【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、このことは、特に2導体または複数導体のシステムによって自動車においてデータを伝送するためにコネクタ内に挿入するための、コネクタインサートによって達成される。このコネクタインサートは、ケーブルのワイヤに取り付け可能なプラグコンタクトのための少なくとも1つの受容チャンバ、およびプラグコンタクトのための受容チャンバ内への入口を有するハウジングを有し、さらに、寸法的に安定した材料から構成され、ハウジングへの取り付け用の固定場所を有し、ハウジング上に装着された状態において入口から離れて延在しかつ入口から離間してケーブルへの取り付け用の固定部位を有する、安定部材を有する。
【0006】
コネクタにおいてプラグコンタクトを直接使用するのではなく間挿されたコネクタインサートを使用する、この簡単な解決法の結果として、同時にケーブルの取り扱いが簡略化される。コネクタインサートの助けにより、ケーブル全体を、そのワイヤおよびプラグコンタクトとともに1つの個片として、コネクタ内に挿入することができるか、またはコネクタから取り外すことができる。このことにより、コネクタまたはコネクタインサートの製造の自動化および装着が容易になる。個々のワイヤのそれぞれの別個の取り扱いを通してワイヤが損傷するかまたはプラグコンタクトから分離する危険性が、回避される。さらに、導体は、コネクタインサートにおいて直接露出されるものの通常は依然として絶縁されているが、安定部材によって、引っ張りに対抗して固定されかつねじれないように保護される様式で保持される。損傷の危険性は、まさにケーブルのワイヤが露出される領域において特に大きいが、これは被覆材が除去されているからである。
【0007】
本発明による解決法を、互いから独立しておりかつ各々がそれ自体有利である、以下の構成によってさらに改善することができる。
【0008】
こうして、第1の有利な構成によれば、安定部材は、少なくとも2つの固定部位の間に、側壁を有しかつワイヤを中に受容できる樋部(trough)を形成することができる。樋部は、露出したワイヤの領域を支持し固定する。その基部および側壁が、ワイヤ、特にそれらの絶縁材を損傷から保護する。
【0009】
樋部は、コンタクト要素に起因してケーブル内よりもワイヤ自体の端部のところで互いからより離れて離間されるワイヤのための案内部を形成するために、ハウジングに向かってより広くすることができる。
【0010】
機械的損傷に対する保護を改善するために、側壁は、少なくとも樋部の区域において、露出したワイヤよりも高くすることができる。この構成では、したがって、側壁は、樋部基部から上向きに、特に絶縁材を含めた1本のワイヤの直径よりも大きく突き出る。
【0011】
装着を簡略化するために、ケーブル側にある樋部の端部を使用してケーブルを敷設することができる。
【0012】
ハウジングを、ハウジング側にある樋部の端部において定置することができる。この結果、コンタクト要素を樋部の基部に沿ってより容易に装着できるように、安定部材を装着補助部として使用できるようになる。
【0013】
安定部材を、軟磁性の、特に強磁性の材料から製作することができる。この構成では、安定部材は、露出したワイヤの領域のためのシールド材として特に機能する。この領域では、ワイヤがもはや撚られていないため、データ伝送は危険にさらされる。引っ張りを緩和しかつねじれから保護する役割を果たす安定部材内に、シールド材を組み込むことによって、高いデータ伝送速度が保証される。
【0014】
安定部材は特に、金属シートで製作された、プレス加工された曲げられた部品とすることができ、このことは、低い製造コストをもたらす。
【0015】
安定部材が少なくとも部分的に、ケーブル被覆材および/またはプラグコンタクトに重なる場合、シールドの効果を改善することができる。
【0016】
良好なシールドのためには、安定部材がハウジング側の固定部位において、プラグコンタクトのための少なくとも1つの受容チャンバを、ハウジング上の外側で囲めば、さらに有利である。たとえば、安定部材は、ハウジング側のおよび/またはケーブル側の固定部位において、円周方向にワイヤを囲むことができる。この場合、円周方向は、ワイヤの長手方向を中心として延びる。安定部材は特に、ワイヤまたは受容チャンバ、特に受容チャンバ内のプラグコンタクトを、完全に、つまり360°囲むことができる。ただし、周囲におけるより小さい間隙は、この間隙のサイズが予想される干渉周波数の波長の4分の1でない限りは、許容できる。ただし、完全に囲むことにより固定部位における機械的荷重容量も改善されるので、これが好ましい。
【0017】
ハウジングおよび安定部材を、ハウジング側の固定部位において互いの上に圧着可能とすることができ、かつ/または、これらは、少なくともケーブルの長手方向において機能する形状嵌合部(form-fit)を形成することができる。
