特許第6678077号(P6678077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678077
(24)【登録日】2020年3月18日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20200330BHJP
   B63J 2/14 20060101ALI20200330BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20200330BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20200330BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20200330BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20200330BHJP
   F02M 31/16 20060101ALI20200330BHJP
   F02M 31/20 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B63B25/16 D
   B63J2/14 A
   B63H21/38 B
   B63H21/14
   F02M21/02 M
   F02B43/00 A
   F02M21/02 301A
   F02M31/16 B
   F02M31/20 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-134756(P2016-134756)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-2069(P2018-2069A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新村 暢大
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 英和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広崇
(72)【発明者】
【氏名】安藤 明洋
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】印藤 尚子
【審査官】 杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−540958(JP,A)
【文献】 特表2016−505784(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1441242(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0065639(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
B63H 21/14
B63H 21/38
B63J 2/14
F02B 43/00
F02M 21/02
F02M 31/16
F02M 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進用のガス消費器と、
液化天然ガスを貯留するタンクと、
前記タンク内で発生したボイルオフガスを前記ガス消費器へ導く、圧縮機が設けられた第1供給ラインと、
前記圧縮機の上流側で前記第1供給ラインに両端が接続された分岐ラインと、
前記タンク内から液化天然ガスを取り出し、その液化天然ガスが気化した気化ガスを前記ガス消費器または他のガス消費器へ導く第2供給ラインと、
前記第2供給ラインに流れる液化天然ガスと前記分岐ラインに流れるボイルオフガスとの間で熱交換を行う熱交換器と、
前記分岐ラインに流れるボイルオフガスの流量を調整する調整弁と、
所定条件下で、前記熱交換器から流出する液化天然ガスの温度が設定温度に保たれるように、前記調整弁を制御する制御装置と、
を備える、船舶。
【請求項2】
前記所定条件は、前記熱交換器がボイルオフガスによって液化天然ガスを前記設定温度まで加熱可能なときである、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記熱交換器から流出する液化天然ガスの温度を検出する温度計をさらに備え、
前記制御装置は、前記所定条件下で、前記温度計で検出される液化天然ガスの温度が前記設定温度に保たれるように、前記調整弁を制御する、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記分岐ラインは第1分岐ラインであり、
前記熱交換器の下流側で前記第2供給ラインに設けられた強制気化器と、
前記強制気化器の下流側で前記第2供給ラインに設けられた冷却器と、
