(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678052
(24)【登録日】2020年3月18日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】蒸着マスクの製造方法及びその蒸着マスクの洗浄に適する乾式洗浄装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20200330BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
C23C14/04 A
B08B5/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-56757(P2016-56757)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-171962(P2017-171962A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】317007473
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(72)【発明者】
【氏名】竹井 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】岸本 克彦
【審査官】
山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/168039(WO,A1)
【文献】
特開2015−67892(JP,A)
【文献】
特開2010−22898(JP,A)
【文献】
特開2015−73975(JP,A)
【文献】
特開2013−132620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
B08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に1又は複数の開口が形成された金属フィルム層の一方の面に樹脂フィルム層が配置された蒸着マスク素材を形成する工程と、
前記蒸着マスク素材に対して所定の方向に所定の張力を掛けた状態で、前記樹脂フィルム層を外側にして前記金属フィルム層を金属フレームに溶接する工程と、
前記樹脂フィルム層の上方に所定のパターンの貫通孔を形成するためにレーザー加工用のマスクを配置する工程と、
前記レーザー加工用マスクを介して、前記樹脂フィルム層にレーザー光を照射し、前記樹脂フィルム層に前記所定のパターンの貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を形成する際に生じたバリや汚染物質を前記樹脂フィルム層から取り除く洗浄工程を備え、
前記洗浄工程は、前記樹脂フィルム層の裏面から超音波振動を加えながら、前記所定のパターンの貫通孔が形成された前記樹脂フィルム層の表面に乾式洗浄装置を所定高さだけ浮上させた状態で移動させ、前記乾式洗浄装置の筐体の旋回空間内で、前記樹脂フィルム層の表面に平行な所定の旋回軸の周りに旋回流を発生させ、該旋回流によって前記旋回空間内で前記所定高さよりも厚み及び1辺又は対角線の長さが大きな平板状の洗浄媒体を旋回させ、該洗浄媒体を前記筐体の底部に設けられた洗浄開口を介して前記樹脂フィルム層の表面に衝突させ、前記バリや汚染物質を除去することを特徴とする蒸着マスクの製造方法。
【請求項2】
前記超音波振動は、周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項3】
前記周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせは、20〜100kHz帯の超音波振動に加えて、さらに別の振動子によりこれよりも周波数の高い帯域の振動を重畳させることを特徴とする請求項2に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項4】
所定方向の旋回軸の周囲に形成された旋回空間と、前記旋回空間内に空気を吸い込むための吸気口と、前記旋回空間から空気を排出するための排気口と、被洗浄物の被洗浄面に対向する底板に形成された洗浄開口を有する筐体と、
前記排気口に接続され、前記筐体の前記旋回空間内の空気を排出することにより前記旋回空間に前記旋回軸の周りの旋回流を発生させる旋回流発生装置と、
前記底板を前記被洗浄物の被洗浄面から所定高さだけ浮上させる浮上機構と、
前記旋回空間内に充填され、前記所定高さよりも厚み及び1辺又は対角線の長さが大きな平板状であり、前記旋回流によって旋回される洗浄媒体と、
前記底板と前記被洗浄物との間の隙間を塞ぎつつ、該隙間から空気を吸い込むためのセミ・シール部材と、
を備えたことを特徴とする乾式洗浄装置。
【請求項5】
前記底板は略矩形であり、前記浮上機構は、前記底板の各辺のうち互いに対向する1組の辺の端部近傍にそれぞれ設けられた1組の円筒状のローラー又は前記底板の3点又は4点に設けられたボールであり、前記セミ・シール部材は、前記底板の各辺のうち互いに対向する他の1組の辺の端部近傍に設けられた導電性のブラシ体であることを特徴とする請求項4に記載の乾式洗浄装置。