【0018】
安定部材を、ハウジング側の固定部位においてハウジングの周りに、および/またはケーブル側の固定部位においてケーブル被覆材の周りに、圧着することができる。こうして、安定部材とハウジングとの間のおよび安定部材とケーブルとの間の、それぞれの接続を、簡単にかつ高い費用効果で達成することができる。
【0019】
ハウジングの領域において、安定部材が、ハウジングの立方体状の容積から外に突き出なければ有利である。この構成は、安定部材を装備されたコネクタインサートの下位互換性を確保し、このことにより、これを任意の既存のコネクタインサートの代わりに使用できるようになる。コネクタインサートの取り扱いの自動化が、こうして容易になる。
【0020】
ハウジングは、少なくともハウジング側の固定部位において安定部材を受容するための、凹部または中空部を有し得る。
【0021】
安定部材を、特にハウジングにおいて、相補的に構成された複数の中空部内、または一続きの中空部内に敷設することができる。結果として、安定部材を、ハウジングの立方体状の容積内に組み込むことができる。少なくとも1つの中空部または凹部は、加えて、安定部材とハウジングとの間に形状嵌合部を作り出すことができる。圧着接続部が存在する場合、この形状嵌合部によって、安定部材とハウジングとの間の接続の堅固さを高めることができる。
【0022】
ハウジング側の固定部位において、安定部材は、さらなる有利な構成によれば、ハウジングの相補的なポケット内に延在する、またはこれらのポケット内に定置される、突出した突起を有し得る。この突起は、長手方向におよび/または長手方向に対して横断方向に突出できるとともに、特に対で存在し、各対は、反対方向に突出する突起を有することができる。各対を、特にハウジングの側部表面に配設することができる。突起および相補的なポケットは、安定部材とハウジングとの間の形状嵌合を強化する。突き出る構成の結果として、突起は、特にケーブルの曲げまたはケーブルに対する横方向の力の場合にトルク支持部として機能するトルク支持部として機能し、より大きな力を吸収できる。
【0023】
そのような力を可能な限り多くの方向で支持できるようにするために、突起は、ハウジングの少なくとも3つの側面上に存在し得る。突起の側壁が上で支持されるポケットの肩部は、導体の長手方向に対して可能な限り垂直に延びるべきである。各突起に対して、2つのそのような肩部が好ましくは存在する。別法として、突起は、その端部表面がそのような肩部上にある状態で支持される。
【0024】
安定部材とハウジングとの間の形状嵌合は、別の構成によれば、特にケーブルの引っ張り方向において機能する。
【0025】
安定部材は、そのハウジング側の端部および/またはそのケーブル側の端部において、特に概ね等しい長さの、2つの対向する圧着翼部(crimping wings)を有し得る。圧着接続が完了したとき、これらの圧着翼部は、ハウジングおよび/またはケーブルの被覆材の周りに敷設される。圧着翼部を、特に樋部の側壁の延長部によって形成することができる。圧着接続が完了したとき、圧着翼部は、ワイヤ方向において互いに重なること、または互いの背後に置かれることができる。
【0026】
相互に係合する要素、たとえば、圧着が完了したとき互いに係合し形状嵌合部を形成する、少なくとも1つの突出部およびこの突出部と相補的な少なくとも1つの空洞部が、圧着翼部に装備される場合、高い応力における圧着接続の緩みを回避することができる。
【0027】
圧着接続を作り出す前に、ハウジングのところに、特に装着前の位置において安定部材を固定するために、安定部材を、これがハウジングとラッチ可能となるように構成することができる。この目的のために、安定部材は、ハウジング側の固定部位において、ハウジングの対となるラッチ要素とラッチされる、少なくとも1つのラッチ要素を有し得る。1つの構成では、ラッチ要素は、圧着翼部上に、特にハウジングの側壁に当接する圧着翼部の領域内にあることができる。安定部材とハウジングとの間のラッチングを、開口部の中に突き出るラッチ突起によって簡単に作り出すことができる。この場合、開口部を、安定部材上にまたはハウジング上に配置することができ、また、ラッチ突起を、ハウジング上にまたは安定部材上に配置することができる。
【0028】
品質保証のために、プラグコンタクトがコネクタインサート内に受容されるとき、プラグコンタクトとワイヤとの間の接続を試験する必要がある場合がある。この目的のために、ハウジングは、経由することでプラグコンタクトがハウジングの外側から側部よりアクセス可能となる、少なくとも1つの試験用開口部を有し得る。プラグコンタクトは、長手方向に対して横断方向にある試験用開口部を経由してアクセス可能とすることができる。
【0029】
