(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テンションローラの軸方向の傾きによって、前記媒体に、前記テンションローラの軸方向の前記一方の側に変位するように力が加わることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の媒体搬送装置。
前記テンションローラは、前記所定の方向の揺動軸を中心として揺動可能な支持体によって支持されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の媒体搬送装置。
前記媒体ホルダは、前記媒体に、前記搬送部による搬送方向とは反対方向にバックテンションを加える駆動部を有することを特徴とする請求項8または9に記載の媒体搬送装置。
前記搬送部による搬送方向において前記搬送部よりも下流側に、前記媒体を切断する切断部を備えたことを特徴とする請求項8から10までの何れか1項に記載の媒体搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<画像形成装置の構成>
以下、本発明の実施の形態の画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、連続した媒体P(例えばロール紙)を搬送する媒体搬送装置10と、媒体搬送装置10から搬送された媒体Pに画像を形成する画像形成部11とを備える。まず、画像形成部11の構成について説明する。
【0012】
<画像形成部の構成>
画像形成部11は、電子写真法により媒体Pにカラー画像を形成するものである。
図1に示す画像形成部11は中間転写方式を用いているが、中間転写方式に限定されるものではなく、直接転写方式を用いてもよい(
図14参照)。
【0013】
画像形成部11は、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの各トナーおよび特色トナー(ここでは白色トナー)を用いてカラー画像を形成するよう構成されている。なお、画像形成部11は、カラー画像に限らず、単色の画像(モノクロ画像)を形成するものでもよい。また、特色トナーを用いなくてもよい。
【0014】
画像形成部11は、媒体搬送装置10から搬送された媒体Pを受け入れて一定のタイミングで送り出すタイミング調整部5と、画像データに基づいてトナー像を形成するプロセスユニット(画像形成ユニット)60K,60Y,60M,60C,60Wと、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wが形成したトナー像を中間転写ベルト72(中間転写体)を介して媒体Pに転写する転写ユニット7と、媒体Pに転写されたトナー像を媒体Pに定着する定着部8と、トナー像が定着した媒体Pを排出する排出部9と、これらの構成要素を収納するハウジング101とを備える。
【0015】
画像形成部11内には、媒体搬送装置10から搬送された媒体Pが搬送される搬送路50が形成されている。ここでは、搬送路50は水平に、図中右から左に延在している。タイミング調整部5は、搬送路50に沿って上流側から順に、3対の送りローラ51,52,53を有する。送りローラ51,52,53は、共通の送りモータ122(
図9)によって互いに同じ速度且つ同じタイミングで回転する。タイミング調整部5は、また、搬送路50に沿って搬送される媒体Pの先端の通過を検知する媒体位置センサS3,S4を有する。媒体位置センサS3,S4は、後述するように、媒体Pの先端位置と、中間転写ベルト72上のトナー像の先端位置とを合わせるために用いられる。
【0016】
図2は、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wの構成を示す図である。プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンおよび特色トナーを用いてトナー像(現像剤像)を形成するものであり、後述する中間転写ベルト72の移動方向に沿って、ここでは図中左から右に並んで配列されている。露光装置としてのLEDヘッド68K,68Y,68M,68C,68Wは、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wの各感光体ドラム(後述)の上側に対向するように配置されている。
【0017】
プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wは、トナーを除いて共通の構成を有するため、以下ではプロセスユニット60Kの構成について説明する。
【0018】
プロセスユニット60Kは、像担持体としての感光体ドラム61Kと、帯電部材としての帯電ローラ62Kと、現像剤担持体としての現像ローラ63Kと、供給部材としての供給ローラ64Kと、現像剤規制部材としての現像ブレード65Kと、クリーニング部材66Kと、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ67Kとを備える。
【0019】
感光体ドラム61Kは、アルミニウム等の導電性支持体の表面に感光層(電荷発生層および電荷輸送層)を積層したものであり、ドラムモータ125(
図9)により図中反時計回りに回転する。感光体ドラム61Kの表面の感光層は、LEDヘッド68Kによって露光され、静電潜像が形成される。
【0020】
帯電ローラ62Kは、例えば、金属シャフトと半導電性エピクロロヒドリンゴム層とで構成されている。帯電ローラ62Kは、感光体ドラム61Kの表面に当接するように配置されており、感光体ドラム61Kの回転に追従して回転する。帯電ローラ62Kは、帯電電圧発生部131(
図9)により帯電電圧を印加され、感光体ドラム61Kの表面を一様に帯電させる。
【0021】
現像ローラ63Kは、例えば、金属シャフトと半導電性ウレタンゴム層とで構成されており、感光体ドラム61Kの表面に当接するように配置されている。現像ローラ63Kは、ドラムモータ125(
図9)からの回転伝達により、感光体ドラム61Kの回転方向とは反対方向に(すなわち当接部での表面の移動方向が同方向となるように)回転する。現像ローラ63Kは、現像電圧発生部132(
図9)により現像電圧を印加され、感光体ドラム61Kの表面の静電潜像をトナーにより現像する。
【0022】
