【実施例】
【0038】
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
<コークス強度DIの実測値と推定値との相関関係の検証>
まず、表1に示す7種類の銘柄の単味炭(A炭〜G炭)、及び、1種類の粘結材(粘結材1)を準備した。なお、A炭〜D炭は、粘結炭(強粘結炭、又は、準強粘結炭)であり、E炭〜G炭は、低品位炭である。
表1には、これらの単味炭、粘結材の性状(灰分、揮発分、logMF、TI、I
H/C、I
O/C、dHI)についても示している。dHIは、I
H/CからI
O/Cを引いた値、すなわち、dHI=[I
H/C−I
O/C]である。表1中、灰分、揮発分、logMF、TIは、下記を意味する。
なお、指標I
H/Cと指標I
O/Cとを求めるのに必要な加熱減量、及び、CH
4,CO,CO
2の発生量は、リガク社製の装置名:示差熱天秤―質量分析同時測定装置 ThermoMass (TG-MS)を用い、1000℃になるまで加熱して得た値を用いた。
灰分:石炭を空気中で加熱灰化した後に残留する灰の石炭全体に対する質量百分率(JIS M8812に規定されている)
揮発分:石炭を加熱した際の減量の石炭全体に対する質量百分率(JIS M8812に規定されている)
logMF:ギーセラー最高流動度(ギーセラ−プラストメーターを使用する試験(JIS M8801にその詳細が規定されている石炭の加熱軟化溶融特性試験)において回転翼が最高回転数を示す値の対数値。原料石炭の粘結性を代表する指標。)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(JIS M 8816に従って測定できる。)
【0040】
【表1】
【0041】
(製造例1)
A炭〜D炭、及び、G炭を所定の割合で配合した。配合する際には、粉砕粒度が3mm以下のものが含まれる割合が約80%となるように、ジョークラッシャーあるいはコーヒーミルで粉砕した上で、配合した。なお、製造例1〜20は、いずれも炭の配合比率は異なるように配合している。
【0042】
(製造例2)
A炭〜D炭、G炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜D炭、G炭)の合計100重量部に対して5.3重量部とした。粘結材を配合する際には、粉砕粒度が3mm以下のものが含まれる割合が約100%となるように、ジョークラッシャーあるいはコーヒーミルで粉砕した上で、配合した。以下の製造例においても、粘結材を配合する場合は同様である。
ここで、「粘結材添加率」とは、粘結材以外の炭に対する粘結材の重量割合をいう。例えば、本製造例2では、粘結材以外の炭100重量部に対する粘結材の重量割合が5.3重量部であるから、製造例2の粘結材添加率は、下記式より5.3%である。
[5.3/100]×100(%)=5.3(%)
【0043】
(製造例3)
A炭〜D炭、G炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜D炭、G炭)の合計100重量部に対して11.1重量部とした。
【0044】
(製造例4)
A炭〜D炭、及び、G炭を所定の割合で配合した。
【0045】
(製造例5)
A炭〜D炭、G炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜D炭、G炭)の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0046】
(製造例6)
A炭〜D炭、G炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜D炭、G炭)の合計100重量部に対して11.1重量部とした。
【0047】
(製造例7)
A炭〜E炭を所定の割合で配合した。
【0048】
(製造例8)
A炭〜E炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜E炭)の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0049】
(製造例9)
A炭〜E炭を所定の割合で配合した。
【0050】
(製造例10)
A炭〜E炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜E炭)の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0051】
(製造例11)
A炭〜D炭、及び、F炭を所定の割合で配合した。
【0052】
(製造例12)
A炭〜D炭、F炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜D炭、及び、F炭)の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0053】
(製造例13)
A炭〜D炭、F炭、及び、粘結材1を所定の割合で配合した。粘結材1の配合割合は、粘結材以外の炭(A炭〜D炭、及び、F炭)の合計100重量部に対して11.1重量部とした。
【0054】
表2に、製造例1〜製造例13の配合炭の粘結材配合前の性状(灰分、揮発分、logMF、TI、I
H/C、I
O/C、dHI
0)を示す。
配合炭の粘結材配合前の各性状のうち、灰分、揮発分、logMF、TI、I
H/C、I
O/Cは、配合した各炭の性状(表1参照)を配合割合で加重平均して、求めた値である(加重平均する際に粘結材の性状は含めていない)。例えば、製造例1の配合炭のI
H/Cは、A炭〜D炭、及び、G炭の各I
H/Cを配合割合で加重平均して求めた値である。製造例1の配合炭のI
O/Cは、A炭〜D、及び、G炭の各I
O/Cを配合割合で加重平均して求めた値である。
また、例えば、製造例2の配合炭のI
H/Cは、A炭〜D炭、及び、G炭の各I
H/Cを配合割合で加重平均して求めた値である(加重平均する際に粘結材1のI
H/Cは含めていない)。製造例3の配合炭のI
O/Cは、A炭〜D、及び、G炭の各I
O/Cを配合割合で加重平均して求めた値である(加重平均する際に粘結材1のI
O/Cは含めていない)。
dHI
0は、配合炭のI
H/Cから、配合炭のI
O/Cを引いた値である。
【0055】
