(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の転倒防止装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置1は、
図1に示すように、家具Fの上面A1と天井Cとの間に少なくとも1個以上が取り付けられる。この家具Fは、前面部F1及び裏面部F2に物品を対向させない形で床面Fr上に載置されている。家具Fは、直方体形状であり、正面(
図1における右側面)に図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納し得る構造となっている。
【0017】
家具Fは、水平断面形状が左右方向(
図1において奥行き方向)に長い長方形状である。家具Fを平面視した外径形状は、長方形状となっている。本構成では、家具Fを平面視したときの長手方向(長方形状における長辺方向)を家具F(物品)の左右方向とし、短手方向(長方形状における短辺方向)を家具F(物品)の前後方向とする。家具Fの高さ方向は、上記左右方向及び上記前後方向と直交する方向となっている。家具Fの底部B2も底面A2が長手状とされており、具体的には、底面A2の外径形状(下方から見たときの外縁形状)が長方形状となっている。
【0018】
この家具Fは、転倒防止装置が取り付けられていない場合、地震等の揺れによって、前後方向(
図1における左右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0019】
転倒防止装置1は、
図1及び
図2に示すように複数のダンパ10、物品側のベース部30A、天井側のベース部30B,30Cを備える。
【0020】
図1、
図2等で示す転倒防止装置1において、2つのダンパ10は同一の構造となっている。ダンパ10は、シリンダ11、図示しないロッドガイド、図示しないピストン、ロッド13、及び両端に設けられた2個のジョイント部15を有している。シリンダ11は有底筒状である。ロッドガイドはシリンダ11の開口部を封鎖している。ピストンはシリンダ11内に摺動自在に挿入されている。ロッド13は基端部がピストンに連結されている。また、ロッド13はロッドガイドを挿通して先端側がシリンダ11の外部へ突出している。シリンダ11は作動油及び圧縮ガスを封入している。各ジョイント部15は、
図1〜
図3に示すように、平板状の金具を折り曲げて形成されている。また、各ジョイント部15はシリンダ11の底部とロッド13の先端部に接続されている。各ジョイント部15はダンパ10の軸線に直交する方向に貫通した貫通孔15Aが形成されている。
【0021】
2つのダンパ10はいずれも、伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さい圧効きダンパである。ここで、ダンパ10の伸長動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ及びダンパ10の長さが長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10の収縮動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ及びダンパ10の長さが短くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10はシリンダ11に封入した圧縮ガスの膨張力が伸長方向に働いている。
【0022】
ダンパ10の減衰力が発生するメカニズムは、周知の構造であるため、図示を省略して説明する。シリンダ11は、内部がピストンによって、ロッド13の基端部が収納されているロッド側圧力室と、反ロッド側圧力室とに仕切られている。ピストンは両圧力室間を連通させる絞り弁であるオリフィスが形成されている。オリフィスは、ダンパ10の伸縮動作に伴うロッド側圧力室と反ロッド側圧力室との間の作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストンは逆止弁を介して両圧力室間を連通する連通路が形成されている。逆止弁は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、ダンパ10は、伸長動作時、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流路経路が、オリフィスと連通路の経路になる。一方、ダンパ10は、収縮動作時、反ロッド側圧力室からロッド側圧力室への作動油の流路経路がオリフィスのみとなる。このため、ダンパ10は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0023】
