特許第6678419号(P6678419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678419
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】昇降機能を備えた車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20200330BHJP
   A61G 5/02 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   A61G5/14
   A61G5/02 701
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-199209(P2015-199209)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-70482(P2017-70482A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】392036223
【氏名又は名称】株式会社森山鉄工
(73)【特許権者】
【識別番号】515278880
【氏名又は名称】花岡 直児
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】森山 清次
(72)【発明者】
【氏名】花岡 直児
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−037439(JP,A)
【文献】 特開2003−199796(JP,A)
【文献】 特開2005−168635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00−5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子を構成するフレームの後方両側には後輪を取付け、前方両側にはキャスターを取付け、またキャスターの前方には足を載せる為のフットサポートを備えた車椅子において、上記キャスターによって支持されるフレームの前方側が昇降する昇降手段を取付け、車椅子に乗降りする際には上記フットサポートが地面に接地するように構成し、上記昇降手段として、キャスターを取付けている基板には昇降アームとハンドルレバーが同時に揺動するように軸を介して取付け、上記昇降アームの先端にはローラを軸支して下フレームを支持し、ハンドルレバーの操作にて昇降アームが揺動してフレームを昇降動させるようにしたことを特徴とする昇降機能を備えた車椅子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は身体の悪い身体障害者が楽に乗降りすることが出来るように、昇降機能を備えた車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子は身体障害者、病人、歩行が困難になった人々にとっては必需品であり、高齢化社会へ突き進んでいる我が国では今後益々車椅子の利用者が増えることになる。車椅子にもその型式は色々あるが、近年ではその需要が40万台を越えている。このように車椅子人口が多いことから、車椅子の改良も色々行われている一方、車椅子の利用がしやすい環境整備もなされている。
【0003】
例えば、車椅子が移動しやすいように歩道や公園が整備され、駅の構内やホテルなどでも車椅子で移動しやすい造りと成っている。また、自動車にしても車椅子を搭載することが出来るようにした車種も市販され、車に載せて運び易くする為であり片付け易くする為にも、車椅子自体もコンパクトに折畳むことが出来る構造としている。
【0004】
図8は従来の一般的な車椅子の外観を示している。車椅子は椅子に車輪を装着した構造で、椅子に座った状態で移動することが出来るように構成している。同図の(イ)は後輪、(ロ)はキャスター、(ハ)は椅子、(ニ)はハンドル、(ホ)はハンドリム、(ヘ)は背凭れ、(ト)はアームサポート、(チ)はサイドカバー、(リ)はブレーキハンドル、(ヌ)はフットサポートをそれぞれ表している。
【0005】
車椅子は上記2個の後輪(イ)、(イ)と2個のキャスター(ロ)、(ロ)にて支持されて移動可能な構造としているが、椅子(ハ)の後方にはハンドル(ニ)、(ニ)を有し、後輪(イ)、(イ)と同芯を成して取付けられている自走用のハンドリム(ホ)、(ホ)、そして、フットサポート(ヌ)、(ヌ)を備えている。椅子(ハ)には身体障害者が座ることが出来、介護者がいる場合にはハンドル(ニ)、(ニ)を握って車椅子を操作することが出来、介護者がいない時には身体障害者自らが自走用のハンドリム(ホ)、(ホ)を回して移動することが出来る。
【0006】
