特許第6678032号(P6678032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678032
(24)【登録日】2020年3月18日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】テント構造物用膜材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20200330BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200330BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200330BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20200330BHJP
   A01N 43/78 20060101ALI20200330BHJP
   A01N 55/02 20060101ALI20200330BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20200330BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20200330BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20200330BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B27/30 101
   B32B27/18 F
   A01N25/34 A
   A01N43/78 A
   A01N55/02
   A01N55/02 100
   A01N55/02 130
   A01N55/02 150
   A01N55/02 160
   A01N59/16 Z
   A01P3/00
   A01P13/00
   E04H15/54
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-17(P2016-17)
(22)【出願日】2016年1月4日
(65)【公開番号】特開2017-122051(P2017-122051A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−053905(JP,A)
【文献】 特表2003−522734(JP,A)
【文献】 特開平09−328402(JP,A)
【文献】 特表2009−522299(JP,A)
【文献】 特表2004−509907(JP,A)
【文献】 特開平07−097302(JP,A)
【文献】 特開2001−040222(JP,A)
【文献】 特開2007−022649(JP,A)
【文献】 特開2011−098517(JP,A)
【文献】 特開2006−335706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
E04H15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維織物を基材として、その少なくとも片面に軟質塩化ビニル樹脂被覆層を有する可撓性シートであって、前記軟質塩化ビニル樹脂被覆層が、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体と、防黴性有機化合物とを含み、前記キレート錯体の配位子が少なくともクラウンエーテル及びアミノ酸であり、かつ前記キレート錯体がクラウンエーテル錯体及びアミノ酸錯体の併用であって、前記アミノ酸が、グリシン、ヒスチジン、メチオニンから選ばれた1種以上であることを特徴とするテント構造物用膜材。
【請求項2】
前記キレート錯体の配位子、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ピピリジン、エチレンアミン酢酸、ピリチオン、フェナントロリン、及びポルフィリン、から選ばれた1種以上をさらに含む請求項1に記載のテント構造物用膜材。
【請求項3】
前記キレート錯体が、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持されている請求項1または2に記載のテント構造物用膜材。
【請求項4】
前記防黴性有機化合物が、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、N−ハロアルキルチオ系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、及び有機金属系化合物から選ばれた1種以上である請求項1〜3の何れか1項に記載のテント構造物用膜材。
【請求項5】
前記防黴性有機化合物が、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持されている請求項4に記載のテント構造物用膜材。
【請求項6】
前記軟質塩化ビニル樹脂被覆層の少なくとも1面上に、光触媒物質含有防汚層が形成され、光触媒物質含有防汚層に含む光触媒物質が、酸化チタン、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、及び酸化ビスマスから選ばれた1種以上である請求項1〜5の何れか1項に記載のテント構造物用膜材。
【請求項7】
前記光触媒物質含有防汚層が、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体を含む請求項6に記載のテント構造物用膜材。
【請求項8】
前記光触媒物質含有防汚層に含有する前記キレート錯体が、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持されている請求項7に記載のテント構造物用膜材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテント構造物の美観維持技術に関するものであり、具体的に本発明は、中〜大型テント構造物(スタジアム屋根、ドーム球場、開閉式屋根ドーム、パビリオンなど)、日除けテント構造物(公共施設モニュメント、駅舎ホーム屋根、連絡通路屋根、アーケード屋根、店舗用、住居用など)、内照式テント構造物(電飾看板、映像投影ドーム、アート造型など)などのテント構造物(金属フレームに防水性の繊維複合シートを取り付けた構造)において、テント構造物への黴や藻の発生による外観汚染を長期に亘って防ぐことのできるテント構造物に適した防黴性と防藻性に優れた膜材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テント構造物に使用される汎用シート状膜材は、繊維織物を基布として、その表面に軟質配合の塩化ビニル樹脂組成物を被覆加工して得られる複合シート素材であり、これらはテント構造物として10〜20年もの耐久性を有する。しかし、軟質配合の塩化ビニル樹脂は多量の可塑剤を配合に含むため、時間の経過と共にシート状膜材の表面に可塑剤がブリードし、ブリードした可塑剤に煤塵が蓄積することで、徐々にシート状膜材が汚れるという問題がある。このため、軟質配合の塩化ビニル樹脂製のシート状膜材の表面には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂などの塗膜を設けることで可塑剤のブリードを制御し、防汚効果を確保する手段が一般的である。
【0003】
これらテント構造物は用途や規模によって様々なデザイン形態で設計されるため、シート状膜材による水平部、垂直部、アーチ部などを多様に含む立体構造物で、その耐用年数も様々である。これらテント構造物には、形状に応じてもシート状膜材表面に煤塵汚れが経年堆積するが、テント構造物が大型で複雑であるほど人が登ってのクリーニングを大掛かりなものとするため、クリーニングのタイミングは汚れが極度に目立ち始めてからというのが実情である。ところでテント構造物を構成するシート状膜材の温度が50℃以上となって軟質配合の塩化ビニル樹脂の軟化を最大とする夏を経過する度に、煤塵堆積がシート状膜材表面に固着して、降雨程度では容易に流れ落ちない堆積汚れとなる。そしてこの堆積汚れは黴や藻の胞子の菌床となり、テント構造物に黴や藻を発生させる要因となるが、黴や藻を放置することによって、シート状膜材表面を菌糸が侵食(分泌酵素による侵食)して、後でテント構造物をクリーニングしても劣化痕跡となって、テント構造物の外観を悪くする元凶となっていた。
【0004】