【請求項6】
前記浮上機構は、前記底板を前記被洗浄物の被洗浄面から10μm〜50μmの範囲内で浮上させることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の乾式洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄媒体は、1辺又は対角線の長さが0.1mm〜0.5mmの平板状の多角形であることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の乾式洗浄装置。
【請求項8】
前記旋回空間内に発生される旋回流の速度又は前記旋回空間内で旋回される前記洗浄媒体の速度又は単位時間当たりの前記洗浄媒体の数を検出する洗浄状況センサーと、前記旋回空間内に発生される前記旋回流の速度を調節するためのバルブを備え、前記旋回流の速度又は前記洗浄媒体の速度又は単位時間当たりの前記洗浄媒体の数を調節することを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の乾式洗浄装置。
【請求項9】
前記被洗浄物が略矩形である場合、前記被洗浄物の一辺に沿って複数の前記乾式洗浄装置を千鳥状に配置し連結したことを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか一項に記載の乾式洗浄装置。
【請求項10】
前記被洗浄物の被洗浄面の裏面から前記被洗浄物に超音波振動を加える超音波振動装置をさらに備えることを特徴とする請求項4乃至請求項9のいずれか一項に記載の乾式洗浄装置。
【請求項11】
前記超音波振動装置は、周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせて発生させることを特徴とする請求項10に記載の乾式洗浄装置。
【請求項12】
また、前記超音波振動装置は、前記周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせとして、20〜100kHz帯の超音波振動に加えて、さらに別の振動子によりこれよりも周波数の高い帯域の振動を重畳させることを特徴とする請求項11に記載の乾式洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)の製造に使用される蒸着マスクの製造方法及びその蒸着マスクの洗浄に適する乾式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオードは、いわゆるボトムエミッション型と呼ばれる構造では、ガラス板や透明のプラスチック板などの透明基板上に、透明電極(陽極)、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、金属電極(陰極)などが積層されて構成されている。また、トップエミッション型では、ガラス板の他、茶褐色をしたポリイミドフィルムなど必ずしも透明ではない基板上に、反射電極(陽極)、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、半透明の極めて薄い金属電極(陰極)などが積層される。工業的に有機発光ダイオードを製造するための蒸着による一般的なボトムエミッション型の有機発光ダイオードの製造方法は、真空チャンバー内において、透明基板の被蒸着面に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、金属電極などに対応した蒸着マスクを順に交換しながら密着させ、蒸発源からこれらホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、金属電極などを形成するための蒸着物質を蒸発させて飛散させる。蒸着マスクには、それぞれ微細な貫通開口が所定のパターンで形成されており、透明基板の被蒸着面上の蒸着マスクの貫通開口に対応した部分に蒸着物質が付着する。
【0003】
このような有機発光ダイオードを用いてテレビジョン受像機を構成する場合、テレビジョン受像機の解像度が高くなるにつれて、蒸着マスクに形成される貫通開口の大きさが小さくなる。蒸着マスクに形成される貫通開口の大きさとして、例えばフルハイビジョン(400ppi:ピクセル・パー・インチ)の場合、貫通開口は30μm×30μmの矩形であり、いわゆる4Kテレビジョン(800ppi)の場合、貫通開口は15μm×15μmの矩形となる。このように高精細な薄膜パターンを蒸着するためには、金属薄板をエッチング処理することによって形成される従来の蒸着マスクでは精度が不十分であり、例えば特許文献1に記載されているように、ポリイミドなどの樹脂フィルムにレーザー光を照射して貫通開口を形成した蒸着マスクが提案されている。
【0004】
樹脂フィルムにレーザー光を照射すると、レーザー光を照射された部分の樹脂がアブレーションし、飛散することによって貫通開口が形成される。しかしながら、樹脂フィルムに形成された貫通開口のエッジ部にバリが生じたり、飛散した煤状の樹脂粉などの汚染物質が樹脂フィルムの表面に付着したりする。このようなバリや樹脂粉などが付着した蒸着マスクをそのまま使用すると、透明基板上に薄膜パターンが正確に形成されなかったり、樹脂粉が蒸着物質中に取り込まれて黒点が生じたりする虞がある。そのため、レーザー光照射により樹脂フィルムに貫通開口を形成した後、これらのバリや樹脂粉などを取り除く必要がある。
