特許第6678048号(P6678048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678048
(24)【登録日】2020年3月18日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】電線ツイスト装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/02 20060101AFI20200330BHJP
   B21F 7/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   H01B13/02 Z
   B21F7/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-49580(P2016-49580)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-168202(P2017-168202A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】白井 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】榎本 純也
(72)【発明者】
【氏名】物延 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
(72)【発明者】
【氏名】宮川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】月本 清志
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−220378(JP,A)
【文献】 特開2007−242431(JP,A)
【文献】 特開2005−071753(JP,A)
【文献】 特開平03−170807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/02
H01B 13/012
B21F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ心線と前記心線の周囲を覆う被覆とを有し、両端の切断処理が施された複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、
前記複数の電線は、第1電線および第2電線を含み、
前記第1電線の一端部を保持しつつ回転可能な第1回転クランプと、
前記第2電線の一端部を保持しつつ回転可能な第2回転クランプと、
前記複数の電線の他端部を保持する保持クランプと、
前記複数の電線の一端部側に設けられ、前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプをそれぞれ前記第1電線および前記第2電線の軸芯回りの一方向または前記一方向と逆方向に回転させる第1回転アクチュエータと、
前記複数の電線の一端部側に設けられ、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを一括してツイスト電線の軸芯回りの前記一方向または前記逆方向に回転させる第2回転アクチュエータと、を備え
前記保持クランプは、前記第1電線の他端部を保持しつつ回転可能な第3回転クランプと、前記第2電線の他端部を保持しつつ回転可能な第4回転クランプと、を有し、
前記複数の電線の他端部側に設けられ、前記第3回転クランプと前記第4回転クランプとを前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第3回転アクチュエータと、
前記複数の電線の他端部側に設けられ、前記第3回転クランプと前記第4回転クランプとを一括して、前記第2回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび第2回転クランプの一括した回転の回転方向と逆方向に回転させる第4回転アクチュエータと、
を備えた、電線ツイスト装置。
【請求項2】
前記第1回転アクチュエータに接続された第1回転軸と、
前記第1回転軸に接続された第1ギアと、
前記第1ギアの駆動力を受けて回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアに噛合され、前記第1回転クランプに連結された第2ギアと、
前記駆動ギアに噛合され、前記第2回転クランプに連結された第3ギアと、を備えた、請求項1に記載の電線ツイスト装置。
【請求項3】
前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプを保持する保持部と、
一端が前記第2回転アクチュエータに接続され、他端が前記保持部に接続された第2回転軸と、を備えた、請求項1または2に記載の電線ツイスト装置。
【請求項4】