家具Fの上面A1に載置される物品側のベース部30Aは、2つのダンパ10における一方側の端部がいずれも連結される。2つのダンパ10における各シリンダ11の底部にはジョイント部15が接続されており、これらジョイント部15が物品側のベース部30Aに対し回動可能に連結される。
【0024】
物品側のベース部30Aは、ベース部本体131、回動軸部材であるボルト145及びナット147、ブッシュ135、及び滑り止め部137を有している。
【0025】
家具Fの上面に当接して載置された状態で物品側のベース部30Aを上方から見た平面視において、ベース部本体131は長方形状の外形である。以下、この平面視におけるベース部本体131の外形において長辺が延びている方向を「長辺方向」と言い、短辺が延びている方向を「短辺方向」と言う。また、家具Fの上面に当接して載置された状態で物品側のベース部30Aを短辺方向に見た側面視において、ベース部本体131は、下端縁が家具Fの上面に平行に直線状に伸びており、上端縁が下端縁の両側から上方に膨らんだ円弧状の外形である(
図1参照)。また、家具Fの上面に当接して載置された状態で物品側のベース部30Aを長辺方向に見た側面視において、ベース部本体131は下端縁よりも上端縁が短い略台形状の外形である(
図2及び
図3参照)。
【0026】
物品側のベース部30Aにおいて、ベース部本体131は上面に長辺方向(
図1における左右方向であり、
図2及び
図3における奥行き方向)に伸びた溝部141が形成されている。溝部141は、底面141Aが物品への接触面(滑り止め部137の下面)と略平行に構成され、内壁面141Bが底面141Aの両側において底面141Aに対し略垂直に立ち上がっている。溝部141は、後述する凸部143,144,146が形成されている部分を除き、幅が一定である。
【0027】
溝部141は、
図4に示すように、長辺方向の中央部に溝部141の底面141A及び両内壁面141B,141Bから突出した一対の凸部143,146が形成されている。凸部143,146の間には、底面141Aから上方に突出した凸部144が形成されている。これら凸部143,144,146は、各凸部間にダンパ10のジョイント部15及び後述するブッシュ135が嵌まり込む空間が形成されている。この空間は溝部141に連通している。凸部143,144の内壁面同士の間隔(空間の短辺方向の長さ)は後述するブッシュ135の長さよりも僅かに大きい。同様に、凸部144,146の内壁面同士の間隔(空間の短辺方向の長さ)はブッシュ135の長さよりも僅かに大きい。凸部143,144,146の各々には、後述するボルト145の軸部145Bが挿通される挿通孔143B,144B,146Bが短辺方向に貫通した形で形成されている。
【0028】
物品側のベース部30Aにおいて、ベース部本体131は、長辺方向の中央部であって、溝部141の両側に窪み部142が形成されている。これら窪み部142は上方向と短辺方向の外方向に開口している。これら窪み部142は凸部143,146を貫通した各挿通孔143B,146Bが側面にそれぞれ開口している。更に、中央の凸部144にも、挿通孔144Bが形成されており、これら凸部143,144,146の挿通孔143B,144B,146Bに、ボルト145を挿し込むことができるようになっている。一対の窪み部142には、ボルト145の頭部145Aと、このボルト145にねじ込まれるナット147の夫々が配置される。これら窪み部142は、ボルト145の頭部145Aとナット147に対し上方から工具を嵌合させることができるように、長辺方向において上方に広がるように形成されている。ボルト145は、ベース部本体131の一方側から凸部143,144,146の各挿通孔143B,144B,146Bに挿入され、ベース部本体131の他方側では、このボルト145の軸部145Bにナット147がねじ込まれる。ボルト145の中心軸は、2つのダンパ10の回動軸になる。つまり、2つのダンパ10は、同一の回動軸を中心として回動する。
【0029】
ベース部本体131の内部は空洞状に構成され、内部に短辺方向に平行に伸びた複数条のリブと、長辺方向に平行に伸びた複数のリブとが交差して形成されている。
【0030】
ブッシュ135は、