前記冷却器の下流側で前記第2供給ラインに設けられた気液分離器と、
前記熱交換器と前記強制気化器の間で前記第2供給ラインから分岐して、前記冷却器と前記気液分離器の間または前記気液分離器の下流側で前記第2供給ラインにつながる第2分岐ラインと、
液化天然ガスの前記強制気化器への流入を許可する許可状態と液化天然ガスの前記強制気化器への流入を禁止する禁止状態との間で切り換えられる切換弁と、
をさらに備える、請求項1〜3の何れか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記熱交換器の上流側で前記第2供給ラインに流れる液化天然ガスの流量を検出する流量計をさらに備え、
前記制御装置は、前記流量計で検出される液化天然ガスの流量が設定流量よりも大きくなったときに前記切換弁を許可状態に切り換え、前記流量計で検出される液化天然ガスの流量が前記設定流量よりも小さくなったときに前記切換弁を禁止状態に切り換える、請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記切換弁は、前記第2供給ラインにおける前記第2分岐ラインの分岐点に設けられた三方弁であり、
前記第2分岐ラインは、前記冷却器と前記気液分離器の間で前記第2供給ラインにつながっている、請求項4または5に記載の船舶。
【請求項7】
前記気液分離器は第1気液分離器であり、
前記第2供給ラインにおける前記第2分岐ラインの分岐点に設けられた第2気液分離器と、
前記第2気液分離器と前記強制気化器の間で前記第2供給ラインから分岐して前記タンクにつながる返送ラインと、をさらに備え、
前記切換弁は、前記第2供給ラインにおける前記返送ラインの分岐点に設けられた三方弁であり、
前記第2分岐ラインは、前記第2気液分離器で液相と分離された気相を受け入れ、前記第1気液分離器の下流側で前記第2供給ラインにつながっている、請求項4または5に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進用のガス消費器を含む船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶の推進用のガス消費器には、レシプロエンジン、ガスタービンエンジン、ガス焚きボイラなどが用いられている。例えば、特許文献1には、図4に示すような船舶100が開示されている。この船舶100は、推進用のガス消費器として、液化天然ガスを貯留するタンク110内で発生するボイルオフガスを燃料ガスとする主レシプロエンジン130を含む。
【0003】
具体的に、特許文献1に開示された船舶100では、ボイルオフガスが第1主供給ライン120を通じてタンク110から主レシプロエンジン130へ導かれる。第1主供給ライン120には、高圧圧縮機121が設けられている。
【0004】
高圧圧縮機121の中間からは副供給ライン140が延びており、副供給ライン140は副レシプロエンジン150につながっている。副レシプロエンジン150は二元燃料エンジンであり、ボイルオフガスの発生量が主レシプロエンジン130のガス消費量よりも多い場合には、余剰ガスが副供給ライン140を通じて副レシプロエンジン150へ供給される。
【0005】
さらに、図4に示す船舶100では、ボイルオフガスの発生量が主レシプロエンジン130のガス消費量よりも少ない場合にも、主レシプロエンジン130へ十分な量の燃料ガスを供給するための構成が採用されている。具体的に、タンク110内にポンプ160が配置され、このポンプ160から第2主供給ライン170が延びている。第2主供給ライン170は、高圧圧縮機121の下流側で第1主供給ライン120につながっている。第2主供給ライン170には、液化天然ガスを強制的に気化する強制気化器171が設けられている。また、第1主供給ライン120は、連絡ライン180により、高圧圧縮機121の下流側で副供給ライン140と接続されている。つまり、第2主供給ライン170は、強制気化器171にて生成された気化ガスを主レシプロエンジン130と副レシプロエンジン150のどちらにも導くことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−145243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図4に示す船舶100では、強制気化器171で液化天然ガスが強制的に気化される、換言すれば液化天然ガス中のメタンだけでなく重質分も気化されるため、強制気化器171にて生成された気化ガスのメタン価がボイルオフガスに比べて低くなる。主レシプロエンジン130または副レシプロエンジン150の燃焼安定化の観点からは、液化天然ガスを気化させた場合でも、適正なメタン価の気化ガスを主レシプロエンジン130または副レシプロエンジン150へ供給することが望まれる。
【0008】
これを実現するには、図4に示す船舶100において、強制気化器171にて生成された気化ガスを冷却器で冷却して気化ガス中の重質分を凝縮させ、その凝縮した重質分を気液分離器で取り除くことが考えられる。
