特許第6678265号(P6678265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6678265
(24)【登録日】2020年3月18日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】燃焼排ガスの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/06 20060101AFI20200330BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20200330BHJP
   F23J 15/08 20060101ALI20200330BHJP
   F23L 5/02 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F23J15/06
   F23J15/00 F
   F23J15/08
   F23L5/02
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-36258(P2019-36258)
(22)【出願日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河岸 正泰
(72)【発明者】
【氏名】長沢 英和
(72)【発明者】
【氏名】倭 常郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊樹
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−205689(JP,A)
【文献】 特許第5187731(JP,B2)
【文献】 特開平03−207908(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/142376(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106642087(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105570883(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/06
F23J 15/00
F23J 15/08
F23L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の燃焼排ガスが通りこの燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器と、
前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとするバグフィルタと、
前記再加熱予熱器からの排ガスを前記バグフィルタに導く経路に設けられ、前記排ガスを熱交換して前記バグフィルタの操作温度まで冷却する冷却手段と、
前記バグフィルタからの清浄ガスを前記再加熱予熱器に導き再加熱を図る再加熱戻り手段と、
前記再加熱予熱器を通った再加熱清浄ガスの利用手段と、
を有し、
前記燃焼排ガスは流動焼却炉から排出されるものであり、
前記利用手段が、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機であり、
前記過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気は、前記流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送られる構成とされている、
ことを特徴とする燃焼排ガスの処理装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、廃熱ボイラ又は熱交換器からなり、熱交換による回収熱を、乾燥用熱源及び発電用熱源の少なくとも一方の熱源とする構成とした請求項1記載の燃焼排ガスの処理装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、廃熱ボイラ又は熱交換器からなる第1の冷却手段であり、前記過給機の後段に設けられ、前記過給機のタービン排ガスを受けて熱交換を行う第2の冷却手段を有し、
前記第1の冷却手段及び前記第2の冷却手段における熱交換による回収熱を、乾燥用熱源及び発電用熱源の少なくとも一方の熱源とする構成とした請求項1記載の燃焼排ガスの処理装置。
【請求項4】
高温の燃焼排ガスが通りこの燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器と、
前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとするバグフィルタと、