前記第2回転アクチュエータは、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを一括して前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線ツイスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1組の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1電線および第2電線を撚り合わせる電線ツイスト装置が知られている。例えば特許文献1には、第1ボビンに捲回された第1材料単線の一端部と第2ボビンに捲回された第2材料単線の一端部とを、自転公転機構と逆方向に引き出しつつ撚り合わせる電線ツイスト装置が開示されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、一対の電線のそれぞれの一端部を独立して把持しつつ各電線に当該電線の中心軸回りの回転力を与えることにより拘束した状態で、前記一対の電線を一括して回転させることにより撚り合わせを行う電線ツイスト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−44615号公報
【特許文献2】特開2009−129729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の電線ツイスト装置では、電線を引き出しつつ撚り合わせるため、撚り合わせの後に切断処理して所定長さの電線とする作業が必要となる。こうした処理をツイスト電線の製造後に行うとなると、切断処理が煩雑となる。具体的には、先ず、電線の引出し側において切断箇所の位置決め工程が必要となる。次に、引出し側とは反対側においては、撚り合わせ部分が電線端部まで形成されるため、撚り合わせ部分を切断することになってしまう。撚り合わせ部分の切断を回避するには、撚り合わせ作業終了後に、別途撚り合わせしない状態で引き出す作業が必要となり、制御面での複雑化も招いてしまう。また、上記特許文献2の電線ツイスト装置では、各電線に当該電線の中心軸回りの回転力を与える自転機構と一対の電線を一括して回転させる公転機構とを同じ駆動源の駆動力により駆動しているため、自転機構と公転機構とを別々に駆動させることが困難となる。撚り合わせ対象となる電線には、太線または細線となる電線、さらには心線に対して厚膜または薄膜な被覆など様々な種類が存在する。そのため、自転機構と公転機構とを一括して回転させることしかできなければ、各種電線の仕様に合わせた適切な撚り合わせを実現することが困難になってしまう。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、両端の切断処理が施された電線からツイスト電線を製造し易く、各種電線の仕様に合わせた適切な撚り合わせを実現することができる電線ツイスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電線ツイスト装置は、それぞれ心線と前記心線の周囲を覆う被覆とを有し、両端の切断処理が施された複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、前記複数の電線の何れかの一端部を保持しつつ回転可能な第1回転クランプと、前記複数の電線の何れかの一端部を保持しつつ回転可能な第2回転クランプと、前記複数の電線の他端部を保持する保持クランプと、前記複数の電線の一端部側に設けられ、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを電線軸芯回りの一方向または前記一方向と逆方向に回転させる第1回転アクチュエータと、前記複数の電線の一端部側に設けられ、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを一括して電線軸芯回りの前記一方向または前記逆方向に回転させる第2回転アクチュエータと、を備えている。
【0008】
本発明に係る電線ツイスト装置によれば、両端の切断処理が施された複数の電線の一端部を第1回転クランプまたは第2回転クランプにより保持し、当該電線の他端部を保持クランプにより保持した状態で撚り合わせを行うことができる。このため、電線を引き出しつつ撚り合わせる必要がない。したがって、本発明によれば、撚り合わせを行った後に電線の切断処理を行う必要がない。このことによって、両端の切断処理が予め施された電線に対して撚り合わせを行うことにより、上記のような撚り合わせ後に切断処理を実施する際の従来の煩雑な処理がなくなるため、ツイスト電線を容易に製造することができる。また、第1回転クランプと第2回転クランプとを電線軸芯回りに回転(以下、このような回転を電線の自転と呼ぶ場合がある)させる第1回転アクチュエータと、当該第1回転アクチュエータとは別に、第1回転クランプと第2回転クランプとを一括して電線軸芯回りに回転(以下、このような回転を電線の公転と呼ぶ場合がある)させる第2回転アクチュエータとを設けるようにした。これにより、電線の自転および公転を別個独立に制御することができる。このことによって、太線、細線、厚膜または薄膜な被覆を有する各種電線の仕様に合わせた適切な撚り合わせを実現することが可能となる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第1回転アクチュエータに接続された第1回転軸と、前記第1回転軸に接続された第1ギアと、前記第1ギアの駆動力を受けて回転する駆動ギアと、前記駆動ギアに噛合され、前記第1回転クランプに連結された第2ギアと、前記駆動ギアに噛合され、前記第2回転クランプに連結された第3ギアと、を備えている。