これらテント構造物における黴や藻の対策には、シート状膜材に有機系防黴剤を配合することが効果的で、有機系防黴剤が可塑剤と共にシート表面に逐次ブリードすることで、防黴や防藻の効果を効率的に発現するが、紫外線劣化したり、雨で溶出したり、長期間使用のうちにシート状膜材から有機系防黴剤が抜け出して防黴や防藻の効果が徐々に失われる問題を有している。一方で、ゼオライト、ハイドロキシアパタイトなどの多孔性セラミックス粒子の表面に銀などの金属元素を担持させた無機系防黴剤の練込配合系では、多孔性セラミックス粒子自体がブリードしない充填物となるため、シート表面への金属元素の逐次補填が非効率となって徐々に防黴性や防藻性が低下する傾向がある。そこで銀などの金属元素による抗菌効果が長期安定持続し、かつ変色防止の抗菌性組成物として、銀などの金属とフェノール性化合物との錯体を用いた抗菌性組成物(特許文献1)、銀などの金属とエチレンジアミン四酢酸による錯体とする無機酸化物コロイド溶液からなる抗菌剤(特許文献2)、水系溶媒に酸化銀およびフィチン酸を溶解させ、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤を含有させた有機錯体水溶液(特許文献3)などの錯体が提案され、その長期安定持続性を確かなものとしているが、液状錯体では可塑剤を含有する軟質配合の塩化ビニル樹脂との相性が悪く、混合不良を生じて実質的に使用困難である。従って、テント構造物用の膜材を製造するための軟質配合による塩化ビニル樹脂製の膜材として、特に防黴・防藻効果が長期安定持続可能な膜材が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−227924号公報
【特許文献2】特開2008−94738号公報
【特許文献3】特開2010−202561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、テント構造物が黴や藻の発生で外観汚染を生じることが無いようにするために、黴や藻の発生を最小限に抑止することができるテント構造物用の膜材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑みて研究、検討を重ねた結果、繊維織物を基材として、その少なくとも片面に軟質塩化ビニル樹脂被覆層を有する可撓性シートにおいて、軟質塩化ビニル樹脂被覆層が、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体と、防黴性有機化合物とを含むことによって、上記従来技術で困難であったテント構造物用の膜材として、黴や藻を長期間最小限に抑止するという防黴効果の持続性向上の課題が解決できることを見い出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明のテント構造物用膜材は、繊維織物を基材として、その少なくとも片面に軟質塩化ビニル樹脂被覆層を有する可撓性シートであって、前記軟質塩化ビニル樹脂被覆層が、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体と、防黴性有機化合物とを含み、前記キレート錯体の配位子が少なくともクラウンエーテル及びアミノ酸であり、かつ前記キレート錯体がクラウンエーテル錯体及びアミノ酸錯体の併用であって、前記アミノ酸が、グリシン、ヒスチジン、メチオニンから選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって銀、銅、亜鉛、及びニッケルなどの金属、金属イオンが安定化され、系外に排出され難くすることで、黴や藻の発生を長期間効果的に抑止可能なテント構造物用に適した膜材を得ることができる。
【0009】
本発明のテント構造物用膜材は、前記キレート錯体の配位子、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ピピリジン、エチレンアミン酢酸、ピリチオン、フェナントロリン、ポルフィリン、及びクラウンエーテルから選ばれた1種以上をさらに含むことが好ましい。これによって銀、銅、亜鉛、及びニッケルなどの金属、金属イオンが安定化され、系外に排出され難くすることで、黴や藻の発生を長期間効果的に抑止可能なテント構造物用に適した膜材を得ることができる。
【0010】
本発明のテント構造物用膜材は、前記キレート錯体が、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持されていることが好ましい。これによってキレート錯体が系外に排出され難くなり、かつ徐放性を発現することで、黴や藻の発生を長期間効果的に抑止可能なテント構造物用に適した膜材を得ることができる。
【0011】
本発明のテント構造物用膜材は、前記防黴性有機化合物が、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、N−ハロアルキルチオ系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、及び有機金属系化合物から選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって黴や藻の発生を長期間効果的に抑止可能なテント構造物用に適した膜材を得ることができる。
【0012】
本発明のテント構造物用膜材は、前記防黴性有機化合物が、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持されていることが好ましい。これによって防黴性有機化合物が系外に排出され難くなり、かつ徐放性を発現することで、黴や藻の発生を長期間効果的に抑止可能なテント構造物用に適した膜材を得ることができる。
【0013】
本発明のテント構造物用膜材は、前記軟質塩化ビニル樹脂被覆層の少なくとも1面上に、光触媒物質含有防汚層が形成され、光触媒物質含有防汚層に含む光触媒物質が、酸化チタン、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、及び酸化ビスマスから選ばれた1種以上であることが好ましい。光触媒物質の酸化還元作用によって煤塵汚れを効果的にセルフクリーニング(光触媒による防汚層の親水性化による降雨による洗浄、及び光触媒による黴や藻などの分解作用による)し、黴や藻の発生を効果的、かつ長期間に亘り抑止可能なテント構造物用の膜材を得ることができる。
【0014】
本発明のテント構造物用膜材は、前記光触媒物質含有防汚層が、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体を含むことが好ましい。光触媒物質の酸化還元作用によって煤塵汚れを効果的にセルフクリーニング(光触媒による防汚層の親水性化による降雨による洗浄、及び光触媒による黴や藻などの分解作用による)し、黴や藻の発生を効果的、かつ更に長期間に亘り抑止可能なテント構造物用の膜材を得ることができる。
【0015】
本発明のテント構造物用膜材は、前記光触媒物質含有防汚層に含有する前記キレート錯体が、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持されていることが好ましい。これによって煤塵汚れを効果的にセルフクリーニング(光触媒による防汚層の親水性化による降雨による洗浄、及び光触媒による黴や藻などの分解作用による)すると同時に、キレート錯体が系外に排出され難くなり、かつ徐放性を発現することで、黴や藻の発生を長期間効果的に抑止可能なテント構造物用に適した膜材を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、黴や藻の発生を長期間最小限に抑止するテント構造物用の膜材が得られるので、本発明の膜材は、中〜大型テント構造物(スタジアム屋根、ドーム球場、開閉式屋根ドーム、パビリオンなど)、日除けテント構造物(公共施設モニュメント、駅舎ホーム屋根、連絡通路屋根、アーケード屋根、店舗用、住居用など)、内照式テント構造物(電飾看板、映像投影ドーム、アート造型など)などのテント構造物(金属フレームに防水性の繊維複合シートを取り付けた構造)などに広く適して用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のテント構造物用膜材は、繊維織物を基材として、その少なくとも片面に軟質塩化ビニル樹脂被覆層を有する可撓性シートであって、軟質塩化ビニル樹脂被覆層が、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体と、防黴性有機化合物とを含むもので、必要に応じてキレート錯体には、無機多孔質粒子にキレート錯体を担持させたものを使用し、必要に応じて防黴性有機化合物には、無機多孔質粒子に防黴性有機化合物を担持させたものを使用し、必要に応じて軟質塩化ビニル樹脂被覆層の上にキレート錯体を含有する光触媒物質含有防汚層を形成し、必要に応じてそのキレート錯体には、無機多孔質粒子にキレート錯体を担持させたものを使用することができる。