図3に示すように、略円筒状である。ブッシュ135は弾性体である。ブッシュ135の長さはベース部本体131に設けられた凸部143,144,146の内壁面同士の間隔によりも僅かに小さい。ブッシュ135は中央部の外周面を一周した凹部135Aが形成されている。この凹部135Aの外径がダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aの内径に略等しい。ブッシュ135は凹部135Aの両端から立ち上がった部分の外径がダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aの内径よりも大きい。また、ブッシュ135は両端部の外周面135Bが外方向に縮径している。このため、ブッシュ135はダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aに弾性変形させながら挿入される。そして、ブッシュ135は、貫通孔15Aに凹部135Aが嵌まり込んで、ダンパ10のジョイント部15に取り付けられる。
【0031】
ブッシュ135は中央部の内径がボルト145の軸部145Bの外径よりも僅かに大きい。また、ブッシュ135は両端部の内周面135Cが外方向に拡径している。このため、このブッシュ135はボルト145の軸部145B周りに回動自在である。また、このブッシュ135は、拡径した両端部の内周面135Cがボルト145の軸部145Bの外周面に当接する範囲で、ボルト145の軸部145Bに対して傾くことができる。つまり、ブッシュ135をジョイント部15に取り付けたダンパ10は、ボルト145の軸部145B周りに回動自在であり、回動方向と交差する方向に揺動自在である。具体的には、寸法上の余裕と内周面135Cの拡径によって揺動する。さらに、ブッシュ135が弾性変形することによって、ダンパ10は回動方向と交差する方向に、より大きく揺動することができる。
【0032】
滑り止め部137は、
図1〜
図4に示すように、ベース部本体131の外形に僅かに大きい相似形(長方形状)の外形である。滑り止め部137はゴム製である。また、滑り止め部137は、家具Fの上面に当接して載置された状態の物品側のベース部30Aにおいて、ベース部本体131の下端開口に嵌合される。また、滑り止め部137は略平板である。滑り止め部137は、家具Fの上面A1に当接する面が平坦であり、その反対側を向いた面(ベース部本体131に対向する面)は、ベース部本体131の外周壁及び内部のリブに合わせた嵌合溝が形成されている。滑り止め部137はその弾性力によってベース部本体31に着脱自在に取り付けられる。
【0033】
天井側のベース部30B,30Cは、同一の構造となっている。よって、以下では、天井側のベース部30Bについて、詳細に説明し、天井側のベース部30Cについては、天井側のベース部30Bと同一の構造であるとして、詳細な説明は省略する。
【0034】
図2のように、天井側のベース部30Bは、ベース部本体31、ボルト45及びナット47、ブッシュ35、及び滑り止め部37を有している。
【0035】
天井側のベース部30Bのベース部本体31は、天井への接触面(滑り止め部37の接触面)とは反対面側にその接触面と平行方向且つボルト45の中心軸と直交する方向に伸びた溝部41が形成されている。溝部41は、天井への接触面(滑り止め部37の接触面)と平行に底面41Aが設けられ、内壁面41Bが底面41Aの両側に略垂直に設けられている。溝部41は、一対の凸部43,43が形成されている部分を除き、幅が一定に形成されている。
【0036】
溝部41は、長辺方向の中央部に溝部41の底面41A及び両内壁面41B,41Bから突出した一対の凸部43,43が形成されている。これら凸部43,43は、
図2及び
図5に示すように、その間にダンパ10のジョイント部15及び後述するブッシュ35が嵌まり込む空間が形成され、この空間は溝部41に連通する。一対の凸部43,43の内壁面43A,43A同士の間隔(空間の短辺方向の長さ)は後述するブッシュ35の長さよりも僅かに大きい。また、一対の凸部43,43はボルト45の軸部45Bが挿通する挿通孔43Bが短辺方向に貫通している。
【0037】
天井側のベース部30Bにおいて、ベース部本体31は、ベース部本体31の長手方向中央部且つ溝部41の両側に窪み部42が形成されている。この窪み部42は凸部43を貫通した挿通孔43Bが側面に開口している。この窪み部42は後述するボルト45の頭部45Aと、このボルト45にねじ込まれたナット47の夫々が配置される。この窪み部42は、ボルト45の頭部45Aとナット47に工具を嵌合させることができるように、広がった形状をなす。ボルト45の中心軸は、各天井側のベース部30B,30Cにおけるダンパ10の回動軸になる。
【0038】