前記再加熱予熱器からの排ガスを前記バグフィルタに導く経路に設けられ、前記排ガスを熱交換して前記バグフィルタの操作温度まで冷却する冷却手段と、
前記バグフィルタからの清浄ガスを前記再加熱予熱器に導き再加熱を図る再加熱戻り手段と、
前記再加熱予熱器を通った再加熱清浄ガスの利用手段と、
前記バグフィルタの出側と前記再加熱予熱器の再加熱清浄ガスの出側を繋ぐ、バイパス量を調整可能なバイパス路と、
を有し、
前記燃焼排ガスは流動焼却炉から排出されるものであり、
前記利用手段が、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機であり、
前記過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気は、前記流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送られる構成とされている、
ことを特徴とする燃焼排ガスの処理装置。
【請求項5】
流動焼却炉からの燃焼排ガスを通す予熱器と、
前記予熱器を通った燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器と、
前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとするバグフィルタと、
前記再加熱予熱器からの排ガスを前記バグフィルタに導く経路に設けられ、前記排ガスを熱交換して前記バグフィルタの操作温度まで冷却する冷却手段と、
前記バグフィルタからの清浄ガスを前記再加熱予熱器に導き再加熱を図る再加熱戻り手段と、
前記再加熱予熱器を通った再加熱清浄ガスの利用手段と、を有し、
前記利用手段が、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機であり、
前記過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気は、前記予熱器を通して、前記流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送られる構成とされている、
ことを特徴とする燃焼排ガスの処理装置。
【請求項6】
前記冷却手段は間接式の空冷熱交換手段であり、熱交換後の昇温空気を排ガスの白煙防止用熱源とされる請求項5記載の燃焼排ガスの処理装置。
【請求項7】
前記冷却手段は直接式の水冷手段であり、
前記過給機のタービンの後方段に白煙防止用空気予熱器を有し、熱交換後の昇温空気を排ガスの白煙防止用熱源とされる請求項5記載の燃焼排ガスの処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の燃焼排ガスの処理装置を備えた焼却設備。
【請求項9】
流動焼却炉からの燃焼排ガスを予熱器に通す予熱工程と、
バグフィルタにより前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとする除塵工程と、
前記予熱器を通った燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱工程と、
前記再加熱予熱工程からの排ガスを前記バグフィルタに導く経路において、前記排ガスを熱交換してバグフィルタの操作温度まで冷却する冷却工程と、
前記バグフィルタからの清浄ガスを前記再加熱予熱工程に導き再加熱を図る再加熱戻り工程と、
前記再加熱予熱器を通った再加熱清浄ガスを利用する利用工程と、
を有し、
前記利用工程が、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機を含み、
前記過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気を、前記予熱器を通して前記流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送る、
ことを特徴とする燃焼排ガスの処理方法。
【請求項10】
前記バグフィルタの入口温度を250℃以下とする請求項9記載の燃焼排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼手段からの燃焼排ガスの処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼手段、例えば廃棄物焼却炉、下水汚泥焼却炉などからの燃焼排ガスは、ダイオキシン発生の抑制のために通常850℃程度で排出される。係る高温の排ガスは、以降の処理系において熱回収して熱の有効利用を図ることが肝要である。
【0003】
この熱回収して運転コストの低減を図る方法の一つに、タービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機を利用する形態を、本出願人は、特許文献1などにより開示した。
