【実施例】
【0046】
1.塗料用樹脂組成物の調製
下記調製例に従って、塗料用樹脂組成物を調製した。なお、塗料用樹脂組成物及びその前駆体となるオルガノポリシロキサン化合物、アクリル樹脂溶液及びアクリル樹脂分散液の樹脂固形分、酸価、カルボキシル基当量、水酸基価、エポキシ当量、アミン当量、活性水素(NH)価、エチレン性不飽和二重結合基当量、数平均分子量及び重量平均分子量は、下記の方法で測定、算出した。
<樹脂固形分>
1.0gの樹脂溶液、樹脂分散液又は樹脂組成物をアルミカップに精秤し、これを150℃オーブンで30分乾燥させた。乾燥後、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を樹脂固形分(質量%)として求めた。
<酸価>
JIS K 5601−2−1に記載の方法に準じて、樹脂1g中の遊離酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量し、樹脂固形分の酸価を求めた。
<カルボキシル基当量>
上記で算出した酸価の値を用い、樹脂固形分のカルボキシル当量を算出した。
<水酸基価>
樹脂1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量し、樹脂固形分の水酸基価を求めた。
<エポキシ当量>
JIS K 7236に記載の指示薬滴定法に準じて、エポキシ当量を算出した。
<アミン当量>
試料調製に使用する原料の仕込み量から、樹脂試料のアミン当量を算出した。
<活性水素価(NH価)>
上記で算出した、アミン当量値を用いて、活性水素当量を算出後、樹脂試料中に含まれるアミンの水素1つ当たりの活性水素価(NH価)を算出した。
<エチレン性不飽和二重結合基当量>
アクリル樹脂を合成後、樹脂の変性に使用するエチレン性不飽和二重結合を有する原料の仕込み量から、エチレン性不飽和二重結合当量を算出した。
<数平均分子量(ポリスチレン換算数平均分子量)>
数平均分子量(Mn)の測定は、TSKgelカラム(東ソー(株)製)を用い、RIを装備したGPC(東ソー(株)製;HLC−8220GPC)により求めた。GPCの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を標準物質として用いた。
<重量平均分子量(ポリスチレン換算重量平均分子量)>
重量平均分子量(Mw)の測定は、TSKgelカラム(東ソー(株)製)を用い、RIを装備したGPC(東ソー(株)製;HLC−8220GPC)により求めた。GPCの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を標準物質として用いた。
【0047】
1−1.(A)成分:オルガノポリシロキサン化合物の入手又は調製
下記のオルガノポリシロキサン化合物を入手又は調製した。
【0048】
1−1−1.KF−8010
KF−8010(信越化学工業(株)製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル)は、分子内に2つのアミノ基を有するが、Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
KF−8010のアミン当量は430g/eqであった。
また、KF−8010の主鎖の数平均分子量は860であった。主鎖に結合する有機置換基はアミノアルキル基及びメチル基であった。
KF−8010は2方分岐構造(D構造)のみを有する化合物であった。
【0049】
1−1−2.DC3055
DC3055(Dow Corning Corp.製、アミノ基含有シリコーンレジン)は、分子内に5つ(推定値)のアミノ基を有するが、Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
DC3055のアミン当量は520g/eqであった。
また、DC3055の主鎖の数平均分子量は1300であった。主鎖に結合する有機置換基はアミノアルキル基、メチル基及びフェニル基であった。
DC3055は2方分岐構造(D構造)及び2以上20以下の3方分岐構造(T構造)を有する化合物であった。
【0050】
1−1−3.MCR−A11