図5のように、ブッシュ35は、略円筒状であり、弾性体となっている。ブッシュ35の長さはベース部本体31に設けられた一対の凸部43,43の内壁面43A,43A同士の間隔よりも僅かに小さい。ブッシュ35は中央部の外周面を一周した凹部35Aが形成されている。この凹部35Aの外径がダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aの内径に略等しい。ブッシュ35は凹部35Aの両端から立ち上がった部分の外径がダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aの内径よりも大きい。
【0039】
ブッシュ35は中央部の内径がボルト45の軸部45Bの外径よりも僅かに大きい。また、ブッシュ35は両端部の内周面35Cが外方向に拡径している。このため、このブッシュ35はボルト45の軸部45B周りに回動自在である。また、このブッシュ35は、拡径した両端部の内周面35Cがボルト45の軸部45Bの外周面に当接する範囲で、ボルト45の軸部45Bに対して傾くことができる。つまり、ブッシュ35をジョイント部15に取り付けたダンパ10は、ボルト45の軸部45B周りに回動自在であり、回動方向と交差する方向に揺動自在である。具体的には、寸法上の余裕と内周面35Cの拡径によって揺動する。さらに、ブッシュ35が弾性変形することによって、ダンパ10は回動方向に交差する方向に、より大きく揺動することができる。
【0040】
滑り止め部37は、ベース部本体31の外形よりも僅かに大きい相似形(長方形状)の外形である。滑り止め部37はゴム製であり、略平板である。滑り止め部37はその弾性力によってベース部本体31に着脱自在に取り付けられる。
【0041】
このように構成された転倒防止装置1は、例えば、
図1、
図6のように、床面Fr(設置面)上に設置された家具F(物品)の上面A1と天井Cの間に取り付けられる。転倒防止装置1は、2つのダンパ10の一方側の端部がいずれも物品側のベース部30Aに連結され、物品側のベース部30Aが両ダンパ10のベースとして兼用される。一方、2つのダンパ10の他方側の端部には、2つの天井側のベース部30B,30Cがそれぞれ個別に連結される。
【0042】
図1、
図6の取付状態では、転倒防止装置1が家具F(物品)の上面A1と天井Cとの間に取り付けられた状態で、物品側のベース部30Aの中央部を通る鉛直方向の仮想線L1の両側にそれぞれ天井側のベース部30B,30Cが配置される。仮想線L1の一方側に配置されるダンパ10(ベース部30Bに連結されるダンパ10)は、ダンパ10の中心軸と鉛直方向とのなす角度がθとなる傾きで配置されている。そして、仮想線L1の他方側に配置されるダンパ10(ベース部30Cに連結されるダンパ10)も、ダンパ10の中心軸と鉛直方向とのなす角度がθとなる傾きで配置されている。つまり、両ダンパ10は、鉛直方向に対する傾きは同じであり、一方のダンパ10は、前側に倒れた形(上方側となるにつれて前位置となる傾斜状態)で配置される。他方のダンパ10は、後ろ側に倒れた形(上方側となるにつれて後ろ位置となる傾斜状態)で配置される。
【0043】
また、
図6のように、家具F(物品)の底部B2は、家具Fの高さ方向と直交する所定方向(上述した左右方向)が長手方向である長手状(具体的には、底面視長方形状)となっている。このため、家具Fを床面Frに載置した場合、高さ方向及び長手方向と直交する短手方向(上述した前後方向)に倒れやすい載置状態となる。これに対し、転倒防止装置1は、家具Fの前後方向(高さ方向及び長手方向と直交する直交方向)において、底部B2の中心位置P1と、物品側のベース部30Aの配置範囲AR1とが重なっている。つまり、物品側のベース部30Aの直下に中心位置P1が位置する。
【0044】
図7には、物品側のベース部30A及び家具Fを平面視した場合の、物品側のベース部30Aと底部B2との位置関係を簡略的に示し、物品側のベース部30Aの外縁形状と、底部B2の外縁形状とを簡略的に示している。底部B2の外縁については一点鎖線にて位置を仮想的に示す。
図7のように、物品側のベース部30Aの直下に、底部B2の前後方向の中心位置P1が位置し、より具体的には、ボルト145の中心軸の位置(即ち、ダンパ10の回動中心)の直下の位置が、底部B2の前後方向の中心位置P1となっている。
【0045】