【0018】
本発明に使用する基材としての繊維織物は、織布、編布、不織布などの何れの形態でも使用でき、織布としては、平織物(経糸、緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、バスケット織物(例えば2×2、3×3、4×4などの正則バスケット織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則バスケット織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文、8枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)、及び変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物なども使用できるが、特に平織物、2×2バスケット織物が経緯物性バランスに優れ好ましい。上記の織物には精練、漂白、染色、柔軟化、撥水、防水、防炎、毛焼き、カレンダー、バインダー固着、接着剤塗布などの公知の繊維処理加工を単数、または複数を施したものを使用することもできる。
【0019】
繊維織物を構成する糸条は、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混合繊維など、何れも使用できるが、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル(PET、PBT、PNT)繊維、ナイロン繊維、全芳香族ポリアミド繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー(PBI、PBO、PBT)繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、または、これらの混合繊維などの合成繊維が使用でき、特にポリエステル(PET:ポリエチレンテレフタレート)繊維が好ましい。これらの糸条の態様は、モノフィラメント、マルチフィラメント、短繊維紡績(スパン)、スプリット、テープなどであるが、膜材のフレキシブル性、及び引裂強度を確保するためにはマルチフィラメント、または短繊維紡績(スパン)が好ましい。また、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維などのマルチフィラメント糸条も使用でき、これらの無機系繊維は特に国土交通大臣認定の不燃材料(テント構造物用不燃膜材)用に適し、特にガラス繊維マルチフィラメント糸条が好ましい。
【0020】
本発明に使用する繊維織物は、マルチフィラメント糸条からなる織物、または短繊維紡績布(スパン)であることが好ましく、マルチフィラメント糸条は、250〜3000デニール(277〜3333dtex)の範囲、特に500〜2000デニール(555〜2222dtex)が好ましく、必要に応じて無撚糸(断面が楕円または扁平)、または撚糸が使用できる。また短繊維紡績糸条は、10番手(591dtex)〜60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)など、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが好ましい。織物の経糸及び緯糸の打込み密度に制限は無く、用いる糸条の太さ(デニール、番手)に応じて任意の設計が可能であるが、織物の空隙率(目抜け)が、0〜30%の範囲となる打込み密度で、目付量100〜500g/mの織物がテント構造物用膜材の基材に適している。空隙率は繊維織物の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。マルチフィラメント糸条で製織された織物(空隙率7.5〜30%)の好ましくは両面に、軟質塩化ビニル樹脂フィルムを熱ラミネートして軟質塩化ビニル樹脂被覆層を形成する製造に適し、また短繊維紡績布(スパン)の場合、空隙率0〜5%の短繊維紡績布(スパン)の好ましくは両面に、軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用いてのコーティング〜ゲル化熱処理、またはデッピィング〜ゲル化熱処理による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の形成に適している。
【0021】
軟質塩化ビニル樹脂被覆層は、少なくとも塩化ビニル樹脂と可塑剤からなる軟質塩化ビニル樹脂中に、必須成分としてキレート錯体と、防黴性有機化合物とを含む軟質塩化ビニル樹脂組成物から形成されるもので、ペースト塩化ビニル樹脂(乳化重合タイプ)を用いた塩化ビニル樹脂ペーストゾル〜ゲル化熱処理による形成、或いはストレート塩化ビニル樹脂(懸濁重合タイプ)を用いて、カレンダー圧延成型またはTダイス押出成型した塩化ビニル樹脂フィルム(シート)による形成が可能である。本発明において、軟質塩化ビニル樹脂被覆層には、塩化ビニル系共重合体樹脂を25質量%程度混用してもよく、さらにはウレタンエラストマー、アクリル系共重合体ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロプレン、EPDMなどのゴム成分を25質量%程度混用することもできる。また可塑剤は平均分子量380〜560のフタル酸エステル系可塑剤、イソフタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、平均分子量1000〜3200のポリエステル系可塑剤、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素3元共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素3元共重合体樹脂などが使用でき、これらの可塑剤中に予めキレート錯体を混合したものを用いることがキレート錯体の分散性を観点において好ましい。軟質塩化ビニル樹脂被覆層は、本発明のテント構造物用膜材から繊維織物の質量を差し引いた値として、200〜2000g/m、特に300〜1000g/mが好ましい。
【0022】
軟質塩化ビニル樹脂被覆層に含むキレート錯体は、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上で、これらのキレート錯体(金属イオン)が黴菌表層の細胞透過性に関与するタンパク質のSH基と反応して生命活動に必要な酵素・タンパクを阻害する効果、或いは細胞内に侵入した金属イオンが黴菌の二本鎖DNAを架橋し、DNA複製を阻害することで黴や藻の繁殖を抑止する。銀イオンは臭化銀、塩化銀、クエン酸銀、沃化銀、乳酸銀、硝酸銀、酸化銀、ピクリン酸銀などの銀塩を供給源とし、銅はクエン酸二ナトリウム銅、トリエタノールアミン銅、炭酸銅、炭酸アンモニウム第一銅、水酸化第二銅、塩化銅、塩化第二銅、エチレンジアミン銅錯体、オキシ塩化銅、硫酸オキシ塩化銅、酸化第一銅、チオシアン酸銅などの銅塩を供給源とし、亜鉛は酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化亜鉛、沃化亜鉛、乳酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、蓚酸亜鉛、燐酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、セレン酸亜鉛、珪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫化亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、バレリアン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛などの亜鉛塩を供給源とし、ニッケルは塩化ニッケル、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、スルファミン酸ニッケルなどのニッケル塩を供給源とする。キレート錯体はこれらイオン供給源の金属塩と配位子とを適切な溶媒介してイオン結合させることで得られ、それを乾燥単離したものが本発明に用いられる。
