(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記公転処理部は、前記第1電線および前記第2電線の一端部側に設けられ、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを一括して前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第2回転アクチュエータを有している、請求項1に記載の電線ツイスト装置。
前記制御装置は、前記第1回転アクチュエータの動作を終了させる前に、前記公転処理部の動作を開始させるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線ツイスト装置。
前記公転処理部は、前記第1電線の一端部および前記第2電線の一端部を保持する第5回転クランプと、前記第1電線の他端部および前記第2電線の他端部を保持する第6回転クランプと、前記第5回転クランプを前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第3回転アクチュエータと、前記第6回転クランプを前記第3回転アクチュエータによる前記第5回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第4回転アクチュエータと、を備えた、請求項1に記載の電線ツイスト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の電線ツイスト装置では、電線の折り返し部分を直接保持した状態で撚り合わせを行うため、撚り合わせ後にその折り返し部分の切断処理を行う必要がある。そのため、その切断処理部分(つまり折り返し部分)に適切な撚り残しを形成し難い。ツイスト電線には、その仕様によって所望される特性インピーダンスがあり、撚り合わせのピッチ間隔、撚り合わせの密着性、さらには撚り残しの長さ等が特性インピーダンスに大きく影響する。そのため、所望する撚り残しの形成が困難な特許文献1の電線ツイスト装置では、良好な特性インピーダンスを有するツイスト電線を安定した品質で容易に製造することも難しい。また、特許文献2の電線ツイスト装置に関しては、複数本の電線を束ねて保持する構成であるため、束ねて保持する他端部側では電線ごとの撚り残し長さを揃えることは難しく、さらには柔軟に撚り残し長さを調整することもできない。そのため、特許文献2の構成でも、良好な特性インピーダンスを得る上で大きな障害となる恐れがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望する撚り残し長さにバラツキがないツイスト電線としつつ、そのツイスト電線の特性インピーダンスを安定した品質のものにすることができる電線ツイスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電線ツイスト装置は、それぞれ心線と前記心線の周囲を覆う被覆とを有し、複数の電線を撚り合わせる電線ツイスト装置であって、前記電線の一端部を保持しつつ回転可能な一端部側回転クランプと、前記一端部側回転クランプに保持された前記電線ごとにその他端部を保持しつつ回転可能な他端部側回転クランプと、前記電線の一端部側に設けられ、前記一端部側回転クランプを電線軸芯回りの一方向または前記一方向と逆方向に回転させる第1回転アクチュエータと、前記複数の電線を一括して前記第1回転アクチュエータによる前記一端部側回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる公転処理部と、前記第1回転アクチュエータの動作を開始させた後に、前記公転処理部の動作を開始させる制御装置と、を備えている。
【0008】
本発明に係る電線ツイスト装置によれば、電線の一端部を保持する一端部側回転クランプと、一端部側回転クランプに保持された電線ごとにその他端部を保持する他端部側回転クランプとが設けられている。これにより、一端部側のクランプに保持された電線ごとにその他端部を保持しない従来の構成に比べて、電線の各端部で所望する長さの撚り残しを形成しやすくなり、例えば両端側に均等な撚り残しを形成することの精度が向上する。また、製造されたツイスト電線ごとの撚り残し長さのバラツキもなくすことができる。また、第1回転アクチュエータの動作を開始させた後に、公転処理部の動作を開始させることにより、複数の電線の相互の密着性が向上されかつ撚り合わせピッチ(つまりツイストピッチ)が均等なツイスト電線を製造することができる。詳しくは、第1回転アクチュエータの動作を開始させた後に公転処理部の動作を開始させることで、公転処理部による撚り合わせ力が、撚り合わせ開始と同時に、保持する手前側から奥側に向けて順次電線に伝播される。なお、第1回転アクチュエータの動作の開始と公転処理部の動作の開始とが同時であると、公転処理部による撚り合わせ力が電線に伝播され難くなり、保持手前側のツイストピッチが小さく、奥側のツイストピッチが大きくなってしまう。