(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版を用いて、凹版印刷法により、線長方向に対して垂直な方向の断面における幅が、20μm以下である金属細線を形成するための金属インク組成物であって、
樹脂成分の含有量が0.5質量%未満であり、
温度25℃、角周波数0.1rad/sの場合の損失係数(tanδ)が、0.9以上50.0以下である金属インク組成物。
基板上に、線幅が20μm以下である配線を形成する方法であって、溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版の溝に、金属インク組成物を供給する工程と、
余剰の金属インク組成物を除去する工程と、
前記版から転写材へ前記金属インク組成物を転写する工程と、
前記金属インク組成物を転写した転写材を乾燥し、導電性の被膜を形成する工程と、を有し、
前記金属インク組成物が、樹脂成分の含有量が0.5質量%未満であり、温度25℃、角周波数0.1rad/sの場合の損失係数(tanδ)が、0.9以上50.0以下である、配線の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪金属インク組成物≫
本発明の金属インク組成物は、溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版を用いた、凹版印刷法に用いられる。
図4に、本発明の金属インク組成物を用いることができる凹版印刷版の一例を示す。
図4に示すのは、版20の細線パターン形成部における溝の長手方向に直交する方向の断面図である。符号21は、周辺のパターン非形成部を示す。凹版印刷法により、溝部22中にインクを充填し、印刷基材にその溝部22中のインクを転写する。
本発明の金属インク組成物は、印刷版の溝において、例えば
図4に示す溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版を用い、線幅が20μm以下である金属細線を形成するために用いられる。
【0012】
本発明の金属インク組成物は、印刷法としてグラビア印刷に代表される凹版印刷法に適用するものであり、グラビアオフセット印刷法が最も好ましく適用できる。
本発明の金属インク組成物が適用できる印刷装置は、グラビア印刷に代表される凹版印刷法に用いるものとして、公知の印刷装置を採用でき、金属製で表面に金属細線の型となる溝を有する凹版を備えたものを用いることができる。オフセットロールとしては、金属製の筒体の表面がブランケット材で被覆されたものを用いることができ、ブランケット材の材質としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、天然ゴム等の弾性材が例示でき、これらの中でも、耐久性、耐油性が高く、さらに十分な弾性とともに適度にコシを有している点で、特にシリコーン樹脂が好ましく、硬質の基板に対してグラビアオフセット印刷を行うのに特に好適である。
【0013】
本発明の金属インク組成物は、溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす、換言すれば、溝の深さが深い版を用いた場合であっても、版詰まりを生ずることが無く、線幅が20μm以下である金属細線を形成することができる。
本発明においては、用いる版は、b/aが1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることが特に好ましい。
また、b/aは5以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4以下であることが特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0014】
印刷版は、
図4に示す一例においては溝の側面23と、溝の底面24は平面であるが、溝の側面23と、溝の底面24は、曲面、凹凸面等の非平面であってもよい。
溝の幅aと、溝の深さbとが部位によって変動する場合には、a及びbとしてそれぞれの最大値を採用するものとする。
【0015】
本発明の金属インク組成物は、レオメータ(例えばAnton Paar社製MCRシリーズ、Thermo Scientific社製 HAAKE MARSシリーズ等)を用いて、25℃で0.1rad/sの周波数で正弦振動させたときの貯蔵弾性率(Pa)と損失弾性率(Pa)から算出される損失係数(tanδ)(損失弾性率/貯蔵弾性率)が、0.7以上50.0以下である。
角周波数0.1rad/sの場合の、損失係数(tanδ)(損失弾性率/貯蔵弾性率)は、0.8以上40.0以下が好ましく、0.9以上30.0以下が特に好ましい。
本発明の金属インク組成物の損失係数(tanδ)が上記の範囲であると、金属インク組成物に高い流動性が確保され、適度な粘性を付与でき、溝の深さが深い版を用いた場合であっても、版詰まりを生ずることが無く、線幅が20μm以下である金属細線を安定して形成することができる。
【0016】
また、角周波数が0.1rad/s以外の場合の損失係数が、0.7以上75以下であってもよい。
例えば、角周波数が1.0rad/sの場合の損失係数(tanδ)は、1.0以上75以下が好ましく、1.2以上40以下であることがより好ましい。
例えば、角周波数が10rad/sの場合の損失係数(tanδ)は、1.5以上75下が好ましく、2.0以上50以下であることがより好ましく、例えば、20以下や10以下等であってもよいが、これらは一例である。
損失係数(tanδ)が上記所定の範囲である金属インク組成物とすることにより、溝の深さが深い版を用いた場合であっても、版詰まりを生ずることが無く、線幅が20μm以下である金属細線を安定的に形成することができる。
【0017】
本発明の金属インク組成物は、レオメータ(例えばAnton Paar社製MCRシリーズ、Thermo Scientific社製 HAAKE MARSシリーズ等)を用いて25℃で0.1rad/s〜10rad/sの各周波数で正弦振動させたとき(周波数分散測定を行ったとき)の貯蔵弾性率(Pa)と損失弾性率(Pa)が、それぞれ100Pa以下であることが好ましい。なお、この時、測定時に与える歪は線形歪範囲内とする。
例えば、0.1rad/sの周波数における、貯蔵弾性率(Pa)と損失弾性率(Pa)は、それぞれ50Pa以下であることがより好ましく、25Pa以下であることがより好ましく、10Pa以下であることが特に好ましい。
例えば、1rad/sの周波数における、貯蔵弾性率(Pa)と損失弾性率(Pa)は、それぞれ50Pa以下であることがより好ましく、25Pa以下であることがより好ましく、15Pa以下であることが特に好ましい。
例えば、10rad/sの周波数における、貯蔵弾性率(Pa)は、60Pa以下であることがより好ましく、40Pa以下であることがより好ましく、30Pa以下であることが特に好ましい。
10rad/sの周波数における、損失弾性率(Pa)は、90Pa以下であることがより好ましく、80Pa以下であることがより好ましく、75Pa以下であることが特に好ましい。
【0018】
また、本発明の金属インク組成物の粘度は、25℃において1Pa・s以上であることが好ましい。
金属インク組成物の粘度は、25℃において1Pa・s以上であると、グラビア印刷に代表される凹版印刷法、特にグラビアオフセット印刷法に適した特性とすることができる。
【0019】
また、金属インク組成物の粘度の評価方法として、チキソトロピー指数がある。本発明の金属インク組成物は、例えば、下記式(T1)で定義されるチキソトロピー指数が10以下であることが好ましく、8.0以下がより好ましく、5,0以下が特に好ましい。
チキソトロピー指数=(25℃、せん断速度0.1s
−1で測定した粘度)/(25℃、せん断速度10s
−1で測定した粘度)…(T1)
【0020】
チキソトロピー指数を算出するための粘度は、例えば粘弾性測定装置(レオメータ)を用いて測定することができる。本明細書においては、特定のせん断速度での粘度を「せん断粘度」と略記することがある。
チキソトロピー指数が上記の範囲であると、例えば、金属インク組成物を設計通りの幅に印刷するのに好適である。
【0021】
本発明の金属インク組成物の物性は、例えば、金属インク組成物の配合成分、製造方法により調整できる。
【0022】
以下、本発明の金属インク組成物を構成する各成分について説明する。
【0023】
金属インク組成物は、例えば、金属の形成材料及び金属の形成材料以外の成分を配合することにより、得ることができる。
前記金属の形成材料は、金属原子(元素)を有し、分解等の構造変化によって金属を生じるものであればよく、金属塩、金属錯体、有機金属化合物(金属−炭素結合を有する化合物)等が例示できる。前記金属塩及び金属錯体は、有機基を有する金属化合物及び有機基を有しない金属化合物のいずれでもよい。なかでも金属の形成材料は、加熱によって分解し、金属を形成するものが好ましく、金属塩であることが好ましい。
金属の形成材料を用いることで、前記材料から金属が生じ、この金属を含む金属細線が形成される。この場合の金属細線は、先に説明したように、金属を主成分とするものであり、金属の比率が十分に高い。
本発明においては、金属の形成材料は金属銀の形成材料であることが好ましい。
【0024】
[カルボン酸銀]
金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。
本発明において、カルボン酸銀は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
【0025】
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
【0026】
【化1】
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R
1−CY
12−」、「CY
13−」、「R
1−CHY
1−」、「R
2O−」、「R
5R
4N−」、「(R
3O)
2CY
1−」若しくは「R
6−C(=O)−CY
12−」で表される基であり;
Y
1はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R
