(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、交流電動機に対する電圧指令値は、交流電動機に対するトルク指令値から求めたd軸及びq軸の電流目標値と、交流電動機の各相の測定電流から変換した実測のd軸電流及びq軸電流とが一致するような値に決定される。しかし、d軸電流及びq軸電流がd軸及びq軸の電流目標値に追従する応答速度は必ずしも一致するとは限らない。
【0007】
このため、d軸の電流目標値に追従する実測のd軸電流の変動と、q軸の電流目標値に追従する実測のq軸電流の変動とが、同期しない場合もある。その場合には、追従が遅れている方の軸における電流目標値と実測電流との差をなくす制御によって、追従が進んでいる方の軸において電流目標値と実測電流との差が増加する可能性がある。
【0008】
その場合は、d軸とq軸との両方で電流目標値と実測電流との差がなくなるまでに時間がかかり、電流目標値と実測電流との差に応じて決定される交流電動機の電圧指令値が安定しない。よって、過変調制御時に変調率に応じて補正される電圧指令値の補正値が安定せず、補正後の電圧指令値が脈動して交流電動機にトルク脈動が発生してしまう。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、過変調制御における電圧指令値の変化に対するインバータの出力電圧の変化を線形とするための補正値を安定させ、トルク脈動を抑制することができる交流電動機の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様による交流電動機の駆動制御装置は、
直流の電源電圧を交流に変換するインバータの出力で駆動される交流電動機の駆動制御装置であって、
トルク指令値と、前記電源電圧と、前記交流電動機の動作状態を示す値とに基づいて、d軸及びq軸の各電流目標値と、d軸及びq軸の各電圧指令推定値とを求める電流・電圧指令値算出部と、
前記交流電動機に印加されるd軸の実電流値に対する、前記d軸の電流目標値の差分、及び、前記交流電動機に印加されるq軸の実電流値に対する、前記q軸の電流目標値の差分を小さくするよう、d軸及びq軸の電圧指令値を算出する電圧指令値算出部と、
前記電源電圧と前記d軸及びq軸の各電圧指令推定値に基づいて、変調率を算出する変調率算出部と、
前記変調率に応じて、前記d軸及びq軸の各電圧指令値の補正量を算出する補正量算出部と、
前記d軸及びq軸の各電圧指令値を前記補正量により補正して得た補正電圧値を算出する電圧算出部とを備え、
前記d軸及びq軸の電圧指令値の算出とは別に、前記d軸及びq軸の各電圧指令推定値を求めて、前記変調率を算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過変調制御における電圧指令値の変化に対するインバータの出力電圧の変化を線形とするための補正値を安定させ、トルク脈動を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態に係る交流電動機の駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の交流電動機の駆動制御装置は、不図示の直流電源の電圧を交流に変換して三相交流電動機(以下、「モータ」と称する。)1に出力するインバータ3の動作を制御するものである。
【0015】
そして、
図1に示すように、本実施形態の駆動制御装置は、上述したインバータ3の他、回転数演算部5、電流・電圧指令値算出部7、電圧指令値算出部9、変調率算出部13、補正量算出部15、電圧算出部17、dq軸−三相変換器19,21及び電流センサ23を有している。これらは、ディスクリート回路やICチップ(メモリ内蔵のものを含む)等により、一部又は全体を個別に、あるいは、全体を一体に構成することができる。
【0016】
回転数演算部5は、モータ1が回転数に応じて出力する回転パルスの周期によりモータ1の回転数を演算する。電流・電圧指令値算出部7は、電流目標値算出部8と電圧指令値推定部11とを有している。
【0017】
このうち、電流目標値算出部8は、不図示の直流電源の電源電圧と回転数演算部5から入力されるモータ1の回転数とに基づいて、不図示のコントローラから入力されるモータ1のトルク指令値に対応するモータ1のd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*を、従来公知の方法で算出する。
【0018】
電流目標値算出部8が算出したモータ1のd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*は、電圧指令値推定部11に入力される。そして、電圧指令値推定部11は、回転数演算部5が演算したモータ1の回転数とd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*とを基準にして、トルク指令値に対応するモータ1へのd軸及びq軸の各指令電圧vd,vqを推定する。
【0019】
具体的には、モータ1の電圧方程式は、
図1中に記載した行列によって表すことができる。なお、この行列中、Rはモータコイルの巻線抵抗、Ld,Lqはモータ1のd軸及びq軸インダクタンス、ωΦaはモータロータのコイル鎖交磁束によりq軸側だけに発生する誘導電圧である。
【0020】
なお、これらの情報は、予め取得(設定)されている。そして、回転数及びd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*を上述した電圧方程式に代入すれば、トルク指令値に対応するモータ1へのd軸及びq軸の各指令電圧vd,vq(のピーク値)を推定することができる。以下、電圧指令値推定部11が推定したd軸及びq軸の各指令電圧vd,vq(のピーク値)を、電圧指令推定値vd,vqと称する。
【0021】
電圧指令値算出部9には、電流センサ23が検出したモータ1のUVWの3相のうち2相以上の電流(