このように転倒防止装置1が取り付けられた家具Fが、地震の揺れ等によって、前後方向に揺動して前方向に傾いた場合、家具Fの上面A1に面接触した物品側のベース部30Aから斜め前側に延びた圧効きダンパ10が収縮動作し、減衰力を発揮する。このため、家具Fは、ダンパ10によって前方向へ傾く力が減衰され、前方向への傾き量が抑制される。また、前後方向に揺動して後方向に傾いた際、家具Fの上面A1に面接触した物品側のベース部30Aから斜め後ろ側に延びた圧効きダンパ10が収縮動作し、減衰力を発揮する。このため、家具Fは、ダンパ10によって後方向へ傾く力が減衰され、後ろ方向への傾き量が抑制される。
【0046】
このように、この転倒防止装置1は、地震の揺れ等によって、圧効きダンパ10の軸線が延びている方向、すなわち家具Fの前後方向に家具Fが傾くと、床面Fr上に設置された家具Fの上面A1と天井Cとの間に取り付けられた圧効きダンパ10が収縮動作する。これにより、減衰力が発生し、家具Fの傾く力を減衰するため、家具Fの傾き量が抑制されて家具Fの転倒を防止することができる。また、この転倒防止装置1は床面Frから鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない家具Fに対しても取り付けることができ、家具Fの転倒を防止することができる。しかも、家具Fの天板のピッチ(上面部の前後方向の幅)が狭くても、十分な角度の傾斜をもって複数のダンパ10を設置することができる。
【0047】
以上の説明のように、転倒防止装置1は、複数のダンパ10を有し、複数のダンパ10の一方側端部がいずれも物品側のベース部30Aに連結されている。この転倒防止装置1を家具F(物品)の上面A1と天井Cの間に取り付ける場合、家具F側では各ダンパ10に対して個別にベース部を設けずに済み、共通化された物品側のベース部30Aで兼用することができる。このため、ダンパの数が増えても、ベース部の設置に必要な物品上面の面積を増大させすぎることなく抑えることができる。しかも、複数のダンパ10を物品側のベース部30Aで連結させて一体的に管理することができ、ベース部を物品上で位置決めして載置する場合、ベース部を個別に載置して個別に位置決めするような手間を省くことができる。また、ベース部の個数を減らすことができるため、組立工数及びコストの削減となる。
【0048】
したがって、家具F(物品)の上面A1と天井Cの間に複数のダンパ10を取り付けることができ、且つ作業工数の増大及び設置スペースの増大を抑えることができる。
【0049】
転倒防止装置1は、複数のダンパ10の他方側端部(物品側のベース部30A側とは反対側の端部)に、複数の天井側のベース部30B,30Cがそれぞれ個別に連結されている。この構成によれば、物品側については、ベース部を共通化することで作業工数の増大及び設置スペースの増大を抑えることができる。天井側については、ダンパ毎に個別にベース部を設けることで、設置する上での自由度を大きくすることができる。特に、物品の上面サイズや形状等によって制約を受ける物品側のベース部については、共通化を図ることで物品による制約に適応しやすい構成とすることができる。一方、物品側と比較してスペース的に余裕が生じやすい天井側については、ダンパ毎にベース部の位置を設定できるようにして、細かな調整を行えるようにすることができる。
【0050】
転倒防止装置1は、家具F(物品)の上面A1と天井Cの間に取り付けられた状態で、物品側のベース部30Aの中央部を通る鉛直方向の仮想線L1の両側にそれぞれ天井側のベース部30B,30Cが配置される。本構成は、物品側のベース部30Aの長辺方向の中央位置及び短辺方向の中央位置が中央部であり、具体的には、仮想線L1は、ボルト145の中心軸と交差する鉛直方向の仮想的な直線となっている。
【0051】
この構成では、物品側のベース部30Aを基準として仮想線L1の一方側に傾倒した形で一方のダンパ10が取り付けられ、他方側に傾倒した形で他方のダンパ10が取り付けられることになる。この構成によれば、家具Fが一方側へ傾いた場合でも、他方側へ傾いた場合でも、家具Fを傾かせる力を効果的に減衰させ、家具Fの傾きを抑制することができる。家具Fが他の物品の場合でも同様の効果が生じる。
【0052】
特に、このような効果は、壁面に隣接して設置されていない、いわゆる「島置き状態」の家具に転倒防止装置1を適用した場合に顕著となる。「島置き状態」の家具は、壁面による支えが無いため転倒方向(転倒しやすい方向)の一方側にも他方側にも傾く可能性があり、従来の転倒防止装置では適用しにくいという問題があった。しかし、本構成の転倒防止装置1を用いれば、一方側へ傾いた場合でも、他方側へ傾いた場合でも減衰力が生じるように設置することができる。よって、このような「島置き状態」の家具に効果的に利用することができる。
【0053】