MCR−A11(Gelest Inc.製、片末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル)は、分子内に1つのアミノ基を有するが、−Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
MCR−A11のアミン当量は350g/eqであった。
また、MCR−A11の数平均分子量は350であった。主鎖に結合する有機置換基はアミノプロピル基、メチル基及びブチル基であった。
MCR−A11は2方分岐構造(D構造)のみを有する化合物であった。
【0051】
1−1−4.KF−54
KF−54(信越化学工業(株)製、ポリフェニルメチルシロキサン型シリコーンオイル)は、分子内にアミノ基を有さず、−Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
KF−54のアミン当量は0g/eqであった。
また、KF−54の数平均分子量は測定できなかった。主鎖に結合する有機置換基はメチル基及びフェニル基であった。
KF−54は2方分岐構造(D構造)のみを有する化合物であった。
【0052】
1−1−5.PAM−E
PAM−E(信越化学工業(株)製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル)は、分子内にアミノ基を2つ有するが、−Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
PAM−Eのアミン当量は130g/eqであった。
また、PAM−Eの数平均分子量は260であった。主鎖に結合する有機置換基はアミノアルキル基及びメチル基であった。
PAM−Eは2方分岐構造(D構造)のみを有する化合物であった。
【0053】
1−1−6.DMS−A31
DMS−A31(Gelest Inc.製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル)は、分子内にアミノ基を2つ有するが、−Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
DMS−A331のアミン当量は12500g/eqであった。
また、DMS−A31の数平均分子量は25000であった。主鎖に結合する有機置換基はアミノプロピル基及びメチル基であった。
DMS−A31は2方分岐構造(D構造)のみを有する化合物であった。
【0054】
1−1−7.KF-8012
KF−8012(信越化学工業(株)製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル)は、分子内にアミノ基を2つ有するが、−Si−OH基及び−Si−O−C−基を含まないオルガノポリシロキサン化合物である。
KF−8012のアミン当量は2200g/eqであった。
また、KF−8012の数平均分子量は4400であった。主鎖に結合する有機置換基はアミノアルキル基及びメチル基であった。
KF−8012は2方分岐構造(D構造)のみを有する化合物であった。
【0055】
1−1−8.シロキサン化合物A
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器等を備えた反応容器中に、ソルベッソ100(東燃ゼネラル石油(株)製、芳香族炭化水素溶剤) 40.00質量部、Z6018(Dow Corning Corp.製、シラノールオリゴマー) 50.00質量部を入れ、これを60℃で加熱撹拌し、Z6018を溶解させた。
【0056】
(第2工程)
100℃に昇温し、3−アミノプロピルトリメトキシシラン10.00質量部を滴下しつつ加熱撹拌し、シロキサン化合物Aを得た。なお、シロキサン化合物Aの樹脂固形分は、60.0質量%であった。また、固形分の活性水素価(NH価)は104mgKOH/gであった。
シロキサン化合物Aは、分子内に−Si−OH基及び−Si−O−C−基(−Si−OCH
3)を有するため、本発明の(A)成分のオルガノポリシロキサン化合物には該当しなかった。
【0057】
1−1−9.シロキサン化合物B
下記の表1に示す化合物及びその使用量に変更する以外は、シロキサン化合物Aと同様の方法により、シロキサン化合物Bを調製した。なお、シロキサン化合物Bの樹脂固形分及び活性水素当量を表1に示す。
シロキサン化合物Bは、分子内に−Si−OH基及び−Si−O−C−基(−Si−OCH
3)を有するため、本発明の(A)成分のオルガノポリシロキサン化合物には該当しなかった。