所定の場所に停止している場合には、ブレーキハンドル(リ)を操作して後輪(イ)の回転を固定する。前輪となるキャスター(ロ)、(ロ)はその向きを自由に変更することが出来るように軸支され、車椅子の移動方向を変えることが出来る。そして、身体障害者は椅子(ハ)に座ると共に足はフットサポート(ヌ)、(ヌ)に載せることが出来、該フットサポート(ヌ)、(ヌ)は足を載せるために水平に配置されているが、車椅子に乗り降りする際にはこのフットサポート(ヌ)、(ヌ)の存在が邪魔になる。
【0007】
そこで、フットサポート(ヌ)、(ヌ)は車椅子のフレームを構成する斜めに垂下する前フレーム(ル)、(ル)の先端から屈曲して前方へ延びる軸に軸支され、該軸を中心として回転して起立することが出来る構造と成っている。したがって、乗り降りする際には、フットサポート(ヌ)、(ヌ)を起立させておき、椅子(ハ)に座った後で水平に倒している。又、椅子(ハ)から降りる場合にもフットサポート(ヌ)、(ヌ)を起立させることが必要である。
【0008】
介護者がいる場合には問題ではないが、上記フットサポート(ヌ)、(ヌ)を身体障害者自らが行うことは大変であり、重症の身体障害者であればフットサポート(ヌ)、(ヌ)を自ら起立したり倒したりすることは出来ない。椅子(ハ)に座った状態では手を伸ばしてもフットサポート(ヌ)、(ヌ)に届かず、該フットサポート(ヌ)、(ヌ)を倒したままの状態で車椅子から降りなくてはならない。その為に、身体のバランスを崩して転倒するといった事態を招く。
【0009】
従来においても車椅子に関する特許出願は色々行われている。特開2003−334216号に係る「車椅子」は、走向中の段差などの障害物を容易に乗り越えることが可能な車椅子であり、その為に障害物乗り越え装置を備えている。また、特開2002−177333号に係る「介護用車椅子」は、ベッドから車椅子に乗り易く、車椅子からベッドに降りやすく、さらに車椅子から降りることなく用便などを容易にしたり、シャワーをすることが出来るように機能する車椅子である。
【0010】
特開2001−299823号に係る「身体障害者用の車椅子」は、座った状態で足を載せるフットレストをフレームの軸に回転可能に軸支したもので、着座部に座ることで体重が働くことでフットレストが回転して水平に配置し、着座部から立つならばバネ力にてフットレストが起立するように成っている。
したがって、乗降りする際に一々フットレスト(フットサポート)を起立させる必要はないが、車椅子から降りる際には着座部にまだ体重が作用している為にフットレストは水平に倒れた状態にあり、これが邪魔になる。
【特許文献1】特開2003−334216号に係る「車椅子」
【特許文献2】特開2002−177333号に係る「介護用車椅子」
【特許文献3】特開2001−299823号に係る「身体障害者用の車椅子」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、従来の車椅子には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、フットサポート(足掛け)を起立させたり倒したりすることなく、楽に乗降りすることが出来る車椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る車椅子は、椅子に後輪と前輪(キャスター)を備えて移動できるように構成したもので、正面には足を載せるフットサポート、後方には手押しハンドルを有し、その基本的な構造は従来の車椅子と同じである。
ところで、従来の車椅子では乗降りする際に上記フットサポートが邪魔になることから、該フットサポートを起立させることが出来るようにしており、椅子に座った状態で起立したフットサポートを元の位置に倒すことが出来る。
【0013】
地面から所定の高さに位置するフットサポートに足を掛けたのでは、該車椅子が転倒する虞がある為に、フットサポートを起立させた状態で乗降りするようにしている。本発明では該フットサポートを起立させないで車椅子のフレーム前方側を降下し、フットサポートを地面に接地させるように構成している。すなわち、フットサポートを地面まで降下した状態で乗降りすることが出来るようにしている。
【0014】
本発明の車椅子はキャスターにてフレーム前方側を支持しているが、前方側が昇降動することが出来る構造としている。そこで、本発明では昇降手段を備え、この昇降手段にて車椅子のフレーム前方側が昇降動することが出来る。ここで、該昇降手段の具体的な構造は限定せず、例えばスクリュー−ナット機構を用いることが可能であり、モータにて回転するスクリューに螺合するナットはフレームと共に昇降動することが出来る。また、リンク機構やレバーを用いて手動で昇降動するように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車椅子は、フレームの前方側が降下してフットサポートは地面に接地することが出来る。したがって、車椅子に乗降りする場合、該フットサポートを起立させることなく、地面に接地したフットサポートに足を載せて椅子に腰掛けることが出来る為に便利である。フットサポートは地面に接地している為に、フットサポートに載っても車椅子が転倒することはない。