コネクタインサートの別の有利な構成は、ハウジングが、受容チャンバを通って延在しかつ長手方向に対して横断方向に延びる、固定溝を有することを想定する。固定溝の側壁は、受容チャンバ内に受容されたプラグコンタクトの突出部と、少なくとも概ね整合させることができる。固定要素が固定溝内に挿入される場合、そのような固定溝を、プラグコンタクトを受容チャンバ内に固定するために使用することができる。固定要素は、プラグコンタクトの突出部を、形状嵌合の様式で保持する。同時に、ハウジングを、固定要素により、固定溝の側壁を介して固定することができる。
【0030】
固定溝(securing groove)は、同時に互いに並べて置かれかつそれらの受容チャンバ内に配向されたいくつかのプラグコンタクトを、固定要素を用いて同時に固定できるように、ハウジングの全幅にわたって切れ目なく延在することができる。
【0031】
プラグコンタクトがコネクタインサートから外に引き出されるのを防止するために、プラグコンタクトの突出部は、固定溝の側壁のところで、プラグコンタクトの挿入方向において後方に配設される。
【0032】
固定溝は、プラグコンタクトとワイヤとの間の電気的接続を調査するための、試験用開口部としての役割を果たすことができる。
【0033】
プラグコンタクトは、特に受容チャネルにおいて凹んでいる、固定溝の基部上に延びることができる。受容チャネルは、受容チャンバの一部を形成することができる。
【0034】
コネクタインサートに加えて、本発明は、上で描写したその構成のうちの1つにおいて、好ましくはコネクタ内に挿入された少なくとも1つのそのようなコネクタインサートを備える、コネクタにも関する。このコネクタは、コネクタ内に挿入され列状にまたは畑状に配置される、複数のコネクタインサートを好ましくは備える。コネクタは、コネクタインサートおよびこのコネクタインサート内のプラグコンタクトを、ケーブルの引っ張り方向においてまたはワイヤの長手方向において、形状嵌合の様式でコネクタ内に同時に固定する、保持突起(retaining lug)を有し得る。この保持突起を、コネクタインサートのハウジングにおいて構成された固定溝内にもってくることを可能にすることができ、また特に、受容チャンバと重ならせることができる。
【0035】
保持突起を、コネクタハウジングの折り畳み可能なハウジング要素において、特にその自由端においてヒンジ止めすることができ、この結果、この保持突起は、取り外し不可能に保持される。たとえば、折り畳み可能なハウジング要素およびコネクタハウジングを射出成形法によって製造できるように、一体型のヒンジを採用することができる。
【0036】
保持突起を、コネクタインサートのハウジングの固定溝内で、ラッチ可能とすることができる。この目的のために、保持突起は、ラッチされた状態においてワイヤの概ね長手方向に突出しかつ固定溝の側壁において捕捉される、ラッチ突出部を有し得る。
【0037】
コネクタの1つの構成では、折り畳み可能なハウジング要素は、コネクタの外壁の一部を形成することができる。コネクタインサートを固定するために、ハウジング要素がその保持突起によって固定溝内へと折り畳まれる場合、このハウジング要素は、同時にコネクタインサートを覆う。ラッチされた状態において、折り畳み可能なハウジング要素は、特にコネクタインサートの安定部材、少なくともそのハウジング側の固定部位に重なる領域も、覆うことができる。
【0038】
いくつかのコネクタインサートを、互いと少なくとも概ね整合されている複数の溝を有するコネクタ内に受容することができる。この構成では、保持突起は、互いに並べて置かれるコネクタインサートの溝内に同時に係合し、これらを1つに固定することができる。
【0039】
コネクタおよびコネクタインサートを簡単にかつ組み立て易い方法で同時に固定することを可能にする、独立した解決法は、特に2導体または複数導体のシステムによって自動車においてデータを伝送するためにコネクタ内に挿入するための、コネクタインサートに関し得る。このコネクタインサートは、ケーブルのワイヤに取り付け可能なプラグコンタクトのための少なくとも1つの受容チャンバを有する、ハウジングを有する。この場合、このハウジングは、少なくとも1つの受容チャンバを通って延在し、かつハウジングの少なくとも1つの側壁において開いている、固定溝を有し、この壁は、長手方向に対して横断方向を向いている。
【0040】
この独立した解決法は、特に2ワイヤまたは複数ワイヤのシステムによる、自動車におけるデータ伝送のためのコネクタに関し得る。このコネクタは、ケーブルのワイヤに取り付け可能なプラグコンタクトのための少なくとも1つの受容チャンバを有するハウジングを有する少なくとも1つのコネクタインサートを備える、少なくとも1つのレセプタクルを有する。この場合、ハウジングは、少なくとも1つの受容チャンバを通って延在し、かつ長手方向に対して横断方向を向いているハウジングの少なくとも1つの側壁において開いている、固定溝を有する。この場合、コネクタインサートを、レセプタクル内へと長手方向に対して横断方向に挿入することができ、またレセプタクルは、固定溝内へと導入可能な保持突起を有し得る。