【0058】
【表1】
なお、表1中、各成分の使用量は、質量部で示される。
【0059】
1−2.(B)成分:アクリル樹脂溶液の調製
下記調製例に従って、アクリル樹脂溶液(アクリル樹脂溶液A〜U)及びアクリル樹脂分散液を調製した。
【0060】
1−2−1.アクリル樹脂溶液A
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器等を備えた反応容器中に、ソルベッソ100(東燃ゼネラル石油(株)製、芳香族炭化水素溶剤) 7.10質量部、ミネラルスピリット17.00質量部を入れ、これを加熱撹拌し、100℃に達してから、スチレン 6.00質量部、メタクリル酸メチル 21.48質量部、メタクリル酸2−エチルへキシル 8.30質量部、アクリル酸2−エチルへキシル 11.90質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル 5.10質量部、メタクリル酸 1.32質量部及びターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.60質量部を予め混合して得た混合物を3時間かけて滴下しつつ加熱撹拌し、第1混合物を得た。
【0061】
(第2工程)
滴下終了後、100℃を保持したまま、第1工程で得た第1混合物中に、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.60質量部及びミネラルスピリット 0.60質量部、ソルベッソ100 1.20質量部を予め混合して得た混合物を1時間かけて滴下し、第2混合物を得た。さらに100℃で2.5時間撹拌を続けた後、第2混合物を冷却した。第2混合物にソルベッソ100 18.80質量部を加えて攪拌し、アクリル樹脂溶液Aを得た。
アクリル樹脂溶液Aは、「アミノ基と反応することができる有機官能基」としてのカルボキシル基と、水酸基とを分子内に有する樹脂の溶液であった。
アクリル樹脂溶液Aの樹脂固形分は、55.2質量%であった。
アクリル樹脂溶液Aの固形分の水酸基価は39.9mgKOH/g、酸価は15.6mgKOH/gであり、カルボキシル基当量は3594g/eqであり、ポリスチレン換算数平均分子量は8100であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は39800であった。
したがって、アクリル樹脂溶液Aは、本発明の(B)成分に該当した。
【0062】
1−2−2.樹脂溶液B〜T
表2に示す化合物及びその使用量に変更する以外は、アクリル樹脂溶液Aと同様の方法により、樹脂溶液B〜Tを調製した。なお、樹脂溶液の樹脂固形分、樹脂固形分の水酸基価、酸価、カルボキシル基当量、エポキシ当量、ポリスチレン換算数平均分子量、ポリスチレン換算重量平均分子量、アミノ基と反応できる有機官能基、樹脂1分子中のアミノ基と反応できる有機官能基の数を表2に示す。
なお、アクリル樹脂溶液J〜P、S及びTは、「アミノ基と反応することができる有機官能基」としてのカルボキシル基と、水酸基とを分子内に有する樹脂の溶液であった。
アクリル樹脂溶液B〜Iは、「アミノ基と反応することができる有機官能基」としてのエポキシ基と、水酸基とを分子内に有する樹脂の溶液であった。
アクリル樹脂溶液Qは、水酸基は有するが、「アミノ基と反応することができる有機官能基」を有さない樹脂の溶液であり、本発明の(B)成分には該当しなかった。
アクリル樹脂溶液Rは、「アミノ基と反応することができる有機官能基」としてのエポキシ基を有するが、水酸基は有さない樹脂の溶液であり、本発明の(B)成分には該当しなかった。
アクリル樹脂溶液Sは、樹脂固形分のポリスチレン換算重量平均分子量が2900であり、本発明の(B)成分には該当しなかった。
アクリル樹脂溶液Tは、樹脂固形分の水酸基価が3.9mgKOH/gであり、本発明の(B)成分には該当しなかった。
アクリル樹脂溶液B〜Pは、本発明の(B)成分に該当した。
【0063】
【表2】
【0064】
なお、表中、各成分の使用量は、質量部で示される。
【0065】
1−2−3.アクリル樹脂溶液U