このように、所望長さの撚り残しを形成することに加えてツイストピッチが均等になることで、良好な特性インピーダンスを有するツイスト電線を製造できる。さらに、所望長さの撚り残しを簡易に形成できるので、こうした良好な特性インピーダンスのツイスト電線を安定した製造できる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記複数の電線は、第1電線および第2電線を含み、前記一端部側回転クランプは、前記第1電線の一端部を保持しつつ回転可能な第1回転クランプと、前記第1電線の他端部を保持しつつ回転可能な第3回転クランプと、を含み、前記他端部側回転クランプは、前記第2電線の一端部を保持しつつ回転可能な第2回転クランプと、前記第2電線の他端部を保持しつつ回転可能な第4回転クランプと、を含む。
【0010】
上記態様によれば、第1電線および第2電線の両側に適切な撚り残しをさらに形成し易くなる。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記公転処理部は、前記第1電線および前記第2電線の一端部側に設けられ、前記第1回転クランプと前記第2回転クランプとを一括して前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第2回転アクチュエータである。
【0012】
上記態様によれば、第1回転アクチュエータにより第1回転クランプおよび第2回転クランプをそれぞれ独立に回転(以下、このような回転を自転と呼ぶ場合がある)させる処理を開始する。その後、第1電線および第2電線を持ち替えることなくそのままの状態で第2回転アクチュエータにより第1回転クランプおよび第2回転クランプを一括して回転(以下、このような回転を公転と呼ぶ場合がある)させる処理を開始することができる。これにより、自転処理と公転処理との間で第1電線および第2電線を搬送する必要がない。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1回転クランプは、当該第1回転クランプの回転軸に対する垂直方向において前記第2回転クランプと間隔を空けて設けられている。
【0014】
上記態様によれば、撚り合わせされていない部分、すなわち撚り残しを確実に形成することができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1回転アクチュエータに接続された第1回転軸と、前記第1回転軸に接続された第1ギアと、前記第1ギアの駆動力を受けて回転する駆動ギアと、前記駆動ギアに噛合され、前記第1回転クランプに連結された第2ギアと、前記駆動ギアに噛合され、前記第2回転クランプに連結された第3ギアと、前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプを保持する保持部と、一端が前記第2回転アクチュエータに接続され、他端が前記保持部に接続された第2回転軸と、を備えている。
【0016】
上記態様によれば、第1回転アクチュエータによる駆動力を駆動ギアを介して第2ギアおよび第3ギアに同時に伝達することができる。これにより、第2ギアを駆動する駆動源と第3ギアを駆動する駆動源とを別々に用意する必要がない。また、第2回転軸により保持部を介して第1回転クランプおよび第2回転クランプを一括して回転(つまり公転)させることができる。
【0017】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記制御装置は、前記第1回転アクチュエータの動作を終了させる前に、前記第2回転アクチュエータの動作を開始させるように構成されている。
【0018】
上記態様によれば、第1電線および第2電線の相互の密着性が向上されかつ撚り合わせピッチが均等なツイスト電線を製造することができる。また、撚り合わせの作業時間の短縮にもつながる。
【0019】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記公転処理部は、前記第1電線の一端部および前記第2電線の一端部を保持する第5回転クランプと、前記第1電線の他端部および前記第2電線の他端部を保持する第6回転クランプと、前記第5回転クランプを前記第1回転アクチュエータによる前記第1回転クランプおよび前記第2回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第3回転アクチュエータと、前記第6回転クランプを前記第3回転アクチュエータによる前記第5回転クランプの回転方向と逆方向に回転させる第4回転アクチュエータと、を備えている。
【0020】
上記態様によれば、第1電線および第2電線の自転処理を行う位置と異なる位置でこれらの電線の撚り合わせ処理(すなわち公転処理)を行うことができる。これにより、撚り合わせ処理を連続的に行う場合に、公転処理の実行中に次の電線の自転処理を実行することができるので、ツイスト電線の製造量を増加させることができる。