【0041】
この解決法は、コネクタインサートをコネクタのレセプタクル内に横方向に導入する結果、保持突起が自動的に固定溝内へと駆動され、コネクタインサートをワイヤの長手方向において固定するという利点を提供する。
【0042】
この独立した解決法のコネクタインサートを、保持突起が折り畳み可能なハウジング要素上に配置されている、上記の構成のうちの1つにおけるコネクタハウジングと組み合わせることもできる。
【0043】
保持突起を、レセプタクル内に固定して据え付けることができ、この保持突起は、ハウジングがレセプタクル内に挿入されるとき、固定溝内へと自動的に駆動される。コネクタインサートを、ラッチ機構によって、そのワイヤの長手方向に対して横断方向において固止することができる。
【0044】
上で既に述べたように、保持突起は、コネクタインサートおよびこのコネクタインサートのプラグコンタクトを、同時に固定することができる。保持突起を、既に上記したようにさらに構成することもできる。この独立した解決法のコネクタインサートは、上記の構成のうちの1つにおける安定部材を有することもできる。
【0045】
また、横方向に挿入されるコネクタインサートを有し保持突起による自動的な固定を行う、変形形態において、コネクタは挿入時、レセプタクルを閉じることを可能にする折り畳み可能なハウジング要素を有することができる。このようにして、コネクタインサートを、外れないように固定することができる。
【0046】
折り畳み可能なハウジング要素がレセプタクルを閉じる前に、コネクタインサートを、レセプタクル内の所定位置にロックすることができる。結果として、コネクタインサートは、既に事前組立位置にあるレセプタクル内に固定される。
【0047】
この構成では、ケーブルの挿入を可能にするために、折り畳み可能なハウジング要素を、プラグ面においてコネクタの端部上にヒンジ止めすることができる。
【0048】
折り畳み可能なハウジング要素を、ラッチにより、これがコネクタを挿入するためのレセプタクルを閉じる位置において、固定することができる。
【0049】
さらに、ハウジング要素上に、レセプタクル内のコネクタインサートのラッチング部を固定することのできる、すなわちラッチング部のトリガを阻止することのできる、固定要素が存在し得る。レセプタクル内のコネクタインサートのラッチング部を固定するために、特に折り畳み可能なハウジング要素は、レセプタクルが閉められるときに、コネクタインサートのラッチング部の背後に置かれたポケット内へと駆動される、固定舌部を有し得る。レセプタクル内のコネクタインサートのラッチングの解放は、こうして形状嵌合の様式で阻止される。
【0050】
コネクタおよびコネクタインサートを簡単にかつ組み立て易い方法で同時に固定することを可能にする、別の独立した解決法は、2導体または複数導体のシステムによる、自動車におけるデータ伝送のためのコネクタに関し得る。このコネクタは、ケーブルのワイヤに取り付け可能なプラグコンタクトのための少なくとも1つの受容チャンバを有するハウジングを有する少なくとも1つのコネクタインサートを有する、少なくとも1つのレセプタクルを有する。この場合、このハウジングは、少なくとも1つの受容チャンバを通って延在し、かつ長手方向に対して横断方向を向いているハウジングの少なくとも1つの側壁において開いている、固定溝を有する。またこの場合、コネクタインサートを、レセプタクル内へと長手方向に対して横断方向に挿入することができ、レセプタクルは、固定溝内へと導入可能な保持突起を有する。
この独立した解決法のコネクタは、上記の構成のうちの1つにおける安定部材、ならびに/または、コネクタおよび/もしくはコネクタインサートの上記の構成の特徴のうちの1つを有することもできる。このことによりたとえば、保持突起を、レセプタクル内に固定して据え付けることができるとともに、ハウジングがレセプタクル内に挿入されるとき、固定溝内へと自動的に駆動することができる。
【0051】
以下では、図面を参照し実施形態を使用して、本発明についてより詳細に説明する。先の注釈に関して、描写され記載された実施形態における個々の特徴に結び付けられた利点が、その実施形態の特定の使用に関わりのない場合、それらの特徴を省略することができる。逆に、同じく先の注釈に関して、その実施形態の使用のために、記載されていないさらなる特徴の効果が要求される場合、それらの特徴を追加することができる。
【0052】
以下の図面では、構造および/または機能に関して同一である要素については、同じ参照符号が使用される。