そして、椅子に腰掛けた後で、降下したフレーム前方側を上昇するならば、フットサポートは地面から離れ、車椅子は自由に移動することが出来る。
一方、本発明の車椅子はそのフレーム前方側が降下する為に椅子の座席の高さは通常より低く成り、身体障害者や老人にとって腰掛け易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る車椅子の実施例で、フットサポートが上昇している場合。
図2】本発明に係る車椅子の実施例で、フットサポートが降下して地面に接地している場合。
図3】スクリューとナットを組み合せた昇降手段を示す具体例。
図4】フレーム前方側の詳細図で、フットサポートが上昇している場合。
図5】フレーム前方側の詳細図で、フットサポートが降下して地面に接地している場合。
図6】ブレーキハンドルのロック金具で後輪をロックしている詳細図。
図7】レバー操作による昇降手段を示す具体例。
図8】従来からの一般的な車椅子の外観。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図2は本発明に係る車椅子を示す実施例であり、フットサポートが地面から浮上している場合と地面に接地している場合をそれぞれ表している。
基本構造は前記図8に示しているものと共通している。すなわち、椅子1は金属製のフレーム30で構成して座部2と背凭れ3を有し、椅子1を構成するフレーム30は2個の後輪4,4と2個のキャスター5,5にて支持されている。キャスター5,5はその向きを自由に変えることが出来るように成っている為に、車椅子は目的の場所へ移動することが出来る。
【0018】
座部2から湾曲して斜め下方へ延びる前フレーム6,6の下端にはフットサポート(足掛け)7,7が取付けられている。フットサポート7,7はキャスター5,5の前方に位置し、地面から所定の高さに配置されている。また、図2に示すように、本発明の車椅子はフットサポート7,7を降下して地面に接地することも出来る。
同図に示す車椅子の場合、背凭れ3にはハンドル8,8を備えており、介護者は該ハンドル8,8を握って車椅子を押すことが出来、またハンドル8,8の握り部にはブレーキレバー9,9を取付けている。
【0019】
上記後輪4,4の外側に外径を後輪4,4より僅かに小さくしているハンドリム10,10が同心を成して取付けられ、車椅子に乗る身体障害者は両ハンドリム10,10を握って回転することで後輪4,4が回り、該車椅子を移動することが出来る。
また、椅子1の外側にはブレーキハンドル11,11が取付けられ、該ブレーキハンドル11,11を操作してブレーキを掛けるならば、後輪4,4がロックされる。
【0020】
ところで、本発明に係る車椅子は椅子を構成しているフレームは2個の後輪4,4と2個のキャスター5,5にて支持されているが、該キャスター5,5にて支持されているフレームの前方側は昇降動することが出来るように成っている。
キャスター5は基板12の下側に取付けられ、基板12の両側にはガイドポスト13,13が起立し、このガイドポスト13,13は下フレーム17に起立して設けたガイド14a,14bに嵌って上下スライドすることが出来る。
【0021】
そして、基板12の中央には脚15が起立し、該脚15がモータ16の回転駆動にて上下方向にスライドすることが出来るように構成している。
図3は昇降手段を示す具体例であり、キャスター5を取付けている基板12の中央に起立する脚15は、その上端にナット18が取着されている。そして、ナット18はスクリュー32に螺合すると共に回転することなくケース19に沿って上下方向にスライドすることが出来る。
【0022】
ここで、上記ケース19は椅子を構成するフレーム30に取着されており、モータ16が回転するならば、ギヤ20a,20b,20cを介して上記スクリュー32が回転する。スクリュー32の位置は変わらないように支持されている為に、該スクリュー32に螺合しているナット18はスクリュー32の回転と共にケース19に沿って上昇することが出来る。したがって、ナット18の上昇と共にフレーム30は降下し、上記スクリュー32は脚15の中心軸部に形成した穴31に嵌って降下する。
【0023】
フレーム30は、基板12の両側に起立している2本のガイドポスト13,13が下フレーム17に起立したガイド14a,14bに案内されてスムーズに降下することが出来る。同図はフレーム30が上昇している状態であり、椅子1を構成するフレーム30の前方側は昇降手段にて押し上げられた高い位置にある。したがって、前フレーム6の先端(下端)に取着しているフットサポート7,7は上昇しており、地面から所定の高さにある。