転倒防止装置1は、仮想線L1の一方側に配置されるダンパ10の鉛直方向に対する傾きと、仮想線L1の他方側に配置されるダンパ10の鉛直方向に対する傾きとが同一となっている。この構成によれば、家具Fの一方側への傾きについても、他方側への傾きについてもバランス良く減衰させることができる。
【0054】
家具Fの底部B2は、家具Fの高さ方向と直交する所定方向(左右方向)が長手方向である長手状となっている。転倒防止装置1は、家具Fの前後方向(高さ方向及び底部B2の長手方向と直交する直交方向)において、底部B2の中心位置と、物品側のベース部30Aの配置範囲とが重なっている。つまり、物品側のベース部30Aの直下に、底部B2の前後方向中心位置がある。家具Fは、底部B2の長手方向(左右方向)と直交する方向(前後方向)に傾きやすく、その直交方向における底部B2の両端部(即ち、前端部及び後端部)には傾きに起因する浮き上がりが生じやすくなる。このため、物品側のベース部30Aの直下に物品底部の中心位置(家具Fにおける前後方向の中心位置)が配置される構成とすれば、物品底部の前端部又は後端部に浮き上がりが偏ることを防ぐことができる。よって、長手方向と直交する方向の両側の傾きをバランスよく防ぐことができる。
【0055】
<実施形態2>
次に、実施形態2の転倒防止装置について
図8、
図9などを参照して説明する。
実施形態2の転倒防止装置201は、実施形態1で複数設けられる天井側のベース部30B、30C(
図1等)を一体化して共通の天井側のベース部230Bとした点が実施形態1と異なり、この点以外は実施形態1と同一である。よって、実施形態1の転倒防止装置1と同一の部分については、実施形態1の転倒防止装置1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
図8、
図9のように、本構成の転倒防止装置201は、2つのダンパ10の他方側の端部(物品側のベース部30Aとは反対側の端部)がいずれも、共通の天井側のベース部230Bの異なる位置にそれぞれ連結されている。
【0057】
共通の天井側のベース部230Bにおけるベース部本体231と2つのダンパ10との接続構造は、実施形態1における2つのベース部本体31と2つのダンパ10との接続構造と同一である。
図8、
図9で示す共通の天井側のベース部230Bには、実施形態1の天井側のベース部30B(
図2、
図5等)に形成された2つの凸部43及び2つの挿通孔43Bと同一の位置関係で2つの凸部43及び2つの挿通孔43Bが設けられている。また、天井側のベース部230Bには、実施形態1の天井側のベース部30Cに形成された2つの凸部43及び2つの挿通孔43B(
図2、
図5等)と同一の位置関係で2つの凸部43及び2つの挿通孔43Bが設けられている。そして、
図8、
図9で示す天井側のベース部230Bでは、ボルト45及びナット47を組み合わせた2つの組が、実施形態1におけるボルト45及びナット47を組み合わせた2つの組と同様の位置関係で設けられている。このような構造により、2つのボルト45の軸部45Bが平行に位置決めされており、これら軸部45Bの各中心が、各ダンパ10の回動軸となっている。
【0058】
図2、
図5等で示す天井側のベース部30B,30Cを、
図8、
図9で示す共通の天井側のベース部230Bに変更する場合、ベース部本体231の幅が若干大きくなり、両ダンパ10に対する両連結部分が幅方向両側にずれた配置となる。この点については、例えば、窪み部42(
図5)に相当する部分を、幅方向に深く構成して対応すればよい。例えば、
図9において、手前側に配置されるボルト45及びナット47の組を収容する1対の窪み部(
図5の窪み部42と同様の部分)のうち、ナット47を収容する窪み部については、幅方向(ボルト45の軸方向)に深く構成すればよい。また、
図9において、奥側に配置されるボルト45及びナット47の組を収容する1対の窪み部(
図5の窪み部42と同様の部分)のうち、ボルト45を収容する窪み部については、幅方向(ボルト45の軸方向)に深く構成すればよい。このようにすれば、一対のボルト45及びナット47を、
図8、
図9のような平行の関係で2組保持することができ、それらのボルト45に対し、2つのダンパ10のそれぞれのジョイント部15を回動可能に取り付けることができる。滑り止め部237は、ゴム製且つ略平板であり、ベース部本体231よりも大きい相似形(長方形状)の外形である。滑り止め部237は、その弾性力によってベース部本体231に着脱自在に取り付けられる。
【0059】
なお、
図8、