供給ローラ64Kは、例えば、金属シャフトと半導電性発泡シリコンスポンジ層とで構成されており、現像ローラ63Kに当接するかまたは一定間隔をあけて配置されている。供給ローラ64Kは、ドラムモータ125(
図9)からの回転伝達により、現像ローラ63Kの回転方向と同方向に回転する。供給ローラ64Kは、供給電圧発生部133(
図9)により供給電圧を印加され、現像ローラ63Kにトナーを供給する。
【0023】
現像ブレード65Kは、例えばステンレス製のブレードであり、現像ローラ63Kの表面に当接するように配置されている。現像ブレード65Kは、現像ローラ63Kの表面のトナー層の厚さを規制する。
【0024】
クリーニング部材66Kは、例えばウレタンゴム製のローラまたはブレードであり、感光体ドラム61Kの表面に当接するように配置されている。クリーニング部材66Kは、感光体ドラム61Kの表面に残る残留トナーを除去する。
【0025】
トナーカートリッジ67Kは、プロセスユニット60Kの上部に着脱可能に取り付けられている。トナーカートリッジ67Kは、トナーを収容し、現像ローラ63Kおよび供給ローラ64Kに供給する。トナーカートリッジ67K,67Y,67M,67C,67Wは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンおよび白色のトナーをそれぞれ収容している。なお、トナーカートリッジ67Wには、白色トナーに限らず、例えばクリアトナー、透明トナー等を収容してもよい。
【0026】
図1に戻り、転写ユニット7は、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの下側に当接するように配置された1次転写体としての転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wを有する。転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wは、例えば、金属シャフトと発泡ゴム層とで構成されている。
【0027】
転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wは、1次転写電圧発生部134(
図9)により1次転写電圧を印加される。この1次転写電圧により、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの表面の各色のトナー像は、次に説明する中間転写ベルト72に転写される。
【0028】
中間転写ベルト72は、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wと転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wとの間を通過するように設けられている。中間転写ベルト72は、半導電性プラスチック等により形成された無端状のベルトである。
【0029】
中間転写ベルト72は、その内周側に配置されたベルト駆動ローラ74、従動ローラ73および2次転写バックアップローラ76に張架されている。ベルト駆動ローラ74は、ベルト駆動モータ123(
図9)により図中時計回りに回転し、中間転写ベルト72を矢印で示す方向に走行させる。従動ローラ73は、中間転写ベルト72に一定の張力を付与する。なお、中間転写ベルト72の走行経路に沿って、中間転写ベルト72の移動を案内する複数の案内ローラ77が配置されている。
【0030】
2次転写バックアップローラ76に中間転写ベルト72を挟んで対向するように、2次転写体としての2次転写ローラ75が配置されている。2次転写ローラ75と2次転写バックアップローラ76とにより、2次転写部70が形成される。2次転写部70は、画像形成部11内の搬送路50において、上述したタイミング調整部5の下流側に位置している。
【0031】
2次転写部70では、タイミング調整部5から送り出された媒体Pと中間転写ベルト72とが重ね合される。2次転写ローラ75には、2次転写電圧発生部135(
図9)により2次転写電圧が印加される。この2次転写電圧により、中間転写ベルト72の表面のトナー像は、媒体Pに転写される。
【0032】
搬送路50に沿って2次転写部70の下流側(図中左側)には、定着部8が配置されている。定着部8は、ヒートローラ81および加圧ローラ82を備える。
【0033】
ヒートローラ81は、例えば、アルミニウムからなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被覆したものである。ヒートローラ81の芯金内には、例えばハロゲンランプなどのヒータ115(
図9)が設けられている。ヒートローラ81は、定着モータ124(
図9)によって回転する。
【0034】
加圧ローラ82は、例えば、アルミニウムの芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFAチューブを被覆したものである。加圧ローラ82は、ヒートローラ81との間にニップ(定着ニップ)が形成されるように、ヒートローラ81に対して押圧されている。定着部8には、また、ヒートローラ81の表面温度を検出する温度検出部としてのサーミスタ116(
図9)が設けられている。
【0035】
搬送路50に沿って定着部8の下流側(図中左側)には、トナー像が定着した媒体Pを画像形成部11外に排出する排出部9が配置されている。排出部9は、2対の排出ローラ91,92を備える。これら排出ローラ91,92は、上述した定着モータ124(
図9)によって回転する。排出部9は、また、媒体Pが排出位置に到達したことを検知するための排出センサS5を備える。
【0036】
以下の説明では、上述した各感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの回転軸の方向(
図1の紙面に直交する方向)を、X方向とする。より具体的には、
図1における紙面の手前側を−X方向とし、奥側を+X方向とする。
【0037】
プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wの各ローラ、転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71W、ベルト駆動ローラ74、従動ローラ73、2次転写ローラ75および2次転写バックアップローラ76の回転軸は、X方向と平行である。同様に、タイミング調整部5、定着部8および排出部9の各ローラの回転軸も、X方向と平行である。