【0010】
上記態様によれば、第1回転アクチュエータによる駆動力を駆動ギアを介して第2ギアおよび第3ギアに同時に伝達することができる。これにより、第2ギアを駆動する駆動源と第3ギアを駆動する駆動源とを別々に用意する必要がない。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプを保持する保持部と、一端が前記第2回転アクチュエータに接続され、他端が前記保持部に接続された第2回転軸と、を備えている。
【0012】
上記態様によれば、第2回転軸により保持部を介して第1回転クランプおよび第2回転クランプを一括して回転(つまり公転)させることができる。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第2回転アクチュエータは、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを一括して前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させるように構成されている。
【0014】
電線の公転のみを行う場合には、電線には当該公転の方向と逆方向(つまり、公転による捩りが解ける方向)に力が作用するため、電線の密着性が低下し、良好な特性インピーダンスが得られない。これに対して、上記態様によれば、電線を公転の方向とは逆方向に自転させることによって、電線に作用する前記力、すなわち、電線が撚り合わせ状態から元に戻ろうとする力を打ち消すことができる。このことによって、電線の密着性が低下するのを抑制または防止することができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記保持クランプは回転可能に構成されており、前記複数の電線の他端部側に設けられ、前記保持クランプを前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第3回転アクチュエータと、前記複数の電線の他端部側に設けられ、前記保持クランプを前記第3回転アクチュエータによる前記保持クランプの回転方向と逆方向に回転させる第4回転アクチュエータと、を備えている。
【0016】
上記態様によれば、ツイスト電線の撚り合わされた部分の一端部から当該ツイスト電線の中心にかけておよびツイスト電線の撚り合わされた部分の他端部から当該ツイスト電線の中心にかけて均等ピッチの撚り合わせを実現することができる。また、第1電線および第2電線の一端部側のみを回転させる場合に比べ、撚り合わせの処理時間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、両端の切断処理が施された電線からツイスト電線を製造し易く、各種電線の仕様に合わせた適切な撚り合わせを実現することが可能な電線ツイスト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る電線ツイスト装置の斜視図である。
図2】制御装置の制御系統を示すブロック図である。
図3】(a)〜(c)は各回転アクチュエータの動作タイミングを示すタイミングチャートである。
図4】ツイスト電線を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る電線ツイスト装置1を示す斜視図である。なお、以下の説明では特に断らない限り、図1の右、左、上、下のことをそれぞれ前、後、左、右と称する。これにより、図1の右側、左側は、それぞれ前側、後側となる。電線ツイスト装置1は、所定長さの2本の電線を撚り合わせることによりツイスト電線を自動的かつ連続的に製造するものである。以下、同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付与している。
【0020】
図1に示すように、電線ツイスト装置1は、第1回転クランプ2a、第2回転クランプ2b、第3回転クランプ2c、および第4回転クランプ2dを備えている。また、電線ツイスト装置1は、第1回転アクチュエータ3a、第2回転アクチュエータ3b、第3回転アクチュエータ3c、および第4回転アクチュエータ3dを備えている。本実施形態では、上記各回転アクチュエータとしてモータを用いればよい。ただし、前記回転アクチュエータの種類は特に限定されず、例えばシリンダ等の他のアクチュエータを用いることもできる。図1には、被覆の剥ぎ取り処理や端子打ち処理などの端部処理が予め行われた一組の第1電線C1および第2電線C2が電線ツイスト装置1によって撚り合わされる前の状態が示されている。また、図4には、第1電線C1および第2電線C2が電線ツイスト装置1によって撚り合わされて製造されたツイスト電線CTが示されている。図4に示すように、第1電線C1および第2電線C2は、心線151と、心線151の周囲を覆う被覆152とを有している。心線151は金属等の導体からなり、被覆152はビニル樹脂等の絶縁材からなっている。
【0021】