【0009】
ところで、強制気化器171は、一般的に蒸気等の高温流体を用いて液化天然ガスを加熱するものである。このような強制気化器171では、液化天然ガスの流量が多い場合は、安定したメタン価の気化ガスを主レシプロエンジン130または副レシプロエンジン150へ供給することができる。しかしながら、液化天然ガスの流量が少ない場合は、高温流体と液化天然ガスとの温度差が大きいために、冷却器から流出する気化ガスの温度が大きく変動する。従って、液化天然ガスの流量が少ない場合に、主レシプロエンジン130または副レシプロエンジン150へ供給される気化ガスのメタン価が不安定となる。
【0010】
そこで、本発明は、液化天然ガスの流量が少ない場合にガス消費器へ供給される気化ガスのメタン価を安定させることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の船舶は、推進用のガス消費器と、液化天然ガスを貯留するタンクと、前記タンク内で発生したボイルオフガスを前記ガス消費器へ導く、圧縮機が設けられた第1供給ラインと、前記圧縮機の上流側で前記第1供給ラインに両端が接続された分岐ラインと、前記タンク内から液化天然ガスを取り出し、その液化天然ガスが気化した気化ガスを前記ガス消費器または他のガス消費器へ導く第2供給ラインと、前記第2供給ラインに流れる液化天然ガスと前記分岐ラインに流れるボイルオフガスとの間で熱交換を行う熱交換器と、前記分岐ラインに流れるボイルオフガスの流量を調整する調整弁と、所定条件下で、前記熱交換器から流出する液化天然ガスの温度が設定温度に保たれるように、前記調整弁を制御する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
タンク内の温度成層等の影響で、ボイルオフガスの温度は液化天然ガスの温度よりも高い。従って、上記の構成によれば、液化天然ガスの流量が少ない場合にボイルオフガスの顕熱を利用して液化天然ガスを気化させることができる。つまり、強制気化器および冷却器自体が不必要な船舶、または液化天然ガスの流量が少ない場合に強制気化器および冷却器を稼働させる必要がない船舶を実現できる。しかも、ボイルオフガスと液化天然ガスとの温度差は比較的に小さいので、熱交換器から流出する液化天然ガスの温度が大きく変動することが抑制される。さらに、熱交換器から流出する液化天然ガスの温度は設定温度に保たれるので、メタン価がほぼ一定の気化ガスを推進用のガス消費器または他のガス消費器へ供給することができる。
【0013】
例えば、前記所定条件は、前記熱交換器がボイルオフガスによって液化天然ガスを前記設定温度まで加熱可能なときであってもよい。
【0014】
上記の船舶は、前記熱交換器から流出する液化天然ガスの温度を検出する温度計をさらに備え、前記制御装置は、前記所定条件下で、前記温度計で検出される液化天然ガスの温度が前記設定温度に保たれるように、前記調整弁を制御してもよい。第2供給ラインに設けられた流量計の検出値に基づいて、熱交換器から流出する液化天然ガスの温度が設定温度に保たれるように調整弁を制御することは可能であるが、温度計で検出される液化天然ガスの温度を設定温度と比較すれば、より正確な制御を行うことができる。
【0015】
前記分岐ラインは第1分岐ラインであり、上記の船舶は、前記熱交換器の下流側で前記第2供給ラインに設けられた強制気化器と、前記強制気化器の下流側で前記第2供給ラインに設けられた冷却器と、前記冷却器の下流側で前記第2供給ラインに設けられた気液分離器と、前記熱交換器と前記強制気化器の間で前記第2供給ラインから分岐して、前記冷却器と前記気液分離器の間または前記気液分離器の下流側で前記第2供給ラインにつながる第2分岐ラインと、液化天然ガスの前記強制気化器への流入を許可する許可状態と液化天然ガスの前記強制気化器への流入を禁止する禁止状態との間で切り換えられる切換弁と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、液化天然ガスの流量が少ない場合には、切換弁を禁止状態とすることで、強制気化器および冷却器を不使用とすることができる。一方、液化天然ガスの流量が多い場合には、切換弁を許可状態とすることで、強制気化器および冷却器を使用して、十分な量の気化ガスを推進用のガス消費器または他のガス消費器へ供給することができる。
【0016】
例えば、上記の船舶は、前記熱交換器の上流側で前記第2供給ラインに流れる液化天然ガスの流量を検出する流量計をさらに備え、前記制御装置は、前記流量計で検出される液化天然ガスの流量が設定流量よりも大きくなったときに前記切換弁を許可状態に切り換え、前記流量計で検出される液化天然ガスの流量が前記設定流量よりも小さくなったときに前記切換弁を禁止状態に切り換えてもよい。
【0017】
