(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678412
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】ボールを掴んで投げる競技用のボール
(51)【国際特許分類】
A63B 41/00 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
A63B41/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-171570(P2015-171570)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-46859(P2017-46859A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年7月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】100154195
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 敬子
(72)【発明者】
【氏名】脇林 和幸
(72)【発明者】
【氏名】本廣 篤尚
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0266561(US,A1)
【文献】
米国特許第05913739(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0049432(US,A1)
【文献】
米国特許第04000894(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0142780(US,A1)
【文献】
特開2008−049147(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第02208413(DE,A1)
【文献】
実開昭51−149196(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを手で掴んで投げる球技用のボールであって、軟質素材からなるボール本体の表
面の側に表側凹部が前記ボール本体の表面の側から前記ボール本体の側に窪むように設け
られ、この表側凹部の前記ボール本体の表面の側の開口部を囲む縁部が可撓性を有し、当
該開口部がボールを掴む人の手の1つの指の腹部で塞がれる大きさであり、前記人の手で
ボールが掴まれた時、前記表側凹部の前記開口部が前記1つの指の前記腹部で塞がれ、前
記開口部の縁部が前記1つの指の前記腹部で前記ボール本体の側に押されて、前記表側凹
部が前記1つの指の前記腹部に対して吸盤効果を発揮するように構成される一方、前記表側凹部は開口部が狭く奥が広い形状になったことを特徴とするボールを掴んで投げる競技用のボール。
【請求項2】
ボールを手で掴んで投げる球技用のボールであって、軟質素材からなるボール本体の表面の側に表側凹部が前記ボール本体の表面の側から前記ボール本体の側に窪むように設けられ、この表側凹部の前記ボール本体の表面の側の開口部を囲む縁部が可撓性を有し、当該開口部がボールを掴む人の手の1つの指の腹部で塞がれる大きさであり、前記人の手でボールが掴まれた時、前記表側凹部の前記開口部が前記1つの指の前記腹部で塞がれ、前記開口部の縁部が前記1つの指の前記腹部で前記ボール本体の側に押されて、前記表側凹部が前記1つの指の前記腹部に対して吸盤効果を発揮するように構成される一方、前記ボール本体が軟質素材からなる内部球体とそれを被覆する軟質素材からなる複数の表皮体とから構成され、各表皮体が前記表面側凹部の設けられた表面部とこの表面部の周縁部から当該表面部の裏側に突出しかつ当該表面部の周縁部を一周する環状になっている側面部と前記表面部と前記側面部とで囲まれて前記表面部の裏面に設けられた裏側凹部とを備え、前記複数個の表皮体側前記内部球体を被覆した場合には、隣接する前記側面部の前記内部球体の側の面が内部球体の表面に触れ、隣接する前記表面部が前記内部球体の表面より離れて配置され、前記裏側凹部が前記内部球体と前記表皮体との間に前記内部球体と前記表面部と前記側面部とで囲まれた空間として形成されたことを特徴とするボールを掴んで投げる競技用のボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール本体の表面を滑りにくくすることで掴みやすくさせ、投げたりキャッチしたりすることが容易なボールに関する。
【背景技術】
【0002】
図6を参照し、特許文献1の段落0012及び
図2で開示されたゴルフボールについて説明する。
図40に示したゴルフボール101は、内部球体としてのコア102が表面部に多数個の凹部103を有する樹脂カバー104で被覆された構造になっている。
【0003】