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器等を備えた反応容器中に、ソルベッソ100(東燃ゼネラル石油(株)製、芳香族炭化水素溶剤) 7.10質量部、ミネラルスピリット17.00質量部を入れ、これを加熱撹拌し、100℃に達してから、スチレン 5.65質量部、メタクリル酸メチル 19.83質量部、メタクリル酸2−エチルへキシル 7.85質量部、アクリル酸2−エチルへキシル 11.29質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル7.10質量部及びターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.60質量部を予め混合して得た混合物を3時間かけて滴下しつつ加熱撹拌し、第1混合物を得た。
【0066】
(第2工程)
滴下終了後、100℃を保持したまま、第1工程で得た第1混合物中に、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.60質量部、ミネラルスピリット 0.60質量部及びソルベッソ100 1.20質量部を予め混合して得た混合物を1時間かけて滴下し、第2混合物を得た。さらに100℃で2.5時間撹拌を続けた後、第2混合物にソルベッソ100 18.80質量部を加えて攪拌し、第3混合物を得た。
【0067】
(第3工程)
希釈終了後、メタクリル酸2−イソシアナトエチル2.38部を加え、100℃で2時間反応させた。IR(赤外吸収)スペクトル測定でメタクリル酸2−イソシアナトエチル由来のイソシアネート基の消失を確認後、冷却し、アクリル樹脂溶液Uを得た。
アクリル樹脂溶液Uは、「アミノ基と反応することができる有機官能基」としてのエチレン性不飽和二重結合基(メタクリロイル基)と、水酸基とを分子内に有する樹脂の溶液であった。
アクリル樹脂溶液Uの樹脂固形分は、55.2質量%であった。
アクリル樹脂溶液Uの固形分の水酸基価は39.9mgKOH/g、エチレン性不飽和二重結合当量は3596g/eqであり、ポリスチレン換算数平均分子量は8550、ポリスチレン換算重量平均分子量は40300であった。なお、樹脂溶液の樹脂固形分、樹脂固形分の水酸基価、エチレン性不飽和二重結合当量、ポリスチレン換算数平均分子量、ポリスチレン換算重量平均分子量、アミノ基と反応できる有機官能基、及び、樹脂1分子中のアミノ基と反応できる有機官能基の数を表3に示す。
したがって、アクリル樹脂溶液Uは、本発明の(B)成分に該当した。
【0068】
【表3】
【0069】
なお、表3中、各成分の使用量は、質量部で示される。
【0070】
1−2−4.アクリル樹脂分散液
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器等を備えた反応容器中に、ソルベッソ100(東燃ゼネラル石油(株)製、芳香族炭化水素溶剤) 3.83質量部、ミネラルスピリット9.18質量部を入れ、これを加熱撹拌し、100℃に達してから、スチレン 2.27質量部、メタクリル酸ターシャリーブチル 9.03質量部、メタクリル酸2−エチルへキシル 3.17質量部、アクリル酸2−エチルへキシル 5.01質量部及びターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.22質量部を予め混合して得た混合物を3時間かけて滴下しつつ加熱撹拌し、第1混合物を得た。
【0071】
(第2工程)
滴下終了後、100℃を保持したまま、第1工程で得た第1混合物中に、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.22質量部及びミネラルスピリット 0.22質量部を予め混合して得た混合物を1時間かけて滴下し、さらに100℃で2.5時間撹拌を続けた後、ソルベッソ100 10.45質量部を加えて攪拌し、第2混合物を得た。
【0072】
(第3工程)
100℃を保持したまま、第2工程で得た第2混合物中に、スチレン 6.40質量部、メタクリル酸メチル 9.26質量部、アクリル酸エチル 12.02質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル 5.00質量部、メタクリル酸 1.32質量部及びターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.65質量部を予め混合して得た混合物を4時間かけて滴下しつつ加熱撹拌し、第3混合物を得た。
