Pと、吸音層3を構成する無機質繊維板3Pとを一体化した吸音積層板7Pを作製し、この吸音積層板7Pを床スラブ2上に複数枚配置することで、吸音層3と制振用下地層4とを構成した。
本例では、吸音積層板7Pを、幅方向に馬踏み目地張りすることで、制振用下地層4自身の剛性についても確保するようにしている。
なお、制振シート4Qとしては、複数の下地合板4Pを覆うような大きさのマットを用いてもよい。
遮音用下地層5は、吸音積層板7P上に配置される複数のガラス繊維不織布入り石膏板5Pから構成される。ガラス繊維不織布入り石膏板5Pは、安価で、かつ、針葉樹合板等の木製合板と同程度の床衝撃音低減性能と耐荷重性能を有するので、遮音性能を有する板材として好適に用いられる。
床仕上げ層6は、例えば、フローリング等の床仕上げ材から成る床仕上げ板6Pをガラス繊維不織布入り石膏板5P上に配置して構成される。
【0012】
吸音層3と制振用下地層4と遮音用下地層5と床仕上げ層6とが積層された積層体の全体の厚さとしては、例えば、50mm〜100mm程度、好ましく60mm程度以下とすることが好ましい。
具体的には、無機質繊維板3Pの厚さ寸法を25mm程度、下地合板4Pの厚さ寸法を9.0mm程度、制振シート4Qの厚さ寸法を4mm程度、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pの厚さ寸法を9.5mm程度、床仕上げ板6Pの厚さ寸法を12mm程度とすればよい。
また、本例では、吸音積層板7Pを、例えば、一辺の長さ寸法が905mmの正方形板とし、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pを、例えば、長辺の長さ寸法が1820mm、短辺の長さ寸法が910mmの長方形板とし、床仕上げ板6Pを、例えば、長辺の長さ寸法が1820mm、短辺の長さ寸法が145mmの長尺板とするとともに、吸音積層板7Pとガラス繊維不織布入り石膏板5Pとを、それぞれの目地が重ならないように配置するとともに、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pの目地と床仕上げ板6Pの目地についても重ならないように配置している。
【0013】
本例では、
図1(b)に示すように、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pについては、縦目地及び横目地が直線状である通し目地(芋目地)とするとともに、釘やビス等の接合部材8を用いて、下地合板4Pとガラス繊維不織布入り石膏板5Pとを接合することで、吸音積層板7Pをガラス繊維不織布入り石膏板5Pに固定するようにしている。
下地合板4Pは、その角部近傍、もしくは、長手方向の辺の近傍のいずれか一方のみで、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pに固定されている。
具体的には、
図1(a)に示すように、吸音積層板7Pのうちの、長さ方向に互いに隣接する吸音積層板7P1,7P2を、それぞれの幅方向の一方の側(左側)の角部近傍の位置C11,C21にて、吸音積層板7P1,7P2の上部に位置するガラス繊維不織布入り石膏板5P1に固定するとともに、吸音積層板7P1,7P2の幅方向の一方の側(左側)に隣接する吸音積層板7P3を、吸音積層板7P1,7P2の上記角部側の長辺近傍の位置C33にて同じガラス繊維不織布入り石膏板5P1に固定する。
これにより、3枚の吸音積層板7P1〜7P3が、1枚のガラス繊維不織布入り石膏板5P1を介して連結されるので、下地合板4Pの厚さを厚くすることなく、床剛性を高めることができる。したがって、十分な床衝撃音低減性能を確保しつつ、床の沈み込みを抑制することができる。
なお、
図1(a)では、C33を2箇所としたが、1箇所であってもよい。
【0014】
また、
図1(b)に示すように、吸音積層板7P1,7P2を、幅方向の他方の側(右側)の角部近傍の位置C12,C22にて、吸音積層板7P1,7P2の上部に位置し、かつ、ガラス繊維不織布入り石膏板5P1の幅方向右側に位置するガラス繊維不織布入り石膏板5P2に固定するとともに、吸音積層板7P1,7P2の幅方向の他方の側(右側)に隣接する吸音積層板7P4の吸音積層板7P1,7P2の上記角部側の長辺近傍の位置C43にてガラス繊維不織布入り石膏板5P2に固定してもよい。
このように、吸音積層板7P1,7P2を、それぞれ、幅方向の両側の角部近傍C11,C12及びC21,C22にて、ガラス繊維不織布入り石膏板5P1,5P2に固定すれば、幅方向に隣接する吸音積層板7P3,7P1,7P4及び吸音積層板7P3,7P2,7P4が、遮音用下地層5を構成する板部材であるガラス繊維不織布入り石膏板5P1,5P2を介して連結されるので、床剛性を効果的に高めることができる。
【0015】
ところで、吸音積層板7Pの全てをガラス繊維不織布入り石膏板5Pに固定すると床剛性が高くなりすぎて、十分な床衝撃音低減性能が得られないので、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pに固定する吸音積層板7Pの割合としては、30%〜90%とすることが好ましい。これにより、十分な床衝撃音低減性能を確保しつつ、床の沈み込みを確実に抑制することができる。
なお、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pに固定する吸音積層板7Pの割合は、室の大きさや、ガラス繊維不織布入り石膏板5P及び吸音積層板7Pの大きさ、及び、無機質繊維板3Pの硬度などにより適宜決定すればよい。
【0016】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、吸音層3を無機質繊維板3Pにより形成したが、