そこで、スクリュー32が回転してナット18が上方へスライドするならば、フレーム30は降下することに成り、フットサポート7,7は地面に接地することが出来る。
【0024】
図4はフレーム30が上昇している場合の車椅子の前方側を示している。キャスター5を取付けている基板12と下フレーム17との間に大きな空間21が形成され、フレーム30は押し上げられてフットサポート7は地面から所定の高さに位置している。
図5はフレーム30が降下し、下フレーム17は基板12に当接している。したがって、フットサポート7も下フレーム17と共に降下し、地面に接地している。この場合、フットサポート7が地面に接地することでキャスター15が地面から僅かに浮上することもある。
【0025】
図3に示すように、ケース19には上部近接スイッチ22と下部近接スイッチ23が取付けられ、この両近接スイッチ22,23の間をナット18は上下動することが出来る。図3ではナット18が降下して停止した状態であり、基板12と下フレーム17との間には大きな空間21が形成されてフットサポート7は持ち上げられている。
そして、ナット18が上昇して上部近接スイッチ22に近接するならば、下フレーム17は降下して図5に示すように基板12に当接することに成る。同時にフットサポート7も降下して地面に接地する。
【0026】
ところで、フレーム30の昇降動は安全のために後輪4が回転しないようにロックした状態でなくては上記モータ16は作動しないように制御されている。すなわち、図6に示すブレーキハンドル11を操作するならば、ロック金具33がタイヤ34に食い込んで後輪4が回転しないようにロックされる。この状態にしなくてはモータ16が回転駆動することなく、フレーム30の昇降動を行うことが出来ない。
【0027】
本発明の車椅子では、その乗り降り時にフレーム30を降下してフットサポート7,7が接地することが出来る。したがって、地面に接地したフットサポート7,7の上に足を掛けて椅子1の座席2に安全に座ることが出来る。フットサポート7,7が地面に接地することでフレーム30が降下し、該フレーム30に設けている座席2も降下して座席2の高さは低くなる。その為に、身体の悪い身体障害者にとって座席2の高さが低くなることで楽に座ることが可能となる。
【0028】
フレーム30を昇降動する為の昇降手段は上記実施例で説明したスクリュー−ナット機構に限るものではない。そして、スクリューを回転駆動する手段としてモータ16でなく手動によるハンドル操作することも可能である。
図7はレバーの揺動にてフレーム30の昇降動を可能とした昇降手段である。同図において基板12にはブラケット26を固定すると共に該ブラケット26に設けた軸27に昇降アーム24が揺動出来るように軸支している。
【0029】
また、同じ軸27にはハンドルレバー25が揺動可能に軸支され、該ハンドルレバー25を揺動することで上記昇降アーム24も揺動できるように連結されている。そして、昇降アーム24の先端にはローラ28が取付けられ、該ローラ28にて下フレーム17が支持されている。同図は下フレーム17が最も高く押し上げられた状態であり、昇降アーム24はそれ以上揺動しないように下フレーム17にはストッパー29が固定され、また、ハンドルレバー25が元に戻らないように所定の位置で停止することが出来るように成っている。
【0030】
上記ハンドルレバー25は反時計方向に揺動するならば、昇降アーム24も同じ方向に揺動して下フレーム17はガイドポスト13,13に沿って降下し、フットサポート7,7は地面に接地する。身体障害者は地面に接地しているフットサポート7,7に足を載せて椅子1の座席2に座り、その状態で手を伸ばしてハンドルレバー25を握って手前に引くならば、該レバーハンドル25と共に昇降アーム24は時計方向に揺動して下フレーム17は押し上げられ、フットサポート7,7は地面から離れる。
【符号の説明】
【0031】
1 椅子
2 座席
3 背凭れ
4 後輪
5 キャスター
6 前フレーム
7 フットサポート
8 ハンドル
9 ブレーキレバー
10 ハンドリム
11 ブレーキハンドル
12 基板
13 ガイドポスト
14 ガイド
15 脚
16 モータ
17 下フレーム
18 ナット
19 ケース
20 ギヤ
21 空間
22 上部近接スイッチ
23 下部近接スイッチ
24 昇降アーム
25 ハンドルレバー
26 ブラケット
27 軸
28 ローラ
29 ストッパー
30 フレーム
31 穴
32 スクリュー








図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8