1は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R
2は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;R
3は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;R
6は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
X
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R
7O−」、「R
7S−」、「R
7−C(=O)−」若しくは「R
7−C(=O)−O−」で表される基であり;
R
7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
【0027】
【化2】
(式中、R
8は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
【0028】
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R
1−CY
12−」、「CY
13−」、「R
1−CHY
1−」、「R
2O−」、「R
5R
4N−」、「(R
3O)
2CY
1−」若しくは「R
6−C(=O)−CY
12−」で表される基である。
【0029】
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示できる。
【0030】
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が例示できる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
【0031】
Rにおける前記アルケニル基としては、ビニル基(エテニル基、−CH=CH
2)、アリル基(2−プロペニル基、−CH
2−CH=CH
2)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH
3)、イソプロペニル基(−C(CH
3)=CH
2)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH
2−CH
3)、2−ブテニル基(−CH
2−CH=CH−CH
3)、3−ブテニル基(−CH
2−CH
2−CH=CH
2)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH
2−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
【0032】
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が例示できる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
【0033】
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C
6H
5)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0034】
RにおけるY
1は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R
1−CY
12−」、「CY
13−」及び「R
6−C(=O)−CY
12−」においては、それぞれ複数個のY
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0035】
RにおけるR
1は、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C
6H
5−)であり、R
1における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
2は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
3は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R
4及びR
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR
6は、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、R
6における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0036】
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R
6−C(=O)−CY
12−」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、R
6は、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
【0037】
一般式(1)において、X
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C
6H
5−CH
2−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C
2H
5−O−CH=CH−)、又は一般式「R
7O−」、「R
7S−」、「R
7−C(=O)−」若しくは「R
7−C(=O)−O−」で表される基である。
X
1における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
【0038】
X
1におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
X
1におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO
2)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0039】
X
1におけるR
7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(C
4H
3S−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C
6H
5−C
6H
4−)である。R
7における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。また、R
7におけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R
7がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、X
1において隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
【0040】
一般式(1)において、2個のX
1は、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては式「=CH−C
6H
4−NO
2」で表される基が例示できる。
【0041】
X
1は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R
7−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のX
1が水素原子であることが好ましい。
【0042】
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
3)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
2CH
3)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CH
3CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CH
3)
3C−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH
3(CH
2)
3CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
2CH
2CH
2CH
3)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH
3−C(=O)−CH(CH
2C
6H
5)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C
6H
5−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CH
3)
3C−C(=O)−CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CH
3)
3C−C(=O)−CH(−C(=O)−CH
3)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH
3)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH
2−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
【0043】
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
【0044】
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。還元剤については後ほど説明する。
【0045】
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0046】
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、R
8は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
R
8における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、R