前記切換弁は、前記第2供給ラインにおける前記第2分岐ラインの分岐点に設けられた三方弁であり、前記第2分岐ラインは、前記冷却器と前記気液分離器の間で前記第2供給ラインにつながっていてもよい。この構成によれば、切換弁が禁止状態にあるときには、冷却器の下流側に設けられる気液分離器を利用して、熱交換器を通過することによって気液二相状態となった液化天然ガス中の液相(重質分)を取り除くことができる。
【0018】
前記気液分離器は第1気液分離器であり、上記の船舶は、前記第2供給ラインにおける前記第2分岐ラインの分岐点に設けられた第2気液分離器と、前記第2気液分離器と前記強制気化器の間で前記第2供給ラインから分岐して前記タンクにつながる返送ラインと、をさらに備え、前記切換弁は、前記第2供給ラインにおける前記返送ラインの分岐点に設けられた三方弁であり、前記第2分岐ラインは、前記第2気液分離器で液相と分離された気相を受け入れ、前記第1気液分離器の下流側で前記第2供給ラインにつながっていてもよい。この構成によれば、切換弁が禁止状態にあるときには、熱交換器を通過することによって気液二相状態となった液化天然ガス中の液相(重質分)を返送ラインを通じてタンクへ戻すことができ、切換弁が許可状態にあるときには、強制気化器へ気液二相状態の液化天然ガスが流入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液化天然ガスの流量が少ない場合にガス消費器へ供給される気化ガスのメタン価を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る船舶の概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る船舶の概略構成図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る船舶の概略構成図である。
図4】従来の船舶の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る船舶1Aを示す。この船舶1Aは、液化天然ガス(以下、LNGという)を貯留するタンク11と、推進用のガス消費器であるガスエンジン13を含む。ただし、推進用のガス消費器は、例えばガス焚きボイラであってもよい。
【0022】
図例では、タンク11が1つだけ設けられているが、タンク11は複数設けられてもよい。また、図例では、ガスエンジン13が1つだけ設けられているが、ガスエンジン13は複数設けられてもよい。
【0023】
ガスエンジン13は、スクリュープロペラ(図示せず)を直接的に回転駆動してもよいし(機械推進)、スクリュープロペラを発電機およびモータを介して回転駆動してもよい(電気推進)。
【0024】
本実施形態では、ガスエンジン13が、燃料ガス噴射圧が中圧または高圧のレシプロエンジンである。ガスエンジン13は、燃料ガスのみを燃焼させるガス専焼エンジンであってもよいし、燃料ガスと燃料油の一方または双方を燃焼させる二元燃料エンジンであってもよい。ただし、ガスエンジン13は、ガスタービンエンジンであってもよい。
【0025】
船舶1Aは、タンク11内で発生したボイルオフガス(以下、BOGという)をガスエンジン13へ導く第1供給ライン2と、タンク11内からLNGを取り出し、そのLNGが気化した気化ガス(以下、VGという)をガスエンジン13へ導く第2供給ライン3を含む。
【0026】
本実施形態では、第2供給ライン3が、BOGの発生量がガスエンジン13のガス消費量よりも少ない場合(例えば、ガスエンジン13の高負荷時および超高負荷時)に使用される。つまり、ガスエンジン13の中負荷時および低負荷時は、第2供給ライン3は使用されない。なお、ガスエンジン13の低負荷時には、BOGの発生量がガスエンジン13のガス消費量よりも多くなる場合がある。この場合には、余剰ガスが、再液化されてタンク11へ戻されてもよいし、図略の船内電源用のガスエンジンに供給されてもよいし、ガス処理装置(例えば、GCU)で処理されてもよい。
【0027】
タンク11は、第1供給ライン2によりガスエンジン13と接続されている。第1供給ライン2には、圧縮機21が設けられている。圧縮機21は、BOGを中圧または高圧に圧縮する。ただし、圧縮機21は、例えばガスエンジン13の燃料ガス噴射圧が低圧の場合は、低圧圧縮機であってもよい。
【0028】
タンク11内には、ポンプ12が配置されている。ポンプ12は、第2供給ライン3により第1供給ライン2と接続されている。本実施形態では、第2供給ライン3が、圧縮機21の上流側で第1供給ライン2につながっている。ただし、例えば、第2供給ライン3に圧縮機が設けられる場合は、第2供給ライン3が圧縮機21の下流側で第1供給ライン2につながってもよい。
【0029】