この形態は、燃焼手段として、高温の燃焼排ガスの発生する流動焼却炉に適用するのが適しており、流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として、専用のブロワを使用することなく、高温の燃焼排ガスによりタービンを駆動し、コンプレッサにより圧縮空気を生成し、この圧縮空気を流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として利用できるので、専用のブロワ及びそれを運転するための運転コスト(電力コスト)が不要となり、設備全体として熱の有効利用を図ることができるものである。
【0004】
一方、廃棄物焼却炉、下水汚泥焼却炉などの燃焼炉の燃焼排ガスには、Pb、Cd、As、Se、有機リン、各種塵埃が含まれており、これらの大気放出を防止するために除塵する必要がある。
この除塵のために各種集塵機が用いられる。他方で、燃焼炉ではダイオキシン発生防止のために、燃焼排ガスの温度を通常は850℃程度となるように燃焼が行われる。この高温の燃焼排ガスについて、高温で除塵を図るための手段として、代表的にはセラミックフィルタ、電気集塵機、サイクロンが挙げられる。
【0005】
しかし、これらにはそれぞれ次の問題がある。
(1)セラミックフィルタ
近年では、セラミックフィルタを使用する高温集塵機が使用される例が多くなっている。高温域で高い集塵効率を確保できる利点がある一方で、フィルタが脆性材料であり取扱いに注意が必要である。高温集塵機自体が大型化し、コスト及び設置スペースの点で不利である。
また、例えば、下水汚泥の焼却炉では、ケーシングにおいて水蒸気による高温腐食が生じるなどの問題がある。
【0006】
(2)電気集塵機
捕集効率はダストの電気抵抗値によって決定され、高温域においては集塵効率が著しく下がる場合がある。また、槌打時再飛散するため、集塵効率が低下する。
【0007】
(3)サイクロン
遠心力により集塵するものである。大型化すると分離限界粒子径が大きくなり、集塵効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5187731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、集塵効率が高く、燃焼排ガスがもっている熱を有効に回収及び利用を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は以下のとおりである。
【0011】
<第1の態様>
高温の燃焼排ガスが通りこの燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器と、
前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとするバグフィルタと、
前記再加熱予熱器からの排ガスを前記バグフィルタに導く経路に設けられ、前記排ガスを熱交換して前記バグフィルタの操作温度まで冷却する冷却手段と、
前記バグフィルタからの清浄ガスを前記再加熱予熱器に導き再加熱を図る再加熱戻り手段と、
前記再加熱予熱器を通った再加熱清浄ガスの利用手段と、
を有することを特徴とする燃焼排ガスの処理装置。
【0012】
この第1の態様では、再加熱予熱器からの排ガスを、熱交換してバグフィルタの操作温度まで冷却する冷却手段を有する。
冷却手段により、例えば、250℃以下に冷却する。250℃以下で除塵する(低温)バグフィルタは種類が多く、概して,集塵効率が高いので、除塵を確実に行うことができる。
冷却手段による冷却に伴って、燃焼排ガスの持っている熱を回収できる。冷却手段として、例えば、廃熱ボイラや熱交換器を使用でき、回収熱は乾燥熱源や発電に利用できる。
バグフィルタからの清浄ガスは、前記再加熱予熱器に導かれ(戻され)再加熱が図られる。再加熱された清浄ガスは、ある程度高い温度が必要で、かつ、ガスが清浄であることが条件とされる利用手段により利用できる。
【0013】
冷却手段としては、廃熱ボイラや熱交換器を使用でき、冷却手段によって回収熱量を多くするのが望ましい。仮に、冷却手段(例えば廃熱ボイラや熱交換器)を設けない場合には、あるいは冷却手段による冷却量が少ない場合には、再加熱予熱器での冷却熱交換量を多くする必要があり、そのために大型の再加熱予熱器が必要となる。この場合には、再加熱予熱器において、燃焼排ガスを高温の状態から低い温度まで冷却熱交換する必要があり、再加熱予熱器の燃焼排ガスの入口部分、とりわけ伝熱管の管板部分に高温ガスが常時晒されることを原因とするクラックが発生するリスクが高まる。
これに対して、第1の態様に従って、冷却手段を設けて、再加熱予熱器の出口排ガス温度を高くすることは、前記再加熱予熱器での負担(熱交換量)を小さくでき、すなわち再加熱量を少なくでき、再加熱予熱器における問題を解消できる。