8における前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0047】
R
8における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH
2−)を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH
2−」で表される基だけでなく、式「−CH
2−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH
2−」で表される基も含むものとする。
【0048】
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH
3−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH
3−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH
3−(CH
2)
2−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CH
3)
2CH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH
3−(CH
2)
3−CH(CH
2CH
3)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH
3−(CH
2)
5−C(CH
3)
2−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH
2−C(=O)−OAg)も好ましい。
【0049】
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
【0050】
本発明において、カルボン酸銀(4)は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0051】
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、金属インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
【0052】
金属インク組成物において、前記金属銀の形成材料に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された導電体(金属銀)は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
また、金属の形成材料に由来する銀の含有量は、50質量%未満であることが好ましく、48質量%以下であることがより好ましい。
銀の含有量が上記範囲であると、貯蔵弾性率、損失弾性率及びtanδを高すぎず、適度な粘度とすることができる。
なお、本明細書において、「金属銀の形成材料に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、金属インク組成物の製造時に配合された前記金属銀の形成材料中の銀を意味し、配合後に引き続き金属銀の形成材料を構成している銀と、配合後に金属銀の形成材料が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
【0053】
[含窒素化合物]
本発明の金属インク組成物は、特に前記金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合には、前記金属銀の形成材料以外に、さらに含窒素化合物が配合されていることが好ましい。
本発明の金属インク組成物は、後述する含窒素化合物のうち、炭素数が8以上の第1含窒素化合物と、炭素数が7以下の第2含窒素化合物とが配合されていてもよい。
本発明の金属インク組成物においては、前記第1含窒素化合物の配合量に対する前記第2含窒素化合物の配合量の割合が0モル%より大きく、18モル%未満であることが好ましい。第1含窒素化合物の配合量に対する第2含窒素化合物の配合量が0モル%より大きく、18モル%未満であると、金属インク組成物の貯蔵弾性率と損失弾性率を温度25℃、角周波数0.1rad/sの場合の損失弾性率及び貯蔵弾性率より算出される損失係数(tanδ)を0.7以上とすることができる。
これにより、金属インク組成物に高い流動性が確保され、適度な粘性を付与でき、溝の深さが深い版を用いた場合であっても、版詰まりを生ずることが無く、線幅が20μm以下である金属細線を安定的に形成することができる。
【0054】
本発明においては、前記第1含窒素化合物の配合量に対する前記第2含窒素化合物の配合量の割合が25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることが特に好ましい。
また、前記第1含窒素化合物の配合量に対する前記第2含窒素化合物の配合量の割合の下限値は1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが特に好ましい。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0055】
本発明の金属インク組成物は、後述する「金属インク組成物の製造方法」によって製造することができるが、前記第1含窒素化合物と、前記第2含窒素化合物とを併用する場合には、還元剤を添加する工程の前における第1含窒素化合物の配合量に対する第2含窒素化合物の配合量の割合が上記所定の範囲であることが好ましい。
【0056】
含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上である。すなわち、配合される含窒素化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
これらのなかでも、炭素数が8以上含窒素化合物を第1含窒素化合物とし、炭素数が7以下の含窒素化合物を第2含窒素化合物とし、以下においても同様とする。
【0057】
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH
2)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
【0058】
前記第1級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が例示できる。
【0059】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示でき、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
これらの中でも、第1含窒素化合物としては、2−エチルヘキシルアミンが好ましく、第2含窒素化合物としては、イソブチルアミンが好ましい。
【0060】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示でき、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0061】
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子が例示できる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
【0062】
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
【0063】
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH
2)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたものが例示できる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
【0064】
前記第2級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が例示できる。
【0065】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
【0066】
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0067】
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0068】
前記第3級アミンとしては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が例示できる。
【0069】
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
【0070】
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
【0071】
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が例示できる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
【0072】
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
【0073】
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
【0074】
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF
3)等が例示できる。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0075】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0076】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、かかるアリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