【0005】
一方、特許文献2に記載されているように、プリント基板製造の際、フローはんだ槽によるはんだ付け工程において用いられるマスク治具の洗浄のために、溶剤を使用しない乾式洗浄装置が用いられている。
図6に示すように、この従来の乾式洗浄装置100は、筐体101の一部に形成された洗浄開口102を被洗浄物120に密着させ、筐体101の内部の旋回空間103で、微小な不織布などの洗浄媒体104を所定の旋回軸105の周りに旋回させ、洗浄媒体104を被洗浄物120の表面に衝突させて、被洗浄物120の表面に付着した汚染物質121などを除去する。筐体101の内部には、紙面に垂直な旋回軸105を中心として環状の旋回空間103を形成するための略円筒状の内壁106が設けられている。この従来の乾式洗浄装置100では、内壁106には、吸気開口は形成されていない。筐体101の旋回空間103内で洗浄媒体104の旋回流を発生させるために、矢印Aで示す旋回流の接線方向に、空気流を発生させるための吸気口107と排気口108が設けられており、排気口108にはブロワーなどの吸引装置(図示せず)が接続されている。旋回空間103と排気口108とは、旋回軸105に対して垂直な壁109に設けられた複数の微小な吸気開口110を介して連通されている。吸気開口110の大きさは、洗浄媒体104よりも小さいけれども、被洗浄物120の表面に付着した汚染物質121よりも大きく、それによって汚染物質121は排気と共に乾式洗浄装置100の外部に排出され、一方、洗浄媒体104は旋回空間103内で循環される。なお、洗浄媒体104、吸気開口110及び汚染物質121などは、理解を容易にするため、誇張して大きく、且つ、数を少なく描いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−124372号公報
【特許文献2】特開2013−121578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の乾式洗浄装置100は、その筐体101の洗浄開口102が形成された底板を被洗浄物120の被洗浄面に密着させて洗浄する。一方、蒸着マスクに使用される樹脂フィルムは、その厚みが数μm〜20μm程度であり、非常に薄い。そのため、従来の乾式洗浄装置100をそのまま樹脂フィルム製の蒸着マスクの洗浄に使用すると、樹脂フィルムのうち筐体101の洗浄開口102に対向する部分は筐体101の内部の旋回空間103に生じる負圧により筐体101の内側に吸い込まれてしまい、樹脂フィルムが伸びたり変形したりする虞がある。樹脂フィルムが伸びたり変形したりすると、樹脂フィルムに形成された貫通開口の位置や大きさが変わってしまい、そのような蒸着マスクを用いて薄膜パターンを蒸着すると、所望する位置に蒸着物質が蒸着されない。従って、従来の乾式洗浄装置100をそのまま樹脂フィルム製の蒸着マスクの洗浄に使用することはできず、改良が必要となる。
【0008】
そこで、樹脂フィルムに貫通開口を形成した後、樹脂フィルムを洗浄液(溶剤)中に浸漬させたり、樹脂フィルムに洗浄液を吹き付けたりして、樹脂フィルムの表面に形成されたバリや樹脂粉などを取り除くことも考えられる。ところが、ポリイミドなどの樹脂フィルムは吸水性を有しているため、洗浄後に樹脂フィルムを乾燥させる必要があるが、乾燥後に樹脂フィルムに形成された貫通開口の位置や寸法が変化する虞がある。そのため、樹脂フィルム製の蒸着マスクに洗浄液などを用いた液体洗浄方法を用いることはあまり好ましくない。また、洗浄液として溶剤を使用したり、洗浄後に乾燥させたりする必要があるため、製造に要する時間やコストがかさむという問題点も有している。さらに、洗浄液の処理に際して、環境問題も生じる。
【0009】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、乾式洗浄方法を用いながら、蒸着マスクに対するダメージが小さく、バリなどを効果的に除去することができ、OLEDの製造に使用される樹脂フィルム製の蒸着マスクの製造方法及びその蒸着マスクの洗浄に適する乾式洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る蒸着マスクの製造方法は、
所定の位置に1又は複数の開口が形成された金属フィルム層の一方の面に樹脂フィルム層が配置された蒸着マスク素材を形成する工程と、
前記蒸着マスク素材に対して所定の方向に所定の張力を掛けた状態で、前記樹脂フィルム層を外側にして前記金属フィルム層を金属フレームに溶接する工程と、
前記樹脂フィルム層の上方に所定のパターンの貫通孔を形成するためにレーザー加工用のマスクを配置する工程と、
前記レーザー加工用マスクを介して、前記樹脂フィルム層にレーザー光を照射し、前記樹脂フィルム層に前記所定のパターンの貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を形成する際に生じたバリや汚染物質を前記樹脂フィルム層から取り除く洗浄工程を備え、