【0038】
X方向に直交する方向であって、2次転写部70(2次転写ローラ75および2次転写バックアップローラ76)を通過するときの媒体Pの移動方向を、Y方向とする。より具体的には、2次転写部70を通過するときの媒体Pの移動方向(図中右から左に向かう方向)を+Y方向とし、その反対方向を−Y方向とする。
【0039】
また、X方向およびY方向の両方向に直交する方向(鉛直方向)を、Z方向とする。より具体的には、上方を+Z方向とし、下方を−Z方向とする。
【0040】
<媒体搬送装置>
次に、媒体搬送装置10について説明する。
図3は、媒体搬送装置10の構成を示す模式図である。媒体搬送装置10は、ロール状に巻かれた媒体Pを保持する媒体保持部としての媒体ホルダ2と、媒体ホルダ2から媒体Pを引き出して搬送する媒体供給部としての給紙部3と、給紙部3によって搬送される媒体Pを切断する切断部4とを備える。媒体Pは、例えば幅が130mmの連続紙である。
【0041】
給紙部3および切断部4は、画像形成部11のハウジング101に取り付けられたハウジング102内に収容されている。また、媒体ホルダ2は、ハウジング102に取り付けられたアーム103に保持されている。
【0042】
図4は、媒体搬送装置10の媒体ホルダ2および給紙部3を示す斜視図である。媒体ホルダ2は、ロール状に巻かれた媒体Pを保持する巻芯であるホルダ軸(保持軸)21を有する。ホルダ軸21の軸方向は、X方向と平行である。ホルダ軸21の中心をX方向に貫通するように、回転軸20が設けられている。回転軸20には、媒体Pの幅方向(X方向)両側をガイドする一対の押え板22a,22bが取り付けられている。
【0043】
一対の押え板22a,22bのうち、−X側の押え板22aは回転軸20から取り外し可能に構成されている。ロール状の媒体Pをホルダ軸21に取り付ける際には、押え板22aを回転軸20から取り外す。押え板22aの−X側には、押え板22aを回転軸20に固定するためのボビン23が取り付けられている。ボビン23には、ホルダ軸21に装着された媒体Pの弛みを取るために回転操作されるノブ24と、ボビン23を回転軸20に対してロックするために操作されるつまみ25とが設けられている。
【0044】
図5は、媒体ホルダ2において回転軸20を駆動する駆動部200の基本構成を示す斜視図である。
図6は、
図5の一部を拡大して示す斜視図である。媒体ホルダ2は、給紙部3の搬送ローラ32(後述)によってホルダ軸21から引き出されて搬送される媒体Pに対して、搬送方向と反対方向に張力(バックテンション)を加えるように構成されている。
【0045】
図6に示すように、駆動部200は、アーム103内に配置された駆動源としてのホルダ駆動モータ201と、2段ギア203と、伝達ギア204と、トルクリミッタ205と、伝達ギア206と、2段ギア207と、伝達ギア208と、シャフトギア209とを有する。2段ギア203は、同軸の大径ギア203aと小径ギア203bとを有する。2段ギア207は、同軸の大径ギア207aと小径ギア207bとを有する。
【0046】
ホルダ駆動モータ201の出力軸にはモータギア202が取り付けられており、モータギア202には、2段ギア203の大径ギア203aが噛み合っている。2段ギア203の小径ギア203bには、伝達ギア204が噛み合っている。伝達ギア204は、トルクリミッタ205を介して、伝達ギア206に連結されている。伝達ギア206には、2段ギア207の大径ギア207aが噛み合い、小径ギア207bには伝達ギア208が噛み合っている。伝達ギア208には、回転軸20に固定されたシャフトギア209が噛み合っている。
【0047】
これにより、ホルダ駆動モータ201の駆動力は、トルクリミッタ205および各ギアを介して回転軸20に伝達され、回転軸20がホルダ軸21と共に回転する。ホルダ駆動モータ201の回転方向は、ホルダ軸21に媒体Pを巻き付ける方向(矢印Dで示す方向)である。また、搬送ローラ32による媒体Pの搬送が開始されると、トルクリミッタ205に滑りが生じる。このトルクリミッタ205の滑りにより、ホルダ軸21は、媒体Pにバックテンションを付与しながら、搬送される媒体Pに追従して回転する。
【0048】
図4に示すように、給紙部3は、媒体Pを媒体ホルダ2から送り出す一対の搬送ローラ32を有している。搬送ローラ32は、上部ローラ32aと下部ローラ32bとからなり、いずれの軸方向もX方向と平行である。下部ローラ32bは、搬送モータ120(
図9)によって回転する。上部ローラ32aは、下部ローラ32bとの間でニップを形成し、下部ローラ32bに追従して回転する。
【0049】
ホルダ軸21と搬送ローラ32との間には、媒体Pに張力を付与するテンションローラ31が配置されている。媒体Pに効果的に張力を付与するためには、テンションローラ31は、ホルダ軸21の最上部と搬送ローラ32のニップ(上部ローラ32aと下部ローラ32bとの間のニップ)とを結ぶ平面よりも下方に配置されていることが望ましい。
【0050】
テンションローラ31はシャフト30を中心として回転可能に支持されており、シャフト30の両端は揺動可能な一対のレバー(揺動支持体)34によって保持されている。各レバー34は、X方向と平行な揺動軸35を中心として揺動可能に構成されている。揺動軸35は、搬送ローラ32の−Y側に隣接して配置され、ハウジング102内のサイドフレーム104(
図3)に支持されている。
【0051】
一対のレバー34が揺動軸35を中心として揺動する際には、両レバー34が互いに一体となって揺動する。また、レバー34には、当該レバー34の揺動角度を規制するためのカム(揺動規制部)39が取り付けられている。カム39は、レバー34が上方に所定の角度まで揺動したときに、給紙部3内に配置された当接部材105(
図7)に当接する当接部39a(
図7)を有している。
【0052】
また、ハウジング102内のサイドフレーム104には、レバー34が下方(媒体Pにかかる張力が大きくなる方向)に所定の角度まで揺動したときに、レバー34に当接するストッパ106(
図3)が配置されている。このようにして、一対のレバー34の揺動範囲は一定の範囲に規制されている。なお、レバー34の揺動範囲は、他の方法で規制してもよい。
【0053】
各レバー34には、テンションローラ31のシャフト30の各端部が取り付けられる取付け穴34aが形成されている。各レバー34における取付け穴34aの配置は、テンションローラ31の軸方向がX方向に対して傾くように(斜めになるように)設定されている。