【0073】
(第4工程)
滴下終了後、100℃を保持したまま、第3工程で得た第3混合物中に、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 0.65質量部及びミネラルスピリット 0.65質量部、ソルベッソ100 1.30質量部を予め混合して得た混合物を1.5時間かけて滴下し、さらに100℃で2.5時間撹拌を続けた後、ソルベッソ100 11.75質量部及びミネラルスピリット7.40質量部を加えて攪拌し、アクリル樹脂分散液を得た。
アクリル樹脂分散液は、「アミノ基と反応することができる有機官能基」としてのカルボキシル基と、水酸基とを分子内に有する樹脂の分散液であった。
アクリル樹脂分散液の樹脂固形分は、55.0質量%であった。
アクリル樹脂分散液中の固形分の水酸基価は39.2mgKOH/g、酸価は15.7mgKOH/gであり、カルボキシル基当量は3584g/eqであり、ポリスチレン換算数平均分子量は8700、ポリスチレン換算重量平均分子量は121300であった。なお、樹脂分散液の樹脂固形分、樹脂固形分の水酸基価、酸価、カルボキシル基当量、ポリスチレン換算数平均分子量、ポリスチレン換算重量平均分子量、アミノ基と反応できる有機官能基、樹脂1分子中のアミノ基と反応できる有機官能基の数を表4に示す。
アクリル樹脂分散液は、樹脂固形分のポリスチレン換算重量平均分子量が121300であり、本発明の(B)成分には該当しなかった。
【0074】
【表4】
【0075】
なお、表4中、各成分の使用量は、質量部で示される。
【0076】
1−3.(A)成分と(B)成分との反応生成物(塗料用樹脂組成物)である、樹脂溶液(樹脂溶液1〜26)の調製例
下記に示す調製例に従い、樹脂溶液1〜26を合成した。
【0077】
1−3−1.樹脂溶液1
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器、分水器等を備えた反応容器中に、アクリル樹脂溶液A 94.10質量部及びKF−8010(信越化学工業(株)製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル) 3.10質量部を入れ、還流温度で加熱撹拌し、所定量の脱水を確認し、第1混合物を得た。
【0078】
(第2工程)
第1工程で得た第1混合物中に、ミネラルスピリット 2.80質量部を加えて攪拌後冷却し、樹脂溶液1を得た。なお、樹脂溶液1の樹脂固形分は、55.0質量%であり、樹脂溶液1の固形分水酸基価は37.6mgKOH/gであった。
【0079】
1−3−2.樹脂溶液2、12〜19、22、23、26
表5に示す化合物及びその使用量に変更する以外は、樹脂溶液1と同様の方法により、それぞれ樹脂溶液を調製した。なお、反応に使用した(B)成分の有機官能基、樹脂溶液の樹脂固形分、樹脂固形分中の水酸基価、酸価、活性水素価(NH価)、及び、対応する塗料用樹脂組成物(後述)を表5に示す。
【0080】
1−3−3.樹脂溶液3
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器等を備えた反応容器中に、アクリル樹脂溶液U 92.98質量部及びDC3055 (Dow Corning Corp.製、アミノ基含有シリコーンレジン) 3.71質量部を入れ、60℃で6時間加熱撹拌し、第1混合物を得た。
【0081】
(第2工程)
第1工程で得た第1混合物中に、ミネラルスピリット 3.31質量部を加えて攪拌後冷却し、樹脂溶液3を得た。なお、樹脂溶液3の樹脂固形分は、55.0質量%であり、樹脂溶液3の固形分水酸基価は37.3mgKOH/gであった。
【0082】
1−3−4.樹脂溶液4
(第1工程)
攪拌機、温度計及び還流冷却器等を備えた反応容器中に、アクリル樹脂溶液B 92.98質量部及びDC3055 (Dow Corning Corp.製、アミノ基含有シリコーンレジン) 3.71質量部を入れ、80℃で2時間加熱撹拌し、第1混合物を得た。
【0083】
(第2工程)
第1工程で得た第1混合物中に、ミネラルスピリット 3.31質量部を加えて攪拌後冷却し、樹脂溶液4を得た。なお、樹脂溶液4の樹脂固形分は、55.0質量%であり、樹脂溶液4の固形分水酸基価は40.8mgKOH/gであった。
【0084】
1−3−5.樹脂溶液5〜11、21