【0021】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記複数の電線は、第1電線および第2電線を含み、前記制御装置は、前記第1回転アクチュエータによる前記一端部側回転クランプの回転動作がなされた前記第1電線および前記第2電線に対して前記第1電線および前記第2電線の回転動作を同時に前記公転処理部に行わせるように構成されている。
【0022】
上記態様によれば、電線一本ずつ自転処理を行うことができるので、クランプの数を低減することができ、装置全体のコンパクト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所望長さの撚り残しをツイスト電線に形成できるので、その特性インピーダンスも良好なものにすることができ、さらにツイスト電線を安定した品質で製造することもできる電線ツイスト装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係る電線ツイスト装置1を示す斜視図である。なお、以下の説明では特に断らない限り、
図1の右、左、上、下のことをそれぞれ前、後、左、右と称する。これにより、
図1の右側、左側は、それぞれ前側、後側となる。電線ツイスト装置1は、所定長さの2本の電線を撚り合わせることによりツイスト電線を自動的かつ連続的に製造するものである。以下、同じ機能を有する構成要素には同じ符号を付与している。
【0026】
図1に示すように、電線ツイスト装置1は、第1回転クランプ2a、第2回転クランプ2b、第3回転クランプ2c、および第4回転クランプ2dを備えている。また、電線ツイスト装置1は、第1回転アクチュエータ3a、第2回転アクチュエータ3b、第3回転アクチュエータ3c、および第4回転アクチュエータ3dを備えている。本実施形態では、上記各回転アクチュエータとしてモータを用いればよい。ただし、前記回転アクチュエータの種類は特に限定されず、例えばシリンダ等の他のアクチュエータを用いることもできる。
図1には、被覆の剥ぎ取り処理や端子打ち処理などの端部処理が予め行われた一組の第1電線C1および第2電線C2が電線ツイスト装置1によって撚り合わされる前の状態が示されている。また、
図3には、第1電線C1および第2電線C2が電線ツイスト装置1によって撚り合わされて製造されたツイスト電線CTが示されている。
図3に示すように、第1電線C1および第2電線C2は、心線151と、心線151の周囲を覆う被覆152とを有している。心線151は金属等の導体からなり、被覆152はビニル樹脂等の絶縁材からなっている。
【0027】
図1に示すように、第1回転クランプ2aは、当該第1回転クランプ2aの回転軸に対する垂直方向(つまり左右方向)において第2回転クランプ2bと間隔を空けて設けられている。また、第3回転クランプ2cは左右方向において第4回転クランプ2dと間隔を空けて設けられている。第2回転クランプ2bは、第1回転クランプ2aの右方に設けられている。第4回転クランプ2dは、第3回転クランプ2cの右方に設けられている。第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dは、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bよりも後方に設けられている。このように、電線ツイスト装置1には、第1電線C1および第2電線C2の一端部側と他端部側とに同数の回転クランプが設けられている。なお、第1電線C1および第2電線C2の一端部側と他端部側とに回転クランプを2つずつ設けるように構成したが、1つずつや3つずつ、または4つ以上の数を設定することもできる。第1回転クランプ2aは、第1電線C1の一端部(つまり前端部)を保持しつつ後述のギア16の回転力を受けて回転可能に構成されている。第2回転クランプ2bは、第2電線C2の一端部(つまり前端部)を保持しつつ後述のギア17の回転力を受けて回転可能に構成されている。一方、第3回転クランプ2cは、第1電線C1の他端部(つまり後端部)を保持しつつギア17(つまり後方側のギア17)の回転力を受けて回転可能に構成されている。第4回転クランプ2dは、第2電線C2の他端部(つまり後端部)を保持しつつギア16(つまり後方側のギア16)の回転力を受けて回転可能に構成されている。第1回転クランプ2aの回転軸と第2回転クランプ2bの回転軸とは平行であり、第3回転クランプ2cの回転軸と第4回転クランプ2dの回転軸とは平行である。第1電線C1および第2電線C2は、各回転クランプ2a〜2dの回転軸と平行となるよう保持されている。各回転クランプ2a〜2dは、それぞれ開閉可能に構成された一対のグリップアーム22を備えている。グリップアーム22は、第1電線C1または第2電線C2を保持する保持位置と当該保持を解除する解除位置との間で回動可能に構成されている。なお、グリップアーム22の開閉動作は、例えばエアシリンダや油圧シリンダ等で構成されたグリップ用アクチュエータ24によって行われる。
【0028】