図1中では例えばUV相の電流Iu,Iv)をdq軸−三相変換器21で変換したd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqが入力される。そして、電圧指令値算出部9は、前述したd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*をd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqと一致させるための、モータ1のd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを算出する。
【0022】
なお、ここでいう「一致させるため」とは、各電流目標値Id*,Iq*とd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqとの差分を小さくする意味であり、必ずしも差分をゼロにすることに限定されない。
【0023】
変調率算出部13は、電流・電圧指令値算出部7の電圧指令値推定部11が推定したモータ1へのd軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vqを用いて、直流電源の電圧を変調してモータ1に対する指令電圧(請求項中の指令電圧に相当)とするときの変調率Mを算出する。変調率Mの算出には、例えば、M=Va/(Vdc/√2)の式、又は、その式の変数と解とをテーブル化したテーブル(図示せず)を用いることができる。
【0024】
ここで、Vaは、モータ1の全体としての電圧指令推定値であり、d軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vqを二乗和平方根したものである(Va=√{vd^2+vq^2})。また、Vdcは不図示の直流電源の電圧(Vdc/√2は不図示の直流電源の実効電圧)である。
【0025】
補正量算出部15は、上述した変調率算出部13が算出した変調率Mが1を超える(モータ1に対する電圧指令推定値Va(のピーク値)が不図示の直流電源の電圧を超える)過変調状態である場合に、モータ1のd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfの補正量LCを算出する。なお、変調率が1未満の場合には、補正量LCは常に1になり、補正を行わない。
【0026】
即ち、変調率Mが1を超えると、電圧指令推定値Va(電圧指令推定値Vaに対応するd軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vq)が増減しても、電圧指令推定値Va(のピーク値)が不図示の直流電源の電圧を既に超えている部分においては、PWM制御によるインバータ3の電圧出力期間(PWMのパルス幅)が変わらない。このため、変調率Mが1を超えると、電圧指令推定値Va(のピーク値)の変化に対するインバータ3出力電圧の変化が線形ではなくなる。
【0027】
そこで、変調率算出部13が算出する変調率Mが1を超える場合に補正量算出部15が算出する補正量LCは、過変調制御においても電圧指令推定値Vaの変化に対するインバータ3の出力電圧の変化を線形とするためのものである。この補正量LCとは、目標電圧指令値算出部9が算出したモータ1のd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfに対する補正量を、ゲインによって定義するものである。
【0028】
なお、補正量算出部15は、例えばグラフや方程式、テーブルによって定義された内容にしたがって、1を超える変調率Mに対応する補正量LCを算出することができる。
【0029】
電圧算出部17は、電圧指令値算出部9が算出したモータ1のd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを、補正量算出部15が算出した補正量LCによって、d軸及びq軸の各軸毎にそれぞれ補正する。
【0030】
そして、電圧算出部17は、補正量算出部15が算出した補正量LCによって補正したd軸及びq軸の各補正電圧値vd*,vq*を算出し、dq軸−三相変換器19によりUVWの3相の電圧VU,VV,VWに変換して、インバータ3に出力する。
【0031】
次に、このように構成された本実施形態の交流電動機の駆動制御装置の動作について説明する前に、一般的な交流電動機の駆動制御装置の動作について説明する。
【0032】
一般的な交流電動機の駆動制御装置では、不図示の直流電源の電圧に対する変調率を、交流電動機に対する電圧指令値を用いて算出する。この電圧指令値は、本実施形態で言えば、電圧指令値算出部9が算出するd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfに該当する。
【0033】
このd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfは、本実施形態における電圧指令値算出部9のように、モータのd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqを用いて算出される。このd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqと、不図示のコントローラから入力されるd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*との差分は、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfに反映される。これにより、d軸及びq軸の各実電流値Id,Iqは、d軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*に近づきやがて一致するように収束する。
【0034】
図2及び
図3は、ある一定のトルク指令値を入力したときに、一般的な駆動制御によって駆動されるモータのdq座標系におけるd軸及びq軸に関する波形をそれぞれ示すグラフである。
【0035】
詳しくは、