表5に示す化合物及びその使用量に変更する以外は、樹脂溶液4と同様の方法により、それぞれ樹脂溶液を調製した。なお、反応に使用した(B)成分の有機官能基、樹脂溶液の樹脂固形分、樹脂固形分中の水酸基価、活性水素価(NH価)、及び、対応する塗料用樹脂組成物(後述)を表5に示す。
【0085】
1−3−6.樹脂溶液20
攪拌機を備えた容器中に、アクリル樹脂溶液Q 94.10質量部及びKF−8010 (信越化学工業(株)製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル) 3.10質量部を入れ、ミネラルスピリット 2.80質量部を加えて攪拌し、樹脂溶液20を得た。なお、樹脂溶液20の樹脂固形分は、55.0質量%であり、樹脂溶液20の固形分水酸基価は38.4mgKOH/g、固形分活性水素価(NH価)は14.7mgKOH/gであった。
【0086】
1−3−7.樹脂溶液24
攪拌機を備えた容器中に、KF−8012 (信越化学工業(株)製、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン型シリコーンオイル) 55.00質量部を入れ、ミネラルスピリット 45.00質量部を加えて攪拌し、樹脂溶液24を得た。なお、樹脂溶液24の樹脂固形分は、55.0質量%であり、樹脂溶液24の固形分活性水素価(NH価)は51.0mgKOH/gであった。
【0087】
1−3−8.樹脂溶液25
アクリル樹脂溶液Mを100.00質量部そのまま用いることとし、樹脂溶液25と呼称した。なお、樹脂溶液25の樹脂固形分は、55.2質量%であり、樹脂溶液25の固形分水酸基価は39.9mgKOH/gであった。
【0088】
【表5】
【0089】
なお、表5中、各成分の使用量は、質量部で示される。
【0090】
2.塗料組成物の調製
(実施例1)
樹脂溶液1 54.48質量部、着色顔料JR−806(テイカ(株)製、酸化チタン) 27.20質量部、体質顔料BARIACE B−30(堺化学工業(株)製、沈降性硫酸バリウム) 9.80質量部、及び、粘性調整剤ディスパロンD6820−20M(楠本化成(株)製、アマイド系粘性調整剤のミネラルスピリット/ベンジルアルコール混合溶液、固形分20質量%) 4.42質量部を混合した後、サンドグラインダーにて2時間分散処理し、主剤を調製した。そして、塗装直前に95.90質量部の主剤に対して、塗料硬化剤デュラネートTSA−100(旭化成ケミカルズ(株)製、弱溶剤可溶型ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型化合物)) 4.10質量部を添加し、これらを混合して実施例1の塗料組成物を得た。
【0091】
(実施例2〜13、比較例1〜13)
各種成分の種類及び配合量を表6に示されるように変更した以外は、実施例1の製造手順と同様にして、実施例2〜13及び比較例1〜13の塗料組成物を調製した。
【0092】
【表6】
【0093】
なお、表6中、各成分の使用量は、質量部で示される。
【0094】
3.塗装板作製
厚み3.2mm及び大きさ70×150mmのサンドブラスト鋼板に、表6に示す塗料組成物(実施例1〜13及び比較例1〜13)を、乾燥膜厚が80μmとなるようにエアスプレー塗装した後、該塗料組成物を常温(20℃)で1週間乾燥させ、実施例1〜13及び比較例1〜13の塗装板を作製した。作製した塗装板について、下記に示す試験によって塗膜性能を評価した。評価結果を表7に示す。
【0095】
【表7】
【0096】
<塗装作業性評価>
塗装板作成時の塗装作業性を、以下の基準で目視判定した。
(判定基準)
○:スプレー霧化良好かつ塗膜表面に異常なし。
×:スプレー霧化が不十分であり、所定の膜厚を得るための吹付回数が増加する。また、塗膜表面にハジキ等の異常が認められる。
【0097】
実施例1〜13の塗料組成物は、良好な塗装作業性を示した(表7)。したがって、本発明の塗料用樹脂組成物は、塗装作業性に優れた塗料を提供することができる。
【0098】
<低温貯蔵安定性試験>
実施例1〜13及び比較例1〜13で調製した硬化剤を含まない表6記載の塗料主剤成分のみを、容量300mL、内径が70〜80mmの金属製の缶に入れ密封し、5℃環境下で1か月保管後、下記の判定基準に基づいて低温貯蔵安定性試験の評価を行った。
(判定基準)