【0023】
配位子は、グリシン、ヒスチジン、メチオニンから選ばれた1種以上のアミノ酸、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ピピリジン、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチルトリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸から選ばれた1種以上のエチレンアミン酢酸、ピリチオン、フェナントロリン、ポルフィリン、及び9−クラウン−3、12−クラウン−4,15−クラウン−5,18−クラウン−6,21−クラウン−7、24−クラウン−8,27−クラウン−9,30−クラウン−10,33−クラウン−11、36−クラウン−12、ジベンゾ12−クラウン−4、ジベンゾ18−クラウン−6,トリベンゾ18−クラウン−6,ジベンゾ24−クラウン−8,トリベンゾ27−クラウン−9、ジベンゾ30−クラウン−10、ジベンゾ36−クラウン−12、トリベンゾ36−クラウン−12、テトラベンゾ36−クラウン−12(これらはクラウンエーテルのエーテル環を簡略表記したもので頭の数字は全原子数、末尾の数字は酸素原子数を表す)、複数のクラウンエーテルの立体構造体であるクリプタンド[2.2]、クリプタンド[2.2.2]、及びこれらのクラウンエーテルの酸素原子の一部または全部を窒素原子(NH)に置換したアザクラウンエーテル、及びこれらの誘導体から選ばれた1種以上のクラウンエーテル、から選ばれた1種以上が挙げられ、一個の金属原子に対して複数の配位子が配位したもの、一個の金属原子に対して複数のクラウンエーテルでサンドイッチしたものを包含する。具体的にはヒスチジン銀、グリシン銅、ピリチオン亜鉛、ピリチオン銅、トリエチレンテトラミン銅、ジベンゾ24−クラウン−8銅、ジベンゾ24−クラウン−8亜鉛、ジベンゾ24−クラウン−8ニッケルなどが例示できる。
【0024】
また、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子などのキレート錯体は、軟質塩化ビニル樹脂被覆層に対して、0.05〜5質量%、特に0.1〜2質量%で存在することが好ましく、キレート錯体は予め可塑剤中に混合したものを用いて軟質塩化ビニル樹脂被覆層を形成することでキレート錯体の分散性を改善する。また一方、キレート錯体は無機多孔質粒子に担持された状態で存在することで、キレート錯体を安定な徐放性に改善し、それによって長期の防黴・防藻効果を安定持続させることができる。無機多孔質粒子は具体的に、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物などが例示できる。無機多孔質粒子に担持させるに好ましい配位子は、アミノ酸、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ピピリジン、エチレンアミン酢酸、ピリチオンなどである。無機多孔質粒子にキレート錯体を担持させる方法は、キレート錯体の製造時の溶媒中に無機多孔質粒子を混合攪拌して無機多孔質粒子にキレート錯体を吸着担持させ、それを乾燥単離したものが本発明に用いられる。この方法によるキレート錯体の担持は、キレート錯体生成後に無機多孔質粒子に吸着担持させた2段階工程のもの、キレート錯体生成と吸着担持を無機多孔質粒子内で行う1段階工程、の何れであってもよい。無機多孔質粒子に対するキレート錯体の担持率は特に限定は無いが、0.1〜10質量%、特に1〜5質量%が好ましい。この際に無機多孔質粒子には防黴性有機化合物とキレート錯体を同時に吸着担持させることもでき、それによって無機多孔質粒子の配合量を集約することを可能とする。また無機多孔質粒子の粒子径は特に限定は無いが、0.1〜5μm、特に0.3〜2μmが好ましい。また軟質塩化ビニル樹脂被覆層に含むこれらの無機多孔質粒子の含有率は軟質塩化ビニル樹脂被覆層に対して、0.5〜50質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0025】
一方、軟質塩化ビニル樹脂被覆層に含む防黴性有機化合物として、黴、細菌(グラム陽性、グラム陰性)、真菌などの細胞壁、細胞膜、細胞質、及び細胞核などに対して、酸化的リン酸化阻害、電子伝達系阻害、−SH基阻害、DNA合成阻害、細胞表皮機能阻害、脂質代謝阻害、キレート形成などの作用を及ぼす有機化合物である。これらは具体的に、A).2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(略称TBZ)、2−(カルボメトキシアミノ)ベンズイミダゾール(略称BCM)、1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルなどのイミダゾール系化合物、B).2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2−(チオシアノメチルスルホニル)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物、C).2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−チアジンなどのイソチアゾリン系化合物、D).ビス(ピリジン−2−チオール−1−オキシド)亜鉛塩(略称ZPT)、(2−ピリジンチオール−1−オキサイド)ナトリウム塩、2,2−ジチオ−ビスピリジン−1−オキサイド、2−ピリジルチオ−1−オキサイド銅塩、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジンなどのピリジン系化合物、E).ヘキサヒドロ−N,N′,N″−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ヘキサヒドロ−N,N′,N″−トリエチル−S−トリアジン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−トリアジン、2−クロロ−4,6−ジエチルアミノ−S−トリアジン、2−クロロ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−S−トリアジン、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−S−トリアジンなどのトリアジン系化合物、F).α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールなどのトリアゾール系化合物、G).N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキサン1,2−ジカルボキシイミド、N,N−ジメチル−N−(フルオロジメチルチオ)−N−フェニルスルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミドなどのN−ハロアルキルチオ系化合物、H).塩化ベンザコニウム、塩化ベンゼトニウム、N−デシル−N−イソノニル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩系化合物、I).10,10−オキシビスフェノキシアルシン(略称OBPA)、8−オキシキノリン銅、2−エチルヘキサン酸ニッケルなどが例示できるが、これらに限定されるものではなく、その他、アルデヒド系、フェノール系、ピグアナイド系、ニトリル系、有機ヨード系、アニリド系、ジスルフィド系、チオカルバメート系、ハロアリルスルホン系、有機スズ系、チアジアジン系、及び天然物抽出成分(ヒノキチオール、茶カテキン、キトサンなど)などと併用することもできる。軟質塩化ビニル樹脂被覆層に含むこれらの防黴性有機化合物の含有率は軟質塩化ビニル樹脂被覆層に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
【0026】