前記洗浄工程は、前記樹脂フィルム層の裏面から超音波振動を加えながら、前記所定のパターンの貫通孔が形成された前記樹脂フィルム層の表面に乾式洗浄装置を所定高さだけ浮上させた状態で移動させ、前記乾式洗浄装置の筐体の旋回空間内で、前記樹脂フィルム層の表面に平行な所定の旋回軸の周りに旋回流を発生させ、該旋回流によって前記旋回空間内で前記所定高さよりも厚み及び1辺又は対角線の長さが大きな平板状の洗浄媒体を旋回させ、該洗浄媒体を前記筐体の底部に設けられた洗浄開口を介して前記樹脂フィルム層の表面に衝突させ、前記バリや汚染物質を除去することを特徴とする。
【0011】
前記超音波振動は、周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせたものであるように構成してもよい。
【0012】
また、前記周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせは、20〜100kHz帯の超音波振動に加えて、さらに別の振動子によりこれよりも周波数の高い帯域の振動を重畳させるように構成してもよい。
【0013】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、
所定方向の旋回軸の周囲に形成された旋回空間と、前記旋回空間内に空気を吸い込むための吸気口と、前記旋回空間から空気を排出するための排気口と、被洗浄物の被洗浄面に対向する底板に形成された洗浄開口を有する筐体と、
前記排気口に接続され、前記筐体の前記旋回空間内の空気を排出することにより前記旋回空間に前記旋回軸の周りの旋回流を発生させる旋回流発生装置と、
前記底板を前記被洗浄物の被洗浄面から所定高さだけ浮上させる浮上機構と、
前記旋回空間内に充填され、前記所定高さよりも厚み及び1辺又は対角線の長さが大きな平板状であり、前記旋回流によって旋回される洗浄媒体と、
前記底板と前記被洗浄物との間の隙間を塞ぎつつ、該隙間から空気を吸い込むためのセミ・シール部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記構成において、前記底板は略矩形であり、前記浮上機構は、前記底板の各辺のうち互いに対向する1組の辺の端部近傍にそれぞれ設けられた1組の円筒状のローラー又は前記底板の3点又は4点に設けられたボールであり、前記セミ・シール部材は、前記底板の各辺のうち互いに対向する他の1組の辺の端部近傍に設けられた導電性のブラシ体であるように構成してもよい。
【0015】
前記浮上機構は、前記底板を前記被洗浄物の被洗浄面から10μm〜50μmの範囲内で浮上させることが好ましい。
【0016】
前記洗浄媒体は、1辺又は対角線の長さが0.1mm〜0.5mmの平板状の多角形であることが好ましい。
【0017】
前記旋回空間内に発生される旋回流の速度又は前記旋回空間内で旋回される前記洗浄媒体の速度又は単位時間当たりの前記洗浄媒体の数を検出する洗浄状況センサーと、前記旋回空間内に発生される前記旋回流の速度を調節するためのバルブを備え、前記旋回流の速度又は前記洗浄媒体の速度又は単位時間当たりの前記洗浄媒体の数を調節するように構成してもよい。
【0018】
前記被洗浄物が略矩形である場合、前記被洗浄物の一辺に沿って複数の前記乾式洗浄装置を千鳥状に配置し連結するように構成してもよい。
【0019】
前記被洗浄物の被洗浄面の裏面から前記被洗浄物に超音波振動を加える超音波振動装置をさらに備えるように構成してもよい。
【0020】
前記超音波振動装置は、周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせて発生させるように構成してもよい。
【0021】
また、前記超音波振動装置は、前記周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせとして、20〜100kHz帯の超音波振動に加えて、さらに別の振動子によりこれよりも周波数の高い帯域の振動を重畳させるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る蒸着マスクの製造方法によれば、蒸着マスク素材を金属フレームに溶接した状態で、樹脂フィルム層にレーザー光を照射して樹脂フィルム層に所定のパターンの貫通孔を形成し、さらにその状態で樹脂フィルム層の表面に乾式洗浄装置によって、洗浄媒体を樹脂フィルム層の表面に衝突させ、バリや樹脂粉を除去するので、洗浄液などを用いた液体洗浄方法と比較して、洗浄後に乾燥させる必要がなく、製造に要する時間やコストを低減することができる。また、洗浄液を使用しないので、洗浄液の処理に関する環境問題も生じない。さらに、乾式洗浄装置は、樹脂フィルム層の表面に対して所定高さだけ浮上させた状態で移動されるので、樹脂フィルム層が乾式洗浄装置の筐体の内部に吸い込まれることはなく、樹脂フィルム層に形成された所定のパターンの貫通孔の位置や形状が変化することもない。さらに、超音波振動を樹脂フィルム層に加えることにより、バリや汚染物質などの除去効率が劇的に向上する。
【0023】