○:貯蔵後の容器内の状態、塗装に供した際の塗膜の外観及び塗装作業性が貯蔵前に比べて著しい差異が認められない。
×:貯蔵後の容器内の状態、塗装に供した際の塗膜の外観及び塗装作業性が貯蔵前に比べて著しい差異が見られる。
【0099】
<高温貯蔵安定性試験>
実施例1〜13及び比較例1〜13で調製した硬化剤を含まない表6記載の塗料主剤成分のみを、容量300mL、内径が70〜80mmの金属製の缶に入れ密封し、50℃環境下で1か月保管後、下記の判定基準に基づいて低温貯蔵安定性試験の評価を行った。
(判定基準)
○:貯蔵後の容器内の状態、塗装に供した際の塗膜外観及び塗装作業性が貯蔵前に比べて著しい差異が認められない。
×:貯蔵後の容器内の状態、塗装に供した際の塗膜外観及び塗装作業性が貯蔵前に比べて著しい差異が見られる。
【0100】
実施例1〜13の塗料組成物に用いた塗料主剤成分(塗料用樹脂組成物)は、低温下及び高温下のいずれにおいても良好な貯蔵安定性を示した(表7)。したがって、本発明の塗料用樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れている。
【0101】
<促進耐候性試験>
JIS K 5600−7−7に準じてキセノンアークランプ式試験機を用いて促進耐候性試験を4000時間行った。試験後の塗膜光沢感を促進耐候性試験未実施の初期塗膜と比較し、目視並びに光沢計を用いて以下の基準で判定した。
(判定基準)
◎+:塗膜外観に変化は無く、光沢保持率95%以上
◎:塗膜外観に変化は無く、光沢保持率90%以上95%未満
○:塗膜外観の変化がわずかにあり、光沢保持率80%以上90%未満
×:塗膜外観の変化が著しく、光沢保持率80%未満
【0102】
実施例1〜13の塗料組成物から形成した塗膜は、優れた耐候性を示した。(表7)。したがって、本発明の塗料用樹脂組成物は、耐候性に優れた塗膜を形成することができる塗料を提供することができる。
【0103】
以下の塗料評価試験においては、ぞれぞれの試験毎に塗装板を作成し、評価を行った。
【0104】
<表面乾燥性試験>
乾燥膜厚が80μmとなるように、塗料組成物を、厚み3.2mm及び大きさ70×150mmのサンドブラスト鋼板にエアスプレー塗装し、常温(20℃)で湿度10%並びに湿度90%の環境で乾燥後、得られた塗膜がJIS K 5500『塗料用語』に規定される指触乾燥の状態に至るまでの時間を計り、下記の判定基準に基づいて表面乾燥性の評価を行った。
(判定基準)
〇:指触乾燥までの時間が90分以内
×:指触乾燥までの時間が90分を超える
【0105】
実施例1〜13の塗料組成物は、低湿度下及び高湿度下のいずれにおいても良好な表面乾燥性(硬化性)を示した(表7)。したがって、本発明の塗料用樹脂組成物は、周囲の湿度条件に影響を受けることなく硬化可能な塗料を提供することができる。
【0106】
<塗膜外観評価>
湿潤膜厚が300μmとなるように、塗料組成物を、厚み3.2mm及び大きさ70×150mmのサンドブラスト鋼板に刷毛で塗装し、得られた塗膜を常温(20℃)で1週間乾燥させた後、以下の判定基準に基づいて塗膜外観を評価した。
(判定基準)
○:塗膜外観に艶引けやワレ、はがれ等の異常が認められない。
×:塗膜外観に艶引けやワレ、はがれ等の異常が認められる。
【0107】
実施例1〜13の塗料組成物から形成した塗膜は、艶引け、ワレやはがれ等の異常のない優れた外観を示した(表7)。したがって、本発明の塗料用樹脂組成物は、硬化収縮が起こりづらく、基材追従性が高い塗料を提供することができる。
【0108】
<耐おもり落下性試験>
乾燥膜厚が80μmとなるように、塗料組成物を、厚み0.6mm及び大きさ200×100mmの溶融亜鉛メッキ鋼板にエアスプレー塗装し、得られた塗膜を常温(20℃)で1週間乾燥させた後、JIS K 5600−5−3に規定される方法のうち、3.3『デュポン式』試験において500gの重りを用い、高さ30cmから落下させた際、以下の判定基準に基づいて耐おもり落下性を評価した。
(判定基準)
○:試験片の衝撃変形による塗膜のワレ、剥がれが認められない。
×:試験片の衝撃変形による塗膜のワレ、剥がれが認められる。
【0109】
実施例1〜13の塗料組成物から形成した塗膜は、耐衝撃性に優れていた(表7)。したがって、本発明の塗料用樹脂組成物は、塗膜強度に優れた塗料を提供することができる。