第2供給ライン3には、上流側から順に、強制気化器31、冷却器32および気液分離器33が設けられている。強制気化器31は、ポンプ12から吐出されるLNGを強制的に気化してVGを生成する。冷却器32は、強制気化器171にて生成されたVGを冷却してVG中の重質分(エタン、プロパン、ブタン等)を凝縮させる。気液分離器33は、VG中から、凝縮した重質分を取り除く。気液分離器33によって取り除かれた重質分は、タンク11へ戻される。
【0030】
さらに、本実施形態では、第2供給ライン3に流れるLNGをBOGを利用して気化させるための構成が採用されている。タンク11内の温度成層等の影響で、BOGの温度はLNGの温度よりも高い。例えば、タンク11内では、BOGの温度は−90℃であり、LNGの温度は−162℃である。一方、タンク11から抜き出されるLNGの温度は、例えば、約−150℃である。LNG中のメタンは、ポンプ12の加圧によって、約−150℃まで温度が上昇しても液体のままである。
【0031】
具体的に、第1供給ライン2には、圧縮機21の上流側の一部をバイパスするように第1分岐ライン41が接続されている。換言すれば、第1分岐ライン41の両端は、圧縮機21の上流側で第1供給ライン2に接続されている。さらに、船舶1Aには、強制気化器31の上流側で第2供給ライン3に流れるLNGと第1分岐ライン41に流れるBOGとの間で熱交換を行う熱交換器5が設けられている。
【0032】
第1分岐ライン41に流れるBOGの流量は、調整弁6により調整される。本実施形態では、調整弁6が、第1供給ライン2における第1分岐ライン4の分岐点(第1分岐ライン4の上流端)に設けられた分配弁である。つまり、調整弁6は、熱交換器5を経由するBOG(第1分岐ライン41に流れるBOG)と熱交換器5を経由しないBOG(調整弁6を通過して第1供給ライン2に流れるBOG)の比率を、0%:100%〜100%:0%の間で任意に変更できる。
【0033】
ただし、図示は省略するが、調整弁6は、第1分岐ライン4の両端の間で第1供給ライン2に設けられた流量制御弁と、第1分岐ライン41に設けられた流量制御弁という一対の流量制御弁で構成されてもよい。あるいは、調整弁6は、第1分岐ライン41に設けられた流量制御弁のみで構成されてもよい。
【0034】
調整弁6は、制御装置8により制御される。第2供給ライン3に流れるLNGの流量が少ない場合は、LNGの流量が多くなるにつれて、第1分岐ライン41に流れるBOGの流量を多くすれば、熱交換器5から流出するLNGの温度Tを一定とすることが可能である。制御装置8は、所定条件下で、熱交換器5から流出するLNGの温度Tが設定温度Tsに保たれるように、調整弁6を制御する。例えば、所定条件は、熱交換器5がBOGによってLNGを設定温度Tsまで加熱可能なとき、換言すれば、第2供給ライン3に流れるLNGの流量が少ないときである。本実施形態では、所定条件は、後述する流量計81で検出されるLNGの流量Qが設定流量Qsよりも小さいときである。
【0035】
設定温度Tsは、LNGの温度とBOGの温度の間で任意に設定可能である。例えば、設定温度Tsは、LNG中のメタンが気化するものの重質分の多くが液体のまま維持される温度である(例えば、−120℃)。
【0036】
本実施形態では、第2供給ライン3に、熱交換器5から流出するLNGの温度Tを検出する温度計82が設けられている。そして、制御装置8は、所定条件下で、温度計82で検出されるLNGの温度Tが設定温度Tsに保たれるように、調整弁6を制御する。
【0037】
さらに、第2供給ライン3には、強制気化器31および冷却器32をバイパスするように第2分岐ライン42が接続されている。つまり、第2分岐ライン42は、熱交換器5と強制気化器31の間で第2供給ライン3から分岐して、冷却器32と気液分離器33の間で第2供給ライン3につながっている。
【0038】
第2供給ライン3における第2分岐ライン42の分岐点には、三方弁7Aが設けられている。三方弁7Aは、第2供給ライン3の三方弁7Aよりも上流側部分を三方弁7Aよりも下流側部分と連通させる第1状態と、第2供給ライン3の三方弁7Aよりも上流側部分を第2分岐ライン42と連通させる第2状態との間で切り換えられる。換言すれば、第1状態は、LNGの強制気化器31への流入を許可する許可状態であり、第2状態は、LNGの強制気化器31への流入を禁止する禁止状態である。すなわち、三方弁7Aは、本発明の切換弁に相当する。
【0039】
三方弁7Aは、制御装置8により制御される。第2供給ライン3には、熱交換器5の上流側で第2供給ライン3に流れるLNGの流量Qを検出する流量計81が設けられている。制御装置8は、流量計81で検出されるLNGの流量Qが設定流量Qsよりも大きくなったときに三方弁7Aを第1状態(許可状態)に切り換え、流量計81で検出されるLNGの流量Qが設定流量Qsよりも小さくなったときに三方弁7Aを第2状態(禁止状態)に切り換える。
【0040】
設定流量Qsは、例えば、LNGの流量が熱交換器5の処理能力を上回り、熱交換器5から流出するLNGの温度Tを設定温度Tsに保てなくなる限界流量である。ただし、設定流量Qsは、限界流量に対して所定割合だけ小さな値であってもよい。