本発明に係る乾式洗浄装置によれば、セミ・シール部材を介して若干の空気が底板と被洗浄物の被洗浄面との間に形成される隙間からそれらの間に形成された空間に吸い込まれ、その空間内の負圧が低減される。そのため、被洗浄物が樹脂フィルムのような非常に薄いものであっても、旋回空間内で生じる負圧によって被洗浄物が筐体の旋回空間内に吸い込まれることはなく、被洗浄物が伸びたり変形したりすることはない。そのため、被洗浄物に形成された貫通開口などの位置や大きさが変化することはない。一方、浮上機構による被洗浄物の被洗浄面に対する底板の浮上量は洗浄媒体に比べて十分小さいので、洗浄媒体が底板と被洗浄物の被洗浄面との間の隙間に侵入することなく、洗浄開口を介して洗浄媒体を被洗浄物の被洗浄面に衝突させることができ、被洗浄物の表面のバリや汚染物質を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの洗浄に適する乾式洗浄装置の一構成例を示す側部断面図。
【
図4】上記乾式洗浄装置の他の構成を示す正面断面図。
【
図5】複数の上記乾式洗浄装置を千鳥状に配置し連結した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る蒸着マスクの製造方法及びその蒸着マスクの洗浄に適する乾式洗浄装置について説明する。
図1は本実施形態に係る蒸着マスク50の製造方法を示す図である。
図1に示すように、蒸着マスク50は、例えばポリイミドなどの熱硬化性樹脂で形成された樹脂フィルム層51と、磁性金属薄膜などで形成された金属フィルム層52を備えた、いわゆるハイブリッド型の蒸着マスクである。例えば、樹脂フィルム層51の厚みは数μm〜20μm程度であり、金属フィルム層52の厚みも数十μm程度である。一方、蒸着マスク50の大きさは、大きなものでは1000mm×1500mm程度にもなる。そのため、このような蒸着マスク50を単体で取り扱うことは事実上不可能であり、金属フィルム層52に張力を掛けた状態で、蒸着マスク50よりも大きく剛性の高い矩形の金属フレーム53に溶接して取り扱われている。
【0026】
蒸着マスクの製造方法を以下説明する。樹脂フィルム層51に一旦サポートガラス基板を貼り合せ、磁性体からなる金属フィルム層52を電着するためのシード金属層(不図示)をスパッタリング法で膜厚0.3μmに形成する。シード金属層の形成方法としては、他に蒸着を用いてもよい。膜厚は0.3μmに限られず、0.2μm〜1μm程度であればよい。次に、フォトリソグラフィ法を用いて、磁性体の金属フィルム層52形成用のレジストパターンを形成する。その後、電解めっき法で金属フィルム層52を厚さ20μmに形成し、シード層の金属をウエットエッチングで除去する。さらに、サポートガラス基板を剥離してシート状の基材(樹脂フィルム層51)を形成する。シート状の基材の取り扱いを容易にするため、樹脂フィルム層51と金属フィルム層52の積層体を伸長し、厚さ50mm程度の金属支持体(フレーム)53を溶接する。
【0027】
そして、
図1(a)に示すように、樹脂フィルム層51と磁性体金属フィルム層52の積層体が溶接された金属フレーム53及びスペーサー54を基台55の上に載置する。スペーサーには平面性の良いガラスを用いる。樹脂フィルム層51と基台55との密着性を改善するためエタノールなどで平坦性を修正し、レーザー光73を照射する。この際レーザー照射を2段階に分けてもよい。レーザー光が照射された部分の樹脂はアブレーションし、飛散することによって、樹脂フィルム層51に所定パターンの貫通開口が形成され、蒸着マスク50が形成される。このとき、前述のように、蒸着マスク50の貫通開口のエッジ部にはバリが生じており、また、飛散した煤状の樹脂粉などの汚染物質が蒸着マスク50の表面に付着する。これらのバリや汚染物質を除去するため、
図1(b)に示すように、蒸着マスク50の被洗浄面、すなわち樹脂フィルム層51のレーザー光が照射された側の表面(第1面)に乾式洗浄装置1を所定高さだけ浮上させた状態で移動させることによって、貫通孔を形成する際に生じたバリや樹脂粉を樹脂フィルム層51から取り除く。乾式洗浄装置1による洗浄方法は、筐体2の旋回空間内3で、樹脂フィルム層51の第1面に平行な所定の旋回軸5の周りに旋回流を発生させ、この旋回流によって旋回空間3内で前記所定高さよりも厚み及び1辺又は対角線の長さが大きな平板状の洗浄媒体4を旋回させ、洗浄媒体4を筐体2の底部に設けられた洗浄開口22を介して樹脂フィルム層51の表面に衝突させ、バリや樹脂粉を除去する。
【0028】
乾式洗浄装置1を用いて洗浄する際、基台55を超音波振動装置として機能させるように構成してもよい。それによって、所定の超音波振動を発生させ、樹脂フィルム層51の裏面から超音波振動を加えることにより、樹脂フィルム層51からのバリや汚染物質の除去を促進させることができる。上記スペーサー54は、樹脂フィルム層51に照射されたレーザー光123が基台55まで到達しないように遮蔽すると共に、基台55によって発生された超音波振動を樹脂フィルム層51に伝達する。この場合、基台55は、それぞれ異なった周波数の超音波振動を発生させるための複数種類の振動子56、57、58・・・を備えており、例えば、振動子56から周波数20kHzの超音波振動を発生させ、振動子57から周波数40kHzの超音波振動を発生させ、振動子58から100kHzの超音波振動を発生させるように構成してもよい。これらの振動子56〜58・・・の大きさや数は、発生される超音波振動の周波数は特に限定されるものではなく、製造する蒸着マスク50の大きさや樹脂フィルム層51の厚みなどに応じて適宜選択すればよい。また、これらの振動子56〜58・・・の駆動方法としては、周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせることによって定在波を発生させないようにすることが好ましく、様々な方法が考えられる。