図1に示すように、第2回転クランプ2bは、第1回転クランプ2aの右方に設けられている。第4回転クランプ2dは、第3回転クランプ2cの右方に設けられている。第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dは、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bよりも後方に設けられている。第1回転クランプ2aは、第1電線C1の一端部(つまり前端部)を保持しつつ後述のギア16の回転力を受けて回転可能に構成されている。第2回転クランプ2bは、第2電線C2の一端部(つまり前端部)を保持しつつ後述のギア17の回転力を受けて回転可能に構成されている。一方、第3回転クランプ2cは、第1電線C1の他端部(つまり後端部)を保持しつつギア17(つまり後方側のギア17)の回転力を受けて回転可能に構成されている。第4回転クランプ2dは、第2電線C2の他端部(つまり後端部)を保持しつつギア16(つまり後方側のギア16)の回転力を受けて回転可能に構成されている。第1回転クランプ2aの回転軸と第2回転クランプ2bの回転軸とは平行であり、第3回転クランプ2cの回転軸と第4回転クランプ2dの回転軸とは平行である。各回転クランプ2a〜2dは、それぞれ開閉可能に構成された一対のグリップアーム22を備えている。グリップアーム22は、第1電線C1または第2電線C2を保持する保持位置と当該保持を解除する解除位置との間で回動可能に構成されている。なお、グリップアーム22の開閉動作は、例えばエアシリンダや油圧シリンダ等で構成されたグリップ用アクチュエータ24によって行われる。
【0022】
第2回転アクチュエータ3bは第1回転アクチュエータ3aの下方に設けられている。第4回転アクチュエータ3dは第3回転アクチュエータ3cの下方に設けられている。第3回転アクチュエータ3cおよび第4回転アクチュエータ3dは、第1回転アクチュエータ3aおよび第2回転アクチュエータ3bよりも後方に設けられている。第1回転アクチュエータ3aは、第1回転クランプ2aと第2回転クランプ2bとをそれぞれ独立に一方向(側面視で例えば時計回りの方向)または当該一方向と逆方向(側面視で例えば反時計回りの方向)に回転させる。第2回転アクチュエータ3bは、第1回転クランプ2aと第2回転クランプ2bとを一括して前記一方向または前記逆方向に回転させる。また、第3回転アクチュエータ3cは、第3回転クランプ2cと第4回転クランプ2dとをそれぞれ独立に一方向または逆方向に回転させる。第3回転アクチュエータ3cは、第1回転アクチュエータ3aによる第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bの回転方向と逆方向に第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを回転させる。第4回転アクチュエータ3dは、第3回転クランプ2cと第4回転クランプ2dとを一括して一方向または逆方向に回転させる。第4回転アクチュエータ3dは、第2回転アクチュエータ3bによる第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bの回転方向と逆方向に第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを回転させる。
【0023】
図1に示すように、電線ツイスト装置1は、前後方向に延びたレール4と、当該レール4に係合した状態でレール4上をスライドし、前後に設けられた一対のスライダ5F,5Rと、スライダ5Fに接続され当該スライダ5Fを前後方向に駆動するモータ6と、スライダ5Fに設けられた保持具7Fと、スライダ5Rに設けられた保持具7Rとを備えている。保持具7Fは、前後方向に間隔を空けて並んだ一対の壁部7a,7bを備えている。保持具7Rは、前後方向に間隔を空けて並んだ一対の壁部7c,7dを備えている。保持具7Fの壁部7aと壁部7bとには第1回転軸8および第2回転軸9が回転可能に挿通されている。第2回転軸9は第1回転軸8よりも下方に設けられている。第1回転軸8の前端は第1回転アクチュエータ3aに接続されている。第1回転軸8は、前後方向回り(側面視において時計回りまたは反時計回り)に回転可能に構成されている。第2回転軸9の前端は第2回転アクチュエータ3bに接続されている。第2回転軸9の後端は後述の保持部15に接続されている。第2回転軸9は、前後方向回りに回転可能に構成されている。なお、第1回転軸8の前端および第2回転軸9の前端は、壁部7aよりも前方に位置している。また、第1回転軸8の後端および第2回転軸9の後端は、壁部7bよりも後方に位置している。保持具7Rの壁部7cと壁部7dとには第3回転軸10および第4回転軸11が回転可能に挿通されている。第4回転軸11は第3回転軸10よりも下方に設けられている。第3回転軸10の後端は第3回転アクチュエータ3cに接続されている。第3回転軸10は、前後方向回りに回転可能に構成されている。第4回転軸11の後端は第4回転アクチュエータ3dに接続されている。第4回転軸11の前端は後述の保持部15(つまり後方側の保持部15)に接続されている。第4回転軸11は、前後方向回りに回転可能に構成されている。なお、第3回転軸10の後端および第4回転軸11の後端は、壁部7dよりも後方に位置している。また、第3回転軸10の前端および第4回転軸11の前端は、壁部7cよりも前方に位置している。
【0024】