また、上述の防黴性有機化合物は、軟質塩化ビニル樹脂被覆層に対して、0.05〜5質量%、特に0.1〜2質量%で存在することが好ましく、防黴性有機化合物は予め可塑剤中に混合したものを用いて軟質塩化ビニル樹脂被覆層を形成することで防黴性有機化合物の分散性を改善する。また一方、防黴性有機化合物を無機多孔質粒子に担持した状態とする使用系で防黴性有機化合物の徐放性を安定にコントロールし、それによって長期の防黴・防藻効果を安定持続させることを可能とする。無機多孔質粒子は具体的に、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物などが例示できる。無機多孔質粒子に防黴性有機化合物を担持させる方法は、防黴性有機化合物を溶解して含む溶媒、または防黴性有機化合物を分散して含む溶媒中に無機多孔質粒子を混合攪拌して無機多孔質粒子に防黴性有機化合物を吸着担持させ、それを乾燥単離したもの、防黴性有機化合物を昇華、または熱融解させた状態での吸着担持などで得られたものが本発明に用いられる。この際に無機多孔質粒子には防黴性有機化合物とキレート錯体を同時に吸着担持させることもでき、それによって無機多孔質粒子の配合量を集約することを可能とする。無機多孔質粒子に対する防黴性有機化合物の担持率は特に限定は無いが、0.1〜10質量%、特に1〜5質量%が好ましい。また無機多孔質粒子の粒子径は特に限定は無いが、0.1〜5μm、特に0.3〜2μmが好ましい。また軟質塩化ビニル樹脂被覆層に含むこれらの無機多孔質粒子の含有率は軟質塩化ビニル樹脂被覆層に対して、0.5〜50質量%、好ましくは1〜20質量%である。
【0027】
また、軟質塩化ビニル樹脂被覆層には難燃剤を配合することによって消防法に適合する防炎性を確保し、さらには国土交通大臣認定の不燃材料(テント構造物用不燃膜材)とすることが好ましい。塩化ビニル樹脂(可塑剤を含まない)100質量部に対し、リン含有化合物、窒素含有化合物、無機系化合物などの難燃剤を10〜100質量部配合すればよく、具体的にリン含有化合物としては、赤リン、(金属)リン酸塩、(金属)有機リン酸塩、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられ、また、窒素含有化合物としては、(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物及びこれらの誘導体化合物であり、無機系化合物としては、金属酸化物(三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)、金属複合酸化物(ジルコニウム−アンチモン複合酸化物)、金属複合水酸化物(ヒドロキシスズ酸亜鉛、ハイドロタルサイトなど)などである。これらの難燃剤は2種以上を併用することで難燃性を向上させることができる。
【0028】
また、軟質塩化ビニル樹脂被覆層には軟質塩化ビニル樹脂用安定剤として、カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系などの安定剤を単独あるいは複数種併用して用いることが、本発明のテント構造物用膜材の製造時の熱劣化や変色を抑止し、さらに耐候性を向上させる。また本発明のテント構造物用膜材は顔料着色が自在で、特に白、パステル色などの着色はインクジェットプリントやマーキングフィルム文字入れのコントラストを鮮明とする。その他、軟質塩化ビニル樹脂被覆層には、塩化ビニル樹脂用の公知の添加剤を種々任意量配合することができ、必要に応じて、耐光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系など)、酸化防止剤(フェノール系)、蛍光増白剤、帯電防止剤、硬化剤(イソシアネート系など)、防虫剤(ピレスロイド系など)、消臭剤(酸化珪素・金属酸化物複合系など)、遮熱フィラー(中空粒子、粗粒酸化チタンなど)、芳香剤、蓄光顔料(アルミン酸ストロンチウム系など)、アルミフレーク顔料、パール顔料、無機充填剤(炭酸カルシウム、硫酸バリウムなど)などを含むことができる。
【0029】
本発明のテント構造物用膜材の態様の1つとして、軟質塩化ビニル樹脂被覆層の少なくとも1面上に、光触媒物質含有防汚層が形成されていることが好ましく、光触媒物質の酸化還元作用によって煤塵汚れを効果的にセルフクリーニング(光触媒による防汚層の親水性化による降雨による洗浄、及び光触媒による黴や藻などの分解作用による)し、黴や藻の発生を効果的、かつ長期間に亘り抑止することでテント構造物の外観を安定維持することを可能とする。光触媒物質含有防汚層には、光触媒物質として、酸化チタン、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、及び酸化ビスマスから選ばれた1種以上の粒子を含む以外、防黴、防藻に有効なキレート錯体として、銀配位子、銅配位子、亜鉛配位子、及びニッケル配位子から選ばれた1種以上のキレート錯体(段落〔0020〕、〔0021〕に記載のものと同一)を含むことが好ましい。光触媒物質含有防汚層は、光触媒物質10〜70質量%、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲル(シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、酸化ニオブゾルなど)25〜90質量%、ケイ素化合物(ポリシロキサン、コロイダルシリカ、シリカなど)1〜20質量%、及びキレート錯体1〜10質量%の組成による、厚さ0.1〜15μmの無機物を主体とするキレート錯体含有ゾルゲル薄膜が好ましい。この場合、光触媒物質含有防汚層と軟質塩化ビニル樹脂被覆層との中間には、光触媒物質の酸化還元作用から軟質塩化ビニル樹脂被覆層を保護するための中間保護層が設けることが膜材の耐久性向上の観点において好ましく、中間保護層は光触媒物質含有防汚層の組成から光触媒物質を省いた組成物による厚さ0.1〜15μmの無機物を主体とするゾルゲル薄膜が好ましい。この他の光触媒物質含有防汚層は、フッ素含有共重合体樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体など)に、光触媒物質粒子(好ましくは酸化チタン)の表面をシリカ、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの無機化合物で部分被覆してなる光触媒活性コントロールタイプの光触媒物質複合粒子を含有してなる厚さ5〜50μmの範囲のキレート錯体含有塗膜が使用できる。
【0030】
光触媒物質含有防汚層に含有するキレート錯体は、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土、及びこれらのシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の無機多孔質粒子に担持され、キレート錯体の徐放性がコントロールされた状態とすることで長期の防黴・防藻効果を安定持続させることが可能となる。無機多孔質粒子は段落〔0022〕に記載のものが同様の方法で使用できる。無機多孔質粒子に対するキレート錯体の担持率は特に限定は無いが、0.1〜10質量%、特に1〜5質量%が好ましい。無機多孔質粒子には防黴性有機化合物とキレート錯体を同時に吸着担持させることもできる。
【0031】
テント構造物を構築するために、本発明のテント構造物用膜材の接合(端部重ね合わせ接着)は、高周波ウエルダー機を用いて高周波振動によって接合を行うことができ、具体的に、2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバー)間に膜材を置き、ウエルドバーで加圧しながら高周波(1〜200MHz)で発振する電位差を印加することで膜材の樹脂層を分子摩擦熱で溶融軟化状態とすることで融合し、その状態で冷却固化して接合体を得る。また、超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16〜30KHz)の振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して融合を行う超音波融着法、またはヒーターの電気制御によって、100〜700℃に無段階設定された熱風を、ノズルを通じて膜材間に吹き込み、膜材の表面を溶融軟化させ、ノズル通過直後膜材を圧着して融合を行う熱風融着法、軟質塩化ビニル樹脂被覆層の溶融温度以上にヒーター内蔵加熱した金型(こて)を用いて被着体を圧着し融合を行う熱板融着法などによって接合可能である。
【実施例】
【0032】
次ぎに実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、テント構造物用膜材の防黴性などの性能の評価に用いた基準は以下の試験方法による。
(I)屋外展張曝露による防黴・防藻性の評価
幅20cm×長さ2mのテント構造物用膜材を、北向きに設置した曝露台(土台は苔の生えたコンクリート製)の傾斜30°方向と垂直方向にそれぞれ1mずつ連続して展張し、屋外展張る曝露を18ヶ月間行った。展張12ヶ月後、24ヶ月後、36ヶ月後のテント構造物用膜材全体を観察し、黴と藻の発生の有無、及びその発育状態をランク分けすることで防黴性(または防藻性)の評価を行った。