【0077】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、かかるアルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミンが例示できる。
【0078】
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、金属インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに金属細線の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
【0079】
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
【0080】
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
【0081】
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0082】
金属インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量(含窒素化合物として、第1含窒素化合物と、第2含窒素化合物との混合物を採用する場合には、第1含窒素化合物と、第2含窒素化合物の合計量)は、前記金属の形成材料の配合量1モルあたり0モル%より大きく、0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましい。前記含窒素化合物(含窒素化合物として、第1含窒素化合物と、第2含窒素化合物との混合物を採用する場合には、第1含窒素化合物と、第2含窒素化合物の合計量)の前記配合量がこのような範囲であることで、金属インク組成物は安定性がより向上し、導電体(金属)の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電体を形成できる。
【0083】
[還元剤]
金属インク組成物は、前記金属の形成材料と含窒素化合物以外に、さらに還元剤が配合されてなるものが好ましい。還元剤を配合することで、前記金属インク組成物は、金属をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する導電体(金属)を形成できる。
【0084】
前記還元剤は、シュウ酸、ヒドラジン及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)からなる群から選択される一種以上の還元性化合物(以下、単に「還元性化合物」と略記することがある)であることが好ましい。
H−C(=O)−R
21 ・・・・(5)
(式中、R
21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
【0085】
(還元性化合物)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(H
2N−NH
2)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上である。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0086】
R
21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0087】
R
21における炭素数20以下のアルコキシ基は、炭素数が1〜20であり、R
21における前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
【0088】
R
21における炭素数20以下のN,N−ジアルキルアミノ基は、炭素数が2〜20であり、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記アルキル基はそれぞれ炭素数が1〜19である。ただし、これら2個のアルキル基の炭素数の合計値が2〜20である。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0089】
前記還元性化合物として、ヒドラジンは、一水和物(H
2N−NH
2・H
2O)を用いてもよい。
【0090】
前記還元性化合物で好ましいものとしては、ギ酸(H−C(=O)−OH);ギ酸メチル(H−C(=O)−OCH
3)、ギ酸エチル(H−C(=O)−OCH
2CH
3)、ギ酸ブチル(H−C(=O)−O(CH
2)
3CH
3)等のギ酸エステル;プロパナール(H−C(=O)−CH
2CH
3)、ブタナール(H−C(=O)−(CH
2)
2CH
3)、ヘキサナール(H−C(=O)−(CH
2)
4CH
3)等のアルデヒド;ホルムアミド(H−C(=O)−NH
2)、N,N−ジメチルホルムアミド(H−C(=O)−N(CH
3)
2)等のホルムアミド類(式「H−C(=O)−N(−)−」で表される基を有する化合物);シュウ酸が例示できる。
【0091】
金属インク組成物において、還元剤の配合量は、前記金属の形成材料の配合量1モルあたり0.04〜3.5モルであることが好ましく、0.06〜2.5モルであることがより好ましい。還元剤の前記配合量がこのような範囲であることで、金属インク組成物は、より容易に、より安定して導電体(金属)を形成できる。
【0092】
[アルコール]
金属インク組成物は、前記金属の形成材料、含窒素化合物、還元剤以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
【0093】
前記アルコールは、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール類(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0094】
【化3】
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
【0095】
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
【0096】
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が例示でき、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0097】
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0098】
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2−プロピン−1−オール、4−エチル−1−オクチン−3−オール、3−エチル−1−ヘプチン−3−オールが例示できる。
【0099】
アセチレンアルコール(2)を用いる場合、金属インク組成物において、アセチレンアルコール(2)の配合量は、前記金属の形成材料の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.03〜0.3モルであることがより好ましく、0.05〜0.3モルであってもよい。アセチレンアルコール(2)の前記配合量がこのような範囲であることで、金属インク組成物の安定性がより向上する。
【0100】
前記アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0101】
[その他の成分]
金属インク組成物は、前記金属の形成材料、含窒素化合物、還元剤及びアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
金属インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
金属インク組成物における前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0102】
前記アルコール以外の溶媒は、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。好ましい溶媒としては、例えば、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等の脂肪族炭化水素;エタノール、2−プロパノール等の飽和脂肪族アルコール;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
金属インク組成物における前記その他の成分の配合量は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、前記その他の成分がアルコール以外の溶媒である場合、前記溶媒の配合量は、銀インク組成物の粘度等、目的に応じて選択すればよいが、金属の形成材料1モルに対して、0.5モル〜5.0モルであることが好ましく、0.5モル〜3.5モルであることがより好ましく、0.5〜2.0モルであることが特に好ましい。
また、前記その他の成分が前記溶媒以外の成分である場合、金属インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合が0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、金属インク組成物は十分にその効果を発現する。
【0104】
金属インク組成物は、前記金属の形成材料、含窒素化合物、並びに還元剤及びアルコールのいずれか一方又は両方が配合されてなるものが好ましく、前記カルボン酸銀、含窒素化合物、並びに還元剤及びアルコールのいずれか一方又は両方が配合されてなるものがより好ましい。
【0105】
金属インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
【0106】
[金属インク組成物の製造方法]
金属インク組成物は、前記金属の形成材料、及び前記金属の形成材料以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま金属インク組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを金属インク組成物としてもよい。本発明においては、特に前記金属の形成材料としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、導電性を阻害する不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できるため、精製操作を行っていない金属インク組成物を用いても、十分な導電性を有する導電体(金属)が得られる。