第1回転軸8の後端にはギア12が接続されている。このギア12の下方に当該ギア12に噛合されたギア13が設けられている。ギア13は前後方向回りに回転可能に壁部7bに支持されている。このギア13の下方に当該ギア13に噛合された駆動ギア14が設けられている。駆動ギア14は前後方向回りに回転可能に壁部7bに支持されている。また、駆動ギア14は、例えばブロック状の保持部15に連結されている。保持部15は、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを保持している。第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bは、保持部15の後方に配置されている。保持部15の前方には、それぞれ駆動ギア14に噛合されたギア16およびギア17が設けられている。第ギア17はギア16の右方に設けられている。ギア12、ギア13、駆動ギア14、ギア16およびギア17は平歯車である。なお、第3回転軸10および第4回転軸11にも上記と同じギア構成が連結されているため、説明については省略する。
【0025】
次に、第1電線C1および第2電線C2をそれぞれ独立に回転(すなわち自転)させる方法について説明する。電線ツイスト装置1は、図2に示すように制御装置60を備えている。制御装置60は、第1回転アクチュエータ3a、第2回転アクチュエータ3b、第3回転アクチュエータ3cおよび第4回転アクチュエータ3dの動作を制御する。制御装置60の構成は特に限定されず、例えばCPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータであってもよい。第1電線C1および第2電線C2を自転させる際には、図1において第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cが作動する。図1において、第1回転アクチュエータ3aにより第1回転軸8が回転方向R1(後方から前方を見た場合に反時計回りの方向)に回転すると、これに伴ってギア12が回転する。これにより、ギア13は回転方向R1と逆方向である回転方向R2に回転する。これに伴って、駆動ギア14は回転方向R1に回転する。それにより、ギア16およびギア17はそれぞれ回転方向R2に回転する。したがって、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bはそれぞれ回転方向R2に回転する。一方、第1回転アクチュエータ3aの動作に伴って、第3回転アクチュエータ3cにより第3回転軸10が回転方向R2に回転することにより、上記と同様の要領で第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dはそれぞれ回転方向R1に回転する。これにより、第1電線C1が当該第1電線C1の軸芯回りに捩られ、第2電線C2が当該第2電線C2の軸芯回りに捩られる。
【0026】
続いて、第1電線C1および第2電線C2を一括して回転(すなわち公転)させて第1電線C1および第2電線C2を撚り合わせる方法について説明する。電線の公転のみを行う場合に生じる当該電線の捩りぐせを抑制することにより各電線の密着性を向上するという観点から、第1電線C1および第2電線C2の公転の方向はこれらの電線の自転の方向と逆方向とする。第1電線C1および第2電線C2を公転させる際には、図1において第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dが作動する。図1において、第2回転アクチュエータ3bにより第2回転軸9が回転方向R2に回転すると、保持部15(つまり前方側の保持部15)に保持された第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bは一括して回転方向R2に回転する。一方、第2回転アクチュエータ3bの動作に伴って、第4回転アクチュエータ3dにより第4回転軸11が回転方向R1に回転すると、保持部15(つまり後方側の保持部15)に保持された第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dは一括して回転方向R1に回転する。これによって、第1電線C1および第2電線C2が撚り合わされ、ツイスト電線CT(図4参照)が製造される。なお、第1電線C1および第2電線C2が撚り合わされると、それらの見かけ上の長さすなわちツイスト電線CTの長さは、第1電線C1および第2電線C2の本来の長さよりも短くなる。そのため、スライダ5Fはモータ6の動作によって後方(つまり、スライダ5Rに近付く方向)に移動する。これにより、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bが第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dに近付く方向に移動する。なお、第2回転軸9の前端部は駆動ギア14に挿通され、当該駆動ギア14は第2回転軸9と共に回転する。それにより、公転時には第1回転軸8は第2回転軸9の回転に追従しギア12,13を介し回転する。第4回転軸11についても同様である。なお、上記モータ6の代わりに駆動源として、エアシリンダやばね等を適用することもできる。また、電線を予め弛ませて余裕代を持たせた状態で第1電線C1および第2電線C2をセットするようにすれば、モータ6(つまり、モータ6によるスライダ5Fの後方移動)は必須ではない。