【0054】
図7は、テンションローラ31の傾きを説明するための模式図である。ここでは、テンションローラ31は、その−X方向の端部における回転中心301が、+X方向の端部における回転中心302に対して、+Y方向および−Z方向に変位するように傾いて配置されている。
【0055】
テンションローラ31の回転中心301,302のY方向のずれ量(変位量)は、例えば0.8mmであり、Z方向のずれ量は、例えば0.6mmである。また、変位方向(矢印Eで示す方向)のずれ量は、1.0mmである。なお、テンションローラ31の長さは例えば180mmであり、傾き角度は0.25度である。
【0056】
このようなテンションローラ31の傾きのため、ホルダ軸21から搬送ローラ32までの媒体Pの長さは、媒体Pの−X方向の端部における長さ303の方が、+X方向の端部における長さ304よりも長い。長さ303,304の差は、例えば1.5mmである。そのため、媒体Pの幅方向両端で張力の差が生じ、この張力差により、媒体Pに+X方向に変位するように力が作用する。
【0057】
なお、テンションローラ31の傾き、および媒体Pの両端部での長さ303,304の差は、ここで説明した数値に限定されるものではなく、各ローラ(搬送ローラ32、テンションローラ31およびホルダ軸21)の位置関係、搬送ローラ32の搬送力、ホルダ軸21によって付与されるバックテンションおよび媒体Pの種類等に応じて、適宜決定することができる。
【0058】
図8(A)は、テンションローラ31とその周辺の構成を示す断面図である。
図8(A)に示すように、テンションローラ31は、中空の円筒形状を有している。テンションローラ31の軸方向の一端(+X側)には、フランジ36が固定されている。テンションローラ31の軸方向の他端(−X側)には、樹脂性の環状部材38が固定されている。
【0059】
フランジ36は、軸受37により、シャフト30に回転可能に取り付けられている。また、環状部材38は、シャフト30が挿通された穴38aを有し、穴38aとシャフト30との滑り接触により、シャフト30に対して回転可能となっている。これにより、フランジ36および環状部材38に固定されたテンションローラ31は、シャフト30に対して回転可能となる。
【0060】
図8(B)は、テンションローラ31、フランジ36および環状部材38を示す斜視図である。フランジ36は、その径方向中央部にテンションローラ31と略同径の円筒部36aを有している。この円筒部36aの端面に、テンションローラ31の+X方向の端面が固定される。
【0061】
フランジ36のテンションローラ31側の表面は、テンションローラ31の軸方向に直交する面(規制面と称する)36bとなっている。フランジ36の規制面36bには、上述したテンションローラ31の傾きによって+X方向に変位した媒体Pが当接する。このとき、媒体Pが規制面36bに対して点接触するため、両者の摩擦を抑制する効果が得られる。この点については後述する。
【0062】
フランジ36の円筒部36aのテンションローラ31側の端面には、係合部としての凸部36cが形成されている。テンションローラ31のフランジ36側の端部には、凸部36cに係合する被係合部としての凹部31aが形成されている。凸部36cと凹部31aとの係合により、テンションローラ31とフランジ36とは一体的に回転する。
【0063】
また、環状部材38のテンションローラ31側の端面には、係合部としての凸部38bが形成されている。テンションローラ31の環状部材38側の端部には、凸部38bに係合する被係合部としての凹部31bが形成されている。凸部38bと凹部31bとの係合により、テンションローラ31と環状部材38とは一体的に回転する。すなわち、テンションローラ31、フランジ36および環状部材38が一体となって、シャフト30を中心として回転する。
【0064】
上記のようにテンションローラ31とフランジ36とが一体的に回転するため、媒体Pが規制面36b上の同じ点に連続して接触することがなく、これにより摩擦抑制効果が向上する。この点については後述する。
【0065】
図4に戻り、テンションローラ31と搬送ローラ32との間には、搬送される媒体Pを案内する搬送ガイド33が配置されている。搬送ガイド33は、媒体Pに当接する曲面状(例えば円弧面)の案内面33aを有している。搬送ガイド33は、例えば、ハウジング102内のサイドフレーム104(
図3)に固定されている。搬送ガイド33は、テンションローラ31によって張力が加えられた媒体Pを円滑に搬送ローラ32に導くものである。なお、搬送ガイド33の延在方向(幅方向)は、X方向に対して平行である。
【0066】
図3に戻り、搬送ローラ32による媒体Pの搬送方向において、テンションローラ31の上流側(−Y側)および下流側(+Y側)には、媒体Pの先端の通過を検知する入口センサS1および給紙センサS2が配置されている。入口センサS1は、媒体Pがセットされたか否かを確認するために用いられる。給紙センサS2は、切断部4による媒体Pの切断タイミングを決定するために用いられる。
【0067】
切断部4は、搬送ローラ32による媒体Pの搬送方向において、給紙センサS2よりも下流側(+Y側)に配置されている。切断部4は、搬送ローラ32から搬送されてきた媒体Pをさらに搬送する一対の搬送ローラ41と、搬送ローラ41によって搬送される媒体Pを切断する固定刃42および回転刃43とを備える。
【0068】
搬送ローラ41は、給紙部3の搬送ローラ32と同様、搬送モータ120によって回転し、媒体Pを搬送する。固定刃42および回転刃43は、媒体Pを上下に挟み込むように配置されている。回転刃43は、切断用クラッチ121(
図9)を介して搬送モータ120からの回転伝達を受ける。切断用クラッチ121(
図9)がONすることにより、回転刃43が固定刃42に対して回転し、媒体Pを切断する。
【0069】
<制御系>
図9は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1は、主制御部110、ホストインタフェース部111、コマンド/画像処理部112、LEDヘッドインタフェース部113、操作パネル114、ヒータ115、サーミスタ116、高圧制御部130、帯電電圧発生部131、供給電圧発生部133、現像電圧発生部132、1次転写電圧発生部134および2次転写電圧発生部135を備える。
【0070】