第2回転アクチュエータ3bは第1回転アクチュエータ3aの下方に設けられている。第4回転アクチュエータ3dは第3回転アクチュエータ3cの下方に設けられている。第3回転アクチュエータ3cおよび第4回転アクチュエータ3dは、第1回転アクチュエータ3aおよび第2回転アクチュエータ3bよりも後方に設けられている。第1回転アクチュエータ3aは、第1回転クランプ2aと第2回転クランプ2bとをそれぞれ独立に一方向(側面視で例えば時計回りの方向)または当該一方向と逆方向(側面視で例えば反時計回りの方向)に回転させる。第2回転アクチュエータ3bは、第1回転クランプ2aと第2回転クランプ2bとを一括して前記一方向または前記逆方向に回転させる。また、第3回転アクチュエータ3cは、第3回転クランプ2cと第4回転クランプ2dとをそれぞれ独立に一方向または逆方向に回転させる。第3回転アクチュエータ3cは、第1回転アクチュエータ3aによる第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bの回転方向と逆方向に第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを回転させる。第4回転アクチュエータ3dは、第3回転クランプ2cと第4回転クランプ2dとを一括して一方向または逆方向に回転させる。第4回転アクチュエータ3dは、第2回転アクチュエータ3bによる第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bの回転方向と逆方向に第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを回転させる。
【0029】
図1に示すように、電線ツイスト装置1は、前後方向に延びたレール4と、当該レール4に係合した状態でレール4上をスライドし、前後に設けられた一対のスライダ5F,5Rと、スライダ5Fに接続され当該スライダ5Fを前後方向に駆動するモータ6と、スライダ5Fに設けられた保持具7Fと、スライダ5Rに設けられた保持具7Rとを備えている。保持具7Fは、前後方向に間隔を空けて並んだ一対の壁部7a,7bを備えている。保持具7Rは、前後方向に間隔を空けて並んだ一対の壁部7c,7dを備えている。保持具7Fの壁部7aと壁部7bとには第1回転軸8および第2回転軸9が回転可能に挿通されている。第2回転軸9は第1回転軸8よりも下方に設けられている。第1回転軸8の前端は第1回転アクチュエータ3aに接続されている。第1回転軸8は、前後方向回り(側面視において時計回りまたは反時計回り)に回転可能に構成されている。第2回転軸9の前端は第2回転アクチュエータ3bに接続されている。第2回転軸9の後端は後述の保持部15に接続されている。第2回転軸9は、前後方向回りに回転可能に構成されている。なお、第1回転軸8の前端および第2回転軸9の前端は、壁部7aよりも前方に位置している。また、第1回転軸8の後端および第2回転軸9の後端は、壁部7bよりも後方に位置している。保持具7Rの壁部7cと壁部7dとには第3回転軸10および第4回転軸11が回転可能に挿通されている。第4回転軸11は第3回転軸10よりも下方に設けられている。第3回転軸10の後端は第3回転アクチュエータ3cに接続されている。第3回転軸10は、前後方向回りに回転可能に構成されている。第4回転軸11の後端は第4回転アクチュエータ3dに接続されている。第4回転軸11の前端は後述の保持部15(つまり後方側の保持部15)に接続されている。第4回転軸11は、前後方向回りに回転可能に構成されている。なお、第3回転軸10の後端および第4回転軸11の後端は、壁部7dよりも後方に位置している。また、第3回転軸10の前端および第4回転軸11の前端は、壁部7cよりも前方に位置している。
【0030】
第1回転軸8の後端にはギア12が接続されている。このギア12の下方に当該ギア12に噛合されたギア13が設けられている。ギア13は前後方向回りに回転可能に壁部7bに支持されている。このギア13の下方に当該ギア13に噛合された駆動ギア14が設けられている。駆動ギア14は前後方向回りに回転可能に壁部7bに支持されている。また、駆動ギア14は、例えばブロック状の保持部15に連結されている。保持部15は、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを保持している。第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bは、保持部15の後方に配置されている。保持部15の前方には、それぞれ駆動ギア14に噛合されたギア16およびギア17が設けられている。第ギア17はギア16の右方に設けられている。ギア12、ギア13、駆動ギア14、ギア16およびギア17は平歯車である。なお、第3回転軸10および第4回転軸11にも上記と同じギア構成が連結されているため、説明については省略する。
【0031】
次に、第1電線C1および第2電線C2をそれぞれ独立に回転(すなわち自転)させる方法について説明する。電線ツイスト装置1は、