【0014】
<第2の態様>
高温の燃焼排ガスの発生源が流動焼却炉である場合に、利用手段の例として、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機を挙げることができる。
この過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気は、前記流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送ることができる。
係る構成により、流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送るブロワを用意する必要がなくなり、運転コスト(ブロワの運転に要する電力コスト)を削減できる。
利用手段の種類は限定されるものではなく、前記過給機のほか、例えば、触媒反応を利用した触媒反応装置、例えば触媒を充填した脱硝装置などを挙げることができる。
【0015】
<第3の態様>
冷却手段として廃熱ボイラや熱交換器を使用できることは前述の第1の態様の説明の欄で述べたとおりである。
回収熱量を多くするために、バグフィルタに供給する排ガスを冷却する冷却手段のほか、過給機の後段に設けられ、前記過給機のタービン排ガスを受ける第2の冷却手段も設けることができる。
【0016】
再加熱予熱器の出口温度が高くないにもかかわらず、ある程度の回収熱量を確保したい場合には、冷却手段を大型化する必要があり、経済的に得策ではない。
これらの理由に鑑みて、例えば第3の態様に従って、冷却手段のほか、過給機の後段に設けられる第2の冷却手段によっても熱回収することが望ましい。これにより、冷却手段を大型化する必要がなくなる。
また、再加熱予熱器とバグフィルタとの間に複数の冷却手段を設けることもできる。
【0017】
<第4の態様>
燃焼手段、例えば燃焼炉の大きさ及び運転条件などにより、予め各機器及び配置などを設計し、実設備を稼働させる。しかし、燃焼炉、例えば流動焼却炉の場合、焼却対象の下水汚泥の性状、特に含水率、下水汚泥の時間当たりの投入処理量などが変動する。
これらの変動に伴って、再加熱予熱器の出口温度が従属的に(成り行きで)変動する。この変動が生じると、利用手段が所定の性能を発揮できない事態を生じる。
例えば、予め再加熱予熱器の出口温度との関係で、所定の性能発揮するように過給機の選定を行ったとしても、本来の性能を発揮しない事態が生じることがある。
そこで、バグフィルタの出側と前記再加熱予熱器の再加熱清浄ガスの出側を繋ぐ、バイパス量を調整可能なバイパス路、例えばバイパス流量の調整弁を有するバイパス路を設けることができる。
【0018】
係る態様によれば、再加熱予熱器内に流入する燃焼排ガスの変動に対応して、バイパス量を調整することにより、再加熱予熱器から利用手段へ供給される排ガス温度を一定にできる。その結果、利用手段を、その性能特性上、最も有利な温度で運転できる利点がある。
【0019】
<第5の態様>
高温の燃焼排ガスを直接、再加熱予熱器に通すのではなく、再加熱予熱器の前段に(燃焼空気)予熱器に通すことができる。係る第5の態様は次のとおりである。
流動焼却炉からの燃焼排ガスを通す予熱器と、
前記予熱器を通った燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器と、
前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとするバグフィルタと、
前記再加熱予熱器からの排ガスを前記バグフィルタに導く経路に設けられ、前記排ガスを熱交換して前記バグフィルタの操作温度まで冷却する冷却手段と、
前記バグフィルタからの清浄ガスを前記再加熱予熱器に導き再加熱を図る再加熱戻り手段と、
前記再加熱予熱器を通った再加熱清浄ガスの利用手段と、を有し、
前記利用手段が、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービンとタービンの回転に伴って回転するコンプレッサとが設けられた過給機であり、
前記過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気は、前記予熱器を通して、前記流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送られる構成とされている、
ことを特徴とする燃焼排ガスの処理装置。
【0020】
第5の態様に従って、流動焼却炉からの燃焼排ガスを直接、再加熱予熱器に通すのではなく、再加熱予熱器の前段で(燃焼空気)予熱器に通すことにより、過給機のコンプレッサで生成した圧縮空気を流動焼却炉の流動媒体の流動化空気として送る際に、高温の圧縮空気として燃焼炉に供給でき、燃焼炉において含水率が高かったり、発熱量が小さい下水汚泥等を焼却する時に補助燃料を削減もしくは不要とすることができる。