【0027】
次に、各回転アクチュエータ3a〜3dの動作タイミング、換言すれば第1電線C1および第2電線C2の自転と公転のタイミングについて説明する。図3(a)に示すように、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cを時間t1で動作させる。その後、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの動作が終了する時間t2よりも前の時間t3において、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dを動作させる。図3(a)のタイミングチャートによれば、第1電線C1および第2電線C2の自転開始後に、これらの電線の公転が開始される。詳しくは、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの動作を終了させる前に、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dの動作を開始する。なお、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの各回転数(つまり、電線を自転させる際の回転数)と、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dの各回転数(つまり、電線を公転させる際の回転数)とは、別々に制御される。被覆152(図4参照)の厚みの違いによっては、撚り合わせした後に弾性力で捩りの戻しが発生することがある。そのため、捩りの戻しが生じ易い場合には、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの各回転数を増加させる等の制御も可能となる。
【0028】
また、図3(b)に示すように、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cを時間t1で動作させた後、時間t2でその動作を終了させてもよい。その後、時間t4において第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dを動作させる。図3(b)のタイミングチャートによれば、第1電線C1および第2電線C2の自転終了後に、これらの電線の公転が開始される。さらに、図3(c)に示すように、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cを時間t1で動作させると同時に、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dを動作させてもよい。図3(c)のタイミングチャートによれば、第1電線C1および第2電線C2の自転開始と同時にこれらの電線の公転が開始される。
【0029】
以上のように、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、両端の切断処理が施された第1電線C1の一端部および他端部をそれぞれ第1回転クランプ2aおよび第3回転クランプ2cにより保持し、両端の切断処理が施された第2電線C2の一端部および他端部をそれぞれ第2回転クランプ2bおよび第4回転クランプ2dにより保持するようにした。このような電線の保持の状態で撚り合わせを行うことができる。このため、電線を引き出しつつ撚り合わせる必要がない。したがって、撚り合わせを行った後に電線の切断処理を行う必要がない。このことによって、両端の切断処理が予め施された電線に対して撚り合わせを行うことにより、上記のような撚り合わせ後に切断処理を実施する際の従来の煩雑な処理がなくなるため、ツイスト電線CTを容易に製造することができる。また、第1回転クランプ2aと第2回転クランプ2bとを電線軸芯回りに回転させる第1回転アクチュエータ3aと、当該第1回転アクチュエータ3aとは別に、第1回転クランプ2aと第2回転クランプ2bとを一括して電線軸芯回りに回転させる第2回転アクチュエータ3bとを設けるようにした。これにより、電線の自転および公転を別個独立に制御することができる。このことによって、太線、細線、厚膜または薄膜な被覆を有する各種電線の仕様に合わせた適切な撚り合わせを実現することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1回転アクチュエータ3aによる駆動力を駆動ギア14を介してギア16およびギア17に同時に伝達することができる。これにより、ギア16を駆動する駆動源とギア17を駆動する駆動源とを別々に用意する必要がない。第3回転アクチュエータ3cについても同じ効果が奏される。
【0031】
また、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを保持する前方側の保持部15に第2回転軸9を接続し、第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを保持する後方側の保持部15に第4回転軸11を接続した。これにより、第2回転軸9により第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを一括して回転(つまり公転)させることができ、第4回転軸11により第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを一括して公転させることができる。