【0107】
(金属インク組成物の製造方法1)
金属インク組成物の製造方法の一態様としては、金属の形成材料、並びに含窒素化合物、還元剤、アルコール及びその他の成分からなる群から選択される一種以上を配合することによって得られる。
なかでも、本発明においては、含窒素化合物に、金属の形成材料を添加し、次に還元剤を添加し、次にアルコールを添加するという順序で各成分を順次添加し、混合することが好ましい。
【0108】
つまり、本発明において、金属インク組成物を金属インク組成物の製造方法1により得る場合には、含窒素化合物に金属の形成材料を添加する第1工程と、さらに還元剤を添加する第2工程と、さらにアルコール及び必要に応じてその他の成分を添加する第3工程と、を有する製造方法によって製造されることが好ましい。
第1工程で添加する金属の形成材料は、この製造方法で用いる金属の形成材料の全量であることが好ましい。
第2工程で添加する還元剤は、この製造方法で用いる還元剤の全量であることが好ましい。
第3工程で添加するアルコール及びその他の成分は、この製造方法で用いるアルコール及びその他の成分の全量であることが好ましい。
【0109】
(金属インク組成物の製造方法2)
上記金属インク組成物の製造方法1以外の、金属インク組成物の製造方法の一態様としては、金属の形成材料を溶媒に溶解又は分散させ、次に含窒素化合物を添加し、次に還元剤を添加し、次にアルコールを添加するという順序で各成分を順次添加し、混合する方法も好適に採用できる。
【0110】
つまり、本発明において、金属インク組成物を金属インク組成物の製造方法2により得る場合には、金属の形成材料を溶媒に溶解又は分散させる第1工程と、さらに含窒素化合物を添加する第2工程と、さらに還元剤を添加する第3工程と、さらにアルコール及び必要に応じてその他の成分を添加する第4工程と、を有する製造方法によって製造されることが好ましい。
第1工程で溶媒に溶解又は分散させる金属の形成材料は、この製造方法で用いる金属の形成材料の全量であることが好ましい。
第2工程で添加する含窒素化合物は、この製造方法で用いる含窒素化合物の全量であることが好ましい。
第3工程で添加する還元剤は、この製造方法で用いる還元剤の全量であることが好ましい。
第4工程で添加するアルコール及びその他の成分は、この製造方法で用いるアルコール及びその他の成分の全量であることが好ましい。
【0111】
本発明の金属インク組成物は、含窒素化合物として、第1の含窒素化合物と第2の含窒素化合物との混合物を採用する場合には、第1工程後において、前記第1含窒素化合物の配合量に対する前記第2含窒素化合物の配合量の割合が0モル%より大きく、18モル%未満であることが好ましい。
【0112】
本発明においては、前記還元剤は滴下により配合することが好ましく、さらに滴下速度の変動を抑制することで、金属の表面粗さをより低減できる傾向にある。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
金属インク組成物において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
【0113】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分〜36時間であることが好ましい。
【0114】
[二酸化炭素]
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
【0115】
二酸化炭素は、金属インク組成物製造時のいずれの時期に供給してもよい。
そして、本発明においては、例えば、還元剤を添加する前に二酸化炭素を供給してもよく、目的に応じて任意に選択できる。
【0116】
各成分の混合の際に供給される二酸化炭素(CO
2)は、ガス状及び固形状(ドライアイス)のいずれでもよく、ガス状及び固形状の両方でもよい。二酸化炭素が供給されることにより、この二酸化炭素が第一の混合物に溶け込み、各成分と作用することで、得られる各成分の混合物の粘度が上昇すると推測される。
【0117】
二酸化炭素ガスの供給は、液体中にガスを吹き込む公知の各種方法で行えばよく、適した供給方法を適宜選択すればよい。例えば、配管の一端を第一の混合物中に浸漬し、他端を二酸化炭素ガスの供給源に接続して、この配管を通じて二酸化炭素ガスを第一の混合物に供給する方法が例示できる。この時、配管の端部から直接二酸化炭素ガスを供給してもよいが、例えば、多孔質性のものなど、ガスの流路となり得る空隙部が多数設けられ、導入されたガスを拡散させて微小な気泡として放出することが可能なガス拡散部材を配管の端部に接続し、このガス拡散部材を介して二酸化炭素ガスを供給してもよい。また、第一の混合物の製造時と同様の方法で、第一の混合物を撹拌しながら二酸化炭素ガスを供給してもよい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
【0118】
二酸化炭素ガスの供給量は、目的とする金属インク組成物の粘度に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、20〜25℃における粘度が5Pa・s以上である金属インク組成物を100〜1000g程度得るためには、二酸化炭素ガスを100L以上供給することが好ましく、200L以上供給することがより好ましい。なお、ここでは金属インク組成物の20〜25℃における粘度について説明したが、金属インク組成物の使用時の温度は、20〜25℃に限定されるものではなく、任意に選択できる。
【0119】
二酸化炭素ガスの流量は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量を考慮して適宜調節すればよいが、各成分の混合物1gあたり0.5mL/分以上であることが好ましく、1mL/分以上であることがより好ましい。流量の上限値は特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、各成分の混合物1gあたり40mL/分であることが好ましい。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい。
【0120】
二酸化炭素ガス供給時の各成分の混合物の温度は、5〜70℃であることが好ましく、7〜60℃であることがより好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、より効率的に二酸化炭素を供給でき、前記温度が前記上限値以下であることで、不純物が少ないより良好な品質の金属インク組成物が得られる。
【0121】
二酸化炭素ガスの流量及び供給時間、並びに二酸化炭素ガス供給時の前記温度は、それぞれの値を相互に考慮しながら適した範囲に調節すればよい。例えば、前記温度を低めに設定しても、二酸化炭素ガスの流量を多めに設定するか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。また、二酸化炭素ガスの流量を少なめに設定しても、前記温度を高めにするか、二酸化炭素ガスの供給時間を長めに設定することで、あるいはこの両方を行うことで、効率的に二酸化炭素を供給できる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量、二酸化炭素ガス供給時の前記温度として例示した上記数値範囲の中の数値を、二酸化炭素ガスの供給時間も考慮しつつ柔軟に組み合わせることで、良好な品質の金属インク組成物が効率的に得られる。
【0122】
二酸化炭素ガスの供給は、各成分の混合物を撹拌しながら行うことが好ましい。このようにすることで、供給した二酸化炭素ガスがより均一に各成分の混合物中に拡散し、より効率的に二酸化炭素を供給できる。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の金属インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
【0123】
ドライアイス(固形状二酸化炭素)の供給は、各成分の混合物中にドライアイスを添加することで行えばよい。ドライアイスは、全量を一括して添加してもよいし、分割して段階的に(添加を行わない時間帯を挟んで連続的に)添加してもよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、各成分の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の金属インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
【0124】
二酸化炭素が供給されてなる金属インク組成物は、20〜25℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
【0125】
例えば、還元剤の配合時には、得られる配合物(金属インク組成物)は比較的発熱し易い。そして、還元剤の配合時の温度が高い場合、この配合物は、後述する金属インク組成物の加熱処理時と同様の状態になるため、還元剤による前記金属の形成材料の分解促進作用によって、金属の形成材料の少なくとも一部において金属の形成が開始されることがあると推測される。このような金属を含有する金属インク組成物は、導電体形成時において、金属を含有しない金属インク組成物よりも温和な条件で後処理を行うことにより、導電体を形成できることがある。また、還元剤の配合量が十分に多い場合にも、同様に温和な条件で後処理を行うことにより、導電体を形成できることがある。このように、金属の形成材料の分解を促進する条件を採用することで、後処理として、より低温での加熱処理で、あるいは加熱処理を行わずに常温での乾燥処理のみで、導電体を形成できることがある。また、このような金属を含有する金属インク組成物は、金属を含有しない金属インク組成物と同様に取り扱うことができ、特に取り扱い性が劣ることもない。
【0126】