(1)複数、好ましくは3つの周波数の異なる超音波振動を同時に、且つ、連続的に発生させる。
(2)複数、好ましくはこれら3つの周波数の異なる超音波振動のうち少なくとも1つの周波数の超音波振動を連続的に発生させ、他の1つ又は複数(2つ)の超音波振動を、例えば5〜20秒間隔で間欠的に発生させる。また、2つの超音波振動を間欠的に発生させる場合、その振動子の間欠駆動の周期を変えてもよい。
(3)上記(1)又は(2)の20〜100kHz帯の超音波振動に加えて、さらに別の振動子によりこれよりも周波数の高い帯域、例えば1MHz以上の帯域の振動を重畳させるようにしてもよい。
このように、周波数の異なる複数の超音波振動を組み合わせることにより、定在波の発生を防止することができる。
【0029】
次に、乾式洗浄装置1を用いて蒸着マスク50を洗浄した実験結果を表1に示す。ここで、「第1面」は樹脂フィルム層51のレーザー光が照射された側の第1面の洗浄結果、「第2面」は樹脂フィルム層51の金属フィルム層52側の表面(第2面)の洗浄を示し、実際に蒸着マスクの表面を写真撮影し、「4080」は観察した範囲内の全貫通孔の数、「4029」、「4118」、「84」、「91」、「48」及び「38」は、洗浄の前後において貫通孔の周囲など存在するバリなどの数を表す。この結果から、洗浄媒体4を旋回させただけでも十分な洗浄効果が得られ、さらに超音波振動を併用させると洗浄効果が向上することがわかる。特に、有機発光ダイオードを用いたディスプレイの場合、高精細化、すなわち画素数の増加に対応して貫通孔及びその周囲に存在するバリなどの数が劇的に増加するため、超音波振動を併用させることによる効果は顕著である。なお、特許文献2に示された従来例と同様に、乾式洗浄装置1を蒸着マスク50に密着させて洗浄を試みたところ、蒸着マスク50が破損し、うまく洗浄できないことも確認できた。
【表1】
【0030】
図2は、上記蒸着マスク50の洗浄に適する乾式洗浄装置1の構成を示す側部断面図であり、
図3はその正面断面図である。本実施形態に係る乾式洗浄装置1の筐体2は、所定方向(例えば水平方向)の旋回軸5の周囲に形成された旋回空間3と、旋回空間3内に空気を吸い込むための吸気口7と、旋回空間3から空気を排出するための排気口8と、蒸着マスク50の樹脂フィルム層51の表面(ここでは上記「第1面」を例示している)に対向する底板21に形成された洗浄開口22を有している。以下の説明では、樹脂フィルム層の第1面及び第2面を総称して「蒸着マスク50の被洗浄面」と称する。旋回空間3は、この洗浄開口22を介して蒸着マスク50の被洗浄面と対向する。この構成例では、旋回空間3が旋回軸5を中心として略円筒状(旋回軸5に垂直な断面が略環状)となるように、筐体2の内部には、排気口8に連通した略円筒状の仕切り壁6が設けられており、仕切り壁6に多数の微小な吸気開口10が形成されている。また、筐体2のうち蒸着マスク(被洗浄物)50の被洗浄面に対向する底板21は略矩形である。排気口8には、例えばフレキシブルチューブ61を介してブロワーなどの旋回流発生装置62が接続されており、旋回空間3の空気は、吸気開口10及び排気口8を介して筐体2の外部に排出される。旋回空間3の空気が排出されることによって旋回空間3の圧力が低下するので、筐体2の外部の空気が吸気口7から旋回空間3に吸引される。旋回空間3の内部に吸引された空気は、略円筒状の旋回空間3を形成する筐体2の内壁23に衝突し、内壁23に沿って流れる。その結果、旋回空間3に旋回軸5の周りの旋回流が発生される。なお、
図6に示す従来の乾式洗浄装置100と同様に、吸気開口10の大きさは、洗浄媒体4よりも小さいけれども、蒸着マスク50の表面に付着した汚染物質121よりも大きく、それによって汚染物質121は排気と共に乾式洗浄装置1の外部に排出され、一方、洗浄媒体4は旋回空間3内で循環される。また、洗浄媒体4、吸気開口10及び汚染物質121などは、理解を容易にするため、誇張して大きく、且つ、数を少なく描いている。
【0031】
筐体2の底板21の側辺のうち互いに対向する1組の辺の端部近傍には、蒸着マスク50の被洗浄面に平行な方向(例えば水平方向)を回転軸とする一組の円筒状のローラー31が設けられており、ローラー31は蒸着マスク50の被洗浄面を転動する。ローラー31の材料としては、樹脂フィルム製の蒸着マスク50の被洗浄面との滑りを考慮して、摩擦抵抗の小さい、例えばフッ素ゴムやニトリルゴムなどが好ましい。このローラー31の転動により、乾式洗浄装置1を基台55(