画像形成装置1は、また、モータ制御部118、ホルダ駆動モータ201、搬送モータ120、切断用クラッチ121、送りモータ122、ベルト駆動モータ123、定着モータ124およびドラムモータ125,126,127,128,129を備える。
【0071】
主制御部110は、画像形成装置1の各構成要素を制御するものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)およびメモリを備えて構成されている。主制御部110は、コマンド/画像処理部112、LEDヘッドインタフェース部113、モータ制御部118、高圧制御部130、各センサS1〜S5、ヒータ115およびサーミスタ116と接続されている。
【0072】
ホストインタフェース部111は、外部のコンピュータ等から送信されたコマンドまたは画像データを受信し、コマンド/画像処理部112に出力する。コマンド/画像処理部112は、ホストインタフェース部111から出力されたコマンドおよび画像データを処理し、処理したデータを主制御部110に出力する。
【0073】
LEDヘッドインタフェース部113は、コマンド/画像処理部112から主制御部110に出力された画像データに基づき、LEDヘッド68K,68Y,68M,68C、68Kの発光を制御する。
【0074】
モータ制御部118は、主制御部110からの指示に基づき、ホルダ駆動モータ201、搬送モータ120、切断用クラッチ121、送りモータ122、ベルト駆動モータ123、定着モータ124およびドラムモータ125,126,127,128,129を制御する。
【0075】
ホルダ駆動モータ201は、媒体ホルダ2の回転軸20を回転させて媒体Pにバックテンションを与える。搬送モータ120は、搬送ローラ32を回転させて媒体Pを搬送する。切断用クラッチ121は、回転刃43を動作させて、搬送される媒体Pを切断する。送りモータ122は、画像形成部11の送りローラ51〜53を回転させて媒体Pを搬送する。ベルト駆動モータ123は、ベルト駆動ローラ74を回転させて中間転写ベルト72を走行させる。定着モータ124は、ヒートローラ81を回転させる。ドラムモータ125,126,127,128,129は、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wを回転させる。
【0076】
高圧制御部130は、主制御部110からの指示に基づき、帯電電圧発生部131、現像電圧発生部132、供給電圧発生部133、1次転写電圧発生部134および2次転写電圧発生部135を制御する。
【0077】
帯電電圧発生部131は、帯電ローラ62K,62Y,62M,62C,62Wに帯電電圧を印加する。現像電圧発生部132は、現像ローラ63K,63Y,63M,63C,53Wに現像電圧を印加する。供給電圧発生部133は、供給ローラ64K,64Y,64M,64C,64Wに供給電圧を印加する。1次転写電圧発生部134は、転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wに1次転写電圧を印加する。2次転写電圧発生部135は、2次転写ローラ75に2次転写電圧を印加する。
【0078】
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1による画像形成動作(印刷動作)について説明する。
図4に示すように、媒体Pが媒体ホルダ2のホルダ軸21に装着された状態では、媒体Pはテンションローラ31および搬送ガイド33に沿って延び、媒体Pの先端は搬送ローラ32に達している。また、媒体Pの幅方向両端は、押え板22a,22bによって規制されている。
【0079】
この状態では、入口センサS1(
図3)上に媒体Pがあるため、入口センサS1の出力がONとなる。主制御部110は、入口センサS1のON信号に基づき、媒体Pがホルダ軸21に装着されたことを確認することができる。
【0080】
次に、主制御部110は、モータ制御部118に指示し、ホルダ駆動モータ201を回転させる。ホルダ駆動モータ201の回転により、回転軸210が回転し、ホルダ軸21が媒体Pを巻き付ける方向に回転する。これにより、媒体Pが
図4に矢印Dで示す方向に移動する。媒体Pの先端は搬送ローラ32のニップに挟まれているため、媒体Pはぴんと張った状態となる。
【0081】
次に、主制御部110は、モータ制御部118に指示し、搬送モータ120を回転させる。搬送モータ120の回転により、搬送ローラ32が回転し、媒体Pをホルダ軸21から引き出しながら、矢印Aで示す方向に搬送する。ホルダ軸21は、トルクリミッタ205(
図5)の空転により、媒体Pにバックテンションを付与しながら、媒体Pの移動に追従して回転する。
【0082】
テンションローラ31は、ホルダ軸21から引き出されて搬送される媒体Pに張力を付与する。テンションローラ31を支持する一対のレバー34の揺動範囲は、媒体Pに適度な張力が付与されるように規制されている。レバー34の揺動範囲は、上述したカム39、当接部材105およびストッパ106により規制される。
【0083】
搬送ローラ32により媒体Pの搬送が開始され、媒体Pの先端が、搬送ローラ32よりも下流側の給紙センサS2(
図3)を通過すると、給紙センサS2の出力がONとなる。この給紙センサS2のON信号のタイミングに基づいて、以降の各動作が制御される。
【0084】
なお、切断部4の搬送ローラ41は、搬送ローラ32と同じタイミングで回転を開始しており、搬送ローラ32から送られた媒体Pをさらに搬送する。
【0085】
主制御部110は、モータ制御部118に指示し、給紙センサS2のON信号に基づく所定のタイミングで送りモータ122を回転させる。これにより、タイミング調整部5の送りローラ51,52,53が回転する。媒体搬送装置10から画像形成部11の内部に搬送された媒体Pは、タイミング調整部5の送りローラ51,52,53によって搬送される。
【0086】
給紙センサS2のON信号から所定のタイミング(この時点で媒体Pの先端は既に送りローラ51を通過している)で、主制御部110は、モータ制御部118に指示し、切断用クラッチ121をONにする。これにより、固定刃42に対して回転刃43が回転して、媒体Pを切断する。
【0087】
媒体Pが切断されると、ホルダ軸21によってバックテンションを与えられながら搬送ローラ32によって搬送される媒体Pの張力が、瞬間的に弱まる。このとき、媒体Pの張力の変化に応じてレバー34が揺動し(すなわちテンションローラ31が揺動し)、媒体Pの張力の変化を緩和する。