基板上に付着させた(印刷した)金属インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が例示できる。
【0127】
基板上に付着させた金属インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、金属インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、0.2〜12時間であることが好ましく、0.4〜10時間であることがより好ましい。前記金属の形成材料の中でも前記カルボン酸銀、特にβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記金属インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属を形成できる。
金属インク組成物を、耐熱性が低い基板上に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、加熱温度は130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0128】
金属インク組成物の加熱処理の方法は特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高圧ガスの吹き付け等で行うことができる。また、金属インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
【0129】
本明細書において「加湿」とは、特に断りのない限り、湿度を人為的に増大させることを意味し、好ましくは相対湿度を5%以上とすることである。加熱処理時には、処理温度が高いことによって、処理環境での湿度が極めて低くなるため、5%という相対湿度は、明らかに人為的に増大されたものであるといえる。
【0130】
金属インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合の相対湿度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましく、90%以上であってもよいし、100%であってもよい。そして、加湿条件下での加熱処理は、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間でより高純度の金属を形成できる。
【0131】
金属インク組成物が上述の銀インク組成物である場合、銀インク組成物の加熱処理は、二段階で行ってもよい。例えば、一段階目の加熱処理では、金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理で、金属銀の形成を最後まで行う方法が例示できる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜200℃であることが好ましく、70〜180℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
銀インク組成物を、耐熱性が低い基板上に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目及び二段階目の加熱処理における加熱温度は、130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0132】
ここまでで説明した銀インク組成物の加熱処理は、いずれも気相中で行うものであるが、銀インク組成物の加熱処理を二段階で行う場合、二段階目の加熱処理は、気相中ではなく液相中で行ってもよい。一段階目の加熱処理を経て、完全に又はある程度乾燥した銀インク組成物は、加熱した液体と接触させることで、その形状を損なうことなく、二段階目の加熱処理を行うことができる。そして、銀インク組成物の、一段階目の加熱処理を行った後の二段階目の液相中での加熱処理は、加熱した液体に銀インク組成物を浸漬することで行うことが好ましい。この液相中での加熱処理における加熱温度及び加熱時間は、先に説明した二段階目の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同じである。
上記の加熱した液体は湯(加熱した水)であることが好ましく、二段階目の加熱処理は、一段階目の加熱処理を行った銀インク組成物を湯中に浸漬すること、すなわち湯煎によって行うことが好ましい。
二段階目の加熱処理を液相中で行った場合には、この加熱処理によって形成された金属銀を、さらに乾燥させればよい。
【0133】
銀インク組成物の二段階目の加熱処理を液相中で行う場合、銀インク組成物の一段階目の加熱処理は、非加湿条件下で行うことが好ましい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
【0134】
加湿条件下での加熱処理を採用する場合、銀インク組成物の加熱処理は、一段階目の加熱処理において、非加湿条件下で、上述のように金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理において、加湿条件下で、上述のように金属銀の形成を最後まで行う、二段階の方法で行うことが特に好ましい。
【0135】
二段階目の加熱処理を加湿条件下で行う場合、一段階目の非加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜120℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、5秒〜1時間であることが好ましく、30秒〜30分であることがより好ましく、30秒〜10分であることが特に好ましい。
一段階目の非加湿条件下での加熱処理に次いで行う、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜140℃であることが好ましく、70〜130℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分〜2時間であることが好ましく、1分〜1時間であることがより好ましく、1分〜30分であることが特に好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目の非加湿条件下での加熱処理及び二段階目の加湿条件下での加熱処理における加熱温度は、いずれも130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0136】
本発明に係る配線板として、基板上に金属細線以外のその他の構成を備えたものを製造する場合には、上記の製造方法において、所定のタイミングでその他の構成を形成する工程を適宜追加して行えばよい。
【0137】
<<配線板>>
本発明の第2の態様は、基板上に金属細線を備え、前記金属細線は請求項1に記載の金属インク組成物を用いて形成されたものであり、前記金属細線は、その線長方向に対して垂直な方向の断面における幅が20μm以下である配線板である。
基板上に該金属細線を備えた配線板は、金属細線の線幅が小さく、上述の特定の形状を有し、各種電子機器における電磁波シールド、タッチパネル等の部材として好適である。
【0138】
図1(a)は、本発明に係る配線板の一例を模式的に示す正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す配線板のI−I線における断面図(金属細線の線長(長手)方向に対して垂直な方向の断面図)である。
ここに示す配線板1は、基板11の表面(一方の主面)11a上に、直線状の金属細線12を複数本備えてなるものであり、これら複数本の金属細線12は、直交する2方向に平行して配置され、網目を形成している。
【0139】
<基板>
基板11は、フィルム状又はシート状であることが好ましく、厚さが0.5〜5000μmであることが好ましく、0.5〜2500μmであることがより好ましい。
【0140】
基板11の材質は特に限定されず、目的に応じて選択すればよいが、後述する金属インク組成物の加熱処理による金属細線12形成時に変質しない耐熱性を有するものが好ましく、光透過性を有するものが好ましい。
基板11の材質として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、基板11の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスが例示できる。
また、基板11は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、二種以上の材質を併用したものでもよい。
【0141】
基板11は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。基板11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、基板11が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基板11の厚さとなるようにするとよい。
【0142】
<金属細線>
本発明において、金属細線12は、その線長方向に対して垂直な方向の断面において、幅、即ち、
図1(b)に示す幅Wが20μm以下である。本発明においては、
図1(b)に示す幅Wが15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、7μm以下であることが特に好ましい。
本発明において、上記範囲の線幅の金属細線を形成するためには、所望の金属細線の幅と同等又は数μm程度狭い幅の溝を有する版を用いて形成すればよい。
例えば、
幅Wが18〜20μm程度の金属細線を形成するためには、幅が17μmの溝を有する版が好ましく、
幅Wが8〜10μm程度の金属細線を形成するためには、幅が7μmの溝を有する版が好ましく、
幅Wが5〜6μm程度の金属細線を形成するためには、幅が4μmの溝を有する版が好ましい。
また、金属細線12の前記断面形状は、
図1(b)に示すように、楕円の短軸方向のほぼ半分の領域が切り取られた半楕円形状である。本発明においては、このように金属細線12は、前記断面において、頂上が基板11との接触部よりも幅が小さくなっている。
【0143】
本発明において、金属細線12の前記断面形状はこれに限定されず、例えば、