図2に示すように制御装置60を備えている。制御装置60は、第1回転アクチュエータ3a、第2回転アクチュエータ3b、第3回転アクチュエータ3cおよび第4回転アクチュエータ3dの動作を制御する。制御装置60の構成は特に限定されず、例えばCPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータであってもよい。第1電線C1および第2電線C2を自転させる際には、
図1において第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cが作動する。
図1において、第1回転アクチュエータ3aにより第1回転軸8が回転方向R1(後方から前方を見た場合に反時計回りの方向)に回転すると、これに伴ってギア12が回転する。これにより、ギア13は回転方向R1と逆方向である回転方向R2に回転する。これに伴って、駆動ギア14は回転方向R1に回転する。それにより、ギア16およびギア17はそれぞれ回転方向R2に回転する。したがって、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bはそれぞれ回転方向R2に回転する。一方、第1回転アクチュエータ3aの動作に伴って、第3回転アクチュエータ3cにより第3回転軸10が回転方向R2に回転することにより、上記と同様の要領で第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dはそれぞれ回転方向R1に回転する。これにより、第1電線C1が当該第1電線C1の軸芯回りに捩られ、第2電線C2が当該第2電線C2の軸芯回りに捩られる。
【0032】
続いて、第1電線C1および第2電線C2を一括して回転(すなわち公転)させて第1電線C1および第2電線C2を撚り合わせる方法について説明する。電線の公転のみを行う場合に生じる当該電線の捩りぐせを抑制することにより各電線の密着性を向上するという観点から、第1電線C1および第2電線C2の公転の方向はこれらの電線の自転の方向と逆方向とする。第1電線C1および第2電線C2の公転は、上述の自転処理の開始後であって当該自転処理の終了前に開始する。第1電線C1および第2電線C2を公転させる際には、
図1において第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dが作動する。第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dの動作は、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの動作の開始後に開始されることとなる。第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dが公転処理部に相当する。
図1において、第2回転アクチュエータ3bにより第2回転軸9が回転方向R2に回転すると、保持部15(つまり前方側の保持部15)に保持された第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bは一括して回転方向R2に回転する。一方、第2回転アクチュエータ3bの動作に伴って、第4回転アクチュエータ3dにより第4回転軸11が回転方向R1に回転すると、保持部15(つまり後方側の保持部15)に保持された第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dは一括して回転方向R1に回転する。これによって、第1電線C1および第2電線C2が撚り合わされ、ツイスト電線CT(
図3参照)が製造される。なお、第1電線C1および第2電線C2が撚り合わされると、それらの見かけ上の長さすなわちツイスト電線CTの長さは、第1電線C1および第2電線C2の本来の長さよりも短くなる。そのため、スライダ5Fはモータ6の動作によって後方(つまり、スライダ5Rに近付く方向)に移動する。これにより、第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bが第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dに近付く方向に移動する。なお、第2回転軸9の前端部は駆動ギア14に挿通され、当該駆動ギア14は第2回転軸9と共に回転する。それにより、公転時には第1回転軸8は第2回転軸9の回転に追従しギア12,13を介し回転する。第4回転軸11についても同様である。
【0033】
以上のように、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1電線C1の一端部および他端部、並びに第2電線C2の一端部および他端部をそれぞれ別の回転クランプで保持する。すなわち、電線ツイスト装置1は、電線の両端部を同条件で保持する構成となっている。これにより、一端部側のクランプに保持された電線ごとにその他端部を保持することのない従来の構成、つまり電線の一端部を保持するクランプの数と電線の他端部を保持するクランプの数とが同じでない従来の構成に比べて、電線の両端側に均等な撚り残しを形成し易くなる。詳しくは、