図2(a)はモータの電流目標値に対する実電流値の応答特性のグラフ、(b)はモータの電流目標値及び実電流値に応じて算出する電圧指令値の時系列変化のグラフ、(c)はモータのd軸の電圧指令値に基づいて補正量を決定した場合の補正量の時系列変化のグラフ、(d)は(c)の補正量により補正した補正電圧値のグラフである。
【0036】
また、
図3(a)はモータの電流目標値に対する実電流値の応答特性のグラフ、(b)はモータの電流目標値及び実電流値に応じて算出する電圧指令値の時系列変化のグラフ、(c)はモータのq軸の電圧指令値に基づいて補正量を決定した場合の補正量の時系列変化のグラフ、(d)は(c)の補正量により補正した補正電圧値のグラフである。
【0037】
一般的な駆動制御によって駆動されるモータでは、トルク指令値が一定であっても、d軸及びq軸の各実電流値Id,Iqは当初増減を繰り返す。ここで、
図2(a)のグラフに示す例では、d軸の実電流値Idが電流目標値Id*に一致するように収束しかけている。したがって、d軸の実電流値Idと電流目標値Id*との差に応じて内容が定まる、
図2(b)のグラフに示すd軸の電圧指令値vd*_bfも、一定値に収束して増減幅が小さい平坦な波形に変化しつつある。
【0038】
これに対し、
図3(a)のグラフに示す例では、q軸の実電流値Iqは、まだ電流目標値Iq*に一致するようには収束していない。したがって、
図3(b)のグラフに示すq軸の電圧指令値vq*_bfは一定値に収束せず、q軸の実電流値Iqと電流目標値Iq*との差に応じて大きく増減する内容のままである。
【0039】
このように、電流目標値Id*,Iq*に一致するように実電流値Id,Iqが収束するペースに差が生じるのは、応答経路が物理的に異なるd軸とq軸とでは、電流目標値Id*,Iq*に対する実電流値Id,Iqの応答速度が必ずしも一致しないからである。
【0040】
そして、一般的なモータの駆動制御においては、モータへの指令電圧値(のピーク値)が過変調状態のときに、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを用いて算出した変調率Mに応じて、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfに対する補正量LCが決定される。即ち、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfが一定値に安定すれば、補正値LCと変調率Mが収束(安定)する。
【0041】
このため、
図2(b)に示すようにd軸の電圧指令値vd*_bfが一定値に安定しつつあっても、
図3(b)に示すようにq軸の電圧指令値vq*_bfが安定していないと、変調率Mが安定しないので、変調率Mに応じて決定される補正量LCのボリュームは、
図2(c)及び
図3(c)のグラフに示すように増加する。
【0042】
よって、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを補正量LCにより補正した、
図2(d)及び
図3(d)のグラフに示すd軸及びq軸のモータに対する各補正電圧値vd*,vq*でモータを駆動すると、
図2(a)に示すようにd軸の電流指令値Id*に一致するように収束しかけていたd軸の実電流値Idが、電流目標値Id*から離れ始める。
【0043】
すると、
図2(b)のグラフに示すように一定値に安定しつつあったd軸の電圧指令値vd*_bfが、
図3(b)のグラフに示すq軸の電圧指令値vq*_bfのように大きく増減し始める。その結果、d軸の電圧指令値vd*_bfが安定しなくなるので、これを用いて算出される変調率Mも安定せず、変調率Mに応じて決定される補正量LCのボリュームは増加傾向を続けることになる。
【0044】
このため、仮に補正量LCを変えずにモータの駆動を続けていれば、d軸よりも少し遅れてq軸においても、
図3(a)に示すq軸の実電流値Iqが電流目標値Iq*に近づく可能性があったとしても、その前に補正量LCのボリュームが増加して、q軸の実電流値Iqが電流目標値Id*から離れ始めてしまう。
【0045】
このような状態が繰り返されることで、一般的なモータの駆動制御では、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfに対する補正量LCが安定せず、d軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを補正量LCで補正したd軸及びq軸の各補正電圧値vd*,vq*が脈動して、モータにトルク脈動が発生してしまう。
【0046】
即ち、一般的なモータの駆動制御ではモータにトルク脈動が発生してしまう原因は、ひとえに、電流目標値Id*,Iq*に対する実電流値Id,Iqの応答速度がd軸とq軸とで必ずしも一致するとは限らないにもかかわらず、これらd軸及びq軸の電流目標値Id*,Iq*に基づいて算出したd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを、補正量LCの基となる変調率Mの算出に用いているからである。
【0047】
そこで、本実施形態の駆動制御装置では、補正量算出部15が補正量LCを算出する際に、d軸及びq軸の各実電流値Id,Iqに基づいて算出したd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを変調率Mの算出に用いないようにした。そして、モータ1の回転数とd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*とに基づいて電流・電圧指令値算出部7の電圧指令値推定部11が推定した電圧指令推定値Va(d軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vq)を、変調率Mの算出に用いるようにした。
【0048】