【0021】
<第6の態様>
前述の態様において、煙突からの排ガスの温度を高めて白煙防止を図る手段を組み込むことができる。この白煙防止用の予熱器は、過給機のタービンの後方段に設け、タービンと熱交換後の昇温空気を、煙突における排ガス流路に投入することができる。
他方、再加熱予熱器とバグフィルタとの間に白煙防止用の予熱器を設け、この白煙防止用の予熱器を、再加熱予熱器からの排ガスを、熱交換してバグフィルタの操作温度まで冷却し、前記バグフィルタに排ガスを導く冷却手段とすることができる。この白煙防止用の予熱器は、排ガスの冷却を図った後、煙突に供給し、排ガスの温度を高めて白煙防止を図る。
【0022】
<処理方法の態様>
前述の各態様をもって、燃焼排ガスの処理が可能である。
この処理方法としてバグフィルタの入口温度を250℃以下とするのが望ましく、特には230℃以下が好適である。バグフィルタの入口温度としては腐食が起こらない酸露点温度より高い温度、例えば190℃以上が望ましい。
袋状のフィルタ素材としては、コットン、ナイロン、金属繊維、ガラス繊維などを挙げることができる。
他方、冷却手段の入口温度としては、750〜500℃が望ましい。そして、冷却手段によりバグフィルタの入口温度が250℃以下となるように冷却して、大量の回収熱量とすることができる。回収熱量が大量となる結果、システム(設備)全体としてエネルギー効率の高いものとなる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、集塵効率が高く、燃焼排ガスがもっている熱を有効に回収及び利用を図ることできる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態を示す概要図である。
図2】他の実施の形態を示す概要図である。
図3】さらに別の実施の形態を示す概要図である。
図4】本発明の異なる他の実施の形態を示す概要図である。
図5】本発明のさらに異なる他の実施の形態を示す概要図である。
図6】本発明に係る他の実施の形態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、機能が共通な部分には同一の符号を付してある。したがって、同一の符号の部分についての技術的意義に関する説明は省略することがある。
また、以下に説明する実施の形態については、種々の変更が可能であることに留意されたい。図面に括弧内に示した数値は、例示又は代表的な含水率及び温度であって、以下の各例において、そのような含水率及び温度に限定されるものではない。
【0026】
<第1の態様>
図1に第1の態様の例を示す。10は流動焼却炉であり、例えば下水汚泥Mを焼却対象としている例である。
流動焼却炉10内に装入する前に,原下水汚泥Mの含水率を濃縮機及び脱水機(図示せず)により下げることができる。この図1の例は,燃焼空気を予熱しないで自燃する脱水汚泥を焼却する例である。
【0027】
脱水汚泥は、流動焼却炉10内に装入され、流動焼却炉10内においては、分散板などの分散手段(図示せず)を介して、下方から吹き込まれる導路53からの流動化空気が吹き上げられ、流動砂などの流動媒体と共に流動化しながら焼却がなされる。
【0028】
第1の態様においては、流動焼却炉10ではダイオキシンの発生を防止する燃焼温度での燃焼・焼却が行われ、その頂部から例えば850℃程度の高温の燃焼排ガスが導路11を通され、この燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器20を有する。
また、燃焼排ガス中の除塵を行うバグフィルタ40と、再加熱予熱器20からの排ガスを、熱交換してバグフィルタ40の操作温度まで冷却し、排ガスをバグフィルタ40に導路31を介して導く冷却手段30とを有する。
前記バグフィルタ40で処理された清浄ガスについては、再加熱予熱器20に導き再加熱を図るための再加熱戻り手段としての導路41が設けられている。
【0029】
他方、再加熱予熱器20を通った再加熱された清浄ガスは、導路21を介しての再加熱清浄ガス利用手段に導かれる。
第1の態様においては、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービン51とタービン51の回転に伴って連結軸を介して従回転するコンプレッサ52とが設けられた過給機50である。
【0030】
冷却手段30は、再加熱予熱器20からの排ガス(例えば750〜500℃)を、熱交換してバグフィルタ40の操作温度(例えば190〜250℃)まで冷却し、バグフィルタ40に排ガスを、導路31を介して導くものである。
冷却手段30により、例えば、250℃以下に冷却する。バグフィルタ40においては、250℃以下の条件で除塵する。この種の(低温)バグフィルタは種類が多く、概して集塵効率が高いので、除塵を確実に行うことができる。