図1参照)に保持された蒸着マスク50に対して相対的に移動させることができる。ローラー31は、筐体2の底板21を蒸着マスク50の被洗浄面から所定高さだけ浮上させる浮上機構として機能し、底板21の蒸着マスク50の被洗浄面に対向する面は、蒸着マスク50の被洗浄面には密着しておらず、所定の高さ(例えば10〜50μm、好ましくは30μm程度)だけ被洗浄面から浮上している。
【0032】
筐体2の底板21の他の1組の辺(ローラー31が設けられていない辺)の端部近傍には、それぞれ導電性の樹脂繊維などで形成されたブラシ状体であるセミ・シール部材32が設けられている。このセミ・シール部材32は、筐体2の底板21の蒸着マスク50の被洗浄面と対向する面と蒸着マスク50の被洗浄面との間の隙間を塞ぎつつ、該隙間から筐体2の底板21と、蒸着マスク50の被洗浄面と、一対のローラー31と、一対のセミ・シール部材32によって形成される空間内に空気を吸い込むためのものである。排気口8から排出される空気の量と、吸気口7から旋回空間3内に吸い込まれる空気の量とセミ・シール部材32から吸い込まれる空気の量を合わせたものはほぼ等しいので、セミ・シール部材32を構成するブラシ状体の本数などを適宜選択して、セミ・シール部材32を介して吸い込まれる空気の量を、吸気口7から旋回空間3内に吸い込まれる空気の量よりも少なくする。それによって、筐体2の旋回空間3に所定の速度の旋回流を発生させつつ、筐体2の底板21と蒸着マスク50の被洗浄面との間に形成される上記空間内の負圧を低減することができる。その結果、樹脂フィルム製の蒸着マスク50のような非常に薄いものであっても、旋回空間3内で生じる負圧によって被洗浄物である蒸着マスク50が筐体2の内側に吸い込まれることはなく、蒸着マスク50が伸びたり変形したりすることはなく、蒸着マスク50に形成された貫通開口の位置や大きさが変化することはない。また、セミ・シール部材32として導電性の樹脂繊維などで形成されたブラシ状体を用いているので、セミ・シール部材32が蒸着マスク50の被洗浄面を摺動する際に生じる静電気を筐体2を介して放電することができ、静電気による汚染物質などの再付着を防止することができる。
【0033】
筐体2の旋回空間3内には洗浄状況センサー33が設けられており、また、排気口8には、旋回空間3内に発生される旋回流の速度を調節するためのバルブ34が設けられている。洗浄状況センサー33としては、風速計などを用いて旋回空間3内に発生される旋回流の速度を直接検出してもよいし、例えば光センサーなどを用いて、旋回流によって旋回される洗浄媒体4の速度又は単位時間当たりの洗浄媒体4の数などを検出してもよい。この乾式洗浄装置1による洗浄メカニズムは、被洗浄物である蒸着マスク50の被洗浄面に洗浄媒体4を衝突させることによって生じるので、乾式洗浄装置1の洗浄能力は、旋回空間3内に発生される旋回流の速度、旋回流によって旋回される洗浄媒体4の材質、大きさ、単位体積当たりの数などによって決定される。そのため、洗浄状況センサー33の検出結果に基づいてバルブ34の開き量を制御することにより、旋回空間3に発生される旋回流の速度又は旋回流によって旋回される洗浄媒体4の速度又は単位時間当たりの洗浄媒体4の数などを調節することができる。
【0034】
筐体2の旋回空間3内には洗浄媒体4が充填されおり、旋回流発生装置62によって旋回空間3に旋回流が発生されると、洗浄媒体4は旋回流に乗って旋回される。洗浄媒体4は、例えば不織布、ポリビニールアルコール、ポリプロピレンなどのフィルムを微小に切断したものであり、1辺又は対角線の長さが0.1mm〜0.5mmの平板状の多角形である。多角形としては、四角形、六角形、八角形など、角が多いものが好ましい。フィルムの厚みは、洗浄媒体4が筐体2の底板21と蒸着マスク50の被洗浄面との間に挟まらないようにするため、これらの間の隙間、すなわち上記所定高さ(例えば10〜50μm、好ましくは30μm程度)よりも厚いことが好ましく、加工のしやすさを考慮すれば0.2mm以上がより好ましい。
【0035】
旋回流の速度が速すぎたり、洗浄媒体4の量が多すぎたり、あるいは、乾式洗浄装置1と蒸着マスク50の相対的な移動速度が遅すぎたりすると、洗浄媒体4が蒸着マスク50の被洗浄面に衝突する回数が多くなりすぎ、蒸着マスク50に損傷を与える虞がある、また、旋回流の速度が遅すぎたり、洗浄媒体4の量が少なすぎたり、あるいは、乾式洗浄装置1と蒸着マスク50の相対的な移動速度が速すぎたりすると、洗浄媒体4が蒸着マスク50の被洗浄面に衝突する回数が少なくなりすぎ、蒸着マスク50の洗浄が十分でなく、バリや汚染物質121を完全に取り除くことができなくなる虞がある。そのため、蒸着マスク50の量産工程において、この乾式洗浄装置1を用いて蒸着マスク50の被洗浄面を洗浄するにあたっては、予め蒸着マスク50のテスト片などを用いて最適な条件を決定する。本出願人が行った実験結果を例示すると、旋回流の速度:15〜50m/秒、洗浄媒体4の量:20〜100個/cm