【0088】
なお、媒体Pの切断長さは任意に設定することができるが、媒体Pを安定した状態で搬送するためには、搬送ローラ41と送りローラ51との間隔の1.5倍以上であることが望ましい。
【0089】
また、主制御部110は、上述した給紙センサS2のON信号から所定のタイミングで、画像形成部11での画像形成を開始する。すなわち、主制御部110は、モータ制御部118に指示し、ベルト駆動モータ123およびドラムモータ125,126,127,128,129を回転させる。これにより、中間転写ベルト72が走行を開始し、また、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wの各ローラが回転を開始する。
【0090】
さらに、主制御部110は、高圧制御部130に指示し、帯電電圧発生部131により、帯電ローラ62K,62Y,62M,62C,62Wに帯電電圧を印加する。これにより、帯電ローラ62K,62Y,62M,62C,62Wは、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの表面を均一に帯電させる。
【0091】
また、主制御部110は、LEDヘッドインタフェース部113を介して、各色の画像データ信号に応じてLEDヘッド68K,68Y,68M,68C,68Wを発光させる。これにより、LEDヘッド68K,68Y,68M,68C,68Wは、各色の画像データ信号に対応した光を感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの表面に照射し、静電潜像を形成する。
【0092】
また、主制御部110は、高圧制御部130に指示し、現像電圧発生部132により現像ローラ63K,63Y,63M,63C,63Wに現像電圧を印加し、供給電圧発生部133により供給ローラ64K,64Y,64M,64C,64Wに供給電圧を印加する。これにより、現像ローラ63K,63Y,63M,63C,63Wの表面にトナーが付着し、現像ブレード65K,65Y,65M,65C,65Wによって均一な厚さのトナー層が形成される。
【0093】
感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの表面に形成された静電潜像には、63K,63Y,63M,63C,63Wのトナーが付着する。これにより、静電潜像が現像され、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの表面に各色のトナー像(現像剤像)が形成される。
【0094】
さらに、主制御部110は、高圧制御部130に指示し、1次転写電圧発生部134により転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wに1次転写電圧を印加する。これにより、感光体ドラム61K,61Y,61M,61C,61Wの表面のトナー像が、中間転写ベルト72に転写(1次転写)される。
【0095】
すなわち、中間転写ベルト72の表面に、ブラック、マゼンタ、イエロー、シアンおよび白色のトナー像が順に転写される。中間転写ベルト72はベルト駆動ローラ74の回転によって走行しているため、中間転写ベルト72上に転写されたトナー像は、2次転写部70に向かって搬送される。
【0096】
一方、タイミング調整部5では、送りローラ51等によって搬送される媒体Pの先端が媒体位置センサS3に到達すると、媒体位置センサS3がON信号を出力する。主制御部110は、媒体位置センサS3のON信号に基づき、送りモータ122の速度(すなわち媒体Pの送り速度)を加速する。この加速は、中間転写ベルト72上のトナー像の先端と媒体Pの先端とを、同時に2次転写部70に到達させるために行う。
【0097】
また、搬送される媒体Pの先端が媒体位置センサS4に到達すると、媒体位置センサS4がON信号を出力する。主制御部110は、媒体位置センサS4のON信号に基づき、送りモータ122の速度(すなわち媒体Pの送り速度)を微調整する。この微調整は、中間転写ベルト72上のトナー像の先端と媒体Pの先端との一致精度を高めるために行う。
【0098】
主制御部110は、中間転写ベルト72上のトナー像の先端と媒体Pの先端が2次転写部70に到達するタイミングで、高圧制御部130に指示し、2次転写電圧発生部135から2次転写ローラ75に2次転写電圧を印加する。これにより、中間転写ベルト72上のトナー像が媒体Pに転写(2次転写)される。すなわち、媒体Pの表面に、白色、シアン、イエロー、マゼンタおよびブラックのトナー像が順に転写される。
【0099】
トナー像が転写された媒体Pは、2次転写部70の下流側の定着部8に搬送される。主制御部110は、予めサーミスタ116の検知温度に基づいてヒータ115を制御し、ヒートローラ81および加圧ローラ82を所定温度に保っている。また、ヒータ115の加熱開始と同時に定着モータ124が回転を開始しており、ヒートローラ81は既に回転している。ヒートローラ81と加圧ローラ82との間(定着ニップ)に媒体Pが侵入すると、媒体Pの表面のトナー像が加熱・加圧され、媒体Pに定着する。
【0100】
定着部8から送り出された媒体Pは、排出部9の排出ローラ91,92によって画像形成装置1外に排出される。なお、排出センサS5が媒体Pの通過を検知してON信号を出力することにより、主制御部110は、媒体Pが排出されたことを確認することができる。
【0101】
<媒体搬送装置の作用>
次に、媒体搬送装置10の作用について説明する。
図10(A)および(B)は、媒体搬送装置10のホルダ軸21から搬送ローラ32までの部分を模式的に示す上面図および側面図である。上述したように、テンションローラ31の軸方向はX方向に対して傾いており、これにより媒体Pの幅方向両端で張力差が生じ、媒体Pには+X方向に変位するように力F(
図10(A))が作用する。
【0102】
媒体Pが上記の力Fによって+X方向に変位すると、媒体Pの側端部(幅方向端部)がテンションローラ31の+X方向の端部に配置されたフランジ36に当接する。このとき、テンションローラ31はX方向に対して傾いており、フランジ36の規制面36bはテンションローラ31の軸方向に対して直交する面であるため、フランジ36の規制面36bと媒体Pの側端部とは互いに平行でない。従って、媒体Pの側端部は、フランジ36に一点(