【0031】
冷却手段30による冷却に伴って、燃焼排ガスのもっている熱を回収できる。冷却手段30として、例えば、廃熱ボイラや熱交換器を使用でき、導路32を介して発電用熱源や乾燥用熱源として有効利用できる。
【0032】
<第2の態様>
前述のように、利用手段としては、図1図5に示すように、再加熱清浄ガスにより駆動されるタービン51とタービン51の回転に伴って回転するコンプレッサ52とが設けられた過給機50を挙げることができる。
この過給機50のコンプレッサ52で生成した圧縮空気は、流動焼却炉10の流動媒体の流動化空気として送ることができる。
係る構成により、流動焼却炉10の流動媒体の流動化空気として送るブロワを用意する必要がなくなり、運転コスト(ブロワの運転に要する電力コスト)を削減できる。
【0033】
利用手段の種類は限定されるものではなく、前記過給機50のほか、触媒反応装置、例えば、触媒を充填した脱硝装置などを挙げることができる。この脱硝装置の例は、後述する図6に示す例によって説明する。脱硝装置としては、アンモニア等と触媒によって排ガス中に含まれる窒素酸化物を還元分解する触媒器等から構成できる。
【0034】
<第3の態様>
冷却手段30としては、廃熱ボイラや熱交換器を使用できることは前述の第1の態様の説明の欄で述べたとおりである。
回収熱量を多くするために、バグフィルタ40に排ガスを導く冷却手段のほか、図1に示すように、過給機50の後段に設けられ、過給機50のタービン51排ガスを受ける第2の冷却手段70である廃熱ボイラや熱交換器も設ける構成とすることができる。
ここで、冷却手段30と第2の熱回収手段70での熱回収による熱は、乾燥機や発電装置などの利用装置における乾燥用熱源や発電用熱源として仕向けることができる。
このとき冷却手段30と第2の熱回収手段70のいずれか一方で回収した熱のみを利用することができるが、冷却手段30と熱回収手段70のそれぞれから回収した熱を利用装置に仕向けることが好ましい。
冷却手段30および第2の熱回収手段70に供給する加熱媒体は、水蒸気、作動油、空気、熱媒体油などが採用可能である。特に冷却手段30および熱回収手段70から回収した熱を同一の利用装置で利用する場合、回収した熱を液状で利用装置に供給できる加熱媒体(例えば作動油など)を採用することは、冷却手段30および熱回収手段70での交換熱量が異なったとしても加熱媒体の圧力調整が省略となる点で好ましい。
なお、回収した熱の利用にあたっては、単一の利用目的のみならず複数の利用目的、例えば乾燥用熱源および発電用熱源として仕向けることも可能である。
【0035】
ところで、仮に、冷却手段(例えば廃熱ボイラや熱交換器)30を設けない場合には、あるいは冷却手段による冷却量が少ない場合には、再加熱予熱器20での冷却熱交換量を多くする必要があり、そのために大型の再加熱予熱器20が必要となる。これらの場合には、再加熱予熱器20において、燃焼排ガスを高温の状態から低い温度まで冷却熱交換する必要があり、再加熱予熱器20の燃焼排ガスの入口部分、とりわけ伝熱管の管板部分に高温ガスが常時晒されることを原因とするクラックが発生するリスクが高まる。
これに対して、本発明に係る冷却手段30を設けて、再加熱予熱器20の出口排ガス温度を高くすることは、前記再加熱予熱器20での負担(熱交換量)を小さくでき、すなわち再加熱量を少なくでき、再加熱予熱器20における問題を解消できる。
また、再加熱予熱器20での冷却熱交換量としては、再加熱予熱器20の入口の燃焼排ガス温度と、再加熱予熱器20の出口の再加熱清浄ガス温度との温度差が300〜550℃であることが望ましい。
【0036】
<第4の態様>
燃焼手段、例えば燃焼炉の大きさ及び運転条件などにより、予め各機器及び配置などを設計し、実設備を稼働させる。しかし、燃焼炉、例えば流動焼却炉の場合、焼却対象の下水汚泥の性状、特に含水率、下水汚泥の時間当たりの投入処理量などが変動する。
これらの変動に伴って、再加熱予熱器20の出口温度が従属的に(成り行きで)変動する。この変動が生じると、利用手段が所定の性能を発揮できない事態を生じる。
例えば、予め再加熱予熱器20の出口温度との関係で、所定の性能が発揮するように過給機50の選定を行ったとしても、本来の性能を発揮しない事態が生じることがある。
そこで、図2に示すように、バグフィルタ40の出側と再加熱予熱器20の再加熱清浄ガスの出側を繋ぐ、バイパス量を調整可能なバイパス路、例えばバイパス流量の流量調整弁101を有するバイパス路100を設けることができる。
【0037】
係る態様によれば、再加熱予熱器20内に流入する燃焼排ガスの変動に対応して、バイパス量を調整することにより、再加熱予熱器20から利用手段へ供給される清浄ガス温度を一定にできる。その結果、利用手段を、その性能特性上、最も有利な温度で運転できる利点がある。