※屋外展張は、埼玉県草加市内において4月より開始した。
1:黴(藻)の発生(痕跡)が認められない(初期の状態を維持)
2:僅かに黴(藻)の発生(痕跡)を認める
3:部分的(試験体の9%以内のエリア)に黴(藻)発生(痕跡)を認める
4:部分的(試験体の10%以上のエリア)に黴(藻)発生(痕跡)を認める
(II)防黴性の評価(JIS Z2911培養試験)
幅3cm×長さ3cmのテント構造物用膜材に、下記試験用黴の胞子を接種し、ポテト・デキストロース寒天培地上に置き、シャーレ中で28℃×7日間、及び14日間、黴の発生状況を観察し、以下の判定基準で評価した。
1:試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない
2:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、
全面積の 1/3 を超えない
3:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、
全面積の 1/3 を超える
〈試験用黴〉a+b+cの混合黴
a:Aspergillus niger NBRC 105649(黒黴)
b:Penicillium citrinum NBRC 6352(青黴)
c:Cladosporium cladosporioides NBRC 6348(クロカワ黴)
(III)防黴性の持続性評価(JIS Z2911準拠の培養試験)
幅3cm×長さ3cmのテント構造物用膜材を200ccの水(エタノール35%濃度)中に浸漬し、30℃で1週間静置する下処理を行ったものを試験片として、(II)の試験を実施した。
1:試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない
2:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が,
全面積の 1/3 を超えない
3:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が,
全面積の 1/3 を超える
【0033】
参考例1]
ポリエステル繊維平織基布(経糸1111dtexマルチフィラメント糸条:糸密度19本/2.54cm×緯糸1111dtexマルチフィラメント糸条:糸密度21本/2.54cm:空隙率12%:質量180g/m)を基材として、その両面に下記軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)を用いて180〜190℃の条件のカレンダー成型により得た厚さ0.2mmのフィルム(軟質塩化ビニル樹脂被覆層)を、180〜190℃の条件のラミネート機により熱プレスすることで、厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。
〈軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)〉
塩化ビニル樹脂(重合度1050) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 50質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
グリシン銅(キレート錯体) 0.5質量部
ヒスチジン銀(キレート錯体) 0.5質量部
※キレート錯体、またはその担持体は予め可塑剤中に混合したものを用いた
10,10′−オキシビスフェノキシアルシン(防黴性有機化合物)0.15質量部
2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(防黴性有機化合物)0.15質量部
※防黴性有機化合物、またはその担持体は予め可塑剤中に混合したものを用いた
塩素化n−パラフィン(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
【0034】
参考例2]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)において、グリシン銅(キレート錯体)0.5質量部をピリチオン亜鉛(キレート錯体)0.5質量部に置換えた以外は参考例1と同様にして厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。
【0035】
[実施例3]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)において、グリシン銅(キレート錯体)0.5質量部を24−クラウン−8銅(キレート錯体)0.5質量部に置換えた以外は参考例1と同様にして厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。
【0036】
参考例4]
参考例1において、グリシン銅(キレート錯体)0.5質量部、及びヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部を、予めメソポーラスシリカにグリシン銅(キレート錯体)0.5質量部及びヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部を担持させた、グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持メソポーラスシリカ31質量部に置換えた以外は参考例1と同様にして厚さ0.65mm、質量698g/mの膜材を得た。
※グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持メソポーラスシリカの調製
グリシン銅(キレート錯体)を0.5g、及びヒスチジン銀(キレート錯体)を0.5g含む水−エタノール溶液200mlに、メソポーラスシリカ(平均粒子径2.5μm)30gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約31g得た。この粉末31gが担持するグリシン銅(キレート錯体)の量、及びヒスチジン銀(キレート錯体)の量は各々0.5gである。
【0037】
参考例5]
参考例4のグリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持メソポーラスシリカ11質量部を、グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持リン酸ジルコニウム31質量部に置換えた以外は参考例4と同様にして厚さ0.65mm、質量698g/mの膜材を得た。
※グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持リン酸ジルコニウムの調製
グリシン銅(キレート錯体)を0.5g、及びヒスチジン銀(キレート錯体)を0.5g含む水−エタノール溶液200mlに、リン酸ジルコニウム(平均粒子径3μm)30gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約31g得た。この粉末31gが担持するグリシン銅(キレート錯体)の量、及びヒスチジン銀(キレート錯体)の量は各々0.5gである。
【0038】
参考例6]
参考例2のヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部、及びピリチオン亜鉛(キレート錯体)0.5質量部を、ヒスチジン銀(キレート錯体)・ピリチオン亜鉛(キレート錯体)担持合成ゼオライト31質量部に置換えた以外は参考例2と同様にして厚さ0.65mm、質量698g/mの膜材を得た。
※ヒスチジン銀(キレート錯体)・ピリチオン亜鉛(キレート錯体)担持合成ゼオライトの調製
ヒスチジン銀(キレート錯体)を0.5gと、ピリチオン亜鉛を0.5g含む水−エタノール溶液200mlに、合成ゼオライト(平均粒子径2μm)30gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約31g得た。この粉末31gが担持するヒスチジン銀(キレート錯体)の量、及びピリチオン亜鉛の量は各々0.5gである。
【0039】
[実施例7]
実施例3のヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部、及び24−クラウン−8銅(キレート錯体)0.5質量部を、ヒスチジン銀(キレート錯体)・24−クラウン−8銅(キレート錯体)担持ケイソウ土31質量部に置換えた以外は実施例3と同様にして厚さ0.65mm、質量698g/mの膜材を得た。