具体的には、変調率算出部13の前段に設けた電流・電圧指令値算出部7の電圧指令値推定部11において、電流・電圧指令値算出部7の電流目標値算出部8が算出したモータ1のd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*と、回転数演算部5が演算したモータ1の回転数とから、モータ1の電圧方程式を利用して、トルク指令値に対応するモータ1への電圧指令推定値Vaを推定するようにした。
【0049】
即ち、モータ1に対する指令電圧は、基本的に、不図示の直流電源の電圧値を基準として、不図示のコントローラから入力されるモータ1のトルク指令値に応じて決定される。但し、指令電圧を決定する際には、モータ1の特性による変動分を加味する必要がある。
【0050】
そこで、本実施形態の電圧指令値推定部11は、モータ1の回転数を回転数演算部5から取り込み、これとトルク指令値とから割り出したモータ1のトルク定数を、先に説明したモータ1の電圧方程式に当てはめて、モータ1に対する指令電圧としての電圧指令推定値Vaの元となる、d軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vq(のピーク値)を推定する。
【0051】
これにより、電圧指令値推定部11によるd軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vq(のピーク値)の推定や、これを用いた変調率算出部13による変調率Mの算出に、モータ1のd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqを基に算出されるd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを用いなくて済むようになる。
【0052】
このため、電流目標値Id*,Iq*に対する応答速度の不一致で、モータ1の実電流値Id,Iqが電流目標値Id*,Iq*と一致するペースにd軸とq軸との間で差が生じても、補正量算出部15が補正量LCを算出するのに用いる変調率Mを一定値に安定させることができる。
【0053】
よって、過変調制御時に変調率Mに応じた補正量LCでd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを補正する場合に、補正後のd軸及びq軸の各補正電圧値vd*,vq*が脈動してモータ1にトルク脈動が発生するのを抑制することができる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態に係る交流電動機の駆動制御装置を、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る交流電動機の駆動制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【0055】
図4に示す本実施形態の駆動制御装置は、
図1に示す第1実施形態の駆動制御装置に設けていた電圧指令値推定部11を、電圧指令値特定部12に変更したことを除いて、第1実施形態の駆動制御装置と同様の構成を有している。
【0056】
そして、第1実施形態の駆動制御装置に係る
図1の電圧指令値推定部11は、電流・電圧指令値算出部7の電流目標値算出部8が算出したモータ1のd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*と、回転数演算部5が演算したモータ1の回転数とから、モータ1の電圧方程式を利用して、トルク指令値に対応するモータ1への指令電圧を電圧指令推定値Vaとして推定するものであった。
【0057】
これに対し、第2実施形態の駆動制御装置に係る
図4の電圧指令値特定部12は、不図示のコントローラから入力されるモータ1のトルク指令値と、不図示の直流電源の電圧値と、回転数演算部5が演算したモータ1の回転数との組み合わせに、モータ1への電圧指令値(のピーク値)を対応付けたテーブルを用いて、トルク指令値に対応するモータ1への指令電圧を電圧指令推定値Vaとして特定するものである。
【0058】
即ち、電圧指令値特定部12に入力される、モータ1のトルク指令値と、不図示の直流電源の電圧値と、回転数演算部5が演算したモータ1の回転数とが分かれば、電流・電圧指令値算出部7の電流目標値算出部8のように、モータ1のトルク指令値に対応するd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*を、従来公知の方法によって算出することができる。
【0059】
そして、d軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*と、回転数演算部5が演算したモータ1の回転数とが既知であれば、第1実施形態に係る
図1の駆動制御装置の電圧指令値推定部11のように、モータ1の電圧方程式を利用して、トルク指令値に対応するモータ1への電圧指令推定値Va(のピーク値)を特定することができる。
【0060】
このため、電圧指令値特定部12が、トルク指令値に対応するモータ1への電圧指令推定値Va(のピーク値)を特定するのに用いるテーブルは、例えば、上述したモータ1のトルク指令値に対応するd軸及びq軸の各電流目標値Id*,Iq*を算出する従来公知の方法と、モータ1の電圧方程式とを利用して、構築することができる。
【0061】
このように構成した本実施形態の駆動制御装置でも、第1実施形態の駆動制御装置と同様に、電圧指令値特定部12によるd軸及びq軸の各電圧指令推定値vd,vq(のピーク値)の特定や、これを用いた変調率算出部13による変調率Mの算出に、モータ1のd軸及びq軸の各実電流値Id,Iqから算出されるd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを用いなくて済むようになる。
【0062】
このため、補正量算出部15が補正量LCを算出するのに用いる変調率Mを一定値に安定させることができる。よって、過変調制御時に変調率Mに応じた補正量LCでd軸及びq軸の各電圧指令値vd*_bf,vq*_bfを補正する場合に、補正後のd軸及びq軸の各補正電圧値vd*,vq*が脈動してモータ1にトルク脈動が発生するのを抑制することができる。