図2(a)に示すような台形状、
図2(b)に示すような三角形状、
図2(c)に示すような二種以上の形状が組み合わされた複合形状等、他の形状でもよく、また、
図2(a)〜
図2(c)において、角部が丸められた形状であってもよい。
図2(b)に示すように、前記断面において、金属細線12の頂上が非平面である場合には、当然に、金属細線12の頂上は基板11との接触部よりも幅が小さい(幅がゼロである)。そして、
図2(a)及び
図2(c)に示すように、前記断面において、金属細線12の頂上が平面である場合には、その平面部の幅は、金属細線12の基板11との接触部の幅よりも小さい。
【0144】
また、ここでは、金属細線12の前記断面形状は、紙面に向かって左右対称であるが、本発明においては、これに限定されず、左右非対称であってもよい。
また、ここでは、金属細線12の前記断面を模式的に示しており、金属細線12の表面は滑らかであるが、本発明においては、これに限定されず、金属細線12の表面が規則的又は非規則的な凹凸面であってもよい。
すなわち、
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示す金属細線12の前記断面形状は、ごく一部の例に過ぎず、本発明の特徴を有している限り、金属細線12の前記断面形状は特に限定されない。
【0145】
金属細線12は、前記断面において、基板11の表面11aからの高さが高くなるにしたがって、幅が狭くなっている領域が、金属細線12の高さ方向において80%以上を占めることが好ましく、85%以上を占めることがより好ましく、90%以上を占めることがさらに好ましく、95%以上を占めることが特に好ましく、100%を占めていてもよい。金属細線12は、その線長方向の全領域において、このような断面を有することが好ましい。
【0146】
金属細線12は、印刷法によって形成されることで、典型的には、上述のような特有の形状を有する。
【0147】
一方、エッチング法で形成された金属細線は、典型的には、前記断面形状が
図3に示すような逆台形状か、または四角形状に近い逆台形状となる。
例えば、金属細線12を覆うように基板11の表面11a上に被覆層(図示略)を形成する場合には、金属細線の前記断面形状が
図3に示すような形状であると、符号Sで示す金属細線の根元部位(基板との接触部)の近傍領域は、被覆層を形成できずに空隙部を生じ易い。これに対して、金属細線12が
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示すような形状であると、上述のような空隙部の発生が高度に抑制される。また、特に金属細線12の表面が
図1(b)に示すように尖った形状を有していない場合には、被覆層の構造を安定して保持できるため、被覆層を設けたことによる効果を長期間維持できる。
【0148】
金属細線12のピッチ(隣り合う金属細線12間の距離)Pは、目的に応じて任意に設定できるが、例えば、配線板1を電磁波シールド、タッチパネル等の部材として利用する場合には、50〜320μmであることが好ましく、70〜260μmであることがより好ましい。
金属細線12のピッチPは、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ異なっていてもよい。例えば、金属細線12のピッチPは、直交する2方向において、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0149】
金属細線12は、その線長(長手)方向において、幅Wの変動率({[Wの最大値]−[Wの最小値]}/[Wの平均値]×100)が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0150】
金属細線12は、金属を主成分とするものであり、金属の比率が、見かけ上金属だけからなるとみなし得る程度に十分に高く、金属細線12中の金属の比率は、好ましくは99質量%以上である。金属細線12の金属の比率の上限値は、例えば、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかから選択できる。
金属細線12は導電性が高く、金属細線12は、体積抵抗率が15μΩ・cm以下であることが好ましく、12μΩ・cm以下であることがより好ましく、10μΩ・cm以下であることが特に好ましい。
【0151】
配線板1は、光の透過率と、金属細線12が形成されていない基板11の光の透過率との差が、同一波長の光で15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。配線板1は、このような条件を満たすことにより、各種電子機器における電磁波シールド、タッチパネル等の部材としてより好適なものとなる。
【0152】
本発明において、「配線板の光の透過率」とは、配線板の金属細線の形成箇所及び非形成箇所(すなわち基板)を共に含む任意の領域における、配線板の厚さ方向での光の透過率を意味し、配線板の金属細線の影響を受ける領域における光の透過率と、配線板の金属細線の影響を受けない領域における光の透過率とから求められる、光の透過率の平均値か、又はこの平均値に近似可能なものといえる。
【0153】
本発明において、透過率を測定する光は、可視光であり、その波長は好ましくは360〜830nmである。上述の光の透過率の差は、同じ波長の光で求める。
【0154】
本発明において、上述の配線板の光の透過率と、金属細線が形成されていない基板(金属細線の影響を受けない基板)の光の透過率との差は、金属細線を備えたことによる光の透過性の低下の程度を反映するが、金属細線が微細であることで、小さい値に抑制される。
【0155】
配線板1は、基板11及び金属細線12以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、一又は二以上のその他の構成を備えていてもよい。前記その他の構成は、目的に応じて任意に選択できる。
【0156】
ここでは、配線板として、複数本の金属細線が直交する2方向に平行して配置され、網目を形成している例を示しているが、本実施形態に係る配線板はこれに限定されず、金属細線が他のパターンを形成していてもよい。
金属細線が形成する他のパターンとしては、複数本の金属細線が交差する(交わる)角度が、上述のような90°ではなく、90°以外の角度であるもの、金属細線の一部又はすべてが直線ではなく曲線であるもの、複数本の金属細線が交差することなく配置されているもの(複数本の金属細線が交差することなく1方向に平行して配置されている場合等、縞模様を形成しているもの)等が例示できる。
配線板が有する金属細線のパターンは、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせは任意に選択できる。
【0157】
<<配線板の形成方法>>
本発明の第3の態様は、基板上に、線幅が20μm以下である配線を形成する方法であって、溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版の溝に、金属インク組成物を供給する工程と、余剰の金属インク組成物を除去する工程と、前記版から転写材へ前記金属インク組成物を転写する工程と、前記金属インク組成物を転写した転写材を乾燥し、導電性の被膜を形成する工程と、を有し、前記金属インク組成物が、樹脂成分の含有量が0.5質量%未満であり、温度25℃、角周波数0.1rad/sの場合の損失係数(tanδ)が、0.7以上50.0以下である、配線の形成方法である。
【0158】
本発明の配線板の形成方法においては、本発明の第1の態様の金属インク組成物を用いる。金属インク組成物に関する説明と、溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版についての説明は、本発明の第1の態様において説明した内容と同様である。
本発明の配線板の形成方法における基板についての説明は、前記本発明の配線板の説明において記載した基板についての説明と同様であり、さらには、基板は、電子機器、データ受送信体、透明導電膜等の筐体(外装材)であってもよい。
【0159】
本発明の配線板の形成方法においては、まず、溝の幅aと、溝の深さbとが、b/a>1の関係を満たす版の溝に、金属インク組成物を供給し、ドクターブレードを用いて版状に供給された金属インク組成物を広げ(ドクタリングし、)版の溝部に金属インク組成物を充填させる。この後、余剰の金属インク組成物を除去する。
次に、前記版から転写材へ前記金属インク組成物を転写する。本発明においては、直接版に被印刷物を接触させて転写する方法(ダイレクトグラビア印刷法)を用いてもよく、ロール状のゴムブランケット等の中間転写体を用いる方法(オフセット印刷法)をもちいてもよい。
次に、前記金属インク組成物を転写した転写材を乾燥し、導電性の被膜を形成する。
本発明の配線板の形成方法における、金属インク組成物を転写した転写材を乾燥条件は、前記本発明の金属インク組成物の製造方法の説明において説明した、基板上に付着させた金属インク組成物の乾燥処理についての条件と同様の条件で行えばよい。
【0160】
<<電子機器、データ受送信体、透明導電膜>>
本発明の金属インク組成物を用いて形成した配線板は、データ受送信体等の各種電子機器、透明導電膜等を構成するのに好適である。
例えば、前記電子機器は、前記配線板を用い、前記基材を筐体(外装材)として備えるように構成でき、前記配線板中の基材で筐体(外装材)の少なくとも一部を構成した点以外は、公知の電子機器と同様の構成とすることができる。例えば、携帯電話機等の電子機器における外装材の平面又は曲面部分を前記基材とし、この外装材(基材)上に直接前記金属細線が形成され、この金属細線を回路とすることで、前記配線板を回路基板として用いることができる。そして、例えば、前記配線板に、音声入力部、音声出力部、操作スイッチ、表示部等を組み合わせることにより、携帯電話機を構成できる。また、パターニングされた前記金属細線をアンテナとすることで、前記配線板をアンテナ構造体とすることができる。
前記データ受送信体は、前記配線板を用い、前記金属細線をアンテナとして備えるように構成でき、前記配線板をアンテナ構造体として用いた点以外は、公知のデータ受送信体と同様の構成とすることができる。例えば、前記配線板において、基材上に前記金属細線と電気的に接続されたICチップを設けてアンテナ部とすることにより、非接触型データ受送信体を構成できる。