しかしながら、特許文献1で開示されたゴルフボール101にあっては、飛距離を大きく伸ばす構造であるものの、凹部103がボール1を掴みやすい形状になっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−166060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、表側凹部でボール本体の表面が滑りにくくなることでボールが掴みやなり、ボールを投げたりキャッチしたりすることが容易になることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ボール本体の表面の側に表側凹部が設けられ、表側凹部の表面の側の開口部を囲む縁部が可撓性を有し、開口部がボールを掴む指の腹部で塞がれる大きさであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ハンドボール球技のようにボールを手で掴む球技の場合、人がボールを掴んだ時、表側凹部がボールを掴む人の指で塞がれ、吸盤のような効果を発揮し、ボールの表面が滑りにくくなることでボールが掴み易くなり、ボールを投げたりキャッチしたりする場合にプレーのミスの減少につながる。
【0008】
本発明において、表側凹部は間口部が狭く奥が広い形状になっていれば、開口部に指の腹部が引っ掛かり易くなり、上記表側凹部の吸盤のような効果との相乗効果により更にボールが滑りにくくなることで掴み易くなる。又、本発明において、開口部を囲む縁部が鋭角になっていれば、エッジ効果により指の腹部へ引っ掛かり易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発明を実施するための形態1に係るボールの表側凹部と指との関係を示した断面図。
【
図2】発明を実施するための形態1に係るボールの一部をボールの直径方向に切断して示した断面図。
【
図3】発明を実施するための形態1に係るボールを分解して示した斜視図。
【
図4】発明を実施するための形態2に係るボールの一部をボールの直径方向に切断して示した断面図。
【
図5】発明を実施するための形態3に係るボールの一部をボールの直径方向に切断して示した断面図。
【
図6】特許文献1で開示されたゴルフボールをゴルフボールの直径方向に切断して示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至3を参照し、発明を実施するための形態1に係るボール1について説明する。
図3に示したように、ボール1は、表側凹部8がボール本体20の表面9の側に設けられ、表側凹部8の表面9の側の開口部10を囲む縁部11が可撓性を有し、開口部10がボール1を掴む指12の腹部13で塞がれる大きさであることから、ハンドボール球技のようにボール1を手で掴む球技の場合、人がボール1を掴んだ時、表側凹部8がボール1を掴む人の指12の腹部13で塞がれ、吸盤のような効果を発揮し、ボール1の表面が滑りにくくなることでボール1が掴み易くなっている。
【0011】
具体的には、ボール本体20として、内部球体2を表側凹部8の設けられた表皮体3で被覆した構造を例示したが、内部球体2と表皮体3とが断面で双方に違いが分からないように一体になった構造でも、内部球体2が不在で表皮体3のみからなる構造でも、表皮体3が不在で内部球体2のみからなる構造でも適用可能である。即ち、内部球体2を表皮体3で被覆した構造、内部球体2と表皮体3とが断面で双方に違いが分からないように一体になった構造、内部球体2が不在で表皮体3のみからなる構造、表皮体3が不在で内部球体2のみからなる構造のいずれでも、表側凹部8がボール本体20の表面9の側に設けられた構造として一義的に概念できる。
【0012】
図1乃至3では、ボール本体20が内部球体2を複数個の表皮体3で被覆した構造になっている。内部球体2は、樹脂又はゴム等からなる軟質素材からなり、球体又は楕円体又はそれに類似した形状、球体以外にも切頂二十面体のように平面部を設けた球体又は楕円体又はそれに類似した形状、内部球体2の表面に糸の巻き付けられた構造、内部球体2の表面に糸の巻き付けられていない構造、内部球体2の内部が空気の出し入れの可能で膨張可能な中空な構造、内部球体2の内部に空気の出し入れ不可能な中空な構造、内部球体2の内部がクッション材で埋まった中空でない構造のいずれでも適用可能である。
【0013】
表皮体3としては、六角形に限定されるものではなく、六角形を例示したが、1つの内部球体2の表面を全体的に被覆した外皮を構成する形状であれば、一種類とは限らず複数種類であっても適用可能である。表皮体3は、樹脂又はゴム等からなる軟質素材を射出成形又はプレス成形又は真空成形等の成形により形成された構造になっており、表面部4と側面部5と面取部6と裏側凹部7と表側凹部8とを備えた構造を例示した。裏側凹部7に図示のされていない柔軟性を有する発泡体又は不織布等の緩衝材からなるクッション部材を設けても適用可能である。面取部6及び裏側凹部7は存在しなくても適用可能である。
【0014】
図2に示したように、表側凹部8としては、表面部4に多数個設けられ、表面部4の表面9の側から内部に窪む構造を例示した。表側凹部8の表面9の側の開口部10を囲む縁部11が鋭角になって可撓性を有し、表側凹部8は開口部10が狭く奥の横幅が広い形状になった構造を例示した。即ち、表側凹部8は、ボール1の直径方向の断面形状として截頭錐形の窪みになっている。尚、