図9では、共通の天井側のベース部230Bでの保持構造を例示した。しかし、あくまで例示であり、天井側のベース部230Bでの保持構造は、2つのダンパ10の他方側の端部をいずれも回動可能に保持することができ、それら端部の回動軸(回動の中心軸)が平行且つ一定間隔で定められる構成であればよい。
【0060】
図8、
図9で示す転倒防止装置201では、2つのダンパ10の一方側の端部が、物品側のベース部30Aにおいて共通の軸部材(ボルト145)により回動可能に保持され、2つのダンパ10は、共通の回動軸を中心として回動可能とされている。そして、2つのダンパ10の他方側の端部は、共通の天井側のベース部230Bにおいて、別々の軸部材(2つのボルト45)により回動可能に保持され、それぞれのダンパ10が別々の回動軸(平行な回動軸)を中心として回動可能とされている。
【0061】
図8で示す転倒防止装置201は、家具Fの上面A1と天井Cとの間に取り付けられた状態で、物品側のベース部30Aの中央部を通る鉛直方向の仮想線L1(実施形態1の仮想線L1と同様の仮想線)の両側に、各ダンパ10の各他方側端部がそれぞれ配置されている。一方のダンパ10は、仮想線L1の一方側に傾き、他方のダンパ10は、仮想線L1の他方側に傾いた配置となっている。そして、仮想線L1の一方側に配置されるダンパ10の鉛直方向に対する傾きθと、仮想線L1の他方側に配置されるダンパ10の鉛直方向に対する傾きθとが同一となっている。また、この例でも、実施形態1(
図6、
図7)と同様、家具Fの底部B2は、家具Fの高さ方向と直交する所定方向が長手方向である長手状とすることができる。そして、実施形態1と同様、家具Fの高さ方向及び長手方向と直交する直交方向において、底部Bの中心位置と、物品側のベース部30Aの配置範囲とが重なっていてもよい。
【0062】
本構成の転倒防止装置201によれば、物品側だけでなく天井側についてもベース部の共通化により部品数の削減を図ることができ、コストの削減を図りやすくなる。また、天井側に設置すべき部品数が減るため、作業工数の増大を抑えることができる。
【0063】
また、本構成の転倒防止装置201は、両ダンパ10の角度が予め定められた角度で固定化される。このため、両ダンパ10の角度変更が不要な用途、角度変更をしなくても良い用途、角度変更が望ましくない用途などに効果的に適用できる。
【0064】
本発明は上記記述及び図面によって説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1、2では、転倒防止装置を家具に対して取り付けたが、地震等の揺れによって転倒するおそれのある、書棚、冷蔵庫等の物品に対して取り付けてもよい。
(2)実施形態1、2では、前面部F1及び裏面部F2に物品を対向させない形で床面Fr上に載置された家具に対して転倒防止装置1を取り付けたが、裏面部F2を壁面Wに隣接させた形で床面上に載置された家具等に対して取り付けてもよい。
(3)実施形態1、2では、転倒防止装置の正面、側面などを便宜的に示したが、これらは家具の正面、側面などとは異なる概念である。つまり、家具の正面と転倒防止装置の正面とは必ずしも一致する必要はなく、転倒防止装置は、家具の向きに対して様々な向きで取り付け得る。
(4)実施形態1、2では、2つのダンパが設けられた構成を例示したが、3以上のダンパが設けられていてもよい。この場合、それらダンパに接続される天井側のベース部は、それぞれが独立して設けられていてもよく、全部又はいくつかが一体化されていてもよい。
(5)実施形態1、2では、各部がダンパの両端部の夫々を回動軸周りに回動自在、かつ回動方向に交差する方向に揺動自在に連結していたが、回動自在に連結しなくてもよいし、揺動自在に連結しなくてもよい。
(6)実施形態1、2では、複数のダンパ10をいずれも圧効きダンパとしたが、複数のダンパをいずれも、伸長動作時及び収縮動作時に発生する減衰力が等しい両効きダンパとしてもよい。或いは、複数のダンパをいずれも、伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも大きい伸効きダンパであってもよい。或いは、これら複数種類のダンパを混在させてもよい。
(7)実施形態1、2では、シリンダ内に作動油及び圧縮ガスを封入したダンパを利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発生させるものであれば、他の液体を封入した液体圧ダンパであっても、他の形式のダンパであってもよい。
(8)実施形態1、2では、シリンダ内に圧縮ガスを封入して伸張方向に圧縮ガスの膨張力が働くようにしたが、他の方式で伸張方向に働く力を発生させてもよい。