図10に示す点G)で接触する。
【0103】
このように、媒体Pとフランジ36との接触状態が点接触であるため、線接触の場合と比較して、媒体Pとフランジ36との摩擦を小さく抑えることができる。そのため、剛性の低い薄い媒体Pを用いた場合であっても、媒体Pの変形および損傷を抑制することができる。また、媒体Pとしてラベル紙を用いた場合であっても、媒体Pの側端部からの粘着剤のはみだしを抑制することができる。
【0104】
また、上記のように媒体Pの側端部がフランジ36に接触するため、媒体Pの斜行および蛇行を抑制し、媒体Pを安定して状態で搬送することができる。
【0105】
次に、本実施の形態に対する比較例について説明する。
図11(A)および(B)は、第1の比較例の媒体搬送装置のホルダ軸21から搬送ローラ32までの部分を模式的に示す上面図および側面図である。説明の便宜上、第1の比較例の構成要素についても、本実施の形態と同じ符号を用いて説明する。
【0106】
第1の比較例では、上述した実施の形態のテンションローラ31の代わりに、軸方向がX方向と平行なテーパローラ310を用いる。テーパローラ310は、−X方向端部の外径よりも+X方向端部の外径が大きくなるようなテーパを有している。また、テーパローラ310の+X方向端部には、フランジ311が形成されている。フランジ311の媒体Pに対向する面(規制面とする)312は、X方向に直交する面である。
【0107】
この第1の比較例では、テーパローラ310のテーパ形状により、媒体Pの幅方向両端で張力差が生じ、これにより媒体Pには+X方向に変位するように力Fが作用する。この力Fにより、媒体Pは+X方向に変位して、テーパローラ310のフランジ311に当接する。
【0108】
しかしながら、第1の比較例では、テーパローラ310のフランジ311の規制面312がX方向と直交する面であるため、媒体Pの側端部とフランジ311との接触状態が、例えば点Hおよび点Iで示す範囲に亘って線接触となり、媒体Pとフランジ36との摩擦が大きくなる。そのため、媒体Pの変形あるいは損傷を招く可能性があり、また、媒体Pとしてラベル紙を用いた場合には、媒体Pの側端部が規制面312に押し付けられることで粘着剤がはみだす可能性がある。
【0109】
図12(A)および(B)は、第2の比較例の媒体搬送装置のホルダ軸21から搬送ローラ32までの部分を模式的に示す上面図および側面図である。説明の便宜上、第2の比較例の構成要素についても、本実施の形態と同じ符号を用いて説明する。
【0110】
第2の比較例では、X方向に対して軸方向を傾けて配置したテンションローラ31を用いている。但し、テンションローラ31はフランジ36を有さず、代わりに、搬送ガイド330が媒体Pに対向する規制面331を有している。規制面331は、X方向に対して直交する面である。
【0111】
この第2の比較例においても、テンションローラ31の傾きにより、媒体Pの幅方向両端で張力差が生じ、これにより媒体Pには+X方向に変位するように力Fが作用する。この力Fにより、媒体Pは+X方向に変位して、搬送ガイド330の規制面331に当接する。
【0112】
しかしながら、第2の比較例では、搬送ガイド330の規制面331がX方向と直交する面であるため、媒体Pの側端部と規制面331との接触状態が、例えば点Jおよび点Kで示す範囲における線接触となり、媒体Pと規制面331との摩擦が大きくなる。そのため、媒体Pの変形あるいは損傷を招く可能性があり、また、媒体Pとしてラベル紙を用いた場合には、媒体Pの側端部が規制面331に押し付けられることで粘着剤がはみだす可能性がある。
【0113】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施の形態では、テンションローラ31の軸方向がX方向に対して傾いており、フランジ36がテンションローラ31の軸方向に対して直交する規制面36bを有しているため、媒体Pの側端部がフランジ36の規制面36bに点接触する。そのため、媒体Pとフランジ36との摩擦(当接圧)が小さい。従って、剛性の低い媒体Pを用いた場合であっても、媒体Pの変形および損傷を抑制することができる。また、媒体Pとしてラベル紙を用いた場合も、媒体Pの側端部からの粘着剤のはみだしを抑制することができる。
【0114】
さらに、媒体Pとフランジ36との当接負荷による搬送速度の変動を抑制し、搬送速度を一定に保つことができる。また、フランジ36が媒体Pの側端部の位置を規制するため、媒体Pの斜行および蛇行を抑制することができる。
【0115】
また、テンションローラ31とフランジ36とが互いに係合して一体的に回転するため、フランジ36の規制面36b上の同一点に媒体Pが連続して接触することはない。そのため、媒体Pとフランジ36との摩擦をさらに抑制することができる。
【0116】
また、テンションローラ31が、X方向の揺動軸を中心として揺動可能なレバー34によって支持されているため、媒体Pの張力の変動をレバー34の揺動によって吸収することができる。
【0117】
また、テンションローラ31と搬送ローラ32との間に、曲面状の案内面33aを有する搬送ガイド33が設けられているため、テンションローラ31を通過して媒体Pを搬送ローラ32にスムースに導くことができる。
【0118】
また、テンションローラ31は、ホルダ軸21の最上部と搬送ローラ32のニップとを通る平面よりも下方に配置されているため、テンションローラ31に対して効果的に張力を付与することができる。
【0119】
また、媒体ホルダ2は、媒体Pにバックテンションを加える駆動部200を備えているため、搬送される媒体Pに効果的に張力を付与することができる。
【0120】
また、搬送ローラ32の搬送方向下流側に、媒体Pを切断する切断部4が設けられているため、ロール紙等の連続した媒体Pを所定の長さに切断して画像形成部11に送ることができる。
【0121】
なお、ここでは、媒体搬送装置10に切断部4を設けたが、切断部4を設けない構成も可能である。例えば、画像形成部11の下流側に、媒体Pを巻き取るリワインダ(巻取装置)を設けた場合には、連続した媒体Pに画像形成部11で画像を形成し、リワインダでロール状に巻き取ることができる。
【0122】
また、ここでは、テンションローラ31を揺動可能なレバー34によって支持したが、搬送中の媒体Pの張力の変化が少ない場合(例えば切断部4を設けない場合等)には、テンションローラ31を揺動させない構成も可能である。
【0123】
第1の変形例.