【0041】
さらに、制御装置8は、流量計81で検出されるLNGの流量Qが設定流量Qsよりも大きくなったときは、BOGの全量が調整弁6を通過して第1供給ライン2に流れるように、換言すれば第1分岐ライン41にBOGが流れないように調整弁6を制御する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の船舶1Aでは、第2供給ライン3に流れるLNGと第1分岐ライン41に流れるBOGとの間で熱交換を行う熱交換器5が設けられている。このため、LNGの流量が少ない場合にBOGの顕熱を利用してLNGを気化させることができる。つまり、LNGの流量が少ない場合には、強制気化器31および冷却器32を稼働させる必要がない。しかも、BOGとLNGとの温度差は比較的に小さいので、熱交換器5から流出するLNGの温度が大きく変動することが抑制される。さらに、調整弁6の制御により、熱交換器5から流出するLNGの温度Tは設定温度Tsに保たれるので、メタン価がほぼ一定のVGをガスエンジン13へ供給することができる。
【0043】
また、本実施形態では、三方弁7Aおよび第2分岐ライン42が設けられているので、LNGの流量が少ない場合には、三方弁7Aを第2状態(第2分岐ライン42にLNGが流れる状態)とすることで、強制気化器31および冷却器32を不使用とすることができる。一方、LNGの流量が多い場合には、三方弁7Aを第1状態(第2分岐ライン42にLNGが流れない状態)とすることで、強制気化器31および冷却器32を使用して、十分な量のVGをガスエンジン13へ供給することができる。
【0044】
さらに、第2分岐ライン42は冷却器32と気液分離器33の間で第2供給ライン3につながっているので、三方弁7Aが第2状態にあるときには、冷却器32の下流側に設けられる気液分離器33を利用して、熱交換器5を通過することによって気液二相状態となったLNG中の液相(重質分)を取り除くことができる。
【0045】
<変形例>
本発明の切換弁は、必ずしも三方弁7Aである必要はなく、第2分岐ライン42の分岐点と強制気化器31の間で第2供給ライン3に設けられた開閉弁と、第2分岐ライン42に設けられた開閉弁という一対の開閉弁で構成されてもよい。
【0046】
また、三方弁7Aおよび第2分岐ライン42は省略されてもよい。この場合には、第2供給ライン3に流れるLNGの流量が少ない場合には、強制気化器31および冷却器32の稼働を停止すればよい。
【0047】
温度計82を省略し、第2供給ライン3に設けられた流量計81の検出値に基づいて、熱交換器5から流出するLNGの温度Tが設定温度Tsに保たれるように調整弁6を制御することは可能である。しかしながら、温度計82で検出されるLNGの温度Tを設定温度Tsと比較すれば、より正確な制御を行うことができる。この変形例は、後述する第2実施形態でも適用可能である。なお、流量計81の検出値に基づいて調整弁6を制御する場合は、流量計81の検出値等から、熱交換器5から流出するLNGの温度Tを設定温度Tsに保つのに必要なBOG流量を算出することができる。従って、第1分岐ライン41にも流量計を設け、この流量計の検出値が算出した必要流量となるように調整弁6を制御してもよい。
【0048】
(第2実施形態)
図2に、本発明の第2実施形態に係る船舶1Bを示す。なお、本実施形態および後述する第3実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0049】
本実施形態では、気液分離器33が第1気液分離器33であり、第2供給ライン3における第2分岐ライン42の分岐点に第2気液分離器43が設けられている。調整弁6は、第1実施形態と同様に制御される。第2気液分離器43は、第2供給ライン3に流れるLNGの量が少ない場合に、熱交換器5を通過することによって気液二相状態となったLNGを液相と気相に分離する。一方、第2供給ライン3に流れるLNGの量が多い場合は、第1分岐ライン41にBOGが流れず、熱交換器5から流出するLNGはほぼ100%液相であるため、第2気液分離器43はあまり機能しない。
【0050】
第2分岐ライン42は、第2気液分離器43で液相と分離された気相を受け入れる。第2分岐ライン42は、第1気液分離器33の下流側で第2供給ライン3につながっている。
【0051】
さらに、本実施形態では、返送ライン44が設けられている。返送ライン44は、第2気液分離器43と強制気化器31の間で第2供給ライン3から分岐してタンク11につながっている。
【0052】
第2供給ライン3における返送ライン44の分岐点には、三方弁7Bが設けられている。三方弁7Bは、第2供給ライン3の三方弁7Bよりも上流側部分を三方弁7Bよりも下流側部分と連通させる第1状態と、第2供給ライン3の三方弁7Bよりも上流側部分を返送ライン44と連通させる第2状態との間で切り換えられる。換言すれば、第1状態は、LNGの強制気化器31への流入を許可する許可状態であり、第2状態は、LNGの強制気化器31への流入を禁止する禁止状態である。すなわち、三方弁7Bは、本発明の切換弁に相当する。