3、乾式洗浄装置1と蒸着マスク50の相対的な移動速度:1cm/秒、洗浄媒体4:1辺の長さ0.2〜0.4mmの正方形の不織布又は1辺の長さ0.3〜0.5mmの正方形のポリビニールアルコールの範囲で良好な結果が得られた。一方、洗浄媒体4として紙片を用いた場合は、何れの条件でもあまり良好な結果は得られなかった。また、発泡ポリエチレンなどの空気を含む材料を用いた洗浄媒体4は、蒸着マスク50の樹脂フィルム層51との衝突の際に静電気が発生し、一旦除去した汚染物質などが再付着する虞があるため、好ましくない。逆に、静電気を発生させにくくするために、炭素繊維の塊など導電性を有する物質を洗浄媒体4に混合してもよい。
【0036】
図4は、上記乾式洗浄装置1の変形例の構成を示す。蒸着マスク50の被洗浄面を洗浄するにあたって、乾式洗浄装置1と蒸着マスク50の被洗浄面の接触面積及び摩擦抵抗はできるだけ少ないことが好ましい。
図2に示す構成例では、筐体2の底板21を蒸着マスク50の被洗浄面から所定高さだけ浮上させる浮上機構として互いに対向する1組のローラー31を用いたが、
図4に示す構成例では、浮上機構として、筐体2の底板21の3点又は4点に設けられたボール35を用いている。また、ボール35の回転を滑らかにするため、比較的乾燥時間の短いエタノールなどを潤滑剤36として使用している。また、筐体2の底板21の各辺には、導電性のブラシ体であるセミ・シール部材32が設けられている。このような構成によっても同様の効果が得られる。
【0037】
図5は、蒸着マスク50の被洗浄面を連続的に洗浄するために、複数の乾式洗浄装置1を連結した構成を示す平面図である。蒸着マスク50は、上記のように樹脂フィルム製であり、その厚みは非常に薄いため、貫通開口が形成されていない領域、具体的には樹脂フィルムの周囲に金属板などによるマスクフレームが結合される。そのため、蒸着マスク50の全面を洗浄する必要はないが、少なくとも貫通開口が形成されている領域、すなわち被洗浄領域を漏れなく洗浄する必要がある。そのため、
図5に示すように、蒸着マスク50の一辺、例えば短辺に沿って複数の乾式洗浄装置1を千鳥状に配置し連結している。複数の乾式洗浄装置1は、正面視で、前列に配置された乾式洗浄装置1と後列に配置された乾式洗浄装置1が部分的にオーバーラップしている。一例として、一般的に第3.5世代ハーフと呼ばれる有機発光ダイオードを用いた画像表示装置を製造する場合、使用される蒸着マスク50の大きさは475mm×700mm程度であり、素子領域を含む被洗浄面の短辺は300〜500mm程度である。被洗浄面の短辺方向において、乾式洗浄装置1の筐体2の底板21の寸法を約50mmとすると、
図5に示すように乾式洗浄装置1を同方向に5台乃至10台配置すればよい。
【0038】
各乾式洗浄装置1は、連結フレーム60によって水平方向に連結されており、ローラー31又はボール35が蒸着マスク50の被洗浄面を転動するように、若干上下動可能である。乾式洗浄装置1と蒸着マスク50の相対的な移動方法としては、例えば、乾式洗浄装置1を所定位置に吊り下げ、その下を基台55に保持された蒸着マスク50をコンベアなどによってローラー31の回転軸に直交する方向(転動方向)に搬送させる。あるいは、基台55の片側又は両側にガイドレールを設置し、そのガイドレールに沿って乾式洗浄装置1を移動させてもよい。各乾式洗浄装置1の排気口8には、それぞれフレキシブルチューブ61が接続されており、フレキシブルチューブ61が旋回流発生装置62(
図2参照)に接続されている。前述のように、各乾式洗浄装置1にはそれぞれ洗浄状況センサー33及びバルブ34が設けられているので、各乾式洗浄装置1の洗浄能力が同じになるように、洗浄状況センサー33の検出結果に基づいてバルブ34の開き量のフィードバック制御を行う。このような構成により、コンベアなどによって連続的に搬送されてくる蒸着マスク50の被洗浄面をもれなく洗浄することができる。
【0039】
なお、
図5に示すように、複数の乾式洗浄装置1を露出させたまま使用してもよいし、あるいは、これら複数の乾式洗浄装置1をさらに大きな1つの筐体の内部に収容してもよい。また、乾式洗浄装置1が蒸着マスク50の被洗浄面に接触していない状態で洗浄媒体4が筐体2の洗浄開口22から落下するのを防止するために、洗浄開口22に旋回流発生装置62の動作と連動する開閉式のシャッターを設けてもよい。さらに、旋回空間3内に旋回流を発生させる構造は、図示したような排気口8に連通した略円筒状の仕切り壁6に多数の微小な吸気開口10が形成されたものに限定されず、
図6に示すような旋回軸に垂直な壁に多数の微小な吸気開口を形成し、この微小な吸気開口を介して旋回空間と排気口を連通するものであってもよい。さらに、排気口8の方向も旋回軸5と平行、すなわち水平方向でなくてもよく、垂直方向に曲げられていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 乾式洗浄装置
2 筐体
3 旋回空間
4 洗浄媒体
5 旋回軸
6 仕切り壁
7 吸気口
8 排気口
10 吸気開口
21 底板
22 洗浄開口
23 (筐体の)内壁
31 ローラー
32 セミ・シール部材
33 洗浄状況センサー
34 バルブ
35 ボール
36 潤滑剤
50 蒸着マスク(被洗浄物)
51 樹脂フィルム層
52 金属フィルム層
53 金属フレーム
54 スペーサー
55 基台
56、57 振動子
60 吊り下げフレーム
61 フレキシブルチューブ
62 旋回流発生装置