※ヒスチジン銀(キレート錯体)・24−クラウン−8銅(キレート錯体)担持ケイソウ土の調製
ヒスチジン銀(キレート錯体)を0.5gと、24−クラウン−8銅を0.5g含む水−エタノール溶液200mlに、ケイソウ土(平均粒子径2μm)30gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約31g得た。この粉末31gが担持するヒスチジン銀(キレート錯体)の量、及び24−クラウン−8銅の量は各々0.5gである。
【0040】
参考例8]
参考例4において、10,10−オキシビスフェノキシアルシン(防黴性有機化合物:略称OBPA)0.15質量部、及び2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(防黴性有機化合物:略称TBZ)0.15質量部を、予めメソポーラスシリカにOBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を担持させた、防黴性有機化合物担持メソポーラスシリカ10.5質量部に置換えた以外は参考例4と同様にして厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。
※OBPA・TBZ担持メソポーラスシリカの調製
OBPAを0.15g、及びTBZを0.15g含む水−エタノール溶液100mlに、メソポーラスシリカ(平均粒子径2.5μm)10gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約10.5g得た。この粉末10.5gが担持するOBPAの量、及びTBZの量は各々0.15gである。
【0041】
参考例9]
参考例5において、OBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を、予めリン酸ジルコニウムにOBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を担持させた、防黴性有機化合物担持リン酸ジルコニウム10.5質量部に置換えた以外は参考例5と同様にして厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。
※OBPA・TBZ担持リン酸ジルコニウムの調製
OBPAを0.15g、及びTBZを0.15g含む水−エタノール溶液100mlに、リン酸ジルコニウム(平均粒子径3μm)10gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約10.5g得た。この粉末10.5gが担持するOBPAの量、及びTBZの量は各々0.15gである。
【0042】
参考例10]
参考例6において、OBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を、予め合成ゼオライトにOBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を担持させた、防黴性有機化合物担持合成ゼオライト10.5質量部に置換えた以外は参考例6と同様にして厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。
※OBPA・TBZ担持合成ゼオライトの調製
OBPAを0.15g、及びTBZを0.15g含む水−エタノール溶液100mlに、合成ゼオライト(平均粒子径2μm)10gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約10.5g得た。この粉末10.5gが担持するOBPAの量、及びTBZの量は各々0.15gである。
【0043】
[実施例11]
実施例7において、OBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を、予めケイソウ土にOBPA0.15質量部、及びTBZ0.15質量部を担持させた、防黴性有機化合物担持ケイソウ土10.5質量部に置換えた以外は実施例7と同様にして厚さ0.65mm、質量695g/mの膜材を得た。
※OBPA・TBZ担持ケイソウ土の調製
OBPAを0.15g、及びTBZを0.15g含む水−エタノール溶液100mlに、ケイソウ土(平均粒子径2μm)10gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約10.5g得た。この粉末10.5gが担持するOBPAの量、及びTBZの量は各々0.15gである。
【0044】
参考例12]
参考例8において、グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持メソポーラスシリカ10.5質量部、及びOBPA・TBZ担持メソポーラスシリカ10.5質量部を、予めメソポーラスシリカにグリシン銅(キレート錯体)0.5質量部とヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部、及びOBPA0.15質量部とTBZ0.15質量部を担持させた、キレート錯体及び防黴性有機化合物担持メソポーラスシリカ41質量部に置換えた以外は参考例8と同様にして厚さ0.65mm、質量690g/mの膜材を得た。
※キレート錯体及び防黴性有機化合物担持メソポーラスシリカの調製
グリシン銅(キレート錯体)0.5gとヒスチジン銀(キレート錯体)0.5g、及びOBPA0.15gとTBZ0.15gとを含む水−エタノール溶液100mlに、メソポーラスシリカ(平均粒子径2.5μm)40gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約41g得た。この粉末41gが担持するグリシン銅(キレート錯体)の量とヒスチジン銀(キレート錯体)の量は各々0.15gであり、OBPAの量、及びTBZの量は各々0.15gである。
【0045】
参考例13,14、実施例15]
参考例1,2、及び実施例3の膜材に光触媒物質含有防汚層を形成したものを参考例13,14、及び実施例15とした。
※中間保護層の形成
下記ケイ素化合物含有樹脂の塗工液を80メッシユのグラビアロールを有するコーターで15g/m塗布(wet)し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させ中間保護層を形成した。(固形分付着量3g/m
〈ケイ素化合物含有樹脂層塗工液〉
アクリル−シリコン共重合体樹脂溶液(固形分8質量%) 100質量部
メチルシリケート溶液(固形分20質量%) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤) 1質量部
グリシン銅(キレート錯体) 0.5質量部
ヒスチジン銀(キレート錯体) 0.5質量部

※光触媒物質含有防汚層の形成
下記光触媒物質含有防汚層形成用の塗工液を80メッシユのグラビアロールを有するコーターで15g/m塗布(wet)し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させ光触媒物質含有防汚層をゾルゲル形成(固形分付着量2g/m)し、各々実施例13〜15の厚さ0.65mm、質量705g/mの膜材を得た。
〈光触媒物質含有防汚層形成用の塗工液〉
硝酸酸性酸化チタンゾル(酸化チタン含有量10質量%相当) 100質量部
硝酸酸性シリカゾル(酸化ケイ素含有量10質量%相当) 100質量部
グリシン銅(キレート錯体) 0.5質量部
ヒスチジン銀(キレート錯体) 0.5質量部
【0046】
参考例16〜18,20〜12,14、及び実施例15,19,23
参考例4〜6,8〜10,12、及び実施例3,7,11の膜材に光触媒物質含有防汚層を形成したものを参考例16〜18,20〜12,14、及び実施例15,19,23とした。
※中間保護層の形成
参考例13,14、及び実施例15と同一の組成及び形成方法による。
※光触媒物質含有防汚層の形成
下記光触媒物質含有防汚層形成用の塗工液を80メッシユのグラビアロールを有するコーターで25g/m塗布(wet)し、100℃の熱風炉中で1分間乾燥させ光触媒物質含有防汚層を形成(固形分付着量7g/m)し、各々実施例16〜24の厚さ0.65mm、質量707g/mの膜材を得た。
〈光触媒物質含有防汚層形成用の塗工液〉
フッ化ビニリデン樹脂溶液(固形分15質量%) 100質量部
光触媒性酸化チタン(平均粒子径1μm) 8質量部
※ヒドロキシアパタイトによる表面被覆率4〜10%の部分被覆)
グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持メソポーラスシリカ
10質量部
※グリシン銅(キレート錯体)・ヒスチジン銀(キレート錯体)担持メソポーラスシリカの調製
グリシン銅(キレート錯体)を0.5g、及びヒスチジン銀(キレート錯体)を0.5g含む水−エタノール溶液200mlに、メソポーラスシリカ(平均粒子径2.5μm)30gを加え、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1gと共に、常温1時間撹拌し、水−エタノール溶媒を減圧除去後、100℃で乾燥し、粉末を約31g得た。この粉末31gが担持するグリシン銅(キレート錯体)の量、及びヒスチジン銀(キレート錯体)の量は各々0.5gである。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
[実施例3,7,11の防黴効果]
軟質塩化ビニル樹脂被覆層にキレート錯体と、防黴性有機化合物とを含む実施例3,7,11のテント構造物用膜材はキレート錯体を用いることで全て、防黴試験(I):屋外展張曝露36ヶ月後にも黴や藻の発生(痕跡)が認められず、初期の状態を維持しており、また防黴試験(II):JIS Z2911培養試験においても菌糸の発育が認められないものであったことからテント構造物用膜材として十分な防黴効果が期待できることが明らかとなった。また長期使用を想定しての防黴試験(III):での優劣は、キレート錯体と防黴性有機化合物を無機多孔質粒子に担持させて用いた実施例11の膜材が最も防黴性の長期持続性を有し、次いでキレート錯体を無機多孔質粒子に担持させて用いた実施例の膜材の防黴持続性が高く、実施例の膜材は実施例中では幾分長期持続性に劣るものではあるが、従来の膜材よりも優れていることは明らかである。また、実施例3,7,11のテント構造物用膜材に光触媒物質含有防汚層を形成した実施例15,19,23のテント構造物用膜材は、煤塵汚れの蓄積や雨筋汚れなどの顕著な発生が長期間認められず、光触媒物質含有防汚層による降雨セルフクリ−ニングによる防汚効果、及び黴菌などの有機物分解効果によって、実施例3,7,11のテント構造物用膜材よりも更に初期外観を長期間安定持続可能とするものであり、特に実施例19,23のテント構造物用膜材では、実施例11,15のテント構造物用膜材よりも持続期間が優れていた。
【0052】
参考比較例1]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)から、グリシン銅(キレート錯体)0.5質量部、及びヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部を省略した以外は参考例1と同様として、厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。参考比較例1の膜材はキレート錯体を省いたことで、防黴性有機化合物による防黴効果のみとなり、初期的な防黴効果は良好に発現するものの、防黴試験(I)36ヶ月後には防黴性有機化合物のブリード、降雨による洗い流れ、劣化などの要因で、部分的(試験体の6%程度のエリア)に黴の発生を認め、また防黴試験(III)では防黴性有機化合物の抽出により、試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超えるなど、実施例1の膜材に比較して防黴性の長期安定持続性を大きく損なうものであった。
【0053】
参考比較例2]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)から、グリシン銅(キレート錯体)0.5質量部、及びヒスチジン銀(キレート錯体)0.5質量部を省略し、替わりに銀イオン担持ゼオライト1質量部に変更した以外は参考例1と同様として、厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。参考比較例2の膜材は銀イオン担持ゼオライトと、防黴性有機化合物とを有することで比較的長期間の防黴性を発現可能であったが、防黴試験(I)36ヶ月後には防黴性有機化合物のブリード、降雨による洗い流れ、劣化などの要因で、黴の発生を認め、また防黴試験(III)では、防黴性有機化合物の抽出により、試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超えない程度で、比較例1よりは良好ではあるが、実施例1の膜材に比較すると防黴性の長期安定持続性は劣るものであった。
【0054】
参考比較例3]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)から、10,10−オキシビスフェノキシアルシン(防黴性有機化合物)0.15質量部、及び2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(防黴性有機化合物)0.15質量部を省略した以外は参考例1と同様として、厚さ0.65mm、質量700g/mの膜材を得た。参考比較例3の膜材は、防黴性有機化合物を省いたことで、キレート錯体による防黴効果のみとなり、初期的な防黴効果が良好に発現するものの、防黴試験(I)36ヶ月後には部分的(試験体の6%程度のエリア)に黴の発生を認め、また防黴試験(III)では、試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超えるなど、実施例1の膜材に比較して防黴性の長期安定持続性を大きく損なうものであった。
【0055】
参考比較例4]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)を、カレンダー成型タイプのポリウレタン樹脂組成物(1)に変更し、180℃のカレンダー成型に供したところ、グリシン銅(キレート錯体)とヒスチジン銀(キレート錯体)がカレンダー成型の熱ロールに焼き付き、フィルム加工が不能となって、膜材を得ることができないものであった。
〈ポリウレタン樹脂組成物(1)〉
ポリウレタン樹脂(エーテル型) 100質量部
グリシン銅(キレート錯体) 0.5質量部
ヒスチジン銀(キレート錯体) 0.5質量部
10,10′−オキシビスフェノキシアルシン(防黴性有機化合物)0.15質量部
2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(防黴性有機化合物)0.15質量部
ポリリン酸アンモニウム(難燃剤) 10質量部
メラミンシアヌレート(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
モンタン酸ワックス(滑剤) 0.5質量部
【0056】
参考比較例5]
参考例1の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)を、カレンダー成型タイプのポリエチレン樹脂組成物(1)に変更し、150℃のカレンダー成型に供したところ、グリシン銅(キレート錯体)とヒスチジン銀(キレート錯体)がカレンダー成型の熱ロールに焼き付き、フィルム加工が不能となって、膜材を得ることができないものであった。
〈ポリエチレン樹脂組成物(1)〉
ポリウレタン樹脂(エーテル型) 100質量部
グリシン銅(キレート錯体) 0.5質量部
ヒスチジン銀(キレート錯体) 0.5質量部
10,10′−オキシビスフェノキシアルシン(防黴性有機化合物)0.15質量部
2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(防黴性有機化合物)0.15質量部
ポリリン酸アンモニウム(難燃剤) 10質量部
メラミンシアヌレート(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
モンタン酸ワックス(滑剤) 0.5質量部
【0057】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記、実施例、及び比較例から明らかな様に、本発明によれば、黴や藻の発生を最小限に抑止することができる膜材が得られるので、本発明の膜材は、中〜大型テント構造物(スタジアム屋根、ドーム球場、開閉式屋根ドーム、パビリオンなど)、日除けテント構造物(公共施設モニュメント、駅舎ホーム屋根、連絡通路屋根、アーケード屋根、店舗用、住居用など)、内照式テント構造物(電飾看板、映像投影ドーム、アート造型など)などのテント構造物(金属フレームに防水性の繊維複合シートを取り付けた構造)などに広く適して用いることができる。