図3に示すように、ツイスト電線CTの前端側の撚り残しLfの長さと、後端側の撚り残しLrの長さとをほぼ等しくすることができる。また、第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの動作を開始させた後に、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dの動作を開始させる。これにより、第1電線C1および第2電線C2の相互の密着性が向上されかつツイストピッチが均等なツイスト電線CTを製造することができる。
図3に示すように、例えばツイストピッチP1とツイストピッチP2とがほぼ等しくなる。詳しくは、上記のように各動作の開始を制御することで、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dによる撚り合わせ力が、撚り合わせ開始と同時に、保持する手前側から奥側に向けて順次第1電線C1および第2電線に伝播される。なお、上記各動作の開始が同時であると、上記撚り合わせ力が第1電線C1および第2電線C2に伝播され難くなり、保持手前側のツイストピッチが小さく、奥側のツイストピッチが大きくなってしまう。このように、両端部の撚り残し長さを均等にすることに加えてツイストピッチが均等になることで、所望する良好な特性インピーダンスを有するツイスト電線を確実に製造することができる。また、電線ツイスト装置1においては、第1電線C1および第2電線C2を自転させる機構と公転させる機構とを、これらの電線の一端部側および他端部側の双方に設けたことによって、撚り合わせ処理のタクトタイムを短縮することができる。このように、それぞれの電線ごとにクランプで保持されることで、所望する撚り残し長さ、具体的にはツイスト電線の両端部に均等な撚り残し長さを確実に形成することができる。つまり、電線ごとにバラツキのない安定した撚り残し長さを形成できるので、一定品質のツイスト電線の簡易な実現にも貢献する。
【0034】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1回転アクチュエータ3aにより第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bをそれぞれ独立に回転させる処理を開始する。その後、第1電線C1および第2電線C2を持ち替えることなくそのままの状態で第2回転アクチュエータ3bにより第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを一括して回転させる処理を開始することができる。また、第3回転アクチュエータ3cにより第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dをそれぞれ独立に回転させる処理を開始する。その後、第1電線C1および第2電線C2を持ち替えることなくそのままの状態で第4回転アクチュエータ3dにより第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを一括して回転させる処理を開始することができる。これにより、自転処理と公転処理との間で第1電線C1および第2電線C2を搬送する必要がない。
【0035】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1回転クランプ2aは、当該第1回転クランプ2aの回転軸に対する垂直方向において第2回転クランプ2bと間隔を空けて設けられている。また、第3回転クランプ2cは、当該第3回転クランプ2cの回転軸に対する垂直方向において第4回転クランプ2dと間隔を空けて設けられている。これにより、撚り合わせされていない部分、すなわち撚り残しを確実に形成することができる。
【0036】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第1回転アクチュエータ3aによる駆動力を駆動ギア14を介してギア16およびギア17に同時に伝達することができる。これにより、ギア16を駆動する駆動源とギア17を駆動する駆動源とを別々に用意する必要がない。なお、第3回転アクチュエータ3cについても同様の効果が奏される。また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、第2回転軸9により保持部15を介して第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを一括して回転(つまり公転)させることができる。なお、第4回転軸11についても同様の効果が奏される。
【0037】