配合炭を作成後、水分を7.5%±0.2%に調整した。
【0056】
次に、水分調整した試料をL:380mm×T:400mm×H:350mmのレトルトに充填密度750kg−dry/m
3で充填した。
【0057】
次に、乾留温度1,100℃で約19時間乾留してコークスを得た。
【0058】
<ドラム強度試験>
得られたコークスに対して、シャッター試験(落差2m)を2回実施後、JIS K 2151に規定されるコークス強度の評価方法(ドラム試験機で150回転)で、DI
15015を測定した。結果を表2の「実測値」の欄に示す。
【0059】
<粘結材配合前の配合炭の指標dHI
0を用いたドラム強度の推定値の算出>
粘結材配合後の配合炭のドラム強度DIの推定を、下記式により行った。
[推定ドラム強度DI]=f(dHI
0)+α×dHIa×X
dHI
0:粘結材配合前の配合炭の指標dHI
0
f(dHI
0):粘結材配合前の配合炭のドラム強度の推定値
α:焼成条件で決定される、粘結材dHIa=1当たりのDI向上効果
α=k×dHI
0+h (k,hは焼成条件で決定される定数)
dHIa:粘結材の指標I
H/Cと指標I
O/Cとの差
X:粘結材の配合率(外枠重量%)
【0060】
ここで、製造例1〜13と同一の焼成条件の下で、単味炭や粘結材の配合割合を変更して実施した過去の実験結果から、実施例1(製造例1−13)におけるf(dHI
0)及びαは以下の通りである。
f(dHI
0)=−18.757×(dHI
0)×(dHI
0)+1.6271×(dHI
0)+85.163
α=−1.199×(dHI
0)−0.041 (粘結材配合率5.3%以下の場合)
α=−0.924×(dHI
0)−0.064 (粘結材配合率5.3%より大きい場合)
【0061】
上記を基に、製造例2、製造例3、製造例5、製造例6、製造例8、製造例10、製造例12、製造例13の推定ドラム強度DIを算出した。結果を、表2の「推定値」の欄に示す。
【0062】
表2の「実測値」と「推定値」との対比から分かるように、実施例1に係るどの製造例の推定値も、実測値に近い値となった。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例2)
<コークス強度DIの実測値と推定値との相関関係の検証>
まず、表3に示す9種類の銘柄の単味炭(H炭〜P炭)、及び、3種類の粘結材(粘結材2〜粘結材4)を準備した。なお、H炭〜M炭は、粘結炭(強粘結炭、又は、準強粘結炭)であり、N炭〜P炭は、低品位炭である。
表3には、これらの単味炭、粘結材の性状(灰分、揮発分、logMF、TI、I
H/C、I
O/C、dHI)についても示している。各性状の意味は、実施例1と同様である。
【0065】
【表3】
【0066】
(製造例14)
H炭〜P炭を所定の割合で配合した。
【0067】
(製造例15)
H炭〜P炭、及び、粘結材2を所定の割合で配合した。粘結材2の配合割合は、粘結材以外の炭の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0068】
(製造例16)
H炭〜P炭、及び、粘結材3を所定の割合で配合した。粘結材3の配合割合は、粘結材以外の炭の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0069】
(製造例17)
H炭〜P炭を所定の割合で配合した。
【0070】
(製造例18)
H炭〜P炭、及び、粘結材2を所定の割合で配合した。粘結材2の配合割合は、粘結材以外の炭の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0071】
(製造例19)
H炭〜P炭、及び、粘結材3を所定の割合で配合した。粘結材3の配合割合は、粘結材以外の炭の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0072】
(製造例20)
H炭〜P炭、及び、粘結材4を所定の割合で配合した。粘結材4の配合割合は、粘結材以外の炭の合計100重量部に対して5.3重量部とした。
【0073】
その後、レトルトへの充填密度0.735kg−dry/リットルで充填したこと以外は、実施例1と同様にして製造例14〜20の配合炭を乾留し、コークスを得た。
【0074】
表4に、製造例14〜製造例20の配合炭の性状(灰分、揮発分、logMF、TI、I
H/C、I
O/C、dHI
0)を示す。各性状の意味は、実施例1と同様である。
【0075】
<ドラム強度試験>
得られたコークスに対して、実施例1と同様にして、DI
15015を測定した。結果を表4の「実測値」の欄に示す。
【0076】
<粘結材配合前の配合炭の指標dHI
0を用いたドラム強度の推定値の算出>
粘結材配合後の配合炭のドラム強度DIの推定を、実施例1と同様、下記式により行った。
[推定ドラム強度DI]=f(dHI
0)+α×dHIa×X
dHI
0:粘結材配合前の配合炭の指標dHI
0
f(dHI
0):粘結材配合前の配合炭のドラム強度の推定値
α:焼成条件で決定される、粘結材dHI=1当たりのDI向上効果
α=k×dHI
0+h (k,hは焼成条件で決定される定数)
dHIa:粘結材の指標I
H/Cと指標I
O/Cとの差
X:粘結材の配合率(外枠重量%)
【0077】
ここで、製造例14〜20と同一の焼成条件の下で、単味炭や粘結材の配合割合を変更して実施した過去の実験結果から、実施例2(製造例14−20)におけるf(dHI
0)及びαは以下の通りである。
f(dHI
0)=−107.7×(dHI
0)×(dHI
0)+7.96893×(dHI
0)+84.805
α=−1.199×(dHI
0)−0.041 (粘結材配合率5.3%以下の場合)
α=−0.924×(dHI
0)−0.064 (粘結材配合率5.3%より大きい場合)
【0078】
上記を基に、製造例15、製造例16、製造例18、製造例19、製造例20の推定ドラム強度DIを算出した。結果を、表4の「推定値」の欄に示す。
【0079】
表4の「実測値」と「推定値」との対比から分かるように、実施例2に係るどの製造例の推定値も、実測値に近い値となった。
【0080】
【表4】
【0081】
以上、実施例1、及び、実施例2からも分かるように、本推定方法によれば、ドラム強度を高精度で推定することができる。