図2では、縁部11が鋭角の態様を例示したが、鋭角でなくてもよい。又、
図2では、表側凹部8の断面形状として截頭錐形を例示したが、逆截頭錐形、寸胴形、截頭球形などでもよい。
【0015】
図1に示すように、表側凹部8における開口部10は、ボール1を掴む人の手の指12の腹部13で塞がれる大きさであり、人がボール1を掴んだ時、表皮体3の表側凹部8の開口部10が指12の腹部13で塞がれ、縁部11が指12の腹部13で表側凹部8の側に押されて、表側凹部8が吸盤のような効果を発揮し、当該吸盤のような効果によりボール1が滑りにくくなることで掴み易くなり、ボール1を投げたりキャッチしたりすることが容易になる。
【0016】
図3に戻り、面取部6は、表面部4と側面部5との稜角が平面又は曲面になるように除去された構成でも、側面部5と裏面部との交わる部分まで延長された構成でも適用可能である。側面部5は、表面部4の周縁部から表面部4の裏側に突出し、表面部4の周縁部を一周する環状になっている。よって、表面部4の裏面には、表面部4と側面部5とで囲まれた裏側凹部7が形成される。
【0017】
内部球体2が複数個の表皮体3で被覆された場合には、隣接する側面部5の内部球体2の側の面が内部球体2の表面に触れ、隣接する表面部4が内部球体2の表面より離れて配置され、裏側凹部7が内部球体2と表皮体3との間に内部球体2と表面部4と側面部5とで囲まれた空間として形成され、隣接する表皮体3どうしの境目に面取部6に基づく谷部が形成され、谷部に手がかかり、ボール1が握りやすくなり、谷部により、ボール1の外観を手縫い調にすることも可能である。
【0018】
尚、対比例として表皮体3が表面部4に表側凹部8を備えていない場合には、ボール1の表面に汗による水分の付着が発生すると、ボール1の表面が滑りやすくなる。これに対し
図2に示した発明を実施するための形態1に係るボール1にあっては、表皮体3が表面部4に表側凹部8を備えたことで、ボール1の表面に汗による水分の付着が発生しても、水分が表側凹部8に格納され、ボール表面に残りにくい状態になり、ボール表面が滑りにくくなる。又、表側凹部8は開口部10が狭く奥が広い構造により、水分も抜けにくいため保水効果があり、より滑りにくくボールを掴みやすい。
【0019】
図4を参照し、発明を実施するための形態2に係る表皮体3について説明する。
図2では表皮体3が表面部4に表側凹部8を有する構造として表側凹部8が表面部4の表面9から表面部4の内部に窪む態様を例示したが、
図4では表皮体3が表面部4に表側凹部16を有する構造として表面部4の表面9に設けた凸部14の表面15から凸部14の内部に窪む態様を例示した。具体的には、
図4に示した表皮体3は、表面部4の表面9に多数個の凸部14を表面9よりボール1の直径方向外側に突出して備え、凸部14の表面15に表側凹部16を凸部14の表面15の側から内部に窪む構造になっている。表側凹部16の表面15の側の開口部17が表面15の全域広がり、開口部17を囲む縁部18が鋭角になって可撓性を有する。表側凹部16は、開口部17が狭く奥が広い形状になっていないことが
図2に示した表側凹部8と相違する。
【0020】
即ち、
図4に示した表側凹部16は、ボール1の直径方向の断面形状として半円形の窪みになっている。又、表側凹部16の開口部17は、
図1に示した表側凹部8の開口部10がボール1を掴む人の手の指12の腹部13に対する吸盤のような効果を発揮する構造に類似する構造になっている。よって、
図4に示した表側凹部16の開口部17は、
図1に示したボール1を掴む人の手の指12の腹部13で塞がれる大きさであり、人がボール1を掴んだ時に
図4に示した表側凹部16の開口部17が指12の腹部13で塞がれ、縁部18が指12の腹部13で表側凹部16の側に押され、表側凹部16が吸盤のような効果を発揮し、当該吸盤のような効果によりボール1が滑りにくくなることで掴み易くなり、ボール1を投げたりキャッチしたりすることが容易になる。
【0021】
図5を参照し、発明を実施するための形態3に係る表皮体3について説明する。
図5に示した表皮体3は、凸部14の表面15に設けられた表側凹部16の開口部17が
図4に示した表側凹部16の開口部17よりも小さく、開口部17を囲む縁部18が表面15に薄肉部となって可撓性を有することが
図4に示した表側凹部16と相違する。又、
図5に示した表側凹部16の開口部17は、
図1に示したボール1を掴む人の手の指12の腹部13で塞がれる大きさであり、人がボール1を掴んだ時に
図5に示した表皮体3の表側凹部16の開口部17が指12の腹部13で塞がれ、縁部18が指12の腹部13で表側凹部16の側に押され、表側凹部16が吸盤のような効果を発揮し、当該吸盤のような効果によりボール1が滑りにくくなることで掴み易くなり、ボール1を投げたりキャッチしたりすることが容易になる。
【符号の説明】
【0022】
1 ボール
2 内部球体
3 表皮体
4 表面部
5 側面部
6 面取部
7 裏側凹部
8 表側凹部
9 表面部4の表面
10 表側凹部8の開口部
11 表側凹部8の縁部
12 ボール1を掴む人の指
13 指12の腹部
14 凸部
15 凸部14の表面
16 表側凹部
17 表側凹部16の開口部
18 開口部17の縁部
20 ボール本体