【0161】
前記透明導電膜は、前記配線板を用い、前記金属細線を極微細配線又は極薄配線として備えるように構成でき、前記金属細線を極微細配線又は極薄配線として備えた点以外は、公知の透明導電膜と同様の構成とすることができる。例えば、前記配線板に加え、透明基材等と組合せることにより、タッチパネルや光学ディスプレイを構成できる。
極薄配線の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、7nm〜5μmであることがより好ましく、10nm〜1μmであることが特に好ましい。
【0162】
また、前記配線板においては、前記金属細線を低温で形成することも可能であり、基材等の材質を幅広く選択できるので、設計の自由度が飛躍的に向上し、電子機器、透明導電膜等をより合理的な構造とすることも可能である。
上記のような電子機器、透明導電膜等は、長期に渡って高い性能を維持することが可能である。
【実施例】
【0163】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0164】
<実施例1;金属インク組成物1の製造>
ビーカー中で2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して、1.26倍モル量)と、イソブチルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.19倍モル量)を混合し、メカニカルスターラーを用いて1分間撹拌した。ここに、液温が40℃以下となるように、52.9gの2−メチルアセト酢酸銀、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.38倍モル量)を10分かけて滴下したのちに1.5時間撹拌を続け、次いで、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」、以下、「DMHO」と略記することがある)(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.036倍モル量)を添加して混合し、さらに5分間撹拌した。これにより、金属インク組成物1を得た。
金属インク組成物1の、2−エチルヘキシルアミンに対するイソブチルアミンの配合量の割合は、15モル%であった。
【0165】
<実施例2;金属インク組成物2の製造>
ビーカー中で2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して、1.26倍モル量)と、イソブチルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.19倍モル量)を混合し、メカニカルスターラーを用いて1分間撹拌した。ここに、液温が40℃以下となるように、52.9gの2−メチルアセト酢酸銀、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.48倍モル量)を10分かけて滴下したのちに1.5時間撹拌を続け、次いで、DMHO(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.036倍モル量)を添加して混合し、さらに5分間撹拌した。これにより、金属インク組成物2を得た。
金属インク組成物2の、2−エチルヘキシルアミンに対するイソブチルアミンの配合量の割合は、15モル%であった。
【0166】
<実施例3;金属インク組成物3の製造>
ビーカー中に52.9gの2−メチルアセト酢酸銀とヘキサン(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.63倍モル量)とを入れ、メカニカルスターラーを用いて1分間撹拌した。ここに、2−エチルヘキシルアミン(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.45倍モル量)を添加し、次いで、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.5倍モル量)を10分かけて滴下したのちに1.5時間撹拌を続け、次いで、DMHO(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.032倍モル量)と、4−エチル‐1−オクチン‐3−オール(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.004倍モル量)との混合物を添加して混合し、さらに5分間撹拌した。これにより、金属インク組成物3を得た。
【0167】
<実施例4;金属インク組成物4の製造>
ビーカー中に52.9gの2−メチルアセト酢酸銀とヘキサン(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.63倍モル量)とを入れ、メカニカルスターラーを用いて1分間撹拌した。ここに、2−エチルヘキシルアミン(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.45倍モル量)を添加し、次いで、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.5倍モル量)を10分かけて滴下したのちに1.5時間撹拌を続け、次いで、DMHO(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.024倍モル量)と、4−エチル‐1−オクチン‐3−オール(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.012倍モル量)との混合物を添加して混合し、さらに5分間撹拌した。これにより、金属インク組成物4を得た。
【0168】
<実施例5;金属インク組成物5の製造>
ビーカー中に52.9gの2−メチルアセト酢酸銀とヘキサン(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.63倍モル量)とを入れ、メカニカルスターラーを用いて1分間撹拌した。ここに、2−エチルヘキシルアミン(2−メチルアセト酢酸銀に対して1.45倍モル量)と、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.5倍モル量)を10分かけて滴下したのちに1.5時間撹拌を続け、次いで、DMHO(2−メチルアセト酢酸銀に対して、0.036倍モル量)を添加して混合し、さらに5分間撹拌した。これにより、金属インク組成物5を得た。
【0169】
上記で得られた金属インク組成物1〜5について、以下の項目について測定した。
【0170】
[400℃加熱残渣]
金属インク組成物1〜5をそれぞれ0.5gについて、電気炉を用いて400℃で3時間加熱した。加熱後の残渣量(質量%)を測定した。その結果を表1に示す。
【0171】
[希釈時最大吸収波長]
金属インク組成物1〜5をそれぞれ、n−ヘキシルアルコールで1万倍に希釈したときの、最大吸収波長(nm)を紫外・可視により測定した。400nm付近に最大吸収波長が観測されると、プラズモン現象により系中に1〜50nm程度の金属微粒子が存在することが示唆される。その結果を表1に記載する。
【0172】
[せん断粘度]
金属インク組成物1〜5をそれぞれ、レオメータ(Anton Paar社製「MCR−301」)を用いて、25℃で、せん断速度0.1s
−1〜1000s
−1である場合のせん断粘度を測定した。その結果を表1に記載する。
レオメータによる測定条件は以下の通りである。
コーンプレート:CP−25
測定温度:25℃
<せん断速度設定>
開始0.1/s(取得時間60s)
終了1000/s(取得時間2s)
対数昇降(6点/桁)
【0173】
[貯蔵弾性率及び損失弾性率]
金属インク組成物1〜5のそれぞれについて、弾性測定器(Anton Paar社製「MCR−301」)を用い、25℃の条件で、角度周波数0.1rad/s、1rad/s、10rad/sの周波数で正弦振動させたときの貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。その結果を表1に記載する。
弾性測定器による測定条件は以下の通りである。
コープレートCP−25
<ひずみ設定>
開始0.01%、終了1%、対数昇降
<周波数>
開始100rad/s, 0.1rad/s, 対数昇降(5点/桁)
【0174】
[tanδ]
上記で測定した角度周波数0.1rad/s、1rad/s、10rad/sのそれぞれの周波数における貯蔵弾性率及び損失弾性率から、tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)を求めた。その結果を表1に記載する。
【0175】
【表1】
【0176】
<配線板の製造>
グラビアオフセット印刷法により、上記で得られた金属インク組成物を用いて、ポリカーボネート製基板(厚さ1mm)の一方の主面(表面)上に印刷を行い、
図1(a)に示すような網目状の印刷パターンを形成した。より具体的には、以下のとおりである。
印刷装置としては、以下のものを用いた。すなわち、凹版としては、金属製でその表面に金属細線の型となる、深さが10μmの溝を有し、溝の幅が4μmであるものを用いた。オフセットロールとしては、金属製の筒体の表面がシリコーン樹脂製のブランケット材で被覆されたものを用いた。
このような印刷装置を用いて、凹版に上記の金属インク組成物を供給して、余分の金属インク組成物をドクターブレードによって除去し、溝に充填された金属インク組成物をオフセットロールのブランケット材の表面に転写した後、ベルトコンベヤユニットで運搬されてきた基板の表面に対して、この金属インク組成物で印刷を行った。
次いで、得られた印刷パターンを、100℃で10分間乾燥させ、さらに、100℃、相対湿度100%の水蒸気雰囲気下にこの基板を10分間置いて加熱(焼成)処理し、配線板とした。
【0177】
<配線板の評価>
得られた配線板について、1枚目の線幅(W1:μm)と、50枚目の線幅(W50:μm)を測定し、変化率((W50−W1)÷W1×100)を算出した。その結果を表2に記載する。
【0178】
【表2】