【0038】
<第5の態様>
燃焼空気を予熱すれば自燃する脱水汚泥の含水率がやや高い場合に好適な例として、高温の燃焼排ガスを直接、再加熱予熱器20に通すのではなく、再加熱予熱器20の前段に(燃焼空気)予熱器110に通すことができる。係る第5の態様の例として、図3図4及び図5の例を挙げることができる。
【0039】
この態様においては、図3に示されるように、流動焼却炉10からの高温の燃焼排ガスを通す予熱器110が設けられる。
この予熱器110を通った燃焼排ガスは、再加熱を図る再加熱予熱器20に送られる。
そして、過給機50のコンプレッサ52で生成した圧縮空気は、予熱器110を通して、流動焼却炉10に導路111を通して流動媒体の流動化空気として送られる構成とされている。
【0040】
第5の態様に従って、高温の燃焼排ガスを直接、再加熱予熱器20に通すのではなく、再加熱予熱器20の前段に(燃焼空気)予熱器110に通すことにより、過給機50のコンプレッサ52で生成した圧縮空気を流動焼却炉10の流動媒体の流動化空気として送る際に、高温の圧縮空気として燃焼炉10に供給でき、燃焼炉10において含水率が高かったり、発熱量が小さい下水汚泥等を焼却する時に補助燃料を削減もしくは不要とすることができる。
【0041】
<第6の態様>
排煙処理塔(煙突)90からの排ガスの温度を高めて白煙防止を図る手段を組み込むことができる。
例えば、図4に示すように、再加熱予熱器20とバグフィルタ40との間に白煙防止用の予熱器33を設け、この白煙防止用の予熱器33を、ファン33aからの空気と再加熱予熱器20からの排ガスとを熱交換してバグフィルタ40の操作温度まで冷却して、バグフィルタ40に冷却ガスを送る冷却手段の機能を持たすことができる。この白煙防止用の予熱器33は、排ガスの冷却を図った後、煙突に供給し、排ガスの温度を高めて白煙防止を図る。
【0042】
他方、図5に示すように、過給機50のタービン51の後方段に白煙防止用の予熱器34を設け、ファン34aからの空気とタービン51排ガスとの熱交換後の昇温空気を、排煙処理塔(煙突)90における排ガス流路に投入することができる。
また、図5に示す例においては、バグフィルタ40へ向かう排ガスに対して冷却手段として、冷却水Wを散布して冷却する冷却器35を使用している。
【0043】
本発明に係る燃焼設備として流動焼却炉のほか、図6の例のようにストーカー炉10Aであってもよい。また、利用手段としては、過給機50のほか、例えば、触媒反応を利用した触媒反応装置、例えば触媒を充填した脱硝装置54などでもよい。
図6に示す例においては、ストーカー炉10Aからの燃焼排ガスを再加熱予熱器20に通して、バグフィルタ40の清浄ガスを予熱し、再加熱予熱器20を通った排ガスは、燃焼空気予熱器36及び白煙防止用の予熱器33の二段の冷却手段を通し、バグフィルタ40の操作温度まで冷却するものである。
再加熱予熱器20で予熱された清浄ガスは、利用手段を構成する脱硝装置54に送られた後、排煙処理塔(煙突)90に導かれる。
ストーカー炉10Aに対しては、ファン36aにより送られた空気が、燃焼空気予熱器36により加熱された加熱空気が供給される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上の例においては、燃焼設備として流動焼却炉とストーカー炉の例を示したが、多段炉であってもよい。また、燃焼対象物は下水汚泥のほか、各種の廃棄物などでもよい。
その他、燃焼設備として下水汚泥燃料化設備の再燃炉も対象とすることができる。この場合においては「利用手段」としては脱硝装置とするのが望ましい。
【符号の説明】
【0045】
10 流動焼却炉
20 再加熱予熱器
30 冷却手段
40 バグフィルタ
41 導路(再加熱戻り手段)
50 過給機(利用手段)
51 タービン
52 コンプレッサ
54 脱硝装置(利用手段)
70 第2の冷却手段
90 排煙処理塔
100 バイパス路
101 流量調整弁
110 予熱器
【要約】
【課題】集塵効率が高く、燃焼排ガスのもっている熱を有効に回収及び利用を図る。
【解決手段】高温の燃焼排ガスが通りこの燃焼排ガスにより再加熱を図る再加熱予熱器20と、前記燃焼排ガス中の除塵を行い清浄ガスとするバグフィルタ40と、前記再加熱予熱器20からの排ガスを前記バグフィルタ40に導く経路に設けられ、前記排ガスを熱交換して前記バグフィルタ40の操作温度まで冷却し、前記バグフィルタ40に排ガスを導く冷却手段30と、前記バグフィルタ40からの清浄ガスを前記再加熱予熱器20に導き再加熱を図る再加熱戻り手段41と、前記再加熱予熱器20を通った再加熱清浄ガスの利用手段と、を有する燃焼排ガスの処理装置である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6