【0032】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1電線C1および第2電線C2の公転の方向はこれらの電線の自転の方向と逆方向とした。電線の公転のみを行う場合には、電線には当該公転の方向と逆方向(つまり、公転による捩りが解ける方向)に力が作用するため、電線の密着性が低下してしまう。これに対して、本実施形態によれば、電線を公転の方向とは逆方向に自転させることによって、電線に作用する前記力、すなわち、電線が撚り合わせ状態から元に戻ろうとする力を打ち消すことができる。このことによって、電線の密着性が低下するのを抑制または防止することができる。
【0033】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1電線C1および第2電線C2の前端部側に第1回転アクチュエータ3aおよび第2回転アクチュエータ3bを設け、これらの電線の後端部側に第3回転アクチュエータ3cおよび第4回転アクチュエータ3dを設けるようにした。これによって、ツイスト電線CTの撚り合わされた部分の前端部CTf(図4参照)から当該ツイスト電線CTの中心にかけておよびツイスト電線CTの撚り合わされた部分の後端部CTr(図4参照)から当該ツイスト電線CTの中心にかけて均等ピッチの撚り合わせを実現することができる。図4に示すように、例えばツイストピッチP1とツイストピッチP2とがほぼ等しくなる。また、第1電線C1および第2電線C2の一端部側のみを回転させる場合に比べ、撚り合わせの処理時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、さらに次の変形例にて実施することができる。
【0035】
上記実施形態では、第1電線C1の他端部と第2電線C2の他端部とをそれぞれ個別に第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dによって保持するように構成したが、これに限定されるものではない。第1電線C1の他端部と第2電線C2の他端部とを一つのユニット体にクランプするように構成してもよい。
【0036】
上記実施形態では、複数の電線として、第1電線C1および第2電線C2の2本の電線の撚り合わせを行う場合について説明したが、撚り合わせる電線の数は3本以上としてもよい。この場合、第1〜第4回転アクチュエータ3a〜3dの回転力を伝達するギアの数は、撚り合わせに用いる電線の数に応じて適宜変更可能である。
【0037】
上記実施形態では、撚り合わせの前に予め両端の被覆が剥ぎ取られて端子打ち等のいわゆる端部処理が完了した電線を撚り合わせることとしたが、これに限定されるものではない。少なくとも両端の切断処理が済んだ電線、例えば両端の被覆を剥ぎ取る前の電線についても撚り合わせの適用対象とすることができる。
【0038】
上記実施形態では、第1電線C1および第2電線C2の両端部側にそれぞれ回転クランプと当該回転クランプを回転させる機構とを設けるようにしたが、一方端部側にのみ前記回転クランプと前記機構とを設ける構成としてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dをそれぞれ回転可能に構成したが、これに限定されるものではない。第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを回転しないよう固定してもよい。もちろん、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bが上述した回転にかかる機能を備えていれば、第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dの回転機能は独立して回転するものではなく、一括して回転(公転)する機能のみを備えたものでもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、ギア12と駆動テーパギア14との間にギア13を設けるようにしたが、これに限定されるものではない。ギア13を設けずに、ギア12と駆動テーパギア14とを噛合するようにしてもよい。またこの場合、ギア12と駆動テーパギア14とを噛合させる代わりに、ギア12の回転力をベルトやチェーン等の伝達手段を介して駆動テーパギア14に伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電線ツイスト装置
2a 第1回転クランプ
2b 第2回転クランプ
2c 第3回転クランプ(保持クランプ)
2d 第4回転クランプ(保持クランプ)
3a 第1回転アクチュエータ
3b 第2回転アクチュエータ
3c 第3回転アクチュエータ
3d 第4回転アクチュエータ
4 レール
6 モータ
8 第1回転軸
9 第2回転軸
10 第3回転軸
11 第4回転軸
12 ギア(第1ギア)
14 駆動ギア
15 保持部
16 ギア(第2ギア)
17 ギア(第3ギア)
22 グリップアーム
60 制御装置
151 心線
152 被覆
C1 第1電線
C2 第2電線
CT ツイスト電線
図1
図2
図3
図4