また、本実施形態の電線ツイスト装置1によれば、制御装置60によって第1回転アクチュエータ3aおよび第3回転アクチュエータ3cの動作を終了させる前に、第2回転アクチュエータ3bおよび第4回転アクチュエータ3dの動作を開始させる。これにより、第1電線C1および第2電線C2の相互の密着性が向上されかつ撚り合わせピッチが均等なツイスト電線CTを製造することができる。また、撚り合わせの作業時間の短縮にもつながる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、さらに次の変形例にて実施することができる。
【0039】
上記実施形態では、第1電線C1および第2電線C2の自転処理と公転処理とを、第1電線C1および第2電線C2の位置を変えずに行うようにしたが、これに限定されるものではない。第1電線C1および第2電線C2の自転処理を行う位置と異なる位置まで、これらの電線C1,C2を搬送し、公転処理(すなわち撚り合わせ処理)を行ってもよい。この場合、電線ツイスト装置1は、
図1の第1〜第4回転クランプ2a〜2dが設けられている位置とは異なる位置に
図4に示す公転処理部100を備える。第1〜第4回転クランプ2a〜2dによる第1電線C1および第2電線C2の自転処理が終了すると、自転処理が済んだ第1電線C1および第2電線C2は図示しない搬送装置によって公転処理部100まで搬送される。公転処理部100は、第1電線C1の前端部および第2電線C2の前端部を同時に保持する第5回転クランプ101と、第1電線C1の後端部および第2電線C2の後端部を同時に保持する第6回転クランプ102とを備えている。また、公転処理部100は、第5回転アクチュエータ103と第6回転アクチュエータ104とを備えている。第5回転アクチュエータ103により第5回転クランプ101が第1回転アクチュエータ3a(
図1参照)による第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bの回転方向と逆方向に回転する。第6回転アクチュエータ104により第6回転クランプ102が第5回転アクチュエータ103による第5回転クランプ101の回転方向と逆方向に回転する。これにより、第1電線C1および第2電線C2が撚り合わされる。このような構成により、第1電線C1および第2電線C2の撚り合わせを連続的に行う際に、公転処理部100において公転処理の実行中に次の電線の自転処理を
図1の各回転クランプ2a〜2dにより実行することができる。これにより、ツイスト電線CTの製造量を増加させることができる。
【0040】
上記実施形態では、第1電線C1および第2電線C2の一端部側に2つの第1回転クランプ2aおよび第2回転クランプ2bを設け、他端部側に2つの第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dを設けるようにした。しかし、これに限定されるものではない。前記一端部側と他端部側とに設けられる数が同じであれば、上記実施形態のように2つずつに限らず、例えば1つずつや、3つ以上ずつ回転クランプを設けるようにしてもよい。回転クランプを電線の一端部側および他端部側にそれぞれ1つずつ設ける場合、電線の自転処理を一本ずつ行った後、当該自転処理が終了した2本以上の電線に対して公転処理を行うことによってツイスト電線CTを製造する。この場合、クランプの数を低減することができるため、装置全体のコンパクト化につながる。
【0041】
上記実施形態では、複数の電線として、第1電線C1および第2電線C2の2本の電線の撚り合わせを行う場合について説明したが、撚り合わせる電線の数は3本以上としてもよい。この場合、第1〜第4回転アクチュエータ3a〜3dの回転力を伝達するギアの数は、撚り合わせに用いる電線の数に応じて適宜変更可能である。
【0042】
上記実施形態では、第1電線C1の他端部と第2電線C2の他端部とをそれぞれ個別に第3回転クランプ2cおよび第4回転クランプ2dによって保持するように構成したが、これに限定されるものではない。第1電線C1の他端部と第2電線C2の他端部とを一つのユニット体にクランプするように構成してもよい。
【0043】
上記実施形態では、撚り合わせの前に予め両端の被覆が剥ぎ取られて端子打ち等のいわゆる端部処理が完了した電線を撚り合わせることとしたが、これに限定されるものではない。少なくとも両端の切断処理が済んだ電線、例えば両端の被覆を剥ぎ取る前の電線についても撚り合わせの適用対象とすることができる。
【0044】
上記実施形態では、第1電線C1および第2電線C2の両端部側にそれぞれ回転クランプと当該回転クランプを回転させる機構とを設けるようにしたが、一方端部側にのみ前記回転クランプと前記機構とを設ける構成としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ギア12と駆動テーパギア14との間にギア13を設けるようにしたが、これに限定されるものではない。ギア13を設けずに、ギア12と駆動テーパギア14とを噛合するようにしてもよい。またこの場合、ギア12と駆動テーパギア14とを噛合させる代わりに、ギア12の回転力をベルトやチェーン等の伝達手段を介して駆動テーパギア14に伝達するようにしてもよい。