【0053】
三方弁7Bは、制御装置8により制御される。制御装置8は、流量計81で検出されるLNGの流量Qが設定流量Qsよりも大きくなったときに三方弁7Bを第1状態(許可状態)に切り換え、流量計81で検出されるLNGの流量Qが設定流量Qsよりも小さくなったときに三方弁7Bを第2状態(禁止状態)に切り換える。
【0054】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、調整弁6の制御によって、メタン価がほぼ一定のVGをガスエンジン13へ供給することができる。しかも、本実施形態では、三方弁7Bおよび第2分岐ライン42が設けられているので、LNGの流量が少ない場合には、三方弁7Bを第2状態(返送ライン44にLNGが流れる状態)とすることで、強制気化器31および冷却器32を不使用とすることができる。一方、LNGの流量が多い場合には、三方弁7Bを第1状態(返送ライン44にLNGが流れない状態)とすることで、強制気化器31および冷却器32を使用して、十分な量のVGをガスエンジン13へ供給することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、三方弁7Bが第2状態にあるときには、熱交換器5を通過することによって気液二相状態となったLNG中の液相(重質分)を返送ライン44を通じてタンク11へ戻すことができ、三方弁7Bが第1状態にあるときには、強制気化器31へ気液二相状態のLNGが流入することを防止することができる。
【0056】
<変形例>
本発明の切換弁は、必ずしも三方弁7Bである必要はなく、返送ライン44の分岐点と強制気化器31の間で第2供給ライン3に設けられた開閉弁と、返送ライン44に設けられた開閉弁という一対の開閉弁で構成されてもよい。
【0057】
また、三方弁7B、返送ライン44および第2分岐ライン42は省略されてもよい。この場合には、第2供給ライン3に流れるLNGの流量が少ない場合には、強制気化器31および冷却器32の稼働を停止すればよい。
【0058】
(第3実施形態)
図3に、本発明の第3実施形態に係る船舶1Cを示す。本実施形態では、ガスエンジン13が主ガスエンジン13であり、第2供給ライン3が、主ガスエンジン13ではなく船内電源用のガス消費器である副ガスエンジン14へVGを導く。図例では、副ガスエンジン14が1つだけ設けられているが、副ガスエンジン14は複数設けられてもよい。
【0059】
副ガスエンジン14は、燃料ガス噴射圧が中圧または低圧のレシプロエンジンであり、発電機(図示せず)と連結されている。副ガスエンジン14は、燃料ガスのみを燃焼させるガス専焼エンジンであってもよいし、燃料ガスと燃料油の一方または双方を燃焼させる二元燃料エンジンであってもよい。
【0060】
第2供給ライン3には、気液分離器33の下流側に加熱器34が設けられている。加熱器34は、気液分離器33を通過したVGを副ガスエンジン14への供給に適した温度に加熱する。
【0061】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の作用により、メタン価がほぼ一定のVGを副ガスエンジン14へ供給することができる。その他の、三方弁7Aおよび第2分岐ライン42等による効果は、第1実施形態と同様である。
【0062】
<変形例>
本実施形態と同様に、第2実施形態の第2供給ライン3が副ガスエンジン14へVGを導いてもよい。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明は上述した第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、ガスエンジン13の定格出力によっては、ガスエンジン13の超高負荷時のみに第2供給ライン3を使用して、少量のLNGを気化させるだけでよい場合がある。この場合には、第2供給ライン3に強制気化器31および冷却器32が設けられなくてもよい。つまり、熱交換器5があれば、強制気化器31および冷却器32自体が不必要になる場合がある。
【0065】
また、熱交換器5でLNGの加熱に用いる流体としては、BOG以外にも、例えば船内で生成される窒素(N2)を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1A〜1C 船舶
13 ガスエンジン、主ガスエンジン(ガス消費器)
14 副ガスエンジン(ガス消費器)
2 第1供給ライン
21 圧縮機
3 第2供給ライン
31 強制気化器
32 冷却器
33 気液分離器、第1気液分離器
41 第1分岐ライン
42 第2分岐ライン
43 第2気液分離器
44 返送ライン
5 熱交換器
6 調整弁
7A,7B 三方弁(切換弁)
8 制御装置
81 流量計
82 温度計
図1
図2
図3
図4