図2(a),(b)に示すように、吸音積層板7Pとガラス繊維不織布入り石膏板5Pとの接続箇所(以下、固定箇所Cという)の下部に位置する吸音層3を、スラブ面2S上に載置されるゴム部9aと、ゴム部9aの上に設けられた板部9bとを備えたゴム吸音層9から構成するとともに、下地合板4Pを、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pとゴム吸音層9の板部9bとに固定する構成とすれば、床の沈み込みの抑制を効果的に行うことができる。
ゴム吸音層9のゴム部9aは、板面が平面視正方形状で、板部9b側が平面に形成され、スラブ面2Sと接触する側が凹凸面に形成されたゴムブロック体から成り、板部9bは、例えば、構造用合板から構成される。
ゴムブロック体の凸部91は、例えば、スラブ面2S上に点状接触状態に載置されるように先端部が球面又は点状に形成された山形の突起部により構成されている。また、凹部92は、板部9b側に近づく方向に窪んで底部が球面凹形状に形成された窪み部により構成される。
【0017】
ゴム部9aを構成するゴムとしては、床仕上げ層6の沈み込みを防止できるように、例えば、ショアA硬度が40度〜70度の比較的硬度の高いゴムを用いることが好ましい。
また、板部9bとゴム部9aとを接着剤等で接合するとともに、接着剤等を用いて、ゴム部9aをスラブ面2Sに固定すれば、スラブ面2Sの不陸を効果的に吸収できるとともに、軽量床衝撃音低減性能を向上させることができる。
なお、ゴム吸音層9の板部9bとしては、固定箇所C(C11,C21及びC33,C33、もしくは、C12,C22及びC43,C43など)を全て含む平板状とすることが好ましい。この場合、板部9bとしては、例えば、一辺の長さが90mm程度の正方形で、厚さ寸法Dが12mm程度の構造用合板から構成することが好ましい。
また、ゴム部9aは、板部9bと同じく、正方形の板面の一辺の寸法が90mm、厚さ寸法が13mmの直方体形状に形成される。
【0018】
次に、固定箇所Cの下部に位置する吸音層3をゴム吸音層9とし、固定箇所Cの下部以外の箇所に位置する吸音層3を無機質繊維により形成される繊維吸音層とする方法について説明する。
まず、
図3(a)に示すように、吸音積層板7Pの無機質繊維板3Pのうち、固定箇所Cの下部に位置する無機質繊維を所定量カットした吸音積層板7P’を作成した後、
図3(b)に示すように、互いに隣接する3枚の吸音積層板7P’1,7P’2,7P’4のカットされた部分S1,S2,S4に、ゴム吸音層9を、板部9bが下地合板4P側となり、ゴム部9aがスラブ面2S側になるように、挿入して固定する。本例では、ゴム吸音層9を、4つの固定箇所Cを全て含むように作製したので、当然のことながら、カットする無機質繊維の大きさとしては、吸音積層板7P’1,7P’2では、板部9bの面積の1/4の面積となり、吸音積層板7P’4では、板部9bの面積の1/2の面積となる。
例えば、固定箇所がC12,C22,C43,C43である場合には、吸音積層板7P1の右下側の繊維吸音層、吸音積層板7P2の右上側の繊維吸音層をそれぞれ45mm×45mmずつカットするとともに、吸音積層板7P4の中央左側繊の維吸音層を90mm×45mmカットし、そのカットされた部分に、ゴム吸音層9を挿入固定することで、
図3(c)に示すような、下地合板4Pの固定箇所C12,C22及びC43,C43の下部にはゴム吸音層9を配置し、それ以外の箇所には繊維吸音板7Pを配置する構成を実現することができる。
また、吸音積層板7P1,7P2を、それぞれ、幅方向の両側の角部近傍C11,C12及びC21,C22にて、ガラス繊維不織布入り石膏板5P1,5P2に固定する場合には、吸音積層板7P1の下側左右の繊維吸音層と吸音積層板7P2の上側左右の繊維吸音層とをそれぞれ45mm×45mmずつカットするとともに、吸音積層板7P3の中央右側の繊維吸音層と吸音積層板7P4の中央左側の繊維吸音層をそれぞれ90mm×45mmずつカットし、そのカットされた部分に、ゴム吸音層9を挿入固定すればよい。
なお、固定箇所Cを有する吸音積層板7Pのそれぞれにゴム吸音層を設けてもよいが、本例のように、固定箇所Cを全て含むゴム吸音層9とすれば、3つの下地合板4Pが、1枚のガラス繊維不織布入り石膏板5Pと1つのゴム吸音層9の板部9bとに固定される構成となるので、床の沈み込みの抑制とを更に効果的に行うことができる。
【0019】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態1,2に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態1,2に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0020】
例えば、前記実施の形態1,2では、吸音積層板7Pを正方形板とし、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pを長方形板としたが、吸音積層板7P及びガラス繊維不織布入り石膏板5Pは、正方形板であっても長方形板であってもよい。いずれの場合も、下地合板4Pが、角部もしくは
長さ方向の辺の近傍にて、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pに固定される構成であれば、下地層の厚さを厚くすることなく、床剛性を高めることができるので、十分な床衝撃音低減性能を確保しつつ、床の沈み込みを抑制することができる。
また、前記実施の形態1,2では、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pを縦目地及び横目地が直線状である通し目地(芋目地)としたが、
図4(a)に示すように、馬踏み目地としてもよい。
また、前記実施の形態1,2では、ゴム吸音層9を、下地合板4Pの幅方向の両側の下部に設けたが、
図4(b)に示すように、ゴム吸音層9を千鳥状にするなどしてもよい。
要は、下地合板4Pを、その角部近傍にて、ガラス繊維不織布入り石膏板5P、もしくは、ガラス繊維不織布入り石膏板5Pとゴム吸音層9の板部9bとに固定する構成とすれば、床剛性の向上と床の沈み込みの抑制とを効果的に行うことができる。