図13は、第1の変形例のテンションローラを示す断面図である。上述した実施の形態では、テンションローラ31とフランジ36とが互いに係合し、一体的に回転するように構成されていた。これに対し、
図13のテンションローラ360は、円筒状のローラ部分361と、ローラ部分361の+X方向の端部に設けられたフランジ362とが一体に構成されている。ローラ部分361の−X方向の端部には、上述した実施の形態と同様の環状部材38が取り付けられている。
【0124】
テンションローラ360の径方向中心には、シャフト30が貫通している。フランジ362は、軸受37によってシャフト30を中心として回転可能に支持されている。環状部材38は、上述した実施の形態と同様、シャフト30との滑り接触により、シャフト30を中心として回転可能となっている。
【0125】
テンションローラ360の軸方向がX方向に対して傾いていることは、上述した実施の形態で説明したとおりである。また、フランジ362の媒体Pに対向する側の面(規制面)363は、テンションローラ360の軸方向に対して直交する面である。
【0126】
この第1の変形例においても、上述した実施の形態と同様、テンションローラ360の軸方向がX方向に対して傾いており、フランジ362の規制面363がテンションローラ360の軸方向に対して直交する面であるため、媒体Pの側端部(幅方向端部)がフランジ362の規制面363に点接触する。そのため、媒体Pとフランジ36との摩擦が小さく、媒体Pの損傷等を抑制することができる。
【0127】
また、テンションローラ360(ローラ部分361)とフランジ362とが一体に形成されているため、フランジ362の規制面363上の同一点に媒体Pが継続して接触することはない。そのため、媒体Pとフランジ362との摩擦をさらに抑制することができる。
【0128】
なお、ここでは、テンションローラ360と環状部材38とを別体としたが、テンションローラ360と環状部材38とを一体に形成してもよい。
【0129】
第2の変形例.
図14は、第2の変形例の画像形成装置1Aの構成を示す図である。上述した実施の形態の画像形成装置1の画像形成部11は、中間転写方式で画像を形成するよう構成されていた。これに対し、第2の変形例の画像形成装置1Aの画像形成部12は、直接転写方式で画像を形成するよう構成されている。媒体搬送装置10の構成は、上述した実施の形態で説明したとおりである。
【0130】
画像形成部12は、画像データに基づいたトナー像(現像剤像)を形成するプロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wと、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wが形成したトナー像を媒体Pに転写する転写部としての転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wと、媒体Pに転写されたトナー像を媒体Pに定着する定着部8と、トナー像が定着した媒体Pを排出する排出部9と、これらの構成要素を収納するハウジング101とを備える。
【0131】
媒体搬送装置10からの媒体Pが送り込まれる部分には、媒体Pをプロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wに送るための送りローラ55が配置されている。プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wの構成は、上述した実施の形態と同様である。但し、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wは、媒体Pの搬送方向に沿って、ここでは図中右から左に並んで配列されている。
【0132】
送りローラ55によって送られた媒体Pは、プロセスユニット60K,60Y,60M,60C,60Wと、転写ローラ71K,71Y,71M,71C,71Wとの間(転写部)を通過する。この転写部を通過する際の媒体Pの移動方向は、Y方向(より具体的には+Y方向)である。
【0133】
定着部8は、上述した実施の形態と同様、ヒートローラ81と加圧ローラ82とを有している。排出部9は、定着部8から送り出された媒体Pを、画像形成装置1Aの上部のスタッカ部95に向けて搬送する2対の排出ローラ91,92を有している。
【0134】
上述した実施の形態で説明した中間転写ベルト72とこれを駆動するための各ローラ、2次転写ローラ75、2次転写バックアップローラ76、およびタイミング調整部5は、この第2の変形例では設けられていない。
【0135】
この第2の変形例においても、媒体搬送装置10によって安定した状態で搬送された媒体Pが画像形成部12に送り込まれるため、画像の位置ずれおよびジャムの発生を抑制することができる。
【0136】
なお、画像形成部の構成は、上述した実施の形態(
図1)および第2の変形例(
図14)に限定されるものではない。例えば、画像形成部は、電子写真法に限らず、インクジェット方式等、種々の方式で画像を形成するように構成することができる。
【0137】
上述した実施の形態および変形例では、ロール状に巻かれた連続した媒体(例えばロール紙)を搬送する構成について説明したが、本発明は、長尺紙のように長さを有する媒体を搬送する構成にも適用することができる。
【0138】
また、本発明は、プリンタのほか、ファクシミリ、複写機、MFP(Multi−Function Peripheral)にも適用することができる。また、本発明は、画像読取装置の原稿給紙装置に適用してもよい。
【0139】
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。